説明

廃棄物を主材としたセラミックスおよびその製造方法

【課題】異常膨張がなく熱膨張係数も小さく焼成安定性があり大型製品を形成可能であると共に、迅速焼成および低温焼成が可能で、かつ廃棄物を有効に活用して様々な用途に活用できる、廃棄物を主材としたセラミックスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の廃棄物を主材としたセラミックスは、石炭灰、或いは石炭灰と、石灰系廃棄物またはガラス系廃棄のうち少なくとも1つを主材として焼成されたセラミックスである。また、本発明の廃棄物を主材としたセラミックスの製造方法は、石炭灰と、石灰系廃棄物またはガラス系廃棄のうち少なくとも1つを主材としてセラミックス原料を作製する工程と、前記セラミックス原料を用いて成形する成形工程と、成形体を乾燥する乾燥工程と、乾燥した成形体を焼成する焼成工程とを経て製造されるセラミックスの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物である石炭灰等を利用して焼成されたセラミックスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭灰は、主として火力発電により多量に発生する産業廃棄物であり、この石炭灰の処理方法としては、埋め立て等の陸上処理がほとんどで、一部がコンクリート用の骨材等混和材として利用されている。また、近年、石炭灰をセラミックス原料として用いてセラミックスを製造する技術が種々提案されている。
【特許文献1】特開平9−156998号公報
【特許文献2】特開2000−86348号公報
【特許文献3】特開2002−274932号公報
【0003】
ところで、石炭灰の化学成分は、石炭灰の種類により差異はあるが、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、酸化鉄(Fe)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)でありセラミックス原料として好適である。また、石炭灰は一度高温で処理されているため、焼成に際して異常膨張がなく、熱膨張係数も小さくて焼成安定性があると共に、迅速焼成や低温焼成が可能となる。
【0004】
他方、石炭灰は成形性に難点があるが、石灰系廃棄物やソーダ系廃棄物などを利用し、それら各々の成分を予め把握した上でセラミックス原料を調製すれば、成分的にソーダ系長石(NaO,Al,SiO)と石灰系長石(CaO,Al,SiO)との中間に位置する斜長石(NaO,CaO,Al,SiO)とほぼ同様の累帯構造を呈し、様々な用途に活用可能な多孔体、緻密体を得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、石炭灰を中心としたこのような廃棄物を再利用して様々なセラミックスを提供できる点に着目し本発明を想起したものであり、すなわち、本発明の課題は、異常膨張がなく熱膨張係数も小さく焼成安定性があり大型製品を形成可能であると共に、迅速焼成および低温焼成が可能で、かつ廃棄物を有効に活用して様々な用途に活用できる、廃棄物を主材としたセラミックスおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するものは、石炭灰と石灰系廃棄物とを主材として焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックスである。
【0007】
また、上記課題を解決するものは、石炭灰とソーダ系廃棄物とを主材として焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックスである。
【0008】
さらに、上記課題を解決するものは、石炭灰と石灰系廃棄物とソーダ系廃棄物とを主材として焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックスである。
【0009】
さらに、上記課題を解決するものは、石炭灰のみを主材として成形及び焼結剤を添加して焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックスである。
【0010】
さらに、上記課題を解決するものは、石炭灰、或いは、石炭灰と、石灰系廃棄物またはソーダ系廃棄物のうち少なくとも1つを主材とし、気孔形成材を添加して焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックスである。
【0011】
さらに、上記課題を解決するものは、石炭灰、或いは、石炭灰と、石灰系廃棄物またはソーダ系廃棄物のうち少なくとも1つを主材とし、金属汚泥、カラミまたはスラグのうち少なくとも一つを添加して焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックスである。
【0012】
さらに、上記課題を解決するものは、石炭灰と、石灰系廃棄物またはソーダ系廃棄物のうち少なくとも1つを主材としてセラミックス原料を作製する工程と、前記セラミックス原料を用いて成形する成形工程と、成形体を乾燥する乾燥工程と、乾燥した成形体を焼成する焼成工程とを経て製造されることを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックスの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1ないし4に記載の発明によれば、異常膨張がなく熱膨張係数も小さく焼成安定性があり大型製品を形成可能であると共に、迅速焼成および低温焼成が可能で、かつ廃棄物を有効に活用して様々な用途に活用できる廃棄物を主材としたセラミックスとなる。
請求項5に記載の発明によれば、上記請求項1の効果に加え、より軽量なセラミックスとなる。
請求項6に記載の発明によれば、幅広い色合いを呈したセラミックスとなる。
請求項7に記載の発明によれば、異常膨張がなく熱膨張係数も小さく焼成安定性があり大型製品を形成可能であると共に、迅速焼成および低温焼成が可能で、かつ廃棄物を有効に活用して様々な用途に活用できる廃棄物を主材としたセラミックスを作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の廃棄物を主材としたセラミックスおよびその製造方法は、石炭灰を中心とした廃棄物によりセラミックスを形成することを主要な特徴とする。
【0015】
本発明の廃棄物を主材としたセラミックスは、石炭灰単独、或いは石炭灰と、石灰系廃棄物またはソーダ系廃棄物のうち少なくとも1つを主材としてセラミックス原料が調製され焼成されたセラミックスである。以下、各構成について具体的に説明する。
【0016】
石炭灰は、主として火力発電所で使用されている石炭の残灰(燃え滓)であり、粒度の小さく球状のフライアッシュ(約90%)と、粒度が大きく多孔質のクリンカアッシュ(約10%)とからなる。この石炭灰は、粘土石英系廃棄物であり、大量に存在するため、セラミックス原料して好適であると共に、一度高温で熱処理されているため、異常膨張がなく、収縮率も小さく、熱膨張係数も小さいため焼成安定性に優れている。
【0017】
粘土石英系廃棄物としては、山砂利汚泥、珪砂鉱山汚泥、長石鉱山汚泥などの各種汚泥を利用することも考えられるが、これらは高温処理がされておらず、高温処理されている上記石炭灰の利点を有しないため、石炭灰と共にセラミックス原料の一部として使用することができる。
【0018】
石炭灰の含有量は、調製するセラミックス原料の30〜99重量%の範囲内であることが好ましい。30重量%未満であると、前述した石炭灰の利点が十分にセラミックスに反映されず、他方、99重量%を越えると成形不能となるからである。
【0019】
石灰系廃棄物は、セラミックス原料であると共に成形剤および焼結剤としても作用するものであり、石灰石鉱山汚泥、貝殻、廃棄セメント(セメント汚泥、コンクリート汚泥)、カーバイトカス、石膏廃棄物、廃棄水酸化カルシウムなどが好適に使用できる。なお、この石灰系廃棄物の含有量としては、調製するセラミックス原料の5〜35重量%の範囲内であることが好ましい。5重量%未満であると、成形剤および焼結剤として十分に作用せず、他方、35重量%を越えると、焼成によって部分的に熔融せず焼成体が崩壊するおそれがあるからである。
【0020】
ソーダ系廃棄物もまた、セラミックス原料であると共に成形剤および焼結剤としても作用するものであり、ガラスビンや板ガラス、廃棄水ガラスなどの廃棄ガラスが好適に使用できる。なお、このソーダ系廃棄物の含有量としては、調製するセラミックス原料の5〜60重量%の範囲内であることが好ましい。5重量%未満であると、成形剤および焼結剤として十分に作用せず、他方、40重量%〜60重量%であると緻密体となり、さらに、60重量%を越えると発泡体となって焼成後の寸法精度を維持できなくなるおそれがあるからである。
【0021】
本発明の廃棄物を主材としたセラミックスは、これら石炭灰、石灰系廃棄物、ソーダ系廃棄物を主材としてセラミックス原料が調製され焼成されたセラミックスであるが、成形・焼結剤として廃棄物ではない未使用材料が添加されていてもよい。
【0022】
また、セラミックス原料内には、気孔形成材を添加してもよく、これにより、より軽量なセラミックスを作製できる。気孔形成材としては、発泡ガラス(予め発泡させたガラス)や各種有機廃棄物(例えば発泡スチロールや木屑)などが好適に使用できる。
【0023】
さらに、セラミックス原料内には、金属汚泥(例えば金属鉱山や金属製練から発生する汚泥)、カラミ、スラグなどを呈色材として添加してもよく、これによって、それらが含有する金属の種類によって様々な色合いを呈し装飾材として好適なセラミックスを得ることができる。
【0024】
また、本発明の廃棄物を主材としたセラミックスの製造方法は、石炭灰と、石灰系廃棄物またはガラス系廃棄のうち少なくとも1つを主材としてセラミックス原料を作製する工程と、前記セラミックス原料を用いて成形する成形工程と、成形体を乾燥する乾燥工程と、乾燥した成形体を焼成する焼成工程とを経て製造されるセラミックスの製造方法であるが、セラミックス原料の作製工程、成形工程、乾燥工程および焼成工程は、様々な公知の方法にて実施することができる。ただし、本発明の廃棄物を主材としたセラミックスは、700〜1100℃程度の低温で焼成可能であり、また、昇温から焼成までに要する時間が、焼成するセラミックスの大きさによって異なるが、2〜3時間程度と極めて短時間で焼成可能である。さらに、焼成安定性に優れているため、例えば1m以上の大型製品を寸法精度を保持して焼成可能である。
【実施例1】
【0025】
石炭灰50重量%、石灰系廃棄物として石灰石鉱山汚泥30重量%、山砂利汚泥20重量%を混合してセラミックス原料を調製し、乾式プレスにて成形した。この成形体を乾燥した後、焼成炉内に配し、最高温度1100℃(900〜1100℃であれば焼成可能)で2時間焼成して請求項1に記載のセラミックスを作製した。得られたセラミックスは、内部に連続気孔が形成された多孔体であり、嵩比重1.2g/cc、吸水率28%、焼成収縮率0%であった。なお、このセラミックス原料に水分25%を加え練り土状態としたものは、手でも任意の形状とすることができる程、造形が容易なものであり、明るい土色を呈し、作陶用陶土としても使用可能であった。
【実施例2】
【0026】
石炭灰35重量%、ソーダ系廃棄物としてガラス瓶粉末40重量%、発泡ガラス20重量%、粘性付与剤としてベントナイト5重量%を水を用いて混合してセラミックス原料を調製し、乾式プレスにて成形した。この成形体を乾燥した後、焼成炉内に配し、最高温度900℃で3時間焼成した請求項2に記載のセラミックスを作製した。得られたセラミックスは、内部に単独気孔が形成された多孔体でかつ緻密体であり、嵩比重1.6g/cc、吸水率0%、焼成収縮率8%であった。
【実施例3】
【0027】
石炭灰60重量%、石灰系廃棄物として石灰石鉱山汚泥20重量%、ソーダ系廃棄物としてガラス瓶粉末18重量%、気孔形成材として有機廃棄物(発泡スチロール)2重量%を混合してセラミックス原料を調製し、1m×1m×0.3mの板状体を振動プレスにて成形した。この成形体を乾燥した後、焼成炉内に配し、最高温度1050℃で2時間焼成して請求項3または請求項5に記載のセラミックスを作製した。得られたセラミックスは、嵩比重0.3g/cc、吸水率100%、焼成収縮率1%、乾燥収縮率0%であり、気孔が粗く、吸音性、遮音性に優れた多孔体であった。
【実施例4】
【0028】
石炭灰95重量%に、成形および焼結剤として水ガラスの粉末5重量%を含有した水溶液を添加してセラミックス原料を調製し、乾式プレスにて成形した。この成形体を乾燥した後、焼成炉内に配し、最高温度1000℃で3時間焼成して請求項4に記載のセラミックスを作製した。得られたセラミックスは、嵩比重1.2g/cc、吸水率35%、焼成収縮率0%、乾燥収縮率0%の多孔体であった。
【実施例5】
【0029】
石炭灰99重量%に、成形および焼結剤としてクボフラックス(商標名:特殊硼酸塩、燐酸塩、弗化剤からなる成形および焼結剤)1重量%を含有した水溶液を添加してセラミックス原料を調製し、乾式プレスにて成形した。この成形体を乾燥した後、焼成炉内に配し、最高温度900℃で2時間焼成して請求項4に記載のセラミックスを作製した。得られたセラミックスは、吸水率40%、焼成収縮率0%の多孔体であった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の廃棄物を主材としたセラミックスは、種々の廃棄物を有効活用できると共に、焼成安定性に優れ迅速焼成および低温焼成が可能であり、周知の加飾方法により施釉することにより、陶器、タイルなどのセラミックス製品を低廉に作製できる。また、軽量体から緻密体まで様々なセラミックス製品を作製であるため、吸音材、遮温材、断熱材、内外壁材などの建築材料などとして広く利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰と石灰系廃棄物とを主材として焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックス。
【請求項2】
石炭灰とソーダ系廃棄物とを主材として焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックス。
【請求項3】
石炭灰と石灰系廃棄物とソーダ系廃棄物とを主材として焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックス。
【請求項4】
石炭灰のみを主材として成形及び焼結剤を添加して焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックス。
【請求項5】
石炭灰、或いは、石炭灰と、石灰系廃棄物またはソーダ系廃棄物のうち少なくとも1つを主材とし、気孔形成材を添加して焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックス。
【請求項6】
石炭灰、或いは、石炭灰と、石灰系廃棄物またはソーダ系廃棄物のうち少なくとも1つを主材とし、金属汚泥、カラミまたはスラグのうち少なくとも一つを添加して焼成されたことを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックス。
【請求項7】
石炭灰と、石灰系廃棄物またはソーダ系廃棄物のうち少なくとも1つを主材としてセラミックス原料を作製する工程と、前記セラミックス原料を用いて成形する成形工程と、成形体を乾燥する乾燥工程と、乾燥した成形体を焼成する焼成工程とを経て製造されることを特徴とする廃棄物を主材としたセラミックスの製造方法。

【公開番号】特開2007−261901(P2007−261901A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90988(P2006−90988)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(591221824)有限会社美濃資源開発 (4)
【Fターム(参考)】