説明

廃棄物処理方法および光触媒材料

【課題】 廃棄物に含まれる環境ホルモンやその他の有害物を、無害化処理するための廃棄物処理方法と、その処理に使用する光触媒材料に関し、水溶液状にした廃棄物に酸化チタンの微粉末等を混入して、紫外線を照射して無害化する処理を行うようにする。
【解決手段】 多量に有害物を含んでいる廃棄物を、水に分散させるとともに、その中に二酸化チタン等の光触媒の微粉末を分散させる処理を行う、そして、その被処理溶液を強力な紫外線を照射する装置に対して、厚さの薄い層状に流しながら光による処理を行い、環境ホルモン等の分解処理を行う。また、前記被処理液に光を当てて処理した後で、光触媒を磁気的に回収し、再使用に供するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物を多量に含有する廃棄物を無害化処理するための廃棄物処理方法と、その処理に使用する光触媒材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に工場等から排出される廃棄物には、比較的多量の有害物を含有しているものであり、それ等の有害物を無害化処理しなければ、埋め立て等の廃棄処理することが許容されないという問題がある。その他に、無許可で山間部等に野積する等して廃棄される廃棄物には、多量のダイオキシンや、その他の環境ホルモンに含まれる有害物が、比較的多量に含まれていることが多くある。前述したような無許可で不法に投棄されるごみや、有害成分を多量に含む廃棄物は、有害成分を燃焼させたり、無害化するような温度に加熱する等の処理を行う必要があり、後で余分な経費をかけて処理することが要請されている。
【0003】
また、前述したような加熱処理を施すことに代えて、ダイオキシン等の紫外線を照射することによって、無害化処理が可能な廃棄物に対しては、前記紫外線を照射する処理を行う等の手段を用いる。前記紫外線を照射する装置においては、その紫外線による処理効率を向上させるために、酸化チタン等の光触媒を組み合わせて用いることがあり、例えば、廃棄物を含む液体を、光触媒を塗布した板の上に薄い層状に流して、有害物の処理を行うようにすることが考えられている。前記光触媒材料としては、例えば、酸化チタンの微粉末等を、対象物に塗布して薄い膜状に形成しておく等の処理を施して使用する(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平12−41133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したような従来例の装置において、汚れ分解機能を有する光触媒材料としては、例えば、酸化チタン等の光触媒を用いることができる、といわれているものである。ところが、一般に、前記光触媒材料を塗布した板等を用いて、廃棄物の無害化を行うようにすると、そのための装置が利用しにくいものとなるという問題がある。そこで、前記廃棄物に光触媒材料を混入して、強い紫外線を照射可能な蛍光灯のような装置を用い、無害化処理を効率良く行うことが考えられている。しかしながら、処理の対象とされる廃棄物に、直接光触媒材料を混入すると、前記光触媒材料の使用量が多くなり、処理コストが増大するという問題が発生する。
【0005】
本発明は、前述したように、被処理廃棄物に光触媒材料を直接混入して使用するに際して、その混入した光触媒材料を回収する手段を合わせて用い、高価な光触媒物質を繰り返して使用可能な処理装置と、磁気的に回収可能とする光触媒材料の製法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、廃棄物処理方法に関するもので、請求項1の発明は、有害物質を多量に含む廃棄物を、水または任意の液体に分散させてスラリー状の混合物を作成し、前記スラリー状の混合物を、光を透過する材料で作った処理流路を通しながら強い紫外線を照射して、前記被処理混合物中に含まれる有害物質を、紫外線が作用する光触媒により分解処理することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、前記廃棄物を光触媒に紫外線を当てて処理するための紫外線処理装置として、強い紫外線を発光するランプ状の本体に対して、その周囲に螺旋状で処理液を薄い層として流し得るようにする流路を配置し、前記流路をガラス様の光を透過する透明な材料を用いて、構成したものを用いることを特徴とする。
【0008】
請求項3以降の発明は、光触媒材料に関するもので、磁性体材料と光触媒材とを溶融させて合金状の混合物を作成し、前記塊を微粉砕して微細な粉状の光触媒材料として作成し、前記粉状の材料に対して磁化処理を行い、前記粉状の光触媒を廃棄物の液に混入して、紫外線を照射する装置を通して、前記廃棄物に含まれる有害成分を、前記紫外線が照射された光触媒により無害化する処理に使用することを特徴とする、
【0009】
請求項4の発明は、前記光触媒材料として酸化チタンを用い、
前記光触媒材料に混合する磁性体として、酸化チタンの性質に影響を与えない温度で合金状の混合物を形成可能で、かつ、容易に微粉砕処理が可能な性質を持つ材料を用いることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、前記廃棄物に含まれる有害成分を分解処理した後で、磁性体とともに光触媒材を磁気的な分離手段により回収して、再使用に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
前述したように、光触媒材料を、磁性体とともに一体化させた合金状のものとして構成し、その合金を微粉末状にしたものを被処理廃棄物に混合して使用し、紫外線が照射されて活性化されることで、光触媒を用いての処理効率を向上させることができ、装置の構成を複雑化することがない。また、光触媒として用いる酸化チタンは、水との親和性が良好な物質であるから、水中に分散させた状態で紫外線を照射することで活性化されて、汚れを分解する特性を発揮できる。そして、前記光触媒材料に対して、磁石に吸引される成分を一体化した微粉末として形成することで、前記被処理不物を薄い層状にして流し、紫外線に当てながら処理した後で、磁気的な分離手段を用いて回収することができる。したがって、前記光触媒材料が、非常に高価なものであったとしても、繰り返して使用することができるので、材料の使用効率を向上させることができ、資源を無駄に消耗することが避けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明でいうところの光触媒としては、酸化チタンを対象として説明する。なお、前記酸化チタンと同様に、紫外線を照射している環境下で、触媒としての作用を発揮可能な他の材料をも、使用することが可能であり、例えば、酸化鉄、酸化タングステン、酸化亜鉛またはチタン酸ストロンチウムのような化合物を用いることができるが、被処理物が酸性の強いものである場合等には、容易に酸化されないような材料を用いることが必要とされる。また、前記光触媒に対して紫外線を照射するためのランプとしては、一般的に使用されている蛍光灯の他に、強力な紫外線を発生する特殊なランプ、例えば、NBS社が市販している紫外線殺菌装置(流水式)を用いると、設備が簡素化されていること等から、使用性の良好な装置を構成できる。
【実施例】
【0013】
以下に、本発明の実施例を説明する。従来より、酸化チタンを触媒として用いて紫外線を照射することにより、汚れ分解機能を発揮させることは、従来より一般に知られていることであり、良く知られている例では、前記光触媒を対象物に塗布して使用することにより、防汚性、防臭性、防黴性等を発揮させ得るとされている。本実施例においては、環境ホルモン等のような汚染物質を多量に含む被処理溶液に。前記酸化チタンのような光触媒の微粉末を分散させるようにして混入し、その溶液に紫外線等の光線を照射することにより、光触媒を活性化させて、光触媒材料に汚れ分解機能を発揮させるのである。
【0014】
前述したようにして光触媒を混入した被処理溶液に、近紫外線が照射されると、光触媒内で電子が放出されて正孔が生じ、導電性が増大するために、帯電量を減少させて静電気の発生を抑制ないしは防止する。そして、前記光触媒の微粒子に対して、その周囲の浮遊物質が付着することを防止し、前記光触媒に接触する被処理物質、例えば、環境ホルモンやその他の処理を要する物質を無害化する処理が行われる。また、前記光触媒としての酸化チタンを用いる場合には、それ自体が親水性を有するものであることから、光触媒の活性な電子と正孔が表面に付着した有機物あるいは水と反応して、活性なOHラジカルを発生し、このOHラジカルが有機物であるところの、環境ホルモン状の物質と反応して分解するので、被処理溶液中に含まれている有機物を除去することができる。
【0015】
前記光触媒として、酸化チタンのような物質を使用する場合には、その酸化チタン自体が磁性を有しないものであることから、磁性体と一体化して、その光触媒の使用後に回収することが必要である。そこで、前記光触媒と磁性体とを一体化して、時期的な回収手段を用いて回収するためには、前記酸化チタンを磁石材料と混合して、微粉砕しても両者が一体のものとされるような性質を持たせるようにする。そして、前記酸化チタンと磁性体を微粉砕した後で、磁石材料を磁化させる処理を行い、粉末自体が磁気を帯びたものとして形成する。
【0016】
そこで、前記光触媒として酸化チタンを用いた場合に、磁石材料成分を30%、酸化チタンを70%の比率で混合し、その混合物に対して約700℃で加熱し、酸化チタン成分に富んだ塊を作成する。前記混合した塊を微粉末に加工すると、その微粉末の微小な粉状の成分が、それぞれ酸化チタンの粉末としての性質を発揮できる。その後で、微粉末に磁化処理を施すことで、前記微粉末が磁性体としての性質を持つものとされる。そして、被処理用の汚染物質を含む溶液に混合して使用し、前記酸化チタンに紫外線を照射する操作を行うことで、有害物質の処理を行った後で、処理済みの溶液から光触媒成分を磁気的な分離装置を用いて回収することができる。したがって、前記酸化チタンのような光触媒を多量に使用し、有害物資の処理を行った後で、前記光触媒を回収して再使用に供することができることになるので、有害成分の処理のために、光触媒成分の消耗量が非常に少なくすることができて、その処理コストを低減させることが可能である。
【0017】
前記光触媒として、酸化鉄のような、それ自体が磁石に吸引され得る性質を有する物質を用いる場合も想定される。そのような酸化しやすい性質を有する光触媒は、酸性の強い処理液に対しては使用不能であるが、その光触媒としての働きが弱いとしても、触媒成分のコストが低いことと合わせて、回収が容易であることから、相対的な処理コストを低減させることができる。なお、前記光触媒を用いて、廃棄物中に含まれている有害物質を分解処理するに際して、被処理物質を溶解した溶液を厚さが薄く形成された流路を通して処理する。そのために、例えば、その流路の紫外線を照射する側を透明な材料で構成し、他の壁面に対しては、光触媒の膜を形成しておき、処理溶液に含まれている光触媒と、流路の壁に付着されている光触媒の層との双方が、それぞれ汚染物質の分解処理の作用を負担させることができる。
【0018】
前述したように、前記光触媒を流路の壁に形成するようにすることができるものであるが、その際には流路の一方の壁部材に光触媒を塗布して、被処理物溶液の流れに接するように、前記壁部材の表面に薄い被膜を形成するような処理を行う。前記光触媒の層を流路の壁に被膜状に形成する場合には、壁を金属で構成するか金属の薄い被膜をあらかじめ設けておき、光触媒をその表面に塗布して形成した被膜から、溶媒として用いるアルコールが空気中の水分と反応し、その金属と化合している基がアルコールとして蒸発し、ゲル状の透明な被膜が形成されるようにする。また、前記金属アルコキシド溶液は、前記被膜を形成する板部材の表面に対して、任意の方法を用いて塗布処理することにより、均一な薄い膜状に塗布して形成することもできる。
【0019】
例えば、酸化チタンを光触媒として用いる場合には、前記流路の壁を形成するガラス等の板部材表面に、光触媒を溶媒に混合したものを塗布し、所定の厚さの薄膜を形成して乾燥させた後で、700℃で15分間焼成することにより、強固なアナターゼ型結晶を含有する酸化チタン被膜を形成することができる。また、前記被膜をプラスチック製の板またはガラス以外の板に設ける場合にには、前記板等の表面に有機ケイ素樹脂をアンダーコーティングして前処理する。そして、前記アンダーコーティング処理した面に対して、有機ケイ素化合物をアルコールに溶解させ、さらに、二酸化チタンの微粉末を分散させた液を塗布して、乾燥処理させることにより光触媒膜を形成することができる。
【0020】
前述したように、酸化チタンを光触媒として用いて、廃棄物に含まれるダイオキシンやその他の環境ホルモンを処理するために、処理装置を用いるが、最初に、廃棄物を水に混合して適当な濃度の溶液を作成する。ついで、廃棄物の液状のものを攪拌槽に収容した状態で、酸化チタン(二酸化チタン)の微粉末を、適当な比率で混入しして、攪拌翼を用いて攪拌することで分散させ、スラリー状の被処理液を作成する。前述したようにして、前記光触媒を分散させた廃棄物の被処理液は、紫外線を照射する装置に導き、光源から光を照射する流路に導く。前記処理流路は、強力な紫外線を出力する光源の回りに、螺旋状の流路を形成したものを用い、前記流路としては、巾は任意に形成するが、被処理液体を薄い層状にして流すような機構の装置を用いる。
【0021】
前記廃棄物に光触媒を混合した処理液に、紫外線を当てて無害化処理するための紫外線処理装置としては、強い紫外線を発光するランプ状の本体に対して、その周囲に螺旋状で処理液を薄い層として流し得るようにする流路を配置し、前記流路をガラス様の光を透過する透明な材料を用いて、構成したものを用いることができる。具体的には、例えば、エヌビーエス株式会社が発売している(業務用・流水式「紫外線殺菌装置」)のような、強力な紫外線を照射して、被処理液に対する殺菌等の処理を行う措置を使用することができる。
【0022】
また、前記被処理液に対して紫外線を照射し、有害物質(有機化合物)を処理するために、被処理液に混入された光触媒は、前記「紫外線殺菌装置」を通した後で、分離装置を用いて回収することも、本発明の特徴とするところである。前記使用後の光触媒を被処理液から分離して回収するために、本発明においては、磁気的な分離装置を用いようとしているものである。そのために、酸化チタンの微粉末に対して、磁石に吸引される材料を結合させたものを用いて、磁気的な分離作用を容易に行い得るようにしている。
【0023】
つまり、光触媒として酸化チタンを用いる場合に、その酸化チタンを鉄と混合して加熱溶融させて、両材料が適当に分散した状態の合金を作成する。そして、前記合金の塊を微粉末となるように粉砕して、光触媒の微粉末を作成することで、その光触媒の表面積を可及的に大きなものとし、廃棄物の被処理液に混入して分散させることにより、光触媒として有効に利用できるようにする。なお、前記光触媒に対して磁性を持たせるか、あるいは磁石に吸引される性質を持たせるために、前記鉄を用いることのほかに、任意の磁石材料の微粉末を混入して、任意の温度で加熱することで溶融・一体化した合金を作成し、その合金の塊を微粉砕処理して、前記光触媒を作成することも可能である。
【0024】
なお、前記「紫外線殺菌装置」は、紫外線を出力するランプを囲むように、螺旋状の流路を配置して構成しているものであるが、前記流路の断面形状を、前述したように、薄くて巾の広いものとして構成するとともに、光が照射される側をガラス様の透明な材料で構成し、外側の壁を透明ではない金属等を用いて構成することができる。そして、前記金属の壁の流体に接する面には、前記光触媒を流路の壁に被膜として形成することができる。そのためには、前記流路の外側の壁としての金属材にの表面に光触媒を塗布して、被処理物の流れに接するような被膜を形成するときには、前記壁部材の表面に薄い被膜を形成するような処理を施すことで、流体と案内路との双方から、光触媒と紫外線とによる分解作用が働き、良好な状態で有害物を分解処理する作用を行わせることができる。
【0025】
本発明は、前述したように、被処理廃棄物に光触媒材料を直接混入して使用することにより、廃棄物に含まれるダイオキシンや、その他の環境ホルモンに含まれる有害物を、容易に分解処理することができる。そして、廃棄物を流体状のものとして、その中に光触媒の微粉末を混入して紫外線を照射する処理を行ってから、その光触媒を磁気的な回収装置を用いて分離・回収し、再使用することができる。したがって、前記光触媒を処理後に回収して再使用することで、高価な光触媒が捨てられないようにして、処理コストを低減させることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質を多量に含む廃棄物を、水または任意の液体に分散させてスラリー状の混合物を作成し、
前記スラリー状の混合物を、光を透過する材料で作った処理流路を通しながら強い紫外線を照射して、
前記被処理混合物中に含まれる有害物質を、紫外線を照射する光触媒を用いて無害化処理することを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項2】
前記廃棄物を光触媒に紫外線を当てて処理するための紫外線処理装置として、
強い紫外線を発光するランプ状の本体に対して、その周囲に螺旋状で処理液を薄い層として流し得るようにする流路を配置し、
前記流路をガラス様の光を透過する透明な材料を用いて、構成したものを用いることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理方法。
【請求項3】
磁性体材料と光触媒材とを溶融させて合金状の混合物を作成し、
前記塊を微粉砕して微細な粉状の光触媒材料として作成し、
前記粉状の材料に対して磁化処理を行い、
前記粉状の光触媒を廃棄物の液に混入して、紫外線を照射する装置を通して、
前記廃棄物に含まれる有害成分を、前記紫外線が照射された光触媒により無害化する処理に使用することを特徴とする、請求項1または2の方法に用いる光触媒材料。
【請求項4】
前記光触媒材料として酸化チタンを用い、
前記光触媒材料に混合する磁性体として、酸化チタンの性質に影響を与えない温度で合金状の混合物を形成可能で、かつ、容易に微粉砕処理が可能な性質を持つ材料を用いることを特徴とする請求項3に記載の光触媒材料。
【請求項5】
前記廃棄物に含まれる有害成分を分解処理した後で、磁性体とともに光触媒材を磁気的な分離手段により回収して、再使用に供給することを特徴とする請求項3また4に記載の光触媒材料。

【公開番号】特開2006−75666(P2006−75666A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259401(P2004−259401)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000105822)ゴールド興産株式会社 (4)
【Fターム(参考)】