説明

廃水処理方法及び装置

【課題】スクリーンの目詰まりを防止するとともに、処理効率を向上する。
【解決手段】
アンモニア性窒素を含む廃水と、嫌気性アンモニア酸化細菌を含む包括固定化担体24とを嫌気性下で接触させて嫌気性アンモニア酸化反応を行う嫌気性反応槽12と、嫌気性反応槽12の上部に嫌気性反応槽12の内側に傾斜して設けられ、処理された後の廃水を流出させるとともに包括固定化担体24と廃水とを分離するスクリーンと、スクリーン14の内側にスクリーン14と略平行になるように設けられ、スクリーン14面との間に流路17を形成するガイド板16と、スクリーン14の下方に設けられ、スクリーン14に向けて窒素ガスを噴出する窒素ガス噴出ノズル18と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃水処理方法及び装置に係り、特に、アンモニアと亜硝酸とを基質とする嫌気性アンモニア酸化細菌を含む担体を用いた廃水処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
閉鎖系水域における富栄養化の原因となる廃水中の窒素を除去することが求められている。窒素は、下水や各種産業廃水に、主にアンモニア性窒素の形態で含まれている。
【0003】
廃水中のアンモニア性窒素の除去方法としては、一般的に、硝化細菌及び脱窒細菌を用いて窒素ガスに変換して除去する方法があるが、近年では、嫌気性アンモニア酸化法による窒素除去方法が注目されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
嫌気性アンモニア酸化法は、処理する窒素含有水中のアンモニアを電子供与体とし、亜硝酸を電子受容体として嫌気性アンモニア酸化細菌により、下記式に従って同時脱窒する方法である。
【0005】
NH+1.32NO+0.066HCO+0.13H
→1.02N+0.26NO+0.066CH0.50.15+2.03H
…(式1)
嫌気性アンモニア酸化細菌は、脱窒細菌等と比べて増殖速度が遅いため、処理槽内から流出させないようにする必要がある。たとえば、特許文献1では、嫌気性アンモニア酸化細菌を包括固定化した流動担体を処理槽内に投入して、窒素除去する方法が提案されている。
【0006】
通常、このような微生物担体を用いた廃水処理では、処理水とともに微生物担体が流出するのを防止するため、処理槽内の流出口近傍にスクリーンが設けられている。しかしながら、微生物担体がスクリーンに目詰まりし易いという問題があった。
【0007】
これに対して、特許文献3では、スクリーン部材と平行な処理水の水流をスクリーン面に与えることにより固定化担体が付着するのを抑制する好気性処理槽において、スクリーン部材を通過した被処理水の一部を逆流させる逆流手段を設けることで、スクリーンの目詰まりを防止する方法が提案されている。
【0008】
また、廃水処理を効率的に行うために、通常、処理槽内を攪拌したり、曝気したりするが、ランニングコストがかかる。これに対して、特許文献4では、メタン醗酵槽の攪拌動力を低減するために、有機性廃棄物をメタン発酵させる過程で発生するバイオガスを循環し、攪拌動力として利用する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2004−275997号公報
【特許文献2】特開2005−161257号公報
【特許文献3】特開2003−71481号公報
【特許文献4】特開2001−314839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1、2では、嫌気性アンモニア酸化反応により担体内部から窒素ガスが大量に発生するため、担体表面に微細な気泡が付着し、担体の比重は処理水よりも小さくなる。このため、担体が浮上し、スクリーンの隙間を埋めることにより目詰まりを生じるという問題があった。
【0010】
また、担体表面に微細な気泡が付着すると、担体内部に廃水が拡散しにくくなり、担体の活性が低下する虞もあった。
【0011】
また、上記特許文献3、4は、担体自体から発生するガスは想定していないため、担体の浮上を抑制する対策はなされておらず、スクリーンの目詰まりを確実に防止することはできなかった。
【0012】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、スクリーンの目詰まりを防止するとともに、処理効率を向上できる廃水処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、アンモニア性窒素を含む廃水と、嫌気性アンモニア酸化細菌を含む包括固定化担体とを嫌気性下で接触させて嫌気性アンモニア酸化反応を行う処理槽と、前記処理槽の上部に該処理槽の内側に傾斜して設けられ、処理された後の廃水を流出させるとともに前記包括固定化担体と前記廃水とを分離するスクリーンと、前記スクリーンの内側に該スクリーンと略平行になるように設けられ、前記スクリーン面との間に流路を形成するガイド板と、前記スクリーンの下方に設けられ、前記スクリーンに向けて窒素ガスを噴出する窒素ガス噴出手段と、を備えたことを特徴とする廃水処理装置を提供する。
【0014】
請求項1によれば、嫌気性を維持するための窒素ガス噴出手段をスクリーンの下方に設けて、スクリーンに向かって窒素ガスを供給するように構成した。これにより、ガイド板の誘導で窒素ガスの気泡が上昇し、スクリーン面に沿った水流を形成するとともに、スクリーンに付着した担体や液面に浮上した担体に衝撃を与える。これにより、担体表面に付着した微細な気泡を除去するとともに、スクリーンに付着した担体や浮上した担体を降下させることができる。したがって、廃水と担体との接触効率を高めて、処理効率を向上でき、担体によるスクリーンの目詰まりを抑制できる。
【0015】
請求項2は請求項1において、前記スクリーン面の下部は、前記廃水が流出しない遮蔽部材からなることを特徴とする。
【0016】
請求項2によれば、廃水とともに担体が衝突するスクリーン面を、処理水が流出しない遮蔽部材で構成するので、窒素ガス噴出手段から噴出された窒素ガスがスクリーン下部から抜け出して無駄に消費されることがないので、少ない窒素ガス噴出量でも廃水と担体を確実にスクリーン面に衝突させることができる。この衝撃により、担体表面に付着した微細な気泡を除去できるとともに、スクリーンに付着又は水面に浮上している担体を降下させることができる。したがって、担体の処理効率を向上でき、担体によるスクリーンの目詰まりを抑制できる。
【0017】
請求項3は請求項1又は2において、前記処理槽内の上部に区画され、該処理槽内の反応により発生した窒素ガスを捕集する窒素ガス捕集部と、前記窒素ガス捕集部と前記処理槽内の前記窒素ガス噴出手段とを連通し、前記捕集した窒素ガスを前記処理槽内に循環させる循環ラインと、を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項3によれば、担体表面から発生する窒素ガスを捕集する窒素ガス捕集部を設けるとともに、該捕集した窒素ガスを処理槽内に循環するようにした。これにより、処理槽内を高い嫌気状態に維持できるだけでなく、嫌気性アンモニア酸化反応で発生した窒素ガスをスクリーンの目詰まり防止に有効に利用できる。
【0019】
請求項4は請求項3において、前記窒素ガス捕集部は、前記処理槽の上面に配設された蓋板と、前記蓋板から垂下されて、前記処理槽の側面上部に形成された流入口及び流出口の断面上部を仕切る仕切板と、を設けることにより処理槽内の上部に区画されてなるとともに、前記仕切板の先端は、前記流入又は流出する廃水の水面下に位置されることを特徴とする。
【0020】
これにより、シンプルな構成で処理槽内の上部に窒素ガス捕集部を形成できる。
【0021】
請求項5は請求項3又は4において、前記循環ラインは、前記窒素ガス捕集部において捕集した窒素ガスを収納するバッファ槽と、前記窒素ガス捕集部と前記バッファ槽とを連通し、前記捕集した窒素ガスを前記バッファ槽に導入する導入配管と、前記バッファ槽と前記処理槽内の窒素ガス供給口とを連通し、前記捕集した窒素ガスの少なくとも一部を前記処理槽内に循環させる循環配管と、前記バッファ槽と連通し、前記捕集した窒素の残部を大気中に放出する放出配管と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
請求項5によれば、窒素ガス捕集部において捕集した窒素ガスをバッファ槽に導入し、少なくとも一部を処理槽内に循環させるようにしたので、処理槽外部から窒素ガス以外のガスが混入するのを抑制するとともに、処理槽内の圧力変動を小さくすることができる。これにより、窒素ガスを供給するための装置を新たに設けることなく、処理槽内を高い嫌気状態に維持できる。
【0023】
請求項6は請求項5において、前記窒素ガス捕集部内のガス圧を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段の測定結果に基づいて、前記処理槽に循環させる窒素ガス量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項6によれば、捕集した窒素ガス圧を測定し、該測定結果に基づいて、処理槽内に循環させる窒素ガス量を制御するようにしたので、適切な圧力範囲で処理槽内を嫌気状態に維持できる。また、窒素ガス量を測定することにより、処理槽内での反応状態を検知することもできる。
【0025】
請求項7は請求項5又は6において、前記循環させる窒素ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段を備えたことを特徴とする。
【0026】
このように、循環させる窒素ガス中の酸素濃度を検知することで、処理槽内に窒素ガスを循環させるのを停止したり、処理槽内の反応状態を判断したりすることができる。
【0027】
本発明の請求項8は前記目的を達成するために、処理槽内で、アンモニア性窒素を含む廃水と、嫌気性アンモニア酸化細菌を含む包括固定化担体とを嫌気性下で接触させて嫌気性アンモニア反応を行うとともに、前記処理槽の流出口近傍に設けたスクリーンで前記流出口に流れる廃水から前記包括固定化担体を分離する廃水処理方法において、前記嫌気性アンモニア反応により発生する窒素ガスを捕集する捕集工程と、前記捕集した窒素ガスを前記スクリーンの下方に循環させる循環工程と、前記循環させた窒素ガスを前記スクリーンに向けて噴出する窒素ガス噴出工程と、前記噴出された窒素ガスの気泡を前記スクリーンに沿って上昇させる気泡上昇工程と、を備えたことを特徴とする廃水処理方法を提供する。
【0028】
請求項9は請求項8において、前記捕集工程で捕集した窒素ガスの圧力を測定するガス圧測定工程と、前記測定した結果に基づいて、前記スクリーンの下方に循環させる窒素ガス量を制御する制御工程と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
請求項10は請求項8又は9において、前記循環させる窒素ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定工程を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、スクリーンの目詰まりを防止できるとともに、処理効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面により本発明に係る廃水処理方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0032】
図1は、本発明に係る廃水処理装置の一例としての構成を説明する断面模式図である。
【0033】
図1に示されるように、廃水処理装置10は、主として、アンモニア性窒素を含む廃水を嫌気性アンモニア酸化処理する嫌気性反応槽12(処理槽)と、該嫌気性反応槽12の流出口近傍に設けられ、廃水から包括固定化担体を分離するためのスクリーン14と、該スクリーン14と略平行に設けられ、該スクリーン14との間に流路を形成するガイド板16と、スクリーン14の下方に設けられ、嫌気性反応槽12内に窒素ガスを供給する窒素ガス噴出ノズル(窒素ガス噴出手段)18と、を備えている。
【0034】
嫌気性反応槽12は、その側面上部に、アンモニア性窒素を含有する廃水を流入する流入口20と、嫌気性反応槽12内で処理された後の廃水を流出する流出口22と、を有するほかは、ほぼ密閉構造となっている。嫌気性反応槽12内には、嫌気性アンモニア酸化細菌を固定化した複数の包括固定化担体24…(以下、「担体24」ともいう)が投入され、流入口20から流入したアンモニア性窒素を含む廃水と接触させることにより廃水中の窒素を除去できるようになっている。また、嫌気性反応槽12の底部には、担体を含む廃水を攪拌する攪拌機26が設けられている。
【0035】
攪拌機26の方式としては、特に限定されないが、プロペラによる攪拌、ブロアによるガス攪拌、アクアレータによる攪拌等が使用できる。
【0036】
スクリーン14は、矩形状の枠体に多数のウェッジワイヤが担体の通過しない間隔で縦方向に配列された構造となっており、嫌気性反応槽12の流出口22近傍において、底部側に傾斜するように設けられている。スクリーン14のウェッジワイヤ等の目開きは、担体24の大きさとの関係で設定されるが、例えば、担体24のサイズが1.5〜4mmである場合、目開きは0.5〜1.5mm程度が好ましい。
【0037】
また、スクリーン14の下部には、廃水の通過しない遮蔽板28(遮蔽部材)が設けられるとともに、スクリーン14の面に平行に、ガイド板16が対向配置される。遮蔽板28は、スクリーン14の内側及び外側(図1)の何れに配置してもよいが、内側に配置することが好ましい。これにより、ガイド板16の下部(略下半分)と遮蔽板28とにより、スクリーン14に沿った流路17が形成される。また、スクリーン14の直ぐ下方には、窒素ガス噴出ノズル18が配置される。
【0038】
これにより、窒素ガス噴出ノズル18から噴出された窒素ガスの気泡は、遮蔽板28に当たった後、ある程度の上昇速度を維持して流路17を上昇する。上昇した気泡は、スクリーン14の面(遮蔽板28がない部分)や、微細気泡が表面に付着して水面近傍に浮上している担体24に衝突して衝撃を与える。この衝撃により、スクリーン14に目詰まりした担体24をスクリーン14から取り除くとともに、担体表面に付着した微細気泡を担体24から取り除くことができるようになっている。
【0039】
また、窒素ガスの気泡が流路17を上昇する際のエアリフト効果により、破線で示すように、流路17には廃水の上向流が形成され、水面に達した上向流は下向きに方向転換して嫌気性反応槽12の底部に向かう下向流となる。したがって、微細気泡が取り除かれて廃水よりも比重の重くなった担体24は、下向流に乗って流出口近傍から嫌気性反応槽12の中央部に流動される。この担体24の流動により、廃水と担体24との接触効率が高まり、処理性能が向上する。
【0040】
また、スクリーン14の下部に遮蔽板28を設けることで、窒素ガス噴出ノズル18から噴出した窒素ガスの気泡は、遮蔽板28に当たるので、気泡がスクリーン14から抜け出て無駄に消費されることがない。これにより、少ない窒素ガス量でスクリーン14に沿って上昇する多数の気泡を形成することができる。ここで、気泡の大きさは、嫌気性アンモニア酸化反応によって発生する微細気泡(微細気泡の大きさは、0.01mm〜0.5mm程度)よりも大きいことが必要であり、例えば、0.1mm〜20mm粒径程度が好ましい。
【0041】
スクリーン14面とガイド板16面との距離Lは、特に限定されないが、スクリーン14面に衝撃を与えて上昇する水流を形成でき、かつ担体24が通過できるように設定される。具体的には、距離Lは、20〜100cmであることが好ましい。
【0042】
また、廃水処理装置10は、嫌気性反応槽12で発生する窒素ガスを捕集する窒素ガス捕集部30と、該捕集した窒素ガスを嫌気性反応槽12内に循環する循環ライン32と、を備えている。
【0043】
窒素ガス捕集部30は、嫌気性反応槽12の上面に配設された蓋板12aと、該蓋板12aから垂下され、嫌気性反応槽12の流出口22の断面上部を仕切る仕切板40と、を設けることにより形成される。仕切板40の先端は、流出する廃水の水面下に位置するように設けられている。なお、蓋板12aは、図示しない支持部材により嫌気性反応槽12に支持されている。
【0044】
循環ライン32は、該捕集した窒素ガスを収納するバッファ槽34と、該バッファ槽34に窒素ガスを導入する導入配管36と、捕集した窒素ガスの一部を嫌気性反応槽12内の廃水中に循環させる循環配管38と、捕集した窒素ガスの残部を装置外部へ放出する放出配管39と、を備えている。
【0045】
バッファ槽34は、導入配管36を介して窒素ガス捕集部30と連通した空洞タンクとなっており、捕集した窒素ガスを導入できるようになっている。また、バッファ槽34は、捕集した窒素ガスの一部を嫌気性反応槽12内の廃水中に循環させる循環配管38と、捕集した窒素ガスの残部を装置外部へ放出する放出配管39とにそれぞれバルブ42、44を介して連通している。バルブ42は、嫌気性反応槽12へ循環させる窒素ガス量を調節し、バルブ44は、バッファ槽34から装置外部へ放出する窒素ガス量を調節できるようになっている。
【0046】
嫌気性反応槽12内に窒素ガス以外のガスの混入を防ぐため、バッファ槽34の容積は、装置を大型化しない範囲でできるだけ大きいことが好ましく、具体的には、嫌気性反応槽12の容積の1/1000〜1/10にすることが好ましい。このように構成することで、窒素ガス以外のガスがバッファ槽34内に混入した場合でも、窒素ガス以外のガス濃度を希釈することができ、嫌気性反応槽12内の嫌気性アンモニア酸化細菌への影響を最小限にすることができる。なお、バッファ槽34内に窒素ガス以外の成分を吸着する吸着剤等を投入することもできる。
【0047】
導入配管36には、嫌気性反応槽12内のガス圧を測定するガス圧計46(圧力測定手段)が設けられている。このガス圧計46での測定結果に基づいて、コントローラ48(制御手段)がバルブ42を制御し、嫌気性反応槽12に循環させる窒素ガス量を調整できるようになっている。ガス圧計46としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。嫌気性反応槽12内のガス圧は、−1〜3MPaとすることが好ましい。また、嫌気性アンモニア酸化反応を促進する観点から、嫌気性反応槽12内をやや減圧ぎみに維持することがより好ましい。
【0048】
このように、嫌気性反応槽12内のガス圧をガス圧計46により監視することで、スクリーンの目詰まりによる陰陽圧等の異常を検知し、装置を停止するなどの処置を施すことができる。
【0049】
循環配管38には、窒素ガスを供給する駆動力としてのブロア50が設けられている。循環配管38の先端には、嫌気性反応槽12のスクリーン14の下方から窒素ガスを供給する窒素ガス噴出ノズル18が形成されている。
【0050】
具体的には、嫌気性反応槽12内の廃水容積を10mとし、脱窒速度を3kg−N/m/日とした場合、嫌気性反応槽12内に循環させる窒素ガス量は18L/分となる。
【0051】
嫌気性反応槽12内に供給する窒素ガス圧は、担体表面に付着した気泡を除去するとともに、スクリーン14面に付着した担体24を除去し、降下させるのに充分な範囲であることが必要である。具体的には、嫌気性反応槽12内の脱窒速度が3kg−N/m/日であり、投入した担体の1〜5%程度が浮上するとした場合、30〜60分毎に1〜5分間、窒素ガスを供給する程度である。このとき、循環配管38の内径を10cmとした場合、嫌気性反応槽12内に供給する窒素ガス圧は、0.2MPa(0.01〜1MPa)となる。
【0052】
放出配管39は、装置外部から窒素ガス以外のガスの混入を避けるため、できるだけ長くとることが好ましく、バッファ槽34から1m以上にすることが好ましい。放出配管39は、図1の態様では直線状に形成したが、曲線状にすることで外部からの窒素ガス以外のガスの混入を確実に防止することもできる。また、放出配管39に、図示しない逆流防止弁を設けることにより、外部から窒素ガス以外のガスが混入するのをより確実に防止することもできる。
【0053】
嫌気性反応槽12における嫌気性アンモニア酸化細菌の保持形態は、特に限定されないが、プラスチック担体等に嫌気性アンモニア酸化細菌を付着固定した付着固定化担体や、モノマー材料、プレポリマー材料等の固定化材料と嫌気性アンモニア酸化細菌を混合し、該混合液を重合することにより固定化材料内に固定化した包括固定化担体が好ましい。嫌気性アンモニア酸化細菌としては、嫌気性アンモニア酸化細菌の純粋菌株や嫌気性アンモニア酸化細菌を含む活性汚泥等の混合微生物が使用できる。
【0054】
包括固定化担体24の形状は、角形、球形、筒状等があり、特に限定されない。包括固定化担体24の大きさは、1〜10mmであることが好ましい。また、嫌気性アンモニア酸化細菌を含む包括固定化担体24の嫌気性反応槽12への充填率は、20〜50容積%が好ましい。
【0055】
本発明において使用される廃水としては、アンモニア性窒素濃度が50〜200mg/Lの範囲であるものが好ましい。また、嫌気性アンモニア酸化反応では、アンモニア性窒素を処理するのに亜硝酸が必要となるため、廃水中の亜硝酸濃度は、アンモニア性窒素濃度に対して1〜1.5倍の範囲とすることが好ましい。
【0056】
嫌気性反応槽12における脱窒速度は、0.5〜20kg−N/m/日であることが好ましく、0.5〜5.0kg−N/m/日であることが更に好ましい。嫌気性反応槽12における滞留時間(HRT)は、2〜24時間であることが好ましい。
【0057】
次に、本発明に係る廃水処理装置10の作用について説明する。
【0058】
アンモニア性窒素を多く含む廃水は、流入口20から嫌気性反応槽12内に流入する。嫌気性反応槽12では、窒素ガスの嫌気性状態で、嫌気性アンモニア酸化細菌を含む担体24と廃水とが攪拌されながら接触し、廃水中のアンモニア性窒素が除去される。嫌気性反応槽12で処理された後の廃水は、スクリーン14を通過することにより担体24が分離された後、流出口22から流出する。
【0059】
この嫌気性アンモニア酸化処理においては、担体内部から窒素ガスが発生するため、担体表面に微細な窒素ガスの気泡が付着し、比重が低下する。このため、担体24が浮上し、スクリーン14の目詰まりを起こし易くなる。
【0060】
本発明では、嫌気性を維持するための窒素ガスをスクリーン14の下方から該スクリーン14面に向かって噴出させる。これにより、窒素ガス噴出ノズル18から噴出された窒素ガスの気泡は、遮蔽板28に当たった後、ある程度の上昇速度を維持して流路17を上昇する。上昇した気泡は、スクリーン14の面(遮蔽板28がない部分)や、微細気泡が表面に付着して水面近傍に浮上している担体24に衝突して衝撃を与える。この衝撃により、スクリーン14に目詰まりした担体24をスクリーン14から取り除くとともに、担体表面に付着した微細気泡を担体24から取り除くことができる。
【0061】
また、窒素ガスの気泡が流路17を上昇する際のエアリフト効果により、破線で示すように、流路17には廃水の上向流が形成され、水面に達した上向流は下向きに方向転換して嫌気性反応槽12の底部に向かう下向流となる。したがって、微細気泡が取り除かれて廃水よりも比重の重くなった担体24は、下向流に乗って流出口近傍から嫌気性反応槽12の中央部に流動される。この担体24の流動により、廃水と担体24との接触効率が高まり、処理性能が向上する。
【0062】
また、担体24内部から発生した窒素ガスは窒素ガス捕集部30で捕集され、少なくともその一部が、循環配管38を介して嫌気性反応槽12内の廃水中に供給される。これにより、上述した効果に加え、外部に新たに窒素ガス噴出手段を設けることなく、嫌気性反応槽12内を高い嫌気状態に維持できる。
【0063】
さらに、捕集した窒素ガスはバッファ槽34に導入され、一部は循環配管38、ブロア50を介して嫌気性反応槽12内に戻される。また、捕集した窒素ガスの残部は、バッファ槽34から図示しない逆流防止弁を備えた放出配管39から外部に放出される。
【0064】
また、ガス圧計46により嫌気性反応槽12内のガス圧が測定され、該測定結果に基づいて、バルブ44の開度がコントローラ48により調節される。そして、嫌気性反応槽12内のガス圧が適切な範囲(−1〜3MPa)を満たし、かつ所定の脱窒速度を満たすように窒素ガスの供給量が調節される。
【0065】
これにより、上述した効果に加え、窒素ガス以外の混入による嫌気状態への悪影響や処理過程における毒性への影響を最小限に抑えることができる。さらに、ガス圧計46により嫌気性反応槽12内の陰陽圧状態を監視することができるので、ガス量が異常な場合に窒素ガスの供給を停止するなど、トラブルを未然に防ぐことができる。
【0066】
図2は、本発明に係る廃水処理装置の別態様を説明する図である。本実施形態は、捕集した窒素ガス中の酸素濃度を検知し、所定以上の嫌気状態を満たしたときのみ窒素ガスを嫌気性反応槽12内に循環させる方法である。なお、図2において、上記実施形態と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0067】
図2に示すように、廃水処理装置10’は、更に、バッファ槽34又は循環配管38内の窒素ガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度計52と、バッファ槽34又は循環配管38内の窒素ガスを外部に抜くための抜き配管54と、抜き配管54に設けられたバルブ56と、酸素濃度の測定結果に応じて、バッファ槽34又は循環配管38内から窒素ガスを抜くようにバルブ56を制御するコントローラ58と、を備えた以外は図1とほぼ同様に構成されている。
【0068】
これにより、循環配管38内の窒素ガスにおいて、高い酸素濃度が検知された場合、循環配管38中の窒素ガスを外部へ抜き、嫌気性反応槽12内へ供給しないようにすることができる。これにより、嫌気性反応槽12内に高い嫌気状態の窒素ガスを供給できる。なお、酸素濃度計52は、図2の態様に限らず、窒素ガス捕集部30やバッファ槽34、導入配管36の途中等に設けてもよい。
【0069】
以上のように、本発明の廃水処理方法及び装置を適用することにより、スクリーンの目詰まりを防止できるとともに、処理効率を向上できる。
【0070】
以上、本発明に係る廃水処理方法及び装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0071】
たとえば、上記各実施形態では、嫌気性アンモニア酸化細菌を含む包括固定化担体24を使用する例について説明したが、これに限定されず、プラスチック担体等に嫌気性アンモニア酸化細菌を付着させた付着固定化担体や、活性汚泥なども使用できる。
【0072】
上記各実施形態では、ガス圧計46やコントローラ48を用いて、捕集した窒素ガスの循環量を制御する例について述べたが、これらを使用せず、捕集した窒素ガスを単に循環使用することもできる。また、窒素ガス捕集部30で捕集した窒素ガスを嫌気性反応槽12内に循環利用しない態様も採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る廃水処理装置の一例としての構成を説明する断面模式図である。
【図2】本発明に係る廃水処理装置の別態様を説明する断面模式図である。
【符号の説明】
【0074】
10、10’…廃水処理装置、12…嫌気性反応槽、12a…蓋板、14…スクリーン、16…ガイド板、17…流路、18…窒素ガス噴出ノズル、24…担体(包括固定化担体)、30…窒素ガス捕集部、32…循環ライン、34…バッファ槽、36…導入配管、38…循環配管、39…放出配管、40…仕切板、42、44、56…バルブ、46…ガス圧計、48…コントローラ、50…ブロア、52…酸素濃度計、54…抜き配管、58…コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア性窒素を含む廃水と、嫌気性アンモニア酸化細菌を含む包括固定化担体とを嫌気性下で接触させて嫌気性アンモニア酸化反応を行う処理槽と、
前記処理槽の上部に該処理槽の内側に傾斜して設けられ、処理された後の廃水を流出させるとともに前記包括固定化担体と前記廃水とを分離するスクリーンと、
前記スクリーンの内側に該スクリーンと略平行になるように設けられ、前記スクリーン面との間に流路を形成するガイド板と、
前記スクリーンの下方に設けられ、前記スクリーンに向けて窒素ガスを噴出する窒素ガス噴出手段と、
を備えたことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項2】
前記スクリーン面の下部は、前記廃水が流出しない遮蔽部材からなることを特徴とする請求項1に記載の廃水処理装置。
【請求項3】
前記処理槽内の上部に区画され、該処理槽内の反応により発生した窒素ガスを捕集する窒素ガス捕集部と、
前記窒素ガス捕集部と前記処理槽内の前記窒素ガス噴出手段とを連通し、前記捕集した窒素ガスを前記処理槽内に循環させる循環ラインと、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の廃水処理装置。
【請求項4】
前記窒素ガス捕集部は、
前記処理槽の上面に配設された蓋板と、
前記蓋板から垂下されて、前記処理槽の側面上部に形成された流入口及び流出口の断面上部を仕切る仕切板と、
を設けることにより処理槽内の上部に区画されてなるとともに、
前記仕切板の先端は、前記流入又は流出する廃水の水面下に位置されることを特徴とする請求項3に記載の廃水処理装置。
【請求項5】
前記循環ラインは、
前記窒素ガス捕集部において捕集した窒素ガスを収納するバッファ槽と、
前記窒素ガス捕集部と前記バッファ槽とを連通し、前記捕集した窒素ガスを前記バッファ槽に導入する導入配管と、
前記バッファ槽と前記処理槽内の窒素ガス噴出手段とを連通し、前記捕集した窒素ガスの少なくとも一部を前記処理槽内に循環させる循環配管と、
前記バッファ槽と連通し、前記捕集した窒素の残部を大気中に放出する放出配管と、
を備えたことを特徴とする請求項3又は4に記載の廃水処理装置。
【請求項6】
前記窒素ガス捕集部内のガス圧を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段の測定結果に基づいて、前記処理槽に循環させる窒素ガス量を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の廃水処理装置。
【請求項7】
前記循環させる窒素ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段を備えたことを特徴とする請求項5又は6に記載の廃水処理装置。
【請求項8】
処理槽内で、アンモニア性窒素を含む廃水と、嫌気性アンモニア酸化細菌を含む包括固定化担体とを嫌気性下で接触させて嫌気性アンモニア反応を行うとともに、前記処理槽の流出口近傍に設けたスクリーンで前記流出口に流れる廃水から前記包括固定化担体を分離する廃水処理方法において、
前記嫌気性アンモニア反応により発生する窒素ガスを捕集する捕集工程と、
前記捕集した窒素ガスを前記スクリーンの下方に循環させる循環工程と、
前記循環させた窒素ガスを前記スクリーンに向けて噴出する窒素ガス噴出工程と、
前記噴出された窒素ガスの気泡を前記スクリーンに沿って上昇させる気泡上昇工程と、を備えたことを特徴とする廃水処理方法。
【請求項9】
前記捕集工程で捕集した窒素ガスの圧力を測定するガス圧測定工程と、
前記測定した結果に基づいて、前記スクリーンの下方に循環させる窒素ガス量を制御する制御工程と、
を備えたことを特徴とする請求項8に記載の廃水処理方法。
【請求項10】
前記循環させる窒素ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定工程を備えたことを特徴とする請求項8又は9に記載の廃水処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−194620(P2008−194620A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32607(P2007−32607)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】