説明

廃棄物炭化物と水の混合方法及び装置

【課題】 混合撹拌処理の時間及びエネルギー消費を削減する。
【解決手段】 熱分解装置2の炭化物取出口9に、水封槽4の水槽本体12を炭化物シュート11を介し接続する。水槽本体12は、界面活性剤水溶液14を貯留できるようにし、又、炭化物シュート11を通した炭化物3の投入個所近傍に、撹拌装置16を備えた構成とする。廃棄物1を熱分解装置2で熱分解処理して製造される炭化物3を、炭化物シュート11を通して水封槽4の水槽本体12に貯留した界面活性剤水溶液14に投入させ、界面活性剤水溶液14と接することで疎水性の表面が親水性とされ、更に多孔質構造の内部に界面活性剤水溶液14を浸入させて見かけ比重の軽さを解消した状態の炭化物3を、撹拌装置16による最小限の物理的な撹拌混合により、界面活性剤水溶液14に対し短時間で均等に混合分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を熱分解処理して製造する廃棄物の炭化物を水と均一に混合するために用いる廃棄物炭化物と水の混合方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等の廃棄物の有効利用を図る手段の1つとして、廃棄物を熱分解装置で熱分解処理して炭化物を製造し、この炭化物を各種施設のボイラ等の燃焼装置で燃料として再利用して、サーマルリサイクルを図る試みが行われてきている。
【0003】
ところで、上記廃棄物の炭化物を燃料として再利用する場合、熱分解装置より粉状又はフレーク状で取り出される上記炭化物を、水に均等に混合(分散)させる処理や、上記廃棄物の炭化物に、水を均等に含有させる(混合させる)処理が必要とされることがある。
【0004】
すなわち、たとえば、廃棄物の熱分解処理を行う熱分解装置で製造する炭化物を回収するために、熱分解装置の出口側に水封槽(水槽)を設けて、上記熱分解装置より取り出される炭化物(チャー)を、上記水封槽で水中に落とし込み、これにより、上記炭化物を水冷して火種を消すと共に、該炭化物をスラリーとして回収することが行われている。
【0005】
又、廃棄物に混入していた塩素含有プラスチック等に由来して上記炭化物中に含まれる塩素(Cl)の濃度を下げることを目的として、熱分解装置より取り出される炭化物を水中に混合、分散させて、無機系の塩となっている塩素分を水に溶出させて希釈する(洗浄する)ことも行われている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
更に、上記水封槽で水中に落とし込まれた炭化物について、該炭化物に混入していた金属や瓦礫等の異物を、比重差を利用して分離して取り出すことも提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0007】
一方、廃棄物の炭化物(廃棄物熱分解チャー)を原料として固形燃料(RDF)を製造して再利用を図る手法においては、炭化物を成型機で成型するために、炭化物に10〜30%の水(水分)を加え、次いで、この水をバインダーとして上記炭化物を圧縮成型機や押出成型機や転動造粒機等の成型手段を用いて成型し、固形燃料(RDF)化することが行われている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−192050号公報
【特許文献2】特開2003−236406号公報
【特許文献3】特開2001−271080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、廃棄物を熱分解装置で熱分解処理することによって製造される炭化物は、多孔質で見かけ比重が小さく、しかも、表面の親水性が低いという性状を有している。
【0010】
そのために、たとえば、特許文献1及び特許文献2に示されたような熱分解装置の出口側に設けられた水封槽では、熱分解装置より取り出される炭化物を、該水封槽に貯留されている水に対し単に供給(落下供給)しても、該炭化物は水面に浮いてしまい、そのままでは炭化物を水冷する効果や、炭化物より脱塩する効果を得ることができない。
【0011】
更に、上記水封槽への炭化物の供給を継続して行っても、炭化物は水面に堆積してしまい、この水面に堆積した炭化物が、熱分解装置より水封槽へ炭化物を導くための供給ラインやシュートを閉塞させてしまう虞が懸念される。
【0012】
以上の点に鑑みて、上記特許文献1に示されたものでは、水封槽にポンプで水とスラリーを循環させる循環ラインを備えて、熱分解装置より該水封槽へ落下投入される炭化物を、上記循環ラインで循環させる水流とスラリーの流れと共に水中へ強制的に流し込むようにして、炭化物と水との混合撹拌を強制的に行わせるようにしてある。
【0013】
又、上記特許文献2に示されたものでは、水封槽に撹拌機を設けて、該撹拌機により上記炭化物と水との混合撹拌を強制的に行わせるようにしてある。
【0014】
一方、特許文献3に示されたものでは、廃棄物の炭化物(廃棄物熱分解チャー)に10〜30%の水を均等に混合させることが、該水をバインダーとして炭化物を成型して固形燃料化を行う上で重要な要素となるが、上記した如き炭化物の有する性状に起因して、炭化物に対しノズルから所定量の水を単に散布しただけでは、炭化物と水が均等に混ざらない。しかし、上記炭化物に所定量の水が均等に混ざらなくて、部分的に水分濃度のむらが生じてしまうと、炭化物の成型を行う際に水が有効なバインダーとして働かなくなってしまう。
【0015】
そのために、特許文献3に示されたものでは、混合撹拌装置を用いて、廃棄物の炭化物と水との混合撹拌を強制的に行わせるようにしてある。
【0016】
したがって、従来、廃棄物の炭化物と水との均一な混合を行うために、強制的な混合撹拌を行うようにしてあり、実際には、上記炭化物を水となじませるためには非常に強力な混合撹拌を長時間行う必要が生じることから、この混合撹拌処理に時間がかかると共に、エネルギー消費が大きくなってしまっているのが実状である。
【0017】
そこで、本発明は、廃棄物を熱分解装置で熱分解処理することにより製造される炭化物と、水との均一な混合をより容易に実施できるようにして、上記炭化物と水との混合撹拌処理に要する時間及びエネルギー消費を削減することが可能な廃棄物炭化物と水の混合方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、廃棄物を熱分解装置で熱分解処理して製造してなる炭化物を、該炭化物の表面を界面活性剤の水溶液により湿潤させた状態で該水溶液に含まれている水、又は、別の水と撹拌混合するようにする廃棄物炭化物と水の混合方法とする。
【0019】
又、上記構成において、炭化物の表面を、石炭粉の粉塵の飛散防止のために用いられている界面活性剤の水溶液により湿潤させるようにする。
【0020】
更に、上記各構成において、容器内に、界面活性剤の水溶液を、廃棄物を熱分解処理する熱分解装置より取り出される炭化物の火種を消すための水冷処理と、該炭化物に含まれている無機系の塩化物の脱塩処理の一方又は双方を行うために必要とされる量で貯留し、該容器内に貯留した上記界面活性剤の水溶液に、熱分解装置で製造した炭化物を供給して撹拌混合するようにするようにする。
【0021】
同様に、上記各構成において、界面活性剤水溶液槽に、界面活性剤の水溶液を貯留し、該界面活性剤水溶液槽内に貯留した上記界面活性剤の水溶液に、廃棄物を熱分解処理する熱分解装置より取り出される炭化物を供給して、該炭化物を上記界面活性剤の水溶液で湿潤させ、次いで、上記熱分解装置より取り出される炭化物の火種を消すための水冷処理と、該炭化物に含まれている無機系の塩化物の脱塩処理の一方又は双方を行うために別の容器内に貯留した水に、上記界面活性剤の水溶液で湿潤させた炭化物を加えて撹拌混合するようにする。
【0022】
又、請求項5に対応して、廃棄物を熱分解装置で熱分解処理して製造してなる炭化物を投入する容器と、上記炭化物に対し界面活性剤の水溶液を供給する手段と、上記容器内に水を供給する手段と、上記容器内を撹拌するための撹拌装置を備えてなる構成を有する廃棄物炭化物と水の混合装置とする。
【0023】
更に、請求項6に対応して、界面活性剤の水溶液を、廃棄物を熱分解処理する熱分解装置より取り出される炭化物の火種を消すための水冷処理、及び、該炭化物に含まれている無機系の塩化物の脱塩処理の一方又は双方の処理を行うために必要とされる量で貯留すると共に、上記炭化物を供給できるようにした容器と、上記容器内を撹拌するための撹拌装置を備えてなる構成を有する廃棄物炭化物と水の混合装置とする。
【0024】
更に又、請求項7に対応して、廃棄物を熱分解処理する熱分解装置より取り出された炭化物を、界面活性剤の水溶液により湿潤させるための界面活性剤水溶液槽を備え、更に、上記界面活性剤水溶液槽より取り出される界面活性剤の水溶液により湿潤された炭化物を、上記熱分解装置より取り出された炭化物の火種を消すための水冷処理、及び、該炭化物に含まれている無機系の塩化物の脱塩処理の一方又は双方の処理を行うために必要とされる量の水に投入するための容器と、該容器内を撹拌するための撹拌装置を備えてなる構成を有する廃棄物炭化物と水の混合装置とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)廃棄物を熱分解装置で熱分解処理して製造してなる炭化物を、該炭化物の表面を界面活性剤の水溶液により湿潤させた状態で該水溶液に含まれている水、又は、別の水と撹拌混合するようにする廃棄物炭化物と水の混合方法、より具体的には、炭化物の表面を、石炭粉の粉塵の飛散防止のために用いられている界面活性剤の水溶液により湿潤させるようにする廃棄物炭化物と水の混合方法としてあるので、廃棄物を熱分解処理して製造する炭化物を、上記界面活性剤の水溶液と接触させることで、その疎水性の表面を親水性とさせて水膜を形成させることができる。よって、上記炭化物の水との親和性を改善できるため、撹拌装置による撹拌により、上記炭化物を水と短時間で均等に混合分散させることができる。
(2)したがって、上記撹拌装置による物理的な撹拌混合を最小限にすることができて、廃棄物の炭化物と水との均一な混合を行うための混合撹拌処理に要する時間及びエネルギー消費を大幅に削減することができる。
(3)廃棄物を熱分解装置で熱分解処理して製造してなる炭化物を投入する容器と、上記炭化物に対し界面活性剤の水溶液を供給する手段と、上記容器内に水を供給する手段と、上記容器内を撹拌するための撹拌装置を備えてなる構成を有する廃棄物炭化物と水の混合装置とすることにより、上記(1)(2)の効果を得るための装置構成を容易に実現できる。
(4)界面活性剤の水溶液を、廃棄物を熱分解処理する熱分解装置より取り出される炭化物の火種を消すための水冷処理、及び、該炭化物に含まれている無機系の塩化物の脱塩処理の一方又は双方の処理を行うために必要とされる量で貯留すると共に、上記炭化物を供給できるようにした容器と、上記容器内を撹拌するための撹拌装置を備えてなる構成を有する廃棄物炭化物と水の混合装置とすることにより、上記(1)(2)の効果を得るための装置構成を容易に実現できる。更に、上記炭化物を、水冷して火種を消す水冷処理や、上記炭化物に含まれている無機系の塩の脱塩処理を効率よく速やかに行わせることが可能になる。
(5)廃棄物を熱分解処理する熱分解装置より取り出された炭化物を、界面活性剤の水溶液により湿潤させるための界面活性剤水溶液槽を備え、更に、上記界面活性剤水溶液槽より取り出される界面活性剤の水溶液により湿潤された炭化物を、上記熱分解装置より取り出された炭化物の火種を消すための水冷処理、及び、該炭化物に含まれている無機系の塩化物の脱塩処理の一方又は双方の処理を行うために必要とされる量の水に投入するための容器と、該容器内を撹拌するための撹拌装置を備えてなる構成を有する廃棄物炭化物と水の混合装置とすることにより、上記(4)と同様の効果を得ることができることに加えて、上記界面活性剤の水溶液の使用量、ひいては、界面活性剤の使用量を低減させる効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の廃棄物炭化物と水の混合方法及び装置の実施の一形態として、熱分解装置の出口側に設けた水封槽に貯留された水と炭化物との混合に適用する場合の例を示す概要図である。
【図2】本発明の実施の他の形態として、図1の実施の形態の応用例を示す概要図である。
【図3】本発明の実施の更に他の形態として、廃棄物の炭化物と、該炭化物を成型して固形燃料化するためのバインダーとして加える水とを混合する場合に適用する場合の例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0028】
図1は本発明の廃棄物炭化物と水の混合方法及び装置の実施の一形態として、廃棄物1の熱分解処理を行う熱分解装置2により製造される炭化物3を、上記熱分解装置2の出口側に設けた水封槽4に貯留された水に投入して混合する場合に適用する例を示すもので、以下のようにしてある。
【0029】
すなわち、熱分解装置2として、たとえば、回転駆動可能に横置きしたキルン炉本体5内へ給じん機6により供給された廃棄物1を、上記キルン炉本体5内で外熱により間接的に加熱して乾燥、熱分解処理し、該熱分解処理により発生する熱分解ガス10と熱分解残渣としての炭化物3を、上記キルン炉本体5の出口側に設けた分離室7の頂部のガス取出口8と底部の炭化物取出口9より個別に取り出すことができるようにしてある熱分解装置2を設ける。
【0030】
上記熱分解装置2の分離室7の炭化物取出口9に上端を接続した炭化物シュート11の下端側を、水封槽4に接続する。
【0031】
上記水封槽4は、界面活性剤として、たとえば、石炭等の粉塵(石炭粉)の飛散防止用の界面活性剤13の或る濃度の水溶液(以下、単に界面活性剤水溶液と云う)14を貯留すると共に、上記界面活性剤水溶液14の補給手段15を備えて水位を常時一定に保持できるようにしてある容器としての水槽本体12を備え、該水槽本体12に、上記炭化物シュート11の下端側を、該炭化物シュート11の下端開口部が水槽本体12内に貯留する上記界面活性剤水溶液14の水面下に所要寸法没するよう配置した状態で接続する。これにより、上記炭化物シュート11の下端開口部を水封して、上記熱分解装置2で発生する可燃性の熱分解ガス10が、炭化物シュート11を経て上記水封槽4やその外部へ漏れ出る虞を防止できるようにする。
【0032】
更に、上記水槽本体12には、上記一定水位で貯留する界面活性剤水溶液14の水面下で且つ上記炭化物シュート11の下端開口部の近傍となる位置に、撹拌装置16を設けてなる構成とする。
【0033】
詳述すると、上記界面活性剤水溶液14の補給手段15は、たとえば、図示しない水ポンプより補給水17を導く補給水ライン18の途中位置に、上記界面活性剤13の原液タンク19を、上記図示しない水ポンプと連動する薬剤供給ポンプ21を備えた薬剤供給ライン20を介して接続した構成としてある。これにより、上記水封槽4の水槽本体12内の水位が予め設定してある既定水位よりも低下した場合に、上記図示しない水ポンプの運転により上記補給水ライン18を通して上記低下した水位を規定の水位まで回復させる量の補給水17を供給するときには、上記図示しない水ポンプと連動して上記薬剤供給ポンプ21が運転されることにより、上記原液タンク19より薬剤供給ライン20を通して導かれる界面活性剤13の原液が、上記補給水ライン18を通して水槽本体12へ供給される補給水17に所定の割合で添加されるようにして、上記水槽本体12に対しては、上記補給水17に上記界面活性剤13の原液が所定の割合で添加された状態の界面活性剤水溶液14が補給されるようにしてある。
【0034】
なお、上記石炭等の粉塵(石炭粉)の飛散防止用の界面活性剤13は、疎水性の粒子(粉塵)の表面を親水性にして水膜を形成し、この水膜により粒子同士を結びつけて、二次粒子形成を行う機能を有する界面活性剤である。その一例としては、たとえば、(出光コールクリーンWA−500(登録商標)がある。又、上記界面活性剤水溶液14としては、上記界面活性剤13の数‰〜数%の水溶液を用いるようにすればよく、たとえば、0.5%(5‰)の水溶液を用いるようにすればよい。
【0035】
又、上記水封槽4の水槽本体12に貯留する界面活性剤水溶液14の量は、上記熱分解装置2で製造される炭化物3を水冷して火種を消すことができると共に、上記廃棄物1中の塩素含有プラスチック等に由来して該炭化物3中に無機系の塩の状態で含まれている塩素分を水に溶出させて所望濃度まで希釈できるように設定してあるものとする。
【0036】
22は上記水槽本体12の一側部の下部位置に、該水槽本体12に一定水位で貯留する界面活性剤水溶液14の水位よりも高所となる位置まで斜め上方へ延びるように設けた出口側水槽部、23は上記水槽本体12の底面及び出口側水槽部22の底面に沿って設けた掻き上げ式の排出コンベヤである。これにより、上記水槽本体12に貯留された界面活性剤水溶液14へ上記炭化物シュート11を通して投入される炭化物3中に含まれていて、該水槽本体12の底部に沈む比重の大きな金属やその他、比重の大きい不燃物24を、上記排出コンベヤ23で上記出口側水槽部22を通して搬送して外部へ排出できるようにしてある。
【0037】
又、25は上記水槽本体12より上記炭化物3と界面活性剤水溶液14の混合物として形成されるスラリー26を取り出して回収するためのスラリー回収ライン、27は上記スラリー回収ライン25の下流側に設けた固液分離手段であり、該固液分離手段27により上記スラリー回収ライン25を通して回収されたスラリー26を固液分離して固体成分としての炭化物3を回収できるようにしてある。又、上記固液分離手段27において上記炭化物3より分離された液体成分としての界面活性剤水溶液14は、その一部を戻しライン28を通して上記水槽本体12へ戻して再利用し、残部は図示しない排水処理設備へ排出させるようにしてある。
【0038】
以上の構成としてある本発明の炭化物と水の混合装置を使用する場合は、水槽本体12に装備した撹拌装置16を運転させ、この状態で、上記廃棄物1を熱分解装置2で熱分解処理し、この熱分解処理により製造された後、分離室7で熱分解ガス10と分離される炭化物3を、炭化物取出口9より炭化物シュート11を通して、上記水封槽4の水槽本体12に貯留してある界面活性剤水溶液14に投入させる。
【0039】
これにより、上記炭化物3は、上記界面活性剤水溶液14と接することで、その疎水性の表面が親水性とされて水膜が形成されるようになることから、多孔質構造の内部にも上記界面活性剤水溶液14が水分として浸入できるようになる。よって、上記炭化物3の水との親和性が改善されると共に、見かけ比重の軽さが解消されるため、上記撹拌装置16による撹拌により、上記界面活性剤水溶液14に対し、短時間で均等に混合分散されるようになる。
【0040】
このように、本発明の炭化物と水の混合方法及び装置によれば、廃棄物1を熱分解装置2で熱分解処理して製造する炭化物3を、上記熱分解装置2の炭化物取出口9の下流側に設けた水封槽4で、撹拌装置16により界面活性剤水溶液14と撹拌することにより、短時間で均一に混合することができる。したがって、上記撹拌装置16による物理的な撹拌混合を最小限にすることができる。よって、廃棄物1の炭化物3と水との均一な混合を行うための混合撹拌処理に要する時間及びエネルギー消費を大幅に削減することができる。
【0041】
又、上記炭化物3を上記界面活性剤水溶液14に容易に且つ短時間で均等に混合分散できることにより、該炭化物3を、効率よく水冷して速やかに火種を消すことができる。更に、上記炭化物3に無機系の塩の状態で含まれている塩素分を、上記界面活性剤水溶液14の水分に効率よく溶解させることができ、よって、上記固液分離手段27より回収される炭化物3を、良好に脱塩処理されたものとすることができる。
【0042】
次に、図2は本発明の実施の他の形態として、図1の実施の形態の応用例を示すもので、図1に示したと同様の構成において、熱分解装置2と、水封槽4との間に、界面活性剤水溶液槽29を設けて、上記熱分解装置2で製造された後、分離室7の炭化物取出口9より炭化物シュート11を通して回収される炭化物3を、上記界面活性剤水溶液槽29に一旦受けて界面活性剤水溶液14と混合し、次いで、上記炭化物3と界面活性剤水溶液14との混合物30を、上記水封槽4へ供給できるようにしたものである。
【0043】
具体的には、上記界面活性剤水溶液槽29は、図1の実施の形態における界面活性剤水溶液14と同様の界面活性剤水溶液14を貯留できるようにした容器であり、該界面活性剤水溶液槽29に、上記炭化物シュート11の下端側が、該炭化物シュート11の下端開口部を界面活性剤水溶液槽29内に貯留する上記界面活性剤水溶液14の水面下に所要寸法没するよう配置した状態で接続してある。
【0044】
上記界面活性剤水溶液槽29における所要個所には、上記界面活性剤水溶液14を図示しない供給部より導くための薬剤供給ライン31を接続し、更に、上記炭化物シュート11の下端開口部付近に、撹拌装置32を設けた構成としてある。
【0045】
更に、上記界面活性剤水溶液槽29の下部に設けた開閉弁34付きの取出口33に、シュート35の上端側を接続し、且つ該シュート35の下端側を、上記水封槽4の水槽本体12に接続した構成としてある。
【0046】
なお、上記界面活性剤水溶液槽29は、上記熱分解装置2の分離室7の炭化物取出口9より炭化物シュート11を通して回収される炭化物3を、すべて湿潤させることが可能な量の界面活性剤水溶液14を貯留できるようにしてあるものとする。
【0047】
上記水封槽4は、上記熱分解装置2で製造される炭化物3を水冷して火種を消すことができると共に、上記廃棄物1中の塩素含有プラスチック等に由来して該炭化物3中に無機系の塩の状態で含まれている塩素分を水に溶出させて所望濃度まで希釈できるようにするために、水36のみを必要量貯留できるようにしてあるものとする。更に、上記水封槽4に水36のみを貯留することに鑑みて、該水封槽4には、図示しない水ポンプより補給水17のみを導くようにした補給水ライン18が接続してあるものとする。
【0048】
その他の構成は図1に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0049】
以上の構成としてある本実施の形態の廃棄物炭化物と水の混合装置を用いる場合は、界面活性剤水溶液槽29に装備した撹拌装置32を運転させ、この状態で、廃棄物1を熱分解装置2で熱分解処理して製造された炭化物3を、分離室7の炭化物取出口9と炭化物シュート11を経て、上記界面活性剤水溶液槽29に貯留してある界面活性剤水溶液14に投入させる。
【0050】
これにより、上記炭化物3は、上記界面活性剤水溶液14と接することで、水との親和性が改善されると共に、見かけ比重の軽さが解消されるため、上記撹拌装置32による撹拌により、上記界面活性剤水溶液14に対し、短時間で均等に混合分散されるようになる。
【0051】
上記のようにして炭化物3と界面活性剤水溶液14が均等に混合された混合物30が形成されると、界面活性剤水溶液槽29の取出口33の開閉弁34を開いて、該混合物30を、上記シュート35を通して水封槽4へ供給して該水封槽4に貯留されている水36に投入させ、該水封槽4に装備してある撹拌装置16で撹拌する。
【0052】
この際、上記界面活性剤水溶液槽29で一旦界面活性剤水溶液14と均等に混合分散された炭化物3は、その表面に水膜が形成されて水との親和性が高められているため、上記水封槽4においては、貯留されている水36に対しても、速やかに均等に混合分散されるようになる。
【0053】
したがって、本実施の形態によっても、廃棄物1を熱分解装置2で熱分解処理して製造する炭化物3を、水に対して短時間で均一に混合することができて、上記撹拌装置32や16による物理的な撹拌混合を最小限にすることができるため、廃棄物1の炭化物3と水との均一な混合を行うための混合撹拌処理に要する時間及びエネルギー消費を大幅に削減することができる。
【0054】
又、上記炭化物3を上記界面活性剤水溶液14との混合物30とした状態で、水封槽4に貯留してある水36に容易に且つ短時間で均等に混合分散できるため、該炭化物3を、効率よく水冷して速やかに火種を消すことができる。又、上記炭化物3に無機系の塩の状態で含まれている塩素分を、上記水36に効率よく溶解させることができて、上記固液分離手段27より回収される炭化物3を、良好に脱塩処理されたものとすることができる。
【0055】
しかも、上記界面活性剤水溶液槽29で使用する界面活性剤水溶液14は、炭化物3を湿潤させることができる量のみでよいため、該界面活性剤水溶液14の使用量を低減できて、界面活性剤13(図1参照)の原液の使用量を低減させることが可能になる。
【0056】
次いで、図3は本発明の実施の更に他の形態として、廃棄物1の熱分解処理を行う熱分解装置2により製造される炭化物3を固形燃料(RDF)化する固形燃料製造装置における撹拌混合機で、炭化物3をバインダーとなる所要量の水と混合する場合に適用する例を示すもので、以下のようにしてある。
【0057】
ここで先ず、上記固形燃料製造装置の構成について説明すると、該固形燃料製造装置は、図3に示すように、図1に示した熱分解装置2と同様の構成としてある熱分解装置2の分離室7の炭化物取出口9の下流側に、該分離室7内より炭化物3を取り出せるようにした炭化物取出装置37と、炭化物3に含まれる大型の不燃物38を選別除去する粗選別機としての振動篩40と、上記振動篩40で大型不燃物38が除去された後の炭化物3に含まれる鉄系金属類を選別除去する磁気選別機41と、上記磁気選別機41で鉄系金属類が除去された後の炭化物3の貯留と供給を行うことができるようにしてある炭化物貯留・供給機42と、上記炭化物貯留・供給機42から供給された炭化物3中に含まれる中間サイズの不燃物39を選別除去する中間選別機としての振動篩43と、上記振動篩43により中間サイズの不燃物39が除去された後の炭化物3を受け入れて定量供給できるようにしてある定量供給機44と、上記定量供給機44より定量供給される炭化物3に、水分供給ライン46を通して10〜30%、好ましくは15〜25%の水又は蒸気47を添加して撹拌混合するための図示しない容器に撹拌装置を具備した撹拌混合機45を順に備える。
【0058】
更に、上記撹拌混合機45の下流側に、該撹拌混合機45より供給される炭化物3を粉砕しながら高圧で圧縮成型して所要形状(たとえば、円柱状)の圧縮成型品48を成型する圧縮成型機49と、上記圧縮成型機49で成型された圧縮成型品48を空気供給ライン50を通して供給される常温の空気51により強制通風冷却乾燥させて、製品としての固形燃料52を得るための冷却乾燥機53を順に設けた構成としてある。
【0059】
以上の構成としてある固形燃料製造装置に本発明を適用する場合の装置構成は、上記熱分解装置2の分離室7より炭化物3を取り出す炭化物取出装置37と、上記撹拌混合機45との間の所要個所、たとえば、定量供給機44より撹拌混合機45へ炭化物3を供給する経路に、図示しない供給部より図1の実施の形態に示した界面活性剤水溶液14と同様の界面活性剤水溶液14を導く薬剤供給ライン54を接続して、該薬剤供給ライン54を通して導かれる界面活性剤水溶液14を、上記定量供給機44より撹拌混合機45へ供給される炭化物3に噴霧できるようにした構成とする。
【0060】
この際、上記界面活性剤水溶液14の噴霧量は、上記定量供給機44より撹拌混合機45へ供給される炭化物3が湿潤する量となるように設定してあるものとする。
【0061】
55は上記冷却乾燥機53の下流位置に設けた振動篩であり、製品としての固形燃料52に付着している微細な炭化物3は、該振動篩55で篩い落して上記定量供給機44に戻すようにしてある。
【0062】
56は上記大型の不燃物38と中間サイズの不燃物39より鉄系金属類を選別するための磁気選別機、57は上記磁気選別機56の下流側に設けて、上記大型の不燃物38と中間サイズの不燃物39より非鉄系金属類としてのアルミとその他の不燃物に選別するためのアルミニウム選別機である。又、58は集じん機である。
【0063】
その他、図1に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0064】
以上の構成としてある固形燃料製造装置で固形燃料52を製造するために、上記撹拌混合機45で定量供給機44より供給される炭化物3を、バインダーとなる水分供給ライン46を通して添加される所定量の水又は蒸気47と撹拌混合する工程を行う際には、上記定量供給機44より供給される炭化物3が、上記薬剤供給ライン54より噴霧された界面活性剤水溶液14により予め湿潤された状態で上記撹拌混合機45へ供給されるようになる。
【0065】
したがって、この撹拌混合機45へ供給された炭化物3は、上記界面活性剤水溶液14と接することで、その疎水性の表面が親水性とされて水膜が形成された状態となることで、水との親和性が改善されているため、その後、該界面活性剤水溶液14で湿潤された炭化物3が、上記撹拌混合機45で水分供給ライン46を通して添加された所定量の水又は蒸気47と共に撹拌されると、該水又は蒸気47と短時間で均等に混合分散されるようになる。
【0066】
このように、実施の形態によれば、熱分解装置2で製造した廃棄物1の炭化物3を、上記撹拌混合機45で撹拌することにより、水や蒸気47と短時間で均一に混合することができる。したがって、上記撹拌混合機45による物理的な撹拌混合を最小限にすることができる。よって、上記炭化物3と上記水や蒸気47との均一な混合を行うための混合撹拌処理に要する時間及びエネルギー消費を大幅に削減することができる。
【0067】
更に、上記炭化物3を上記水や蒸気47と容易に且つ短時間で均等に混合分散できることにより、上記固形燃料製造装置において、上記炭化物3に均等に含まれた水分をバインダーとしてより良好な性状の固形燃料52を製造することができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、図2の実施の形態においては、界面活性剤水溶液14を図示しない供給部より導くための薬剤供給ライン31を、界面活性剤水溶液槽29に接続した構成を示したが、上記薬剤供給ライン31を、炭化物シュート11の所要個所に接続して、熱分解装置2より該炭化物シュート11を通して界面活性剤水溶液槽29へ供給される途中の炭化物3に対して界面活性剤水溶液14を噴霧して、該炭化物3を湿潤させるようにしてもよい。
【0069】
本発明の廃棄物炭化物と水の混合方法及び装置は、炭化物3を水と共に撹拌混合する時点、あるいは、それ以前に界面活性剤水溶液14と接触させて、該炭化物3の表面を親水性とさせて水膜を形成できるようにすれば、炭化物3と水とを混合する容器はいかなる容器であってもよく、又、炭化物3、界面活性剤水溶液14、水の供給手段はいかなる形式であってもよい。
【0070】
本発明は、廃棄物1を熱分解処理して製造した炭化物3と、水とを均等に混合させることが必要とされるものであれば、いかなる形式の装置にも適用してよい。
【0071】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
1 廃棄物
2 熱分解装置
3 炭化物
12 水槽本体(容器)
13 界面活性剤
14 界面活性剤水溶液
15 補給手段(手段)
16 撹拌装置
18 補給水ライン(手段)
20 薬剤供給ライン(手段)
29 界面活性剤水溶液槽
31 薬剤供給ライン(手段)
32 撹拌装置
45 撹拌混合機
46 水分供給ライン(手段)
54 薬剤供給ライン(手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を熱分解装置で熱分解処理して製造してなる炭化物を、該炭化物の表面を界面活性剤の水溶液により湿潤させた状態で該水溶液に含まれている水、又は、別の水と撹拌混合するようにすることを特徴とする廃棄物炭化物と水の混合方法。
【請求項2】
炭化物の表面を、石炭粉の粉塵の飛散防止のために用いられている界面活性剤の水溶液により湿潤させるようにする請求項1記載の廃棄物炭化物と水の混合方法。
【請求項3】
容器内に、界面活性剤の水溶液を、廃棄物を熱分解処理する熱分解装置より取り出される炭化物の火種を消すための水冷処理と、該炭化物に含まれている無機系の塩化物の脱塩処理の一方又は双方を行うために必要とされる量で貯留し、該容器内に貯留した上記界面活性剤の水溶液に、熱分解装置で製造した炭化物を供給して撹拌混合するようにする請求項1又は2記載の廃棄物炭化物と水の混合方法。
【請求項4】
界面活性剤水溶液槽に、界面活性剤の水溶液を貯留し、該界面活性剤水溶液槽内に貯留した上記界面活性剤の水溶液に、廃棄物を熱分解処理する熱分解装置より取り出される炭化物を供給して、該炭化物を上記界面活性剤の水溶液で湿潤させ、次いで、上記熱分解装置より取り出される炭化物の火種を消すための水冷処理と、該炭化物に含まれている無機系の塩化物の脱塩処理の一方又は双方を行うために別の容器内に貯留した水に、上記界面活性剤の水溶液で湿潤させた炭化物を加えて撹拌混合するようにする請求項1又は2記載の廃棄物炭化物と水の混合方法。
【請求項5】
廃棄物を熱分解装置で熱分解処理して製造してなる炭化物を投入する容器と、上記炭化物に対し界面活性剤の水溶液を供給する手段と、上記容器内に水を供給する手段と、上記容器内を撹拌するための撹拌装置を備えてなる構成を有することを特徴とする廃棄物炭化物と水の混合装置。
【請求項6】
界面活性剤の水溶液を、廃棄物を熱分解処理する熱分解装置より取り出される炭化物の火種を消すための水冷処理、及び、該炭化物に含まれている無機系の塩化物の脱塩処理の一方又は双方の処理を行うために必要とされる量で貯留すると共に、上記炭化物を供給できるようにした容器と、上記容器内を撹拌するための撹拌装置を備えてなる構成を有することを特徴とする廃棄物炭化物と水の混合装置。
【請求項7】
廃棄物を熱分解処理する熱分解装置より取り出された炭化物を、界面活性剤の水溶液により湿潤させるための界面活性剤水溶液槽を備え、更に、上記界面活性剤水溶液槽より取り出される界面活性剤の水溶液により湿潤された炭化物を、上記熱分解装置より取り出された炭化物の火種を消すための水冷処理、及び、該炭化物に含まれている無機系の塩化物の脱塩処理の一方又は双方の処理を行うために必要とされる量の水に投入するための容器と、該容器内を撹拌するための撹拌装置を備えてなる構成を有することを特徴とする廃棄物炭化物と水の混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−156484(P2011−156484A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20647(P2010−20647)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】