説明

廃棄物残渣類の処理方法と廃棄物残渣類の造粒機

【課題】廃棄物の残渣類に対して、連続した作業でもって重金属等の不溶化処理を行いながら造粒物とし、搬送、取り扱いを容易にして、埋め立てを含めたリサイクル処理が可能となるようにすること。
【解決手段】廃棄物の残渣類の処理であって、高速ミキサーで、セメント、水、キレート剤を撹拌、混合した混合物を、円筒状の回転ドラムの内側に供給し、螺旋状の搬送用隔壁で案内させながら造粒を行い、該回転ドラムの他方端から造粒固化物を排出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を既存の選別手段(スクリーン等)により選別して得られた土砂類を主体とする廃棄物残渣類の処理方法と廃棄物残渣類の造粒機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、建設廃棄物や混合廃棄物を、振動型のスクリーン等の手段を用いて、プラスチック、木材、紙、布等の可燃物、或いは有価物(鉄、非鉄金属)に選別し、選別で残った残渣類、所謂土砂類は、最終処分場で処分されるが、その際、土砂類の熱灼減量が5%以下ならば、安定型埋立処理場へ、それ以外は、管理型埋立処理場で処分されなければならない。
【0003】
こうした残渣類のうち、管理型処理場で処理するためには、上述した熱灼減量の問題のほかに、土壌環境基準や土壌汚染防止法に照らして、残渣類に、砒素、セレン、重金属等の不溶化処理を施した後でなければ行うことができない。
こうした処理方法として、従前に行われている方法は、一般に、セメントやキレート剤(砒素、セレン、重金属等の不溶化処理材)を用いて残渣類を固化させる方法である。
【0004】
上述した産業廃棄物の処理を行う従来の技術としては、次のものを挙げることができる。
【特許文献1】特開平11−333423。
【特許文献2】特開2004−358456。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、廃棄物残渣類の固化処理方法としては、残渣類に対するセメント(重量比で1割乃至2割)の均等混合も容易ではないし、また、セメントのみでは、重金属等の不溶化処理を行うことが難しいためにキレート剤を少量用いることが多いが、このキレート剤を用いる場合であっても、これが非常に高価であるので、この少量のキレート剤を前記残渣類に均等混合させることは容易でないと共に固化を行うことができても、残渣類の固化状態が嵩張るようでは(大きな塊となる)、取り扱い、搬送に問題が残ってしまう。
更に、こうした固化処理方法は、経済性から考えても、バッチ方式ではなく、連続して行われることが好ましいという問題もある。
【0006】
本発明は、かかる従来技術に鑑み、既存の選別手段により選別して得られた可燃物を含んだ土砂類を主体とする廃棄物の残渣類に対して、連続した作業でもって重金属等の不溶化処理を行いながら造粒物とし、搬送、取り扱いを容易にして、埋め立てを含めたリサイクル処理が可能となるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる廃棄物残渣類の処理方法は、上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、廃棄物を既存の選別手段により選別して得られた土砂類を主体とする廃棄物残渣類の処理方法であって、
前記残渣類をコンベアで搬送するときにセメントを所定量供給し、
前記コンベアから前記残渣類とセメントとを、搬送機能を有する高速ミキサーに供給して撹拌し、
その撹拌中に、水とキレート剤とを投入し、
撹拌された混合物を、円筒状の回転ドラムの一方端の内側に供給し、螺旋状の搬送用隔壁で案内させながら造粒を行い、
該回転ドラムの他方端から造粒固化物を排出するようにした、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる造粒機は、請求項4に記載のとおり、上記目的を達成するために、廃棄物を既存の選別手段により選別して得られた土砂類を主体とする残渣類に、セメント、水、キレート剤を添加して撹拌混合した混合物の造粒に用いる造粒機であって、
円筒状の回転ドラムを回転自在に設け、
該回転ドラムの一方端に、前記混合物の供給部を設け、その他端部に造粒物の排出部を設け、
前記回転ドラムの内周面に、少なくとも1条の螺旋状の搬送用隔壁を、該回転ドラムの軸心方向に向けて所定の高さで、且つ、その軸線方向に向けて所定のピッチ間隔で設けてある、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる廃棄物残渣類の処理方法によれば、既存の選別手段により選別して得られた土砂類を主体とする廃棄物の残渣類に対して、高速ミキサーを用いたセメントの混合、特に、少量のキレート剤の均等混合を、同時に水を添加することによって増量したような状態として行い、効率よく撹拌して均等混合することによって回転ドラムによる造粒化の効率を上げることができると共にその回転ドラムでは螺旋状の搬送用隔壁により長い距離で造粒を行って粒塊を成長させながら造粒物を排出することができ、回転ドラムであるので、こうした造粒を連続的に行うことができるのであり、その結果、連続した作業でもって重金属等の不溶化処理を行いながら造粒物とし、搬送、取り扱いを容易にして、埋め立てを含めたリサイクル処理が可能にできるに至ったのである。
【0010】
そして、その造粒機は、回転ドラムという簡単な構造のものであり、且つ、内周に螺旋状の搬送用隔壁を設けることで長い造粒面を形成できながら、同時に造粒物を回転ドラムの一方端から他方端へ移送することができるので、粒塊成長を十分に図りながら連続処理によって造粒物を形成できるのである。
本発明のその他の具体的な利点は、以下の説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の方法においては、その実施に際して、前記水は、前記残渣類を重量部で100部として6部から15部とし、前記キレート剤は、0.2部から0.5部とすることが好ましい。
上記水は、その残渣類がトータルとして有する量であり、選別時点で水分含有量が多ければ、添加する水は少なくなる。
このような数値とすることで、造粒作用が好ましく現れ、粒径が一律ではないが、2mm乃至10mmのものが得られた。
勿論、上記のようにキレート剤を最小限の量としたので、造粒物の生産コストを低減できたものである。
【0012】
また、前記セメントは、前記残渣類を重量部で100部として5部から10部とするのが好ましい。
本発明の方法において、このような数値を採用することで、セメントの量を最小限にしながら、造粒物を十分に固化させることができた。
【0013】
更に、この処理方法に用いる造粒機であって、電動モータで低速回転される円筒状の回転ドラムからなり、該回転ドラムの一方端は、前記混合物を投入する投入部を備えると共にその他方端は、造粒物を排出する排出部を備え、該回転ドラムの内周面には、少なくとも1条の螺旋状の搬送用隔壁を、該回転ドラムの軸心方向に向けて所定の高さで、且つ、その軸線方向に向けて所定のピッチ間隔で設けてあるのが好ましい。
【0014】
この方法の実施に用いる造粒機として、円筒状の回転ドラム、螺旋状の搬送用隔壁を備えることで、そこに形成される長い螺旋通路面で十分な造粒を図りながら、連続処理で造粒物を排出できるのである。
【0015】
また、請求項4の造粒機としては、前記供給部には、前記混合物を整流させるスクレイパーを、前記回転ドラムの内周面に近接させて設けてあるのが好ましい。
このようにスクレイパーを備えることで、高速ミキサーから排出された混合物が、回転ドラムの内周面に付着、堆積しがちな状態を解消することができ、造粒化を促進できる。
【0016】
更に、前記回転ドラムの径が、50cm〜200cmであり、前記搬送用隔壁の軸線方向のピッし間隔は、100mm〜300mmであり、前記回転ドラムの全長に亘る前記搬送用隔壁の螺旋回数は、10回〜25回であるのが好ましい。
このような数値とすることで、毎時 15トン程度の残渣類の好適な造粒化を連続して図ることができた。
【実施例】
【0017】
本発明にかかる廃棄物残渣類の処理方法と廃棄物残渣類の造粒機の好適実施例を、図面を参照して以下詳述する。図1は、造粒機、高速ミキサー、高速ミキサーとここに残渣類とセメントとを供給するコンベアの設置を示す概略平面図である。図2は、前記高速ミキサーとコンベアの設置を示す概略正面図、図3は、高速ミキサーと造粒機の設置を示す概略正面図である。
【0018】
図1乃至図3において、1は、残渣類とセメントとを供給するコンベア、2は、パウダー供給機であり、セメントを前記コンベア1の始端部に供給し、3は、投入コンベアであり、別途、スクリーンなどの選別機で選別が終わった残渣類(可燃物などの熱灼減量が少量、好ましくは5%以下含まれる)を前記コンベア1に供給する。従って、ここでは、所定量のセメントの上に残渣類が積層状態で供給されることになる。
【0019】
ここでは、供給されるセメントは、ポルトランドセメントといった種類のバージンセメントであり、残渣類の重量部を100として対比すると10部である。この量は、5部ないし15部であれば本発明の目的を達成できる。
また、コンベア1に供給される残渣類は、その水分含有率が公知のセンサー(図外)により検知され(一般に8%乃至16%程度である)、後の水の供給量に反映される。
【0020】
4は、高速ミキサーであり、前記コンベア1の終端部に臨んで設けられており、搬送されてきた残渣類とセメントとを受け入れる。5は、造粒機を構成する回転ドラムであり、電動モータにより回転駆動される。図3は、回転ドラム5を水平軸に対して、3度程度(2−5度の範囲)傾斜させ、混合物が始端側へ重力で戻されるようにして、造粒時間が長くなるように描かれている(他の図面では、水平に架設されているが、この方式でも造粒できる)。前記高速ミキサー4は、自硬性鋳物砂の混練に使用できる構造のもので、電動モータ4Cにより、毎分480乃至1000回転できる構成のもので、図4から図6に示す構成とされている。概要構造としては、円筒状の内部に、その始端側に所定ピッチのスクリュー4Aが設けられ、ここに残渣類とセメントとが供給され、このスクリュー4Aと同軸芯線上で、複数のパドル羽根4Bが、軸線方向に螺旋状に配置されており、送られてきたセメントと残渣類とを撹拌、混合しながら終端部側から排出できる構成とされている。
【0021】
そして、ここでは、図4及び図5に示す通り、前記パドル羽根4Bが配置されている箇所において、キレート剤供給管6と水供給管7とが設けられている。前記キレート剤供給管6は、図外のキレート剤タンクに接続され、水供給管7は、水タンク乃至水源に接続されている。勿論、これらの供給量については、制御弁により調整され、特に、水の供給については、前述した残渣類の水分含有量の検知を踏まえて、ここでは、総含水率が10部になるように調整される。実施例の図示では、水がキレート剤よりも先に供給されているが、同時又は逆でもよい。
【0022】
前記高速ミキサー4の終端部は、前記回転ドラム5の始端部の内部に臨まされており、ここから混合物を回転ドラム5の内部に排出するように構成されている。
更に、この高速ミキサー4は、その排出口の首振りが可能な構成とされており、必要に応じて、前記回転ドラム5の内周の所要箇所に混合物を排出供給可能とされている。
【0023】
前記回転ドラム5は、ここでは、直径1800mm、長さ3000mmのものが用いられている。この回転ドラム5の内周面には、螺旋状の搬送隔壁5Aがここでは1条、300mmのピッチで設けられている。この搬送隔壁5Aの高さ、即ち、この回転ドラム5の軸芯方向への長さは、ここでは、150mmに設定されている。そして、この回転ドラム5の始端部の内側には、スクレイパー8が設けられている。このスクレイパー8は、図7及び図8に示すように、前記回転ドラム5の始端部の内周面に摺接するように、回転ドラム5の軸線方向に平行に設けられ、長さは、約400mm程度あり、回転ドラム5の外で片持ち支持されてており、周面に接当する部分はゴムで構成されている。また、この回転ドラム5は、毎分14回転されるように設定され、その結果、ドラムの周速度は、80m/minとなり、造粒に適した速度が得られるようにされている。
尚、図1、図3、図7に示すように、前記搬送隔壁5Aは、前記スクレイパー8の配置部分のみ欠如している。また、図示において、回転ドラム5の軸線を横切る3本の実線は、接合リブを示す。
【0024】
このような装置により、廃棄物を既存の選別手段により選別して得られた土砂類を主体とする残渣類を、前記残渣類をコンベア1で搬送するときにセメントを所定量供給(残渣類を100部として、ここでは10部)し、前記コンベア1から前記残渣類とセメントとを、搬送機能を有する高速ミキサー4に供給して撹拌し、その撹拌中に、水を8部(残渣類の含水率により変わる)と、キレート剤を0.2部、投入し、撹拌された混合物を、円筒状の回転ドラム5の一方端の内側に供給し、螺旋状の搬送用隔壁5Aで案内させながら造粒を行い、該回転ドラム5の他方端から造粒固化物を排出するのである。この際、混合物は、搬送用隔壁5Aで区画形成された周面通路に沿って摩擦抵抗で上昇し、重力で下降し、これを繰り返すことで造粒が進行することになり、同時に軸線方向への搬送がなされるのである。
【0025】
勿論、前記水は、前記残渣類を重量部で100部として6部から15部の範囲で適宜調整するものとし、前記キレート剤は、0.2部から0.5部とすれば、十分に造粒個化を果たすことができる。
また、前記セメントは、前記残渣類を重量部で100部として5部から10部とすれば、造粒化に十分である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の処理方法と造粒機は、残渣類の連続した造粒化処理を行い、残渣類の重金属等の不溶化処理を行うので、埋め立て処理、リサイクル等の適宜の処理が可能であり、種々の廃棄物残渣に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明にかかる処理方法を示す装置全体の配置平面図。
【図2】本発明にかかる処理方法を示す装置の要部の配置正面図。
【図3】本発明にかかる処理方法を示す装置の要部の配置側面図。
【図4】本発明にかかる処理方法を示す装置の高速ミキサーの一部断面図。
【図5】本発明にかかる処理方法を示す装置の高速ミキサーの要部の拡大断面図。
【図6】本発明にかかる処理方法を示す装置の高速ミキサーの側面図。
【図7】本発明にかかる処理方法を示す造粒機の回転ドラムの概略正面図。
【図8】本発明にかかる処理方法を示す造粒機の回転ドラムの概略側面図。
【符号の説明】
【0028】
1:コンベア
4:高速ミキサー
5:回転ドラム
5A:搬送用隔壁
8:スクレイパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を既存の選別手段により選別して得られた土砂類を主体とする廃棄物残渣類の処理方法であって、
前記残渣類をコンベアで搬送するときにセメントを所定量供給し、
前記コンベアから前記残渣類とセメントとを、搬送機能を有する高速ミキサーに供給して撹拌し、
その撹拌中に、水とキレート剤とを投入し、
撹拌された混合物を、円筒状の回転ドラムの一方端の内側に供給し、螺旋状の搬送用隔壁で案内させながら造粒を行い、
該回転ドラムの他方端から造粒固化物を排出するようにした、
ことを特徴とする廃棄物残渣類の処理方法。
【請求項2】
前記水は、前記残渣類を重量部で100部として6部から15部とし、前記キレート剤は、0.2部から0.5部とすることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物残渣類の処理方法。
【請求項3】
前記セメントは、前記残渣類を重量部で100部として5部から10部とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物残渣類の処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の廃棄物残渣類の処理方法に用いる造粒機であって、
電動モータで低速回転される円筒状の回転ドラムからなり、
該回転ドラムの一方端は、前記混合物を投入する投入部を備えると共にその他方端は、造粒物を排出する排出部を備え、
該回転ドラムの内周面には、少なくとも1条の螺旋状の搬送用隔壁を、該回転ドラムの軸心方向に向けて所定の高さで、且つ、その軸線方向に向けて所定のピッチ間隔で設けてある、
ことを特徴とする廃棄物残渣類の造粒機。
【請求項5】
廃棄物を既存の選別手段により選別して得られた土砂類を主体とする残渣類に、セメント、水、キレート剤を添加して撹拌混合した混合物の造粒に用いる造粒機であって、
円筒状の回転ドラムを回転自在に設け、
該回転ドラムの一方端に、前記混合物の供給部を設け、その他端部に造粒物の排出部を設け、
前記回転ドラムの内周面に、少なくとも1条の螺旋状の搬送用隔壁を、該回転ドラムの軸心方向に向けて所定の高さで、且つ、その軸線方向に向けて所定のピッチ間隔で設けてある、
ことを特徴とする造粒機。
【請求項6】
前記供給部には、前記混合物を整流させるスクレイパーを、前記回転ドラムの周面に近接させて設けてあることを特徴とする請求項5に記載の造粒機。
【請求項7】
前記回転ドラムの径が、50cm〜200cmであり、前記搬送用隔壁の軸線方向のピッし間隔は、100mm〜300mmであり、前記回転ドラムの全長に亘る前記搬送用隔壁の螺旋回数は、10回〜25回であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の造粒機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−240319(P2011−240319A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128310(P2010−128310)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000204114)太洋マシナリー株式会社 (18)
【Fターム(参考)】