説明

廃プラスチックの熱分解処理装置

【課題】処理時間を短縮可能な熱分解処理装置を提供する。
【解決手段】廃プラスチックを熱分解するための熱分解処理装置であって、廃プラスチックを収容する熱分解槽と、熱分解槽内に設けられており、熱分解槽内の廃プラスチックを加熱する加熱手段と、熱分解槽内の温度を調整するために加熱手段の加熱量を制御する制御手段と、を備えた熱分解処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックの熱分解処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型経済社会を形成するための取り組みがさまざまな分野で行われ始め、廃プラスチックについてもそのリサイクルの必要性が高まっている。廃プラスチックのリサイクル処理の一つとして、廃プラスチックから油を取り出す油化という処理が知られている。この油化処理では、熱分解処理装置に備えられた熱分解槽に廃プラスチックを投入し、熱分解槽を外側から加熱することで熱分解槽内の廃プラスチックを加熱分解して熱分解ガスを生成し、その生成した熱分解ガスを冷却して油を得ている。このような油化処理が施される廃プラスチックのうち、主に医療関係機関より排出され、いわゆる感染医療廃棄物に分類されるものは、熱分解処理に先立って滅菌処理を行う必要がある。感染医療廃棄物に分類される廃プラスチックは、滅菌処理装置によって滅菌された後、滅菌処理装置から熱分解槽へと移され、熱分解層内で加熱分解される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第415923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような油化処理においては、熱分解槽の容量が十分でないため、滅菌装置によって滅菌処理された廃プラスチックをできるだけ多く熱分解槽に投入することができるよう、廃プラスチックを熱分解槽に移す前に破砕装置で破砕し、その後減容する必要がある。また、廃プラスチックを破砕する際、廃プラスチックに金属が混入していると破砕装置が詰まりによって運転停止したり故障したりする可能性があるため、事前に廃プラスチックから金属を分離及び除去する必要があった。このように、従来の熱分解処理装置においては、処理対象の廃プラスチックに対して金属分離、破砕、及び減容といった前処理を行う必要があるため、油化処理全体としての処理時間が長くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、処理時間を短縮可能な熱分解処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱分解処理装置は、上記課題を解決するためになされたものであり、廃プラスチックを熱分解するための熱分解処理装置であって、廃プラスチックを収容する熱分解槽と、前記熱分解槽内に設けられており、前記熱分解槽内の廃プラスチックを加熱する加熱手段と、前記熱分解槽内の温度を調整するために前記加熱手段の加熱量を制御する制御手段と、を備えている。
【0007】
本発明に係る熱分解処理装置は、加熱手段が熱分解槽内に設けられていることにより、熱分解槽の外に加熱手段が設けられていた従来の熱分解装置よりも熱分解槽内の温度上昇速度が速くなるため、従来の熱分解装置と比較して加熱時間を延ばすことなく熱分解槽の容量を拡大することができる。このため、廃プラスチックを熱分解槽内に原型のまま大量に投入することができ、熱分解槽内において廃プラスチックの滅菌処理及び熱分解処理を連続して行うことが可能となる。このように、本発明に係る熱分解処理装置は、金属分離、破砕、及び減容といった廃プラスチックの前処理工程と滅菌処理装置から熱分解処理装置への廃プラスチックの移動工程とを省くことができるため、処理時間を短縮することができ、経費の削減をすることができる。
【0008】
また、上記熱分解処理装置において、加熱手段は、通電により自身が加熱される過熱蒸気供給管であることが好ましい。この過熱蒸気供給管は、自身が加熱されることで内部に供給される飽和蒸気を過熱蒸気へと変化させ、この過熱蒸気を熱分解槽内に放出する。この過熱蒸気及び過熱蒸気供給管自身の熱により、熱分解槽内をより効率よく加熱することができる。
【0009】
また、上記熱分解処理装置は、過熱蒸気供給管を通電することのみで、乾熱滅菌装置としての使用ができる。
【0010】
また、上記熱分解処理装置は、過熱蒸気を冷却するための冷却器を前記熱分解槽の外側に備えていてもよい。この冷却器は、熱分解槽内から排出された余剰の過熱蒸気を冷却凝縮して熱分解槽内に戻すことができる。この構成によれば、熱分解槽内に送り込まれる過熱蒸気により熱分解槽内が高圧になるのを防止することができる。
【0011】
また、上記熱分解処理装置は、回転軸が熱分解槽の内側底面に平行に延びる攪拌器を備えていてもよい。この攪拌器によって熱分解槽内の廃プラスチックを攪拌することで、熱分解処理後の廃プラスチック、木片・紙屑等の有機物の残渣を粉状にすることができるとともに、熱分解槽内をより効率よく加熱することができる。
【0012】
上記攪拌器は、熱分解槽に形成された廃プラスチックの排出口に向かって廃プラスチックを運搬可能なよう構成されている。この構成によれば、熱分解槽内における熱分解後の廃プラスチックを熱分解槽の外に効率よく排出することができる。
【0013】
また、上記熱分解処理装置において、制御手段は、熱分解槽内の温度が廃プラスチックを滅菌するための第1の温度及び廃プラスチックを油化するための第2の温度となるよう、加熱手段の加熱量を制御することができる。
【0014】
上記制御手段は、さらに、熱分解槽内の温度が廃プラスチック、及び木片・紙屑等の有機物を炭化するための第3の温度となるよう、加熱手段の加熱量を制御してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る熱分解処理装置の正面断面図である。
【図2】本実施形態に係る熱分解処理装置の平面図である。
【図3】本実施形態に係る熱分解処理装置の左側面図である。
【図4】図1のA−A断面図である。
【図5】本実施形態に係る熱分解処理装置の右側面図である。
【図6】本実施形態に係る冷却器の正面拡大図である。
【図7】本実施形態に係る廃プラスチック油化処理システムの全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る熱分解処理装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態に係る熱分解処理装置1は、図1に示すように、熱分解槽2、この熱分解槽2内に過熱蒸気を導入するための過熱蒸気供給管3、及び過熱蒸気を冷却凝縮するための冷却器4(冷却手段)を備えている。
【0019】
熱分解槽2は、略直方体状であり、内部に廃プラスチックを収容可能なよう中空となっている。図2に示すように、この熱分解槽2の上面には、廃プラスチックを投入するために開閉可能な蓋部21、及び廃プラスチックから発生する熱分解ガスを排出するための排出管23が設けられており、排出管23には熱分解ガスの流量を調節するための電動ダンパ24が取り付けられている。また、熱分解槽2の上面には、安全弁25や、熱分解槽2内に冷却水のシャワーを供給するための冷却シャワー供給口26が設けられて
いる。図2及び図3に示すように、熱分解槽2の左側面には、熱分解処理後に生成される炭化物であるいわゆる残渣を取り出すために、開閉可能な2つの扉部27(排出口)が設けられ、また、熱分解槽2内に冷却用の窒素ガスを注入するための窒素ガス注入口28が形成されている。熱分解槽2の下方には、図1に示すように、熱分解槽2を冷却するための送風機6が設置されている。
【0020】
図4に示すように、熱分解槽2には、熱分解処理中に廃プラスチックを攪拌するための2つの攪拌器5が設けられている。攪拌器5は、熱分解槽2の底面に平行に延びる回転軸51を有しており、この回転軸51は、周囲に複数の羽根53が取り付けられ、モータ52により双方向に回転可能となっている。攪拌器5は、回転軸51がモータ52により一方向に回転すると熱分解槽2内の廃プラスチックを攪拌し、回転軸51が逆方向に回転すると熱分解槽2内の廃プラスチックを扉部27側に向かって運搬するよう構成されている。また、図1及び図4に示すように、熱分解槽2内には、熱分解槽2内の圧力を測定するための圧力計7、及び熱分解槽2内の熱を逃がさないようにするための断熱材8が設けられている。
【0021】
過熱蒸気供給管3は、図1及び図4に示すように、熱分解槽2内に設けられており、熱分解槽2内の前側壁面及び後側壁面において上下で折り返すように配置されている。過熱蒸気供給管3は、通電により最高900℃まで加熱されるいわゆるヒータ管として構成され、後述する電気貫流ボイラ300から送られ内部を通過する飽和蒸気を200〜750℃の過熱蒸気に変化させる。この過熱蒸気供給管3の加熱量は、シーケンサ内蔵型の操作盤9(制御手段)によって自動制御される。過熱蒸気供給管3の材質としては、高温下における耐食性を有するものが好ましく、例えば、ニッケルクロム合金を使用することができる。ニッケルクロム合金は、特に限定されるものではないが、ニッケルを58〜63%、クロムを21〜25%含有するものが好ましく、例えば、インコネル(登録商標)601である。また、熱分解槽2の容量が4.16mの場合、過熱蒸気供給管3の大きさは、特に限定されるものではないが、外径26.7mm、内径21.3mm、長さ15〜18mであることが好ましく、例えば、配管サイズ15Aである。
【0022】
図5に示すように、熱分解槽2の右側面には4つの冷却器4が取り付けられている。図6に示すように、冷却器4は二重管である冷却管42を備えており、この冷却管42には、内管と外管との間に冷却水を供給するための水供給口421、及びこの冷却水を排出するための水排出口422が設けられている。冷却管42は、熱分解槽2内の過熱蒸気を第1の導管41aを介して内管に導入し、この過熱蒸気を内管と外管との間を流れる冷却水によって冷却凝縮する。その後、冷却管42は、冷却凝縮されて水となった過熱蒸気を第2の導管41bを介して熱分解槽2内へと戻す。第1の導管41aには熱分解槽2内からの過熱蒸気の排出を停止するための電磁弁43が設けられており、第2の導管41bには凝縮後の過熱蒸気の逆流を防止するためのチャッキ弁44が設けられている。
【0023】
上述したように構成された熱分解装置1は、図7に示すように、廃プラスチック油化処理システム100の最上流に配置されている。熱分解処理装置1には、水タンク200内に貯蔵された水を内部に導入して加熱することで飽和蒸気を発生させるための電気貫流ボイラ300が接続されている。熱分解処理装置1の下流には、ゼオライト触媒等によって熱分解ガスを改質するための触媒塔500が配置されており、この触媒塔500と熱分解処理装置1との間には、熱分解ガスを水酸化カルシウム液によって中和して熱分解ガス中の塩素を除去するためのスクラバー400が設けられている。なお、スクラバー400においては還元剤としてハイポ(チオ硫酸ナトリウム)液が使用される。触媒塔500の下流には、熱分解ガスを冷却凝縮して油を生成するための凝縮装置600が配置されている。この凝縮装置600は、2つの冷却タンク601を備えており、この2つの冷却タンク601の外側面にはクーリングタワー602によって冷却された冷却水が流される。さらに、凝縮装置600の下流には、生成された油から水を分離するための遠心分離機700が配置されている。この遠心分離機700によって水が分離された油は、第1のFAフィルタ801を介して油タンク800に貯蔵され、油から分離された水は第2のFAフィルタ201を介して水タンク200に貯蔵される。また、凝縮装置600で凝縮されないいわゆるオフガスは、オフガス洗浄タンク901で苛性ソーダ液によって洗浄され、オフガスタンク902に一旦収容された後、オフガス浄化器903でPIPチタン自然触媒により、浄化される。その後、オフガスは、オフガス浄化装置900で光触媒である酸化チタン光触媒セラミックフィルタによって殺菌され、排気ダクト904より大気中に排気される。
【0024】
次に、上述したように構成された熱分解処理装置1、及びこの熱分解処理装置1が設置された廃プラスチック油化処理システム100の作動方法について説明する。
【0025】
まず、排出管23の電動ダンパ24及び冷却器4の電磁弁43を閉じた状態で、蓋部21を開けて熱分解槽2内に感染医療廃棄物である廃プラスチックを投入する。その後、蓋部21を閉め、熱分解槽2内を密閉する(図2参照)。
【0026】
次に、過熱蒸気供給管3を通電により最高900℃まで加熱し、この過熱蒸気供給管3自身の熱により熱分解槽2内を加熱する。熱分解槽2内の温度が180℃を越えた時点で、過熱蒸気供給管3の加熱量は、熱分解槽2内の温度がそれ以上上昇しないよう、操作盤9のシーケンサにより自動制御され、熱分解槽2内の温度は180℃以上(第1の温度)で少なくとも30分間維持される。これにより、熱分解槽2内の感染医療廃棄物である廃プラスチックが乾熱滅菌される。
【0027】
次に、冷却器4の電磁弁43を閉じたまま、電動ダンパ24を開いて排出管23を開放した後、電気貫流ボイラ300を作動させ、この電気貫流ボイラ300内に軟水器を介して水タンク200内の水を供給する。これにより、電気貫流ボイラ300内で飽和蒸気が発生し、この飽和蒸気が電気貫流ボイラ300から過熱蒸気供給管3へと送られる。過熱蒸気供給管3は通電により最高900℃まで加熱され、これにより、過熱蒸気供給管3において電気貫流ボイラ300から送られてきた飽和蒸気が200〜750℃の過熱蒸気へと変化する。このようにして生じた過熱蒸気は過熱蒸気供給管3から熱分解槽2内へと放出され、熱分解槽2内はこの過熱蒸気及び過熱蒸気供給管3によって急速に加熱される。なお、電磁弁43が閉じ、電動ダンパ24が開いているため、熱分解槽2内の余剰の過熱蒸気は冷却器4には排出されず、排出管23に排出される。熱分解槽2内の温度が上昇すると、熱分解槽2内の廃プラスチックが溶融し始める。このとき、攪拌器5のモータ52を駆動させ、回転軸51を所定の回転数で回転させると、攪拌器5が熱分解槽2内の溶融した廃プラスチックを攪拌する(図4参照)。
【0028】
このように、熱分解槽2内の廃プラスチックを攪拌器5により攪拌しながら、熱分解槽2内の温度が250〜500℃(第2の温度)となるまで熱分解槽2内の加熱を続ける。過熱蒸気供給管3の加熱量は、熱分解槽2内の温度が第2の温度を超えないよう、操作盤9のシーケンサにより自動制御される。熱分解槽2内の温度が第2の温度になった後、熱分解槽2内をこの第2の温度に所定時間(好ましくは120〜150分間)維持することにより、熱分解槽2内の廃プラスチックより熱分解ガスが生成される。
【0029】
このようにして生成された熱分解ガスは、排出管23より熱分解槽2の外に排出される。この熱分解ガスは、図7に示すように、スクラバー400によって塩素が取り除かれ、触媒塔500内の触媒に触れることによって低沸点のガスに改質される。改質された熱分解ガスは、凝縮装置600へと供給され、凝縮装置600の冷却タンク601内を通過し、冷却タンク601の外側面を流れる冷却水によって冷却凝縮される。これにより、熱分解ガスから油が生成される。凝縮装置600において生成された油は、遠心分離機700に送られ、この遠心分離機700によって水分が分離される。遠心分離機700によって水分が分離された油は、第1のFAフィルタ801を通過してホルムアルデヒドが除去された後、油タンク800に貯蔵される。一方、遠心分離機700によって油から分離された水分は、第2のFAフィルタ201を通過してホルムアルデヒドが除去された後、水タンク200へと戻され、飽和蒸気の生成に再利用される。
【0030】
ここで、熱分解ガス中には凝縮装置600によって凝縮されない成分も含まれている。このため、凝縮装置600の冷却タンク601では凝縮されなかったオフガスが、オフガス洗浄タンク901へと送り出される。オフガスは、オフガス洗浄タンク901で洗浄された後、オフガスタンク902に一旦収容された後、オフガス浄化器903に供給されて浄化・有機分解される。浄化・有機分解されたオフガスは、その後、オフガス浄化装置900において殺菌され、排気ダクト904から大気中に排出される。
【0031】
このように油化処理をした後、熱分解槽2内において熱分解ガス生成後の廃プラスチックの炭化処理を行う。詳述すると、電磁弁43を閉じ電動ダンパ24を開いたままの状態で、過熱蒸気供給管3を通電により最高900℃まで加熱することで過熱蒸気供給管3内において500〜750℃の過熱蒸気を発生させる。この過熱蒸気を過熱蒸気供給管3から熱分解槽2内に導入し、過熱蒸気及び過熱蒸気供給管3により、熱分解槽2内の温度を450〜650℃(第3の温度)まで上昇させる。過熱蒸気供給管3の加熱量は、熱分解槽2内の温度が第3の温度を超えないよう、操作盤9のシーケンサに0より自動制御される。熱分解槽2内の温度が第3の温度になった後、熱分解槽2内をこの第3の温度に所定時間(好ましくは10〜20分間)維持することにより、熱分解槽2内において残渣と呼ばれる炭化物が生成される。なお、炭化処理においても熱分解ガスがわずかに発生するが、この熱分解ガスについても前述の油化処理とは同ラインで回収される。
【0032】
炭化処理の後、電気貫流ボイラ300の作動を停止するとともに、過熱蒸気供給管3への通電を止めることで過熱蒸気供給管3の加熱を停止し、熱分解槽2を自然冷却させる。なお、冷却シャワー供給口26より熱分解槽2内に冷却シャワーを供給し、熱分解槽2内を強制的に冷却することもできる。また、冷却シャワーと併せて、窒素ガス注入口28より熱分解槽2内に窒素ガスを注入したり、送風機6により熱分解槽2に向かって送風したりしてもよい。
【0033】
熱分解槽2を冷却した後、扉部27を閉めた状態のまま、攪拌器5の回転軸51をモータ52により油化処理中の回転方向と逆方向に所定の回転数で回転させる。これにより、熱分解槽2内の残渣は扉部27側へと運搬されて扉部27近傍に集められるため、扉部27からの残渣を容易に回収することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る熱分解処理装置1は、熱分解槽2内に過熱蒸気を供給することにより、熱分解槽2内を効率よく加熱することができるため、熱分解槽2の容量を大きくすることができる。このため、処理対象の廃プラスチックを原型のまま熱分解槽2内に大量に投入することが可能となり、熱分解槽2内において滅菌処理と熱分解処理とを連続して行うことができる。この結果、油化処理全体の処理時間を短縮することができ、効率的に油化処理を行うことができる。また、本実施形態の熱分解処理装置1は、熱分解槽2内において、攪拌器5が熱分解槽2の底面と平行に設けられている。すなわち、攪拌器5の端部が熱分解槽2の上面に突出しないため、熱分解槽2の上面において廃プラスチックを投入するための扉部2を大きくすることができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態において、過熱蒸気供給管3は熱分解槽2において前側壁面及び後側壁面に配置されていたが、熱分解槽2内に設けられていればこれに限定されず、熱分解槽2内に投入される廃プラスチックの形状等に応じて、熱分解槽2内の左右壁面や天井面、底面、中央部に設けてもよい。
【0036】
また、上記実施形態において、加熱手段は過熱蒸気供給管3であったが、熱分解槽2内に設けられていればこれに限定されず、例えば、電熱ヒータ等であってもよいし、過熱蒸気供給管3と電熱ヒータ等とを併用してもよい。
【0037】
また、上記実施形態において、過熱蒸気供給管3を通電により加熱することのみによって滅菌処理を行っていたが、過熱蒸気供給管3の加熱及び過熱蒸気供給管3を介して熱分解槽2に導入される過熱蒸気によって熱分解槽2内を加熱してもよい。詳述すると、滅菌処理の際、排出管23の電動ダンパ24及び冷却器4の電磁弁43を閉じて熱分解槽2を密閉しておき、過熱蒸気供給管3を通電により最高900℃まで加熱するとともに電気貫流ボイラ300を作動させる。これにより、電気貫流ボイラ300から過熱蒸気供給管3へと送られた飽和蒸気が過熱蒸気供給管3において200〜750℃の過熱蒸気へと変化し、過熱蒸気が過熱蒸気供給管3から熱分解槽2内へ放出される。この過熱蒸気及び過熱蒸気供給管3自身の熱により、熱分解槽2内を180℃以上(第1の温度)になるまで加熱し、熱分解槽2内を第1の温度に少なくとも30分間維持することで廃プラスチックの滅菌処理を行う。
【0038】
このように過熱蒸気供給管3の自身の熱と過熱蒸気とを併用して滅菌処理を行う場合、冷却器4を使用することが好ましい。詳述すると、滅菌処理の際、電動ダンパ24を閉じるとともに電磁弁43を開いておくことで、熱分解槽2内の余剰の過熱蒸気が第1の導管41aを介して冷却管42の内管へ導入される。この過熱蒸気は、冷却管42の内管において、内管と外管との間を流れる冷却水により冷却凝縮され、その後、第2の導管41bを介して熱分解槽2内に戻される(図6参照)。これにより、熱分解槽2内が高圧になるのを防止することができる。なお、冷却器4によって凝縮され水となった過熱蒸気を熱分解槽2の外で酸化チタン等の光触媒により殺菌し、再利用することもできる。また、冷却器4を使用せず、熱分解槽2から排出された余剰の過熱蒸気を焼却することもできる。この場合、過熱蒸気が外気に触れる前に焼却することが好ましい。
【0039】
また、上記実施形態において、熱分解処理装置1は、滅菌処理及び熱分解処理を行っていたがこれに限定されず、滅菌装置として単独使用することもできる。
【0040】
また、上記実施形態において、熱分解槽2は略直方体状であったがこれに限定されず、円柱状、多角柱状等種々の形状とすることができる。
【0041】
また、上記実施形態において、攪拌器5は複数の羽根53を有した形状となっていたが、熱分解槽2内の廃プラスチックを攪拌することができればこれに限定されず、スクリュー状等種々の形状とすることができる。
【0042】
また、上記実施形態において、熱分解処理装置1は、図7に示されるような廃プラスチック油化処理システム100に配置されていたが、これに限定されず、様々な公知の廃プラスチック油化処理システムに配置することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 熱分解処理装置
2 熱分解槽
27 扉部(排出口)
3 過熱蒸気供給管
4 冷却器(冷却手段)
5 攪拌器
9 操作盤(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを熱分解するための熱分解処理装置であって、
廃プラスチックを収容する熱分解槽と、
前記熱分解槽内に設けられており、前記熱分解槽内の廃プラスチックを加熱する加熱手段と、
前記熱分解槽内の温度を調整するために前記加熱手段の加熱量を制御する制御手段と、
を備えた熱分解処理装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、通電により自身が加熱されることで内部に供給される飽和蒸気を過熱蒸気へと変化させ、前記過熱蒸気を前記熱分解槽内に放出する、過熱蒸気供給管である、請求項1に記載の熱分解処理装置。
【請求項3】
前記過熱蒸気を冷却するための冷却器を前記熱分解槽の外側にさらに備え、
前記冷却器は、前記熱分解槽から排出された過熱蒸気を冷却凝縮して前記熱分解槽内に戻す、請求項2に記載の熱分解処理装置。
【請求項4】
回転軸が前記熱分解槽の内側底面に平行に延び、前記熱分解槽内の廃プラスチックを攪拌するための攪拌器をさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の熱分解処理装置。
【請求項5】
前記熱分解槽は、廃プラスチックを排出するための排出口が形成されており、
前記攪拌器は、前記熱分解槽内の廃プラスチックを前記排出口に向かって運搬する、請求項4に記載の熱分解処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記熱分解槽内の温度が廃プラスチックを滅菌するための第1の温度及び廃プラスチックを油化するための第2の温度となるよう、前記加熱手段の加熱量を制御する、請求項1〜5に記載の熱分解処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記熱分解槽内の温度が廃プラスチックを炭化するための第3の温度となるよう、前記加熱手段の加熱量を制御する、請求項6に記載の熱分解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−17441(P2012−17441A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157023(P2010−157023)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(398057178)株式会社オールマイティー (17)
【Fターム(参考)】