廃棄物処分施設及びその構築方法

【課題】構造が簡易で、工期が短く、コストが低く、それであっても遮水シートの剥離や亀裂が起こらず、遮水性が維持され、信頼性が高い廃棄物処分施設を提供し、もって、多数のしかも大容量の廃棄物処分施設を迅速に構築する要請に応えられるようにする。
【解決手段】PCaブロック1の少なくとも縦壁部に、表面に熱溶着材を備えたシート固定具6が取り付けられ、複数のPCaブロック1がシート固定具6を囲壁18内側にして凹所の底面に並べて設置されることにより囲壁18が形成され、遮水シート12が、シート固定具6の熱溶着材に溶着固定されて、囲壁18内の縦面及び底面に敷設される。囲壁18の上端開口を蓋体で覆い、廃棄物処分施設の上方を現場の地面15の一部として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びそれに伴う津波は、極めて多数の人命を奪い、極めて多数の家屋を破壊し、原子力発電設備を損傷させるなど、未曾有の被害をもたらした。このような大災害の直後に生じる問題の一つに、多量に生じたがれきの処理がある。可燃のがれきについては、焼却してその焼却灰及び焼却残査を廃棄物処分場に投棄することが望ましい。しかし、がれきが多量に生じた場合、焼却灰及び焼却残査も多量に生じるので、多数のしかも大容量の廃棄物処分場を迅速に構築することが必要になる。そのためには、構造が簡易で、工期が短く、コストが低く、それであっても汚水を漏出させないために遮水性が維持され、信頼性が高い廃棄物処分場が求められる。
【0003】
従来の構造が簡易な廃棄物処分場としては、現場の土地に凹所を掘り、凹所の内面に遮水シートを敷設して構築されるものが多い。
【0004】
特許文献1には、処分場の底面部および側面の斜面部に築造する遮水層を、ベントナイト混合土層と遮水シートとの多層構造とし、底面部のベントナイト混合土層はベントナイト混合土を転圧して築造し、斜面部のベントナイト混合土層は吹き付けまたはベントナイト混合土の圧縮ブロックの積層で形成し、ベントナイト混合土層の上に遮水シートを布設してなる廃棄物処分場が開示されている。この廃棄物処分場によると、ベントナイト混合土層と遮水シートとで遮水機能を高めることができる。しかし、ベントナイト混合土層の敷設に設備と手間がかかり、また、遮水シートがベントナイト混合土層から剥離したり、強度がさほど高くないベントナイト混合土層と遮水シートに余震などで亀裂が入ったりして、遮水性が切れるおそれがあるという問題があった。
【0005】
特許文献2には、法面と底面とを有する廃棄物投棄用の凹面の全面に、突起付きの遮水シートを固定した型枠を、凹面との間に間隔を空けて配し、凹面と遮水シートとの間にコンクリートを打設し、そして、そのまま一定期間養生させコンクリートを硬化させ、硬化後、型枠を取り外して構築する廃棄物処分場が開示されている。この廃棄物処分場によると、隙間が生じないような状態で遮水シートにより被覆された凹面を備えた処分場を構築でき、また、突起で遮水シートの剥離を防止したり、コンクリートで強度を確保したりして、遮水性を維持できる。しかし、現場における型枠の配置とコンクリートの打設に設備と手間がかかり、また、コンクリートの養生に時間がかかるという問題があった。また、突起付き遮水シートは、コストが高くつく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−76238号公報
【特許文献2】特開2002−59104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、構造が簡易で、工期が短く、コストが低く、それであっても遮水シートの剥離や亀裂が起こらず、遮水性が維持され、信頼性が高い廃棄物処分施設を提供し、もって、多数のしかも大容量の廃棄物処分施設を迅速に構築する要請に応えられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の廃棄物処分施設は、基版部と該基版部から立設した縦壁部とを含むプレキャストコンクリートブロックの少なくとも縦壁部に、表面に熱溶着材を備えたシート固定具が取り付けられ、複数のプレキャストコンクリートブロックがシート固定具を囲壁内側にして設置面に並べて設置されることにより囲壁が形成され、遮水シートが、シート固定具の熱溶着材に溶着固定されて、囲壁内の縦面及び底面に敷設されてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の廃棄物処分施設の構築方法は、基版部と該基版部から立設した縦壁部とを含むプレキャストコンクリートブロックの少なくとも縦壁部に、表面に熱溶着材を備えたシート固定具を取り付け、複数のプレキャストコンクリートブロックをシート固定具を囲壁内側にして設置面に並べて設置することにより囲壁を形成し、遮水シートを、遮水シートを介して行う電磁誘導加熱により溶融させたシート固定具の熱溶着材に溶着固定して、囲壁内の縦面及び底面に敷設することを特徴とする。
【0010】
ここで、プレキャストコンクリートブロック(以下「PCaブロック」という。)としては、本施設専用に製造されたブロック、既存の擁壁用ブロック等を例示できる。PCaブロックの形状としては、基版部と該基版部の前端部から立設した縦壁部とを含むL型、基版部と該基版部の前後方向途中部から立設した縦壁部とを含む倒立T型等を例示できる。L型の場合、基版部が囲壁の内側となるように設置面に設置することが好ましい。
【0011】
表面に熱溶着材を備えたシート固定具は、PCaブロックの縦壁部に加えて、基版部の上側にも取り付けることができる。このシート固定具により、遮水シートのずれや剥離がさらに防止される。
【0012】
PCaブロックを設置する設置面は、現場の地面でもよいが、地面下に囲壁を収納できるように、現場の地面に掘った凹所の底面とすることが好ましい。後者の場合、囲壁の上端開口を蓋体で覆うことが好ましい。廃棄物処分施設の上方を現場の地面の一部として利用することができるようになるからである。蓋体としては、長スパンのものが作れる点で、プレキャスト・プレストレストコンクリート板(以下「PCa・PC板」という。)が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構造が簡易で、工期が短く、コストが低く、それであっても遮水シートの剥離や亀裂が起こらず、遮水性が維持され、信頼性が高い廃棄物処分施設を提供することができ、もって、多数のしかも大容量の廃棄物処分施設を迅速に構築する要請に応えられるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は実施例の廃棄物処分施設における囲壁の直線部に用いたPCaブロックの斜視図、(b)は同じくコーナ部に用いたPCaブロックの斜視図、(c)はこれらのPCaブロックの要部断面図である。
【図2】(a)は同廃棄物処分施設の構築方法における凹所形成とPCaブロックの設置途中を示す斜視図、(b)は同設置が完了して囲壁が形成された状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は同囲壁の底版が形成された状態を示す斜視図、(b)は同囲壁内の縦面及び底面に遮水シートを敷設する途中を示す斜視図である。
【図4】(a)は同遮水シートの溶着固定の仕方を示す斜視図、(b)は同じく断面図である。
【図5】(a)は同囲壁内に焼却灰等の廃棄物を投棄する途中を示す斜視図、(b)は同囲壁の上端開口を蓋体で覆う途中を示す斜視図である。
【図6】同廃棄物処分施設の上方に土を埋め戻した状態を示す斜視図である。
【図7】PCaブロックの別例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
廃棄物処分施設は、基版部2と該基版部2から立設した縦壁部3とを含むPCaブロック1の少なくとも縦壁部3に、表面に熱溶着材8を備えたシート固定具6が取り付けられ、複数のPCaブロック1がシート固定具6を囲壁18内側にして設置面に並べて設置されることにより囲壁18が形成され、遮水シート12が、シート固定具6の熱溶着材8に溶着固定されて、囲壁18内の縦面及び底面に敷設されてなる。設置面は、現場の地面15に掘った凹所16の底面17とし、地面15下に囲壁18を収納する。囲壁18の上端開口を蓋体で覆い、廃棄物処分施設の上方を現場の地面15の一部として利用する。
【実施例】
【0016】
本発明を具体化した廃棄物処分施設及びその構築方法の実施例を、図1〜図6を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施例に用いるPCaブロック1は、基版部2と該基版部2の前端部から立設した縦壁部3とを含む本施設専用に製造されたブロックである。図1(a)は廃棄物処分施設14における囲壁18の直線部に用いる二面L型のPCaブロック1であり、(b)は同じくコーナ部に用いる三面L型のPCaブロック1である。PCaブロック1の内部には補強鉄筋が埋設されており、基版部2における補強鉄筋の一部が基版部2の後端面から突き出すことにより突き出し鉄筋4が設けられている。縦壁部3の上端面には、後述する蓋体を嵌合するための凹段部5が形成されている。
【0018】
また、縦壁部3の少なくとも上部を含む要所(図示例では上部と中間部と下部の各二箇所)に埋設された、例えば雌ネジよりなるアンカー9には、金属円盤7とその表面に付着された熱溶着材8とを備えたシート固定具6が、例えばボルト10により固定されている。シート固定具6としては、例えばアーキヤマデ社製の商品名「IHディスク」を用いることができる。
【0019】
基版部2及び縦壁部3には、隣りに設置するPCaブロック1の基版部2及び縦壁部3と連結固定するための連結用金具が固定されている。連結用金具は例えば孔付き板であり、その場合、隣り合わせた連結用金具11の孔にボルト(図示略)を通して連結固定する。
【0020】
本実施例の廃棄物処分施設は、PCaブロック1の設置面を現場の地面15に掘った凹所16の底面17とし、地面15下に囲壁18を収納する。複数のPCaブロック1がシート固定具6を囲壁18内側にして設置面に並べて設置されることにより囲壁18が形成され、遮水シート12が、シート固定具6の熱溶着材8に溶着固定されて、囲壁18内の全面である縦面及び底面に敷設されている。(廃棄物22を投棄した後の)囲壁18の上端開口は蓋体として複数のPCa・PC板23で覆われ、囲壁18及び蓋体の上方には土24が埋め戻されるとともにさらに芝等の緑化層25が敷設され、廃棄物処分施設14の上方を現場の地面の一部として利用できるようになっている。
【0021】
本実施例の廃棄物処分施設14は、次のステップからなる方法で構築される。
(1)図2(a)に示すように、現場の地面15を掘って凹所16を形成する。
(2)図2(a)(b)に示すように、設置面である凹所16の底面17に、複数のPCaブロック1をシート固定具6を囲壁18内側にして設置面に並べて設置することにより囲壁18を形成する。なお、設置面に砕石を撒き、その上に基礎コンクリートを打設し、その上にPCaブロック1を設置してもよい。PCaブロック1同士は前記連結用金具11を用いて連結固定する。本実施例において遮水性は遮水シート12が受け持つが、さらにPCaブロック1同士の端面間をモルタル、シール材等でシールしてもよい。
【0022】
(3)図3(a)に示すように、PCaブロック1の基版部2で囲まれる凹所16の底面17上に、突き出し鉄筋4を埋設するようにして、底版コンクリート20を打設する。なお、底版コンクリート20を打設する代わりに、底面17上に土を埋めてもよいし、PCa底版を敷設してもよい。
(4)図3(b)及び図4(a)(b)に示すように、遮水シート12を、遮水シート12を介して高周波電磁誘導加熱器21を所定時間押し当てて行う電磁誘導加熱により溶融させたシート固定具6の熱溶着材8に溶着固定して、囲壁18内の全面である縦面及び底面に敷設する。遮水シート12同士は重ね合わせ部分を溶着して水密に敷設する。
【0023】
(5)図5(a)に示すように、囲壁18内に、がれきを焼却した焼却灰、焼却残査等の廃棄物22を投棄する。
(6)図5(b)に示すように、囲壁18の上端開口を蓋体として複数のPCa・PC板23で覆い、その板端部は凹段部5に嵌合する。
(7)図6に示すように、囲壁18及び蓋体の上方に土24を埋め戻すとともにさらに芝等の緑化層25を敷設し、廃棄物処分施設14の上方を現場の地面の一部として利用できるようにする。
【0024】
以上説明した本実施例によれば、次の作用効果が得られる。
(a)PCaブロック1を用いるため、現場での設備や手間がかからず、早期施工が可能であり、コストが低い。底版コンクリート20を打設する代わりに、底面17上に土を埋めたり、PCa底版を敷設した場合には、さらに工期を短縮することができる。
(b)PCaブロック1で囲壁18を構築するので、廃棄物処分施設14の強度が高く、余震などがあっても遮水シート12に亀裂が入りにくく、遮水性が維持される。
(c)遮水シート12が、シート固定具6の熱溶着材8に溶着固定されるので、余震などがあっても遮水シート12のずれや剥離が起こらず、この点からも遮水性が維持され、信頼性が高い。もって汚水の漏出を防止できる。
(d)蓋体として長いスパンに対応できるPCa・PC板23を用いることにより、囲壁18の内部容量を十分に確保することができる。
【0025】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されず、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)PCaブロック1として、図7に示すように、既製品のL型擁壁用ブロックを用いること。
(2)遮水シート12を二重にして敷設すること。遮水の信頼性がさらに高まる。
(3)前記焼却灰、焼却残査以外の廃棄物、例えば放射能に汚染された水を、囲壁18内に投棄すること。
【符号の説明】
【0026】
1 PCaブロック
2 基版部
3 縦壁部
4 突き出し鉄筋
5 凹段部
6 シート固定具
7 金属円盤
8 熱溶着材
9 アンカー
10 ボルト
11 連結用金具
12 遮水シート
14 廃棄物処分施設
15 地面
16 凹所
17 底面
18 囲壁
20 底版コンクリート
21 高周波電磁誘導加熱器
22 廃棄物
23 蓋体としてのPCa・PC板
24 土
25 緑化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基版部と該基版部から立設した縦壁部とを含むプレキャストコンクリートブロックの少なくとも縦壁部に、表面に熱溶着材を備えたシート固定具が取り付けられ、複数のプレキャストコンクリートブロックがシート固定具を囲壁内側にして設置面に並べて設置されることにより囲壁が形成され、遮水シートが、シート固定具の熱溶着材に溶着固定されて、囲壁内の縦面及び底面に敷設されてなることを特徴とする廃棄物処分施設。
【請求項2】
PCaブロックを設置する設置面は、地面下に囲壁を収納できるように、現場の地面に掘った凹所の底面とした請求項1記載の廃棄物処分施設。
【請求項3】
囲壁の上端開口を蓋体で覆った請求項2記載の廃棄物処分施設。
【請求項4】
蓋体が、複数のプレキャスト・プレストレストコンクリート板である請求項3記載の廃棄物処分施設。
【請求項5】
基版部と該基版部から立設した縦壁部とを含むプレキャストコンクリートブロックの少なくとも縦壁部に、表面に熱溶着材を備えたシート固定具を取り付け、複数のプレキャストコンクリートブロックをシート固定具を囲壁内側にして設置面に並べて設置することにより囲壁を形成し、遮水シートを、遮水シートを介して行う電磁誘導加熱により溶融させたシート固定具の熱溶着材に溶着固定して、囲壁内の縦面及び底面に敷設することを特徴とする廃棄物処分施設の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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