説明

廃トナーカートリッジの処理方法及び装置

【課題】 廃トナーカートリッジの処理工程における粉塵発生の問題、そして可燃性粉塵による爆発の問題を解決し、作業環境を改善して、安全で、作業し易く、しかも経済的な処理方法及び装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 廃トナーカートリッジを送るベルトコンベヤー10と、このベルトコンベヤー10上に設置され、ベルトコンベヤー10上の所定空間を覆い、かつ高温の蒸気源に連結された、トナーを高温蒸気で溶融するトナー溶融装置20と、ベルトコンベヤー10上に設置され、前記トナー溶融装置20を通過した廃トナーカートリッジaを冷却する冷却装置30と、冷却された廃トナーカートリッジaを解砕する解砕装置60と、解砕装置60で解砕されたトナーカートリッジの解砕物をベルトコンベヤー上で搬送する間に人手によりプラスチック類と金属類とを選別する選別部70とで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー機やプリンター等で使用された廃トナーカートリッジの処理方法及びこの方法を実施する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コピー機やプリンター等に使用されているトナーカートリッジは、トナーが無くなると取り出されて廃棄処分に回される。このような廃トナーカートリッジは、プラスチックの部分と金属の部分とを含むので、そのままでは廃棄できず、プラスチック部品と金属部品とを分離する必要がある。従来、このような作業は、人の手により工具を使ってトナーカートリッジを分解し、プラスチック部品と金属部品とを分離している。また、機械的な方法によりプラスチック部品と金属部品とを分離する方法も採られている。この方法では、まず破砕機によりトナーカートリッジを破砕し、その後、磁選機等により選別を行っている。
【0003】
また、使用済みとはいってもカートリッジ内に多少のトナーが残留しており、破砕機内でトナーが粉塵化し、これが原因で爆発が誘発されるという問題もある。また爆発の恐れがなくても、粉塵の発生は選別作業者にとってわずらわしく、かつ危険なものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような粉塵発生の問題、そして可燃性粉塵による爆発の問題を解決し、作業環境を改善して、安全で、作業し易く、しかも経済的な処理方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決する手段として、まず第1に使用済みのトナーカートリッジを廃棄処理する方法として、使用済みの廃トナーカートリッジを解砕処理する前に、コンベヤベルト上を送られてくる廃トナーカートリッジ内の残留トナーを高温蒸気で加熱して溶融するトナー溶融工程を備え、廃トナーカートリッジ内に残留しているトナーの粉塵化を防止するようにした。
またこのような廃トナーカートリッジの処理方法において、カートリッジの大きさにもよるが、トナー溶融工程におけるトナーの溶融時間を個々の廃トナーカートリッジについて約5〜30分とし、廃トナーを溶融状態とし作業環境に害を及ぼさないようにした。
そして、このようにしてトナー溶融工程で溶融したトナーが付着した廃トナーカートリッジを冷却し、冷却されたトナーカートリッジを解砕し、安全な作業環境下で解砕されたトナーカートリッジをプラスチック類と金属類とに選別するようにした。
さらに、上述のごとき処理方法を実施する装置は、廃棄トナーカートリッジを送るベルトコンベヤーと、ベルトコンベヤー上に設置され、ベルトコンベヤー上の空間を覆い、かつ高温の蒸気源に連結された廃トナーカートリッジ内に残留しているトナーを高温蒸気で溶融するトナー溶融装置と、ベルトコンベヤー上に設置され、前記廃トナーカートリッジを常温まで冷却する冷却装置とからなっている。
さらにまた、前記処理装置は、廃トナーカートリッジを送るベルトコンベヤーと、
前記ベルトコンベヤー上に設置され、ベルトコンベヤー上の空間を覆い、かつ高温の蒸気源に連結され、廃トナーカートリッジ内に残留するトナーを高温蒸気で溶融するトナー溶融装置と、
前記ベルトコンベヤー上に設置され、前記トナー溶融装置を通過した廃トナーカートリッジを冷却する冷却装置と、
前記冷却されたトナーカートリッジを解砕する解砕装置と、
前記解砕装置で解砕されたトナーカートリッジの解砕物をベルトコンベヤー上で横送りする間に人手によりプラスチック類と金属類とを選別する選別用ベルトコンベヤーとからなっている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の廃トナーカートリッジの処理方法によれば、トナー溶融工程で加熱蒸気で加熱することにより、コンベヤベルト上を送られてくる廃トナーカートリッジ内に残留しているトナーは溶融し、トナーカートリッジ内に付着する。したがって粉塵の発生が防止され、後工程の処理において、安全となり、かつ選別作業等を安心して行うことができるようになった。
なお、トナー溶融工程におけるトナーの溶融時間を個々の廃トナーカートリッジについて約5〜30分とするのが望ましい。
また廃トナーカートリッジの処理方法は、加熱してトナーを溶融し、溶融トナーの付着したトナーカートリッジを冷却する工程と、この冷却されたトナーカートリッジを解砕する工程と、解砕されたトナーカートリッジをプラスチック類と金属類とに選別する工程とで構成したので、粉塵のない環境下で、トナーカートリッジを大まかに解砕し、人手により、安全な環境下でプラスチックと金属とを容易に選別処理することができる。
本発明の廃トナーカートリッジの処理装置は、廃トナーカートリッジを送るベルトコンベヤーと、前記ベルトコンベヤー上に設置され、ベルトコンベヤー上の空間を覆い、かつ高温の蒸気源に連結された廃トナーカートリッジ内に残留するトナーを高温蒸気で溶融するトナー溶融装置と、前記ベルトコンベヤー上に設置され、前記トナー溶融装置を通過した廃トナーカートリッジを常温まで冷却する冷却装置とから構成されているので、トナーの残留している廃棄トナーカートリッジを安全な環境下で連続処理することが可能となった。
また本発明の他の廃トナーカートリッジの処理装置は、廃トナーカートリッジを送るベルトコンベヤーと、
前記ベルトコンベヤー上に設置され、ベルトコンベヤー上の空間を覆い、かつ高温の蒸気源に連結された廃トナーカートリッジ内に残留するトナーを高温蒸気で溶融するトナー溶融装置と、前記ベルトコンベヤー上に設置され、前記トナー溶融装置を通過した廃トナーカートリッジを冷却する冷却装置と、前記冷却されたトナーカートリッジを解砕する解砕装置と、前記解砕装置で解砕されたトナーカートリッジの解砕物ベルトコンベヤー上で横送りする間に人手によりプラスチック類と金属類とを選別する選別用ベルトコンベヤーとから構成されているので、トナーが固まった状態で解砕でき、しかも選別作業も全くトナーによる粉塵のない環境下で作業できるので安全かつ能率的な作業が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図1〜図3を参照して、本発明の実施例について説明する。図1は本発明に係る廃トナーカートリッジ処理方法を示すブロック図、図2はこの方法を実施する装置におけるトナー溶融装置と冷却装置を示す。図3は図2のトナー溶融装置で溶融された廃トナーカートリッジの解砕装置及び解砕された廃トナーカートリッジの選別装置を示す。
【0008】
さて、本発明の処理方法は図1に示すように、残留トナーの付着している使用済みの廃トナーカートリッジaをベルトコンベヤーb上に投入し、これを高温蒸気が供給されるトナー溶融工程cに送り込まれる。
【0009】
トナー溶融工程においては、廃トナーカートリッジ内に残留しているトナー粉が加熱され溶融し、廃トナーカートリッジの内部に付着する。
【0010】
トナー溶融工程においては、個々の廃トナーカートリッジを5〜30分加熱できるよう予め設定されている。この時間の大小は廃トナーカートリッジの大きさにもより、小型のものでは5分程度、大型のものになると30分程度加熱するのが好ましい。
【0011】
トナー溶融工程を経た廃トナーカートリッジは、冷却工程dに送られる。ここでは前工程で加熱溶融されたカートリッジ内に付着しているトナーが約40℃にまで送風機等で冷却される。すると、トナーは溶融工程前の粉末状ではなくなり、粉塵化の恐れはなくなる。
【0012】
冷却工程dを経たトナーカートリッジは、解砕工程eに送られここでプラスチック片に解砕される。この工程では細かく粉状に粉砕されるのではなく、大きな塊の状態に砕く、即ち解砕される。
【0013】
解砕工程eを経た廃プラスチックは選別工程fに送られ、ここで人手によって金属と溶融トナーの付着したプラスチックに選別され別々に払い出される。
【0014】
以上述べたように、本発明の処理方法は、廃トナーカートリッジの処理に際し、解砕して選別するが、このとき樹脂を原料としているトナー粉が飛び、これが選別作業場に飛散するのを防止するとともに、廃トナー粉の爆発事故を未然に防止することができる。
【0015】
次に、廃トナーカートリッジの処理装置について説明する。
図1で10は廃トナーカートリッジを搬送するベルトコンベヤーである。20はベルトコンベヤー10の上部に隔設されたトナー溶融装置である。
【0016】
トナー溶融装置20はベルトコンベヤ上を送られてくる廃トナーカートリッジaが通過できるよう、その底部はベルトコンベヤーの上面から少し隔てられた底なしの箱体21よりなり、上部に高温蒸気の供給口22が複数個所設けられている。
【0017】
高温蒸気の供給口22から送り込まれた高温蒸気は箱体21内に充満され、この底部を搬送される廃トナーカートリッジaを加熱し、カートリッジ内に残留しているトナーを加熱溶融する。
【0018】
この溶融工程で蒸気は冷えて液化した水はベルトコンベヤー底部の排出口23より排水溝(図示しない)に排出される。
【0019】
なお前記供給口22より供給される高温蒸気は約100°あり、これは例えば産業廃棄物処理施設に設置される焼却炉付設の廃熱ボイラー(図示しない)から供給可能にすることができる。
【0020】
溶融工程でトナーが溶融された状態では、廃トナーカートリッジaは相当に熱くなっているので、次の冷却装置30に送られ、ここで約40℃程度に冷される。冷却装置としては、たとえば送風機等で送風し冷却させる。
【0021】
冷却されたならば、ベルトコンベヤーを経て運搬台車40に貯留され、ストックエリア50に貯えられる。
【0022】
次に図3はストックエリア50に貯っている廃トナーカートリッジaの解砕装置60で、前記ストックエリア50に貯溜されているものを、ベルトコンベヤー10を介し、その上方から投入される。
【0023】
ここでは、廃トナーカートリッジaは、粉砕即ち粉状にされるのでなく、たとえば対向するローラで押しつぶし、大きなプラスチック片の状態に大まかに解砕される程度でよい。この解砕状態で、廃トナーカートリッジaに含まれる金属類71とプラスチック類72は容易に選別することができる。
【0024】
かくして解砕装置60で解砕されたものは、次の選別部70に送られる。ここでは人手によりベルトコンベヤー10上で作業が行われる。
【0025】
この作業時に本発明のトナー溶融の効果が発揮される。即ち作業員はトナー粉塵が舞い上がらない状態で選別作業を行うことができる。
【0026】
選別工程で選別された金属類及びプラスチック類は図3の如くベルトのコンベヤー下部から払い出され、これらを除いたベルトコンベヤー上の混合物も運搬台車80により払い出される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の廃トナーカートリッジの処理方法を示すブロック図である。
【図2】廃トナーカートリッジの処理装置の一部を示す側面図である。
【図3】図2に続く処理装置の側面図である。
【符号の説明】
【0028】
a 廃トナーカートリッジ b ベルトコンベヤー
c 溶融工程 d 冷却工程
e 解砕工程 f 選別工程
10 ベルトコンベヤー 20 トナー溶融装置
21 箱体 22 蒸気供給口
23 排出口 30 冷却装置
40 運搬台車 50 ストックエリア
60 解砕装置 70 選別部
71 金属類 72 プラスチック類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの廃トナーカートリッジを処理する方法であって、
前記使用済みの廃トナーカートリッジを解砕処理する前に、前記コンベヤベルト上を送られてくる廃トナーカートリッジ内の残留トナーを高温蒸気で加熱溶融するトナー溶融工程を備え、廃トナーカートリッジ内に残留しているトナーの粉塵化を防止することを特徴とする廃トナーカートリッジの処理方法。
【請求項2】
使用済み廃トナーカートリッジのトナー溶融工程と、トナー溶融工程で溶融したトナーが付着した廃トナーカートリッジを冷却する工程と、該冷却された廃トナーカートリッジを解砕する工程と、解砕された廃トナーカートリッジをプラスチック類と金属類とに選別する工程とからなる廃トナーカートリッジの処理方法。
【請求項3】
トナー溶融工程におけるトナーの溶融時間が1個の廃トナーカートリッジについて約5〜30分である請求項2記載の廃トナーカートリッジの処理方法。
【請求項4】
廃トナーカートリッジを送るベルトコンベヤーと、
前記ベルトコンベヤー上に設置され、ベルトコンベヤー上の空間を覆い、かつ高温の蒸気源に連結された廃トナーカートリッジ内に残留するトナーを高温蒸気で溶融するトナー溶融装置と、
前記ベルトコンベヤー上に設置され、前記トナー溶融装置を通過した廃トナーカートリッジを常温まで冷却する冷却装置とからなる廃トナーカートリッジの処理装置。
【請求項5】
廃トナーカートリッジを送るベルトコンベヤーと、
前記ベルトコンベヤー上に設置され、ベルトコンベヤー上の空間を覆い、かつ高温の蒸気源に連結された廃トナーカートリッジ内に残留するトナーを高温蒸気で溶融するトナー溶融装置と、
前記ベルトコンベヤー上に設置され、前記トナー溶融装置を通過した廃トナーカートリッジを冷却する冷却装置と、
前記冷却された廃トナーカートリッジを解砕する解砕装置と、
前記解砕装置で解砕されたトナーカートリッジの解砕物をベルトコンベヤー上で横送りする間に人手によりプラスチック類と金属類とを選別する選別用ベルトコンベヤーとからなる廃トナーカートリッジの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−23474(P2008−23474A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200284(P2006−200284)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(591284003)株式会社エコ計画 (8)
【Fターム(参考)】