説明

廃棄物処理炉

【課題】
廃棄物処理の過程において、廃棄物の処理が不均一で不完全な処理が発生すること、また、処理効率が期待値よりも低いことを改善することを解決課題とする。
【解決手段】
廃棄物が投入される6面体状の密閉容器2と、この上部に設けられて内部の発生ガスを排気する排気口3と、密閉容器に設けられてその内部に微量空気を送り込む給気口4と、この給気口を挟むように設けられて、給気通路を横切る磁場を形成する一対の磁石5とを備えた廃棄物処理炉1であって、前記排気口が、密閉容器の上壁6で、第1の側壁7aに近接して設けられ、給気口が第1の側壁7aと対向する第2の側壁7bの下部両側にそれぞれ設けられ、それぞれの給気口が、第2の側壁の下縁Aおよび各側縁Bと、これらの各縁から内側に200mmの間隔で設けられる仮想平行線X・Yとで囲まれる領域G内に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器内に投入された廃棄物に、磁場内を通過させて活性化した微量空気を照射することにより、前記廃棄物を燃焼させることなく分解して減容処理する廃棄物処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般廃棄物や産業廃棄物の処理に焼却が行なわれている。
この焼却処理では、処理に伴って有害物質と飛灰とが発生し、この有害物質が飛灰とともに飛散して近隣の土壌等を汚染してしまうことが問題となっている。
【0003】
このような問題を解決するために、廃棄物を高温で溶融処理することにより、有害物質の発生を抑制する処理方法が採られている。
しかしながら、このような溶融処理においても、多大な電力若しくは化石燃料を必要とし、二酸化炭素排出量の増加を招いているのが現状である。
【0004】
さらに、これらの焼却処理や溶融処理の問題点を解決する処理方法として、磁場を通過させた微量空気を廃棄物へ照射して、この廃棄物を分解処理する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
前述した特許文献中では、磁石手段が空気通路状に磁場を形成することにより、熱処理用空気中の酸素等が活性化されることとなり、その結果、僅かな流入量の熱処理用空気によって緩やかな酸化反応ないしは炭化処理が行なわれることにより、有害物質の発生を抑制しつつ廃棄物の処理を行なうと説明しているが、このような磁場を通過させた微量空気を用いて廃棄物を分解処理するメカニズムについては定かではない。
しかしながら、本願出願人においてもその稼動が確認されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−117534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述した技術では、廃棄物処理を行なう過程において、処理炉内の部位によっては不完全な処理が発生して処理にむらが生じ、また、稼動が安定しないといった不具合が生じている。
本発明者等は、これらを改善すべく鋭意研究の結果、従来の技術では、処理用空気を磁気処理して廃棄物へ照射する空気処理手段を、廃棄物処理炉の周壁に、等間隔に全周にわたって配置しているために、これらの空気処理手段から照射される処理用空気の流れが交差することによって相互干渉し、廃棄物への効果的な照射が阻害されているとの知見を得て本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述した課題を解決せんとしてなされたもので、請求項1に記載の廃棄物処理炉は、廃棄物が投入される6面体状の密閉容器と、この密閉容器の上部に設けられて、この密閉容器内の発生ガスを排気する排気口と、前記密閉容器に設けられて、この密閉容器内に微量空気を送り込む給気口と、この給気口から前記密閉容器の外部に連設された給気路を挟むように設けられて、この給気路を横切る磁場を形成する一対の磁石とを備えた廃棄物処理炉であって、前記排気口が、前記密閉容器の上壁で、第1の側壁に近接して設けられ、前記給気口が、前記排気口が近接して設けられた第1の側壁と対向する第2の側壁の下部両側にそれぞれ設けられ、かつ、それぞれの給気口が、前記第2の側壁の下縁および各側縁と、これらの各縁から内側に200mmの間隔で設けられる仮想平行線とで囲まれる領域内に設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の廃棄物処理炉は、請求項1に記載の前記各給気口の上方に第2の給気口がそれぞれ設けられてなり、これら上下の給気口の距離をPとした場合、P≦400mmとしたことを特徴とする。
請求項3に記載の廃棄物処理炉は、請求項2に記載の前記上下の給気口が、前記給気路を形成する分岐管を介して単一の給気管に接続されており、この吸気管の上流側に前記一対の磁石が設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の廃棄物処理炉は、廃棄物が投入される6面体状の密閉容器と、この密閉容器の上部に設けられて、この密閉容器内の発生ガスを排気する排気口と、前記密閉容器に設けられて、この密閉容器内に微量空気を送り込む給気口と、この給気口から前記密閉容器の外部に連設された給気路を挟むように設けられて、この給気路を横切る磁場を形成する一対の磁石とを備えた廃棄物処理炉であって、前記排気口が、前記密閉容器の上壁で、第1の側壁に近接して設けられ、前記給気口が、前記排気口が近接して設けられた第1の側壁の両側に位置する第3の側壁および第4の側壁の下部で、前記第1の側壁と対向する第2の側壁側に設けられ、かつ、それぞれの給気口が、前記各第3および第4の側壁の下縁および前記第2の側壁との連続部を形成する側縁と、これらの各縁から内側に200mmの間隔で設けられる仮想平行線とで囲まれる領域内に設けられていることを特徴とする。
請求項5に記載の廃棄物処理炉は、請求項4に記載の前記各給気口の上方に第2の給気口がそれぞれ設けられてなり、これら上下の給気口の距離をPとした場合、P≦400mmとしたことを特徴とする。
請求項6に記載の廃棄物処理炉は、請求項5に記載の前記上下の給気口が、前記給気路を形成する分岐管を介して単一の給気管に接続されており、この吸気管の上流側に前記一対の磁石が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1および請求項4に記載の廃棄物処理炉によれば、給気口を介して密閉容器内に流入する微量空気が、給気路内に一対の磁石によって形成された磁場を通過する際に磁化若しくはイオン化された後に、前記密閉容器内に充填されている廃棄物に照射されることにより、前記廃棄物の分子結合を破壊して、これらを分子レベルで分解して廃棄物の処理が行なわれると推察される。
【0010】
そして、この分解処理に伴い熱が発生し、この熱により密閉容器内に流入した微量空気中の酸素と廃棄物との反応による燃焼現象が発生するが、流入空気量が微量でありかつ容器が密閉されていることにより、前記酸素は瞬時に消費されて、密閉容器内はほぼ無酸素状態となり、このほぼ無酸素状態で前述した廃棄物の分解処理が行なわれる。
また、廃棄物の分解処理に伴う発生熱によって密閉容器内の温度が上昇することにより、磁化若しくはイオン化された空気の動きが活発化して、前述した分解処理が促進される。
【0011】
このような廃棄物の分解処理に伴い、前述した熱の発生とともにガスが発生するが、このガスが、熱による自然対流により密閉容器内を上昇して、この密閉容器の上部に設けられている排気口を介して外部へ排気される。
【0012】
このように密閉容器内のガスが排気されるのに伴い、密閉容器内の気圧が低下して前記給気口からの微量空気の流入が促進され、この結果、分解に必要な磁化若しくはイオン化された微量空気の供給量が確保され、安定した分解処理が連続して行なわれる。
【0013】
ここで、前記排気口が6面体状の前記密閉容器の一つの側壁側に設けられているとともに、前記密閉容器内への前記処理用の微量空気を供給する給気口が、前記側壁と対向する第2の側壁の下部両側に設けられていることにより、前記給気口から送り込まれた磁化若しくはイオン化された前記微量空気の主流が前記第1の側壁へ向かうが、前記両給気口以外に給気口が形成されていないことから、前述した気体の主流に対して交差するような気流が存在せず、これによって、従来のような、他の給気口から送り込まれる微量空気との流れの干渉や磁気相互の干渉若しくはイオン相互の干渉がなく、密閉容器内の気流の乱れが抑制される。
【0014】
さらに、前記各給気口から送り込まれた微量空気は、前述した第1の側壁へ向かう主流に加えて、熱による上方への流れが加わる。
【0015】
したがって、密閉容器内に送り込まれた磁化若しくはイオン化された微量空気は、前記給気口からその前方および斜め上方へ向けて密閉容器内をほぼ万遍なく通過させられる。
【0016】
加えて、それぞれの給気口を、前記第2の側壁の下縁および各側縁と、これらの各縁から内側に200mmの間隔で設けられる仮想平行線とで囲まれる領域内に設けたことにより、前記給気口から照射される磁化あるいはイオン化された微量空気の流れが、前記密閉容器の底壁および側壁近くに形成され、これによって、分解領域が密閉容器の底壁近傍および内壁面近傍から内側に形成される。
【0017】
ここで、前記給気口を前述した範囲外に設けると、前述した分解領域が前記密閉容器の底壁や側壁から離れ、この分解領域と前記密閉容器の底壁や側壁との間に未分解物が残留するとともに、この未分解物が前記分解領域において発生する分解熱を吸収してその分解処理効率を低下させてしまう。
【0018】
しかしながら、本発明の構成とすることにより、前述したように、前記分解領域が密閉容器の底壁や側壁近くに形成されて、廃棄物の分解処理が密閉容器の底壁や側壁近傍から順次行なわれ、前記底壁や側壁近傍に未分解物が残存することがなくなり、これによって、密閉容器内全体にわたって分解処理が行なわれるとともに、底壁や側壁近傍に残存する未分解物による処理効率の低下が防止される。
そして、前記各給気口の設置位置は、前述した領域内の内、前記第2の側壁の下縁および各側縁から約100mmの位置に設置することが好適である。
【0019】
したがって、これらの相乗作用により、廃棄物の処理を均一なものとすることができるとともに、安定した稼動を確保することができる。
また、前記給気口を第2の側壁の下部両側部のみに設ければすむことから、処理用空気を生成する空気処理手段を従来の数分の1とすることができ、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0020】
そして、請求項2および請求項5に記載のように、前記給気口の上方に第2の給気口を設けることにより、それぞれの給気口から照射される磁化あるいはイオン化された微量空気によって上下に分解領域を形成することにより、分解領域の幅を大きくし、これによって分解処理効率を高めることができる。
【0021】
また、上下の給気口間の間隔をPとした場合、P≦400mmとすることにより、上下の給気口それぞれによって形成される分解領域の間隔を適切なものとして、両分解領域間に残存する未分解物を適量に保持して、この未分解物による前記各分解領域への影響を抑制し、前述した処理効率を高レベルに保持することができる。
そして、前記間隔Pは、好ましくは約200mmに設定される。
【0022】
さらに、請求項3および請求項6に記載のように、前記上下の給気口の上流側を、分岐管を介して単一の給気管に接続し、この給気管の上流側に前記一対の磁石を設けることにより、前記微量空気の磁化あるいはイオン化を一組の磁石によって行ないつつ、この微量空気を分岐管によって上下に分配して前記密閉容器内に照射することができるので、一組の磁石によって前述した分解領域を上下2つの部位に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1および図2中、符号1は、本実施形態に係わる廃棄物処理炉を示し、この廃棄物処理炉1は、廃棄物が投入される6面体状の密閉容器2と、この密閉容器2の上部に設けられて、この密閉容器2内の発生ガスを排気する排気口3と、前記密閉容器2に設けられて、この密閉容器2内に微量空気を送り込む給気口4と、この給気口4から前記密閉容器2の外部に連設された給気路Vを横切る磁場を形成する一対の磁石5とを備え、前記排気口3が、図2に示すように、前記密閉容器2の上壁6で、第1の側壁7(7a)に近接して設けられ、前記給気口4が、前記排気口3が近接して設けられた第1の側壁7(7a)と対向する第2の側壁7(7b)の下部両側に、第1図に示すように、それぞれ設けられ、かつ、それぞれの給気口4が、前記第2の側壁7(7b)の下縁Aおよび各側縁Bと、これらの各縁から内側にL=200mmの間隔で設けられる仮想平行線X・Yとで囲まれる領域G内に設けられた概略構成となっている。
【0024】
さらに詳述すれば、前記密閉容器2は、本実施形態においては、一辺が約900mmの略立方体状に形成されており、その上壁6の、前記第2の側壁7b側には、図2に破線で示すように、廃棄物の投入口6aが形成され、前記上壁6の上面に回動可能に装着された開閉蓋8によって開閉可能となされている。
【0025】
この開閉蓋8あるいは密閉容器2の何れか一方又は両方には、両者の対向面間に位置させられるパッキン等のシール材が介在させられており、前記開閉蓋8が閉位置に位置させられた状態において、前記廃棄物投入口6aを気密に閉塞するようになっている。
【0026】
また、前記密閉容器2の上壁6の、前記開閉蓋8が形成されている部位の近傍には、前記排気口4に連続した連通管9が突設されているとともに、この連通管9の突出側の端部に嵌合させられて、この連通管9を介して前記排気口4へ連通させられた水槽10が取り付けられている。
この水槽10内には、その下面から所定高さまで水が貯留されており、内部の約上半分が前記連通管9の上端部が開放された空間部gとなされている。
【0027】
さらに、前記水槽10の上面には、前記空間部gと外気とを連通し、前記連通管9および水槽10とともに排気路Wの一部を構成する排気管11が設けられている。
【0028】
そして、前記密閉容器2内の発生ガスは、前記連通管9から水槽10の空間部gを経て排気管11から外気へ放出されるが、前記水槽10の空間部g内を通過する間に水と接触させられることにより冷却されて復水し、水槽10内の水に捕獲されるようになっている。
【0029】
また、前記発生ガス中に混在する微粒子成分が、前記水槽10内の水との接触によってこの水に捕獲された後に、この水中に沈殿する。
したがって、有害物質が多く付着している微粒子成分が捕獲されることにより、有害物質の外気への放出が抑制される。
【0030】
一方、前記開閉蓋8は、前記密閉容器2の上面に一対のブラケット12を介して回動自在に取り付けられた枢軸13に固定され、また、この枢軸13の一端部には、この枢軸13の回動をなす操作ロッド14が直交して設けられており、この操作ロッド14によって前記枢軸13が回動操作されることによって、前記開閉蓋8が前記枢軸13を回動中心として上下に回動させられて、前記密閉容器2の上面に形成されている廃棄物投入口6aの開閉が行なわれるようになっている。
【0031】
また、前記開閉蓋8の上面には、ロックレバー15が揺動可能に装着されており、このロックレバー15が前記密閉容器2の上面に固定されている係止片16に楔状に係合させられることによって、前記開閉蓋8が前記密閉容器2の上部に圧接させられて、前記廃棄物投入口6aを気密に密閉するようになっている。
【0032】
前記密閉容器2の内側には、その内壁面から内方へ向かう複数の導風板17が、前記密閉容器2の内壁に対して略直交し、かつ、前記密閉容器2内の上面近傍から下面近傍まで延びるように設置されており、これらの各導風板17には、厚み方向に貫通する複数の通気孔18が形成されている。
【0033】
一方、前記各給気口4は、図3に詳述するように、前記第2の側壁7bを貫通して内部に突設された導管20の内端部によって形成されている。
【0034】
そして、前記給気口4を形成する前記導管20は、図1に示すように、前記第2の側壁7(7b)の下部両側にそれぞれ設けられ、かつ、それぞれの給気口4が、前記第2の側壁7(7b)の下縁Aおよび各側縁Bと、これらの各縁から内側にL=200mmの間隔で設けられる仮想平行線X・Yとで囲まれる領域内に設けられているとともに、前記第1の側壁7aへ向けられている。
【0035】
また、前記導管20の外端部には、前記密閉容器2内へ送り込む微量空気の流入量を調整するバルブ21が、エルボ管22を介して接続されており、このエルボ管22に、合成樹脂等の非磁性体で形成され、内部に前記バルブ21へ連通させられた貫通孔23aを有するケーシング23が接続されている。
【0036】
前記ケーシング23の長さ方向の途中には、図5に示すように、前記貫通孔23aと直交する磁石装着孔23bが、前記貫通孔23aを挟んだ両側に設けられている。
【0037】
これらの磁石装着孔23bは、図5に示すように、外端部が前記ケーシング23の外面に開口し、また、内端部が前記貫通孔23aへ開口させられているとともに小径となされて前記貫通孔23aとの間に所定の段部Hを形成するようになっている。
【0038】
さらに、本実施形態においては、前記貫通孔23aは、図5に示すように、その軸線と直交する断面において円形に形成されているとともに、図4に示すように、下流側(前記密閉容器2側)の部位に、下流側に行くに従い漸次狭くなる絞り部23cが形成されて、その内面形状が略ベンチュリ管状に形成されている。
【0039】
前記各磁石装着孔23b内には、それぞれ磁石5として永久磁石が装着されているとともに、各磁石装着孔23bの外端部が栓体24によって閉塞されている。
【0040】
前記各磁石装着孔23b内に装着される前記磁石5は、異なる磁極が対向するように、すなわち、相互に引き合うように装着されており、前記磁石装着孔23bの内端部に形成されている段部Hに係合させられることにより、それぞれの吸着力によってケーシング23内に位置決めされているとともに、その表面の殆どが、前記磁石装着孔23bの内端部において、前記貫通孔23a内に露出させられている。
【0041】
一方、前記各貫通孔23aは、本実施形態においては、前記ケーシング23の、前記絞り部23cの上流側の端部近傍に形成されて、前記磁石5も同様に、前記絞り部23cの上流側の端部近傍に位置させられている。
【0042】
前記各導管20は、本実施形態においては金属によって形成されており、前記密閉容器2の側壁を貫通して、その中心へ向かうように設置されている。
そして、前記各導管20の先端部(密閉容器2の中心部側の端部)は、図3に示すように、その軸線に対して傾斜した開口部となされており、この開口部が前記給気口4となされている。
【0043】
さらに、前記導管20の先端部は、本実施形態においては、図3に示すように、前記導風板17の下端部と前記密閉容器2の底部との間に位置させられている。
【0044】
一方、前記密閉容器2の第1の側壁7aおよび第2の側壁7bの下部には、前記密閉容器2内の分解処理によって生成された残渣を取り出すための残渣排出口(図示略)が形成されており、これらの残渣排出口は、図1および図2に示すように、前記密閉容器2の外面に開閉可能にかつ閉位置に係止可能に取り付けられた蓋体25によって開閉されるようになされてる。
そして、前記蓋体25が閉位置に位置させられた状態において、前記残渣排出口が、シール材等により気密に閉塞されるようになっている。
【0045】
ついで、このように構成された本実施形態に係わる廃棄物処理炉1の作用について説明する。
まず、操作ロッド14を操作して開閉蓋8を上方へ回動させることにより、密閉容器2の上部の廃棄物投入口6aを開放し廃棄物を密に投入した後に開閉蓋8を閉じて密閉容器2を気密状態とする。
【0046】
ついで、前記各バルブ21を操作することにより、各給気路4から流れ込む微量空気量が、投入された廃棄物の種類や投入量等に応じた処理に必要な処理空気量となるように調整する。
【0047】
ここで、初期稼働時にあっては、前記密閉容器2内は常温であることから、密閉容器2内の気体の動きがなくこのままでは稼動しない。
そこで、初期稼働時には、適宜の加熱手段によって前記密閉容器2内を所定温度に加熱することにより、この密閉容器2内の気体を加熱して密閉容器2内に上昇気流を形成する。
【0048】
このように密閉容器2内に強制的に上昇気流を形成すると、密閉容器2内の気体が、未分解の廃棄物の隙間を通って上昇を開始した後に前記排気路4から排気される。
【0049】
このように前記密閉容器2内に上昇気流が生じると、この密閉容器2内の圧力が低下することにより、この密閉容器2内の圧力より高い大気圧により、各給気路Vから微量空気が密閉容器2内に押し込まれる。
【0050】
この微量空気は、前記給気路Vの一部を構成するケーシング23内を通過させられる間に、このケーシング23に取り付けられている永久磁石5によって形成されている磁場を通過させられる間に磁化あるいはイオン化されて、前記給気口4から前記密閉容器2内に流れ込む。
【0051】
そして、この磁化あるいはイオン化され、前記密閉容器2内に流れ込んだ微量空気は、前記密閉容器2内の廃棄物へある速度をもって照射されるとともに、この密閉容器2内が加熱されていることにより、ある温度状況下における廃棄物と磁化あるいはイオン化された微量空気との衝突により、前記廃棄物の分子レベルでの分解処理が開始され、前記給気口4の前方に略水平方向に沿った分解領域が形成される。
これは、流れ込む微量空気の磁力あるいはイオンにより、廃棄物の分子間結合が破壊されることによる現象ではないかと推測される。
【0052】
ここで、前述した流入空気は、前記ケーシング23の絞り部23cを通過する際に加速されて前記密閉容器2内に流れ込むことにより、その運動エネルギーが増幅された状態で前記密閉容器2内の廃棄物へ衝突させられる。
したがって、廃棄物の分子間結合を破壊するエネルギーが増幅されることとなり、前述した分子レベルでの分解処理が促進される。
【0053】
そして、このような廃棄物の分解処理の開始に伴い分解熱が発生して前記密閉容器2内の温度がさらに上昇し、その温度が廃棄物の燃焼温度まで上昇する。
しかしながら、稼働初期においては、前記密閉容器2内の廃棄物の殆どが未分解であり、かつ、前記密閉容器2内がこの未処理の廃棄物によって満たされて内部の酸素量が極めて少なく、また、前記密閉容器2内に流入する処理用空気が微量であることから、前述したように密閉容器2内の温度が廃棄物の燃焼温度となっても、前記密閉容器2内の酸素および流入する微量空気中の酸素が瞬時に消費されて燃焼が停止し、それ以降は、前述した分解熱のみによる温度上昇となる。
【0054】
この分解熱は、密閉容器2内に未分解の廃棄物がある限り、この廃棄物と磁化あるいはイオン化された微量空気との衝突によって継続して発生する。
したがって、燃焼を伴わない状態で前述した分解に必要な熱が継続して発生することとなり、この結果、磁化あるいはイオン化された微量空気の動きが活発化されるとともに、廃棄物の分解処理が継続して行なわれる。
【0055】
また、分解処理された廃棄物は約数十分の1に減容されるため、処理の継続にしたがい、上方の未分解の廃棄物が分解領域に順次下降して順次分解処理され、したがって、投入された廃棄物の分解処理が継続して行なわれる。
【0056】
一方、前記分解領域における廃棄物の分解処理に伴いガスが発生するが、このガスは、前記密閉容器2内の熱を受けて前記分解領域から上方へ向かって上昇し、密閉容器2の上部に形成されている排気口3、連通管9、水槽10、および、排気管11を経て外部へ排出される。
【0057】
そして、本実施形態においては、前記密閉容器2の内面に上下方向に沿って突設された導風板17によって、前記未分解の廃棄物と密閉容器2の内面との間に若干の隙間が形成されていることにより、下方の分解領域で発生したガスが前記隙間によって密閉容器2の上方へ導かれる。
また、前記導風板17には通気孔18が多数形成されていることにより、前記導風板17と密閉容器2の内壁および未分解の廃棄物との間の隙間が閉ざされた場合にあっても、前記通気孔18によって上方への隙間が確保されれて、前述したガスの上昇流が確保される。
【0058】
さらに、前記隙間は、前記導風板17と密閉容器2の内壁との間にコーナ部と投入された未分解の廃棄物との間に形成されることから、この隙間は小さく抑えられている。
【0059】
この結果、前述したガスの一部が前記隙間を通って上昇し、残部は、前記分解領域からその上方へ上昇し、この分解領域の上方に位置する未分解の廃棄物の隙間を通過して前記排気口3へ到達する。
【0060】
したがって、前記廃棄物の隙間を通過する間に、未処理の廃棄物が予熱されるので、下方の分解領域における分解処理が円滑になる。
【0061】
さらに、本実施例においては、前記排気口3を前記密閉容器2の上壁6で、第1の側壁7aに近接して設け、前記給気口4を、前記排気口3が近接して設けられた第1の側壁7aと対向する第2の側壁7bの下部両側にそれぞれ設けたことにより、前述した分解処理用の微量空気の流れが、第2の側壁7bから第1の側壁7aへ向かい前記分解領域を形成する主流と、熱による上昇流とで形成される。
【0062】
このような微量空気の流れは、前記第2の側壁7bの下部から流入して第1の側壁7aへ向かい、さらに密閉容器2の上壁2へ向かう全体として一方向の流れとなる。
そして、前記微量空気の流入部位が前述した給気口4以外に存在しないために、他方向からの気流や磁気あるいはイオンの干渉がなく、したがって、密閉容器2内の微量空気の流れの乱れが抑制されるとともに、この微量空気が前記密閉容器2内を万遍なく通過させられ、この結果、効率が良くかつ安定した分解処理が得られる。
【0063】
そして、それぞれの給気口4を、前記第2の側壁7bの下縁Aおよび各側縁Bと、これらの各縁から内側にL=200mmの間隔で設けられる仮想平行線X・Yとで囲まれる領域G内に設けたことにより、前記分解領域Gが密閉容器2の底壁や側壁7近くに形成されて、廃棄物の分解処理が密閉容器2の底壁や側壁近傍から順次内側へ向けて進行する。
【0064】
この結果、前記底壁や側壁近傍に未分解物が残存することがなくなり、これによって、密閉容器2内全体にわたって分解処理が行なわれるとともに、底壁や側壁7近傍に未分解物が残存することによる処理効率の低下が防止される。
そして、前記各給気口の設置位置は、前述した領域Gの内、前記第2の側壁の下縁および各側縁から約100mmの位置に設置することによって、前述した作用を効果的に引き出すことができる。
【0065】
ここで、L>200mmとなる前記領域Gの外に前記給気口4を配置すると、前述した分解領域の下方あるいは外方に未分解の廃棄物が残り、かつ、この廃棄物へ前述した磁化あるいはイオン化された微量空気が届かず未分解のまま残ってしまう。
【0066】
そして、密閉容器2の底部や側壁7の近傍に残存する未分解の廃棄物は、前記分解領域の分解熱を奪ってこの分解領域の温度を低下させる作用をし、また、分解領域の分解熱によって加熱されて水分を排出する。
この水分は、前記分解領域において分解後に生成される粉粒体状の残渣に染み込んで泥状にし、この分解領域に流れ込む磁化あるいはイオン化された微量空気の流れを阻害してしまう。
【0067】
したがって、これらの相乗作用により、分解領域における分解効率が低下し、廃棄物の種類によっては(たとえば、水分を多く含む生ゴミ等である場合には)、分解そのもを停止させてしまうこともある。
【0068】
しかしながら、本実施形態においては前述した構成とすることにより、前記密閉容器3の底部に位置する廃棄物の分解処理が確実に行なわれ、前述した処理領域の下方もしくは外方に未分解物が残留することがなくなり、微量空気の円滑な流れが確保されるとともに、分解によって発生する熱が分解領域に保持されて、分解に必要な温度が確保されるとともに、水分の滞留を防止して分解処理の継続性や効率が確保される。
【0069】
また、分解領域において発生したガスは加熱されることにより上方へ移動するが、前述したように、分解熱の殆どが分解領域に保持されることから、発生ガスの温度も十分な温度となり、その結果、発生ガスの上昇エネルギーも十分に確保される。
したがって、前記発生ガスの排気が円滑に行なわれることとなり、これに伴って、給気口4からの微量空気の流入も円滑になり、また、上昇ガスにより分解領域の上方の未分解物の予熱が行なわれる。
したがって、これらの相乗作用により、廃棄物の分解効率が向上し、また、処理むら等が減少する。
【0070】
図6および図7は本発明の第2の実施形態を示すものである。
本実施形態においては、前述した第1の実施形態において第2の側壁7bの下部両側に設けた給気口4を、前記排気口3が近接して配設された第1の側壁7aの両側に位置する第3の側壁7cおよび第4の側壁7dの下部で、前記第2の側壁7b側に設け(図7参照)、かつ、それぞれの給気口4が、前記各第3の側壁7cおよび第4の側壁7dの下縁Dおよび前記第2の側壁との連続部を形成する前記側縁Bと、これらの各縁D・Bから内側に200mmの間隔で設けられる仮想平行線J・Kとで囲まれる領域M内に設けた(図6参照)構成としたものである。
【0071】
このような構成とした場合においても、前述した第1の実施形態と同様の作用を得ることができる。
【0072】
さらに、図8および図9は、本発明の第3の実施形態を示す。
本実施形態においては、前述した第1の実施形態において、前記各給気口4の鉛直方向上方に第2の給気口4をそれぞれ設け、これらの上下の給気口4を、前記給気路Vの一部を形成する分岐管26を介して単一の給気管27に接続し、この給気管27の上流側に前記バルブ21およびケーシング23を連設し、このケーシング23内に前記一対の磁石5を設けた構成としたものであり、さらに、前記上下の給気口4間の間隔Pを、P≦400mmとなるように設定したものである。
【0073】
このような構成とすることにより、一つのケーシング23内において磁化あるいはイオン化された微量空気が、分岐管26において上下に分岐されて上下の給気口4を介して密閉容器2内に送り込まれる。
【0074】
これによって、上下の各給気口4のそれぞれから照射される微量空気によって、前記密閉容器2内に上下2つの分解領域が形成され、全体として厚みのある分解領域が形成されることにより分解効率が向上する。
【0075】
そして、上下の給気口4の間隔Pを、P≦400mmとすることにより、上下の給気口4の間隔を適切なものとして、両分解領域間に残存する未分解物を適量に保持することにより、この未分解物による前記各分解領域への影響を抑制し、前述した処理効率を高レベルに保持することができる。
【0076】
なお、前記各実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
たとえば、前記密閉容器2は円筒形に限られるものではなく、断面が四角形や多角形であってもよい。
【0077】
また、前述した第3の実施形態においては、第1の実施形態を基準として上下に給気口4を設けた例について示したが、第2の実施形態を基準として第3の側壁7cおよび第4の側壁7dに同様に設けるようにしてもよい。
【0078】
さらに、第3の実施形態においては、上下の給気口4を分岐管26を介して一つにまとめて、単一のケーシング23へ接続した例について示したが、各給気口4毎にケーシング23を接続して、独立した給気路Vを構成するようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す廃棄物処理炉の正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す廃棄物処理炉の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示す廃棄物処理炉の要部の拡大縦断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示すもので、給気路の一部を構成するケーシングの縦断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示すもので、図5のA−A断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す廃棄物処理炉の側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す廃棄物処理炉の平面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態を示す廃棄物処理炉の正面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態を示す廃棄物処理炉の要部の拡大縦断面である。
【符号の説明】
【0080】
1 廃棄物処理炉
2 密閉容器
2a 廃棄物投入口
3 排気口
4 給気口
5 磁石
6 上壁
6a 廃棄物投入口
7 側壁
7a 第1の側壁
7b 第2の側壁
7c 第3の側壁
7d 第4の側壁
8 開閉蓋
9 連通管
10 水槽
11 排気管
12 ブラケット
13 枢軸
14 操作ロッド
15 ロックレバー
16 係止片
17 導風板
18 通気孔
20 導管
21 バルブ
22 エルボ管
23 ケーシング
23a 貫通孔
23b 磁石装着孔
23c 絞り部
24 栓体
25 蓋体
26 分岐管
27 吸気管
A 下縁
B 側縁
D 下縁
G 領域
H 段部
J 仮想平行線
K 仮想平行線
M 領域
V 給気路
W 排気路
X 仮想平行線
Y 仮想平行線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物が投入される6面体状の密閉容器と、この密閉容器の上部に設けられて、この密閉容器内の発生ガスを排気する排気口と、前記密閉容器に設けられて、この密閉容器内に微量空気を送り込む給気口と、この給気口から前記密閉容器の外部に連設された給気路を挟むように設けられて、この給気路を横切る磁場を形成する一対の磁石とを備えた廃棄物処理炉であって、前記排気口が、前記密閉容器の上壁で、第1の側壁に近接して設けられ、前記給気口が、前記排気口が近接して設けられた第1の側壁と対向する第2の側壁の下部両側にそれぞれ設けられ、かつ、それぞれの給気口が、前記第2の側壁の下縁および各側縁と、これらの各縁から内側に200mmの間隔で設けられる仮想平行線とで囲まれる領域内に設けられていることを特徴とする廃棄物処理炉。
【請求項2】
前記各給気口の上方に第2の給気口がそれぞれ設けられてなり、これら上下の給気口の距離をPとした場合、P≦400mmとしたことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理炉。
【請求項3】
前記上下の給気口が、前記給気路を形成する分岐管を介して単一の給気管に接続されており、この吸気管の上流側に前記一対の磁石が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の廃棄物処理炉。
【請求項4】
廃棄物が投入される6面体状の密閉容器と、この密閉容器の上部に設けられて、この密閉容器内の発生ガスを排気する排気口と、前記密閉容器に設けられて、この密閉容器内に微量空気を送り込む給気口と、この給気口から前記密閉容器の外部に連設された給気路を挟むように設けられて、この給気路を横切る磁場を形成する一対の磁石とを備えた廃棄物処理炉であって、前記排気口が、前記密閉容器の上壁で、第1の側壁に近接して設けられ、前記給気口が、前記排気口が近接して設けられた第1の側壁の両側に位置する第3の側壁および第4の側壁の下部で、前記第1の側壁と対向する第2の側壁側に設けられ、かつ、それぞれの給気口が、前記各第3および第4の側壁の下縁および前記第2の側壁との連続部を形成する側縁と、これらの各縁から内側に200mmの間隔で設けられる仮想平行線とで囲まれる領域内に設けられていることを特徴とする廃棄物処理炉。
【請求項5】
前記各給気口の上方に第2の給気口がそれぞれ設けられてなり、これら上下の給気口の距離をPとした場合、P≦400mmとしたことを特徴とする請求項4に記載の廃棄物処理炉。
【請求項6】
前記上下の給気口が、前記給気路を形成する分岐管を介して単一の給気管に接続されており、この給気管の上流側に前記一対の磁石が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の廃棄物処理炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−289296(P2006−289296A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115451(P2005−115451)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(305012016)株式会社 建創 (4)
【出願人】(597070068)株式会社沖創建設 (12)
【Fターム(参考)】