説明

廃棄物処理システム

【課題】一般廃棄物や産業廃棄物をガス化するものはガス化させ、ガス化しないものは全量溶解し、再利用可能な固形物として回収する廃棄物処理システムを提供する。
【解決手段】竪型あるいはシャフト型あるいはルツボ型の炉を用いて、炉内を1000℃以上の高温にし、かつコークス等炭素系固体熱源を充満することで炉内を還元ガス雰囲気とし、スラグ中の酸化鉛、酸化カドニウム、酸化銅、その他の酸化金属を還元してメタルの溶融物としてスラグと分離することで、スラグを無公害で安全な資源として再利用することを特徴とする。その際、廃棄物を炉に投入するときに、スラグの成分であるCaOやSiO2やMgOやAl2O3の組成割合を計算・予測し、それらのスラグ組成の塩基度、即ち CaO/SiO2や(CaO+MgO)/(SiO2+Al2O3)を0.15から1.45の範囲に保ち、スラグを溶けやすくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理炉の一部である竪型あるいはシャフト型あるいはルツボ型の廃棄物処理炉の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般廃棄物や産業廃棄物を処理する方法は、「燃えやすいもの」を分別して、燃えやすいものだけを、重油や天然ガスで燃やす、ストーカー炉やロータリーキルン(回転炉)や流動床方式があり、この炉で発生した焼却灰、飛灰は「燃えにくいもの」といっしょに最終処分場で処理されていた。
【0003】
しかし、焼却灰や飛灰には、有害な重金属類やダイオキシンが含まれており環境上の重大な問題が発生し、灰を溶融処理する必要となった。
【0004】
従来の灰溶融炉では、ガスや重油や天然ガスをバーナーで燃やし、灰を溶解させる方式であるため、酸化雰囲気であることとによる金属の酸化、バーナーでの燃焼であるために部分的な温度分布が生じ、未溶解物が残るなどの問題があった。また、粗粒は溶けにくい等の問題も生じ、即ち「溶けやすい」細粒の灰のみを溶かす方法であった。
【0005】
また、重油や天然ガスを燃やすため、炉内が酸化雰囲気となり、そのため、金属も酸化金属になりやすく、溶融されたスラグ中に酸化鉛、酸化カドニウム、酸化銅として溶け込み、スラグ品質に重大な問題があった。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、竪型あるいはシャフト型あるいはルツボ型の炉を用いて、一般廃棄物や産業廃棄物をガス化するものはガス化させ、ガス化しない不燃物は全量溶解処理し、再利用可能な固形物として回収する廃棄物処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1発明は、竪型あるいはシャフト型あるいはルツボ型の炉を使用して、主としてコークス、石炭、木炭、木材あるいはタイヤ、ペットボトルなどの固体系の熱源を主燃料とし、この固体系の燃料源の上層部もしくは混合して、一般廃棄物や産業廃棄物を投入して、細粒も粗粒も、鉄等のメタルや、ガラスや陶器やアスベストやコンクリートや石膏ボード等々も、従来法ではガス化しにくく、かつ溶融しない不燃物も全てを溶かす方法である。
【0008】
第2発明は、上記において、炉内を1000℃以上の高温にし、かつ炉内をコークス等炭素系固体熱源を充満することである。炉内を炭素系固体熱源で充満することで、炉内は還元ガス雰囲気となり、炭素系固体熱源の間を溶けて流れるスラグ中の酸化鉛、酸化カドニウム、酸化銅、その他の酸化金属は還元されメタルとなり、メタルの溶融物としてスラグと分離することとなる。その結果スラグは無害化され、路盤材等として再利用可能となる。
【0009】
第3発明は、上記において、スラグ内の公害物で有る重金属酸化物を除去することで、スラグを無公害で安全な資源とするとともに、酸化金属も還元により金属メタルとして再資源として取り出し再利用可能となる。
【0010】
第4発明は、上記において、竪型あるいはシャフト型あるいはルツボ型の炉に、一般廃棄物や産業廃棄物や固形燃料を炉に投入するときに、これらの投入物からスラグの成分であるCaOやSiO2やMgOやAl2O3の組成割合を計算・予測し、それらのスラグ組成の塩基度、即ち CaO/SiO2や(CaO+MgO)/(SiO2+Al2O3)を0.15から1.45の範囲に保ち、スラグを溶けやすくすることで、第1発明、第2発明、第3発明を促進する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、最終処分場で処分されていた、一般家庭から排出される分別ゴミや粗大ゴミなどの不燃物や、工場などから排出される廃プラスチック、汚泥、鉱滓などの産業廃棄物を処理可能とし、無公害スラグ及び金属等の有用な資源として回収できるようになる。
【0012】
更に、焼却炉から発生するダイオキシンを含んだ最終処分場で処理される焼却灰、飛灰等も本発明の装置で処理可能となり、有用な資源として回収できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、溶解炉の模型図である。
第1発明では、羽口でのコークスの燃焼によって炉内の内容物は降下し、炉上部の見尺棒が決められた位置に達すると炉の最上部からコークス等と廃棄物を炉内に入れる。
【0014】
コークスは熱交換を繰り返しながら1000℃以上に昇温され、最終的には1500℃から2000℃まで昇温されて羽口で燃焼される。
【0015】
一方、廃棄物は還元雰囲気の中で昇温され、含水水分は蒸発後分解される。一方有機物は乾留に近い状態でガス化が始まり、完全に炭素化して羽口でコークスとともに燃焼する。
【0016】
また、廃棄物中の金属成分やスラグ成分は溶解し、高熱コークスと接触しながら昇温され、スラグ口から排出される。
その際に重金属の酸化物は、還元雰囲気の中で還元され金属となる。
【0017】
第2発明では、炉内を1000℃以上の高温にし、かつ炉内をコークス等炭素系固体熱源を充満することである。1000℃以上の領域を溶解したスラグが滴下するうちにスラグ中の酸化鉛、酸化カドニウム、酸化銅、その他の酸化金属は還元されメタルとなり、メタルの溶融物としてスラグと分離することとなる。その結果スラグは無害化され、路盤材等として再利用可能となる。
【0018】
第3発明では、スラグ内の公害物で有る重金属酸化物を除去することで、スラグを無公害で安全な資源とするとともに、酸化金属も還元により金属メタルとして再資源として取り出し再利用可能となる。
【0019】
第4発明は、上記において、竪型あるいはシャフト型あるいはルツボ型の炉に、一般廃棄物や産業廃棄物や固形燃料を炉に投入するときに、これらの投入物からスラグの成分であるCaOやSiO2やMgOやAl2O3の組成割合を計算・予測し、それらのスラグ組成の塩基度、即ち CaO/SiO2や(CaO+MgO)/(SiO2+Al2O3)を0.15から1.45の範囲に保ち、スラグの流動性を良くすることで、第1発明、第2発明、第3発明を促進する。
【実施例1】
【0020】
本発明の竪型あるいはシャフト型あるいはルツボ型の炉において、コークス等を主燃料として一般廃棄物や産業廃棄物を混合して炉に投入し、スラグ口より排出したスラグの分析値を座間味村クリーンセンタースラグ分析(溶出試験)結果(表1)に示す。当発明を実施した座間味村クリーンセンター溶融炉から排出された溶融スラグの安全性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0021】
図1に示す竪型あるいはシャフト型あるいはルツボ型の炉において、コークス等の固体系の熱源を主燃料として一般廃棄物や産業廃棄物を混合して炉に投入し、かつ炉内を1000℃以上の高温にし、コークス等炭素系固体熱源を充満することで炉内を還元ガス雰囲気とし、炭素系固体熱源とスラグを接触させ、スラグ中の酸化金属を還元してメタルの溶融物とし、再利用可能な無公害の還元スラグを排出する廃棄物処理システムは、一般廃棄物や産業廃棄物のみならず、最終処分場で処理されているダイオキシンを含んだ焼却灰、飛灰処理も投入可能である。
【表の簡単な説明】
【0022】
【表1】

本発明を実施した座間味村クリーンセンターのスラグ分析(溶出試験)結果である。当発明を実施した溶融炉から排出された溶融スラグの安全性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 本発明に従う還元溶融炉である。
【符号の説明】
【0024】
1 還元溶融炉
2 粗大廃棄物ホッパー
3 シャフト部
4 粗大廃棄物装入ホッパー
5 廃棄物・コークス装入ホッパー
6 炉内ガス排気管
7 コークス
8 スラグ排出口
9 送風羽口
10.炉内装入物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型あるいはシャフト型あるいはルツボ型の炉において、主としてコークス、石炭、木炭、木材あるいはタイヤ、ペットボトルなどの固体系の熱源を主燃料として一般廃棄物や産業廃棄物を混合して炉に投入し、鉄等のメタルや、ガラスや陶器やアスベストやコンクリートや石膏ボード等々従来法ではガス化しにくく、かつ溶融しない不燃物も溶かして炉内より排出することを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項2】
上記において、炉内を1000℃以上の高温にし、かつコークス等炭素系固体熱源を充満することで炉内を還元ガス雰囲気とし、炭索系固体熱源の間を溶けて流れるスラグ中の酸化鉛、酸化カドニウム、酸化銅、その他の酸化金属をメタルの溶融物として、スラグと分離することを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項3】
上記において、スラグ内の公害物で有る重金属を除去することで、スラグを無公害で安全な資源とするとともに、酸化金属も還元により金属メタルとして再資源として取り出し回収することを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項4】
上記において、竪型あるいはシャフト型あるいはルツボ型の炉に、一般廃棄物や産業廃棄物を炉に投入するときに、これらの投入物からスラグの成分であるCaOやSiO2やMgOやAl2O3の組成割合を計算・予測し、それらのスラグ組成の塩基度、即ち CaO/SiO2や(CaO+MgO)/(SiO2+Al2O3)を0.15から1.45の範囲に保ち、スラグを溶けやすくすることを特徴とする廃棄物処理システム。

【図1】
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【公開番号】特開2007−117977(P2007−117977A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337740(P2005−337740)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(598092166)株式会社還元溶融技術研究所 (22)
【Fターム(参考)】