説明

廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法

【課題】 造粒工程を省略して高比重、高純度の再利用可能な原料が得られる廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法を提供する。
【解決手段】 多数の使用済みアルミ缶が軽プレスされたアルミ缶スクラップ10を解放機で衝撃を加えて解放して1枚毎のアルミ缶11に分離し(P1)、分離された状態のままで手選別と磁選機による異物除去を行う(P2)。加熱炉内で還元雰囲気にて焼成温度範囲の400〜500℃で乾留させて表面塗料やコーティングを熱分解により除去する(P3)。アルミ焼成缶を幅15mm程度に破砕・裁断した上で(P4)、所定量ずつ圧縮固化してアルミブリケット13に成型する(P5)。製鋼用副原料等の再利用の用途に応じて要求されるサイズの切断ピース14になるように切断する(P6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法に関し、特に使用済みのアルミ缶を対象にして製鋼用副原料(例えば脱酸材)として又はアルミニウム二次合金の主原料として再利用するために好適に用いられるリサイクル処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用済み飲料缶を回収してリサイクルする技術として種々のものが提案されている。例えば使用済みのアルミ缶をアルミ缶用板材の溶解原料として再利用するための処理方法として、アルミ缶を破砕機で裁断し、裁断したアルミ片をロータリーキルンに入れて550℃〜600℃で焼成して表面塗装等を燃焼・除去した後に、インパクトミルに入れて高速回転している打撃板や反発板に落下して衝突することを反復繰り返させてアルミペレット(アルミ小球状塊)に成形し、サイズが大きければアルミペレットのまま、小さければアルミペレットを集めてブリケットマシンに入れてより大きなアルミ塊に成形して再利用する、というものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
又、使用済みのスチール缶とアルミ缶とが混在した状態のものからスチールペレットとアルミペレットに分離して再利用するための処理方法として、混在状態の飲料缶を裁断機で細かく裁断した上で、ロータリーキルンに入れて450℃〜500℃に加熱し、加熱後に磁選機によりスチール断片とアルミ断片とに分離して、分離したアルミ断片を造粒機でアルミペレットに成形する、というものも提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
さらに、使用済みのスチール缶から蓋部分のアルミニウム材料と胴部分のスチール材料とを別々に取り出して再利用するための処理方法として、スチール缶をインパクトクラッシャーで破砕した上で、その破砕した断片をロータリーキルンで加熱して表面塗装等を燃焼・除去し、加熱後のスチール材料とアルミ材料との各断片を粗造粒機・造粒機の2段式によりスチールペレットとアルミペレットの粒状に加工・成形した後に、磁選機でスチールペレットとアルミペレットとに分離する、というものが提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−49023号公報
【特許文献2】特開平9−192640号公報
【特許文献3】特開平10−57931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法においては、いずれも再利用するためにアルミペレットという粒状の形態に造粒するようにしており、このペレット化(造粒化)に起因して種々の不都合が生じている。なお、本件における「造粒」は、粉体を造粒・固化させてペレットを形成するという場合の通常の「造粒」技術とは異なり、加熱により軟らかくなったアルミ片を主として衝撃力・打撃力により粒状の形態に成形するという技術に係るものである。
【0007】
すなわち、上記不都合として、ペレット化するために用いる造粒機の損耗が激しく機能維持のためのランニングコストの増大化を招く上に、駆動のために多大な電力エネルギーの消費を余儀なくされている、という点がある。すなわち、造粒機の連続運転により特にスクリーンの穴が損耗して徐々に潰れていき、この結果、ペレット形状の不均一化・小サイズ化や破砕粉の増加を招き、メンテナンスや部品交換頻度の増大や歩留まり悪化を招くことになる。このため、使用済みアルミ缶を資源として再利用するという事業を確立する上で、障害になっている。
【0008】
加えて、アルミペレットは比重が軽すぎて、製鋼用副原料として再利用するには使い難いという点がある。すなわち、最終溶解炉に投入する際の搬送コンベアから落下したりこぼれたりして最終溶解量の歩留まりの悪化を招いたり、最終溶解炉に投入する際に吹き上がって炉内下部まで到達しないものがあったりする。
【0009】
又、使用済みアルミ缶を対象にしてリサイクル処理を実施する場合、その使用済みアルミ缶を加熱前に裁断しても、スチール製の異物の選別・除去はともかくとして、スチール製以外の異物の選別・除去がかえって困難となり易くなり、異物混入のままアルミペレットに成形されてアルミニウムの純度の著しい低下を招くおそれがある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、造粒工程を省略して高比重、高純度の再利用可能な原料が得られる廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法を対象にして、廃棄アルミ製品を還元雰囲気にした加熱炉内において焼成温度条件でかつ酸化を防止し得る温度条件となる所定温度範囲で乾留させる加熱処理工程と、加熱処理工程後に破砕・裁断してアルミ細片にする破砕処理工程と、破砕処理工程後のアルミ細片を圧縮固化させてアルミブリケットに成型するブリケット成型工程とを備えることとした(請求項1)。ここで、上記の所定温度範囲としては400℃〜500℃、中でも400℃〜450℃が好ましいものとして挙げられる。
【0012】
この発明の場合、加熱処理工程により、廃棄アルミ製品を酸化させることなく表面処理された塗料やコーティング材、あるいは、表面に付着した水分や不純物を熱分解させることが可能となり、これにより、廃棄アルミ製品から本来の素材であるアルミニウム合金以外の不純物を除去すると共に、焼き鈍すことが可能になる。次に、破砕工程において、焼き鈍された加熱処理後の廃棄アルミ製品が破砕・裁断されてアルミ細片にされ、このアルミ細片がブリケット成形工程で圧縮固化されて高比重・高純度のアルミブリケットが得られることになる。このアルミブリケットが脱酸材等の製鋼用副原料又は新たなアルミ製品の原料等として再利用されることになる。
【0013】
この発明において、多数の廃棄アルミ製品が矩形形状に軽圧縮成形された状態のプレススクラップを出発原料にする場合、このプレススクラップを軽圧縮成形状態から解放して個々の廃棄アルミ製品に分離する解放工程と、個々に分離された状態の廃棄アルミ製品からこの廃棄アルミ製品に付着又は混入している異物を除去する異物除去工程とを、上記加熱処理工程の前工程として実行するようにすることができる(請求項2)。この場合、廃棄アルミ製品の収集や、収集後の取扱い等の実情に即したリサイクル処理方法を特定し得ることになる。そして、解放工程により分離された廃棄アルミ製品はその状態のままで異物除去工程が行われるため、廃棄アルミ製品を先に破砕・裁断した上で異物除去する従来方法よりも異物除去を容易にかつ確実に行い得ることになり、最終のリサイクル製品となるアルミブリケットの高純度化に寄与し得ることになる。
【0014】
又、ブリケット成型工程により成型されたアルミブリケットをリサイクル製品として再利用する用途に応じたサイズに切断する切断工程を、ブリケット成型工程の後工程として実行するようにすることができる(請求項3)。この場合、リサイクル製品が再利用される用途等に応じて最適なサイズ・重量に調整することが可能となって、取扱い性や再利用の確実性の向上が図られることになる。
【0015】
加熱処理工程において、密閉可能な加熱炉と、循環ファンと、加熱ガス発生室とを用い、循環ファンの作動により上記加熱炉での加熱により生成された熱分解ガスを加熱ガス発生室に循環供給し、この加熱ガス発生室で熱分解ガスを燃焼させることにより発生する燃焼排ガスを上記加熱炉に対し還元雰囲気で乾留させる加熱源として供給するようにすることができる(請求項4)。この場合、加熱炉での乾留により生成される熱分解ガスが加熱ガス発生室において燃焼されその燃焼排ガスが加熱炉に戻されることで、加熱処理工程における還元雰囲気での加熱処理が確実に行われることになる。
【0016】
さらに具体的には、廃棄アルミ製品として使用済みのアルミ缶を対象にし、加熱処理工程を400℃〜500℃の温度範囲で乾留し、破砕工程で幅15mm以下のアルミ細片に破砕・裁断し、ブリケット成型工程で2.2g/cm以上の比重を有するアルミブリケットに圧縮固化するようにすることができる(請求項5)。この場合、使用済みのアルミ缶を出発原料としてリサイクル製品を製造するためのリサイクル処理方法として具体化させ得ることになる。すなわち、上記の温度範囲で加熱することにより酸化を確実に防止した状態で表面塗料等の熱分解による除去が図られ、幅15mm以下のアルミ細片に裁断することにより、そのアルミ細片を材料にして圧縮固化させたアルミブリケットを確実に2.2g/cm以上の高比重に成型し得ることになる。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、請求項1〜請求項5のいずれかのアルミ缶のリサイクル処理方法によれば、加熱処理工程により、廃棄アルミ製品を酸化させることなく表面処理された塗料やコーティング材、あるいは、表面に付着した水分や不純物を熱分解させることができ、これにより、廃棄アルミ製品から本来の素材であるアルミニウム合金以外の不純物を確実に除去することができる共に、焼き鈍すことができるようになる。次に、破砕工程において加熱処理後の廃棄アルミ製品を破砕・裁断することにより生成したアルミ細片をブリケット成形工程で圧縮固化して高比重・高純度のアルミブリケットを得ることができ、このアルミブリケットにより脱酸材等の製鋼用副原料又は新たなアルミ製品の原料等として再利用されるリサイクル製品を得ることができるようになる。
【0018】
請求項2によれば、前工程として解放工程及び異物除去工程の追加によって、廃棄アルミ製品の収集や、収集後の取扱い等の実情に即したリサイクル処理方法を特定することができる。特に、解放工程により分離された廃棄アルミ製品の状態のままで異物除去工程が行われるため、廃棄アルミ製品を先に破砕・裁断した上で異物除去する従来方法よりも異物除去を容易にかつ確実に行うことができ、これに伴い、最終のリサイクル製品となるアルミブリケットの高純度化を図ることができるようになる。
【0019】
又、請求項3によれば、後工程として切断工程を追加することにより、リサイクル製品が再利用される用途等に応じて最適なサイズ・重量に調整することができ、取扱い性や再利用の確実性の向上を図ることができるようになる。
【0020】
請求項4によれば、加熱処理工程において、密閉可能な加熱炉と、循環ファンと、加熱ガス発生室とを用い、加熱炉での乾留により生成される熱分解ガスを加熱ガス発生室において燃焼させその燃焼排ガスを加熱炉に戻すようにすることにより、加熱処理工程における還元雰囲気での加熱処理を確実に行うことができるようになる。
【0021】
さらに、請求項5によれば、使用済みのアルミ缶を出発原料としてリサイクル製品を製造するためのリサイクル処理方法として具体化させることができる。すなわち、400℃〜500℃の温度範囲で加熱することにより酸化を確実に防止した状態で表面塗料等の除去を図ることができ、幅15mm以下のアルミ細片に裁断することにより、そのアルミ細片を材料にして圧縮固化させたアルミブリケットを確実に2.2g/cm以上の高比重に成型することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法の工程図を示す。本発明は、還元雰囲気において乾留させ得る乾留還元型の加熱炉を用いた加熱処理工程P3と、加熱処理後にシュレッダーを用いて破砕・裁断してアルミ細片にする破砕処理工程P4と、破砕処理後のアルミ細片を材料にしてブリケットマシンによりアルミブリケットに成型するブリケット成型工程P5とを組み合わせた点に特徴がある。すなわち、加熱処理工程P3により、廃棄アルミ製品を酸化させることなく表面処理された塗料やコーティング材、あるいは、表面に付着した水分や不純物を熱分解させる。この加熱処理工程P3により、廃棄アルミ製品から本来の素材であるアルミニウム合金以外の不純物(上記の塗料等を含む)を除去すると共に、焼き鈍す。次に、破砕工程P4において、焼き鈍された加熱処理後の廃棄アルミ製品をシュレッダーで破砕・裁断してアルミ細片(例えば幅15mm程度以下)にして、このアルミ細片をブリケット成形工程P5でブリケットマシンにより所定圧縮力で所定サイズに成型・固化することにより、所定の高比重・高純度のアルミブリケットを得る。
【0024】
次に、廃棄アルミ製品として使用済みアルミ缶を対象にした具体的な一例について説明する。ここで、アルミ缶とは、アルミニウム合金(以下、単に「アルミニウム」という)により製造された飲料缶のことであり、一般に、胴部分がA3000系のアルミニウム合金により形成され、蓋部分がA5000系のアルミニウム合金により形成されたものである。
【0025】
一般に、使用済みのアルミ缶は廃棄物回収業者により分別収集されるか、スチール缶等と混合状態で収集された後にスチール缶等と選別されるかした後、それらのアルミ缶をリサイクル処理業者に供給するために、いわゆるアルミ缶スクラップと言われる矩形状の塊とされる。このアルミ缶スクラップ10は所定量ずつまとめて軽プレスされて個々のアルミ缶が軽く潰された状態に圧縮成形されたものであり、主として運搬及び取扱いの便宜のために形成されるものである。このようなアルミ缶スクラップ10の供給を受けたリサイクル処理業者において、以下に説明するような各処理工程P1〜P6が実施されて製鋼用副原料(例えば脱酸材)等として再利用されるリサイクル製品14,14,…となる。
【0026】
製鋼用副原料としてのリサイクル製品14を製造するための処理方法としては、出発原料がアルミ缶スクラップ10であることに起因して必要となる処理や比較的容易に選別し得る異物を除去するために処理等の前処理工程と、リサイクル製品として備えるべき品質を具備させるために必要な処理である本処理工程と、リサイクル製品の使用先に応じたサイズ・重量等の仕様に調整するために必要となる後処理工程とに分かれる。前処理工程は解放工程P1及び異物除去工程P2を備えたものであり、本処理工程は加熱処理工程P3、破砕処理工程P4及びブリケット成型工程P5を備えたものであり、後処理工程は切断工程P6を備えたものである。
【0027】
以下、図1に加えて図2をも参照しつつ、各工程を詳細に説明する。解放工程P1は、アルミ缶スクラップ10に対し衝撃力や振動力を加えてアルミ缶スクラップ10から個々の1枚毎のアルミ缶11,11,…の状態にバラバラに分離・解放して分解するための処理であり、いわゆる解放機といわれる装置を用いてアルミ缶各スクラップ10からアルミ缶11,11,…を破砕することなく1枚ずつ剥がすものである。この解放工程P1では、アルミ缶スクラップ10をストックヤードから例えばショベルローダ等で搬送して投入コンベア21に所定タイミング毎に載せ、この投入コンベア21により解放機としての例えば衝撃式一軸破砕機22に投入する。この衝撃式一軸破砕機22内で回転させながら衝撃力を加えて結合を解いて引き剥がし、さらに振動フィーダ23にて解放後の衝撃を吸収させながら1缶ずつにバラバラに分散させ、この1缶ずつにバラバラに分散された状態のアルミ缶11,11,…を次工程の異物除去工程P2に送る。振動フィーダ23としては、例えば下部バイブレータコイルスプリング支持方式のものを用いればよい。
【0028】
解放工程P1から異物除去工程P2への搬送は、例えば、テールにホッパー24aを装備したエプロンコンベア24を用いればよい。すなわち、上記振動フィーダ23から1缶ずつバラバラの状態のアルミ缶11,11,…をホッパー24a内に投入して貯め、ホッパー24aの底部からエプロンコンベア24に対し定量ずつ落とし込んで次工程の手選別コンベア25まで定量搬送させる。ここで、エプロンコンベアとは、急傾斜(例えば45度の傾斜角)にて大量搬送し得るチェーンコンベアのことであり、エプロンといわれる板をコンベアチェーンに取り付け、コンベアチェーンを進行させることにより搬送物を上方位置まで搬送するものである。
【0029】
異物除去工程P2は、手選別による異物・危険物等の選別・除去と、磁選(磁力選別)によるスチール異物の選別・除去とをそれぞれ行うものである。手選別は上記のエプロンコンベア24により定量供給されるアルミ缶11,11,…を手選別コンベア25に流しながら作業者の視認に基づき行い、磁選は磁選機(例えば永久磁石式吊り下げベルト型磁選機)26によりスチール異物(例えば釘,ネジ等)の選別と自動排出とを行うようにすればよい。手選別の対象は、アルミ缶11,11,…に混在している異物(例えば飲料用空缶以外の食缶、菓子缶、その他)や危険物(スプレー缶等)であり、手選別した異物や危険物をコンテナC1に回収して処分する。
【0030】
異物除去工程P2を経たアルミ缶11,11,…は、例えば一時貯留機能及び定量払い出し機能を有する貯留槽付きのプールコンベア27と、定量・連続供給可能なエプロンコンベア28とからなる定量供給手段によって、次工程の加熱処理P3の加熱炉29に対し加熱炉29での均一加熱を実現させるために所定流量の定量供給でかつ連続供給される。
【0031】
加熱処理P3では、アルミ缶11,11,…に対し非酸素的雰囲気の還元条件下で焼成状態となる所定温度の高温不活性ガスに晒すことによりアルミ缶11の表面塗料やコーティングを熱分解させ、これにより、アルミ缶11の酸化を防止しつつアルミ缶11から本来のアルミニウム合金以外の不純物を除去すると同時に、アルミ缶11を焼成する。
【0032】
このような加熱処理P3を実現するための設備として、本実施形態では、無酸素又は酸素が殆ど存在しないような非酸素的雰囲気に維持されて還元条件下でアルミ缶11,11,…を乾留させ得るように構成された還元乾留型の加熱炉(ロータリキルン)29を用いる。この加熱炉29は、入口側にエプロンコンベア28により定量供給されるアルミ缶11,11,…を貯めるホッパー29aと、二重のダンパ29bとが付設される一方、出口側にも二重のダンパ29cが付設され、それぞれの二重のダンパ29b,29cの交互開閉によって内部を密閉状態に維持したままで加熱対象のアルミ缶11,11,…の供給(投入)が可能となっている。又、上記加熱炉29には、サイクロン集塵機30と、循環ファン31と、完全燃焼炉により構成された加熱ガス発生室32とが付設され、加熱炉29での乾留により生じた熱分解ガス(可燃ガス)を導出して完全燃焼させる一方、その燃焼排ガスを加熱炉29に環流させてアルミ缶11,11,…を加熱するようにしている。
【0033】
そして、循環ファン31の作動により、加熱炉29内で生じるアルミニウム粉塵を含む熱分解ガスを加熱炉29から導出してサイクロン集塵機30に送り、サイクロン集塵機30においてアルミニウム粉塵を熱分解ガスから分離回収し、アルミニウム粉塵を除去した残りの熱分解ガスが加熱ガス発生室32に送られる。加熱ガス発生室32では外部の燃料供給源(例えばLPガスボンベ)33からの燃料ガス(例えばLPガス)の供給を受けて、この燃料ガスと上記熱分解ガスとを完全燃焼させ、完全燃焼後の高温度の燃焼ガス(燃焼排ガス)を焼成条件となる温度でかつアルミ缶11の酸化を防止し得る所定温度に調整した後に加熱炉29内に環流させる。これにより、加熱炉29内を、アルミ缶11の酸化防止を確実に図ることができ、かつアルミニウム合金の融点よりも低い焼成温度条件で しかもアルミ缶11の表面塗料やコーティング等の不純物を熱分解させ得る温度条件にするようにする。このような温度条件としては、400℃〜500℃の温度範囲、好ましくは400℃〜450℃の温度範囲でアルミ缶11,11,…を加熱し得るものであり、とりわけアルミ缶11,11,…に対する加熱温度が実質的に410℃になるようにすることが好ましい。なお、サイクロン集塵機30で分離回収されたアルミニウム粉塵は、アルミニウムの焼成粉としてリサイクル製品の一種類となし得る。又、加熱ガス発生室32での余剰ガスは冷却処理後にバグフィルタを通して大気に放出される。
【0034】
次に、加熱処理により焼成された状態のアルミ缶(以後「アルミ焼成缶」という)を次工程の破砕処理工程P4により破砕・裁断してアルミ細片12とする。この際、加熱炉29から出口側のダンパ29cを経て出されたアルミ焼成缶は例えば急傾斜エプロンコンベアにより構成された出口コンベア34に導出され、出口コンベア34により搬送される間に空冷された後、排出切り替えが可能な切替ダンパシュート35を経てシュレッダー36に投入される。これにより、搬送ラインに例えば所定量以上のアルミ焼成缶が流出した場合などの異常事態が発生したときに、切替ダンパシュート35を異常排出側に切り替えして、その増分のアルミ焼成缶をコンテナC2に排出し得るようにし、以後の各工程P4,P5,P6の連続運転を維持し得るようになっている。コンテナC2に貯留されたアルミ焼成缶は出口コンベア34の入口側に再び戻すことができる。
【0035】
破砕処理工程P4で用いるシュレッダー36としては例えば一軸式粉砕機を用いればよい。一軸式粉砕機は、超硬回転刃と固定刃との間にホッパーから投入したアルミ焼成缶を噛み込ませて破砕・裁断し、下側のスクリーンの開口サイズ以下のものが加工後のアルミ細片12として排出され、それよりも大きいものは掻き上げられて上記の破砕・裁断が繰り返されるようになっている。この破砕処理工程P4により生成されるアルミ細片12としては、破砕幅(裁断幅)をほぼ15mm以下とすることが、次工程のブリケット成型工程P5によるブリケット13の要求品質である高比重化にとって好ましい。とりわけ、破砕幅を実質的に10mm以下にして嵩比重0.7t/m程度にすることが好ましい。又、破砕効率上、回転刃としてVの字型に配置したものが好ましい。
【0036】
ブリケット成型工程P5では、アルミ細片12,12,…を圧縮固化してリサイクル製品として要求される形状及び高比重を有するブリケット13を成型する。形状としては円形又は楕円形との断面を有する円柱状、あるいは、三角形又は四角形等の断面を有する角柱状に成型すればよく、サイズとしては形状が円柱状の場合には最大で直径が100mm程度、好ましくは直径を60〜80mm程度にすればよく、又、圧縮の程度としては比重が例えば実質的に2.2g/cm以上のものにすればよい。このようなブリケット13を成型するためには、所定量のアルミ細片12,12,…を型内に充填し、これを例えば294MPa(3t/cm2)程度の圧縮面圧でプレス加工すればよい。以上により、高純度でかつ内部まで均一な比重を有し、しかも要求される高比重(2.2g/cm程度以上)を有するブリケット13を成型することができる。
【0037】
このブリケット成型工程P5はブリケット成型機39を用いて行うようにし、このブリケット成型機39に対し切断機40を附属させて切断工程P6を行うようにしている。これに対しアルミ細片12,12,…を供給するために、シュレッダー36から排出されたアルミ細片12,12,…をベルトコンベア37に落とし、続いてベルトコンベア38によりブリケット成型機39に対し個別に供給させ得るようにしている。又、後述の切断工程P6で生じた切断屑をブリケット成型工程P5に戻してアルミ細片12と共に圧縮固化させることにより、歩留まりの向上を図り高比重化に寄与させるようにしている。
【0038】
切断工程P6では、ブリケット13がそのままのサイズ・重量ではリサイクル製品としては大きすぎたり重すぎたりする場合に、そのブリケット13をリサイクル製品の用途に応じた重量及びサイズになるように切断して最終のリサイクル製品とするものである。この切断工程P6を実行するための切断機40a,40bとしては、切断効率を考慮して例えば超硬丸鋸を備えたアルミ用丸鋸切断機を用いるようにすればよい。製鋼用副原料(脱酸材)としての用途では、ブリケット13が例えば直径80mm程度のものであれば、長さ18mm程度に切断すれば重量200g程度となった平べったい円柱状の切断ピース14,14,…にすることができる。このような扁平な切断ピース14、つまり両端面が平坦面を有し直径に比して両端面間の高さ(長さ)が極めて短いような扁平形状の切断ピース14とすることにより、リサイクル製品の使用時の取り扱い性、特にコンベア搬送時の安定性を十分に確保することができるようになり、転げ落ちる等の不都合発生等を確実に回避することができるようになる。
【0039】
以上の本実施形態によるリサイクル処理方法の場合、使用済みのアルミ缶を原料にして、従来方法における造粒工程を省略してペレット化(造粒化)することなく、製鋼用副原料(脱酸材)として再利用し得る高比重(例えば2.2g/cm3)・高純度(例えばアルミニウム合金成分が96重量%以上)のリサイクル製品14を製造することができるようになる。このため、従来方法では必要としていた造粒機の設置自体を省略することができ、これに伴い、造粒機の損耗に起因するメンテナンス頻度の増大や歩留まりの悪化を阻止してそれらに要するコストの削減化及び駆動用の電力エネルギーの削減化を共に実現させることができる。又、リサイクル製品としての切断ピース14は、搬送コンベアに載せられても姿勢が安定する形状であるため、最終溶解炉まで安定供給することができる上に、所要の重量を備えているため最終溶解炉に対し投入されれば炉内下部まで確実に到達させることができるようになり、製鋼品質の向上にも寄与させることができる。さらに、加熱処理前に裁断して細片化する従来方法と異なり、加熱処理前にはアルミ缶スクラップ10から1枚毎のアルミ缶11に分離させた状態で異物除去工程P2を行い、加熱処理工程P3の後に破砕処理工程P4を行うようにしているため、特に、磁選し得るスチール異物以外の異物の除去をより一層容易かつ確実に行うことができる。これにより、異物混入のままアルミペレットに成形される場合が発生し易い従来方法と比べ、本実施形態では最終のリサイクル製品における高純度化を図ることができるようになる。
【0040】
又、特に、加熱前の段階においてアルミ缶を破砕することなく手選別や磁選により異物除去を行っている点、及び、加熱処理工程P3において表面塗料等を還元雰囲気下において熱分解(乾留)により除去させている点により、最終のリサイクル製品13,14の高純度化をより一層図ることができる。さらに、加熱処理工程P3により焼き鈍されている上に破砕処理工程P4で細片化されたアルミ細片13を材料にしてブリケット成型工程P5を行っているため、最終のリサイクル製品13,14の高比重化もより一層図ることができることになる。
【0041】
なお、上記の出口コンベア34のカバー34a内、シュレッダー36内、ブリケット成型機39内、及び、切断機40内の各所から図示省略の集塵ダクトを通してアルミニウム粉塵を含むダストを図示省略のサイクロン集塵機に集塵し、このサイクロン集塵機においてアルミニウム粉塵を回収し、アルミニウム粉塵除去後に残る主としてカーボンを含む細粉を図示省略のバグフィルタにより回収するようにしている。これらのアルミニウム粉塵やカーボン細粉は、別途再利用することができる。
【0042】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、主として使用済みの飲料用容器であるアルミ缶をリサイクル製品の原料として説明したが、これに限らず、例えば他のアルミニウム製容器やアルミニウムサッシ等のアルミニウム合金を素材にして製造され、その後に廃棄されることになったアルミニウム製品をリサイクル製品の原料にして本実施形態のリサイクル処理方法を適用するようにしてもよい。これらの場合、アルミ缶スクラップと同様に、廃棄アルミ製品は廃棄物収集業者において軽プレスされてアルミスクラップの形態でリサイクル処理業者に供給され、リサイクル処理業者ではこの形態からリサイクル処理を開始することになるため、以上の本実施形態を適用し得る。
【0043】
又、上記実施形態では、アルミ缶を対象にした場合であって、これらをアルミ缶スクラップしたものを出発原料にした場合について説明したが、これに限らず、アルミ缶を対象にする場合であっても、アルミ缶スクラップの形態にすることなく、収集されたアルミ缶を対象にして異物除去工程P2から開始するようにしても、もちろんよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック工程図である。
【図2】リサイクル製品の製造ラインを示す模式図である。
【符号の説明】
【0045】
P1 解放工程
P2 異物除去工程
P3 加熱処理工程
P4 破砕処理工程
P5 ブリケット成型工程
P6 切断工程
29 加熱炉
31 循環ファン
32 加熱ガス発生室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄アルミ製品を還元雰囲気にした加熱炉内において焼成温度条件でかつ酸化を防止し得る温度条件となる所定温度範囲で乾留させる加熱処理工程と、
加熱処理工程後に破砕・裁断してアルミ細片にする破砕処理工程と、
破砕処理工程後のアルミ細片を圧縮固化させてアルミブリケットに成型するブリケット成型工程と
を備えていることを特徴とする廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の廃棄アルミのリサイクル処理方法であって、
多数の廃棄アルミ製品が矩形形状に軽圧縮成形された状態のプレススクラップを出発原料にして、このプレススクラップを軽圧縮成形状態から解放して個々の廃棄アルミ製品に分離する解放工程と、個々に分離された状態の廃棄アルミ製品からこの廃棄アルミ製品に付着又は混入している異物を除去する異物除去工程とを、上記加熱処理工程の前工程として実行するようにする、廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法であって、
ブリケット成型工程により成型されたアルミブリケットをリサイクル製品として再利用する用途に応じたサイズに切断する切断工程を、ブリケット成型工程の後工程として実行するようにする、廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法であって、
加熱処理工程において、密閉可能な加熱炉と、循環ファンと、加熱ガス発生室とを用い、循環ファンの作動により上記加熱炉での加熱により生成された熱分解ガスを加熱ガス発生室に循環供給し、この加熱ガス発生室で熱分解ガスを燃焼させることにより発生する燃焼排ガスを上記加熱炉に対し還元雰囲気で乾留させる加熱源として供給するようにする、廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法であって、
廃棄アルミ製品として使用済みのアルミ缶を対象にし、加熱処理工程を400℃〜500℃の温度範囲で乾留し、破砕工程で幅15mm以下のアルミ細片に破砕・裁断し、ブリケット成型工程で2.2g/cm以上の比重を有するアルミブリケットに圧縮固化するようにする、廃棄アルミ製品のリサイクル処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−138478(P2010−138478A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318969(P2008−318969)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(508368703)
【出願人】(508368873)
【出願人】(508368725)
【Fターム(参考)】