説明

廃棄物発電装置

【課題】廃棄物発電装置の発電能力を増大させ、支燃ガスの加熱のために燃料を用いることなく、廃棄物処理炉へ脈動加熱支燃ガスを供給できる廃棄物発電装置を提供することを課題とする。
【解決手段】支燃ガスを受ける廃棄物処理炉に設ける廃棄物発電装置において、高温側空間と低温側空間を有し、高温側空間に高温側ピストンそして低温側空間に低温側ピストンがそれぞれ配され、高温側空間と低温側空間をそれぞれ加熱そして冷却する加熱部20Aと冷却部20Bを有し、両ピストンが90度の位相差のクランク軸を駆動するスターリングエンジン20と、冷却部へ支燃ガスを脈動送気する冷却支燃ガス脈動送気装置31,32と、冷却部からの支燃ガスを加熱する熱交換器33と、熱交換器から送気され加熱部から排出される加熱支燃ガスを廃棄物処理炉10へ脈動送気する加熱支燃ガス脈動送気装置35と、スターリングエンジンにより駆動される発電機21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を焼却またはガス化溶融する廃棄物処理炉施設に設けられる廃棄物発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を処理する技術として、都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を火格子上に供給し、廃棄物を燃焼させて、燃焼残渣の灰分を排出するストーカ式焼却炉や流動層式焼却炉を用いる方式と、廃棄物を熱分解して可燃性ガスを発生させ、その熱分解残渣を溶融してスラグにして排出する廃棄物ガス化溶融炉を用いる方式とがある。本発明では、廃棄物焼却炉と廃棄物ガス化溶融炉とを合わせて「廃棄物処理炉」という。いずれの方式においても、廃棄物処理炉に供給された廃棄物は支燃ガスの供給を受けて、燃焼又はガス化・溶融される。
【0003】
ストーカ式焼却炉では、火格子下から一次燃焼用空気が吹き込まれ、火格子上の廃棄物が燃焼される。廃棄物が燃焼して発生したガス中には可燃分があり、二次燃焼室で二次燃焼用空気が吹き込まれ可燃ガスが燃焼される。
【0004】
廃棄物焼却炉内の廃棄物の燃焼を安定して行うため、支燃ガスとしての燃焼用空気は該廃棄物焼却炉への吹込みに先立ち加熱される。この加熱は、例えば、送風機により取り入れた空気とボイラで生成した蒸気との熱交換により行うこともある。また、廃棄物焼却炉から排出された排ガスを循環させる循環排ガス又は循環排ガスと空気の混合ガスを支燃ガスとして廃棄物焼却炉内に帰還供給して、炉内状況を安定化させることが行われ、これらのガスがボイラで生成した蒸気との熱交換により加熱されてから廃棄物焼却炉内へ供給されるようにすることもある。
【0005】
一方、廃棄物ガス化溶融炉では廃棄物を部分酸化・熱分解するためと、熱分解残渣を溶融するため、空気、酸素、酸素富化空気が供給される。この場合、炉内の廃棄物の部分酸化・熱分解、溶融を安定して行うため、これらの支燃ガスは加熱されることが多い。この加熱は送風機により取り入れた空気などとボイラで生成した蒸気との熱交換により行うこともある。
【0006】
廃棄物発電設備の一例として、廃棄物焼却炉にボイラを備え、焼却炉から排出される排ガスの廃熱を回収し該ボイラにて水を加熱して蒸発させて飽和蒸気を生成し、燃焼式過熱器にて該飽和蒸気をさらに加熱して過熱蒸気を生成し、該過熱蒸気を蒸気タービンに供給して発電することが行われている(特許文献1参照)。また、この廃棄物発電は廃棄物焼却炉のみならず、廃棄物ガス化溶融炉でも、広く行われている。
【0007】
さらには、廃棄物焼却炉において、性状の異なる数多くの物質からなる廃棄物の燃焼を安定して行うために検討されている技術として、炉内に高温空気を脈動を伴って吹き込むことが開示されている(特許文献2参照)。高温空気の脈動送気により、廃棄物の燃焼が促進され、さらに炉内の廃棄物から発生する可燃性ガスの混合が促進され、炉内の燃焼が安定して行われる。さらに、炉内の燃焼が安定して行われることにより、炉内へ供給する空気量を低減することができ、その結果排ガス量を低減でき排ガスからの廃熱回収効率を向上させ、廃熱回収ボイラにて発生させた蒸気による発電効率を向上させることが可能である。また、廃棄物ガス化溶融炉に対しても、脈動空気を供給することで、ガス化が促進されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−035311
【特許文献2】特開2005−201594
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、循環型社会形成への取組み、あるいはCO問題などから、あらゆる産業分野で、より高効率なシステムが求められており、廃棄物処理炉においても、廃棄物の燃焼、ガス化・溶融で発生する排ガスの廃熱をさらに有効に利用すること、また、ボイラで生成した蒸気を利用してタービン発電機で発電する場合には、さらに発電効率を向上させることが求められている。
【0010】
このように廃棄物発電装置の発電効率を向上、発電能力を増大させることが要望されているが、特許文献2の廃棄物焼却炉では脈動送気する高温空気を製造するために、燃料をバーナ等で燃焼して燃焼ガスを製造し空気を混合して高温空気とし脈動送気することとしているが、燃料を用いるので燃料費用がかかり経済性に問題がある。
【0011】
本発明は、かかる問題に鑑み、廃棄物発電装置の発電能力を増大することができ、また、支燃ガスの加熱のために燃料を用いることなく、炉内へ脈動加熱支燃ガスの送気を行い廃棄物燃焼を促進かつ安定化することができる廃棄物発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、支燃ガスを受けて廃棄物を焼却又はガス化溶融する廃棄物処理炉に設ける廃棄物発電装置に関する。
【0013】
かかる廃棄物発電装置において、本発明では、高温側空間と低温側空間とを有し、高温側空間に高温側ピストンそして低温側空間に低温側ピストンがそれぞれ配されていると共に上記高温側空間と低温側空間をそれぞれ加熱そして冷却する加熱部と冷却部を有し、両ピストンが90度の位相差をもつクランク軸を駆動するスターリングエンジンと、上記スターリングエンジンの冷却部へ支燃ガスを脈動送気する冷却支燃ガス脈動送気装置と、スターリングエンジンの冷却部から排出される支燃ガスを加熱する熱交換器と、熱交換器から送気されスターリングエンジンの加熱部から排出される加熱支燃ガスを廃棄物処理炉へ脈動送気する加熱支燃ガス脈動送気装置と、スターリングエンジンにより駆動される発電機とを備えることを特徴としている。
【0014】
このような構成の本発明の廃棄物発電装置では、スターリングエンジンが用いられる。ここで、本発明の作用の説明に先立ち、スターリングエンジンの原理について説明する。
【0015】
<スターリングエンジンの原理>
スターリングエンジンは、空気などの気体が、暖まると膨張し、冷えると収縮するという性質を利用して駆動するエンジンである。スターリングエンジンは連通した高温側空間と低温側空間と、それぞれの空間の気体の膨張、収縮により駆動され、90度の位相差をつけて運動する高温側ピストンと低温側ピストンと、加熱用熱源を高温側空間へそして冷却用冷熱源を低温側空間へ交互に間欠的に供給する機構、両ピストンの運動を円滑にするためのフライホイールとで構成される。
【0016】
このような構成のスターリングエンジンは、次のように、加熱工程、膨張工程、冷却工程そして収縮工程を経る周期を繰り返す。
【0017】
(1)加熱工程
クランク角が最初の90度の間に、高温側ピストンが上死点の位置から下向きに動き、その間、低温側ピストンが上向きに動き、空間内の空気は低温側空間から高温側空間に流れるとともに、高温側空間が加熱され、エンジン内部の圧力が上昇する。
【0018】
(2)膨張工程
次の90度の間に、高温側そして低温側の二つのピストンは空間内の空気の圧力をそれぞれ受けて、ともに下向きに押し下げられ、エンジンが駆動力を得る。
【0019】
(3)冷却工程
フライホイールに蓄えられた力による慣性力で、さらに次の90度を回転している間に、上記二つのピストンは上向きに動き、空間内の空気は高温側空間から低温側空間に流れるとともに、低温側空間が冷却され、エンジン内部の圧力が低下する。
【0020】
(4)圧縮工程
さらに次の90度の間に、空間内の空気圧の低下により、上記二つのピストンは上向きに動き、エンジンが駆動力を得る。ピストンが上死点に至った時点で、空間内部の空気は圧縮されている。
【0021】
このようなスターリングエンジンを用いると、本発明では、支燃ガスが該スターリングエンジンの冷却部へ脈動送入されて上記低温側空間が冷却され、冷却工程そして圧縮工程を行う。低温側空間を冷却した支燃ガスは冷却部から排出され熱交換器にて加熱を受けスターリングエンジンの加熱部へ送入されて高温側空間を加熱し、上記加熱工程と膨張工程を行う。かくして、スターリングエンジンから得られる駆動力で発電機により発電する。一方、加熱部から排出される脈動する加熱支燃ガスは加熱支燃ガス脈動送気装置により廃棄物処理炉へ供給される。
【0022】
本発明において、支燃ガスは、空気、酸素、酸素富化空気、廃棄物処理炉から排出された排ガスを循環させる循環排ガス、該循環排ガスと空気との混合ガスのうちの少なくともいずれか一つを含むガスとすることができる。
【0023】
本発明によると、廃棄物処理炉へ脈動送気する支燃ガスを用いてスターリングエンジンを駆動しスターリングエンジンにより発電機を駆動して発電し、廃棄物発電装置全体の発電能力を増大させる。
【0024】
本発明では、スターリングエンジンを駆動させるために間欠的に供給する加熱用熱源と冷却用冷熱源として、廃棄物処理炉へ脈動送気する支燃ガスを用いることとした。常温の支燃ガスを冷却用冷熱源とし、加熱した支燃ガスを加熱用熱源としてスターリングエンジンへ脈動送気して供給し、さらにスターリングエンジンに供給して排出された加熱支燃ガスを廃棄物処理炉へ脈動送気する。
【0025】
発明者は、廃棄物処理炉へ脈動送気して燃焼を促進、安定化することができる適切な脈動周期と、スターリングエンジンの駆動に適した適切な送気周期とを、互いに極めて近い範囲で設定できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0026】
本発明は、さらに、廃棄物処理炉からの廃熱を回収して蒸気を生成するボイラを備え、
熱交換器は、スターリングエンジンの冷却部から排出される支燃ガスを上記ボイラからの蒸気により加熱するようにすることができる。こうすることで、冷却部からの支燃ガスの加熱に廃棄物処理炉施設のボイラからの廃熱が有効利用される。
【0027】
また、本発明は、さらに、太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置を備え、熱交換器は、スターリングエンジンの冷却部から排出される支燃ガスを、上記太陽熱集熱装置で集熱された太陽熱を受熱し受熱した太陽熱との熱交換により加熱することもできる。こうすることで、冷却部からの支燃ガスの加熱に太陽熱が有効利用される。
【0028】
また、本発明では、さらに、太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置を備え、熱交換器は、該太陽熱集熱装置で集熱された太陽熱を受熱して熱媒体を加熱する第1の熱交換器と、第1の熱交換器により加熱された熱媒体によりスターリングエンジンの冷却部からの支燃ガスを加熱する第2の熱交換器とを有しているようにすることができる。
【0029】
かかる場合には、集熱された太陽熱は第1の熱交換器で熱媒体に貯えられ、該熱媒体が第2の熱交換器で支燃ガスを加熱する。太陽熱は、一旦熱媒体に貯えられるので、集熱装置で集熱される太陽熱の熱量や支燃ガスの加熱に必要な熱量に時間的変動があるときには、上記熱媒体でこの変動に対応することが可能なので、有利である。この場合、熱媒体としては、水蒸気又は溶融塩を用いることができる。
【0030】
また、本発明は、さらに、廃棄物処理炉からの廃熱を回収して蒸気を生成するボイラと、太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置を備え、熱交換器は、スターリングエンジンの冷却部から排出される支燃ガスを上記ボイラからの蒸気及び上記太陽熱集熱装置からの太陽熱との熱交換により加熱するようにすることができる。
【0031】
この場合、支燃ガスは、ボイラで生成した蒸気からの熱と集熱された太陽熱との両者によって加熱されることとなるが、前者は廃棄物の炉への投入量、廃棄物の種類等によりその熱量が変動することが多く、その変動分を後者で補うように用いることが可能となる。また、集熱装置で集熱される太陽熱の熱量に時間的変動があるときには、その変動分をボイラで生成した蒸気からの熱で補うように用いることが可能となる。
【0032】
本発明は、さらに、蒸気により発電する蒸気タービン発電機とを備え、該蒸気タービン発電機がボイラからの蒸気で駆動されるようにすることができる。こうすることにより、スターリングエンジンの駆動による発電機と、ボイラからの蒸気により駆動される発電機の両方により発電でき、発電量が増加する。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、以上のように、廃棄物処理炉へ脈動送気される支燃ガスを、スターリングエンジンの駆動のために供給した後に、上記廃棄物処理炉へ送気することとしたので、廃棄物処理炉施設で発生する蒸気による発電等のエネルギ利用に加えて、上記スターリングエンジンにより駆動される発電機によっても発電でき、発電能力が増大しエネルギの有効利用化が図れる。一方、廃棄物処理炉に関しては、上記スターリングエンジンから排出される脈動加熱支燃ガスを廃棄物処理炉へ送気することにより、炉内での燃焼の促進、安定化ができる。その結果、炉内へ供給する空気量を低減することができるので、排ガス量を低減でき排ガスからの廃熱回収効率を向上させると共に、廃熱回収ボイラにて発生させた蒸気による発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0036】
図1に示される本実施形態装置は、廃棄物処理炉10に供給される支燃ガスを、該廃棄物処理炉10への供給前に、スターリングエンジン20へ供給して該スターリングエンジン20で発電するように構成されている。
【0037】
この図1の本実施形態装置全体の説明に先立ち、上記廃棄物処理炉10とスターリングエンジン20について概要を説明する。
【0038】
<廃棄物処理炉>
廃棄物処理炉10は、投入された廃棄物を焼却する焼却炉そして廃棄物をガス化・溶融するガス化溶融炉のいずれか、あるいは両炉を備えた処理炉である。該廃棄物処理炉10は、支燃ガスを受けて廃棄物を処理し、付随設備としてボイラ11、蒸気タービン12そして発電機13を有している。廃棄物処理炉10から排出される高温排ガスの熱がボイラ11で熱回収され、該ボイラ11で得る蒸気により蒸気タービン12を駆動し、該蒸気タービン12に連結された発電機13を回転せしめ発電する。廃棄物処理炉10へ供給される支燃ガスとしては、空気、酸素、酸素富化空気、廃棄物処理炉10から排出された排ガスを循環させる循環排ガス、該循環排ガスと空気との混合ガスのうちの少なくともいずれか一つを含むガスを用いることができる。
【0039】
<スターリングエンジン>
スターリングエンジン自体は公知であり、連通した高温側空間と低温側空間に高温側ピストンと低温側ピストンがそれぞれ配設されていて、両ピストンはクランク角が90度の位相差をもっている。本実施形態では、スターリングエンジン20では、高温側空間を加熱する加熱部20Aと低温側空間を冷却する冷却部20Bとを有している。加熱部20Aには高温の脈動加熱支燃ガスがそして冷却部には低温の脈動冷却(常温)支燃ガスが供給される。脈動加熱支燃ガスと脈動冷却支燃ガスは、同じ脈動周波数で1Hzから60Hz程度であり、両支燃ガスの脈動における位相は180度ずれている。その際、冷却部20Bと加熱部20Aとの温度差を100℃以上とするように脈動加熱支燃ガスを加熱部20Aへ200℃程度以上で供給する。本実施形態では、上記スターリングエンジン20には、発電機21が連結されている。
【0040】
本実施形態装置では、常温の支燃ガスとしての空気を圧縮するコンプレッサ31を有しており、ロータリバルブ32を経てスターリングエンジン20の冷却部20Bに接続されている。かかるコンプレッサ31とロータリバルブ32が冷却支燃ガス脈動送気装置を形成する。上記支燃ガスは、コンプレッサ31で圧縮された後、ロータリバルブ32の間欠的遮断・開放の繰り返しにより上記の脈動周波数をもって上記冷却部20Bへ脈動冷却支燃ガスとして供給される。この脈動の付与は、ロータリバルブに依らずとも、フラッパ弁でも可能である。
【0041】
上記冷却部20Bは、熱交換器33とこれに接続された位相調整器34を介して、スターリングエンジン20の加熱部20Aに接続されている。熱交換器33は、後述する太陽熱受熱装置そして既述のボイラ11からの蒸気の熱により、上記冷却部20Bからの冷却支燃ガスを加熱して、高温の加熱支燃ガスとする。この加熱支燃ガスは、すでに脈動しているが、上記位相調整器34によりその脈動の位相が180度ずらされて、上記加熱部20Aへ供給される。この位相のずれは、例えば、スターリングエンジンの冷却部20Bから加熱部20Aまでの配管流路の長さおよび断面積のうち少なくとも一つを調整すること、すなわち流路容積を調整することにより、脈動支燃ガスが配管流路を通過する時間を調整することでも設定できる。
【0042】
上記加熱部20Aには、脈動増幅器35が接続されている。この脈動増幅器35は、加熱部20Aでスターリングエンジンの高温側空間を加熱した後に該加熱部20Aから排出される脈動加熱支燃ガスの脈動と同期してその脈動を増幅させるものであり、加熱支燃ガス脈動送気装置の一部を形成する。該脈動増幅器35は、脈動送気する支燃ガスの脈動周波数に適合した(倍数となる)固有振動数を有する空間を設け、振幅を増大(増幅)させるように形成されている。実際には、加熱支燃ガスの流路途中に空間容積を調整できる部分を設けて、該空間容積を調整することにより、最適な増幅率に調整する。また、脈動増幅器として1/4波長管を設けてもよい。1/4波長管は、その長さのうち一端から1/4寸法の場所を加熱し、他の1端から1/4の寸法の場所を冷却することにより、気柱振動を発生させることができる配管であり、これを用いて脈動流を増幅することができる。
【0043】
かくして、スターリングエンジン20の加熱部20Aは、脈動増幅器35を経て廃棄物処理炉10に接続されており、増幅された脈動加熱支燃ガスが、廃棄物処理炉10へ、すなわち、焼却炉の火格子下部空間や二次燃焼空間、あるいはガス化溶融炉の羽口へ供給される。
【0044】
本実施形態装置は、スターリングエンジン20の冷却部20Bからの脈動冷却支燃ガスを上記熱交換器33で加熱するために、廃棄物処理炉10に接続されているボイラ11が上記熱交換器33に接続されていて該ボイラからの蒸気の一部を熱源として用いるのに加え、後述の太陽熱集熱装置からの太陽熱もその熱源としている。
【0045】
本実施形態装置は、太陽熱集熱装置41と太陽熱受熱装置42とを有している。太陽熱集熱装置41は、太陽熱を集熱すべく構成されていて、例えば、複数の反射鏡と反射された太陽光を収束させるため断面が放物線状の収束反射鏡とを有していて、複数の反射鏡で反射された太陽光が収束反射鏡により集光され、収束された太陽光が太陽熱受熱装置の受熱部に照射されることにより効率的に太陽熱を集熱されるようになっている。太陽熱受熱装置42は、内部に熱媒体を流通させる受熱部を有していて、集熱された太陽熱により熱媒体を加熱すようになっている。加熱された熱媒体は熱交換器33に送られ、冷却部20Bからの脈動冷却支燃ガスを加熱する。太陽熱受熱装置の表面は、透明ガラス等に覆われ、透明ガラスと受熱部との間の空間を真空とすることにより、滞留伝熱による熱ロスを抑制できる。また、受熱部表面は、黒色塗料が塗布されるか、凹凸のある鏡面構造を有することで、輻射伝熱ロスを抑制できるようになっていて、太陽熱集熱装置41からの受熱熱量を最大に、かつ熱ロスを最小化にする。
【0046】
このように、太陽熱受熱装置42は、この太陽熱集熱装置41から受けた太陽熱を熱交換器33で用いられるのに適合した形にするためのもので、該熱交換器33に接続されている。太陽熱受熱装置42は、上記のように熱媒体を介して冷却部20Bからの脈動冷却支燃ガスを加熱するようにしてもよいし、熱媒体を介さず直接脈動冷却支燃ガスを加熱するようにしてもよい。
【0047】
かくして、熱交換器33では、既述のボイラ11からの蒸気の一部と上記太陽熱受熱装置42からの太陽熱を併用して、スターリングエンジン20の冷却部20Bからの脈動冷却支燃ガスを加熱する。脈動冷却支燃ガスの加熱を上記太陽熱集熱装置41からの太陽熱とボイラ11からの蒸気の熱とで行うとき、どちらを主とし補助とするかは自由であり、廃棄物処理炉10へ投入される廃棄物の量と種類の時間的変動によるボイラ11での蒸気発生量の変動、日照の時間的変化による太陽熱集熱装置41での集熱の変動を考慮して調整すればよい。そのためには、太陽の日射量又は太陽熱受熱量に応じて、ボイラからの供給蒸気による供給熱量を調整する蒸気供給熱量制御装置を備えることが好ましい。
【0048】
本発明では、他の実施形態として、熱交換器が第1の熱交換器と第2の熱交換器を備えるようにすることも可能である。この場合、第1の熱交換器では太陽熱集熱装置41そして太陽熱受熱装置42からの太陽熱そしてボイラ11からの蒸気を受けて熱交換して熱媒体を加熱し、加熱された熱媒体が第2の熱交換器で支燃ガスとの熱交換により該支燃ガスを加熱するようにすることができる。ここで、熱媒体としては、水蒸気又はNaNO,KNO,NaCl,NaCO等の溶融塩が採用可能である。
【0049】
次に、このような構成の本実施形態装置における作動について説明する。
【0050】
スターリングエンジン20の駆動周波数として適切な範囲は、熱伝導に律速されるので、概ね、1Hzから60Hz程度であり、一方、廃棄物処理炉における廃棄物燃焼に加熱支燃ガスを脈動送気して振動燃焼させるのに適した脈動周波数は、廃棄物焼却炉の燃焼領域におけるガス流速が1m/s弱から数十m/s程度の場合、1Hzから60Hz程度である。
【0051】
加熱支燃ガスの送気周波数が1Hzより小さいと、気体側の固体表面での流速変化が小さくなるので、境界層が緩やかに変化するだけで、熱伝達促進や物質移動促進は期待できなくなる。また、送気振動数が60Hzより高いと、気体−固体表面での気体の振幅(実際に脈動により運動する幅)が配管流路内での減衰のため極めて小さくなってしまうため、実質的な熱伝達促進や物質移動促進等の現象がなくなり、燃焼を促進する効果がなくなる。
【0052】
このように、廃棄物焼却炉へ脈動送気して燃焼を促進、安定化することができる適切な脈動周期と、スターリングエンジンの駆動に適した適切な送気周期とを、極めて近い範囲で設定できるということが判明した。
【0053】
図1装置において、支燃ガスとして常温の空気がコンプレッサ31で圧縮され、次に回転するロータリバルブ32を経ることにより、上述のごとくに設定された周波数の脈動を付与されて、スターリングエンジン20の冷却部20Bへ供給される。脈動冷却支燃ガスは冷却部20Bで低温側空間を冷却した後、熱交換器33で加熱され、位相調整器で180度の位相差をもつ脈動加熱支燃ガスとしてスターリングエンジン20の加熱部20Aに供給され高温側空間を加熱する。スターリングエンジン20は、既述した原理により、上記周波数で駆動する。この駆動により、スターリングエンジン20に連結されている発電機21が駆動されて発電する。
【0054】
上記熱交換器33では、上記スターリングエンジン20の冷却部20Bからの脈動冷却支燃ガスは、太陽熱集熱装置41そして太陽熱受熱装置42からの太陽熱と、ボイラ11からの蒸気の熱との熱交換により加熱される。
【0055】
上記スターリングエンジン20の加熱部20Aから排出される脈動加熱支燃ガスは、脈動増幅器35にて、脈動周波数を変えずに増幅されて、パルス当りのエネルギを高めた状態で、廃棄物処理炉10へ送気される。廃棄物処理炉10から排出される排ガスは、ボイラ11で熱回収され、この熱を利用してボイラ11で蒸気を発生し、この蒸気で蒸気タービン12を回転させて発電機13を駆動するとともに、蒸気の一部が熱交換器33へ供給される。
【0056】
既述のような設定周波数領域の脈動加熱支燃ガスが廃棄物処理炉10へ送気されると、該脈動加熱支燃ガスは廃棄物処理炉10内での振動燃焼がもたらす脈動効果として、気体−廃棄物固体表面での気体側の脈動による境界層剥離や境界層厚み減少等による伝熱促進や物質移動が促進され燃焼反応が促進される。また、吹き込まれた支燃ガスが脈動していることにより、廃棄物から発生し支燃ガスの流れの周囲に存在する可燃ガスの巻き込みと混合が促進されるので、燃焼反応が促進される。
【0057】
火格子式廃棄物焼却炉にあっては、主燃焼室に火格子下部の風箱から加熱支燃ガスを脈動送気した場合、固体廃棄物と加熱支燃ガスとの熱伝達促進や固体廃棄物表面の水分の剥離等により、乾燥を迅速化できる効果がある。さらに、脈動送気により上記のように廃棄物の燃焼が促進され、さらに発生した可燃性ガスと支燃ガスとの混合が促進され、炉内の燃焼が促進されまた安定して行われ炉内の温度分布が均一化される効果が得られる。その結果、廃棄物の乾燥・燃焼・熱分解を安定して進行させることができる。
【0058】
また、廃棄物処理炉の二次燃焼室にあっては、脈動加熱支燃ガスの送気は次のような利点をもたらす。
・二次燃焼室へ加熱支燃ガスを二次燃焼用空気として脈動送気することにより、二次燃焼室での可燃性ガスと支燃ガスの撹拌混合が促進され、二次燃焼室内の燃焼が促進される。
・二次燃焼室へ加熱支燃ガスを脈動送気することにより、二次燃焼室に設けられた炉壁ボイラや、二次燃焼室の下流に設けられた廃熱回収ボイラの伝熱面表面の境界層剥離や境界層厚さの低減により燃焼熱の伝熱促進効果が得られる。その結果、ボイラ伝熱面積を縮小しても、所定の廃熱回収が可能となるので、ボイラをコンパクトにでき経済的な装置設計が可能となる。
【0059】
さらに、廃棄物処理炉の主燃焼室、二次燃焼室に加熱支燃ガスを脈動送気することにより、次のような利点をもたらす。
・主燃焼室、二次燃焼室での廃棄物、可燃ガスの燃焼が安定して行われるので、燃焼が不安定になることによるNOxの発生やダイオキシン類の発生を抑制できる。
・主燃焼室、二次燃焼室での廃棄物、可燃ガスの燃焼が促進されるので、焼却炉へ供給する空気量を低減することができ、低空気比燃焼ができるため、焼却炉本体、排ガス処理設備をコンパクトにでき、経済的な廃棄物処理炉装置が実現可能となる。
【0060】
また、本実施形態では高温側空間と低温側空間とに高温側ピストンと低温側ピストンとを有するスターリングエンジンを用いているが、一つのピストンが高温側空間と低温側空間で駆動されるスターリングエンジンを適用することもできる。
【0061】
本発明は、廃棄物発電装置に関するものであるが、廃棄物と同様の低カロリー燃料といえる汚泥やバイオマス、泥炭等を焼却又はガス化溶融する処理炉からの廃熱を利用する発電装置にも適用することができ、廃棄物発電装置の場合と同様に、発電効率向上効果を得ることができる。
【実施例】
【0062】
従来の廃棄物焼却炉に廃熱回収ボイラを用いる発電装置では入熱量に対する電力量の比である発電効率がおおむね15%強であるのに対し、図1の本実施形態装置によれば、廃棄物焼却炉に送風する空気をすべて脈動送気し、太陽熱及び廃熱回収ボイラで生成する蒸気の一部により脈動送気する空気を加熱し、スターリングエンジン駆動により発電することとして、スターリングエンジンにより脈動送気加熱空気の顕熱の30%を発電に利用でき、その結果、発電電力量を増大でき、さらに廃棄物焼却炉への加熱空気の脈動送気による燃焼均一化とボイラでの伝熱促進により、廃熱回収効率を向上でき、発電効率を18%以上に増大できる結果が得られた。
【符号の説明】
【0063】
10 廃棄物処理炉
11 ボイラ
13 (蒸気タービン)発電機
20 スターリングエンジン
20A 加熱部
20B 冷却部
21 (スターリングエンジン)発電機
31,32 冷却支燃ガス脈動送気装置(31:コンプレッサ、32:ロータリバルブ)
33 熱交換器
35 脈動増幅器
41 太陽熱集熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支燃ガスを受けて廃棄物を焼却又はガス化溶融する廃棄物処理炉に設ける廃棄物発電装置において、
高温側空間と低温側空間とを有し、高温側空間に高温側ピストンそして低温側空間に低温側ピストンがそれぞれ配されていると共に上記高温側空間と低温側空間をそれぞれ加熱そして冷却する加熱部と冷却部を有し、両ピストンが90度の位相差をもつクランク軸を駆動するスターリングエンジンと、
上記スターリングエンジンの冷却部へ支燃ガスを脈動送気する冷却支燃ガス脈動送気装置と、
スターリングエンジンの冷却部から排出される支燃ガスを加熱する熱交換器と、
熱交換器から送気されスターリングエンジンの加熱部から排出される加熱支燃ガスを廃棄物処理炉へ脈動送気する加熱支燃ガス脈動送気装置と、
スターリングエンジンにより駆動される発電機とを備えることを特徴とする廃棄物発電装置。
【請求項2】
さらに、廃棄物処理炉からの廃熱を回収して蒸気を生成するボイラを備え、
熱交換器は、スターリングエンジンの冷却部から排出される支燃ガスを上記ボイラからの蒸気により加熱することとする請求項1に記載の廃棄物発電装置。
【請求項3】
さらに、太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置を備え、
熱交換器は、スターリングエンジンの冷却部から排出される支燃ガスを、上記太陽熱集熱装置で集熱された太陽熱を受熱し受熱した太陽熱との熱交換により加熱することとする請求項1に記載の廃棄物発電装置。
【請求項4】
さらに、太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置を備え、
熱交換器は、該太陽熱集熱装置で集熱された太陽熱を受熱して熱媒体を加熱する第1の熱交換器と、第1の熱交換器により加熱された熱媒体によりスターリングエンジンの冷却部からの支燃ガスを加熱する第2の熱交換器とを有していることとする請求項1に記載の廃棄物発電装置。
【請求項5】
さらに、廃棄物処理炉からの廃熱を回収して蒸気を生成するボイラと、
太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置を備え、
熱交換器は、スターリングエンジンの冷却部から排出される支燃ガスを上記ボイラからの蒸気及び上記太陽熱集熱装置からの太陽熱との熱交換により加熱することとする請求項1に記載の廃棄物発電装置。
【請求項6】
さらに、蒸気により発電する蒸気タービン発電機とを備え、
該蒸気タービン発電機がボイラからの蒸気で駆動されることとする請求項2又は請求項5に記載の廃棄物発電装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−179431(P2011−179431A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45427(P2010−45427)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】