廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システム
【課題】廃熱ボイラーの各伝熱面ブロックの汚れ抵抗の大きさに応じた打撃力を伝熱管に加えることができるハンマリング装置の制御システムを提供する。
【解決手段】ハンマリング装置の運転スケジュール制御システムは、次の(イ)〜(ハ)から成るものである。(イ)ボイラー蒸発量とボイラー入口/出口ガス温度に基づいて、ガス流量Gcを算出するガス流量演算手段35と、(ロ)ガス流量と伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度に基づいて、該伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値DA,DBと汚れ抵抗計測値Da,Dbを算出する汚れ抵抗演算手段36a,36bと、(ハ)伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、ハンマリング装置の打撃回数R、打撃時間H、又は打撃力Fの少なくとも1つを変更するハンマリング運転スケジュール演算手段37a,37bとを備える。
【解決手段】ハンマリング装置の運転スケジュール制御システムは、次の(イ)〜(ハ)から成るものである。(イ)ボイラー蒸発量とボイラー入口/出口ガス温度に基づいて、ガス流量Gcを算出するガス流量演算手段35と、(ロ)ガス流量と伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度に基づいて、該伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値DA,DBと汚れ抵抗計測値Da,Dbを算出する汚れ抵抗演算手段36a,36bと、(ハ)伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、ハンマリング装置の打撃回数R、打撃時間H、又は打撃力Fの少なくとも1つを変更するハンマリング運転スケジュール演算手段37a,37bとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱管に付着・堆積したダストを除去するハンマリング装置を備える廃熱ボイラーに関し、さらに詳しくは、廃熱ボイラーの伝熱管に付着・堆積したダストを環境にやさしく、かつ効果的に除去することができるハンマリング運転スケジュールの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマリング装置(ダスト除去装置)を備える廃熱ボイラーは、例えば、特公昭59−28813号公報(廃熱ボイラーのダスト付着防止装置)に記載されているように、セメントプラント用廃熱ボイラー等として既に公知のものである。
上記公知の廃熱ボイラーでは、それに流入する排ガス中に多量のダストが含まれており、このダストの伝熱管への付着が汚れ抵抗(Fouling Resistance)となり、ボイラー性能を著しく低下させていた。この排ガス中のダスト含有量は100〜130gr/Nm3であり、ダスト粒度は5μm以下のものが95%を占めており、このダストの顕微鏡組織は繊維状であるため伝熱管への付着性が強く、かつ熱伝導率が小さいため僅かの厚さ(数mm厚さ)の付着・堆積があった場合でも大きな汚れ抵抗となる。
【0003】
上記特公昭59−28813号公報(特許文献1)に記載されている廃熱ボイラー40は、図16及び図17に示されるように、吊下げ式蛇管型伝熱管41のベンド部下端に当板46を介して配管列ピッチ設定金具47を垂設しており、連結軸42に固定する各突片48の間には、それぞれ前記設定金具47を挿着し固定する。吊下げ伝熱管41のガス流れ方向の配管列ピッチの乱れを防止するために、固定軸51と止め金52が設けられている。
【0004】
上記廃熱ボイラー40において、吊下げ式蛇管型伝熱管41に付着したダストを除去するために、ハンマー(回転式槌打型ハンマー)45の衝突エネルギーを中間軸43を介して連結軸42に伝達すると(図16(b)を参照)、この連結軸42は突片48、配管列ピッチ設定金具47、及び当板46を介して、伝熱管41のベンド部下端に衝撃エネルギーを伝達して該伝熱管41を振動させる。これにより、伝熱管41に付着していたダストが剥離され、ホッパー53に自然落下してコンベア55によって排出される。
このように、廃熱ボイラーでは、流入する排ガス中の微粉ダストが伝熱管の表面に付着・堆積して熱伝達を阻害し、ダストによる汚れ抵抗が増大しボイラー性能を著しく低下させるため、ハンマリング装置を設けることにより伝熱管に付着したダストを除去している。
【0005】
更に、廃熱ボイラーの伝熱面積は、上述のダストの付着による汚れ抵抗を見込んで、例えば、伝熱面がクリーンな状態に対して数倍の伝熱面を有しており、通常のボイラーに比較して伝熱面の余裕度は大きく設定されているため、廃熱ボイラーの設備全体に対して占めるコストの割合は小さくない。
上記のように、廃熱ボイラーが余裕度の大きい伝熱面積を有していても、なおかつ、伝熱面へのダストの付着が進み汚れ抵抗が所定以上に大きくならないよう(ボイラーの性能低下を来たさないよう)、ハンマリング装置を運転して所定の性能を維持する必要がある。
【0006】
【特許文献1】特公昭59−28813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の廃熱ボイラーに設置されているハンマリング装置では、構造上汚れ抵抗を改善するための操作手順に種々限界がある。
例えば、槌打式ハンマーは一本の回転軸に多数設定されているため、各伝熱面に対して一律に打撃が加えられるので、実際にはそれ程汚れていない状態であっても必要以上に打撃力が加えられる箇所があり、一方で、相当汚れている状態であっても必要な打撃力が加えられない箇所もある。このような打撃力のアンバランスは設備全体の寿命、特に、ハンマリング装置の耐久性に悪影響を及ぼしていた。
【0008】
そして、ハンマリング装置の耐久性は、打撃回数や打撃力により大きく影響を受けるので、各伝熱面に対して一律に打撃を加えることは、ハンマリング装置の平均的な寿命を短くするばかりでなく、騒音対策用の防音カバーを必要としたり、打撃時の大きな騒音(約110dB)により近隣の民家に多大な迷惑をかけることにもなる。
また、ハンマリング装置のハンマー部が損傷すると伝熱管に加える打撃力が弱くなり、ボイラー性能が低下する。ボイラー性能が著しく低下する場合には、単位時間当たりの打撃回数を増加することもあるが、あまり効果は期待できず、却ってハンマリング装置の損傷を増長することになる。
【0009】
ここで、伝熱管に付着・堆積したダストにより伝熱面の汚れ抵抗が大きくなる各種要因ついて、図4〜図8を参照しながら説明する。図4〜図8は、それぞれの要因と汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
(1) ハンマリング打撃点からの伝熱管の長さと汚れ抵抗との関係
廃熱ボイラーの伝熱管におけるハンマリング打撃点からの伝熱管の長さLと汚れ抵抗fr1との関係は、図4に示されるように、ハンマリング打撃点からの伝熱管の長さLに反比例して汚れ抵抗fr1が小さくなる。このような現象は、衝撃波の振幅の減少により生じるものである。
【0010】
(2) 管群の長さと汚れ抵抗との関係
廃熱ボイラーにおける管群の長さLgと汚れ抵抗fr2との関係は、図5に示されるように、管群の長さLgに反比例して汚れ抵抗fr2が小さくなる。このような現象は、ボイラーの入口から出口に到るダスト濃度の減少により生じるものである。
(3) ガス温度と汚れ抵抗との関係
廃熱ボイラーに流入するガス温度tgと汚れ抵抗fr3との関係は、図6に示されるように、流入するガス温度tgがtg1からtg2に下がるとこれに比例して汚れ抵抗fr3も小さくなる。このような現象は、ダスト粒子の結合力の減少により生じるものである。
【0011】
(4) ガス流れの管群での左右方向の偏流と汚れ抵抗との関係
廃熱ボイラーにおけるガス流れの管群での左右方向の偏流と汚れ抵抗fr4との関係は、図7において実線矢印又は点線矢印で示されるように、ボイラー入口/出口ダクトの形状及び管群のダスト付着状態により生じるものである。
(5) ガス流れの管群での上下方向の偏流と汚れ抵抗との関係
廃熱ボイラーにおけるガス流れの管群での上下方向の偏流と汚れ抵抗fr5との関係は、図8において実線矢印及び点線矢印で示されるように、ボイラー入口/出口ダクトの形状及び管群のダスト付着状態により生じるものである。
【0012】
上記のような各種要因によって大きくなる汚れ抵抗を各伝熱面ブロック(各管群)毎に数値的に把握して、これに応じてハンマリング装置の運転制御を行うことが可能になれば、それぞれの伝熱面ブロックの汚れ抵抗の大きさ(ダストの付着・堆積厚さ)に応じて、必要とする打撃力を加えることができる。
そこで、本発明の課題は、上記従来の問題点を解決するために、廃熱ボイラーの各伝熱面ブロックの汚れ抵抗の大きさに応じて、各伝熱面ブロックの伝熱管に打撃を加えることができるように、ハンマリング装置の運転について工夫することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る廃熱ボイラーは、伝熱面ブロックの汚れ抵抗の大きさに応じて、伝熱面ブロックに対して必要とする適正な打撃エネルギーを加えることによって、ハンマリング装置の耐久性を損なうことなく、環境に優しい効果的なダスト除去を行うことを意図したものである。
【0014】
以下に、上記課題を解決するために講じた手段を作用と共に説明する。
(1) 本発明に係る廃熱ボイラー(請求項1に対応)は、多数の伝熱管を配列した伝熱面ブロックと、この伝熱面ブロックの各伝熱管に振動を加えて付着したダストを除去するハンマリング装置と、このハンマリング装置の運転を制御するハンマリング運転制御装置とを備える廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システムを前提として、次の(イ)〜(ニ)から成るものである。
(イ) ボイラー蒸発量とボイラー入口/出口ガス温度に基づいて、ガス流量を算出するガス流量演算手段と、
(ロ) 上記ガス流量と上記伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度に基づいて、該伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出する汚れ抵抗演算手段と、
(ハ) 上記伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、上記ハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力の少なくとも1つを変更するハンマリング運転スケジュール演算手段とを備えて成り、
(ニ) 上記伝熱面ブロックに対して、その汚れ度合に応じて適正な打撃を加えること。
【0015】
上記のような構成にすることにより、ガス流量と、伝熱面ブロックのガス入口側とガス出口側のガス温度に基づいて、該伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出することができ、この汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を比較することによって、伝熱面ブロックの汚れ度合を認識することができる。
そして、この伝熱面ブロックの汚れ度合に応じて、ハンマリング装置により伝熱面ブロックに加える打撃回数、打撃時間、又は打撃力を変更することができるので、伝熱面ブロックに対してその汚れ度合に応じて必要とする適正な打撃エネルギーを加えることができる。
【0016】
(2) 上記(1)における廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システムにおいて、伝熱面ブロックが複数設けられ、各伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度に基づいて、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出し、各伝熱面ブロックに対してそれぞれの汚れ度合に応じて適正な打撃を加えることができる。(請求項2に対応)
このような構成によれば、周囲の伝熱面ブロックのガス入口側とガス出口側のガス温度による影響を考慮しながら、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出することができるので、より正確な汚れ抵抗計測値を算出することが可能であり、汚れ度合に応じて適正な打撃を加えることができる。
【0017】
(3) 上記(2)における廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システムにおいて、複数の伝熱面ブロックそれぞれの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、各伝熱面ブロックにおけるハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力の少なくとも1つを変更することができる。(請求項3に対応)
このような構成によれば、周囲の伝熱面ブロックの汚れ度合による影響を考慮しながら、各伝熱面ブロックにおけるハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力を変更することができるので、より適正な打撃エネルギーを各伝熱面ブロックに与えることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果を整理すると次ぎのとおりである。
伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、該伝熱面ブロックの汚れ度合を認識することができ、この汚れ度合に応じて該伝熱面ブロックに加えるハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力を変更することができるので、ハンマリング装置は、伝熱面ブロックに対してその汚れ度合に応じて必要とする適正な打撃エネルギーを加えることができる。
その結果、ハンマリング装置の耐久性を損なうことなく、装置全体の損傷を最小限にすることが可能であり、騒音を低減して環境に優しい効果的なダスト除去を行うことができる。
【0019】
また、複数の伝熱面ブロックが配置される場合でも、周囲の伝熱面ブロックのガス入口側とガス出口側のガス温度による影響を考慮しながら、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出することが可能であり、さらに、周囲の伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値による影響を考慮しながら、各伝熱面ブロックにおけるハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力を変更することができるので、各伝熱面ブロックに対してより適正な打撃エネルギーを与えることが可能である。
その結果、複数の伝熱面ブロックおいて、ハンマリング装置の耐久性を損なうことなく、装置全体の損傷を最小限にすることが可能であり、騒音を低減して環境に優しい効果的なダスト除去を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施例による廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュールの制御システムについて、図1〜図3及び図9〜図15に基づいて説明する。
〔廃熱ボイラーの伝熱面ブロックとハンマリング装置の構成〕
廃熱ボイラーのボイラー本体内には、多数の伝熱管から構成される複数の伝熱面ブロック(管群)が配置されると共に、それぞれの伝熱面ブロックにはハンマリング装置が組み込まれている。
先ず、本実施例の廃熱ボイラーにおける伝熱面ブロックの基本的な構成について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1は廃熱ボイラーの要部の概略正面図、図2は同じく廃熱ボイラーの要部の概略平面図、図3は同じく廃熱ボイラーの要部の概略側面図である。
【0021】
ボイラー本体25は、中央部のボイラー外殻壁4a〜4eと、上部のボイラー外殻壁5a〜5eと、下部のボイラー外殻壁6a〜6dにより形成される。このボイラー本体25の内部空間には、多数の伝熱管(蛇管型伝熱管)1(1a,1b)が一定間隔で配列され、伝熱面ブロックG(G-A,G-B)を構成している。これらの伝熱管1(1a,1b)の各端部は、上部のボイラー外殻壁5a〜5eの外部で入口管寄せ2又は出口管寄せ3(3a,3b)に接続されている。
上記中央部のボイラー外殻壁4a〜4eで囲まれる中央空間(図3のイ、ロ、ハ、ニで囲まれた空間)には直接排ガスが流れるが、上部のボイラー外殻壁5a〜5eで囲まれる上部空間(図3のイ、ロ、ホ、ヘで囲まれた空間)には直接排ガスは流れない。また、下部のボイラー外殻壁6a〜6dで囲まれる下部空間はホッパーを形成している。
【0022】
上記ボイラー外殻壁5a〜5eで囲まれる上部空間において、多数の伝熱管1(1a,1b)の奇数番目と偶数番目の間には連結軸7(7a,7b)が設けられている。これらの連結軸7(7a,7b)の両側に位置する各伝熱管1(1a,1b)の管部分は、連結金具17(17a,17b)を介して隣接する連結軸7(7a,7b)に溶接によって結合されている(図1及び図2を参照)。
このように両側に伝熱管1(1a,1b)が固定された各連結軸7(7a,7b)は、一対のヒンジ機構27(27a,27b)によって、ボイラー本体25に固定された吊りビーム16(16a,16b)に対して、各連結軸7(7a,7b)の長手方向へ揺動可能に支持されている。上記ヒンジ機構27(27a,27b)は、吊り金具11(11a,11b)、ヒンジ部材12(12a,12b)、ピン13(13a,13b)、吊りロッド14(14a,14b)、及びナット15(15a,15b)から成っている。
このような構成により、一対の伝熱管1(1a,1b)は、それぞれの連結軸7(7a,7b)とヒンジ機構27(27a,27b)を介して、ボイラー本体25に対して支持されている。
【0023】
上記各連結軸7(7a,7b)のボイラー外殻壁5a,5bから突出した部分には、連結軸7(7a,7b)の貫通部をガスシールするべローズ8a,8bが装着されている。また、各連結軸7(7a,7b)の突出部分の先端部には、弾性体(例えば、皿バネ等)9a,9bを介してそれぞれラッピングロッド10a,10bが結合されている。
上記ラッピングロッド10a,10bの外側には、これに対向する位置にエアーノッカー(打撃装置)20a,20bが設けられている。このエアーノッカー20a,20bによりラッピングロッド10a,10bに打撃を加えると、弾性体9a,9bを介して各連結軸7(7a,7b)とこれに結合されている一対の伝熱管1(1a,1b)に振動を加えることができる。このとき、弾性体9a,9bは打撃エネルギーを貯えて、衝撃力を軽減する役割を果たす。
このように、連結軸7、連結金具17、ヒンジ機構27、べローズ8a,8b、弾性体9a,9b、ラッピングロッド10a,10b、及びエアーノッカー20a,20bは、伝熱管1(1a、1b)に振動を加えるハンマリング装置を構成する。
なお、図1及び図3中の符号18及び19は、バッフルプレート及びダスト排出装置である。
【0024】
〔廃熱ボイラー全体の構成〕
次に、本実施例による廃熱ボイラー全体の構成について、図9〜図11を参照しながら説明する。図9は廃熱ボイラーの模式的な正面図、図10は同じく廃熱ボイラーの模式的な平面図、図11は同じく廃熱ボイラーの模式的な側面図である。
廃熱ボイラーの排ガスが流れる内部空間には、ハンマリング装置が組み込まれた伝熱面ブロックGが配置されている。この伝熱面ブロックGは、排ガスの流れ方向に沿ってA系列とB系列の2系列に配置され、各系列にはそれぞれ5個ずつの伝熱面ブロックG1〜G5(A/B)が配置されている。(なお、(A/B)は、A系列とB系列に同様に配置されていることを表す。)
【0025】
上記各伝熱面ブロックG1〜G5(A/B)には、それぞれ多数のハンマリング装置が組み込まれているが、その数は各伝熱面ブロック毎に異なっている。各伝熱面ブロックG1〜G5(A/B)毎のハンマリング装置の集合体をハンマリング装置ブロックB-1〜B-5(A/B)という。
最も上流側の伝熱面ブロックG1(A/B)には、それぞれハンマリング装置14台(n1〜n14)を有するハンマリング装置ブロックB-1(A/B)が、次の伝熱面ブロックG2(A/B)には、それぞれハンマリング装置15台(n15〜n29)を有するハンマリング装置ブロックB-2(A/B)が、3番目の伝熱面ブロックG3(A/B)には、それぞれハンマリング装置16台(n30〜n45)を有するハンマリング装置ブロックB-3(A/B)が、4番目の伝熱面ブロックG4(A/B)には、それぞれハンマリング装置17台(n46〜n62)を有するハンマリング装置ブロックB-4(A/B)が、最も下流側の伝熱面ブロックG5(A/B)には、それぞれハンマリング装置18台(n63〜n80)を有するハンマリング装置ブロックB-5(A/B)が、それぞれ設けられている。(図9及び図10を参照)
【0026】
また、上記各伝熱面ブロックG1〜G5(A/B)におけるガス入口側とガス出口側の上部、中央部、及び下部のガス温度測定点には、それぞれガス温度検知器t1〜t18(a/b)が設けられている。(なお、(a/b)は、A系列とB系列に同様に配置されていることを表す。)
【0027】
〔ハンマリング運転制御装置の構成〕
ハンマリング運転制御装置の構成について、図12及び図13を参照しながら説明する。図12はハンマリング運転制御装置のブロック図、図13はハンマリング運転動作を説明するブロック図である。
ハンマリング運転制御装置30は、図12に示されるように、CPU、RAM、ROM、及びタイマー等を有する制御手段31と、それぞれのハンマリング装置ブロックB-1〜B-5(A/B)の各エアーノッカー20a,20bを駆動する駆動回路32a〜32eを備えている。この制御手段31は、キーボード等の操作部や各伝熱面ブロックのガス温度検知器t1〜t18(a/b)からの入力信号を受けると共に、ボイラー蒸気圧力、ボイラー蒸気温度、ボイラー給水温度、ボイラー蒸発量、ボイラー入口ガス温度、ボイラー出口ガス温度、ボイラー入口/出口ガス圧力、及びガス組成に関する入力信号を受けて各種演算を行い、この演算結果に基づいて、ハンマリング装置ブロックの駆動回路32a〜32eや操作空気圧力設定手段33へ制御信号を出力して、各エアーノッカー20a,20bを適正な(伝熱面ブロックの汚れ抵抗に見合った)打撃回数、打撃時間、及び打撃力で駆動する。
このようにして、各伝熱面ブロックG1〜G5(A/B)の伝熱管1a,1bに付着・堆積したダストは、効果的に除去することができる。
【0028】
上記制御手段31は、図13に示されるように、ボイラーガス流量演算手段35、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗演算手段36a,36b…、及び各ハンマリング装置ブロックの運転スケジュール演算手段37a,37b…を有している。
このボイラーガス流量演算手段35は、ボイラー蒸気圧力、ボイラー蒸気温度、ボイラー給水温度、ボイラー蒸発量、ボイラー入口ガス温度、ボイラー出口ガス温度、ボイラー入口/出口ガス圧力、及びガス組成に関する入力信号を受けて、ガス流量Gcを算出する。各伝熱面ブロックの汚れ抵抗演算手段36a,36b…は、ガス流量Gc、及び各伝熱面ブロックG1(A/B),G2(A/B)…のガス温度に関する入力信号を受けて、それぞれの汚れ抵抗計画値DA,DB…、及び汚れ抵抗計測値Da,Db…を算出する。
【0029】
また、上記各ハンマリング装置ブロックB-1〜B-5(A/B)の運転スケジュール演算手段37a,37b…は、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値DA,DB…、及び汚れ抵抗計測値Da,Db…に関する入力信号を受けて、各伝熱面ブロック毎の汚れ抵抗計画値DA,DB…と汚れ抵抗計測値Da,Db…の偏差を算出し、さらにこの偏差に基づいてハンマリング装置ブロックの順次運転間隔T1、打撃間隔T2、運転時間T3、休止時間T4、及び操作空気圧力Psを算出する。これにより、各ハンマリング装置ブロックの打撃回数R、打撃時間H、及び打撃力Fが設定される。
【0030】
〔ハンマリング装置の運転動作〕
次に、本実施例による廃熱ボイラーのハンマリング運転動作について、図12〜図15を参照しながら説明する。図14はハンマリング装置ブロックの運転スケジュール、図15はハンマリング運転動作のフロー図である。
廃熱ボイラーの運転を開始する前に、各ハンマリング装置ブロックB-1〜B-5(A/B)の運転スケジュールの初期設定を行う。この初期設定は、これまでの経験に基づいてハンマリング装置ブロック毎に、図14に示されるような、ハンマリングの順次運転間隔T1、打撃間隔T2、運転時間T3、及び休止時間T4と共に、操作空気圧力Psを決めることによって、打撃回数R、打撃時間H、及び打撃力Fの設定を行う。
【0031】
廃熱ボイラーの運転を開始して定格負荷運転になれば(ステップS1)、ボイラー蒸発量とボイラー入口/出口ガス温度から、ボイラーガス流量Gcを算出する(ステップS2)。 このガス流量Gcは、次の式により算出することができる。
【数1】
但し、E:時間当りのボイラーの蒸気量(Kg/Hr)
is:発生蒸気のエンタルピー(Kcal/Kg)
iw:給水のエンタルピー(Kcal/Kg)
ig1:ボイラー入口ガスのエンタルピー(Kcal/Nm3)
ig2:ボイラー出口ガスのエンタルピー(Kcal/Nm3)
ηB:ボイラー効率
【0032】
次に、上記算出されたガス流量Gcと各伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度から、各伝熱面ブロックにおける汚れ抵抗の計画値DAと計測値Daを算出する(ステップS3)。
上記汚れ抵抗の計画値DAは、次の式から算出することができる。
【数2】
但し、k:熱貫流率(Kcal/m2h℃)
αo:管外の熱伝達係数(Kcal/m2h℃)
αi:管内の熱伝達係数(Kcal/m2h℃)
λ:管の熱伝導率(Kcal/mh℃)
t:管の厚さ(m)
DA(fr):汚れ抵抗の計画値(m2h℃/Kcal)
【0033】
上記一般式を利用して計測データから運転中の汚れ抵抗の計測値Daを逆算できるが、ここでは詳細な計算方法は省略する。
【0034】
次に、上記汚れ抵抗の計画値DAと計測値Daを比較して(ステップS4)、略同じ値であればハンマリング運転スケジュールの初期設定を変更することなく(ステップS7)、ハンマリング運転を実行する(ステップS9,S10)。
上記ステップS4において、計画値DAと計測値Daが略同じ値でなく、計測値Daが計画値DAより大きい場合には(ステップS5)、各伝熱面ブロック毎の汚れ抵抗計画値DA,DB…と汚れ抵抗計測値Da,Db…の偏差に基づいて、ハンマリングの順次運転間隔T1、打撃間隔T2、運転時間T3、休止時間T4、及び操作空気圧力Psを算出し、ハンマリング装置ブロックの打撃回数R、打撃時間H、又は打撃力Fを初期設定から増加させて(ステップS6)、ハンマリング運転を実行する(ステップS9,S10)。
【0035】
また、上記ステップS5において、計測値Daが計画値DAより大きくない場合(計測値Daが計画値DAより小さい場合)には、上記ステップS6と同様に、各伝熱面ブロック毎の汚れ抵抗計画値DA,DB…と汚れ抵抗計測値Da,Db…の偏差に基づいて、ハンマリングの順次運転間隔T1、打撃間隔T2、運転時間T3、休止時間T4、及び操作空気圧力Psを算出し、ハンマリング装置ブロックの打撃回数R、打撃時間H、又は打撃力Fを初期設定から減少させて(ステップS8)、ハンマリング運転を実行する(ステップS9,S10)。
【0036】
上記ハンマリング運転が終了すると(ステップS10)、ハンマリング運転は休止時間T4の間だけ休止する。このとき、休止時間が終了するか、又は廃熱ボイラーの運転が停止されるまで休止状態で待機する(ステップS11、S12)。ステップS11において休止時間が終了すれば、上記ステップ2に戻りこれ以降の動作を繰り返し実行する。また、上記ステップS12においてボイラーの運転が停止されると、このハンマリング運転動作を終了する(ステップS13)。
【0037】
以上のように、廃熱ボイラーの運転中において、各伝熱面ブロック毎の汚れ抵抗の大きさに対応して、それぞれの伝熱面ブロック毎の打撃回数R、打撃時間H、又は打撃力Fを変更することができるので、無駄な損傷部品を軽減することができ、省力化及び騒音の小さい設備となり、広義に地球、人、環境に配慮したハンマリングシステムとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】は、本発明の実施例における廃熱ボイラーの要部の概略正面図である。
【図2】は、同じく実施例における廃熱ボイラーの要部の概略平面図である。
【図3】は、同じく実施例における廃熱ボイラーの要部の概略側面図である。
【図4】は、廃熱ボイラーの伝熱管において、ハンマリング打撃点からの長さと汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
【図5】は、同じく廃熱ボイラーの伝熱管において、管群の長さと汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
【図6】は、同じく廃熱ボイラーの伝熱管において、ガス温度と汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
【図7】は、同じく廃熱ボイラーの伝熱管において、ガス流れの管群の左右方向での偏流と汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
【図8】は、同じく廃熱ボイラーの伝熱管において、ガス流れの管群の上下方向での偏流と汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
【図9】は、本発明の実施例における廃熱ボイラーの模式的な正面図である。
【図10】は、本発明の実施例における廃熱ボイラーの模式的な平面図である。
【図11】は、同じく実施例における廃熱ボイラーの模式的な側面図である。
【図12】は、同じく実施例による廃熱ボイラーのハンマリング運転制御装置のブロック図である。
【図13】は、同じく実施例による廃熱ボイラーのハンマリング運転動作を説明するブロック図である。
【図14】は、同じく実施例によるハンマリング装置ブロックの運転スケジュールである。
【図15】は、同じく実施例による廃熱ボイラーのハンマリング運転動作のフロー図である。
【図16】は、従来の廃熱ボイラーの概略図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図17】は、同じく従来の廃熱ボイラーの要部拡大図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1,1a,1b…伝熱管(廃熱ボイラーの)
2…入口管寄せ
3a,3b…出口管寄せ 4a〜4e…ボイラー外殻壁(中央部)
5a〜5e…ボイラー外殻壁(上部) 6a〜6d…ボイラー外殻壁(下部)
7,7a,7b…連結軸 8a,8b…ベローズ
9a,9b…弾性体(皿バネ)
10a,10b…ラッピングロッド 11,11a,11b…吊り金具 12,12a,12b…ヒンジ部材 13,13a,13b…ピン 14,14a,14b…吊りロッド 15,15a,15b…ナット 16,16a,16b…吊りビーム 17,17a,17b…連結金具 18…バッフルプレート 19…ダスト排出装置
20a,20b…エアノッカー(打撃装置) 25…ボイラー本体
27,27a,27b…ヒンジ機構
30…制御装置
31…制御手段
32a〜32e…ハンマリング装置ブロックの駆動回路
33…操作空気圧力設定手段
35…ボイラーガス流量演算手段
36a,36b…汚れ抵抗演算手段
37a,37b…ハンマリング運転スケジュール演算手段
B-1〜B-5…ハンマリング装置ブロック
G,G1〜G5…伝熱面ブロック(管群)
n1〜n80…ハンマリング装置の数 t1〜t18…ガス温度検知器
T1…順次運転間隔 T2…打撃間隔
T3…運転時間 T4…休止時間
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱管に付着・堆積したダストを除去するハンマリング装置を備える廃熱ボイラーに関し、さらに詳しくは、廃熱ボイラーの伝熱管に付着・堆積したダストを環境にやさしく、かつ効果的に除去することができるハンマリング運転スケジュールの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマリング装置(ダスト除去装置)を備える廃熱ボイラーは、例えば、特公昭59−28813号公報(廃熱ボイラーのダスト付着防止装置)に記載されているように、セメントプラント用廃熱ボイラー等として既に公知のものである。
上記公知の廃熱ボイラーでは、それに流入する排ガス中に多量のダストが含まれており、このダストの伝熱管への付着が汚れ抵抗(Fouling Resistance)となり、ボイラー性能を著しく低下させていた。この排ガス中のダスト含有量は100〜130gr/Nm3であり、ダスト粒度は5μm以下のものが95%を占めており、このダストの顕微鏡組織は繊維状であるため伝熱管への付着性が強く、かつ熱伝導率が小さいため僅かの厚さ(数mm厚さ)の付着・堆積があった場合でも大きな汚れ抵抗となる。
【0003】
上記特公昭59−28813号公報(特許文献1)に記載されている廃熱ボイラー40は、図16及び図17に示されるように、吊下げ式蛇管型伝熱管41のベンド部下端に当板46を介して配管列ピッチ設定金具47を垂設しており、連結軸42に固定する各突片48の間には、それぞれ前記設定金具47を挿着し固定する。吊下げ伝熱管41のガス流れ方向の配管列ピッチの乱れを防止するために、固定軸51と止め金52が設けられている。
【0004】
上記廃熱ボイラー40において、吊下げ式蛇管型伝熱管41に付着したダストを除去するために、ハンマー(回転式槌打型ハンマー)45の衝突エネルギーを中間軸43を介して連結軸42に伝達すると(図16(b)を参照)、この連結軸42は突片48、配管列ピッチ設定金具47、及び当板46を介して、伝熱管41のベンド部下端に衝撃エネルギーを伝達して該伝熱管41を振動させる。これにより、伝熱管41に付着していたダストが剥離され、ホッパー53に自然落下してコンベア55によって排出される。
このように、廃熱ボイラーでは、流入する排ガス中の微粉ダストが伝熱管の表面に付着・堆積して熱伝達を阻害し、ダストによる汚れ抵抗が増大しボイラー性能を著しく低下させるため、ハンマリング装置を設けることにより伝熱管に付着したダストを除去している。
【0005】
更に、廃熱ボイラーの伝熱面積は、上述のダストの付着による汚れ抵抗を見込んで、例えば、伝熱面がクリーンな状態に対して数倍の伝熱面を有しており、通常のボイラーに比較して伝熱面の余裕度は大きく設定されているため、廃熱ボイラーの設備全体に対して占めるコストの割合は小さくない。
上記のように、廃熱ボイラーが余裕度の大きい伝熱面積を有していても、なおかつ、伝熱面へのダストの付着が進み汚れ抵抗が所定以上に大きくならないよう(ボイラーの性能低下を来たさないよう)、ハンマリング装置を運転して所定の性能を維持する必要がある。
【0006】
【特許文献1】特公昭59−28813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の廃熱ボイラーに設置されているハンマリング装置では、構造上汚れ抵抗を改善するための操作手順に種々限界がある。
例えば、槌打式ハンマーは一本の回転軸に多数設定されているため、各伝熱面に対して一律に打撃が加えられるので、実際にはそれ程汚れていない状態であっても必要以上に打撃力が加えられる箇所があり、一方で、相当汚れている状態であっても必要な打撃力が加えられない箇所もある。このような打撃力のアンバランスは設備全体の寿命、特に、ハンマリング装置の耐久性に悪影響を及ぼしていた。
【0008】
そして、ハンマリング装置の耐久性は、打撃回数や打撃力により大きく影響を受けるので、各伝熱面に対して一律に打撃を加えることは、ハンマリング装置の平均的な寿命を短くするばかりでなく、騒音対策用の防音カバーを必要としたり、打撃時の大きな騒音(約110dB)により近隣の民家に多大な迷惑をかけることにもなる。
また、ハンマリング装置のハンマー部が損傷すると伝熱管に加える打撃力が弱くなり、ボイラー性能が低下する。ボイラー性能が著しく低下する場合には、単位時間当たりの打撃回数を増加することもあるが、あまり効果は期待できず、却ってハンマリング装置の損傷を増長することになる。
【0009】
ここで、伝熱管に付着・堆積したダストにより伝熱面の汚れ抵抗が大きくなる各種要因ついて、図4〜図8を参照しながら説明する。図4〜図8は、それぞれの要因と汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
(1) ハンマリング打撃点からの伝熱管の長さと汚れ抵抗との関係
廃熱ボイラーの伝熱管におけるハンマリング打撃点からの伝熱管の長さLと汚れ抵抗fr1との関係は、図4に示されるように、ハンマリング打撃点からの伝熱管の長さLに反比例して汚れ抵抗fr1が小さくなる。このような現象は、衝撃波の振幅の減少により生じるものである。
【0010】
(2) 管群の長さと汚れ抵抗との関係
廃熱ボイラーにおける管群の長さLgと汚れ抵抗fr2との関係は、図5に示されるように、管群の長さLgに反比例して汚れ抵抗fr2が小さくなる。このような現象は、ボイラーの入口から出口に到るダスト濃度の減少により生じるものである。
(3) ガス温度と汚れ抵抗との関係
廃熱ボイラーに流入するガス温度tgと汚れ抵抗fr3との関係は、図6に示されるように、流入するガス温度tgがtg1からtg2に下がるとこれに比例して汚れ抵抗fr3も小さくなる。このような現象は、ダスト粒子の結合力の減少により生じるものである。
【0011】
(4) ガス流れの管群での左右方向の偏流と汚れ抵抗との関係
廃熱ボイラーにおけるガス流れの管群での左右方向の偏流と汚れ抵抗fr4との関係は、図7において実線矢印又は点線矢印で示されるように、ボイラー入口/出口ダクトの形状及び管群のダスト付着状態により生じるものである。
(5) ガス流れの管群での上下方向の偏流と汚れ抵抗との関係
廃熱ボイラーにおけるガス流れの管群での上下方向の偏流と汚れ抵抗fr5との関係は、図8において実線矢印及び点線矢印で示されるように、ボイラー入口/出口ダクトの形状及び管群のダスト付着状態により生じるものである。
【0012】
上記のような各種要因によって大きくなる汚れ抵抗を各伝熱面ブロック(各管群)毎に数値的に把握して、これに応じてハンマリング装置の運転制御を行うことが可能になれば、それぞれの伝熱面ブロックの汚れ抵抗の大きさ(ダストの付着・堆積厚さ)に応じて、必要とする打撃力を加えることができる。
そこで、本発明の課題は、上記従来の問題点を解決するために、廃熱ボイラーの各伝熱面ブロックの汚れ抵抗の大きさに応じて、各伝熱面ブロックの伝熱管に打撃を加えることができるように、ハンマリング装置の運転について工夫することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る廃熱ボイラーは、伝熱面ブロックの汚れ抵抗の大きさに応じて、伝熱面ブロックに対して必要とする適正な打撃エネルギーを加えることによって、ハンマリング装置の耐久性を損なうことなく、環境に優しい効果的なダスト除去を行うことを意図したものである。
【0014】
以下に、上記課題を解決するために講じた手段を作用と共に説明する。
(1) 本発明に係る廃熱ボイラー(請求項1に対応)は、多数の伝熱管を配列した伝熱面ブロックと、この伝熱面ブロックの各伝熱管に振動を加えて付着したダストを除去するハンマリング装置と、このハンマリング装置の運転を制御するハンマリング運転制御装置とを備える廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システムを前提として、次の(イ)〜(ニ)から成るものである。
(イ) ボイラー蒸発量とボイラー入口/出口ガス温度に基づいて、ガス流量を算出するガス流量演算手段と、
(ロ) 上記ガス流量と上記伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度に基づいて、該伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出する汚れ抵抗演算手段と、
(ハ) 上記伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、上記ハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力の少なくとも1つを変更するハンマリング運転スケジュール演算手段とを備えて成り、
(ニ) 上記伝熱面ブロックに対して、その汚れ度合に応じて適正な打撃を加えること。
【0015】
上記のような構成にすることにより、ガス流量と、伝熱面ブロックのガス入口側とガス出口側のガス温度に基づいて、該伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出することができ、この汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を比較することによって、伝熱面ブロックの汚れ度合を認識することができる。
そして、この伝熱面ブロックの汚れ度合に応じて、ハンマリング装置により伝熱面ブロックに加える打撃回数、打撃時間、又は打撃力を変更することができるので、伝熱面ブロックに対してその汚れ度合に応じて必要とする適正な打撃エネルギーを加えることができる。
【0016】
(2) 上記(1)における廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システムにおいて、伝熱面ブロックが複数設けられ、各伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度に基づいて、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出し、各伝熱面ブロックに対してそれぞれの汚れ度合に応じて適正な打撃を加えることができる。(請求項2に対応)
このような構成によれば、周囲の伝熱面ブロックのガス入口側とガス出口側のガス温度による影響を考慮しながら、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出することができるので、より正確な汚れ抵抗計測値を算出することが可能であり、汚れ度合に応じて適正な打撃を加えることができる。
【0017】
(3) 上記(2)における廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システムにおいて、複数の伝熱面ブロックそれぞれの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、各伝熱面ブロックにおけるハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力の少なくとも1つを変更することができる。(請求項3に対応)
このような構成によれば、周囲の伝熱面ブロックの汚れ度合による影響を考慮しながら、各伝熱面ブロックにおけるハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力を変更することができるので、より適正な打撃エネルギーを各伝熱面ブロックに与えることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果を整理すると次ぎのとおりである。
伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、該伝熱面ブロックの汚れ度合を認識することができ、この汚れ度合に応じて該伝熱面ブロックに加えるハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力を変更することができるので、ハンマリング装置は、伝熱面ブロックに対してその汚れ度合に応じて必要とする適正な打撃エネルギーを加えることができる。
その結果、ハンマリング装置の耐久性を損なうことなく、装置全体の損傷を最小限にすることが可能であり、騒音を低減して環境に優しい効果的なダスト除去を行うことができる。
【0019】
また、複数の伝熱面ブロックが配置される場合でも、周囲の伝熱面ブロックのガス入口側とガス出口側のガス温度による影響を考慮しながら、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出することが可能であり、さらに、周囲の伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値による影響を考慮しながら、各伝熱面ブロックにおけるハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力を変更することができるので、各伝熱面ブロックに対してより適正な打撃エネルギーを与えることが可能である。
その結果、複数の伝熱面ブロックおいて、ハンマリング装置の耐久性を損なうことなく、装置全体の損傷を最小限にすることが可能であり、騒音を低減して環境に優しい効果的なダスト除去を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施例による廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュールの制御システムについて、図1〜図3及び図9〜図15に基づいて説明する。
〔廃熱ボイラーの伝熱面ブロックとハンマリング装置の構成〕
廃熱ボイラーのボイラー本体内には、多数の伝熱管から構成される複数の伝熱面ブロック(管群)が配置されると共に、それぞれの伝熱面ブロックにはハンマリング装置が組み込まれている。
先ず、本実施例の廃熱ボイラーにおける伝熱面ブロックの基本的な構成について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1は廃熱ボイラーの要部の概略正面図、図2は同じく廃熱ボイラーの要部の概略平面図、図3は同じく廃熱ボイラーの要部の概略側面図である。
【0021】
ボイラー本体25は、中央部のボイラー外殻壁4a〜4eと、上部のボイラー外殻壁5a〜5eと、下部のボイラー外殻壁6a〜6dにより形成される。このボイラー本体25の内部空間には、多数の伝熱管(蛇管型伝熱管)1(1a,1b)が一定間隔で配列され、伝熱面ブロックG(G-A,G-B)を構成している。これらの伝熱管1(1a,1b)の各端部は、上部のボイラー外殻壁5a〜5eの外部で入口管寄せ2又は出口管寄せ3(3a,3b)に接続されている。
上記中央部のボイラー外殻壁4a〜4eで囲まれる中央空間(図3のイ、ロ、ハ、ニで囲まれた空間)には直接排ガスが流れるが、上部のボイラー外殻壁5a〜5eで囲まれる上部空間(図3のイ、ロ、ホ、ヘで囲まれた空間)には直接排ガスは流れない。また、下部のボイラー外殻壁6a〜6dで囲まれる下部空間はホッパーを形成している。
【0022】
上記ボイラー外殻壁5a〜5eで囲まれる上部空間において、多数の伝熱管1(1a,1b)の奇数番目と偶数番目の間には連結軸7(7a,7b)が設けられている。これらの連結軸7(7a,7b)の両側に位置する各伝熱管1(1a,1b)の管部分は、連結金具17(17a,17b)を介して隣接する連結軸7(7a,7b)に溶接によって結合されている(図1及び図2を参照)。
このように両側に伝熱管1(1a,1b)が固定された各連結軸7(7a,7b)は、一対のヒンジ機構27(27a,27b)によって、ボイラー本体25に固定された吊りビーム16(16a,16b)に対して、各連結軸7(7a,7b)の長手方向へ揺動可能に支持されている。上記ヒンジ機構27(27a,27b)は、吊り金具11(11a,11b)、ヒンジ部材12(12a,12b)、ピン13(13a,13b)、吊りロッド14(14a,14b)、及びナット15(15a,15b)から成っている。
このような構成により、一対の伝熱管1(1a,1b)は、それぞれの連結軸7(7a,7b)とヒンジ機構27(27a,27b)を介して、ボイラー本体25に対して支持されている。
【0023】
上記各連結軸7(7a,7b)のボイラー外殻壁5a,5bから突出した部分には、連結軸7(7a,7b)の貫通部をガスシールするべローズ8a,8bが装着されている。また、各連結軸7(7a,7b)の突出部分の先端部には、弾性体(例えば、皿バネ等)9a,9bを介してそれぞれラッピングロッド10a,10bが結合されている。
上記ラッピングロッド10a,10bの外側には、これに対向する位置にエアーノッカー(打撃装置)20a,20bが設けられている。このエアーノッカー20a,20bによりラッピングロッド10a,10bに打撃を加えると、弾性体9a,9bを介して各連結軸7(7a,7b)とこれに結合されている一対の伝熱管1(1a,1b)に振動を加えることができる。このとき、弾性体9a,9bは打撃エネルギーを貯えて、衝撃力を軽減する役割を果たす。
このように、連結軸7、連結金具17、ヒンジ機構27、べローズ8a,8b、弾性体9a,9b、ラッピングロッド10a,10b、及びエアーノッカー20a,20bは、伝熱管1(1a、1b)に振動を加えるハンマリング装置を構成する。
なお、図1及び図3中の符号18及び19は、バッフルプレート及びダスト排出装置である。
【0024】
〔廃熱ボイラー全体の構成〕
次に、本実施例による廃熱ボイラー全体の構成について、図9〜図11を参照しながら説明する。図9は廃熱ボイラーの模式的な正面図、図10は同じく廃熱ボイラーの模式的な平面図、図11は同じく廃熱ボイラーの模式的な側面図である。
廃熱ボイラーの排ガスが流れる内部空間には、ハンマリング装置が組み込まれた伝熱面ブロックGが配置されている。この伝熱面ブロックGは、排ガスの流れ方向に沿ってA系列とB系列の2系列に配置され、各系列にはそれぞれ5個ずつの伝熱面ブロックG1〜G5(A/B)が配置されている。(なお、(A/B)は、A系列とB系列に同様に配置されていることを表す。)
【0025】
上記各伝熱面ブロックG1〜G5(A/B)には、それぞれ多数のハンマリング装置が組み込まれているが、その数は各伝熱面ブロック毎に異なっている。各伝熱面ブロックG1〜G5(A/B)毎のハンマリング装置の集合体をハンマリング装置ブロックB-1〜B-5(A/B)という。
最も上流側の伝熱面ブロックG1(A/B)には、それぞれハンマリング装置14台(n1〜n14)を有するハンマリング装置ブロックB-1(A/B)が、次の伝熱面ブロックG2(A/B)には、それぞれハンマリング装置15台(n15〜n29)を有するハンマリング装置ブロックB-2(A/B)が、3番目の伝熱面ブロックG3(A/B)には、それぞれハンマリング装置16台(n30〜n45)を有するハンマリング装置ブロックB-3(A/B)が、4番目の伝熱面ブロックG4(A/B)には、それぞれハンマリング装置17台(n46〜n62)を有するハンマリング装置ブロックB-4(A/B)が、最も下流側の伝熱面ブロックG5(A/B)には、それぞれハンマリング装置18台(n63〜n80)を有するハンマリング装置ブロックB-5(A/B)が、それぞれ設けられている。(図9及び図10を参照)
【0026】
また、上記各伝熱面ブロックG1〜G5(A/B)におけるガス入口側とガス出口側の上部、中央部、及び下部のガス温度測定点には、それぞれガス温度検知器t1〜t18(a/b)が設けられている。(なお、(a/b)は、A系列とB系列に同様に配置されていることを表す。)
【0027】
〔ハンマリング運転制御装置の構成〕
ハンマリング運転制御装置の構成について、図12及び図13を参照しながら説明する。図12はハンマリング運転制御装置のブロック図、図13はハンマリング運転動作を説明するブロック図である。
ハンマリング運転制御装置30は、図12に示されるように、CPU、RAM、ROM、及びタイマー等を有する制御手段31と、それぞれのハンマリング装置ブロックB-1〜B-5(A/B)の各エアーノッカー20a,20bを駆動する駆動回路32a〜32eを備えている。この制御手段31は、キーボード等の操作部や各伝熱面ブロックのガス温度検知器t1〜t18(a/b)からの入力信号を受けると共に、ボイラー蒸気圧力、ボイラー蒸気温度、ボイラー給水温度、ボイラー蒸発量、ボイラー入口ガス温度、ボイラー出口ガス温度、ボイラー入口/出口ガス圧力、及びガス組成に関する入力信号を受けて各種演算を行い、この演算結果に基づいて、ハンマリング装置ブロックの駆動回路32a〜32eや操作空気圧力設定手段33へ制御信号を出力して、各エアーノッカー20a,20bを適正な(伝熱面ブロックの汚れ抵抗に見合った)打撃回数、打撃時間、及び打撃力で駆動する。
このようにして、各伝熱面ブロックG1〜G5(A/B)の伝熱管1a,1bに付着・堆積したダストは、効果的に除去することができる。
【0028】
上記制御手段31は、図13に示されるように、ボイラーガス流量演算手段35、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗演算手段36a,36b…、及び各ハンマリング装置ブロックの運転スケジュール演算手段37a,37b…を有している。
このボイラーガス流量演算手段35は、ボイラー蒸気圧力、ボイラー蒸気温度、ボイラー給水温度、ボイラー蒸発量、ボイラー入口ガス温度、ボイラー出口ガス温度、ボイラー入口/出口ガス圧力、及びガス組成に関する入力信号を受けて、ガス流量Gcを算出する。各伝熱面ブロックの汚れ抵抗演算手段36a,36b…は、ガス流量Gc、及び各伝熱面ブロックG1(A/B),G2(A/B)…のガス温度に関する入力信号を受けて、それぞれの汚れ抵抗計画値DA,DB…、及び汚れ抵抗計測値Da,Db…を算出する。
【0029】
また、上記各ハンマリング装置ブロックB-1〜B-5(A/B)の運転スケジュール演算手段37a,37b…は、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値DA,DB…、及び汚れ抵抗計測値Da,Db…に関する入力信号を受けて、各伝熱面ブロック毎の汚れ抵抗計画値DA,DB…と汚れ抵抗計測値Da,Db…の偏差を算出し、さらにこの偏差に基づいてハンマリング装置ブロックの順次運転間隔T1、打撃間隔T2、運転時間T3、休止時間T4、及び操作空気圧力Psを算出する。これにより、各ハンマリング装置ブロックの打撃回数R、打撃時間H、及び打撃力Fが設定される。
【0030】
〔ハンマリング装置の運転動作〕
次に、本実施例による廃熱ボイラーのハンマリング運転動作について、図12〜図15を参照しながら説明する。図14はハンマリング装置ブロックの運転スケジュール、図15はハンマリング運転動作のフロー図である。
廃熱ボイラーの運転を開始する前に、各ハンマリング装置ブロックB-1〜B-5(A/B)の運転スケジュールの初期設定を行う。この初期設定は、これまでの経験に基づいてハンマリング装置ブロック毎に、図14に示されるような、ハンマリングの順次運転間隔T1、打撃間隔T2、運転時間T3、及び休止時間T4と共に、操作空気圧力Psを決めることによって、打撃回数R、打撃時間H、及び打撃力Fの設定を行う。
【0031】
廃熱ボイラーの運転を開始して定格負荷運転になれば(ステップS1)、ボイラー蒸発量とボイラー入口/出口ガス温度から、ボイラーガス流量Gcを算出する(ステップS2)。 このガス流量Gcは、次の式により算出することができる。
【数1】
但し、E:時間当りのボイラーの蒸気量(Kg/Hr)
is:発生蒸気のエンタルピー(Kcal/Kg)
iw:給水のエンタルピー(Kcal/Kg)
ig1:ボイラー入口ガスのエンタルピー(Kcal/Nm3)
ig2:ボイラー出口ガスのエンタルピー(Kcal/Nm3)
ηB:ボイラー効率
【0032】
次に、上記算出されたガス流量Gcと各伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度から、各伝熱面ブロックにおける汚れ抵抗の計画値DAと計測値Daを算出する(ステップS3)。
上記汚れ抵抗の計画値DAは、次の式から算出することができる。
【数2】
但し、k:熱貫流率(Kcal/m2h℃)
αo:管外の熱伝達係数(Kcal/m2h℃)
αi:管内の熱伝達係数(Kcal/m2h℃)
λ:管の熱伝導率(Kcal/mh℃)
t:管の厚さ(m)
DA(fr):汚れ抵抗の計画値(m2h℃/Kcal)
【0033】
上記一般式を利用して計測データから運転中の汚れ抵抗の計測値Daを逆算できるが、ここでは詳細な計算方法は省略する。
【0034】
次に、上記汚れ抵抗の計画値DAと計測値Daを比較して(ステップS4)、略同じ値であればハンマリング運転スケジュールの初期設定を変更することなく(ステップS7)、ハンマリング運転を実行する(ステップS9,S10)。
上記ステップS4において、計画値DAと計測値Daが略同じ値でなく、計測値Daが計画値DAより大きい場合には(ステップS5)、各伝熱面ブロック毎の汚れ抵抗計画値DA,DB…と汚れ抵抗計測値Da,Db…の偏差に基づいて、ハンマリングの順次運転間隔T1、打撃間隔T2、運転時間T3、休止時間T4、及び操作空気圧力Psを算出し、ハンマリング装置ブロックの打撃回数R、打撃時間H、又は打撃力Fを初期設定から増加させて(ステップS6)、ハンマリング運転を実行する(ステップS9,S10)。
【0035】
また、上記ステップS5において、計測値Daが計画値DAより大きくない場合(計測値Daが計画値DAより小さい場合)には、上記ステップS6と同様に、各伝熱面ブロック毎の汚れ抵抗計画値DA,DB…と汚れ抵抗計測値Da,Db…の偏差に基づいて、ハンマリングの順次運転間隔T1、打撃間隔T2、運転時間T3、休止時間T4、及び操作空気圧力Psを算出し、ハンマリング装置ブロックの打撃回数R、打撃時間H、又は打撃力Fを初期設定から減少させて(ステップS8)、ハンマリング運転を実行する(ステップS9,S10)。
【0036】
上記ハンマリング運転が終了すると(ステップS10)、ハンマリング運転は休止時間T4の間だけ休止する。このとき、休止時間が終了するか、又は廃熱ボイラーの運転が停止されるまで休止状態で待機する(ステップS11、S12)。ステップS11において休止時間が終了すれば、上記ステップ2に戻りこれ以降の動作を繰り返し実行する。また、上記ステップS12においてボイラーの運転が停止されると、このハンマリング運転動作を終了する(ステップS13)。
【0037】
以上のように、廃熱ボイラーの運転中において、各伝熱面ブロック毎の汚れ抵抗の大きさに対応して、それぞれの伝熱面ブロック毎の打撃回数R、打撃時間H、又は打撃力Fを変更することができるので、無駄な損傷部品を軽減することができ、省力化及び騒音の小さい設備となり、広義に地球、人、環境に配慮したハンマリングシステムとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】は、本発明の実施例における廃熱ボイラーの要部の概略正面図である。
【図2】は、同じく実施例における廃熱ボイラーの要部の概略平面図である。
【図3】は、同じく実施例における廃熱ボイラーの要部の概略側面図である。
【図4】は、廃熱ボイラーの伝熱管において、ハンマリング打撃点からの長さと汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
【図5】は、同じく廃熱ボイラーの伝熱管において、管群の長さと汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
【図6】は、同じく廃熱ボイラーの伝熱管において、ガス温度と汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
【図7】は、同じく廃熱ボイラーの伝熱管において、ガス流れの管群の左右方向での偏流と汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
【図8】は、同じく廃熱ボイラーの伝熱管において、ガス流れの管群の上下方向での偏流と汚れ抵抗との関係を図式化したものである。
【図9】は、本発明の実施例における廃熱ボイラーの模式的な正面図である。
【図10】は、本発明の実施例における廃熱ボイラーの模式的な平面図である。
【図11】は、同じく実施例における廃熱ボイラーの模式的な側面図である。
【図12】は、同じく実施例による廃熱ボイラーのハンマリング運転制御装置のブロック図である。
【図13】は、同じく実施例による廃熱ボイラーのハンマリング運転動作を説明するブロック図である。
【図14】は、同じく実施例によるハンマリング装置ブロックの運転スケジュールである。
【図15】は、同じく実施例による廃熱ボイラーのハンマリング運転動作のフロー図である。
【図16】は、従来の廃熱ボイラーの概略図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図17】は、同じく従来の廃熱ボイラーの要部拡大図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1,1a,1b…伝熱管(廃熱ボイラーの)
2…入口管寄せ
3a,3b…出口管寄せ 4a〜4e…ボイラー外殻壁(中央部)
5a〜5e…ボイラー外殻壁(上部) 6a〜6d…ボイラー外殻壁(下部)
7,7a,7b…連結軸 8a,8b…ベローズ
9a,9b…弾性体(皿バネ)
10a,10b…ラッピングロッド 11,11a,11b…吊り金具 12,12a,12b…ヒンジ部材 13,13a,13b…ピン 14,14a,14b…吊りロッド 15,15a,15b…ナット 16,16a,16b…吊りビーム 17,17a,17b…連結金具 18…バッフルプレート 19…ダスト排出装置
20a,20b…エアノッカー(打撃装置) 25…ボイラー本体
27,27a,27b…ヒンジ機構
30…制御装置
31…制御手段
32a〜32e…ハンマリング装置ブロックの駆動回路
33…操作空気圧力設定手段
35…ボイラーガス流量演算手段
36a,36b…汚れ抵抗演算手段
37a,37b…ハンマリング運転スケジュール演算手段
B-1〜B-5…ハンマリング装置ブロック
G,G1〜G5…伝熱面ブロック(管群)
n1〜n80…ハンマリング装置の数 t1〜t18…ガス温度検知器
T1…順次運転間隔 T2…打撃間隔
T3…運転時間 T4…休止時間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の伝熱管を配列した伝熱面ブロックと、この伝熱面ブロックの各伝熱管に振動を加えて付着したダストを除去するハンマリング装置と、このハンマリング装置の運転を制御するハンマリング運転制御装置とを備える廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システムにおいて、
ボイラー蒸発量とボイラー入口/出口ガス温度に基づいて、ガス流量を算出するガス流量演算手段と、
上記ガス流量と上記伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度に基づいて、該伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出する汚れ抵抗演算手段と、
上記伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、上記ハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力の少なくとも1つを変更するハンマリング運転スケジュール演算手段とを備えて成り、
上記伝熱面ブロックに対して、その汚れ度合に応じて適正な打撃を加えることを特徴とする廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システム。
【請求項2】
上記伝熱面ブロックが複数設けられ、各伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度に基づいて、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出し、各伝熱面ブロックに対してそれぞれの汚れ度合に応じて適正な打撃を加えることを特徴とする請求項1に記載の廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システム。
【請求項3】
上記複数の伝熱面ブロックそれぞれの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、各伝熱面ブロックにおけるハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力の少なくとも1つを変更することを特徴とする請求項2に記載の廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システム。
【請求項1】
多数の伝熱管を配列した伝熱面ブロックと、この伝熱面ブロックの各伝熱管に振動を加えて付着したダストを除去するハンマリング装置と、このハンマリング装置の運転を制御するハンマリング運転制御装置とを備える廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システムにおいて、
ボイラー蒸発量とボイラー入口/出口ガス温度に基づいて、ガス流量を算出するガス流量演算手段と、
上記ガス流量と上記伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度に基づいて、該伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出する汚れ抵抗演算手段と、
上記伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、上記ハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力の少なくとも1つを変更するハンマリング運転スケジュール演算手段とを備えて成り、
上記伝熱面ブロックに対して、その汚れ度合に応じて適正な打撃を加えることを特徴とする廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システム。
【請求項2】
上記伝熱面ブロックが複数設けられ、各伝熱面ブロックの入口/出口ガス温度に基づいて、各伝熱面ブロックの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値を算出し、各伝熱面ブロックに対してそれぞれの汚れ度合に応じて適正な打撃を加えることを特徴とする請求項1に記載の廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システム。
【請求項3】
上記複数の伝熱面ブロックそれぞれの汚れ抵抗計画値と汚れ抵抗計測値に基づいて、各伝熱面ブロックにおけるハンマリング装置の打撃回数、打撃時間、又は打撃力の少なくとも1つを変更することを特徴とする請求項2に記載の廃熱ボイラーのハンマリング運転スケジュール制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−139186(P2010−139186A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316998(P2008−316998)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]