説明

店舗集中管理装置及び空気調和機のショーケースへの影響度計測方法

【課題】従来の位置情報に相当する空気調和機のショーケースに対する影響度を低コストで簡便に計測し、省エネ運転に利用することができる店舗集中管理装置を提供する。
【解決手段】店舗STに設置された複数台のショーケースC1〜Cm及び室内機A1〜Anの運転を一括して管理する。各ショーケースC1〜Cmの庫内温度を計測する庫内温度センサ7と、ショーケースC1〜Cmの庫内冷却運転を停止した状態で、何れかの室内機A1〜Anを運転したときの各ショーケースC1〜Cmの庫内温度の変化を計測する影響度計測部と、この影響度計測部が計測した室内機A1〜AnのショーケースC1〜Cmに対する影響度を記憶する影響度記憶部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗に設置されたショーケースや空気調和機の運転状態を一括して管理するための集中管理装置及び当該空気調和機のショーケースへの影響度を計測する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗には、複数台のショーケースや空気調和機が設置されているが、近年ではこれらショーケースや空気調和機のコントローラと統合コントローラをネットワークで接続し、各ショーケースの運転状態を一括して管理することで、効率の良い運転制御を実現する店舗集中管理装置が開発されている。
【0003】
ここで、特にオープンショーケースの場合には、空気調和機(室内機)からの冷房が庫内冷却に影響する。また、空気調和機はショーケースよりエネルギー効率が高いので、ショーケースの庫内の冷却状態が悪化した場合には、ショーケースの冷却能力を増大させるよりも、空気調和機の冷房能力を増大させた方が効率的にショーケースの庫内温度を下げることができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−23069号公報
【特許文献2】特開2009−174734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そのためにはショーケースと空気調和機との位置関係が重要となるため、それらの位置情報であるグルーピング情報を初期設定する必要がある。前記特許文献2ではこれらショーケースや空気調和機の位置情報を、店舗のユーザが手作業で設定したり、各機器にGPS受信機を搭載して信号を検索する、或いは、床にRFIDタグを複数配置して検出する等の手法で設定していたため、煩雑化やコストの高騰を招いていた。
【0006】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、従来の位置情報に相当する空気調和機のショーケースに対する影響度を低コストで簡便に計測し、省エネ運転に利用することができる店舗集中管理装置及び空気調和機のショーケースへの影響度計測方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1の発明の店舗集中管理装置は、店舗に設置された複数台のショーケース及び空気調和機の運転を一括して管理するものであって、各ショーケースの庫内温度を計測する庫内温度計測部と、ショーケースの庫内冷却運転を停止した状態で、何れかの空気調和機を運転したときの各ショーケースの庫内温度の変化を計測する影響度計測部と、この影響度計測部が計測した空気調和機のショーケースに対する影響度を記憶する影響度記憶部と備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明の店舗集中管理装置は、上記発明においてショーケースの庫内冷却状態が悪化した場合、影響度記憶部に記憶された当該ショーケースに対する影響度の大きい空気調和機の冷房能力を増大させることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明の店舗集中管理装置は、上記発明においてショーケースの庫内冷却状態に応じて、冷房能力を増大させる影響度の大きい空気調和機の台数を調整することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明の店舗集中管理装置は、請求項2又は請求項3の発明において庫内冷却状態が悪化したショーケース近傍のショーケースの庫内冷却能力を低下させることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明の店舗集中管理装置は、請求項1の発明においてショーケースの除霜を行う場合、影響度記憶部に記憶された当該ショーケースに対する影響度の大きい空気調和機の冷房能力を増大させることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明の店舗集中管理装置は、上記各発明においてショーケースはオープンショーケースであることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明の空気調和機のショーケースへの影響度計測方法は、店舗に設置された複数台のショーケースの庫内冷却運転を停止した状態で、店舗に設置された複数台の空気調和機のうちの何れかを運転し、そのときの各ショーケースの庫内温度の変化を計測することにより、空気調和機のショーケースに対する影響度を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明の店舗集中管理装置によれば、店舗に設置された複数台のショーケース及び空気調和機の運転を一括して管理する店舗集中管理装置は、各ショーケースの庫内温度を計測する庫内温度計測部と、ショーケースの庫内冷却運転を停止した状態で、何れかの空気調和機を運転したときの各ショーケースの庫内温度の変化を計測する影響度計測部と、この影響度計測部が計測した空気調和機のショーケースに対する影響度を記憶する影響度記憶部と備えているので、既存の機器を利用して店舗に設置された空気調和機のショーケースに対する影響度を取得することが可能となる。
【0015】
そして、この影響度はショーケースと空気調和機の店舗における位置情報に相当するので、これにより、従来の如く手作業で位置情報を設定する必要が無くなり、GPSやRFIDタグ等の機器を用いた位置検索も不要となるので、安価で簡便な店舗内の省エネ運転を実現することが可能となる。
【0016】
この場合、請求項2の発明の如くショーケースの庫内冷却状態が悪化した場合、影響度記憶部に記憶された当該ショーケースに対する影響度の大きい空気調和機の冷房能力を増大させることにより、エネルギー効率の高い空気調和機でショーケースの庫内を冷却することが可能となり、店舗における消費電力を効果的に削減することが可能となる。
【0017】
更に、請求項3の発明の如くショーケースの庫内冷却状態に応じて、冷房能力を増大させる影響度の大きい空気調和機の台数を調整すれば、空気調和機により一層効果的にショーケースの庫内冷却を実現することが可能となる。
【0018】
また、この場合請求項4の発明の如く庫内冷却状態が悪化したショーケース近傍のショーケースの庫内冷却能力を低下させれば、当該近傍のショーケースで発生する庫内の過冷却も未然に回避することが可能となる。
【0019】
また、請求項5の発明の如くショーケースの除霜を行う場合に、影響度記憶部に記憶された当該ショーケースに対する影響度の大きい空気調和機の冷房能力を増大させれば、除霜による庫内温度上昇を抑制して、商品の劣化を抑制若しくは回避することが可能となる。
【0020】
そして、上記は請求項6の発明の如きオープンショーケースの場合に特に有効である。
【0021】
請求項7の発明の空気調和機のショーケースへの影響度計測方法によれば、店舗に設置された複数台のショーケースの庫内冷却運転を停止した状態で、店舗に設置された複数台の空気調和機のうちの何れかを運転し、そのときの各ショーケースの庫内温度の変化を計測することにより、空気調和機のショーケースに対する影響度を計測するので、同様に既存の機器を利用して店舗に設置された空気調和機のショーケースに対する影響度を取得することが可能となる。
【0022】
同じくこの影響度はショーケースと空気調和機の店舗における位置情報に相当するので、これにより、従来の如く手作業で位置情報を設定する必要が無くなり、GPSやRFIDタグ等の機器を用いた位置検索も不要となるので、安価で簡便な店舗内の省エネ運転を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した一実施例の店舗集中管理装置の構成図である。
【図2】図1の店舗集中管理装置の統合コントローラの構成図である。
【図3】図2の統合コントローラの影響度計測動作に関する機能ブロック図である。
【図4】図2の統合コントローラの庫内冷却補助動作に関する機能ブロック図である。
【図5】図3の統合コントローラの動作を説明するフローチャートである。
【図6】図3の統合コントローラの影響度記憶部に構成された影響度テーブルを示す図である。
【図7】図3の統合コントローラの影響度記憶部に構成されたもう一つの影響度テーブルを示す図である。
【図8】図3の統合コントローラの動作を説明するための影響度テーブルを示す図である。
【図9】同じく図3の統合コントローラの動作を説明するための影響度テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。実施例の店舗集中管理装置1は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗ST設置されたショーケースC1〜Cm、冷凍機R、店舗STの店内空調機ACや図示しない店舗照明の制御を統合して実行する店舗統合管理システムと称されるものである。
【0025】
図1において、店舗STの店内(売場内)には複数台のショーケースC1〜Cmが設置されており、更にこれらショーケースC1〜Cmに冷媒を供給する冷凍機Rが店外、或いは、店舗の機械室等に設置されている。冷凍機Rは冷媒を圧縮して吐出する図示しないコンプレッサや、該コンプレッサから吐出された高温高圧の冷媒を空冷・水冷等することにより凝縮するコンデンサ等を備えている。
【0026】
ショーケースC1〜Cmは、例えば庫内(陳列室)の前面や側面、或いは、上面が開口した所謂オープンショーケースである。各ショーケースC1〜Cmには図示しない蒸発器や減圧装置がそれぞれ設けられ、それらは冷媒配管2により冷凍機Rに接続されて周知の冷媒回路を構成する。そして、この蒸発器で冷媒を蒸発させ、蒸発による吸熱作用で冷却された冷気を図示しない送風機で庫内に循環することで、各ショーケースC1〜Cmの庫内を所定の目標温度に冷却する冷却運転を行うものである。
【0027】
店内空調機ACは、店内の天井に複数台取り付けられた空気調和機としての室内機A1からAnとこれらに冷媒を供給する図示しない室外機とから構成されている。尚、実施例では空気調和機として室内機A1〜Anを用いているが、それに限らず、複数の独立した空気調和機が天井に取り付けられていても良いものとする。
【0028】
これらショーケースC1〜Cmや冷凍機R、室内機A1〜Anは、機器コントローラ3をそれぞれ有しており、これら機器コントローラ3により運転が制御される。各機器コントローラ3は通信線4により統合コントローラ6に接続され、これらにより店舗集中管理装置1のネットワークが構成される。各ショーケースC1〜Cmには庫内温度を計測する庫内温度計測部としての庫内温度センサ7がそれぞれ取り付けられており、自らの機器コントローラ3に接続されている。尚、室内機A1〜Anにも吸込空気温度等を計測する図示しない温度センサが取り付けられている。
【0029】
この統合コントローラ6は店舗STに設置されている。図2はこの統合コントローラ6の構成図を示している。統合コントローラ6は制御機能を司るCPU21と、記憶装置としてのROM22、RAM23と、店舗ST内の各機器コントローラ3と通信線4により接続される通信I/F26と、LAN等のネットワークを介して外部の遠隔管理システムに接続されるネットワークI/F24から構成されている。統合コントローラ6では各ショーケースC1〜Cmや冷凍機R、室内機A1〜Anの制御を行うための各種設定値等(目標温度、警報設定等)のデータを入力可能とされており、これらのデータはRAM23に記憶されると共に、通信I/F26より通信線4を介して各ショーケースC1〜Cmや冷凍機R、室内機A1〜Anの機器コントローラ3にそれぞれ配信される。
【0030】
そして、各ショーケースC1〜Cnの機器コントローラ3は受信した目標温度のデータと庫内温度センサ7が計測した庫内温度に基づいて各ショーケースC1〜Cnの運転を制御する。冷凍機Rの機器コントローラ3も同様に受信したデータに基づいて冷凍機Rの運転を制御し、室内機A1〜Anの機器コントローラ3も同様に受信した目標温度のデータと吸込空気温度等に基づいて各室内機A1〜Anの運転を制御する。尚、店内照明にも同様の機器コントローラが設けられ、統合コントローラ6から受信したデータに基づいて点/消灯制御される。
【0031】
更に、統合コントローラ6のCPU21は通信I/F26を介して定期的に各機器コントローラ3にポーリングを行い、各機器コントローラ3は、これに応えて各ショーケースC1〜Cmや冷凍機R、室内機A1〜ANの運転状態に関するデータ(庫内温度や吸込空気温度等の計測データ、警報データ)を統合コントローラ6に送信する(店内照明も同様に点/消灯状態に関するデータを送信する)。統合コントローラ6は受信したデータをRAM23に記憶し、収集したデータを保存して管理する。
【0032】
尚、各ショーケースA1、A2等で障害が生じて警報が発生した場合、定期的なポーリングによらず、警報が発生した時点で機器コントローラ3から統合コントローラ6に警報データが通知される。統合コントローラ6ではこれらのデータを表示することができるので、これにより、統合コントローラ6は店舗ST内の各機器の状態監視と制御を実行し、複数の機器を一括して管理することができるように構成されている。
【0033】
また、統合コントローラ6のCPU21は各ショーケースC1〜Cmの庫内冷却状態が悪化して庫内温度が目標温度より高くなったような場合、後に詳述するように店内空調機ACの室内機A1〜Anの運転を制御して冷房による冷気をショーケースC1〜Cmの庫内に送り込み、庫内温度を下げる、即ち、ショーケースC1〜Cmの庫内冷却を室内機A1〜Anで補助する動作を実行する。その理由は、ショーケースC1〜Cmと冷凍機Rから成るショーケース冷却装置に比べて店内空調機ACの方がエネルギー効率が高いからである。
【0034】
但し、室内機A1〜AnによりショーケースC1〜Cmの庫内冷却補助を行うためには、基本的にはショーケースC1〜Cmの近くの室内機A1〜Anを利用することになるので、各ショーケースC1〜Cmと各室内機A1〜Anの店内におけるグルーピングを示すレイアウトの設定が必要となる。
【0035】
統合コントローラ6は係る店舗レイアウトに関する情報も保持しているものであるが、従来ではユーザが手作業で設定したり、GPSやRFIDタグ等の機器を用いて設定していたため、煩雑であり、コストも高騰していた。
【0036】
そこで、本発明では既存の機器を用いて各ショーケースC1〜Cmと各室内機A1〜Anのグルーピングを自動的に設定するシステムを提供する。図3は係るグルーピングを行うための後述する影響度計測動作に関する統合コントローラ6の機能ブロック図を示し、図4は店内空調機ACによるショーケースの庫内冷却補助に関する統合コントローラ6の機能ブロック図を示している。尚、図3と図4において同一符号で示すものは同一の機能を示すものとする。
【0037】
図3において庫内温度取得部11は、各ショーケースC1〜Cmの庫内温度センサ7が計測した庫内温度を各ショーケースC1〜Cmの機器コントローラ3から取得する。影響度計測部27は、この庫内温度取得部11が取得した各ショーケースC1〜Cmの庫内温度に基づき、各室内機A1〜Anの各ショーケースC1〜Cmに対する影響度を計測する影響度計測動作を実行する。影響度記憶部12は、この影響度計測部27が計測した各室内機A1〜Anの各ショーケースC1〜Cmに対する影響度を記憶する。
【0038】
図4において、グループ制御部17は影響度記憶部12に記憶された影響度に基づいて各ショーケースC1〜Cmとグルーピングされる室内機A1〜Anを用いて後述する庫内冷却補助動作を実行するものであり、機器特定部13と機器動作決定部14とから構成される。機器特定部13は各ショーケースC1〜Cmの目標温度(庫内温度設定値)と庫内温度との差から庫内冷却補助のための制御対象となる室内機A1〜An、及び、当該制御によって制御状態を変更するショーケースC1〜Cmを特定する。機器動作決定部14は機器特定部13で特定された室内機A1〜AnやショーケースC1〜Cmに対して目標温度(空調温度設定値)を下げる、或いは、後述するように目標温度(庫内温度設定値)を上げる等の制御指示を決定する。指示送信部16はグループ制御部17の機器動作決定部14で決定された制御指示を当該室内機A1〜AnやショーケースC1〜Cmの機器コントローラ3に対して送信する。
【0039】
(1)影響度計測動作
次に、統合コントローラ6が実行する上記影響度計測動作について図5のフローチャートを参照しながら説明する。統合コントローラ6の影響度計測部27(図3)は、店舗STに各機器が据え付けられて影響度計測動作の指示が入力されると、図5のステップS1でカウンタiを1に設定する。尚、この影響度計測動作では、各ショーケースC1〜Cmや室内機A1〜An、統合コントローラ6の電源は投入されているものの、機器コントローラ3及び庫内温度センサ7以外は動作を停止しているものとする。特に、統合コントローラ6は冷凍機Rの機器コントローラ3に対して運転停止、即ち、各ショーケースC1〜Cmへの冷媒供給の停止を指示する。従って、各ショーケースC1〜Cmの庫内冷却運転は停止している。尚、本実施例では全てのショーケースC1〜Cmへの冷媒供給を停止しているが、これに限らず、影響度を計測する対象となる任意のショーケースについてのみ冷媒供給を停止するようにしても良い。これと同様に、以下の各ステップについても当該任意のショーケースについてのみ実施するようにしても良い。
【0040】
また、フローチャートにおいてカウンタiが1とは室内機A1を意味し、2は室内機A2、nは室内機Anを意味する。即ち、ステップS1では室内機A1が影響を与える側の機器として設定される。次にステップS2で全ての室内機A1〜Anを停止し、ステップS3で全てのショーケースC1〜Cmの庫内温度が安定しているか否か判断する。影響度計測動作開始当初で、何れかのショーケースC1〜Cmの庫内温度が未だ安定していない場合には、ステップS9に進んで一定時間待機し、ステップS3に戻って以後全てのショーケースC1〜Cmの庫内温度が安定するまで待機する。
【0041】
そして、ステップS3で全ショーケースC1〜Cmの庫内温度が安定した場合、ステップS4に進んで統合コントローラ6の庫内温度取得部11は全ショーケースC1〜Cmの機器コントローラ3から庫内温度センサ7が計測した各ショーケースC1〜Cmの現在の庫内温度T1を取得する。
【0042】
次に、ステップS5で前記室内機A1のみを運転して一定時間(例えば、1時間)待機する。この室内機A1の運転により吹き出された冷気が各ショーケースC1〜Cmの庫内に進入し、或いは、その周囲の空間温度を低下させて冷却影響を与えることになる。次に、一定時間待機した後、図3の統合コントローラ6の庫内温度取得部11はステップS6で再度全ショーケースC1〜Cmの機器コントローラ3から庫内温度センサ7が計測した各ショーケースC1〜Cmの一定時間待機した後の庫内温度T2を取得する。
【0043】
そして、図3の統合コントローラ6の影響度計測部27は、ステップS7でこれら取得した庫内温度T2−庫内温度T1の絶対値、即ち、温度変化の絶対値を図3の影響度記憶部12に格納し、ステップS8で全室内機A1〜Anについて終了したか判断する。終了していなければステップS10でカウンタiを一つ繰り上げ、即ち、次の室内機A2を影響を与える側の機器として設定した後、ステップS2に戻り、これをカウンタiがnになるまで繰り返す。
【0044】
そして、ステップS8で全室内機A1〜Anについて上記動作を実行した場合(カウンタがn)、影響度計測部27は影響度計測動作を終了する。尚、本実施例では全室内機A1〜Anについて影響度を計測したが、それに限らず、任意の室内機についてのみ影響度を計測するようにしても良い。図6はこのようにして計測された影響度テーブルの例を示しており、統合コントローラ6の影響度記憶部12に構成される。このテーブルからも明らかなように、室内機A1を運転した場合にショーケースC3の庫内温度は3deg低下しており、影響度は大きい。即ち、室内機A1はショーケースC3の近くに位置していることになる。また、ショーケースC2はショーケースC3に隣接(近傍)しているため、室内機A1の影響はショーケースC2にも出てショーケースC2では2deg低下していることが分かる。
【0045】
また、ショーケースC3は室内機Anからも次に影響を受けており、2deg低下している。即ち、室内機Anも室内機A1の次にショーケースC3の近くに位置していることが分かる。尚、室内機AnはショーケースC2に最も影響を与え、4deg低下している。また、室内機A3はショーケースC1に最も影響を与え、これも4deg低下していることが分かる。
【0046】
尚、上記では一台の室内機A1〜Anを運転した場合の各ショーケースC1〜Cmの庫内温度の変化を計測したが、上述したように室内機Anも室内機A1の次にショーケースC3に影響を与えているので、これらを同時に運転したときのショーケースC3に与える影響度を計測することも有効である。図7はこの場合に影響度記憶部12に格納されるもう一つの影響度テーブルの例を示している。
【0047】
この図で示す一例はショーケースC3のみを対象として室内機A1とAnを同時に運転した場合の庫内温度の変化(庫内温度T2−庫内温度T1の絶対値)であり、図6の場合よりも更に冷却影響度は大きく、ショーケースC3の庫内温度は4deg低下していることが分かる。そして、これも図6の影響度を参考にして影響度が大きいと考えられる室内機A1〜Anの種々の組み合わせを各ショーケースC1〜Cmに対して実行し、テーブルを構成するものである。
【0048】
このような方法により統合コントローラ6は、既存の庫内温度センサ7等の機器を利用して店舗STに設置された店内空調機ACの各室内機A1〜Anの各ショーケースC1〜Cmに対する影響度を自動的に取得する。そして、この影響度はショーケースC1〜Cmと室内A1〜Anの店舗STにおける位置情報に相当するので、これにより、従来の如く手作業で位置情報を設定する必要が無くなり、GPSやRFIDタグ等の機器を用いた位置検索も不要となるので、安価で簡便な店舗内の省エネ運転を実現できることになる。
【0049】
尚、上記では庫内温度T2−庫内温度T1の絶対値をそのまま影響度テーブルに格納し、影響度としたが、それに限らず、庫内温度の変化に比例する他のパラメータ又は庫内温度が一定温度(例えば1℃)低下するまでの時間を用いて影響度テーブルを構成しても良い。
【0050】
(2)庫内冷却補助動作
次に、このように取得した影響度記憶部12内の影響度を利用して室内機A1〜AnによりショーケースC1〜Cmの庫内を冷却補助する動作について説明する。前述したようなショーケースC1〜Cmの冷却運転中に、統合コントローラ6の図4の機器特定部13は、各ショーケースC1〜Cmの目標温度と現在の庫内温度を比較し、その差(温度差)が例えば所定の閾値1より大きいか、閾値2より大きいか否かを判断する。尚、閾値2は閾値1より大きいものとする。
【0051】
例えば、商品が大量に補充された等の何らかの要因によってショーケースC3の庫内冷却状態が悪化し、現在の庫内温度が目標温度より高くなってその温度差(庫内温度−目標温度)が閾値1より大きいが、閾値2以下となった場合、機器特定部13は当該ショーケースC3に対して最も影響度が大きい室内機A1を図8に示す影響度テーブルから検索し、庫内冷却補助のための制御対象に特定する。そして、図4の機器動作決定部14は当該室内機A1の目標温度を所定値下げる制御指示を決定し、図4の指示送信部16はこの制御指示を室内機A1に送信する。
【0052】
室内機A1の機器コントローラ3は、統合コントローラ6からの係る制御指示を受けて目標温度(空調温度設定値)を所定値下げる。これにより、室内機A1の冷房能力が増大するので、多量に吹き出されることになる冷房用の冷気がショーケースC3の庫内に進入し、或いは、その周囲の空間温度が低下することになり、ショーケースC3の庫内温度が低下していくことになる。
【0053】
これにより、エネルギー効率の高い店内空調機ACでショーケースC3の庫内を冷却することが可能となり、店舗STにおける消費電力を効果的に削減することが可能となる。
【0054】
一方、庫内温度が上昇度合いが大きく、目標温度との温度差が前記閾値2より大きい場合、図4の機器特定部13は室内機A1の次にショーケースC3に対して影響度が大きい室内機Anを図8に示す影響度テーブルから検索し、室内機A1と共に庫内冷却補助のための制御対象に特定する。これにより、室内機A1に加えて室内機Anの目標温度も所定値下げられることになり、二台の室内機A1及びAnの冷房能力が増大されてショーケースC3の庫内冷却を補助することにより、円滑に庫内温度は低下していくことになる。
【0055】
このようにショーケースC3の庫内冷却状態に応じて、冷房能力を増大させる影響度の大きい室内機A1〜Anの台数を調整することにより(実施例ではA1とAnの二台に増やす)、一層効果的にショーケースC3の庫内冷却を実現できる。
【0056】
(3)ショーケースの除霜時の動作
一方、各ショーケースC1〜Cmは統合コントローラ6からの指令等により、搭載されている蒸発器の除霜運転を実行する。この除霜運転は蒸発器への冷媒供給を停止した状態で前記送風機を運転する所謂オフサイクルデフが一般的である。その場合、蒸発器による庫内の冷却は停止するため、当然に庫内温度は上昇してしまうが、統合コントローラ6の機器特定部13は、除霜が開始されたショーケースC1〜Cmに影響度の大きい室内機A1〜An(ショーケースC3の場合には室内機A1やAn)を影響度テーブルから検索し、前述同様に機器動作決定部14で目標温度低下の制御指示を決定し、指示送信部16から送信して室内機の冷房能力を増大させる。
【0057】
このように、ショーケースC1〜Cmの除霜を行う場合にも、影響度記憶部12に記憶された影響度の大きい室内機A1〜Anの冷房能力を増大させれば、除霜によるショーケースC1〜Cmの庫内温度上昇を抑制して、商品の劣化を抑制若しくは回避することができるようになる。
【0058】
(4)隣接するショーケースの過冷却防止動作
ここで、上述の如く室内機A1やAnの冷房能力を増大させた場合、図9に示すようにショーケースC3の近傍のショーケースC2にも冷却影響が及ぶため、庫内冷却状態が悪化していないショーケースC2は、冷房能力が増大された室内機A1、Anからの冷房用の冷気の進入等により、過冷却される不都合が発生する。
【0059】
そこで、統合コントローラ6の機器特定部13は、前述の如く室内機A1やAnの冷房能力を増大させる場合、図9の影響度テーブルからショーケースC2も制御状態変更要の制御対象として特定する。そして、機器動作決定部14はショーケースC2の目標温度を一時的に上昇させる制御指示を決定し、指示送信部16からショーケースC2の機器コントローラ3に送信する。
【0060】
これにより、ショーケースC2では庫内冷却能力が一時的に低下することになるので、当該近傍のショーケースC2で発生する庫内の過冷却を未然に回避することができるようになる。
【符号の説明】
【0061】
1 店舗集中管理装置
3 機器コントローラ
6 統合コントローラ
7 庫内温度センサ(庫内温度計測部)
A1〜An 室内機(空気調和機)
AC 店内空調機
C1〜Cm ショーケース
R 冷凍機
ST 店舗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
店舗に設置された複数台のショーケース及び空気調和機の運転を一括して管理する店舗集中管理装置において、
前記各ショーケースの庫内温度を計測する庫内温度計測部と、
前記ショーケースの庫内冷却運転を停止した状態で、何れかの前記空気調和機を運転したときの各ショーケースの庫内温度の変化を計測する影響度計測部と、
該影響度計測部が計測した前記空気調和機の前記ショーケースに対する影響度を記憶する影響度記憶部と備えたことを特徴とする店舗集中管理装置。
【請求項2】
前記ショーケースの庫内冷却状態が悪化した場合、前記影響度記憶部に記憶された当該ショーケースに対する影響度の大きい前記空気調和機の冷房能力を増大させることを特徴とする請求項1に記載の店舗集中管理装置。
【請求項3】
前記ショーケースの庫内冷却状態に応じて、冷房能力を増大させる前記影響度の大きい空気調和機の台数を調整することを特徴とする請求項2に記載の店舗集中管理装置。
【請求項4】
庫内冷却状態が悪化した前記ショーケース近傍の前記ショーケースの庫内冷却能力を低下させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の店舗集中管理装置。
【請求項5】
前記ショーケースの除霜を行う場合、前記影響度記憶部に記憶された当該ショーケースに対する影響度の大きい前記空気調和機の冷房能力を増大させることを特徴とする請求項1に記載の店舗集中管理装置。
【請求項6】
前記ショーケースはオープンショーケースであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の店舗集中管理装置。
【請求項7】
店舗に設置された複数台のショーケースの庫内冷却運転を停止した状態で、前記店舗に設置された複数台の空気調和機のうちの何れかを運転し、そのときの各ショーケースの庫内温度の変化を計測することにより、前記空気調和機の前記ショーケースに対する影響度を計測することを特徴とする空気調和機のショーケースへの影響度計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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