説明

座屈拘束ブレース及び該座屈拘束ブレースを用いた建築構造物

【課題】座屈拘束ブレースを解体せずに芯材の状況を観察可能の座屈拘束ブレース及び該座屈拘束ブレースを用いた建築構造物の提供。
【解決手段】芯材(1)と芯材(1)を両側から互いに接触しないように挟みながら芯材の挟まれていない両側面が外から見えるように配置構成されている少なくとも1対の補強材(21)と1対の補強材を固定する固定材(3)とを備えており、また、固定材は、1対の補強材からそれぞれ側面が面している方向へ突出していると共に所定方向と平行するように延伸している2つ突出部(31)と2つ突出部の間で該2つ突出部を連結すると共に芯材の側面を間欠に遮蔽するように配置構成されている複数の連結部(32)とを備えており、この構成により、芯材の側面が外から見えるようになっていることを特徴とする座屈拘束ブレースを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は座屈拘束ブレース及び該座屈拘束ブレースを用いた建築構造物に関し、特に、該座屈拘束ブレースを解体せずにその芯材の状況を観察することができる座屈拘束ブレース及び該座屈拘束ブレースを用いた建築構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
座屈拘束ブレースは、建築構造物の骨組に組込まれ、地震等によってその骨組に大きな変形が生じたときに生じるせん断応力などの振動エネルギを吸収するダンパである。
【0003】
例えば図1に示されているように、座屈拘束ブレース9は、通常長手方向の圧縮荷重及び引張荷重を受けて伸縮するように塑性変形する鋼材から作成された芯材93と、長手方向の圧縮荷重を受けた芯材93が座屈するのを防止するべくブレース芯材を挟んで補強する座屈拘束用の補強材92とを備えている。
【0004】
このように構成された座屈拘束ブレースは、振動エネルギを吸収すると共に破損する恐れがあるため、定期的に点検する必要がある。一方、座屈拘束ブレースは通常建築構造物の壁の内側に配置されている上、補強材92を取り外さないと芯材93の状態がわからない場合が多い。しかし、補強材92はそもそも芯材93を強く拘束するものであるため、補強材92を取り外すことは困難であり、そのため、地震など芯材93が破損する恐れがある事件が起こったら、座屈拘束ブレースの状態を点検せずに、直ちに新品に取り替えることも少なくない。
【0005】
このため、特許文献1では補強材92を取り外すことがより簡単で、芯材93の状態を判断してから座屈拘束ブレース全体を取り替えるかどうかを判断することにより、座屈拘束ブレースの使用寿命を延ばすことができる座屈拘束ブレースを提供している。
【0006】
図2に示されているように、特許文献1は断面十字形の芯材93を4つの補強材92で挟む上、左右一つずつの挟持手段97で補強材92を挟持し、更に取り外し可能の固定ねじ98で2つの挟持手段97を固定する構成になっている。
【0007】
したがって、特許文献1が提供する座屈拘束ブレースは固定ねじ98を取り外すことにより座屈拘束ブレースを解体して芯材93の状態を点検して取り替える必要があるか否かを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】台湾特許公告第570083号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記座屈拘束ブレースは、固定ねじ98を取り外す可能性と、十分な拘束力を提供して芯材93の座屈変形を防ぐ機能を両立させようとするが、この2つの目標の中で1つしか達成できない恐れがある。すなわち、挟持手段97の十分な拘束力を提供するが、固定ねじ98の取り外し作業が困難且つ時間がかかる問題と、固定ねじ98の取り外し作業が簡単であるものの、十分な拘束力を提供することができない重大な問題とのいずれかが発生しやすい。
【0010】
この問題点に鑑みて、本発明は座屈拘束ブレースを解体せずにその芯材の状況を観察することができる座屈拘束ブレースを提供することによって、芯材に十分な拘束力を提供すると共に、簡単で芯材の状態を判断してから座屈拘束ブレース全体を取り替えるかどうかを判断することができる座屈拘束ブレース及び該座屈拘束ブレースを用いた建築構造物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明は、所定方向に沿って延伸してなる延伸部の両端に、接続用の接続部が形成され、且つ、全体が前記所定方向の圧縮荷重及び引張荷重を受けて伸縮するように塑性変形する鋼材から成っている芯材と前記芯材の前記圧縮荷重による座屈を防止するべく前記所定方向に沿って前記芯材の前記延伸部を両側から互いに接触しないように挟みながら前記延伸部の挟まれていない両側面が外から見えるように配置構成されている少なくとも1対の補強材と前記1対の補強材を固定する固定材とを備えており、また、前記固定材は、前記1対の補強材からそれぞれ前記側面が面している方向へ突出していると共に前記所定方向と平行するように延伸している2つ突出部と前記2つ突出部の間で該2つ突出部を連結すると共に前記延伸部の側面を間欠に遮蔽するように配置構成されている複数の連結部とを備えており、この構成により、前記延伸部の側面が外から見えるようになっていることを特徴とする座屈拘束ブレースを提供する。
【0012】
上記座屈拘束ブレースにおける前記連結部は、前記2つ突出部を挿通するように取り付けられている複数の固定ねじを備えているものが挙げられる。
【0013】
上記座屈拘束ブレースにおける前記補強材は、金属材料により前記所定方向に沿って延伸してなる管状体に形成されているものが挙げられる。
【0014】
上記座屈拘束ブレースにおける前記補強材は、前記管状体の内側に更に前記所定方向と直交している少なくとも1つの支持柱を有しているものが挙げられる。
【0015】
上記座屈拘束ブレースにおける前記補強材は、前記管状体の内側の空間内にコンクリートが充填されているものも挙げられる。
【0016】
上記座屈拘束ブレースにおける前記延伸部は、垂直プレートと該垂直プレートの左右両面の前記所定方向に沿って延伸する中心線からそれぞれ突出するように形成されている左、右水平プレートを有し前記所定方向と直交する断面が十字形になるように形成されており、更に、2対の前記補強材を有しており、第1対の補強材は前記左水平プレートを挟み、第2対の補強材は前記右水平プレートを挟んでおり、更に前記第1、第2対の補強材は互いに対応して前記垂直プレートを挟むように構成されることができる。
【0017】
上記座屈拘束ブレースにおける前記連結部は、前記2つ突出部を連結するはんだを備えていることができる。
【0018】
更に、本発明は上記座屈拘束ブレースを有している建築構造物であって、該建築構造物に前記座屈拘束ブレースが建築構造物の外側から見られる観察孔が設けられていると共に前記座屈拘束ブレースは前記観察孔から前記延伸部の露出している側面の状態が検査可能になるように配置されていることを特徴とする建築構造物をも提供する。
【発明の効果】
【0019】
上記構成により、本発明は芯材を外から見えるように補強材を配置構成するので、該座屈拘束ブレースを解体しなくてもその芯材の状況を観察することができる座屈拘束ブレース及び該座屈拘束ブレースを用いた建築構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来例の座屈拘束ブレースの側面図である。
【図2】従来例の座屈拘束ブレースの断面図である。
【図3】本発明の座屈拘束ブレースの使用状態例が示されている側面図である。
【図4】本発明の座屈拘束ブレースの第1の実施形態の構成が示されている説明図である。
【図5】本発明の座屈拘束ブレース及び該座屈拘束ブレースが取り付けられている建築構造物の構成が示されている説明図である。
【図6】本発明の座屈拘束ブレースの第2の実施形態の構成が示されている断面図である。
【図7】本発明の座屈拘束ブレースの第3の実施形態の構成が示されている断面図である。
【図8】本発明の座屈拘束ブレースの第4の実施形態の構成が示されている説明図である。
【図9】本発明の座屈拘束ブレースの第5の実施形態の構成が示されている断面図である。
【図10】本発明の座屈拘束ブレースの第6の実施形態の構成が示されている断面図である。
【図11】本発明の座屈拘束ブレースの第7の実施形態の構成が示されている断面図である。
【図12】本発明の座屈拘束ブレースの第8の実施形態の構成が示されている断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下は各図面に参照しながら本発明の各好ましい実施形態について詳しく説明する。
【0022】
図3、図4は本発明の座屈拘束ブレースの第1の実施形態であり、図3に示されているように、本発明の第1の実施形態は、所定方向7に沿って延伸してなる延伸部11の両端に、接続用の接続部12が形成され、且つ、全体が所定方向7の圧縮荷重及び引張荷重を受けて伸縮するように塑性変形する鋼材から成っている芯材1と、芯材1の前記圧縮荷重による座屈を防止するべく所定方向7に沿って芯材1の延伸部11を両側から互いに接触しないように挟みながら延伸部11の挟まれていない両側面が外から見えるように配置構成されている少なくとも1対の補強材21とを備えているので、接続部12で建築構造物の骨組51と接続するように組込まれ、地震等によってその骨組51に大きな変形が生じたときに振動エネルギを吸収することができる。
【0023】
また、図4に示されているように、本発明は金属材料により中空管状体に形成された1対の補強材21を固定する固定材3を左右1組ずつ備えており、各組の固定材3は、それぞれ1対の補強材21からそれぞれ前記側面が面している方向へ突出していると共に所定方向7と平行するように延伸している2つ突出部31と、2つ突出部31の間で該2つ突出部31を連結すると共に延伸部11の側面を間欠に遮蔽するように配置構成されている複数の連結部32とを備えている。この実施形態において、各連結部32は2つ突出部31を連結するはんだである。
【0024】
この構成により、延伸部11の側面は固定材3により完全に遮蔽されず、外から見えるようになっている。図5では図3、図4に示されている座屈拘束ブレースが建築構造物に組み込まれる様子が示されており、図示されているように、該建築構造物5には観察孔52が設けられており、該座屈拘束ブレースが建築構造物5の外側から観察孔52を通して観察できるようになっていると共に、該座屈拘束ブレースは延伸部11の露出している側面が観察孔52に臨むように配置され、建築構造物5の外側から観察孔52を通して延伸部11の露出している側面の状態が検査可能になっている。
【0025】
図6では本発明の座屈拘束ブレースの第2の実施形態が示されており、図示されているように、この実施形態において1対の補強材21は、それぞれ水平部211と垂直部212とを有していて中実でT字形断面を有するように形成されている。この構成により、補強材21は第1の実施形態と異なる機械的強度を有することができる。
【0026】
図7では本発明の座屈拘束ブレースの第3の実施形態が示されており、図示されているように、この実施形態において1対の補強材21はそれぞれ水平部211と該水平部211の両周縁から凸出するように形成されている2つの垂直部212とを有していて中実でコ字形断面を有するように形成されている。この構成により、補強材21は第1、第2の実施形態と異なる機械的強度を有することができる。
【0027】
図8では本発明の座屈拘束ブレースの第4の実施形態が示されており、図示のように、この第4の実施形態は第1の実施形態と類似する構成を有しており、各連結部32は2つ突出部31を連結するはんだを有する上、2つ突出部31を挿通するように取り付けられている複数の固定ねじ32aを備えている。この構成により、各連結部32の連結強度を強化することができる。
【0028】
図9では本発明の座屈拘束ブレースの第5の実施形態が示されており、図示されているように、この実施形態において1対の補強材21はそれぞれ中空の管状体に形成されている上、その中空部分にコンクリート22が充填されている。この構成により、補強材21は第1、第2、第3の実施形態と異なる機械的強度を有することができる。
【0029】
図10では本発明の座屈拘束ブレースの第6の実施形態が示されており、図示されているように、この実施形態において1対の補強材21はそれぞれ中空の管状体に形成されている上、その中空部分に複数の支持柱23が形成されている。この構成により、補強材21は第1〜第5実施形態と異なる機械的強度を有することができる。
【0030】
図11では本発明の座屈拘束ブレースの第7の実施形態が示されており、図示されているように、この実施形態において芯材1の延伸部11は、垂直プレート11aと該垂直プレート11aの左右両面の所定方向7に沿って延伸する中心線からそれぞれ突出するように形成されている左、右水平プレート11b、11cを有し、所定方向7と直交する断面が十字形になるように形成されている。
【0031】
更に、この実施形態では2対の補強材21を有しており、第1対の補強材21a、21aは左水平プレート11bを挟み、第2対の補強材21b、21bは前記右水平プレート11cを挟んでおり、更に、第1、第2対の補強材21a、21bは互いに上下対応して垂直プレート11aを挟んでいる。
【0032】
第1対の補強材21a、21aからそれぞれ左方へ突出すると共に所定方向7と平行するように延伸している2つ突出部31が設けられており、2つ突出部31の間で該2つ突出部31を連結すると共に延伸部11の側面を間欠に遮蔽するように配置構成されている複数の連結部としての固定ねじ33が貫通するように設けられている。
【0033】
第2対の補強材21b、21bからそれぞれ右方へ突出すると共に所定方向7と平行するように延伸している2つ突出部31が設けられており、2つ突出部31の間で該2つ突出部31を連結すると共に延伸部11の側面を間欠に遮蔽するように配置構成されている複数の連結部としての固定ねじ33が貫通するように設けられている。
【0034】
図12では本発明の座屈拘束ブレースの第8の実施形態が示されており、図示されているように、この実施形態は第4の実施形態と類似している構成を有していると共に、芯材1の延伸部11と1対の補強材21の間に、それぞれ強化プレート25が介在しており、強化プレート25の延伸部11および補強材21と異なる機械的特性を利用して延伸部11の座屈変形をより効率的に防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上記構成により、本発明は芯材を外から見えるように補強材を配置構成するので、該座屈拘束ブレースを解体しなくてもその芯材の状況を観察することができる座屈拘束ブレース及び該座屈拘束ブレースを用いた建築構造物を提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 芯材
11 延伸部
11a 垂直プレート
11b 左水平プレート
11c 右水平プレート
12 接続部
21 補強材
211 水平部
212 垂直部
21a 第1対の補強材
21b 第2対の補強材
22 コンクリート
23 支持柱
25 強化プレート
3 固定材
31 突出部
32 連結部
32a 固定ねじ
33 固定ねじ
5 建築構造物
51 骨組
52 観察孔
7 所定方向
9 座屈拘束ブレース
92 補強材
93 芯材
97 挟持手段
98 固定ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って延伸してなる延伸部の両端に、接続用の接続部が形成され、且つ、全体が前記所定方向の圧縮荷重及び引張荷重を受けて伸縮するように塑性変形する鋼材から成っている芯材と、
前記芯材の前記圧縮荷重による座屈を防止するべく前記所定方向に沿って前記芯材の前記延伸部を両側から互いに接触しないように挟みながら前記延伸部の挟まれていない両側面が外から見えるように配置構成されている少なくとも1対の補強材と、
前記1対の補強材を固定する固定材とを備えており、
また、前記固定材は、
前記1対の補強材からそれぞれ前記側面が面している方向へ突出していると共に前記所定方向と平行するように延伸している2つ突出部と、
前記2つ突出部の間で該2つ突出部を連結すると共に前記延伸部の側面を間欠に遮蔽するように配置構成されている複数の連結部とを備えており、
この構成より前記延伸部の側面が外から見えるようになっている、ことを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記連結部は前記2つ突出部を挿通するように取り付けられている複数の固定ねじを備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記補強材は、金属材料により前記所定方向に沿って延伸してなる管状体に形成されている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記補強材は前記管状体の内側に前記所定方向と直交している少なくとも1つの支持柱を有している、ことを特徴とする請求項3に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記補強材は前記管状体の内側の空間内にコンクリートが充填されている、ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項6】
前記延伸部は、垂直プレートと該垂直プレートの左右両面の前記所定方向に沿って延伸する中心線からそれぞれ突出するように形成されている左、右水平プレートを有し前記所定方向と直交する断面が十字形になるように形成されており、
更に、2対の前記補強材を有しており、第1対の補強材は前記左水平プレートを挟み、第2対の補強材は前記右水平プレートを挟んでおり、
更に前記第1、第2対の補強材は互いに対応して前記垂直プレートを挟んでいる、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つの請求項に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項7】
前記連結部は前記2つ突出部を連結するはんだを備えている、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つの請求項に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つの請求項に記載の座屈拘束ブレースを有している建築構造物であって、
該建築構造物に前記座屈拘束ブレースが建築構造物の外側から見られる観察孔が設けられていると共に、
前記座屈拘束ブレースは前記観察孔から前記延伸部の露出している側面の状態が検査可能になるように配置されている、ことを特徴とする建築構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−197660(P2012−197660A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108682(P2011−108682)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(503464192)
【Fターム(参考)】