説明

廃熱利用装置を備える冷凍装置

【課題】冷凍サイクルとランキンサイクルとで凝縮器を共用するものにおいて、冷媒あるいは潤滑オイルの偏りを防止して、充分な性能発揮、および信頼性向上の可能となる排熱利用装置を備える冷凍装置を提供する。
【解決手段】冷凍サイクル200と、この冷凍サイクル200内の凝縮器220が共用されるランキンサイクル300とを有する廃熱利用装置を備える冷凍装置において、冷凍サイクル200およびランキンサイクル300のうち、一方のサイクル200、300のみを運転する際に、他方のサイクル300、200内の冷媒が流動可能となるように制御する流動制御手段340、341、350、351、500を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱機器の廃熱を利用して動力を回収する廃熱利用装置を備える冷凍装置に関するものであり、例えば内燃機関を搭載する車両用に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の冷凍装置として、例えば特許文献1に示されるものが知られている。即ち、この冷凍装置は、発熱機器としての内燃機関の冷却廃熱を利用するランキンサイクルと冷凍サイクルとを有している。冷凍サイクル内には冷媒を圧縮吐出する圧縮機が、また、ランキンサイクルには冷却廃熱によって加熱された冷媒の膨張によって作動される膨張機がそれぞれ独立して配設されると共に、冷凍サイクル内の凝縮器(放熱器)は、ランキンサイクル用の凝縮器と共用されて構成されている。
【0003】
この冷凍装置においては、冷房の必要性と、冷却廃熱の回収可否に応じて、冷凍サイクル、ランキンサイクルの独立運転、あるいは冷凍サイクルとランキンサイクルとの併用運転を可能としている。
【特許文献1】特開2005−307951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記冷凍装置においては、両サイクル間で凝縮器を共用しているために、一方のサイクルだけを運転している場合に、他方のサイクル内に冷媒、あるいは冷媒中に含有された各種機器用の潤滑オイルが溜まり込んでしまうことがあり、運転中のサイクルの基本性能低下を招いたり、各種機器の潤滑不足に陥るという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、冷凍サイクルとランキンサイクルとで凝縮器を共用するものにおいて、冷媒あるいは潤滑オイルの偏りを防止して、充分な性能発揮、および信頼性向上の可能となる排熱利用装置を備える冷凍装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、圧縮機(210)、凝縮器(220)、膨張弁(240)、蒸発器(250)が順次環状に接続されて形成される冷凍サイクル(200)と、上記の凝縮器(220)が共用されて、この凝縮器(220)、ポンプ(330)、発熱機器(10)の廃熱を加熱源とする加熱器(310)、膨張機(320)が順次環状に接続されて形成されるランキンサイクル(300)とを有する廃熱利用装置を備える冷凍装置において、冷凍サイクル(200)およびランキンサイクル(300)のうち、一方のサイクル(200、300)のみを運転する際に、他方のサイクル(300、200)内の冷媒が流動可能となるように制御する流動制御手段(340、341、350、351、500)を設けたことを特徴としている。
【0008】
これにより、停止中の他方のサイクル(300、200)内の冷媒を強制的に流動させて、運転中の一方のサイクル(200、300)側に流出させることができるので、凝縮器(220)を共用するものにおいて、冷媒あるいは冷媒中の潤滑オイルが停止中の他方のサイクル(300、200)内に溜まるのを防止して、運転中の一方のサイクル(200、300)側での充分な性能発揮、および信頼性向上が可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、一方のサイクル(200、300)は、冷凍サイクル(200)であり、他方のサイクル(300、200)は、ランキンサイクル(300)であり、流動制御手段(340、341、350、351、500)は、膨張機(320)をバイパス可能とする膨張機バイパス手段(340、341)と、ポンプ(330)をバイパス可能とするポンプバイパス手段(350、351)と、膨張機バイパス手段(340、341)、およびポンプバイパス手段(350、351)をバイパス状態に制御する制御装置(500)とから成ることを特徴としている。
【0010】
これにより、冷凍サイクル(200)の運転中に、停止中のランキンサイクル(300)にも冷媒を流すことができるので、ランキンサイクル(300)内に冷媒あるいは冷媒中の潤滑オイルが溜まるのを防止することができる。
【0011】
上記請求項2に記載の発明において、請求項3に記載の発明のように、膨張機バイパス手段(340、341)として、膨張機(320)をバイパスする膨張機バイパス流路(340)と、膨張機バイパス流路(340)を開閉する膨張機開閉弁(341)とから構成し、ポンプバイパス手段(350、351)として、ポンプ(330)をバイパスするポンプバイパス流路(350)と、ポンプバイパス流路(350)を開閉するポンプ開閉弁(351)とから構成して、制御装置(500)は、膨張機開閉弁(341)と、ポンプ開閉弁(351)とを開状態に制御するものとすることで具体的な対応が可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、制御装置(500)は、加熱器(310)における発熱機器(10)の廃熱温度が、凝縮器(220)における外気温度よりも低い場合に、膨張機開閉弁(341)、およびポンプ開閉弁(351)を開く、あるいは、膨張機開閉弁(341)、およびポンプ開閉弁(351)のうち、いずれか一方(341)を開状態に固定すると共に、加熱器(310)における発熱機器(10)の廃熱温度が、凝縮器(220)における外気温度よりも低い場合に、他方(351)を開くことを特徴としている。
【0013】
これにより、加熱器(310)側に冷媒あるいは冷媒中の潤滑オイルが溜まりやすい条件下において、確実にその溜まりを防止することができる。また、膨張機開閉弁(341)、およびポンプ開閉弁(351)のうち、いずれか一方(341)を開状態に固定すれば、残る他方(351)のみを廃熱温度、外気温度に応じて制御すればよくなるので、制御自体を簡素化することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、制御装置(500)は、加熱器(310)における発熱機器(10)の廃熱温度が、凝縮器(220)における冷媒温度よりも低い場合に、膨張機開閉弁(341)、およびポンプ開閉弁(351)を開く、あるいは、膨張機開閉弁(341)、およびポンプ開閉弁(351)のうち、いずれか一方(341)を開状態に固定すると共に、加熱器(310)における発熱機器(10)の廃熱温度が、凝縮器(220)における冷媒温度よりも低い場合に、他方(351)を開くことを特徴としている。
【0015】
これにより、上記請求項4と同様に、加熱器(310)側に冷媒あるいは冷媒中の潤滑オイルが溜まりやすい条件下において、確実にその溜まりを防止することができる。また、両開閉弁(341、351)のうち、いずれか一方(341)を開状態に固定すれば、制御自体を簡素化することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、制御装置(500)は、冷媒温度を凝縮器(220)における冷媒圧力から算出することを特徴としている。
【0017】
これにより、冷媒温度を直接検出することなく、冷媒圧力から容易に冷媒温度を把握することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、制御装置(500)は、凝縮器(220)における冷媒圧力として所定期間の平均値を用いることを特徴としている。
【0019】
これにより、変動要因を取り除いた安定した冷媒圧力値として把握することができるので、安定した制御が可能となる。
【0020】
請求項8に記載の発明では、制御装置(500)は、加熱器(310)における冷媒圧力が、所定圧力よりも高い場合に、膨張機開閉弁(341)、およびポンプ開閉弁(351)を開く、あるいは、膨張機開閉弁(341)、およびポンプ開閉弁(351)のうち、いずれか一方(341)を開状態に固定すると共に、加熱器(310)における冷媒圧力が、所定圧力よりも高い場合に、他方(351)を開くことを特徴としている。
【0021】
これにより、ランキンサイクル(300)内の冷媒圧力が異常等によって上昇した時に、冷媒を冷凍サイクル(200)側に逃がすことができるので、ランキンサイクル(300)の保護が可能となる。また、両開閉弁(341、351)のうち、いずれか一方(341)を開状態に固定すれば、制御自体を簡素化することができる。
【0022】
請求項9に記載の発明では、膨張機開閉弁(341)、およびポンプ開閉弁(351)の開閉作動特性に、ヒステリシスを持たせたことを特徴としている。
【0023】
これにより、両開閉弁(341、351)の開閉判定値近傍での温度や圧力が微小変動して、両開閉弁(341、351)の開状態、あるいは閉状態がハンチングするのを防止することができるので、安定した制御が可能となる。
【0024】
請求項10に記載の発明では、膨張機開閉弁(341)、およびポンプ開閉弁(351)は、一体的に形成されたことを特徴としている。
【0025】
これにより、冷凍装置(100)としての構成をシンプルにすることができる。
【0026】
請求項11に記載の発明では、膨張機バイパス流路(340)、あるいはポンプバイパス流路(350)のいずれか一方には、この一方の流路(350)を絞る絞り部(352)が設けられたことを特徴としている。
【0027】
これにより、冷凍サイクル(200)からランキンサイクル(300)に流れる冷媒流量が、所定流量となるように調節することができる。
【0028】
請求項12に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、一方のサイクル(200、300)は、ランキンサイクル(300)であり、他方のサイクル(300、200)は、冷凍サイクル(200)であり、流動制御手段(340、341、350、351、500)は、圧縮機(210)を所定タイミングでON−OFFさせる制御装置(500)としたことを特徴としている。
【0029】
これにより、ランキンサイクル(300)の運転中に、停止中の冷凍サイクル(200)内の冷媒を流動状態にして、ランキンサイクル(300)側に流すことができるので、冷凍サイクル(200)内に冷媒あるいは冷媒中の潤滑オイルが溜まるのを防止することができる。
【0030】
上記請求項12に記載の発明において、所定タイミングは、請求項13に記載の発明のように、ランキンサイクル(300)を起動する直前のタイミングとしたり、請求項14に記載の発明のように、ランキンサイクル(300)を起動した後に所定時間間隔で繰返されるタイミングとすることができる。
【0031】
また、上記請求項12〜請求項14に記載の発明においては、請求項15に記載の発明のように、圧縮機(210)をON−OFFさせるときのON時間は、100秒以下とするのが良い。即ち、圧縮機(210)のON時間が長い場合、空調性能に影響を及ぼす可能性があり、また圧縮機(210)の駆動動力により、冷凍装置(100)全体のエネルギー効率(燃費)に悪影響を及ぼすので、100秒といった上限値を設けて、それ以下の時間で作動させるのが良い。通常、数秒〜数十秒間圧縮機(210)を駆動すれば、冷媒および潤滑オイルを確実に回収できる。
【0032】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1〜図5に示し、まず、具体的な構成について説明する。本発明の廃熱利用装置を備える冷凍装置(以下、冷凍装置)100は、エンジン10を駆動源とする車両に適用されるものとしている。冷凍装置100には冷凍サイクル200およびランキンサイクル300が設けられており、各サイクル200、300の作動が制御装置500によって制御されるようになっている。
【0034】
図1に示すように、エンジン10は水冷式の内燃機関(本発明における発熱機器に対応)であり、エンジン冷却水の循環によってエンジン10が冷却されるラジエータ回路20、および冷却水(温水)を熱源として空調空気を加熱するヒータ回路30を有している。尚、エンジン10には、エンジン10の駆動力によって駆動されて発電するオルタネータ11が設けられている。オルタネータ11によって発電された電力はバッテリ40に充電されると共に、バッテリ40に充電された電力は、車両電気負荷(ヘッドランプ、ワイパー、オーディオ等)41に供給されるようになっている。
【0035】
ラジエータ回路20にはラジエータ21が設けられており、ラジエータ21は、温水ポンプ22によって循環される冷却水を外気との熱交換により冷却する。温水ポンプ22は、ここでは電動式のポンプとしている。エンジン10の出口側の流路(エンジン10とラジエータ21の間の流路)には、水温センサ25と、後述するランキンサイクル300の加熱器310が配設されている。加熱器310内にはエンジン10から流出する冷却水が流通するようになっている。
【0036】
水温センサ25は、エンジン10の出口側における冷却水温度(本発明における廃熱機器の廃熱温度に対応)を検出する水温検出手段であり、この水温センサ25によって検出される温度信号は、後述する制御装置500(システム制御ECU500a)に出力されるようになっている。
【0037】
尚、ラジエータ回路20中にはラジエータ21を迂回して冷却水が流通するラジエータバイパス流路23が設けられており、サーモスタット24によってラジエータ21を流通する冷却水量とラジエータバイパス流路23を流通する冷却水量とが調節されるようにしている。
【0038】
ヒータ回路30にはヒータコア31が設けられており、上記の温水ポンプ22によって冷却水(温水)が循環されるようにようになっている。ヒータコア31は、空調ユニット400の空調ケース410内に配設されており、送風機420によって送風される空調空気を温水との熱交換により加熱する。尚、ヒータコア31にはエアミックスドア430が設けられており、このエアミックスドア430の開閉により、ヒータコア31を通過する空調空気量が可変される。
【0039】
冷凍サイクル200は、周知のように圧縮機210、凝縮器220、気液分離器230、過冷却器231、膨張弁240、蒸発器250から成り、これらが順次環状に接続されて閉回路を形成している。圧縮機210は、冷凍サイクル200内の冷媒を高温高圧に圧縮する流体機器であり、ここではエンジン10の駆動力によって駆動されるようにしている。即ち、圧縮機210の駆動軸には駆動手段としてのプーリ211が固定されており、エンジン10の駆動力がベルト12を介してプーリ211に伝達され、圧縮機210は駆動される。尚、プーリ211には、圧縮機210とプーリ211との間を断続する電磁クラッチ212が設けられている。電磁クラッチ212の断続は、後述する制御装置500(エアコン制御ECU500b)によって制御される。
【0040】
凝縮器220は、圧縮機210の吐出側に接続され、外気との熱交換によって冷媒を凝縮液化する熱交換器である。気液分離器230は、凝縮器220で凝縮された冷媒を気液二層に分離するレシーバであり、ここで分離された液冷媒を過冷却器231側に流出させる。過冷却器231は、液冷媒を更に冷却する熱交換器である。凝縮器220、気液分離器230、過冷却器231は、いわゆる気液分離器を有するサブクールコンデンサの形態となっている。尚、凝縮器220、気液分離器230、過冷却器231は、一体的に形成される気液分離器一体型サブクールコンデンサとしても良い。
【0041】
膨張弁240は、過冷却器231から流出される液冷媒を減圧膨脹させる減圧手段であり、本実施形態では、冷媒を等エンタルピ的に減圧すると共に、圧縮機210に吸入される冷媒の過熱度が所定値となるように絞り開度を制御する温度式膨脹弁を採用している。
【0042】
蒸発器250は、ヒータコア31と同様に空調ユニット400の空調ケース410内に配設されており、膨張弁240によって減圧膨張された冷媒を蒸発させて、その時の蒸発潜熱によって送風機420からの空調空気を冷却する熱交換器である。そして、蒸発器250の冷媒出口側は、圧縮機210の吸入側に接続されている。尚、蒸発器250によって冷却された空調空気とヒータコア31によって加熱された空調空気は、エアミックスドア430の開度に応じて混合比率が可変され、乗員の設定する温度に調節される。
【0043】
そして、過冷却器231と膨張弁240との間には、過冷却器231流出後の冷媒圧力(本発明における凝縮器220における冷媒圧力に対応)を検出する圧力検出手段としての冷媒圧力センサ260が設けられている。この冷媒圧力センサ260によって検出される圧力信号は、後述する制御装置500(システム制御ECU500a)に出力されるようになっている。
【0044】
一方、ランキンサイクル300は、エンジン10で発生した廃熱エネルギー(冷却水の熱エネルギー)を回収すると共に、この廃熱エネルギーを電気エネルギーに変換して利用するものである。以下、ランキンサイクル300について説明する。
【0045】
ランキンサイクル300は、加熱器310、膨張機320、凝縮器220、気液分離器230、過冷却器231、ポンプ330から成り、これらが順次接続されて閉回路を形成している。尚、このランキンサイクル300の凝縮器220、気液分離器230、過冷却器231は上記冷凍サイクル200のものが共用されるようになっており、ランキンサイクル300内を流通する作動流体は、上記冷凍サイクル200の冷媒と同一のものとなっている。
【0046】
また、膨張機320には、電動機と発電機の両機能を備える電動発電機321の一端側が接続され、更に、電動発電機321の他端側がポンプ330と接続され、膨張機320、電動発電機321、ポンプ330が一体的に形成されるようになっている。電動発電機321は、後述する制御装置500(インバータ500c)によって作動制御されるようになっている。即ち、電動発電機321は、後述するインバータ500cから電力供給されると、電動機として膨張機320、およびポンプ330を駆動(起動)させると共に、膨張機320から駆動力を受けると発電機として作動され、発電された電力はインバータ500cを介してバッテリ40に充電されるようになっている。
【0047】
ポンプ330は、ランキンサイクル300内の冷媒を循環させる流体機器であり、加熱器310はポンプ330から送られる冷媒とラジエータ回路20を流通する高温の冷却水との間で熱交換することにより冷媒を加熱する熱交換器である。膨張機320は、加熱器310で加熱された過熱蒸気冷媒の膨張によって回転駆動力を発生させる流体機器である。膨張機320から流出される冷媒は、上記で説明した凝縮器220に至る。
【0048】
そして、ランキンサイクル300内には、膨張機320をバイパスする膨張機バイパス流路340と、ポンプ330をバイパスするポンプバイパス流路350とが接続されており、更に、各バイパス流路340、350にはそれぞれのバイパス流路340、350を開閉する膨張機開閉弁341、ポンプ開閉弁351が設けられている。膨張機開閉弁341、ポンプ開閉弁351は、後述する制御装置500(システム制御ECU500a)によって開閉制御されるようになっている。尚、膨張機バイパス流路340と膨張機開閉弁341は本発明における膨張機バイパス手段に対応し、また、ポンプバイパス流路350とポンプ開閉弁351は本発明におけるポンプバイパス手段に対応する。
【0049】
また、ポンプバイパス流路350には、このポンプバイパス流路350を絞ることによって、ここを流通する冷媒の流量を所定流量に設定可能とするバイパス絞り(本発明における絞り部に対応)352が設けられている。
【0050】
更に、ポンプ330と加熱器310との間には、加熱器310に流入する冷媒の圧力(本発明における加熱器310における冷媒圧力に対応し、以下ランキン冷媒圧力と呼ぶ)を検出する圧力検出手段としての冷媒圧力センサ360が設けられており、この冷媒圧力センサ360によって検出される圧力信号は、後述する制御装置500(システム制御ECU500a)に出力されるようになっている。
【0051】
制御装置500は、上記冷凍サイクル200、およびランキンサイクル300の各種機器の作動を制御する制御手段であり、システム制御ECU500a、エアコン制御ECU500b、インバータ500cを有している。
【0052】
システム制御ECU500aには、エアコン制御ECU500bとインバータ500cとが接続されて、相互に制御信号が授受されるようになっている。システム制御ECU500aには、外気温度を検出する外気温センサ510からの検出信号が入力されるようになっている。
【0053】
システム制御ECU500aは、冷凍サイクル200、およびランキンサイクル300の総合的な制御を行うと共に、後述するように必要に応じて停止中のサイクル内の冷媒が流動可能となるように制御する。エアコン制御ECU500bは、乗員のエアコン要求、設定温度、環境条件等に応じて、冷凍サイクル200の基本作動を制御する。また、インバータ500cは、電動発電機321を電動機あるいは発電機として作動させることで、ランキンサイクル300の基本作動を制御する。尚、制御装置500、両バイパス流路340、350、両開閉弁341、351は、本発明において、冷凍サイクル200のみ運転時の流動制御手段に対応し、また、制御装置500、圧縮機210、電磁クラッチ212は、本発明において、ランキンサイクル300のみ運転時の流動制御手段に対応する。
【0054】
次に、上記構成に基づく冷凍装置100の作動について説明する。本冷凍装置100においては、以下の基本運転(冷凍サイクル単独運転、ランキンサイクル単独運転、冷凍サイクルとランキンサイクルの同時運転)を可能とする。
【0055】
1.基本運転
(1)冷凍サイクル単独運転
制御装置500は、乗員からのエアコン要求があり、エンジン10始動直後の暖機中等で廃熱が充分に得られない時、即ち、水温センサ25によって得られる冷却水温度が所定冷却水温度に満たないと判定した時は、電動発電機321を停止(膨張機320、ポンプ330は停止)させ、電磁クラッチ212を接続し、エンジン10の駆動力によって圧縮機210を駆動させ、冷凍サイクル200を単独運転させる。この場合は、通常の車両用エアコンと同じ作動をする。
【0056】
(2)ランキンサイクル単独運転
制御装置500は、エアコン要求が無く、冷却水温度が所定冷却水温度以上となってエンジン10の廃熱が充分得られると判定した時は、電磁クラッチ212を切断(圧縮機210は停止)し、電動発電機321(膨張機320、ポンプ330)をまず電動機として作動(起動)させて、ランキンサイクル300を単独運転させる。そして、膨張機320の回転駆動力に伴う電動発電機321の発電作用により発電を行う。
【0057】
この場合は、ポンプ330によって過冷却器231からの液冷媒が昇圧されて加熱器310に送られ、加熱器310において液冷媒は高温のエンジン冷却水によって加熱され、過熱蒸気冷媒となって膨張機320に送られる。膨張機320において過熱蒸気冷媒は等エントロピー的に膨張減圧され、その熱エネルギーと圧力エネルギーの一部が回転駆動力に変換され、膨張機320で取り出された回転駆動力によって電動発電機機321が作動される。そして、膨張機320での回転駆動力がポンプ330用の駆動力を超えると、電動発電機321は、電力を発生させる発電機として作動し、得られた電力はインバータ500cを介してバッテリ40に充電される。充電された電力は、車両電気負荷41の作動に使用される。よってオルタネータ11の負荷が軽減される。尚、膨張機320で減圧された冷媒は凝縮器220で凝縮され、気液分離器230で気液分離され、過冷却器231で過冷却されて、再びポンプ330へ吸引される。
【0058】
(3)冷凍サイクルとランキンサイクルの同時運転
制御装置500は、エアコン要求があり、且つ廃熱も充分に得られると判定した時は、冷凍サイクル200とランキンサイクル300を同時運転させ、空調と発電の両方を行う。
【0059】
この場合は、電磁クラッチ212を接続し、電動発電機321(膨張機320、ポンプ330)を作動させる。2つのサイクル200、300は、凝縮器220、気液分離器230、過冷却器231を共用し、冷媒は、過冷却器231を流出した後に分岐して、それぞれの流路を循環する。各サイクル200、300の作動については、上記単独運転の場合と同じである。
【0060】
ここで、上記冷凍サイクル単独運転、およびランキンサイクル単独運転においては、以下の理由1)と2)により運転中のサイクルに対して停止中のサイクル内に冷媒、あるいは冷媒中に含まれる潤滑油が溜まり込んでしまう場合がある。この状況が発生すると、運転中のサイクルの基本性能が低下する、各種機器の潤滑不足に陥る等の問題に繋がる。
【0061】
1)冷凍サイクル単独運転時にランキンサイクル側に冷媒が溜まる理由
両サイクル200、300内において、冷媒がどこにあるかは、その時の車両の状態、気象の状態、エアコンの使われ方の履歴等によってさまざまなパターンが出現する。例えば、走行中にエアコンを使っていた車両が夜になって停車する。この時、凝縮器220内は液冷媒が多量に存在する。夜中中放置した後、朝を迎え気温が上昇する。通常、凝縮器220は車両前面に装着されており、また比較的熱容量が少なく設計されているので、気温の上昇とともに凝縮器220の温度も上昇していく。一方で加熱器310はエンジン冷却水で満たされており、なかなか外気温の影響では温度上昇しにくい。この場合、凝縮器220と加熱器310との間で温度差が生じ、凝縮器220内の液冷媒は蒸発し、加熱器310で凝縮することになる。つまり、ランキンサイクル300側へ冷媒が溜まってしまうことになる。
【0062】
また、上記とは異なり、冷凍サイクル200の起動時にランキンサイクル300側に冷媒が溜まっていない場合でも、冷凍サイクル200の稼動とともに、ランキンサイクル300側へ冷媒が溜まりこんでしまう場合がある。例えば、車両が完全にコールド状態(温度が外気温度と同じ)とする。この状態で車両に乗り込み、エンジンをONし、エアコンをON(冷凍サイクル200を起動⇒稼動)させる。初めはランキンサイクル300側に冷媒が溜まり込んでいないので、所望の冷房能力で冷凍サイクル200を稼動できる。ここで、凝縮器220での冷媒凝縮温度は外気温より10℃程度高いものとなっている。一方、加熱器310の温度はエンジン10稼動直後では、ほぼ外気温度と同じであるので、凝縮器220と加熱器310との間で温度差ができてしまい、加熱器310に液冷媒が凝縮してしまう。つまり、ランキンサイクル300側へ冷媒が溜まってしまうことになる。
【0063】
2)ランキンサイクル単独運転時に冷凍サイクル側に冷媒が溜まる理由
例えば、走行中エアコンを使っていた車両が夜になって停車する。この時、凝縮器220内と蒸発器250内は液冷媒が多量に存在する。夜中中放置した後、朝を迎え気温が上昇する。通常、凝縮器220は車両前面にあり、また比較的熱容量が少なく設計されているので、気温の上昇とともに凝縮器220の温度も上昇していく。一方で圧縮機210は凝縮器220と比較して熱容量が大きい設計となっており、なかなか外気温の影響では温度上昇しにくい。この場合、凝縮器220と圧縮機210との間で温度差が生じ、凝縮器220内の液冷媒は蒸発し、圧縮機210で凝縮することになる。つまりは冷凍サイクル200側へ冷媒が溜まってしまうことになる。
【0064】
また、冷凍サイクル200において、換気のため外気導入による送風のみを行っている場合を考える。この場合、蒸発器250には外気から導入された冷たい空気が当たっていることになる。この状態でランキンサイクル300を稼動すると、ランキンサイクル300側から、圧縮機210、膨張弁240側へ少量ずつ冷媒が流れ込んでいくことが考えられる。
【0065】
よって本発明においては、上記1)と2)のような理由によって冷媒、あるいは冷媒中に含まれる潤滑オイルが停止中のサイクル側に溜まってしまうのを、流動制御手段によってその溜まりを防止するようにしている。以下、図2〜図5を用いて流動制御手段による具体的な作動(制御)を説明する。
【0066】
2.停止中サイクルの冷媒流動運転
(1)ランキンサイクル停止時の冷凍サイクル運転
図2は制御装置500が、冷凍サイクル200の単独運転を行う際の、ランキンサイクル300側への冷媒溜まりを防止する制御を示す制御フローである。制御装置500は、ランキンサイクル300の停止条件のもとで、まずステップS100で外気温センサ510から得られる外気温度(TA)、および水温センサから得られる冷却水温度(Tw)から外気温度の判定をする。即ち、外気温度の判定とは、図3に示す制御特性図から、冷却水温度が外気温度より低い場合は「1」、冷却水温度が(外気温度+所定値α1)より高い場合は「0」と区別判定するものである。上記「1」の判定は、加熱器310の温度が低い状態にあり、ここに冷媒が溜まり込んでいる可能性があると考えられるものである。
【0067】
尚、ここでは、外気温度と所定値α1との間において、この制御特性にヒステリシスを持たせるようにしている。つまり、冷却水温度が低い側から外気温度を越えて(外気温度+所定値α1)に至るまでは判定結果を「1」とし、冷却水温度が高い側から(外気温度+所定値α1)を下回り外気温度に至るまでは判定結果を「0」としている。
【0068】
上記ステップS100で「1」の判定、即ち、冷却水温度が外気温度より低いと判定すると、ランキンサイクル300内に溜まり込んでいると思われる冷媒を冷凍サイクル200側に流出させるために、ステップS110で膨張機開閉弁341、ポンプ開閉弁351を開く。
【0069】
すると、冷凍サイクル200内を循環する冷媒の一部は、ランキンサイクル300側を流通することになる。具体的には、圧縮機210から吐出された冷媒の一部は、凝縮器220の流入側で分流して、膨張機バイパス流路340→膨張機開閉弁341→加熱器310→ポンプバイパス流路350→ポンプ開閉弁351→バイパス絞り352を通り、過冷却部231の流出側に合流する。この時、分流する冷媒の流量はポンプバイパス流路350のバイパス絞り352によって、所定流量に絞られることになる。
【0070】
ステップS100で「0」の判定、即ち、冷却水温度が外気温度より高いと判定すると、ランキンサイクル300内に冷媒は溜まり込んでいないと思われるため、ステップS120へ進む。ステップS120では過冷却器231の流出側(凝縮器220)における冷媒圧力を算出する。冷媒圧力は冷媒圧力センサ260によって得られるものであるが、ここでは、現時点から所定時間(本発明における所定期間に対応し、例えば30秒)さかのぼった間の冷媒圧力の平均値を算出して用いるようにしている。
【0071】
ステップS130では上記平均冷媒圧力に対する平均冷媒温度を算出する。冷凍サイクル200における冷媒の圧力と温度は冷媒の種類によって所定の関係式によって関係付けられるものであって、制御装置500は、その関係式に基づいて、ステップS120で算出した平均冷媒圧力を平均冷媒温度に置き換える。
【0072】
そして、ステップS140で上記平均冷媒温度、および冷却水温度から平均冷媒温度の判定をする。即ち、平均冷媒温度の判定とは、図4に示す制御特性図から、平均冷媒温度が冷却水温度より高い場合は「1」、平均冷媒温度が(冷却水温度−所定値α2)より低い場合は「0」と区別判定するものである。上記「1」の判定は、加熱器310の温度が低い状態にあり、ここに冷媒が溜まり込んでいる可能性があると考えられるものである。尚、ここでは、冷却水温度と所定値α2との間において、図3で説明した内容と同様に、この制御特性にヒステリシスを持たせるようにしている。
【0073】
上記ステップS140で「1」の判定、即ち、平均冷媒温度が冷却水温度より高いと判定すると、ランキンサイクル300内に溜まり込んでいると思われる冷媒を冷凍サイクル200側に流出させるために、上記と同様にステップS110で膨張機開閉弁341、ポンプ開閉弁351を開く。
【0074】
ステップS140で「0」の判定、即ち、平均水温度が冷却水温度より低いと判定すると、ランキンサイクル300内に冷媒は溜まり込んでいないと思われるため、ステップS150へ進む。
【0075】
ステップS150では冷媒圧力センサ360から得られるランキン冷媒圧力を判定する。即ち、ランキン冷媒圧力の判定とは、図5に示す制御特性図から、ランキン冷媒圧力がランキンサイクル300において許容しうる高圧設定値(図5中のPmax表示であり、本発明における所定圧力に対応)より高い場合は「1」、ランキン冷媒圧力が高圧設定値より低い場合は「0」と区別判定するものである。尚、ここでは、高圧設定値と所定値α3との間において、図3で説明した内容と同様に、この制御特性にヒステリシスを持たせるようにしている。
【0076】
上記ステップS150で「1」の判定、即ち、ランキン冷媒圧力が高圧設定値より高いと判定すると、ランキンサイクル300内が高い圧力状態にあり、この圧力を冷凍サイクル200側に開放するために、上記と同様にステップS110で膨張機開閉弁341、ポンプ開閉弁351を開く。
【0077】
ステップS150で「0」の判定、即ち、ランキン冷媒圧力が高圧設定値より低いと判定すると、ステップS160で膨張機開閉弁341、ポンプ開閉弁351を閉じる。
【0078】
(2)冷凍サイクル停止時のランキンサイクル運転
制御装置500は、冷凍サイクル200の停止条件のもとで、ランキンサイクル300を起動する直前に、所定のタイミングで圧縮機210をON−OFFさせる。具体的には、電磁クラッチ212を接続して、100秒以下となる所定時間(望ましくは数秒〜数十秒間)、圧縮機210を作動させる。すると、冷凍サイクル200内の冷媒が流動されて、その一部がランキンサイクル300側に流入する。そして、上記所定時間が過ぎると、電磁クラッチ212を切断して、圧縮機210を停止させる。
【0079】
尚、圧縮機210の作動方法としては、その他に、ランキンサイクル300を起動した後に一定期間ごとに(本発明における所定時間間隔に対応)1回ずつ100秒以下となる所定時間(望ましくは数秒〜数十秒間)作動させるようにしても良い。
【0080】
以上のように、本実施形態では制御装置500によって開閉される膨張機バイパス手段(340、341)、およびポンプバイパス手段(350、351)を設けて、ランキンサイクル300停止時で冷凍サイクル200を運転する時に、両バイパス手段を開いて、冷凍サイクル200の冷媒の一部をランキンサイクル300側に流動可能となるようにしているので、冷凍装置100内で凝縮器220(気液分離器230、過冷却器231)を共用するものにおいて、冷媒あるいは冷媒中の潤滑オイルが停止中のランキンサイクル300内に溜まるのを防止して、運転中の冷凍サイクル200側での充分な性能発揮、および信頼性向上が可能となる。
【0081】
ここで、膨張機バイパス手段を膨張機バイパス流路340と膨張機開閉弁341とから形成して、また、ポンプバイパス手段をポンプバイパス流路350とポンプ開閉弁351とで形成することで、確実且つ容易な対応を可能としている。
【0082】
また、膨張機バイパス手段およびポンプバイパス手段を開く際の判定を、冷却水温度と外気温度とを比較する(ステップS100)、または冷媒温度と冷却水温度とを比較する(ステップS140)ことで対応するようにしているので、ランキンサイクル300の加熱器310側に冷媒あるいは冷媒中の潤滑オイルが溜まりやすい条件下において、確実にその溜まりを防止することができる。
【0083】
また、冷媒温度については、冷媒圧力から容易に算出可能であり、冷媒温度の直接検出を不要としている。また、冷媒圧力として平均値を用いるようにしているので、変動要因を取り除いた安定した冷媒圧力値として把握することができ、安定した制御が可能となる。
【0084】
また、ランキン冷媒圧力が高圧設定値よりも高い時に、膨張機バイパス手段およびポンプバイパス手段を開くようにしているので、ランキンサイクル300内の冷媒圧力が異常等によって上昇した時に、冷媒を冷凍サイクル200側に逃がすことができ、ランキンサイクル300の保護が可能となる。
【0085】
また、膨張機開閉弁341、ポンプ開閉弁351の開閉作動特性として、ヒステリシスを持たせるようにしているので、両開閉弁341、351の開閉判定値近傍での温度や圧力が微小変動して、両開閉弁341、351の開状態、あるいは閉状態がハンチングするのを防止することができ、安定した制御が可能となる。
【0086】
また、ポンプバイパス流路350にバイパス絞り352を設けるようにしているので、冷凍サイクル200からランキンサイクル300に流れる冷媒流量が、所定流量となるように調節することができる。つまり、本来の冷凍サイクル200で流通させるべき冷媒流量が極端に減少してしまうのを防止できる。
【0087】
また、冷凍サイクル200停止時でランキンサイクル300を運転する時に、圧縮機210を所定タイミングでON−OFFするようにしているので、ランキンサイクル300の運転中に、停止中の冷凍サイクル200内の冷媒を流動状態にして、ランキンサイクル300側に流すことができ、冷凍サイクル200内に冷媒あるいは冷媒中の潤滑オイルが溜まるのを防止することができる。
【0088】
また、圧縮機210をON−OFFさせるときのON時間について、100秒といった上限値を設けて、それ以下の時間となるようにして作動させているので、空調性能に及ぼす影響や、また圧縮機210の駆動動力による冷凍装置100全体のエネルギー効率(燃費)の悪影響を無くすことができる。通常、数秒〜数十秒間圧縮機210を駆動すれば、冷媒および潤滑オイルを確実に回収できる。
【0089】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図6に示す。第2実施形態は、冷凍装置100の基本構成は上記第1実施形態と同一としているが、冷凍サイクル200の単独運転を行う際の、ランキンサイクル300側への冷媒溜まりを防止する制御要領を変更したものとしている。
【0090】
図6に示す制御フローは、第1実施形態の図2で説明した制御フローに対して、スタートとステップS100との間にステップS50を追加すると共に、ステップS110をステップS110Aに、ステップS160をステップS160Aに変更している。
【0091】
具体的には、制御装置500は、ランキンサイクル300の停止条件のもとで、まずステップS50で膨張機開閉弁341を開状態とする。そして、ステップS100、あるいはステップS140、あるいはステップS150の各判定ステップで「1」の判定、即ち、ランキンサイクル300内に冷媒が溜まり込んでいると思われる場合、あるいはランキンサイクル300内が高い圧力状態にあると思われる場合に、ステップS110Aでポンプ開閉弁351のみを開く。
【0092】
また、ステップS100、あるいはステップS140、あるいはステップS150の各判定ステップで「0」の判定、即ち、ランキンサイクル300内に冷媒は溜まり込んでいないと思われる場合、あるいはランキンサイクル300内が低い圧力状態にあると思われる場合に、ステップS160Aでポンプ開閉弁351のみを閉じる。以下、膨張機開閉弁341は開状態のまま、ステップS100〜ステップS160Aを繰返し、ステップS110A、ステップS160Aではポンプ開閉弁351のみを開閉制御する。
【0093】
これにより、上記第1実施形態と同一の冷媒溜まり防止の制御が可能であると共に、実質的に膨張機開閉弁341、およびポンプ開閉弁351のうち、一方(341)のみを制御すればよくなるので、制御自体を簡素化することができる。
【0094】
尚、上記第2実施形態においては、ステップS50で対象とする開閉弁をポンプ開閉弁351とし、また、ステップS110A、ステップS160Aで対象とする開閉弁を膨張機開閉弁341としても良い。
【0095】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図7に示す。第3実施形態は上記第1実施形態に対して、膨張機バイパス流路340とポンプバイパス流路350との配置を考慮して、膨張機開閉弁341とポンプ開閉弁351とを一体的に形成したものである。
【0096】
これにより、冷凍装置100としての構成をシンプルにすることができる。
【0097】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、冷凍サイクル200の単独運転を行う際の、ランキンサイクル300側への冷媒溜まりを防止する制御(図2、図6)において、ステップS100、およびステップS140の2つの判定ステップを設けたが、いずれか1つを行うものとしても良い。ステップS140を不要とする場合は、その前処理としてステップS120、ステップS130も不要となる。
【0098】
また、ステップS150の判定に基づくステップS110、あるいはステップS110Aの処理はランキンサイクル300の取り得る圧力値に応じて、廃止しても良い。
【0099】
また、ステップS140における冷媒温度判定は、冷媒圧力センサ260によって検出される冷媒圧力値を用いた冷媒圧力判定のステップとしても良い。この場合は、前処理としてステップS120、ステップS130も不要となる。
【0100】
また、ステップS120においては、制御の安定性に影響が無いようであれば、冷媒圧力値としては平均値に限らず、検出される値をそのまま用いるようにしても良い。
【0101】
また、バイパス絞り352は、ポンプバイパス流路350に設けたが、膨張機バイパス流路340に設けるようにしても良い。
【0102】
また、冷凍サイクル200中に過冷却器231を設けたが、必要とされる冷房能力に応じて、廃止しても良い。
【0103】
また、ポンプ330は電動発電機321から切り離されて、別に設けられた専用の電動機等の駆動源で作動するものとしても良い。
【0104】
また、発熱機器として、車両用のエンジン(内燃機関)10としたが、これに限らず、例えば、外燃機関、燃料電池車両の燃料電池スタック、各種モータ、インバータ等のように作動時に発熱を伴い、温度制御のためにその熱の一部を捨てるもの(廃熱が発生するもの)であれば、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】第1実施形態における廃熱利用装置を備える冷凍装置全体を示す模式図である。
【図2】第1実施形態における制御装置が行うランキンサイクル側への冷媒溜まりを防止する制御フローである。
【図3】第1実施形態における外気温判定時に使用される制御特性図である。
【図4】第1実施形態における冷媒温度判定時に使用される制御特性図である。
【図5】第1実施形態におけるランキン冷媒圧力判定時に使用される制御特性図である。
【図6】第2実施形態における制御装置が行うランキンサイクル側への冷媒溜まりを防止する制御フローである。
【図7】第3実施形態における廃熱利用装置を備える冷凍装置全体を示す模式図である。
【符号の説明】
【0106】
10 エンジン(発熱機器、内燃機関)
100 廃熱利用装置を備える冷凍装置
200 冷凍サイクル
210 圧縮機(流動制御手段)
220 凝縮器
240 膨張弁
250 蒸発器
300 ランキンサイクル
310 加熱器
320 膨張機
330 ポンプ
340 膨張機バイパス流路(流動制御手段、膨張機バイパス手段)
341 膨張機開閉弁(流動制御手段、膨張機バイパス手段)
350 ポンプバイパス流路(流動制御手段、ポンプバイパス手段)
351 ポンプ開閉弁(流動制御手段、ポンプバイパス手段)
352 バイパス絞り(絞り部)
500 制御装置(流動制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(210)、凝縮器(220)、膨張弁(240)、蒸発器(250)が順次環状に接続されて形成される冷凍サイクル(200)と、
前記凝縮器(220)が共用されて、この凝縮器(220)、ポンプ(330)、発熱機器(10)の廃熱を加熱源とする加熱器(310)、膨張機(320)が順次環状に接続されて形成されるランキンサイクル(300)とを有する廃熱利用装置を備える冷凍装置において、
前記冷凍サイクル(200)および前記ランキンサイクル(300)のうち、一方のサイクル(200、300)のみを運転する際に、他方のサイクル(300、200)内の冷媒が流動可能となるように制御する流動制御手段(340、341、350、351、500)を設けたことを特徴とする廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項2】
前記一方のサイクル(200、300)は、前記冷凍サイクル(200)であり、
前記他方のサイクル(300、200)は、前記ランキンサイクル(300)であり、
前記流動制御手段(340、341、350、351、500)は、前記膨張機(320)をバイパス可能とする膨張機バイパス手段(340、341)と、
前記ポンプ(330)をバイパス可能とするポンプバイパス手段(350、351)と、
前記膨張機バイパス手段(340、341)、および前記ポンプバイパス手段(350、351)をバイパス状態に制御する制御装置(500)とから成ることを特徴とする請求項1に記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項3】
前記膨張機バイパス手段(340、341)は、前記膨張機(320)をバイパスする膨張機バイパス流路(340)と、前記膨張機バイパス流路(340)を開閉する膨張機開閉弁(341)とから成り、
前記ポンプバイパス手段(350、351)は、前記ポンプ(330)をバイパスするポンプバイパス流路(350)と、前記ポンプバイパス流路(350)を開閉するポンプ開閉弁(351)とから成り、
前記制御装置(500)は、前記膨張機開閉弁(341)と、前記ポンプ開閉弁(351)とを開状態に制御することを特徴とする請求項2に記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項4】
前記制御装置(500)は、前記加熱器(310)における前記発熱機器(10)の廃熱温度が、前記凝縮器(220)における外気温度よりも低い場合に、前記膨張機開閉弁(341)、および前記ポンプ開閉弁(351)を開く、
あるいは、前記膨張機開閉弁(341)、および前記ポンプ開閉弁(351)のうち、いずれか一方(341)を開状態に固定すると共に、前記加熱器(310)における前記発熱機器(10)の廃熱温度が、前記凝縮器(220)における外気温度よりも低い場合に、他方(351)を開くことを特徴とする請求項3に記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項5】
前記制御装置(500)は、前記加熱器(310)における前記発熱機器(10)の廃熱温度が、前記凝縮器(220)における冷媒温度よりも低い場合に、前記膨張機開閉弁(341)、および前記ポンプ開閉弁(351)を開く、
あるいは、前記膨張機開閉弁(341)、および前記ポンプ開閉弁(351)のうち、いずれか一方(341)を開状態に固定すると共に、前記加熱器(310)における前記発熱機器(10)の廃熱温度が、前記凝縮器(220)における冷媒温度よりも低い場合に、他方(351)を開くことを特徴とする請求項3に記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項6】
前記制御装置(500)は、前記冷媒温度を前記凝縮器(220)における冷媒圧力から算出することを特徴とする請求項5に記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項7】
前記制御装置(500)は、前記凝縮器(220)における冷媒圧力として所定期間の平均値を用いることを特徴とする請求項6に記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項8】
前記制御装置(500)は、前記加熱器(310)における冷媒圧力が、所定圧力よりも高い場合に、前記膨張機開閉弁(341)、および前記ポンプ開閉弁(351)を開く、
あるいは、前記膨張機開閉弁(341)、および前記ポンプ開閉弁(351)のうち、いずれか一方(341)を開状態に固定すると共に、前記加熱器(310)における冷媒圧力が、前記所定圧力よりも高い場合に、他方(351)を開くことを特徴とする請求項3に記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項9】
前記膨張機開閉弁(341)、および前記ポンプ開閉弁(351)の開閉作動特性に、ヒステリシスを持たせたことを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか1つに記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項10】
前記膨張機開閉弁(341)、および前記ポンプ開閉弁(351)は、一体的に形成されたことを特徴とする請求項3〜請求項9のいずれか1つに記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項11】
前記膨張機バイパス流路(340)、あるいは前記ポンプバイパス流路(350)のいずれか一方には、この一方の流路(350)を絞る絞り部(352)が設けられたことを特徴とする請求項3〜請求項10のいずれか1つに記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項12】
前記一方のサイクル(200、300)は、前記ランキンサイクル(300)であり、
前記他方のサイクル(300、200)は、前記冷凍サイクル(200)であり、
前記流動制御手段(340、341、350、351、500)は、前記圧縮機(210)を所定タイミングでON−OFFさせる制御装置(500)としたことを特徴とする請求項1に記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項13】
前記所定タイミングは、前記ランキンサイクル(300)を起動する直前のタイミングであることを特徴とする請求項12に記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項14】
前記所定タイミングは、前記ランキンサイクル(300)を起動した後に所定時間間隔で繰返されるタイミングであることを特徴とする請求項12に記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。
【請求項15】
前記圧縮機(210)をON−OFFさせるときのON時間は、100秒以下としたことを特徴とする請求項12〜請求項14のいずれか1つに記載の廃熱利用装置を備える冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−205699(P2007−205699A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28840(P2006−28840)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】