説明

廃棄物処理装置

【課題】燃焼炉の損耗を防止すると共に、NOxの排出抑制を行う。
【解決手段】カーシュレッダーダストfを熱分解ドラム10で熱分解して熱分解ガスaと、主として不揮発性成分から成る熱分解残渣dとを生成する。前記熱分解ガスaを燃焼炉14の燃焼バーナ19に供給して熱分解ガスa中の可燃分を燃焼させ、かつ、前記燃焼炉14内に燃焼空気h,i,jを導入して炉内温度を調整するようにしたカーシュレッダーダスト処理装置である。前記燃焼空気h,i,jに、該燃焼空気中の酸素濃度を調整する蒸気fを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の一種であるカーシュレッダーダスト(ASR:Automobile Shureded Regedy) を熱分解ドラムで熱分解して熱分解ガスと、主として不揮発性成分から成る熱分解残渣とを生成し、前記熱分解ガスを燃焼炉の燃焼バーナに供給して熱分解ガス中の可燃分を燃焼させ、かつ、前記燃焼炉内に燃焼用空気を導入して炉内温度を調整するようにしたカーシュレッダーダスト処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、使用済み自動車(廃自動車)は、解体事業者によって解体され、(1)エンジン、ミッション、各種部品、油脂、並びに、(2)鉄スクラップや非鉄金属が回収され、残りの約20〜25%がカーシュレッダーダスト(以下、ASRという。)となる。因みに、第(1)項のエンジン、ミッション、各種部品、油脂等の回収割合は、約40〜45%、第(2)項の鉄スクラップや非鉄金属等の回収割合は、約35〜40%である。
【0003】
上記ASRは、従来、埋立処分場に運搬されて埋め立てられていたが、埋立処分場が、年々、手狭になって来たために、ASRの減量化が望まれていた。このため、本発明者らは、上記ASRを熱分解ドラムで熱分解して熱分解ガスと、主として不揮発性成分から成る熱分解残渣とを生成し、前記熱分解ガスを燃焼炉の燃焼バーナに供給して熱分解ガス中の可燃分を燃焼させ、かつ、前記燃焼炉内に冷却用空気を導入して炉内温度を所定温度に制御するカーシュレッダーダスト処理装置を開発するに至った。
【0004】
上記のように、熱分解ドラムにてASRが改質されてできた熱分解ガスaは、図3に示すように、燃焼炉4に供給されるが、通常、この燃焼炉4では、1次燃焼領域1の温度が1100℃、炉出口5の温度が850〜950℃に制御され、熱分解ガス中の可燃分の完全燃焼が行われている。換言すれば、この燃焼炉は、熱分解ガス中の可燃分を完全燃焼させる燃焼反応器と言える。従って、燃焼炉の温度管理は、重要な要素となる。また、燃焼炉の温度調整は、燃焼空気量の調整により行われるようになっている。図中、hは1次空気、iは2次空気、jは2次空気、eは燃焼排ガスである。
【0005】
その上、熱分解ドラムで発生した熱分解ガスは、燃焼炉に速やかに供給されるので、熱分解ガス供給量の平均化は、不可能である。即ち、「燃える物」の調整は、不可能である。また、前述のとおり、燃焼反応は、
燃焼反応=燃える物+酸素+着火エネルギー
である。ここで、前述の如く、「燃える物」は、調整不可能である。また、「着火エネルギー」も燃焼溶融炉主バーナによるため、制御不可能である。従って、制御できるのは低「酸素(空気)」だけである。
【0006】
ところが、ASRの熱分解ガスは、一般家庭から出た一般ごみや産業廃棄物などと性状が異なり、高カロリー(例えば、3000〜5000kcal/kg)であるから、空気量の調整だけでは、1次燃焼領域、2次燃焼領域、3次燃焼領域の温度制御が困難となり、場合によっては、1300℃を超える高温での燃焼が発生する。その結果、燃焼炉に使用されている耐火材の損耗が早くなるという問題があった。尚、一般ごみや産業廃棄物などの廃棄物の発熱量は、約1000〜3000kcal/kgである。
【0007】
他方、ASRには、アンダーコート(車体床裏、タイヤハウスなどに塗布することで高い防錆性や、小石などが当たる衝撃音をシャットアウトする役目を担っている(厚さ:約6mm)。)、バンパー用塗料(エラストマー変成ポリプロピレン(TPO)バンパーのプライマー塗装に塩素化ポリプロピレンを使用。)、シーラント(自動車の製造・構造上生ずる鋼板と鋼板の合わせ目や、溶接部からの水漏れ、錆の発生を防ぐために塗装されている「可撓性を持つ強靱な皮膜を形成するペースト状ゾルトタイプの塗料」である。一般的に、シーラントは、中塗・上塗などの色塗装を施す前にボデーにノズルにより塗装され、仮焼付けが行われた後、シーラントが半硬化した状態で中塗・上塗が塗装され、焼き付けられている塗膜を形成する。)、内装部品、ウェザーストリップ、ワイヤーハーネスなどの塩素含有プラスチック等が含まれているため、熱分解ドラムで発生した熱分解ガスの燃焼時にNOxの発生が増加するなどの問題があった。
【0008】
ところで、一般廃棄物及び産業廃棄物を加熱して熱分解ガスと熱分解残渣とを生成する廃棄物処理装置において、家ごみ等の廃棄物貯蔵室に溜まる廃棄物からの流出汚水、生活排水その他の汚水、産業廃棄物のうちの所謂化学廃液、廃油などの可燃性廃液等の液状廃棄物及び/又は水を溶融燃焼炉に供給して蒸発させ、液状廃棄物に含まれている可燃分を燃焼させる廃棄物処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
しかし、高温(通常、1300℃程度)の溶融燃焼炉に液状廃棄物及び/又は水を供給すると、液状廃棄物及び/又は水が爆発的に蒸発するから炉内温度の変動が激しくなるばかりでなく、液状廃棄物及び/又は水が溶融燃焼炉に使用している耐火材に、直接、当たると、耐火材にクラックが入るなどの損耗が、より激しくなるなどの問題があった。
【特許文献1】特開平9−229324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題を回避するためになされたものであり、燃焼炉の損耗を防止すると共に、NOxの排出抑制を行うカーシュレッダーダスト処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、請求項1に記載の発明に係るカーシュレッダーダスト処理装置は、カーシュレッダーダストを熱分解ドラムで熱分解して熱分解ガスと、主として不揮発性成分から成る熱分解残渣とを生成し、前記熱分解ガスを燃焼炉の燃焼バーナに供給して熱分解ガス中の可燃分を燃焼させ、かつ、前記燃焼炉内に燃焼空気を導入して炉内温度を調整するようにしたカーシュレッダーダスト処理装置において、前記燃焼空気に、該燃焼空気中の酸素濃度を調整する蒸気を供給することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のカーシュレッダーダスト処理装置において、前記燃焼バーナの他、前記燃焼炉の肩部にも1次空気供給部を設け、該1次空気供給部に燃焼空気中の酸素濃度を調整する蒸気を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、請求項1に記載の発明は、カーシュレッダーダストを熱分解ドラムで熱分解して熱分解ガスと、主として不揮発性成分から成る熱分解残渣とを生成し、前記熱分解ガスを燃焼炉の燃焼バーナに供給して熱分解ガス中の可燃分を燃焼させ、かつ、前記燃焼炉内に燃焼空気を導入して炉内温度を調整するようにしたカーシュレッダーダスト処理装置において、前記燃焼空気に、該燃焼空気中の酸素濃度を調整する蒸気を供給するので、燃焼炉の燃焼温度を、常時、一定に保持することができる。
【0014】
従って、従来の如く、液状廃棄物及び/又は水を溶融燃焼炉に導入して、その爆発的な蒸発によって炉内温度を制御する従来方式に比べて炉内に使用している耐火材の損耗を、より一層抑制することができる。と同時に、炉内温度を抑制することができるために、NOxの排出抑制が可能になった。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記燃焼バーナの他、前記燃焼炉の肩部にも1次空気供給部を設け、該1次空気供給部に燃焼空気中の酸素濃度を調整する蒸気を供給するので、燃焼炉、特に、1次燃焼領域における燃焼温度を、常時、一定に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明に係るカーシュレッダーダスト処理装置の概略構成図である。図1に示すように、熱分解ドラム10は、スクリューフィーダー11と、横型回転ドラム12と、排出装置13により構成されている。この横型回転ドラム12は、図示しないシール機構によってドラム内部が低酸素雰囲気に保持されている。また、横型回転ドラム12内に設けた長手方向の多数の加熱管(図示せず)には、燃焼炉14の後流側に設けた高温空気加熱器16によって加熱された加熱空気bが空気流路17を経て供給され、横型回転ドラム12の内部は、300〜600℃、通常は、450℃に加熱されている。
【0018】
横型回転ドラム12の前端側に設けたスクリューフィーダー11によって横型回転ドラム12内に供給されたASR(c)は、加熱空気bによって間接的に加熱されて熱分解し、熱分解ガスaと、主として不揮発性成分から成る熱分解残渣dになる。そして、熱分解ガスaと熱分解残渣dとは、横型回転ドラム12の後端側に設けた排出装置13によってそれぞれ分離され、熱分解ガスaは、熱分解ガス流路18を経て燃焼炉14の頭部に設けた熱分解ガスバーナ(以下、燃焼バーナという。)19に燃料として供給される。
【0019】
熱分解ガスaの燃焼によって生じた燃焼排ガスeは、燃焼排ガス通路20に設けた高温空気加熱器16に供給されて処理物加熱用の加熱空気bを加熱するようになっている。高温空気加熱器16によって熱回収が行われた燃焼排ガスeは、廃熱ボイラ21及び節炭器22によって更に熱回収が行われた後、減温器23及び集塵器24を経て排気塔(図示せず)から大気中に放出される。他方、熱分解残渣dは、図示しない分離装置に導入され、金属等の比較的粗粒の不燃性成分と、灰分を含む細粒の燃焼性成分とに分離される。
【0020】
上記カーシュレッダーダスト処理装置は、上記廃熱ボイラ21及び節炭器22以外に、前記燃焼炉14内に設けたボイラ25によって蒸気を生成するようになっている。これらのボイラ21,25や節炭器22にて生成された蒸気fは、汽水胴26を経て施設内の諸設備に供給するようになっている。また、汽水胴26の蒸気fの一部を蒸気供給管27を経て1次空気の一部に供給するようになっている。
【0021】
燃焼炉14は、図2に示すように、縦長の炉であり、その頭部に燃焼バーナー19を立設している。この燃焼バーナ19は、2重管状のバーナであり、外筒30を燃焼炉14の上面に取り付けている。尚、外筒30よりも長尺の内筒31は、下端部(先端部)が若干炉内に突出し、上端部が外筒30よりも上方に突出している。その上、内筒31の突出部及び外筒30の下段部に1次空気供給管32を接続すると共に、燃焼炉14の肩部に前記1次空気供給管32から分岐した1次空気供給管45を接続している。更に、外筒30の上段部に熱分解ガス流路18及び蒸気供給管27を接続している。また、燃焼炉14の胴部に2次空気供給管33を接続すると共に、その下方に3次空気供給管34を接続している。
【0022】
上記1次空気供給管32に設けた第1の流量調整バルブ35は、燃焼炉14の頭部に設けた第1の温度計39の測定値に基づいて制御され、2次空気供給管33に設けた第2の流量調整バルブ36は、燃焼炉14の胴部に設けた第2の温度計40の測定値に基づいて制御され、3次空気供給管34に設けた第3の流量調整バルブ37は、燃焼炉14の胴部に設けた第3の温度計41の測定値に基づいて制御され、第1、第2、第3の流量調整バルブの制御は、第1の制御装置43によって制御するようになっている。
【0023】
他方、上記蒸気供給管27に設けた第4の流量調整バルブ38は、第1の温度計39の測定値を入力する第2の制御装置44によって制御するようになっている。その上、燃焼炉14の頭部には、灯油gを燃料とする種火バーナ46を設けている。また、燃焼炉14の下部に中和用の尿素水を噴霧する尿素水噴霧ノズル47を設けている。
【0024】
次に、上記燃焼炉の作用について説明する。
【0025】
上記熱分解ドラム10の排出装置13から熱分解ガス流路18を経て、図2に示すように、燃焼炉14の頭部に設けた燃焼バーナ19の外筒30に供給された熱分解ガスaは、1次空気供給管32より内筒31および外筒30に供給された1次空気hと共に、燃焼炉14内に噴出され、種火バーナ46の種火(図示せず)によって着火し、熱分解ガスa中の可燃分が燃焼する。燃焼によって生じた燃焼排ガスeは、燃焼炉14の下部にある炉出口15から排出される。
【0026】
そして、燃焼バーナ19の直下に位置する1次燃焼領域1の燃焼温度が設定値より高いことを第1の温度計39が検出すると、第2の制御装置44によって蒸気供給管27に設けた第4の流量調整バルブ38が制御され、燃焼炉14の肩部に設けた1次空気供給管45に蒸気fが供給される。1次空気供給管45に供給された蒸気fは、1次空気h中の酸素濃度を低下させるので、1次燃焼領域1における熱分解ガスaの燃焼が抑制され、1次燃焼領域1の燃焼温度が次第に低下する。
【0027】
1次燃焼領域1の燃焼温度が設定値になると、第2の制御装置44によって蒸気の供給が絞られる。なお、場合により停止される。その際、1次空気hの供給量が減少するように第1の制御装置43によって第1の流量調整バルブ35が制御される。また、2次、3次燃焼領域2,3の燃焼温度が設定値より高いことを第2、第3の温度計40,41が検出すると、第1の制御装置43によって第2、第3の流量調整バルブ36,37が制御され、結果的に2次、3次空気i,jの供給量が制御される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るカーシュレッダーダスト処理装置の概略構成図である。
【図2】燃焼炉の概略構成図である。
【図3】燃焼炉の機能説明図である。
【符号の説明】
【0029】
a 熱分解ガス
c カーシュレッダーダスト
d 熱分解残渣
f 蒸気
h,i,j 燃焼空気
10 熱分解ドラム
14 燃焼炉
19 燃焼バーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーシュレッダーダストを熱分解ドラムで熱分解して熱分解ガスと、主として不揮発性成分から成る熱分解残渣とを生成し、前記熱分解ガスを燃焼炉の燃焼バーナに供給して熱分解ガス中の可燃分を燃焼させ、かつ、前記燃焼炉内に燃焼空気を導入して炉内温度を調整するようにしたカーシュレッダーダスト処理装置において、前記燃焼空気に、該燃焼空気中の酸素濃度を調整する蒸気を供給することを特徴とするカーシュレッダーダスト処理装置。
【請求項2】
前記燃焼バーナの他、前記燃焼炉の肩部にも1次空気供給部を設け、該1次空気供給部に燃焼空気中の酸素濃度を調整する蒸気を供給することを特徴とする請求項1記載のカーシュレッダーダスト処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−271217(P2007−271217A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99433(P2006−99433)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】