説明

廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備および貯蔵方法

【課題】物理的に発酵しやすい条件下にある廃棄物由来固形燃料(例えば、RDFやバイオマス系廃棄物由来固形燃料)を、発酵がより促進されやすい高温湿潤の環境下でも貯蔵できるようにするための貯蔵設備および貯蔵方法を提案する。
【解決手段】廃棄物由来固形燃料を発酵槽52で嫌気性発酵させ、発酵により生じたバイオガスを一次貯蔵タンク53(バイオガス貯蔵槽)へ流入させたうえで、圧縮および冷却して二次貯蔵タンク(バイオガス貯蔵槽)で貯蔵する。二次貯蔵タンクに貯蔵されたバイオガスは、発電部のボイラへ送られて燃料又は補助燃料として利用される。燃料の発酵残渣は、水分が除去されて、燃料の原料として再利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵や腐敗しやすく、また、その過程で悪臭や可燃性ガスを発生させる性質を有する廃棄物由来固形燃料(例えば、ごみ固形化燃料やバイオマス系廃棄物由来固形燃料)を長期間貯蔵するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に「ごみ」と呼称される都市廃棄物(以下、「MSW;Municipal Solid Waste」という)には、一般家庭から出る固形廃棄物、民間企業(オフィスビル,小売店,卸売業,レストラン等)および公共施設(図書館,学校,病院,刑務所等)から出る固形廃棄物が含まれる。従来、MSWは可燃ごみ、リサイクルごみ、金属ごみ等に分別収集されて、そのうち可燃ごみは焼却処理されている。近年では、ごみの燃焼に伴い生成されるダイオキシン等の環境問題やごみ資源の有効利用としての観点から、可燃ごみの再資源化の一手法として、MSWからごみ固形化燃料(以下、「RDF;Refuse Derived Fuel」という)を製造することが行われている。RDFは、発電施設の補助燃料として、地域における温水用ボイラ燃料として、また、各種の工場で使用する加熱炉等の加熱源の補助燃料として利用されている。RDFは、一般に、その形状や特性から数種類(ASTMでは7種類)に分類されている。このうち広く採用されているものは、フラフ状のRDF(以下、「フラフRDF;Fluff RDF」という)と、ペレット状に成形されたRDF(以下、「ペレットRDF;Pellet RDF」という」である。
【0003】
図10(a)はペレットRDFの一般的な製造工程を示す図である。同図に示すように、ペレットRDFの製造にあたり、収集されたMSWは、破砕機で一次破砕され、乾燥設備で所定の水分量以下となるまで乾燥され、不燃物が選別除去され、二次破砕機で成形工程に適した寸法にまでさらに細かく破砕される。なお、これらの工程の間に、MSW中に混在していた金属類やその他燃料として適さない異物が選別除去される。このようにして成形に適した寸法まで細かくなったMSWは、RDF貯蔵中に微生物による発酵、発熱および発酵に伴うメタンガス発生を防止するためにアルカリ化合物(消石灰など)を主成分とする発酵防止剤と混合され、高比重化のために成形機にてペレット状に圧縮成形される。上記工程により製造されたペレットRDFは、一般に、直径10〜50mm,長さ10〜100mmの硬い円柱形状をなし、嵩比重は0.6ton/m3程度であり、低位発熱量は4,500kcal/kg程度である。
【0004】
図10(b)はフラフRDFの一般的な製造工程を示す図である。同図に示すように、フラフRDFの製造にあたり、収集されたMSWは、破砕機で一次破砕され、不燃物および異物が選別除去され、規定された寸法となるまで破砕機で二次破砕される。なお、これらの工程の間にMSW中に混在していた金属類やその他燃料として適さない異物が選別除去される。また、収集されたMSWの水分量が過多である場合は、二次破砕工程の上流又は下流に、乾燥工程が加えられる。上記工程により製造されたフラフRDFは、一般に、50〜150mm四方の平面状をなし、嵩比重は含有する水分量により変化するがおおよそ0.1〜0.2ton/m3であり、低位発熱量は3,500kcal/kg程度である。フラフRDFの製造工程では、ペレットRDFの製造工程のうち乾燥工程と成形工程の各工程が省略されている。このため、フラフRDFの製造には、乾燥炉およびその燃料、発酵防止剤、並びに成形機およびその動力が不要である。この結果、フラフRDFの製造単価はペレットRDFと比較して安価である。但し、フラフRDFは嵩高いために長距離輸送には不向きであり、貯蔵中のRDF発酵防止のための水分調整と発酵防止剤の添加を省いているため、貯蔵期間中の安全上の観点により、長期間(例えば、1週間以上)にわたって貯蔵することは避けるべきというのが業界の推奨案である。
【0005】
図11は従来のMSW収集からRDF製造およびRDF焚き発電までの全体的なRDF焚き発電システムの概念図である。同図に示すように、収集されたMSWはRDF製造設備101へ搬入され、ここでMSWからRDFが製造される。製造されたRDFは受入設備102へ搬入され、発電設備103のボイラ61へ投入される。発電設備103では、ボイラ61でRDFを燃料又は補助燃料として燃焼し、この燃焼熱を回収した高温高圧の蒸気で蒸気タービン発電設備62のタービンを回転することにより発電が行われる。
【0006】
ヨーロッパでは、比較的平均気温が低く且つ乾燥した気候であることに加えて、厨芥類(野菜のくずや食べ物の残りなどのごみ等)と一般可燃ごみとの分別回収が厳格に行われている背景から、MSWの主な構成物は布,プラスチック類,木等の一般可燃ごみである。よって、RDFの原料となるMSWに含まれる水分は、厨芥類が混在する他の地域のMSWと比べて少ない。さらに、上記RDF焚き発電システムのRDF製造設備101、受入設備102および発電設備103は隣接しているか又は近距離にあり、製造されたRDFは長期間貯蔵されることなく直ちにRDF焚きの発電設備103で燃焼される。よって、RDFの長距離輸送や長期貯蔵が不要である。このような理由から、これらの地域ではフラフRDFが採用されている。
【0007】
なお、ヨーロッパでも、発電設備103の保守点検などのためにフラフRDFを受入設備102で長期貯蔵せねばならない事態も生じ得る。フラフRDFは嵩比重が小さいため、そのまま貯蔵するには広大な貯蔵場所が必要となる。そこで、フラフRDFをビニールシート等で圧縮しながら梱包することにより、フラフRDFを嵩比重が若干増加した貯蔵および移動しやすい状態で貯蔵する。しかしながら、梱包ビニールシートではRDFと外気との接触は避けられず、RDFに含まれる水分によりRDF中の有機物が梱包内部で好気性発酵する可能性がある。RDFの発酵により生じるメタンガスやアンモニアは、火災や悪臭の原因となる。平面的に広い開放型の敷地に梱包されたRDFを並べて貯蔵することによりメタンガスやアンモニアガスの滞留を防止することはできるが、貯蔵敷地周辺の臭気問題は避けられない。
【0008】
日本では、殆どの地域で厨芥類と一般可燃ごみの分別回収は行われていない。よって、RDFの原料となるMSWに含まれる水分がヨーロッパのMSWと比べて多い。また、日本でのMSWのRDF化の基本方針は、広域に散在する地方自治体のMSWをRDF化して1カ所に集約することにより廃棄物を一括処理し、熱回収によるエネルギーの有効利用を図るというものである。このため、多くのRDF製造設備101と受入設備102は近距離遠距離を問わず離れており、RDFの輸送が必要である。さらに、複数のRDF製造設備101に対して1組の受入設備102および発電設備103が設けられており、1カ所の受入設備102で複数のRDF製造設備101から輸送されてきたRDFを長期貯蔵する必要性が生じる。このような理由から、日本では輸送及び長期貯蔵に適したペレットRDFが主流となっている。
【0009】
ペレットRDFはフラフRDFと比較して長期貯蔵に適しているが、容易に発酵する燃料であるため、RDFの発酵および発火を防止するための厳重な貯蔵方法が要求される。そこで、従来から、ペレットRDFを長期貯蔵するための技術が提案されている(例えば、特許文献1,2,3)。特許文献1では、ペレットRDFを長期貯蔵するための固形燃料貯蔵槽が示されている。この固形燃料貯蔵槽は、貯蔵槽内の蓄熱を抑制して自然発火を防止するために、貯蔵槽内の空気を循環させるとともに固形燃料も循環させるように構成されている。さらに、この貯蔵槽は、自然発火を検出するとともに、発火した場合に直ちに消火することができるように、一酸化炭素検出器、温度検出器、および散水ノズルを備えている。
【0010】
特許文献2では、縦長ホッパー状に形成された冷却室にペレットRDFを充填し、RDF充填層を貫通するように冷却ガスを流すように構成された固形燃料冷却塔が示されている。さらに、特許文献3では、オープンピット内に貯蔵されたRDFの空隙からガスを吸引採取し、採取されたガスの成分および温度を計測して発熱を検出し、発熱した箇所に窒素ガスを注入するように構成されたごみ固形燃料貯蔵装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−206010号公報
【特許文献2】特開2002−69469号公報
【特許文献3】特開2007−16174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、極東アジア(日本を除く韓国・中国等)や東南アジアで、MSWの処理が大きな環境問題となりつつある。これらの地域の中には、MSWをRDFにすることでエネルギー有効利用する計画を既に開始しているところもある。これらの地域は、分別回収の不徹底および食材並びに食生活習慣により、回収されるMSWはフラフRDFには適さない厨芥類を多量に含んでいる点、気象条件が高温・多湿である点で共通する。このような条件下であっても、RDF製造設備およびRDF製造コストの観点から、回収したMSWからフラフRDFを製造し、そのRDFを燃料として発電を行うシステムを確立したいという要望がある。しかし、水分量が多く且つ容易に発酵する厨芥類を多量に含むMSWから製造されたフラフRDFを、発酵を抑制するアルカリ化合物を添加することなく、発酵が促進されやすい高温多湿な環境で安全に長期貯蔵する方法は確立していない。前述のヨーロッパで行われているフラフRDFの梱包貯蔵方法は、フラフRDFの水分量が少なく且つ比較的乾燥した気候である条件に加えて慎重な監視下で成立するのであって、フラフRDFの水分量が多く且つ高温湿潤な気候である条件下で成立することは実証されていない。また、特許文献1〜3で提案されているRDFの貯蔵方法は、何れもペレットRDFを対象としたものである。
【0013】
フラフRDFと同様の長期貯蔵に関する課題を、バイオマス系廃棄物から製造されたバイオマス系廃棄物由来固形燃料も有している。ここで「バイオマス系廃棄物由来固形燃料」とは、バイオマス系廃棄物を異物除去や破砕や裁断等により燃焼設備の要求に適した形態にしたものを意味する。バイオマス系廃棄物も内部に多量の水分を含有し且つ発酵に適した有機物を多く含んでいる。バイオマス系廃棄物を大量に排出する国は高温・多湿の気象条件下にある東南アジア地域である。図10(c)はバイオマス系廃棄物由来固形燃料の一般的な製造工程を示す図である。同図に示すように、バイオマス系廃棄物由来固形燃料の製造にあたり、収集されたバイオマス系廃棄物は大型不燃物が選別除去され、破砕機で一次破砕され、小型の不燃物が選別除去され、燃焼に適した寸法に二次破砕される。バイオマス系廃棄物由来固形燃料のうち、油椰子系バイオマス(油椰子の幹,葉,油椰子空房等)、サトウキビ系バイオマス(サトウキビの搾りかす)、ココナッツ系バイオマス(ココナッツの搾りかす)、ジャトロファ系バイオマス(ジャトロファの葉,空房等)などのバイオマス系廃棄物から製造されたものは、特に有機物と水分を内部に大量に有するために発酵しやすく且つ発酵速度が速い。よって、このようなバイオマス系廃棄物由来固形燃料を燃料とする発電施設でも、フラフRDFと同様の長期貯蔵の課題が生じる。
【0014】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、物理的に発酵しやすい条件下にある廃棄物由来固形燃料(例えば、RDFやバイオマス系廃棄物由来固形燃料)を、発酵がより促進されやすい高温湿潤の環境下でも貯蔵できるようにするための、貯蔵設備および貯蔵方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備は、発酵しやすい廃棄物由来固形燃料を燃焼設備で燃焼する前に貯蔵するための貯蔵設備であって、前記廃棄物由来固形燃料を嫌気性発酵させる発酵槽と、前記廃棄物由来固形燃料の嫌気性発酵により生じるバイオガスを貯蔵するバイオガス貯蔵槽と、前記発酵槽から前記バイオガス貯蔵槽へ前記バイオガスを送る第1流路と、前記バイオガス貯蔵槽から前記燃料設備へ前記バイオガスを供給する供給路と備えるものである。
【0016】
また、本発明に係る廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法は、発酵しやすい廃棄物由来固形燃料を燃焼設備で燃焼する前に貯蔵する方法であって、前記廃棄物由来固形燃料を嫌気性発酵槽で嫌気性発酵させるステップと、前記廃棄物由来固形燃料の嫌気性発酵により生じるバイオガスをバイオガス貯蔵槽で貯蔵するステップとを含むものである。
【0017】
上記廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備および貯蔵方法によれば、発酵しやすい廃棄物由来固形燃料はバイオガスとその発酵残渣に形態を変えて貯蔵されることとなる。廃棄物由来固形燃料が発酵することにより、廃棄物由来固形燃料中の有機物の多くはバイオガスとして態様を変えるため、発酵槽に投入された廃棄物由来固形燃料は、その発酵した有機物ぶんだけ固体量が減容減量される。つまり、発酵残渣は元の廃棄物由来固形燃料と比較して減容減量されているので、固体貯蔵のための空間を縮減できる。さらに、廃棄物由来固形燃料に含まれる有機物の多くが発酵槽での嫌気性発酵によりバイオガスに変換されて、その発酵残渣に含まれる有機物残量が減量されているため、発酵残渣の取り扱いや保管は廃棄物由来固形燃料そのものと比較して容易である。また、バイオガスは気体であって経時変化しないので、廃棄物由来固形燃料そのままの状態と比較して保管が容易である。さらに、上記燃料貯蔵設備および燃料貯蔵方法は、乾燥した環境でも高温湿潤な環境でも同様に発酵しやすい廃棄物由来固形燃料を貯蔵することが可能であり、貯蔵環境によらず廃棄物由来固形燃料を安定して貯蔵することができる。
【0018】
前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備において、前記バイオガス貯蔵槽は、前記発酵槽から前記第1流路を通じて前記バイオガスが送られる一次貯蔵槽と、前記一次貯蔵槽と第2流路で接続された二次貯蔵槽とを含み、前記第2流路において前記一次貯蔵槽から前記二次貯蔵槽へ前記バイオガスを圧縮して送る圧縮機と、前記第2流路において前記圧縮機で圧縮された前記バイオガスを冷却する冷却器とを備えることがよい。同様に、前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法において、前記バイオガスをバイオガス貯蔵槽で貯蔵するステップは、前記発酵槽から送られてくるバイオガスを一次貯蔵槽に収容するステップと、前記一次貯蔵槽から二次貯蔵槽へ前記バイオガスを圧縮することにより減容化して送るステップと、前記圧縮されたバイオガスを冷却するステップと、前記圧縮されたバイオガスを前記二次貯蔵槽で貯蔵するステップとを含むことがよい。
【0019】
バイオガスは気体であるため、固体である廃棄物由来固形燃料とは異なり、圧縮することにより減容することが可能である。よって、上記廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備および貯蔵方法によれば、バイオガスは圧縮された状態でタンク状の貯蔵設備で貯蔵されるので、バイオガスを貯蔵するために要する平面的な広さを縮減することができる。さらに、バイオガスの圧力を調整することにより、同量のバイオガスを貯蔵するために必要な空間の大きさを変化させることができる。
【0020】
前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備において、前記発酵槽から排出された前記廃棄物由来固形燃料の発酵済み残渣である水分および前記廃棄物由来固形燃料の発酵残渣に含まれる水分を除去する水分除去手段を備えることがよい。同様に、前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法において、前記発酵槽から排出される前記廃棄物由来固形燃料の発酵済み残渣である水分および前記廃棄物由来固形燃料の発酵残渣に含まれる水分を除去するステップを含むことがよい。
【0021】
上記廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備および貯蔵方法によれば、発酵残渣は水分が除去されてさらに減容減量されるため、発酵残渣の貯蔵のための空間をさらに縮減することができる。また、発酵残渣から水分を除去することにより、水分が除去された発酵残渣を、廃棄物由来固形燃料の原料として再利用することができる。
【0022】
前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備において、前記発酵槽から前記第1流路へ流出する流出ガスの酸素濃度を検出する酸素濃度検出器と、前記流出ガスのメタン濃度を検出するメタン濃度検出器と、検出された酸素濃度およびメタン濃度に基づいて、前記流出ガスの酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲外であるときに開弁して前記第1流路と前記バイオガス貯蔵槽とを連通させる第1制御弁とを備えることがよい。同様に、前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法において、前記バイオガスをバイオガス貯蔵槽で貯蔵するステップにおいて、前記バイオガスを含む前記発酵槽から流出する流出ガスの酸素濃度およびメタン濃度を検出し、この検出結果に基づいて、前記流出ガスのうちその酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲外のものを前記バイオガス貯蔵槽へ貯蔵することがよい。
【0023】
上記燃料貯蔵設備または燃料貯蔵方法によれば、発酵槽からの流出ガスのうち圧縮に適したもののみがバイオガスとしてバイオガス貯蔵槽へ送られることとなり、バイオガス貯蔵時の安全性とバイオガス利用時の安全性とを高めることができる。
【0024】
前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備において、前記発酵槽内と大気を連通させる大気放散路と、前記酸素濃度検出器で検出された酸素濃度および前記メタン濃度検出器で検出されたメタン濃度に基づいて、前記流出ガスの酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内であるときに開弁して前記大気放散路を通じて前記流出ガスを大気放散させる大気放散弁とを備えることがよい。或いは、前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備において、前記発酵槽と第3流路を介して接続された予備貯蔵槽と、前記酸素濃度検出器で検出された酸素濃度および前記メタン濃度検出器で検出されたメタン濃度に基づいて、前記流出ガスの酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内であるときに開弁して前記第3流路と前記予備貯蔵槽とを連通させる第2制御弁とを備えることがよい。
【0025】
同様に、前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法において、前記バイオガスをバイオガス貯蔵槽で貯蔵するステップにおいて、前記流出ガスの酸素濃度およびメタン濃度に基づいて、前記流出ガスのうちその酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内のものを大気放散することがよい。或いは、前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法において、前記バイオガスをバイオガス貯蔵槽で貯蔵するステップにおいて、前記流出ガスの酸素濃度およびメタン濃度に基づいて、前記流出ガスのうちその酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内のものを前記バイオガス貯蔵槽とは異なる予備貯蔵槽へ貯蔵することがよい。
【0026】
上記燃料貯蔵設備または燃料貯蔵方法によれば、発酵槽からの流出ガスのうち、火元さえあれば外部より燃焼用酸素の供給を受けること無く燃焼するおそれのあるものは大気放散されるか又は圧縮されない予備貯蔵槽に収容されるので、バイオガス貯蔵時の安全性とバイオガス利用時の安全性とを高めることができる。
【0027】
また、前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備において、前記供給路は、前記バイオガス貯蔵槽で貯蔵されている前記バイオガスを、前記燃焼設備の起動用燃料として前記燃焼設備へ供給する経路を有することがよい。同様に、前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法において、前記バイオガス貯蔵槽で貯蔵されている前記バイオガスを、前記燃焼設備の起動用燃料として前記燃焼設備へ供給するステップを更に含むことがよい。
【0028】
上記燃料貯蔵設備または燃料貯蔵方法によれば、バイオガスを燃焼設備の燃料又は補助燃料として有効に利用することができる。
【0029】
前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備において、前記供給路は、前記バイオガス貯蔵槽で貯蔵されている前記バイオガスを、前記燃焼設備の一次燃焼空気供給路および二次燃焼空気供給路のうち少なくとも一方へ供給する経路を有することがよい。ここで、前記供給路は、前記燃焼設備へ供給される前記バイオガスが前記燃焼設備の一次燃焼空気又は二次燃焼空気と燃焼範囲外の混合比で混合するように、前記バイオガスの供給量を調整する調整手段を備えていることがよい。
【0030】
同様に、前記廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法において、前記バイオガス貯蔵槽で貯蔵されている前記バイオガスを、前記燃焼設備の一次燃焼空気供給路および二次燃焼空気供給路のうち少なくとも一方へ供給するステップを更に含むことがよい。ここで、前記燃焼設備へ供給される前記バイオガスが前記燃焼設備の一次燃焼空気又は二次燃焼空気と燃焼範囲外の混合比で混合するように前記バイオガスの供給量を調整することがよい。
【0031】
上記燃料貯蔵設備または燃料貯蔵方法によれば、バイオガスを燃料として有効に利用することができる。
【0032】
前記廃棄物由来固形燃料が、一般廃棄物から製造されたごみ固形化燃料であってよい。或いは、前記廃棄物由来固形燃料が、バイオマス系廃棄物から製造されたバイオマス廃棄物由来固形燃料であってよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、発酵しやすい廃棄物由来固形燃料は、圧縮により減容可能なバイオガスと、廃棄物由来固形燃料中の有機物が発酵によりガス化した後の発酵残渣とに形態を変えて貯蔵されることとなる。バイオガスはそれ以上発酵せず、発酵残渣に含まれる有機物残量は元の廃棄物由来固形燃料の状態と比較して大幅に減量されているので、発酵がより促進されやすい高温湿潤の環境下でも貯蔵することができる。このように、廃棄物由来固形燃料そのものを貯蔵するときと比較して貯蔵の管理が容易となる。さらに、廃棄物由来固形燃料が発酵することにより、固体量としては減容減量されるので、固体貯蔵に必要な空間を縮減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料貯蔵設備を含むRDF焚き発電システムの全体的な概念図である。
【図2】燃料製造部の構成を示す概念図である。
【図3】燃料長期貯蔵部の一次貯蔵タンクより上流側の構成を示す概念図である。
【図4】燃料長期貯蔵部の一次貯蔵タンクより下流側の構成を示す概念図である。
【図5】燃料長期貯蔵部の制御構成を示すブロック図である。
【図6】メタンの燃焼範囲を説明する図である。
【図7】発酵槽制御部のRDF投入初期の制御の流れを示すフローチャートである。
【図8】変形例に係る燃料長期貯蔵部の一次貯蔵タンクより上流側の構成を示す概念図である。
【図9】変形例に係る燃料長期貯蔵部の一次貯蔵タンクより下流側の構成を示す概念図である。
【図10】(a)はペレットRDFの一般的な製造工程を示す図であり、(b)はフラフRDFの一般的な製造工程を示す図であり、(c)はバイオマス系廃棄物由来固形燃料の一般的な製造工程を示す図である。
【図11】従来のMSW収集からRDF製造およびRDF焚き発電までのRDF焚き発電システムの全体的な概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に係る廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備(以下、単に「燃料貯蔵設備」ともいう)は、ごみ等から製造された有機物を多量に含み発酵しやすい廃棄物由来固形燃料を長期(例えば、数週間から数ヶ月程度)貯蔵するための設備である。以下では、本発明の実施の形態に係る燃料貯蔵設備を利用したRDF焚き発電システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る燃料貯蔵設備を含むRDF焚き発電システムの全体的な概念図であり、図中の矢印は物質の流れを示している。また、同図では、発明と直接的に関連しない細かい補助装置に関する記述は省略している。
【0036】
図1に示すように、RDF焚き発電システム1は主に、燃料製造部3と、燃料一時貯蔵部4と、燃料長期貯蔵部5と、発電部6とで構成されている。このRDF焚き発電システム1は、一般家庭等から排出されるごみである都市廃棄物(以下、「MSW;Municipal Solid Waste」という)からごみ固形化燃料(以下、「RDF;Refuse Derived Fuel」という)を製造し、RDFの燃焼によって発生する熱を利用して発電を行うシステムである。RDF焚き発電システム1のうち、燃料一時貯蔵部4および燃料長期貯蔵部5は発電部6に隣接している。但し、燃料製造部3は、発電部6と隣接していてもよいし離れていてもよい。また、1基の発電部6に対して複数の燃料製造部3が存在していてもよい。続いて、RDF焚き発電システム1を構成している各部について詳細に説明する。
【0037】
(燃料製造部3)
燃料製造部3は、MSWからフラフRDF(フラフ状のRDF)を製造するための設備を備えている。図2は、燃料製造部3の概念図であり、図中の矢印は物質の流れを示している。同図に示すように、燃料製造部3は主に、MSW貯蔵ピット31と、一次破砕機32と、選別機33と、二次破砕機34とを備えている。MSW貯蔵ピット31は、収集されてきたMSWを一時貯蔵するためのものである。このMSW貯蔵ピット31は、例えば、最大で5日分のMSWを収容できる容量を有する。一次破砕機32は、選別機33で異物や不燃物を除去可能とするために、MSW中のビニール袋や布状の物質を引き破ったり、大きな固形物を破砕したりするものである。選別機33は、MSWから不燃物等を選別除去するためのものである。この不燃物等には、石やコンクリートの破片、金属類などが含まれている。二次破砕機34は、不燃物等が選別除去されたMSWを要求された寸法となるまで更に細かく破砕するためのものである。
【0038】
上記構成の燃料製造部3において、収集されたMSWは先ずMSW貯蔵ピット31へ搬入され、一時的に貯蔵される。そして、MSW貯蔵ピット31に貯蔵されているMSWは、順次一次破砕機32へ投入されて荒く破砕される。一次破砕されたMSWは、選別機33にて不燃物が選別除去され、二次破砕機34へ投入される。二次破砕機34へ投入された可燃物からなるMSWは、二次破砕機34で更に細かく破砕されてフラフRDF(フラフ状のRDF)となる。このようにして製造されたRDFは、50〜150mm四方の平板状をなしている。
【0039】
(燃料一時貯蔵部4)
燃料一時貯蔵部4は、RDFを貯蔵するための燃料貯蔵庫36を備えている。燃料製造部3で製造されたRDFは燃料貯蔵庫36へ搬入され、ここで一時的に貯蔵される。燃料貯蔵庫36でRDFが貯蔵される期間は、燃料貯蔵庫36の容積と貯蔵中の安全面を考慮して、一般には数日、長くとも7日程度である。燃料貯蔵庫36に貯蔵されているRDFは、発電部6の稼働時には発電部6へ送られる。また、発電部6が稼動を停止しているときや製造されたRDFの総熱量が発電部6の最適運転ベースの熱量を上回るときなどの、燃料貯蔵庫36で貯蔵可能な期間を超えて貯蔵しなればならない余剰のRDFがあるときは、その余剰分相当の燃料貯蔵庫36に貯蔵されたRDFが燃料長期貯蔵部5へ送られる。
【0040】
(発電部6)
発電部6は、RDFを燃焼して発電を行うための発電設備群である。発電部6は主に、RDFの燃焼設備であるボイラ61と、ボイラ61から高圧且つ高温の蒸気が送給される蒸気タービン発電設備62と、ボイラ61からの排気ガス中に含まれる有害物を除去する排気ガス処理設備63とを備えている。なお、本実施の形態に係る発電部6のボイラ61は、RDF焚きボイラであるが、これに代えて石炭焚きボイラであってもかまわない。この場合、RDFは石炭焚きボイラの補助燃料として利用される。
【0041】
ボイラ61の燃焼室61aには、燃料一時貯蔵部4の燃料貯蔵庫36で貯蔵されているRDFが投入される。ボイラ61の燃焼室61aにおいてRDFの燃焼により生じた熱は、熱回収器61bを流れる熱回収水および蒸気過熱により回収される。熱回収器61bと蒸気タービン発電設備62は、配管等により構成された蒸気排出路68で接続されている。RDFの燃焼熱を回収して高温且つ高圧となった蒸気は、蒸気排出路68を通じて蒸気タービン発電設備62へ送られる。蒸気タービン発電設備62では、蒸気でタービンを回転し、この回転力を電力へ変換する発電機により発電が行われる。
【0042】
ボイラ61の燃焼室61aには、一次燃焼空気供給路65と、二次燃焼空気供給路66と、起動用燃料供給路67と、排気路69とが接続されている。一次燃焼空気供給路65は、ボイラ61の燃焼室61aと一次燃焼空気源(外部)を繋ぐ配管および送風機等で構成されており、一次燃焼空気供給路65を通じて一次燃焼空気源からボイラ61の燃焼室61aへ燃焼のための一次燃焼空気が供給される。二次燃焼空気供給路66は、ボイラ61の燃焼室内と二次燃焼空気源(外部)を繋ぐ配管および送風機等で構成されており、二次燃焼空気供給路66を通じてボイラ61の燃焼室61aへ燃焼のための二次燃焼空気が供給される。起動用燃料供給路67は、ボイラ61の燃焼室内と起動用燃料源を結ぶ配管等で構成されており、ボイラ61の起動時に、起動用燃料供給路67を通じてボイラ61の燃焼室61aへボイラ起動用燃料が供給される。排気路69は、ボイラ61の燃焼室61aと排気ガス処理設備63とを繋ぐ配管等により構成されている。ボイラ61の燃焼室61aで生じた排気ガスは、排気路69を通じて排気ガス処理設備63へ送られる。排気ガス処理設備63では、ボイラ61の排気ガス中に含まれる有害物が除去されたのち、煙突を通じて外部へ放出される。
【0043】
(燃料長期貯蔵部5)
続いて、燃料長期貯蔵部5について詳細に説明する。燃料長期貯蔵部5は、燃料一時貯蔵部4での貯蔵可能期間を越えてRDFを貯蔵するための設備群である。燃料長期貯蔵部5において、RDFはバイオガスと発酵残渣という減容且つ減量された状態で貯蔵されることとなる。図3は燃料長期貯蔵部の一次貯蔵タンクより上流側の構成を示す概念図であり、図4は燃料長期貯蔵部の一次貯蔵タンクより下流側の構成を示す概念図である。図3,4では、物質の流れが矢印で示されている。また、図5は、燃料長期貯蔵部5の制御構成を示すブロック図である。図3,4に示すように、燃料長期貯蔵部5は主に、投入装置51と、発酵槽52と、一次貯蔵タンク53と、二次貯蔵タンク54と、残渣排出装置55と、圧縮機57と、バイオガス供給設備59とを備えている。
【0044】
投入装置51は、燃料一時貯蔵部4の燃料貯蔵庫36から発酵槽52へRDFを投入するためのものである。投入装置51は、燃料貯蔵庫36と発酵槽52の投入口18との間に設けられた燃料投入槽11を備えている。燃料貯蔵庫36と燃料投入槽11の間および燃料投入槽11と発酵槽52の間は、各種コンベア又は配管等を介して接続されている。燃料貯蔵庫36と燃料投入槽11の間には、これらの空間を仕切るとともに燃料貯蔵庫36から燃料投入槽11へのRDFの移動を規制する第1投入弁12が設けられている。燃料投入槽11と発酵槽52の間には、これらの空間を仕切るとともに燃料投入槽11から発酵槽52へのRDFの移動を規制する第2投入弁13が設けられている。また、燃料投入槽11には、不活性ガス源14から不活性ガスを供給するための不活性ガス供給路15が接続されており、この不活性ガス供給路15にアシストガス供給弁16aが設けられている。さらに、燃料投入槽11には、燃料投入槽11内からアシストガスとしての不活性ガスを排出するための不活性ガス排出路11aが設けられており、この不活性ガス排出路11aにアシストガス供給弁16aが設けられている。図5に示すように、第1投入弁12、第2投入弁13、アシストガス供給弁16aおよびアシストガス排出弁16bの開閉動作は、投入装置制御部17により制御されている。
【0045】
続いて、上記構成の投入装置51の動作について説明する。投入装置制御部17は、図示せぬ操作盤を介して入力されたRDF投入量を含む投入指示を受けて、第1投入弁12をRDF投入量に対応する時間だけ開放する。すると、燃料貯蔵庫36から燃料投入槽11へRDFが移動する。続いて、投入装置制御部17は第2投入弁13を開放する。これにより、燃料投入槽11内のRDFは自重で発酵槽52へ落下する。ここで、投入装置制御部17は、アシストガス供給弁16aおよびアシストガス排出弁16bを開放して、不活性ガス供給路15を通じて燃料投入槽11へ供給される不活性ガスによりRDFを発酵槽52へ強制的に押し出すように制御することもできる。そして、発酵槽52へのRDFの投入が完了すると、投入装置制御部17は第2投入弁13、アシストガス供給弁16aおよびアシストガス排出弁16bを閉止する。以上の投入装置51の動作により、指示されたRDF投入量のRDFが発酵槽52へ投入され、RDF投入後の燃料投入槽11はほぼ密閉された状態となる。
【0046】
発酵槽52は、RDFを嫌気性雰囲気の中で約15〜20日間かけて嫌気性発酵させる嫌気性発酵槽である。発酵槽52には、投入口18のある投入側52aから、排出口19のある排出側52bまでRDFを移動させるための移動装置20が設けられている。移動装置20は、投入側52aから排出側52bまで移動させることができればその態様は問わないが、図3では回転翼を備えた移動装置20を例示している。この移動装置20は、投入側52aから排出側52bまでRDFの搬送方向に並ぶ複数の回転翼と、この回転翼を回転駆動する回転翼駆動部とを備えている。回転翼駆動部の駆動により回転翼が回転すると、発酵槽52の投入側52aへ落下したRDFは、回転する複数の回転翼により順次排出側52bへ送り出される。RDFの移動速度や移動量は回転翼の回転速度や回転頻度を調整することにより制御可能である。
【0047】
また、発酵槽52の排出側52bの上部には、バイオガス排出口21が開口している。バイオガス排出口21は、バイオガス第1流路22を介して一次貯蔵タンク53と接続されている。バイオガス第1流路22には、バイオガス第1流路22を通過するバイオガスの圧力を検出する圧力検出器71、同じく酸素濃度を検出する酸素濃度検出器78、同じくメタン濃度を検出するメタン濃度検出器79が設けられている。さらに、バイオガス第1流路22のこれらの検出器71,78,79よりも下流側には、バイオガス第1流路22を開閉する第1流入制御弁23が設けられている。この第1流入制御弁23の開閉により、発酵槽52と一次貯蔵タンク53の連通と遮断が切り替わる。
【0048】
上記バイオガス第1流路22の検出器71,78,79よりも下流側であって第1流入制御弁23よりも上流側において、発酵槽52内と外部(大気)とを連通させる大気放散路24がバイオガス第1流路22から分岐している。大気放散路24には、大気放散弁25が設けられている。この大気放散弁25の開閉および第1流入制御弁23の開閉により、大気放散路24を通じた発酵槽52内と外部の連通と遮断が切り替わる。
【0049】
また、発酵槽52の投入側52aには、不活性ガス供給口26が設けられている。不活性ガス供給口26は、不活性ガス源14と不活性ガス供給路15を介して接続されている。不活性ガス供給路15には不活性ガス元弁27が設けられている。この不活性ガス元弁27は、発酵槽52内の空気を不活性ガスで置換するときに大気放散弁25とともに開放される。これにより、不活性ガス供給口26を通じて発酵槽52内に不活性ガスが供給されるとともに、大気放散路24を通じて発酵槽52内の空気が排出されることによって、発酵槽52内の空気が不活性ガスで置換される。さらに、発酵槽52の投入側52aには、発酵槽52に投入されたRDFの水分量を嫌気性発酵に適した水分量すべく発酵槽52へ水を供給するための、水供給装置29が設けられている。水供給装置29は、水源29aと発酵槽52とを接続する水供給配管29bと、水供給配管29bに設けられて発酵槽52への水供給量を調整する水供給調整弁29cとを備えている。
【0050】
発酵槽52およびその周辺に設けられた大気放散弁25、第1流入制御弁23、不活性ガス元弁27、および移動装置20の動作は、発酵槽制御部28により検出器71,78,79の検出信号に基づいて制御される。また、水供給装置29の水供給調整弁29cの動作は、RDF製造過程で計測されたRDF含有水分量と燃料投入槽11からのRDF投入量とに基づいて、発酵槽52内のRDFが嫌気性発酵に適した水分量となるように、発酵槽制御部28により制御される。
【0051】
上記構成の発酵槽52において、投入装置51によって投入口18を通じて発酵槽52内へ投入されたRDFは、移動装置20の投入側52aへ落下する。発酵槽52のRDFは、移動装置20によって順次下流へ移送されることにより、所定の発酵期間(ここでは約15〜20日)をかけて投入側52aから排出側52bまで移動する。この移動の間にRDFに含まれる有機物の嫌気性発酵が進み、バイオガスが生成され、RDFが減容および減量する。RDFの発酵により生じるバイオガスの組成は、おおよそメタンガス60%、二酸化炭素40%である。但し、バイオガスは、RDFに含まれる有機物の量や種類によって発生量や組成が変化し、発酵の進行度合によっても発生量が変化する。
【0052】
RDFが発酵しつつ発酵槽52の排出側52bまで移動したときには、RDF中の有機物の大半は分解されてバイオガスとなり、残りが発酵残渣となっている。このRDFの発酵残渣は、RDFの固体分中の揮発成分の未発酵分およびRDFの発酵しない成分から構成されており、有機残渣、木質系残渣、およびビニール等の残渣が含まれている。なお、発酵槽52での発酵期間が短いときには未発酵や発酵中途段階のRDFが発酵残渣に混入していることもあるが、これらを併せて発酵残渣と呼ぶこととする。発酵残渣は、移動装置20により排出口19まで送り出されて、排出口19から発酵槽52外へ排出される。発酵残渣は、元のRDFと比較して大幅に減容且つ減量されている。
【0053】
残渣排出装置55は、発酵槽52の発酵残渣を回収して、消化液および発酵残渣に含まれる消化液を脱水し除去するためのものである。残渣排出装置55は主に、発酵槽52の排出口19に接続された残渣貯溜槽41と、残渣貯溜槽41と残渣送給路42を介して接続された消化液脱水除去装置43と、残渣貯溜槽41および消化液脱水除去装置43で残渣から回収した消化液を貯溜する排水ピット46とを備えている。発酵槽52の排出口19と残渣貯溜槽41の間には、これらを仕切るとともに発酵残渣の残渣貯溜槽41への移動を規制する第1残渣排出弁44が設けられている。残渣貯溜槽41と残渣送給路42の間には、これらを仕切るとともに発酵残渣の残渣送給路42への移動を規制する第2残渣排出弁45が設けられている。第1残渣排出弁44、第2残渣排出弁45、および消化液脱水除去装置43の動作は、残渣排出装置制御部47により制御されている。
【0054】
上記構成の残渣排出装置55の動作について説明する。残渣排出装置制御部47は、図示しない制御盤を介して入力された発酵残渣排出指示を受けて、第1残渣排出弁44を所定の第1排出時間だけ開放する。第1排出時間は移動装置20による発酵槽52内物質の移動速度および発酵残渣の量によって設定されている。第1残渣排出弁44が開放されると、発酵槽52の発酵残渣が移動装置20により排出口19を通じて残渣貯溜槽41へ投入される。残渣貯溜槽41では、発酵残渣から消化液が分離され、発酵残渣から分離された消化液は排水ピット46へ排水される。このようにして発酵残渣の消化液が或程度まで除去された状態で、残渣排出装置制御部47は第2残渣排出弁45を所定の第2排出時間だけ開放する。第2排出時間は発酵残渣の量によって設定されている。第2残渣排出弁45が開放されると、残渣貯溜槽41から残渣送給路42を通じて消化液脱水除去装置43へ送られる。消化液脱水除去装置43へ送られた発酵残渣はここで更に脱水されて、発酵残渣から分離された消化液は排水ピット46へ排水される。以上の通り残渣排出装置55で、減容、減量および脱水された発酵残渣は、消化液脱水除去装置43から燃料製造部3のMSW貯蔵ピット31へ搬送され、RDFの原料として再利用される。なお、燃料製造部3が複数存在する場合には、燃料長期貯蔵部5と最も隣接している燃料製造部3のMSW貯蔵ピット31へ発酵残渣が搬送される。
【0055】
ここで、発酵槽52で発生したバイオガスの流れに戻って説明する。RDF投入初期には、発酵槽52内の多くの部分は「空」の状態であり、その部分には空気が充満している。そのため、RDF投入初期に発酵槽52よりバイオガス第1流路22へ流出するガスはRDFの発酵に伴い発生するバイオガスと発酵槽52内に残留していた空気との混合ガスとなる。嫌気性発酵により発生するバイオガスの主成分であるメタンガスは可燃性ガスであり、バイオガス中のメタンガスと酸素の混合比によれば、バイオガスが火元さえあれば外部より燃焼用酸素の供給を受けること無く爆発的に燃焼するおそれがある。そこで、発酵槽制御部28は、検出器71,78,79を用いて発酵槽52からバイオガス第1流路22へ流出した流出ガスの組成を検出し、流出ガス中の酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内のときは「圧縮不可能」であると判断し、燃焼範囲外のときは「圧縮可能」であると判断する。そして、発酵槽制御部28は、発酵槽52からの流出ガス中の酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲外のときに第1流入制御弁23を開放して、流出ガスを一次貯蔵タンク53へ送るように制御する。なお、発酵槽52からの流出ガス中の酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内となる現象は、RDFを発酵槽52に投入し始めたときに顕著であり、この現象を回避するためにRDFを発酵槽52に投入する前に不活性ガスで発酵槽52内の空気を置換しておくことが望ましい。
【0056】
図6(a)は、天然ガスと空気の混合ガスの燃焼上限値および燃焼下限値を示すグラフであり、縦軸は空気中の天然ガス濃度であり、横軸が天然ガスの圧力である。同図に示されるように、天然ガスの大気圧における燃焼上限値は15.0[空気中容積%]であり、燃焼下限値は5.0[空気中容積%]である。すなわち、天然ガスの大気圧における燃焼範囲は5.0〜15.0[空気中容積%]である。また、図6(b)は、図6(a)に示す天然ガスと空気の混合ガスの燃焼上限値および燃焼下限値を酸素濃度と天然ガスの圧力との関係に変換したものである。天然ガスの主成分はメタン(85−95%程度)である。一方、バイオガスの組成はおおよそメタン60%、二酸化炭素40%である。天然ガスは厳密にはメタンガスとは異なるが、発酵槽52からの流出ガスの燃焼範囲を検討するにあたってメタンガスの燃焼範囲の数値として天然ガスの燃焼範囲の数値を用いても安全性は確保される。そこで、以下では、発酵槽52からの流出ガスの燃焼範囲(特に、燃焼下限値)を検討するにあたって、図6(a)および図6(b)中の天然ガスをメタンガスに読み替えて同図に示されたデータを利用することとする。
【0057】
発酵槽52からの流出ガスの燃焼範囲を検討するにあたって、仮に、後述する圧縮機57の吐出圧力が5MPaで圧縮後のバイオガスの温度が300℃であるとする。ここで、図6(b)を参照して、メタンガスの圧力が5MPaであり温度が300℃であるときの酸素濃度の下限値は8〜9%である。よって、安全率を加味して、発酵槽52からの流出ガスのうち酸素濃度が8%以下のものをバイオガスとして一次貯蔵タンク53へ送れば、このバイオガスが圧縮機57で圧縮されてもその酸素とメタンガスの混合比は燃焼範囲外となる。一方、メタンガスの圧力が5MPaであり温度が300℃であるときの酸素濃度の上限値はおよそ20%である。但し、空気中の酸素濃度はおよそ21%であることから、安全率を加味すれば酸素濃度の上限値を越える流出ガスは圧縮しないことが無難である。以上より、圧縮機57の吐出圧力が5MPaで圧縮後のバイオガスの温度が300℃である場合に、図6(a)(b)のデータに基づけば、発酵槽52からの流出ガスのうち酸素濃度が8%を越えるものを燃焼範囲内であるとし、同じく8%以下のものを燃焼範囲外であるとすることとなる。
【0058】
図7は、発酵槽制御部28のRDF投入初期の制御の流れを示すフローチャートである。発酵槽52に新たに投入されたRDFの発酵を開始したときには、第1流入制御弁23および大気放散弁25は閉止されており、発酵槽52内は初期空気が充満しているため好気状態となっている。よって、発酵槽52内では発酵開始後しばらくは好気性発酵が行われるが、好気性発酵が進むと発酵槽52内の酸素が消費されることにより発酵槽52内は嫌気性となり、嫌気性発酵へと移行する。図7に示すように、発酵槽制御部28は、圧力検出器71で検出された発酵槽52内の圧力に基づいてバイオガスが発生したことを検知し(ステップS1でYES)、大気放散弁25を開放する(ステップS3)。RDF投入初期では、RDFから発生するバイオガス量が少なく且つ発酵槽52内に残存している空気量が多い。よって、発酵槽52からの流出ガスは、当初、メタンガス量0%,空気量100%の組成であり、流出ガス中の酸素とメタンガスの混合比は燃焼範囲内(ここでは、燃焼上限値未満)である。大気放散弁25の開放により、発酵槽52からの流出ガスのうち圧縮に不向きなもの(すなわち、酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内のもの)は大気放散路24を通じて大気へ放散される。
【0059】
RDFの投入と発酵の促進に伴い、発生するバイオガス量が増加するとともに残存する酸素量が減少することによって、発酵槽52からの流出ガス中のメタンガス量が増加し空気量(酸素量)が減少していく。やがて、発酵槽52からの流出ガス中の酸素とメタンガスの混合比は燃焼範囲外(ここでは、燃焼上限値以上)となる。発酵槽制御部28は、酸素濃度検出器78、メタン濃度検出器79および圧力検出器71の検出値に基づいて、発酵槽52からの流出ガス中の酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲外となれば(ステップS2でYES)、大気放散弁25を閉止するとともに第1流入制御弁23を開放する(ステップS4)。この状態では発酵槽52からの流出ガスの殆どはバイオガスである。第1流入制御弁23の開放により発酵槽52と一次貯蔵タンク53とがバイオガス第1流路22を介して連通し、発酵槽52から一次貯蔵タンク53へバイオガスが流入する。
【0060】
上述の発酵槽制御部28の制御により、発酵槽52からバイオガス第1流路22へ流出した流出ガスのうち、圧縮可能な組成のバイオガスのみが一次貯蔵タンク53へ送られ、圧縮に不適な組成のものは大気放散路24を通じて大気放散される。なお、上記実施の形態において大気放散路24は、バイオガス第1流路22から分岐しているが、一次貯蔵タンク53と接続されていてもよい。
【0061】
一次貯蔵タンク53は、発酵槽52よりバイオガス第1流路22を介して送られてくるバイオガスを収容するためのバイオガス貯蔵槽である。発酵槽52から一次貯蔵タンク53へ送られるバイオガスは、発酵槽52内へのRDF投入量および投入後の発酵状態により変化する。一次貯蔵タンク53は発酵槽52から流出したバイオガスを貯蔵し、発酵槽52内圧力の異常な上昇を防止するための、バッファタンクである。また、一次貯蔵タンク53は、圧縮機57の吸い込み流量と発酵槽52から発生するバイオガス量との不均衡を緩衝するバッファタンクでもある。このために、一次貯蔵タンク53は、充分な容量を有していることが望ましい。
【0062】
一次貯蔵タンク53は、バイオガス第2流路56を形成する配管を介して1又は複数の二次貯蔵タンク54と接続されている。バイオガス第2流路56には、上流側から順に圧縮機57と、冷却器83と、二次貯蔵タンク54への第2流入制御弁80が設けられている。さらに、一次貯蔵タンク53とバイオガス第2流路56の圧縮機57よりも上流側には、一次貯蔵タンク53内の圧力を検出する圧力検出器72と、一次貯蔵タンク53内のバイオガスの酸素濃度を検出する酸素濃度検出器73とが設けられている。圧縮機制御部60は、圧力検出器72および酸素濃度検出器73からの検出信号を受けて、一次貯蔵タンク53のバイオガスが圧縮機57で適度に圧縮されて二次貯蔵タンク54へ送られるように、また、一次貯蔵タンク53内の圧力が負圧とならないように、圧縮機57および第2流入制御弁80を制御する。酸素濃度検出器73は、圧縮するバイオガス中の酸素濃度を検出し、圧縮機制御部60はこの検出結果に基づいてバイオガスが圧縮可能であるかを判断する。
【0063】
本実施の形態では、一次貯蔵タンク53は2基の二次貯蔵タンク54と接続されているが、二次貯蔵タンク54の基数はこれに限定されるものではない。二次貯蔵タンク54の基数、容量および内部圧力は、貯蔵期間中に処理すべきRDF量および発生するバイオガス量に基づいて決定される。但し、二次貯蔵タンク54の建設費や圧縮機57の汎用性の観点から、二次貯蔵タンク54内のバイオガスの圧力は2〜5MPaであることが好ましい。バイオガスの圧力がこれ以上となる場合には、二次貯蔵タンク54の基数を増加させることがよい。なお、二次貯蔵タンク54の設置空間に制約がある場合には、二次貯蔵タンク54内のバイオガスの圧力は2〜5MPa以上であってもよい。
【0064】
上述のように、RDFの嫌気性発酵に伴って発生したバイオガスは、一次貯蔵タンク53で発酵槽52内圧力とのバランスがとられ、圧縮機57で圧縮され、冷却器83で冷却され、二次貯蔵タンク54で貯蔵される。二次貯蔵タンク54で貯蔵されているバイオガスは、圧縮により減容されているので、バイオガスを貯蔵するための空間を縮小することができる。さらに、バイオガスは気体であるため、発酵しやすいRDFをそのまま貯蔵する場合と比較して状態を管理しやすく、貯蔵時の取り扱いが容易である。
【0065】
二次貯蔵タンク54で貯蔵されているバイオガスは、バイオガス供給設備59により発電部6のボイラ61へ供給される。二次貯蔵タンク54には、バイオガスをボイラ61へ供給するためのバイオガス供給路58が接続されている。バイオガス供給路58には上流側から、タンク開閉弁81、バイオガスのメタン濃度を検出するメタン濃度検出器75、バイオガス供給元弁77の順に設けられている。バイオガス供給路58はメタン濃度検出器75の下流側で二方へ分岐して、この二叉分岐から下流側はボイラ61への一次燃焼空気供給路65および二次燃焼空気供給路66とそれぞれ接続されている。二叉分岐と一次燃焼空気供給路65および二次燃焼空気供給路66とのそれぞれの間には、各供給路65,66へのバイオガスの供給量を調整する流量調整弁85,86が設けられている。そして、バイオガス供給制御部70は、二次貯蔵タンク54の圧力検出器76、メタン濃度検出器75の検出信号、ボイラ61への一次燃焼空気量又は二次燃焼空気量、並びにボイラ61の燃焼負荷情報に基づいてタンク開閉弁81、バイオガス供給元弁77および流量調整弁85,86の動作を制御する。
【0066】
ボイラ61の構造によって、二次燃焼空気とバイオガスの混合を一次燃焼空気とバイオガスとの混合よりも優先させることが望ましい場合があるため、二次貯蔵タンク54で貯蔵されているバイオガスは、通常は、二次燃焼空気供給路66へ送られ、二次燃焼空気に代えて又は二次燃焼空気との混合気としてボイラ61の燃焼室61aへ供給される。このために、バイオガス供給制御部70は、タンク開閉弁81、バイオガス供給元弁77を開放し、流量調整弁86にてバイオガスの流量を調整する。バイオガスと二次燃焼空気とを混合する場合には、流量調整弁86でバイオガスの流量が調整される。ここでバイオガスの流量は、空気とバイオガスの混合ガスの供給流路内での異常燃焼を防止するために、二次燃焼空気とバイオガスとの混合気中の空気とメタンガスの混合比が燃焼範囲外(図6(a)に示す燃焼下限界以下の混合比)となるように調整される。このために、バイオガス供給制御部70は、ボイラ61への二次燃焼空気量、バイオガスのメタン濃度およびボイラ61の燃焼負荷情報に基づいて、流量調整弁86の開閉および開度を制御する。
【0067】
上述の通り、通常は、バイオガスはもっぱら二次燃焼空気供給路66へ送られる。ただし、ボイラ61の燃焼負荷情報に基づいてボイラ負荷上昇指令が出され、RDF投入量の増加が困難であり、二次燃焼空気へのバイオガスの混合量が燃焼下限値により制限された場合に、バイオガスは一次燃焼空気供給路65へも送られる。このために、バイオガス供給制御部70は流量調整弁85の開度を調整する。ここでも、一次燃焼空気とバイオガスとの混合気中の空気とメタンガスの混合比を燃焼範囲外(図6(a)に示す燃焼下限界以下の混合比)とするために、ボイラ61への一次燃焼空気量、バイオガスのメタン濃度およびボイラ61の燃焼負荷情報に基づいて、一次燃焼空気供給路65へのバイオガスの供給量を調整すべく、流量調整弁85の開閉および開度が調整される。
【0068】
さらに、二次貯蔵タンク54で貯蔵されているバイオガスのカロリがボイラ61の起動用燃料として使用するために十分に高い場合には、バイオガスをボイラ61の起動用燃料またはその補助燃料として利用することができる。この場合、図4において二点鎖線で示すように、一次燃焼空気供給路65、二次燃焼空気供給路66に接続される流路と並列に起動用燃料供給路67に接続される流路を設け、この流路に流量調整弁87を設ける。そして、バイオガス供給制御部70は、ボイラ61の起動時にタンク開閉弁81、バイオガス供給元弁77を開放するとともに、流量調整弁87の開度を調整して、バイオガスをボイラ61の起動用燃料供給路67へ供給する。なお、バイオガスをボイラ61の起動用燃料として使用する場合には、二次貯蔵タンク54内のバイオガスの圧力はボイラ61の起動用バーナーが要求する圧力をボイラ61起動後も維持できるような圧力であることが望ましい。
【0069】
ここで、以上の構成のRDF焚き発電システム1においてMSWの回収からRDF燃料とした発電までの流れを説明する。まず、燃料製造部3で回収されたMSWからRDFが製造される。製造されたRDFは燃料一時貯蔵部4の燃料貯蔵庫36で一次貯蔵される。発電部6のボイラ61が稼動している場合には、燃料貯蔵庫36に貯蔵されているRDFが燃料としてボイラ61へ供給される。発電部6では、ボイラ61でRDFの燃焼し、その熱を回収して高温且つ高圧の蒸気を発生させて、蒸気タービン発電設備62のタービンを回転させることにより発電する。一方、発電部6のボイラ61が停止しているときやその他RDFの長期(例えば、1週間以上)の貯蔵が必要となるときは、燃料貯蔵庫36に貯蔵されているRDFは先に燃料貯蔵庫36に貯蔵されたものから順に燃料長期貯蔵部5へ送られる。
【0070】
燃料長期貯蔵部5の発酵槽52ではRDFが嫌気性発酵して、バイオガスと発酵残渣が生じる。RDFの嫌気性発酵により生じた発酵残渣は、発酵槽52から排出されて水分が除去されたのち、燃料製造部3へ搬送されてRDFの原料として利用される。一方、RDFの嫌気性発酵により発生したバイオガスは、一次貯蔵タンク53へ送られ、圧縮機57で圧縮され、冷却器83で冷却されたのち二次貯蔵タンク54へ送られて貯蔵される。二次貯蔵タンク54に貯蔵されているバイオガスは、発電部6の稼働時にボイラ61へ供給されて燃料又は補助燃料として利用される。このため、起動直後のボイラ61はRDFとバイオガスとの混合燃焼運転となる。燃料長期貯蔵部5内のRDFが総て発酵し、発生した総てのバイオガスを使い果たすと、ボイラ61はRDF燃焼運転となる。
【0071】
なお、上記において発電部6の稼動時には燃料一時貯蔵部4から燃料長期貯蔵部5へRDFは送られないが、発電部6の稼働時にも燃料一時貯蔵部4から燃料長期貯蔵部5へRDFを送るようにすることもできる。例えば、発電部6のボイラ61へのRDFの供給量と需要量とのバランスをとる目的で、燃料一時貯蔵部4から発電部6へRDFを供給しつつ、燃料長期貯蔵部5でRDFを貯蔵することができる。このようにして、燃料一時貯蔵部4と燃料長期貯蔵部5を含めたRDF貯蔵のためのスペースをより縮減することができる。さらに、MSWから製造されるRDFとボイラ61で消費されるRDFとの需要と供給のバランスをとることが可能となる。
【0072】
上述の通り、RDF焚き発電システム1では、余剰のRDFをバイオガスおよび発酵残渣に形態を変えて貯蔵している。バイオガスは気体であるために、固形のRDFを従来のRDF貯蔵庫で貯蔵する場合と比較して、密閉された空間での長期貯蔵および長期貯蔵の管理が容易である。また、気体であるバイオガスは、圧縮による減容化が容易であり、バイオガスを圧縮した状態で貯蔵することにより貯蔵のためのスペースも縮減できる。また、発酵残渣は脱水、減容および減量されているため、RDFを貯蔵するときと比較して固形物を貯蔵するためのスペースが縮減でき、貯蔵の管理も容易である。つまり、RDF焚き発電システム1の燃料長期貯蔵部5によれば、RDF貯蔵のためのスペースの縮減と、RDFの長期貯蔵時の好気性発酵に伴い発生するメタンガス火災の防止とを実現することができる。しかも、RDFはバイオガスと発酵残渣に形態を変えるが、バイオガスはボイラ61で燃料として再利用され、発酵残渣はRDFの原料として利用されるために、RDFのエネルギーは余すところ無く活用される。さらに、RDF焚き発電システム1の燃料長期貯蔵部5では、乾燥した環境下でも高温湿潤な環境下でも同様に発酵しやすいRDFを貯蔵することが可能であり、貯蔵環境によらず発酵しやすいRDFを安定して貯蔵することができる。
【0073】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。
【0074】
例えば、上記実施の形態に係る燃料長期貯蔵部5において、発酵槽52からの流出ガスのうち酸素とメタンガスの混合比が燃料範囲内のものは、圧縮して貯蔵できないために大気放散されるが、この流出ガスを収集して圧縮せずにエネルギーとして利用してもよい。図8は変形例に係る燃料長期貯蔵部の一次貯蔵タンクより上流側の構成を示す概念図であり、図9は変形例に係る燃料長期貯蔵部の一次貯蔵タンクより下流側の構成を示す概念図である。これらの図に示す燃料長期貯蔵部5の変形例は、図3に示す燃料長期貯蔵部5と比較して、発酵槽52にバイオガス第3流路91を介して接続された予備貯蔵タンク92を備える点で相違している。バイオガス第3流路91には、発酵槽制御部28により開閉制御される第3流入制御弁93が設けられている。予備貯蔵タンク92には、大気放散路24と大気放散弁25が設けられている。予備貯蔵タンク92は、第2バイオガス供給通路95を介して、ボイラ61の一次燃焼空気供給路65および二次燃焼空気供給路66と接続されている。第2バイオガス供給通路95には、予備貯蔵タンク92内のバイオガスを送気するための低圧ブロア96と、メタン濃度検出器84と、各燃焼空気供給路65,66へ供給するバイオガスの流量を調整するための流量調整弁97,98が設けられている。上記構成の燃料長期貯蔵部5において、発酵槽制御部28は、濃度検出器78とメタン濃度検出器79との検出値に基づいて、発酵槽52からの流出ガスの酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内である場合は、第3流入制御弁93を開放する。これにより、メタンガスと酸素の混合比が燃焼範囲内にあり、圧縮に不向きな流出ガス(バイオガスと空気の混合ガス)は予備貯蔵タンク92へ送られて、予備貯蔵タンク92内で貯蔵される。予備貯蔵タンク92で圧縮されずに貯蔵されているバイオガスは、発電部6の稼働時に低圧ブロア96により第2バイオガス供給通路95を通じて一次燃焼空気供給路65および二次燃焼空気供給路66の少なくとも一方へ圧送され、ボイラ61の燃料として利用される。
【0075】
また、例えば、上記実施の形態に係るRDF焚き発電システム1は、MSWから製造したRDFを燃料として発電するシステムであるが、これをバイオマス系廃棄物から製造したバイオマス系廃棄物由来固形燃料を燃料として発電するシステムに適用させることもできる。この場合、上記実施の形態において、MSWをバイオマス系廃棄物と、RDFをバイオマス系廃棄物由来固形燃料とそれぞれ読み替えれば、バイオマス系廃棄物のRDF焚き発電システム1に本発明を適用させた実施の形態を説明できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、フラフRDFやバイオマス系廃棄物由来固形燃料などの発酵しやすい廃棄物由来固形燃料を、安定した状態で長期貯蔵するために有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 RDF焚き発電システム
3 燃料製造部
4 燃料一時貯蔵部
5 燃料長期貯蔵部
6 発電部
20 搬送装置
22 バイオガス第1流路
23 第1流入制御弁
25 大気放散弁
31 MSW貯蔵ピット
36 燃料貯蔵庫
51 投入装置
52 発酵槽
53 一次貯蔵タンク(バイオガス貯蔵槽)
54 二次貯蔵タンク(バイオガス貯蔵槽)
55 残渣排出装置
56 バイオガス第2流路
57 圧縮機
58 バイオガス供給路
59 バイオガス供給設備
61 ボイラ
62 蒸気タービン発電設備
63 排気ガス処理設備
65 一次燃焼空気供給路
66 二次燃焼空気供給路
92 予備貯蔵タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵しやすい廃棄物由来固形燃料を燃焼設備で燃焼する前に貯蔵するための貯蔵設備であって、
前記廃棄物由来固形燃料を嫌気性発酵させる発酵槽と、
前記廃棄物由来固形燃料の嫌気性発酵により生じるバイオガスを貯蔵するバイオガス貯蔵槽と、
前記発酵槽から前記バイオガス貯蔵槽へ前記バイオガスを送る第1流路と、
前記バイオガス貯蔵槽から前記燃料設備へ前記バイオガスを供給する供給路と備える、
廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備。
【請求項2】
前記バイオガス貯蔵槽は、前記発酵槽から前記第1流路を通じて前記バイオガスが送られる一次貯蔵槽と、前記一次貯蔵槽と第2流路で接続された二次貯蔵槽とを含み、
前記第2流路において前記一次貯蔵槽から前記二次貯蔵槽へ前記バイオガスを圧縮して送る圧縮機と、
前記第2流路において前記圧縮機で圧縮された前記バイオガスを冷却する冷却器とを備える、請求項1に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備。
【請求項3】
前記発酵槽から排出された前記廃棄物由来固形燃料の発酵済み残渣である水分および前記廃棄物由来固形燃料の発酵残渣に含まれる水分を除去する水分除去手段を備える、請求項1又は請求項2に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備。
【請求項4】
前記発酵槽から前記第1流路へ流出する流出ガスの酸素濃度を検出する酸素濃度検出器と、
前記流出ガスのメタン濃度を検出するメタン濃度検出器と、
検出された酸素濃度およびメタン濃度に基づいて、前記流出ガスの酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲外であるときに開弁して前記第1流路と前記バイオガス貯蔵槽とを連通させる第1制御弁とを備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備。
【請求項5】
前記発酵槽内と大気を連通させる大気放散路と、
前記酸素濃度検出器で検出された酸素濃度および前記メタン濃度検出器で検出されたメタン濃度に基づいて、前記流出ガスの酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内であるときに開弁して前記大気放散路を通じて前記流出ガスを大気放散させる大気放散弁とを備える、請求項4に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備。
【請求項6】
前記発酵槽と第3流路を介して接続された予備貯蔵槽と、
前記酸素濃度検出器で検出された酸素濃度および前記メタン濃度検出器で検出されたメタン濃度に基づいて、前記流出ガスの酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内であるときに開弁して前記第3流路と前記予備貯蔵槽とを連通させる第2制御弁とを備える、請求項4に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備。
【請求項7】
前記供給路は、前記バイオガス貯蔵槽で貯蔵されている前記バイオガスを、前記燃焼設備の起動用燃料として前記燃焼設備へ供給する経路を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備。
【請求項8】
前記供給路は、前記バイオガス貯蔵槽で貯蔵されている前記バイオガスを、前記燃焼設備の一次燃焼空気供給路および二次燃焼空気供給路のうち少なくとも一方へ供給する経路を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備。
【請求項9】
前記供給路は、前記燃焼設備へ供給される前記バイオガスが前記燃焼設備の一次燃焼空気又は二次燃焼空気と燃焼範囲外の混合比で混合するように、前記バイオガスの供給量を調整する調整手段を備えている、請求項8に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備。
【請求項10】
前記廃棄物由来固形燃料が、一般廃棄物から製造されたごみ固形化燃料である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備。
【請求項11】
前記廃棄物由来固形燃料が、バイオマス系廃棄物から製造されたバイオマス廃棄物由来固形燃料である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵設備。
【請求項12】
発酵しやすい廃棄物由来固形燃料を燃焼設備で燃焼する前に貯蔵する方法であって、
前記廃棄物由来固形燃料を嫌気性発酵槽で嫌気性発酵させるステップと、
前記廃棄物由来固形燃料の嫌気性発酵により生じるバイオガスをバイオガス貯蔵槽で貯蔵するステップとを含む、
廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法。
【請求項13】
前記バイオガスをバイオガス貯蔵槽で貯蔵するステップは、
前記発酵槽から送られてくるバイオガスを一次貯蔵槽に収容するステップと、
前記一次貯蔵槽から二次貯蔵槽へ前記バイオガスを圧縮することにより減容化して送るステップと、
前記圧縮されたバイオガスを冷却するステップと、
前記圧縮されたバイオガスを前記二次貯蔵槽で貯蔵するステップとを含む、請求項12に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法。
【請求項14】
前記発酵槽から排出される前記廃棄物由来固形燃料の発酵済み残渣である水分および前記廃棄物由来固形燃料の発酵残渣に含まれる水分を除去するステップを含む、請求項12又は請求項13に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法。
【請求項15】
前記バイオガスをバイオガス貯蔵槽で貯蔵するステップにおいて、
前記バイオガスを含む前記発酵槽から流出する流出ガスの酸素濃度およびメタン濃度を検出し、この検出結果に基づいて、前記流出ガスのうちその酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲外のものを前記バイオガス貯蔵槽へ貯蔵する、請求項12〜14のいずれか一項に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法。
【請求項16】
前記バイオガスをバイオガス貯蔵槽で貯蔵するステップにおいて、
前記流出ガスの酸素濃度およびメタン濃度に基づいて、前記流出ガスのうちその酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内のものを大気放散する、請求項15に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法。
【請求項17】
前記バイオガスをバイオガス貯蔵槽で貯蔵するステップにおいて、
前記流出ガスの酸素濃度およびメタン濃度に基づいて、前記流出ガスのうちその酸素とメタンガスの混合比が燃焼範囲内のものを前記バイオガス貯蔵槽とは異なる予備貯蔵槽へ貯蔵する、請求項15に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法。
【請求項18】
前記バイオガス貯蔵槽で貯蔵されている前記バイオガスを、前記燃焼設備の起動用燃料として前記燃焼設備へ供給するステップを更に含む、請求項12〜17のいずれか一項に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法。
【請求項19】
前記バイオガス貯蔵槽で貯蔵されている前記バイオガスを、前記燃焼設備の一次燃焼空気供給路および二次燃焼空気供給路のうち少なくとも一方へ供給するステップを更に含む、請求項12〜18のいずれか一項に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法。
【請求項20】
前記燃焼設備へ供給される前記バイオガスが前記燃焼設備の一次燃焼空気又は二次燃焼空気と燃焼範囲外の混合比で混合するように前記バイオガスの供給量を調整する、請求項19に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法。
【請求項21】
前記廃棄物由来固形燃料が、一般廃棄物から製造されたごみ固形化燃料である、請求項12〜20のいずれか一項に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法。
【請求項22】
前記廃棄物由来固形燃料が、バイオマス系廃棄物から製造されたバイオマス系廃棄物由来固形燃料である、請求項12〜20のいずれか一項に記載の廃棄物由来固形燃料の貯蔵方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−207901(P2012−207901A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76129(P2011−76129)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】