説明

床面加工装置

【課題】建物や歩道等の床面の表面に滑り止め及び/または装飾の目的で加工を施す床面加工装置において、作業性を良好にすることができ、小型化・軽量化することができて、低コストで製造することができるようにする。
【解決手段】床面加工装置10は、床面上を走行可能な台車12と、台車12に設けられたレーザ発振器34と、レーザ発振器34から出射されるレーザ光を台車12の下方の床面に向けて誘導する光学装置とを備えており、台車12が床面Fを走行すると同時に、光学装置の光学系38が鉛直軸周りに揺動し、床面にレーザ光を照射して加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や歩道等の床面の表面に滑り止め及び/または装飾の目的で加工を施す床面加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を床面に照射して、床面の加工を行って滑り止めまたは装飾を行うことが、特許文献1で提案されている。
【0003】
この特許文献1の床面加工装置では、加工対象である床面上を移動可能な可搬式の基台と、該基台に取付けられたレーザ発振器と、基台に設けられて、レーザ発振器から出射されるレーザ光を前記基台の下方に配置される床面に向けてその照射位置を二次元的に調節可能に誘導する光学装置と、を備えており、可搬式基台を加工対象である床面にまで移動させて、その基台下方に配置される床面に向けてレーザ光を照射して、窪みを形成することにより、既設の床面に対して窪みを形成して加工を施すことができるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−248629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される床面加工装置においては、加工対象である床面に移動させて位置決めした後、二次元パターンの加工を行い、加工が終了すると、次の加工位置へと移動して位置決めを行う作業を繰り返さなければならず、作業員は位置決め作業と加工中の待機とを頻繁に繰り返すために、作業性が悪いという問題がある。
【0006】
また、上記公報に開示される床面加工装置においては、光学装置が二次元的に照射位置を調節することで、床面に任意の二次元パターンの加工を行うことができるものの、二次元的に照射位置を調節するための光学装置が複雑になり、装置が大型化・重量化し、製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、その目的は、作業性を良好にすることができる床面加工装置を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、小型化・軽量化することができて、低コストで製造することができる床面加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、床面上を走行可能な台車と、該台車に設けられたレーザ発振器と、レーザ発振器から出射されるレーザ光を前記台車の下方の床面に向けて誘導する光学装置と、を備えて、床面の加工を行う床面加工装置において、
前記台車は床面を自走するための走行ユニットを備え、台車が床面を自走すると同時に、前記光学装置によって前記レーザ光の照射位置を台車に対して相対的に変化させながら床面にレーザ光を照射して加工を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記光学装置によって誘導されるレーザ光の照射位置が、床面加工装置の座標系において、揺動軌跡を描くことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の前記光学装置のレーザ光を誘導する光学系が、鉛直線軸周りで揺動することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の前記走行ユニットと、前記レーザ発振器及び前記光学装置とが、分離可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の床面加工装置が、床面と前記台車との間に設けられて、前記台車の走行を案内する案内手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、装置の台車が自走すると同時に、光学装置によってレーザ光の照射位置を台車に対して相対的に変化させながら床面にレーザ光を照射して加工を行うために、位置決め作業は頻繁に行う必要がなく、加工作業を連続的に行うことができ、作業性を向上させることができる。台車が走行しながらであっても、光学装置によって、レーザ光の台車に対する照射位置が変化していくために、床面に対して細かい加工を行うことができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、レーザ光の照射位置が揺動軌跡を描くようにするには、1軸周りの運動を発生させればよいので、光学装置の構造を簡易にすることができ、小型化・軽量化することができて、低コストで製造することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、光学系が鉛直軸周りで揺動することにより、床面加工装置のほぼ幅全体に渡りレーザ光の照射位置を移動させることができるために、加工幅を大きくとることができ、また、光学系と床面との距離を一定とすることができるので、安価なレンズで光学系を構成することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、走行ユニットと、レーザ発振器及び光学装置とが分離可能となっているために、いずれかが故障した場合には、これらを分離して修理を行うことができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、案内手段によって台車の走行を所望の走行路に沿って案内することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【0020】
図1は本発明の実施形態による床面加工装置10の全体斜視図、図2はその内部構造を表す図である。
【0021】
図において、12は台車であり、台車12には、一対の前車輪14,14と、一対の後車輪16,16を含み台車12を自走させるための走行ユニット18とが設けられる。
【0022】
走行ユニット18は、前記一対の後車輪16,16と、走行駆動用モータ20とを有し、走行駆動用モータ20からの回転力がギヤボックス21(図3)を介して後車軸に伝達され、クラッチ22(図3)を介して後車輪16、16が回転駆動されるようになっている。一対の後車輪16の少なくとも一方には、案内ローラ17が一体に取り付けられており、案内ローラ17は図5(a)に示すように、床面Fに設置されるレールRに係合可能となっている。これらの案内ローラ17とレールRは案内手段を構成する。
【0023】
台車12には垂直フレーム12aが設けられ、垂直フレーム部12aは、その上部において、後方へと屈曲してハンドル部となっている。
【0024】
台車12の水平フレーム12bの上には、レーザ照射ユニット28が配置される。レーザ照射ユニット28は、図2に示したように、主に、側面視でL字形となった基部フレーム30と、レーザ照射ユニット28の外側を覆うカバー32と、レーザ光を発振するレーザ発振器34と、レーザ発振器34からのレーザ光を台車12の下方に配置される床面Fに向けて誘導する光学装置36と、レーザ発振器34と光学装置36との間にあってレーザ光路に沿ってガイド光を出射するガイド光発振器39と、から構成される。基部フレーム30と水平フレーム12bまたは垂直フレーム12aとは、ノックピン及び/またはバンドによって分離可能に結合される。
【0025】
レーザ発振器34は、基部フレーム30に固定された取付フレーム30aに取り付けられており、レーザ発振器34からのレーザ光は、シャッター35を介して、下方に向かって出射されるようになっている。レーザ発振器34としては、COレーザ、Nd−YAGレーザ、エキシマレーザ、半導体レーザ、ファイバーレーザ等を用いることができ、また、レーザ発振器34の発振は、連続発振、パルス発振のいずれとすることも可能である。
【0026】
光学装置36は、横向きL字形のレーザ光路を持った光学系を構成するレーザ光誘導管38と、レーザ光誘導管38を揺動駆動する揺動駆動ユニット40と、を有している。
【0027】
レーザ光誘導管38内には、レーザ光路に沿ってミラーM1、M2、集光レンズLが配置される。レーザ発振器34から下方に向かって出射されたレーザ光は、レーザ光誘導管38内に導入されると、ミラーM1に反射して、水平方向に進んだ後、ミラーM2に反射して鉛直方向に進み、集光レンズLによって、床面Fで焦点を結ぶようになっている(図2の一点鎖線で示す。)。
【0028】
揺動駆動ユニット40は、レーザ光誘導管38を支持する揺動中心軸41と、揺動中心軸41の軸受けを行う軸受ユニット42と、ステッピングモータからなる揺動駆動用モータ44と、揺動駆動用モータ44からの駆動力を揺動中心軸41に伝達するギヤからなる伝達機構46と、を有している。この揺動駆動ユニット40により、レーザ光誘導管38は、ミラーM1の反射点及び前車軸の中心点を通過する鉛直線軸周りで揺動可能なるように支持される。
【0029】
このレーザ光誘導管38の揺動角度は、図3に示すように、レーザ照射ユニット28の幅方向に収まる範囲で任意の角度(例えば、±60度の範囲の任意の範囲)に設定することができる。
【0030】
レーザ光誘導管38のレンズL付近には、レーザ光誘導管38を貫通して、レンズLが加工屑によって汚れるのを防ぐ為に、圧縮エアをレンズLに向けて吹出すノズル50が配置されており、ノズル50は、電磁弁を介して圧縮機及びエアタンクに接続される。
【0031】
また、レーザ光誘導管38の出口付近には、レーザ光誘導管38を貫通して、床面Fからの加工屑、粉塵を吸引する集塵パイプ52が配置されており集塵パイプ52は集塵機に接続される。
【0032】
また、レーザ光誘導管38の上方には、レーザ光誘導管38及び照射位置を撮像するためのCCDカメラ54が設置されている。
【0033】
台車12の走行ユニット18の上側には、制御盤が配置されるコントロールボックス55が配置され、台車12のコントロールボックス55の上には、設定操作及び表示を行うタッチパネル式モニタ56と、CCDカメラ54で撮像された画像を映すモニタ58が設けられる。
【0034】
さらに、台車12とは別に、第2台車70が設けられており、第2台車70内には、レーザ発振器34を動作させるための高周波電源装置、直流電源装置、前記圧縮機及びエアタンク、集塵機等の重量または容量の大きい装置が配置される。第2台車70と台車12との間には、信号ケーブル、電源ケーブルまたはエア用チューブ、集塵用チューブといった制御信号、電源電圧信号または圧縮エア、粉塵が通るための可撓性ケーブルが配索される。第2台車からは、商用交流電源に接続するためのコードが別途、設けられている。
【0035】
以上のように構成される床面加工装置10においてその作用を説明する。まず、大理石、御影石、ガラス等の任意の床材が敷設されてなる床面Fに床面加工装置10の台車12及び第2台車70を搬入し、床面FにレールRを設置する。床面Fは、通常、矩形の床材が整列されてなるため、レールRは、床材の整列方向に沿って設置されるとよい。
【0036】
そして、台車12の案内ローラ17をレールRに係合させた後、CCDカメラ54からの画像をモニタ58で確認しながら、揺動駆動用モータ44を作動させて、レーザ光誘導管38を揺動させて、始点と終点の位置(即ち、揺動角度範囲)を決定し、タッチパネル式モニタ56に入力する。また、台車12の走行速度(即ち、走行駆動用モータの回転速度)、レーザ光の強度及び連続光/パルス光を決定し、それぞれタッチパネル式モニタ56に入力する。
【0037】
以上の入力後に運転を開始すると、走行駆動用モータ20により台車12が自走すると同時に、揺動駆動用モータ44によってレーザ光誘導管38が左右に揺動しながらレーザ光が床面に照射される。このため、レーザ光の照射位置は、装置の座標系において揺動軌跡を描く。
【0038】
この動作により、床面には、図4に示すように、多数の変形円弧が進行方向に繋がった加工軌跡で窪みが形成される。走行速度は例えば0.5mm〜10mm/sとすることができる。図4(a)は台車12の走行速度が遅い場合、図4(b)は台車12の走行速度が速い場合を示しており、走行速度が変化すると、隣接する変形円弧間の距離であるピッチが変化するので、この変形円弧のピッチが所望のものとなるように、台車12の走行速度を決定するとよい。加工軌跡を図4(c)のような断続的なものとする場合には、レーザ光をパルス光とするとよい。
【0039】
以上のように本発明による床面加工装置10では、装置10が走行しながら床面加工を行うために、位置決め作業は走行開始のときだけでよく、作業性に優れる。複数の床材を連続的に加工していくことができるので、床材を1つずつ加工していくのと比較して、床面加工装置10と床材との位置ずれがあったとしても、そのずれが目立たない。
【0040】
また、装置10が自走するために、より作業性に優れたものとなっている。2台以上の床面加工装置10があれば、1台以上の床面加工装置が自走・加工中に、他の床面加工装置に対してレールの設置を含む床面加工装置の位置決め作業を行うことで一人の作業員で作業を行うことができ、作業性が格段に向上する。
【0041】
光学装置は、図示したようなレーザ光誘導管38の鉛直軸周りの揺動運動のみならず、任意の往復運動とすることができる。即ち、床面加工装置の進行方向をx軸とし、鉛直軸をz軸とすると、床面加工装置がx軸に進行しながら、y軸方向に所定の幅を持った加工を行わせるような任意の運動とすることができ、例えば、y軸方向の往復運動、x軸周りの揺動運動とすることもできる。いずれにしても、1軸方向の往復運動または1軸周りの揺動運動はその駆動機構を簡易にすることができるので、装置を小型化・軽量化することができる。この中で、図示したようなz軸周りの揺動運動は、床面加工装置のy方向寸法とほぼ等しい範囲でレーザ光の照射位置を最大限移動させることができるので、加工幅を大きくとることができ、また、光学装置と床面との間の距離が一定であるので、光学装置のレンズLは安価なレンズとすることができるため、最も好ましい。
【0042】
この実施形態では、レールRと案内ローラ17とによって案内手段が構成されて、床面加工装置10に走行が案内されるようになっていたが、これに限るものではなく、図5(b)に示したように、床面加工装置に光センサ80を設け、床面FまたはレールRに所望の走行路に沿ってガイドテープ82等の反射手段を設けて、光センサ80とガイドテープ82によって案内手段を構成することもできる。光センサ80から光を下方に向けて発光し、その反射光を受光して、ガイドテープ82からの反射光量と非ガイドテープからの反射光量との違いから、ガイドテープ82に追従するように床面加工装置10を案内する。
【0043】
また、この実施形態では、台車12は主として直進走行を行っていたが、これに限るものではなく、走行ユニット18にステアリング機構を設けて、直進以外の旋回・蛇行走行を行うようにすることも可能である。これにより、任意の非直線の走行路に沿って加工を行うことも可能となる。
【0044】
この実施形態では、走行ユニット18と、レーザ発振器34及び光学装置36を含むレーザ照射ユニット28とが分離可能となっているため、いずれかのユニットが故障した場合には、これらのユニットを分離して、故障したユニットのみ修理することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態による床面加工装置の全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による床面加工装置の内部構造を表す図である。
【図3】本発明の実施形態による床面加工装置の平面図である。
【図4】本発明の床面加工装置の加工例の図であり、(a)は床面加工装置の走行速度が遅い場合、(b)は床面加工装置の走行速度が速い場合、(c)はレーザ光をパルス光とした場合の例である。
【図5】本発明の実施形態による案内手段の例である。
【符号の説明】
【0046】
10 床面加工装置
12 台車
17 案内ローラ(案内手段)
18 走行ユニット
34 レーザ発振器
36 光学装置
38 レーザ光誘導管(光学系)
80 光センサ(案内手段)
82 ガイドテープ(案内手段)
R レール(案内手段)
F 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上を走行可能な台車と、該台車に設けられたレーザ発振器と、レーザ発振器から出射されるレーザ光を前記台車の下方の床面に向けて誘導する光学装置と、を備えて、床面の加工を行う床面加工装置において、
前記台車は床面を自走するための走行ユニットを備え、前記台車が床面を自走すると同時に、前記光学装置によって前記レーザ光の照射位置を台車に対して相対的に変化させながら床面にレーザ光を照射して加工を行うことを特徴とする床面加工装置。
【請求項2】
前記光学装置によって誘導されるレーザ光の照射位置は、床面加工装置の座標系において、揺動軌跡を描くことを特徴とする請求項1記載の床面加工装置。
【請求項3】
前記光学装置のレーザ光を誘導する光学系は、鉛直線軸周りで揺動することを特徴とする請求項1または2記載の床面加工装置。
【請求項4】
前記走行ユニットと、前記レーザ発振器及び前記光学装置とが、分離可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の床面加工装置。
【請求項5】
床面と前記台車との間に設けられて、前記台車の走行を案内する案内手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の床面加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−215020(P2008−215020A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56883(P2007−56883)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(501492535)カンタムエレクトロニクス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】