説明

廃棄物の搬送用コンテナ

【課題】 PCBなどの塩素含有化合物(有毒性物質)の輸送をより安全に行うことができ、事故などに際しても、輸送品を漏洩させ、飛散又は流出により環境を汚染することのない搬送用コンテナを提供する。
【解決手段】 中空直方体を上部カバー2と下部トレー10とに上下に二分割した構造を有し、上部カバー2と下部トレー10とは、分割により生じた開口状態の分割面を合せて接合することにより、内部と外部とを遮断する機能を有するとともに、上部カバーの側面の各コーナー部には、上部カバー2の上部から下部トレー10における側面の各コーナーの底部まで延出し、下部トレー10を挟持する脚部4を一体的に形成した支柱3を設けて搬送用コンテナ1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PCBのような有毒性の廃棄物の輸送、保管に最適な廃棄物の搬送用コンテナに関するもので、より具体的には、有毒性の廃棄物を安全に輸送、保管することができ、輸送時における不慮の事故においても、有毒性に起因する問題を発生させることがなく、交通事故等にも対応し得る廃棄物の搬送用コンテナに関し、輸送用コンテナ製造技術に属するものである。
【背景技術】
【0002】
有毒性物質、特にPCBなどの塩素含有化合物を含んだ廃棄物は、処理能力のある施設で無害化する必要があるため、各地で発生したそれら廃棄物は、一定量になるまで保管され、その後、前記のような施設へ輸送され、無害化が図られている。
そのような有毒性物質を含んだ廃棄物は、発生場所での保管時は勿論のこと、特に、処理施設への輸送時に、周辺環境を汚染しないよう、また、取り扱い者の健康を損なわないように、万全の体制をとる必要がある。
【0003】
したがって、輸送のための設備や取り扱いなどに対しては、高度の安全性が求められており、輸送用容器、すなわち、コンテナには、例えば、以下のような性能を満足することが求められている(環境事業団受入基準)。
1.外形・強度について
(1)外寸は、幅2000mm×奥行1475mm(又は2950mm)であって、かつ、高さが2050mm以下であること。
(2)容器本体に次の表示がされていること。
−所有者又は管理者の氏名又は名称及び連絡先
−容器の総自重
(3)自重を含めて5tの重量があるときに、フォークリフトで持ち上げた場合又はクレーンで吊り上げた場合、容器本体、フォークポケット及びクレーン用の吊手に歪み、変形、破損その他の異常が認められないこと。
【0004】
2.材質について
(1)ステンレススチール製であること。
3.構造について
(1)底面及び側面が密閉構造で、蓋を閉めたときに雨水が内部に侵入しない構造であること。
(2)蓋は、容器が転倒しても容易に外れることがなく、かつ、内容物が飛散又は流出することがない構造であること。
(3)底面には4方向からのフォークリフトで荷役できるフォークポケットを有すること。
(4)容器本体4隅及び蓋にクレーン用の吊手を有し、安全に持ち上げられる構造であること。
(5)容器内面は容易に拭き取りができるように、複雑な形状及び表面の凹凸を避けること。
(6)取付け及び取外しを容易に行うことができる仕切り板による、内部仕切りができる構造であること。
(7)PCB廃棄物を固定した状態での運搬中の急制動、急カーブ等の際に容器の形状が保たれるようPCB廃棄物を固定できること。
【0005】
このような要望に応えるものとして、例えば、特開2003−312774号公報(特許文献1)においては、廃棄物の輸送、保管に使用する廃棄物用コンテナにおいて、上面のほぼ全域が開口し、内部に廃棄物を収容する容器部と、前記収容部の上面開口を開閉するための蓋部とを備え、前記蓋部により前記容器内部を密閉するために前記容器部と蓋部とを締結する締結手段を有することを特徴とする廃棄物の輸送、保管に使用する廃棄物用コンテナが提案されている。
【特許文献1】特開2003−312774号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の特許文献1に記載のコンテナは、上面のほぼ全域が開口した容器と、収容部の上面開口を開閉するための蓋部とが備わっているため、コンテナ内に廃棄物を積み込むための大きな開口部があり、廃棄物全般をコンテナ内に容易に積み込むことができ、廃棄物をコンテナに積み込んだ後、締結手段により、蓋部と容器部とが締結されコンテナ内部が密閉されるという機能を有し、コンテナの落下や転倒などに対する安全性が十分に考慮されているので、有害物質を含んだ廃棄物の輸送、保管に使用することができるというものである。
【0007】
しかしながら、この提案のコンテナは、容器部と蓋部とから構成され、それらを締結する締結手段がワンタッチ方式の締結金具であって、容器部と蓋部をそれらで締結するだけのものであるため、交通事故などの輸送中の事故に際し、蓋が外れて、積載物が漏洩する事故が発生するというおそれを完全に否定することはできず、より安全性の高いコンテナが求められている。
【0008】
この発明はかかる現状に鑑み、PCBなどの塩素含有化合物などの有毒性物質からなる廃棄物の搬送に際し、万一、有毒性の廃棄物を搭載した車両が不測の事故に遭遇し、廃棄物を収容したコンテナが横転したとしても、コンテナの蓋が開いて前記廃棄物が外部に漏れ出し、飛散又は流出により環境を汚染することのない廃棄物の搬送用コンテナを提供せんとするものである。
【0009】
また、この発明の他の目的は、構造が簡単で、取り扱いが容易であるとともに、クレーンなどによるコンテナの吊り上げなどにおいても、安定性が高く、コンテナ自体の強度も強く、荷役の安全性がきわめて高い、廃棄物の搬送用コンテナを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、この発明の請求項1に記載の発明は、
相対する開口面を接合したとき密封された中空直方体を形成する、下面が開口した上部カバーと、上面が開口した下部トレーとからなるもので、
前記上部カバーは、各コーナー部に開口面から突出する脚部を一体的に設けた支柱が配設固定され、
前記下部トレーは、各コーナー部に前記脚部を受け入れるための脚部受入部が形成されるとともに、床面まで延出する前記脚部の先端面と相対する部位に、前記脚部を介して上部カバーと下部トレーとを緊締するための緊締手段が設けられていること
を特徴とする廃棄物の搬送用コンテナである。
【0011】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記上部カバーと下部トレーは、
いずれか一方の開口縁に沿って断面山型の係合凹部が形成され、他方の開口縁に沿って前記係合凹部と係合する断面山型の係合突部が形成され、少なくとも一方の面に緩衝材が一体的に付着されていること
を特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記上部カバーと下部トレーは、
両者の接合部を固定するための締結部材が、当該接合部の外側面にそれぞれ等当間隔で配置されていること
を特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記締結部材は、
前記上部カバーの開口面に設けられる係止フックと、下部トレーの開口面に設けられるスプリング式のハンドルロックとから構成されるもので、前記ハンドルロックのリングを前記係止フックに係合させ、ハンドルロックのハンドルを下方に押し下げることによってワンタッチ式で上部カバーと下部トレーとを一体化させること
を特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記緊締手段は、
前記上部カバーの支柱に連設する脚部の底面に形成された長孔に挿通可能な頭部を有する緊締ボルトと、この緊締ボルトに螺合するナットと、前記緊締ボルトを回転させるためのハンドルとから構成されていること
を特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記上部カバーは、
各コーナー部に配置した支柱の頂部に、リフティングラグを有するコーナキャスティングがそれぞれ一体的に付設されていること
を特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記上部カバーは、
その上面の各縁部に、上部カバー取扱い専用のフォークガイドが一体的に付設されていること
を特徴とするものである。
【0017】
さらに、この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物の搬送用コンテナにおいて、
前記下部トレーは、
その床面の各縁部に、吊り上げ用のラグを有する下部トレー取扱い専用のフォークガイドが一体的に付設されていること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明の廃棄物の搬送用コンテナは、中空直方体を上部構造体と下部構造体とに上下に二分割した形態の上部カバーと下部トレーが、上部カバーに取付けられた支柱を、下部トレーを挟持しながら下部トレーの床面まで延出するとともに、支柱に連設する脚部を介して緊締手段によって、さらには、上部カバーと下部トレーとの接合部に設けられた締結部材によって、上部カバーと下部トレーとを確実に締結させるので、高度な気密性を確保することができ、搬送用コンテナの外部へ有毒性物質を漏洩させ、あるいは、流出させることのないものである。また、その気密性は、上部カバーと下部トレーの接合部における凹凸形状の嵌合と緩衝材の併用によってさらに向上させることができる。
【0019】
また、上部カバーに取付けられた支柱は、下部トレーの床面まで延出しているので、下部トレーに外部から圧力が掛かるのを防止し、下部トレーの変形、破壊を防止し、延いては搬送用コンテナ自体の強度を著しく向上させるものである。
【0020】
また、上部カバーに取付けられた支柱が、下部トレーの底部で下部トレーと緊密に締結することができるので、搬送用コンテナを吊り下げるとき、下部カバーの底部を持ち上げのみによって、高い安定性を保持した状態で吊り下げることができる。
【0021】
さらに、上部カバーと下部トレーとは、支柱を介して、さらには締結部材や緊締手段を併用して確実に締結されているので、従来のものより一段と安全性が高く、搬送用コンテナの落下や転倒、特に交通事故などにおける激しい衝撃に対しても耐えられ、積載物を外部に放出することにないもので、有毒性物質を含んだ廃棄物の輸送や保管に使用するに最適なものであって、それら輸送や保管に際して、周辺環境を汚染することがなく、人体への悪影響も与えることおそれのないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、有毒性物質であるPCBを含む廃棄物を収容・輸送するに好適な、この発明にかかるコンテナの一実施例を添付の図面に基づいて具体的に説明するが、この発明は実施例にのみ限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲において種々変更を加えることができるものである。
【0023】
この発明にかかる廃棄物の搬送用コンテナ1は、図1に示すように、中空直方体を上下に二分割した、相対する面に開口部を有するボックス状の上部カバー2(上部構造体とも言う。)と、同じく開口部を有する下部トレー10(下部構造体とも言う。)の二つの構造体から構成されるものである。
【0024】
二つの構造体のうち、上部カバー2は、方形の上面2aと、この上面2aの各側縁から垂設する側壁2b〜2eを有し、その四隅にそれぞれに、中空体からなる支柱3を上面2aから下端部を開口部から突出させた状態で、溶接などの手段によって固着されたものであって、支柱4の長さは後述する下部トレー10の底面10aに達する長さとし、開口部から突出した部位を脚部4としている。
なお、この脚部4の底面4aには、後述する下部トレー10に設けた緊締手段12を構成する緊締ボルトの頭部を挿通させるための長孔4bが形成されている。(図6参照)
【0025】
この上部カバー2を構成する上面2a、各側壁2b〜2eは、いずれもステンレス製のコルゲートパネルを使用することが、有害物質との関係では好ましいが、その素材に特段の制限はなく、支柱3もステンレス製の構造用鋼材を使用している。
【0026】
この上部カバー2の上面2aには、上部カバー取り扱い専用の、構造用鋼材からなるフォークガイド5が設けられているとともに、各支柱3の上部には、載荷した搬送用コンテナ1を、ワイヤ吊り上げ荷役に使用するためのコーナキャスティング6が一体的に付設されている。また、このコーナキャスティング6の上面2a側の突出面6aには、必要に応じワイヤ挿通用のリフティングラグ6bが設けられる。さらに、前記の側壁2b〜2eには、図示しないが、収容物の状態を看視するための覗き窓を設けてもよい。
【0027】
一方、前記下部トレー10は、方形の床面10aの各側縁に沿って上方に向けて立設された側壁10b〜10eを有するもので、各側壁10b〜10eの連設部、すなわち、各コーナー部を内側に折り曲げて切欠き部を形成し、前記各支柱3の脚部4を嵌め合わせるための脚部受入部11としたもので、各脚部受入部11の下部には、各脚部4を介して上部カバー2と下部トレー10とを、相互に締結するための緊締手段12が一体的に設けられている。
【0028】
なお、前記各側壁10b〜10eも、ステンレス製のコルゲートパネルを使用しているが、その素材には特段の限定はない。また、床面10aの裏面は、当然のことながら、構造用鋼材などからなるクロスメンバー、桁などのよって補強されているものである。
【0029】
また、下部トレー10を構成する各側壁10b〜10eの下部(実質的には、床面10aの裏面に設けられた補強材の側面)には、フォーク作業を可能とするフォークポケット13が設けられている。なお、フォークポケット13の上部に形成される床面1aは完全平面であって、前記側壁10b〜10eの内面には、後述する積載物の揺動防止に使用するラッシングバーや、井桁バーを固定するラッシングレール14が付設されている。さらに、床面10a上には、ドラム缶などの積載物を固定するための井桁バーを固定するための井桁バー固定溝15が設けられている。さらにまた、図示しないが、必要に応じて吊り下げ用のリングを設けることもできる。
【0030】
かかる構成を有する上部カバー2と下部トレー10は、先に述べた規格に従ったものとするために、この実施例においては、ステンレス製とし、その大きさは、幅および奥行は共に2000mm×2950mmとし、高さは、上部カバー2は脚部の高さ730mmを含めて1980mm、下部トレー3の高さは800mm、上部カバー2と下部トレー3を締結し一体化した後の高さを2050mmのものとした。
なお、それらの底面、側面、天面などはSUS304コルゲートパネル、チェッカーパネル等を用い、構造用鋼材に溶接により一体化され、箱形形状とされている。
【0031】
この搬送用コンテナ1は、図1に示すように、上部カバー2の各コーナーに一体的に付設された支柱3の先端部の脚部4を、下部トレー10の各コーナー部に形成された対応する脚部受入部11に当接させながら下降させ、各脚部4の先端面が各脚部受入部11の底面と当接させることによって、上部カバー2の開口縁と下部トレー10の開口縁とを密着させて箱型形状とするものである。
【0032】
その際、搬送用コンテナ1の密封性を向上させるため、図2に示すように、上部カバー2の各側壁(図示の例は側壁2b)の開口縁に、断面逆山型状の嵌合凹部2fが一体的に形成されているとともに、この嵌合凹部2fの内面にはスポンジラバーからなる緩衝材2gが貼着固定されている。
【0033】
また、下部トレー10の側壁10b〜10eの開口縁(図示の例は側壁10b)には、前記側壁2bの開口縁に形成された断面逆山型状の嵌合凹部2fに嵌合する、嵌合凸部10fが一体的に形成されている。したがって、下部トレー10と上部カバー2の各開口部を接合すると、下部トレー10の各側壁10b〜10eの各開口縁に形成された嵌合凸部が、上部カバー2の各側壁2b〜2eの各開口縁に形成された嵌合凹部内に入り込み、密閉された搬送用コンテナ1が形成される。その際、各嵌合凹部の内面には緩衝材が存在するので、搬送用コンテナ1の密封性が十分に確保されることになる。
【0034】
また、上部カバー2と下部トレー10を一体化させて搬送用コンテナ1とする際、上部カバー2と下部トレー10の接合部、すなわち上部カバー2と下部トレー10の側壁端部には、密閉状態を維持するため、スプリング式のハンドルロックなどの締結部材16が設けられている。
【0035】
この締結部材16は、下部トレー10の各側壁の外側に等間隔で配置された、スプリング式のハンドルロックなどの締結具17と、上部カバー2の各側壁の外側に、前記締結具17と対応して設けられる締結用の係止フック18とから構成されるもので、締結具17のハンドル17aを緩めた状態において、締結具17のリング17bを係止フック18に引っ掛け、しかるのち、締結具17のハンドル17aを下方に押し下げることにより、上部カバー2と下部トレー10の接合部が互いに係合し、上部カバー2と下部トレー10とが強固に締結される。
【0036】
また、締結部材16は、搬送用コンテナ1を構成する上部カバー2と下部トレー3の相対する部位に、ほぼ等間隔に配置することによって、上部カバー2と下部トレー3の接合部の締結力を均一にすることができ、高度な気密性を確保することができる。
【0037】
さらに、この発明の搬送用コンテナ1においては、使用時に上部カバー2と下部トレー10とを強固に一体化させるため、先に述べたように、各脚部受入部11の下部に、各支柱3の脚部4を介して、上部カバー2と下部トレー10とを締結するための緊締手段12が、それぞれ下部トレー10と一体的に設けられている。
【0038】
すなわち、この緊締手段12は、図3で明らかなように、下部トレー10の各コーナーに形成された切欠き部からなる脚部受入部11の下方に配置される中空体20内に設けられるもので、前記中空体20の一側面は外側に開口20aしているとともに、その上面20bの、前記脚部4の底面部4aに形成された長孔4bの中心部と相対する部位には、緊締手段12を構成する緊締ボルト21の軸部21aを挿通させるための挿通孔20cが形成されている。
【0039】
前記緊締ボルト21は、前記脚部4の底面に形成された長孔4bと同形で、かつ一回り小さな矩形状の頭部21bを有するもので、この緊締ボルト21の軸部21aを前記挿通孔20cの上方から挿通させ、中空体20内に突出した軸部21aにナット22を螺合させるとともに、基端部に操作用のハンドル23を一体的に付設したものである。
【0040】
なお、前記中空体20の底面上には、前記ハンドル23を利用して緊締ボルト21を回転させるに際し、ハンドル23の回転範囲を規制するためのストップピン24が立設されているとともに、ハンドル23がストップピン24に当接した状態でハンドル23の位置を固定するためのハンドル固定ピン孔25が立設され、このハンドル固定ピン孔25と係合するピン孔23aがハンドル23に形成されている。
【0041】
かかる緊締手段12を使用して、上部カバー2と下部トレー10との緊締は、以下のようにして行われる。
【0042】
緊締手段12を構成する緊締ボルト21の矩形状の頭部21aは、図3で明らかなように、常時、中空体20の上面に、上部カバー2の脚部4の底面4aに形成された長孔4bと同一方向にあるよう顕出しているので、上部カバー2を吊り上げ、その脚部4を、下部トレー10の脚部受入部11に沿って下降させると、前記頭部21bが脚部4の底部4aに形成された長孔4b内にセットされる。(図3参照)
【0043】
ついで、中空体20の開口部20aから手を入れ、図4および図5に示すように、ハンドル23を持ち上げて緊締ボルト21の頭部21bを、脚部4の底面4a上に顕出させたのち、その状態を保持しながら、図6に示すように、ハンドル23を点線で示すように左側にストップピン24に当接するまで回転(ほぼ90度)させると、緊締ボルト21の頭部21bが、図7に示されるように、支柱4の底部4a上に載置される状態となる。この時点では、ハンドル23に形成したピン孔23aとハンドル固定ピン孔25とが一致することになるので、前記ピン孔23aの上部から固定ピン26をハンドル固定ピン孔25に向けて挿通させると、ハンドル23がその位置に固定される。
【0044】
この状態で軸部21aに螺合されているナット22をスパナなどの工具を使用して締め付ければ、上部カバー2と下部トレー10は強固に結合され、交通事故などにおける転倒などにおいても、その結合は外れることがなく、積載物を漏洩させることの無いコンテナが形成されるものである。
【0045】
なお、上部カバー2と下部トレー10との分離は、前記操作と逆の順序で行うことによって簡単かつ容易に行うことができるものである。
【0046】
以上のようにして、上部カバー2と下部トレー10とを結合して構成される、この発明の搬送用コンテナ1は、有毒性物質であるPCBを含む廃棄物などを収容する際は、別途インナー容器を調製し、このインナー容器に充填したうえで、搬送用コンテナ1に積載することが好ましいが、廃棄物がドラム缶に収納されている、あるいはPCBを絶縁油として用いてあるトランスなどであれば、ラッシングバーや井桁バーを用いて、搬送用コンテナ1内に固定収容される。
【0047】
図8は、その一例として、ドラム缶30をラッシングバー31と井桁バー32で挟持固定して収容している状態を示すもので、ラッシングバー31と井桁バー32は、図1に示される下部トレー10の内壁面に設けられたラッシングレール14や井桁バー固定溝15により固定される。
【0048】
ドラム缶やトランスを上記のように収納する際、必要により、ゴムシートのような緩衝材、さらには、漏洩の際の拡大を防ぐために、市販されている油液吸着用のシートや筒状の吸着材を適宜用いることが望ましい。
【0049】
なお、上記実施の形態では、主としてPCBを含む廃棄物を輸送、保管する場合を例示したが、この発明に係る搬送用コンテナは、PCB以外の環境汚染廃棄物、医療汚染廃棄物等を輸送する場合にも使用することができる。また、上部カバーと下部トレーの接合のための締結手段部としてスプリング式ハンドルロックを例示したが、これに限られず、例えばキャッチクリップ以外のワンタッチ金具やスイングボルトなど種々の締結金具を使用することができる。
【0050】
また、この発明にかかる搬送用コンテナとして、特定のサイズのコンテナを例示したが、コンテナサイズはこれらに限られることなく、使用用途・目的、輸送形態などによって最適なサイズを任意に設定することができる。さらに、この発明の搬送用コンテナは箱形コンテナに限らず、異型や円筒型のコンテナにも当然適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明の搬送用コンテナは、各種産業で使用されている、あるいは使用されてきたPCBのようなPCBのような有毒性の廃棄物の輸送、保管に最適なもので、それらを使用し、あるいは使用していた各種産業分野で幅広く利用される可能性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明にかかる搬送用コンテナの概略を示す分解斜視図である。
【図2】上部カバーと下部トレーの結合部を示す拡大図である。
【図3】下部トレーと上部カバーとを、上部カバーの脚部を介して緊締するための緊締手段を示す説明図である。
【図4】緊締手段の緊締ボルトを持ち上げた状態を示す説明図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】図4の平面図である。
【図7】上部カバーと下部トレーの緊締状態を示す説明図である。
【図8】下部トレー内にドラム缶を積載する状態を示す説明図である。
【図9】図1に示す搬送用コンテナの側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 搬送用コンテナ
2 上部カバー(上部構造体)
3 支柱
4 脚部
4a 脚部の底部
10 下部トレー(下部構造体)
11 脚部受入部
12 緊締手段
16 締結部材
17 締結具
18 フック
20 中空体
21 緊締ボルト
21a 緊締ボルトの軸部
21b 緊締ボルトの頭部
22 ナット
23 ハンドル
24 ストップピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する開口面を接合したとき密封された中空直方体を形成する、下面が開口した上部カバーと、上面が開口した下部トレーとからなるもので、
前記上部カバーは、各コーナー部に開口面から突出する脚部を一体的に設けた支柱が配設固定され、
前記下部トレーは、各コーナー部に前記脚部を受け入れるための脚部受入部が形成されるとともに、床面まで延出する前記脚部の先端面と相対する部位に、前記脚部を介して上部カバーと下部トレーとを緊締するための緊締手段が設けられていること
を特徴とする廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項2】
前記上部カバーと下部トレーは、
いずれか一方の開口縁に沿って断面山型の係合凹部が形成され、他方の開口縁に沿って前記係合凹部と係合する断面山型の係合突部が形成され、少なくとも一方の面に緩衝材が一体的に付着されていること
を特徴とする請求項1に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項3】
前記上部カバーと下部トレーは、
両者の接合部を固定するための締結部材が、当該接合部の外側面にそれぞれ等当間隔で配置されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項4】
前記締結部材は、
前記上部カバーの開口面に設けられる係止フックと、下部トレーの開口面に設けられるスプリング式のハンドルロックとから構成されるもので、前記ハンドルロックのリングを前記係止フックに係合させ、ハンドルロックのハンドルを下方に押し下げることによってワンタッチ式で上部カバーと下部トレーとを一体化させること
を特徴とする請求項3に記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項5】
前記緊締手段は、
前記上部カバーの支柱に連設する脚部の底面に形成された長孔に挿通可能な頭部を有する緊締ボルトと、この緊締ボルトに螺合するナットと、前記緊締ボルトを回転させるためのハンドルとから構成されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項6】
前記上部カバーは、
各コーナー部に配置した支柱の頂部に、リフティングラグを有するコーナキャスティングがそれぞれ一体的に付設されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項7】
前記上部カバーは、
その上面の各縁部に、上部カバー取扱い専用のフォークガイドが一体的に付設されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物の搬送用コンテナ。
【請求項8】
前記下部トレーは、
その床面の各縁部に、吊り上げ用のラグを有する下部トレー取扱い専用のフォークガイドが一体的に付設されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物の搬送用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−204136(P2007−204136A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28044(P2006−28044)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000227216)日通商事株式会社 (27)
【Fターム(参考)】