説明

廃プラスチックの破砕方法及び破砕装置

【課題】破砕機の回転刃や固定刃の破損および、スクリーンの目詰まりを低減させて破砕機の稼働率を向上させることができる廃プラスチックの破砕方法及び破砕装置の提供。
【解決手段】破砕機1内に配置された回転する回転刃5と固定刃6により廃プラスチック2を破砕し、破砕された廃プラスチック8をスクリーン7を通過させて排出する廃プラスチックの破砕方法において、回転刃5を60rpm〜150rpmの低速で回転させて廃プラスチック2を破砕するとともに、破砕機1内を上下方向に気送管10で空気吸引して破砕された廃プラスチック8を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス原料として使用する廃プラスチックを細かく破砕するための廃プラスチック破砕方法及び破砕装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック系一般廃棄物がコークス原料の製造に利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
図4は従来の廃プラスチックからコークス原料を製造する工程を示す概略図である。
【0004】
図4において、廃プラスチック処理ラインの受入投入手段11のプラスチック系一般廃棄物は、開梱・破袋・粗破砕機12でバラバラにし、風力選別機13、手選別コンベヤ14、粗破砕機15、磁力選別機16、非鉄金属選別機17、振動篩18、風力選別機19で、異物や金属、非金属を取り除いてフィルム状の軽いプラスチック主体の廃棄物にする。この廃棄物を破砕機20で破砕して得られたフラフを減容成形機21により減容して廃プラスチック成形物22を製造し、コークス原料としてコークス炉へ供給される。
【0005】
廃プラスチックの破砕機として、回転する回転刃及び固定刃とそれらの下方に破砕された廃プラスチックを篩うスクリーンを備えた破砕機が利用されている(特許文献2参照)。
【0006】
図5(a)は従来の破砕機の一例を示す概略図、(b)はスクリ−ンの断面図である。
【0007】
図5(a)において、破砕機内の破砕室23に回転ローター24を配設し、回転ローター24の外周面に複数個の回転刃25を並列状に配設し、回転ローター24を挟んで、固定刃26が配設される。破砕機体にスクリーン部材27が回転刃25の回転軌跡の下方位置に配設されている。破砕室23に投入された廃プラスチック29は、プッシャー28で中央に寄せられ、高速で回転する回転刃25と固定刃26により破砕される。破砕された廃プラスチック30はスクリーン27を通過し、排出される。図5(b)に示すように、スクリーン27に形成された、破砕された廃プラスチック30が通過する孔31は上下方向に同一幅の直線状に設けられている。
【特許文献1】特開2001−187406号公報
【特許文献2】特開2005−144265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プラスチック系一般廃棄物は、家庭から排出されるごみのため、ライターやリチュウム電池などの発火し易い異物、金属など硬い異物の混入が多い。図4に示すような従来の廃プラスチックからコークス原料を製造する工程において使用される破砕機では、高速回転(200rpm以上)のため硬い異物により刃物が破損しやすかった。さらに、細かく破砕できないものがスクリーンの目を抜けずに目詰まりしたり、高速回転のために廃プラスチックが溶着して目詰まりしたりする場合が多かった。そのため、回転刃あるいは固定刃を交換したり、スクリーンの目詰まりを除去したりするために破砕機をたびたび停止させていたので、破砕機の稼働率が悪いという問題があった。
【0009】
また、従来の高速回転の破砕機では、廃プラスチックをより細かく、例えば10mm以下には、ほとんど破砕できないのが現状である。
【0010】
また、ライターやリチュウム電池等が混入している場合には、高速回転によりせん断時に摩擦熱で発火して火災の危険性も高かった。
【0011】
そこで、本発明は、破砕機の回転刃や固定刃の破損および、スクリーンの目詰まりを低減させて破砕機の稼働率を向上させることができる廃プラスチックの破砕方法及び破砕装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の廃プラスチックの破砕方法は、破砕機内に配置された回転する回転刃と固定刃により廃プラスチックを破砕し、破砕された廃プラスチックをスクリーンを通過させて排出する廃プラスチックの破砕方法において、回転刃を60rpm〜150rpmの低速で回転させて廃プラスチックを破砕するとともに、破砕機内を上下方向に空気吸引して破砕された廃プラスチックを排出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の廃プラスチックの破砕機は、廃プラスチックを受け入れる破砕室内の下部に60rpm〜150rpmの低速で回転する、回転刃を有する回転ローターが配設され、回転ローターを挟んで固定刃が破砕室の側壁に設けられ、回転ローターの下部に回転刃と固定刃により破砕された廃プラスチックを通過させる貫通孔を多数形成したスクリーンが配設され、スクリーン下部にスクリーンを通過した破砕された廃プラスチックが排出される排出室が設けられ、排出室に、空気を破砕室からスクリーンを通って排出室へ吸引する気送管が接続されていることを特徴とする。前記貫通孔の断面を下方に末広がりの形状に形成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、回転刃を既存の高速破砕機の1/3程度の低速で回転させるので、刃物が破損しにくく、また、せん断中に廃プラスチックが溶着することがなく、また、リチウム電池等が混入していた場合でも火災の危険性が少ない。また、低速回転により、約10mm以下に細破砕することが可能となる。
【0015】
また、空気吸引しているので、冷却効果によりせん断時の摩擦熱による廃プラスチックの溶着を防止し、また、吸引効果により破砕された廃プラスチックのスクリーンの通過が促進されスクリーンの目詰まりを防止することができ、さらに、スクリーンの貫通孔を下向きに末広がりの円錐状の形状にすることにより、空気吸引される破砕された廃プラスチックが通過しやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明において使用する破砕装置の概略を示す断面図、図2(a)は回転刃と固定刃の配置を示す平面図、(b)は正面断面図、図3(a)はスクリーンの一部斜視図、(b)は貫通孔の断面図である。
【0017】
図1において、廃プラスチックが投入される上部が開放された破砕室1の側部には、破砕室内に投入された粗破砕された廃プラスチック2を中央方向へ押し込むプッシャー3が配置されている。プッシャー3は油圧シリンダー3aにより前進、後退する。
【0018】
破砕室内の下部には破砕ローター4が配置される。破砕ローター4の表面には回転刃5が設けられ、破砕室内に回転ローター4を挟んで固定刃6が配置されている。図2に示すように、回転刃5は千鳥状に配置され、固定刃6に回転刃5のピッチに合わせて形成された刃溝6aに入り込んで廃プラスチックをせん断する。本発明においては、回転ローター4は、従来の高速回転数(200rpm以上)より約1/3の低速(約60rpm〜150rpm)で回転させる。低速で回転させることにより、異物の食い込みによる刃物の破損を低減させることができる。また、低速回転により、せん断時の摩擦熱を低減させることができるので、廃プラスチックの溶着を防ぐことができ、また、ライターやリチュウム電池等が混入している場合に、破砕による発火の危険性を少なくすることができる。
【0019】
回転ローター4の下方を取り囲むようにスクリーン7が配置される。図3に示すように、スクリーン7には破砕された廃プラスチック8を通過させるための貫通孔7aが複数形成されている。貫通孔7aは15mm以下程度にする。
【0020】
貫通孔7aは破砕された廃プラスチック8の通過方向にテーパを下向きに末広がりにして円錐状に形成する。下向きに末広がりの貫通孔7aにより破砕された廃プラスチック8が空気吸引により、図5(b)に示す従来の上下方向に同一幅の直線状の孔に比べて、通過しやすくする。
【0021】
破砕室内のスクリーン7の下部には、スクリーン7の貫通孔7aを通過した破砕された廃プラスチック8が落下する排出室9が形成され、排出室9はファン(図示せず)で空気吸引され、破砕された廃プラスチック8が気送管10内を気送されて排出される。排出室9の吸引は、ファン静圧5〜8kPa程度で吸引する。破砕室1の上部の開口から吸引される空気は、スクリーン7の貫通孔7aを抜けて吸引される。空気が破砕室1からスクリーン7を通って排出室9へ吸引されることによる冷却効果により破砕時の廃プラスチックの溶着を防止し、また、吸引効果により破砕された廃プラスチック8の貫通孔7aの通過が促進され、スクリーン7の目詰まりを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明において使用する破砕装置の概略を示す断面図である。
【図2】(a)は回転刃と固定刃の配置を示す平面図、(b)は正面断面図である。
【図3】(a)はスクリーンの一部斜視図、(b)は貫通孔の断面図である。
【図4】従来の廃プラスチックからコークス原料を製造する工程を示す概略図である。
【図5】(a)は従来の破砕機の一例を示す概略図、(b)スクリ−ンの断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1:破砕室 2:廃プラスチック
3:プッシャー 4:破砕ローター
5:回転刃 6:固定刃
7:スクリーン 6a:刃溝
7a:貫通孔 8:破砕された廃プラスチック
9:排出室 10:気送管
11:受入投入手段 12:開梱・破袋・粗破砕機
13:風力選別機 14:手選別コンベヤ
15:粗破砕機 16:磁力選別機
17:非鉄金属選別機 18:振動篩
19:風力選別機 20:破砕機
21:減容成形機 22:廃プラスチック成形物
23:破砕室 24:回転ローター
25:回転刃 26: 固定刃
27:スクリーン部材 28:プッシャー
29:廃プラスチック 30:破砕された廃プラスチック
31:孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕機内に配置された回転する回転刃と固定刃により廃プラスチックを破砕し、破砕された廃プラスチックをスクリーンを通過させて排出する廃プラスチックの破砕方法において、
回転刃を60rpm〜150rpmの低速で回転させて廃プラスチックを破砕するとともに、破砕機内を上下方向に空気吸引して細破砕された廃プラスチックを排出することを特徴とする廃プラスチックの破砕方法。
【請求項2】
廃プラスチックを受け入れる破砕室内の下部に60rpm〜150rpmの低速で回転する、回転刃を有する回転ローターが配設され、回転ローターを挟んで固定刃が破砕室の側壁に設けられ、回転ローターの下部に回転刃と固定刃により破砕された廃プラスチックを通過させる貫通孔を多数形成したスクリーンが配設され、スクリーン下部にスクリーンを通過した破砕された廃プラスチックが排出される排出室が設けられ、排出室に、空気を破砕室からスクリーンを通って排出室へ吸引する気送管が接続されていることを特徴とする廃プラスチックの破砕機。
【請求項3】
貫通孔の断面が下方に末広がりの形状であることを特徴とする請求項2記載の廃プラスチックの破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−190481(P2007−190481A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10402(P2006−10402)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】