説明

廃熱回収装置

【課題】温度作動アクチュエータを備えた廃熱回収装置において冷媒の異常な高温化を確実に回避することができるようにする。
【解決手段】排気流入管48と排気流出管49との間には熱交換器18及びバイパス管50が並設されている。排気流入管48の側方に配設された温度作動アクチュエータ57は、排気流入管48内の開閉弁53の弁開度を制御する。流出管47の外周面には筒状の室形成部材67が止着されている。室形成部材67は、流出管47の外周面との間に環状の収納室68を区画する筒形状に形成されている。収納室68には蓄熱材69が収納されている。蓄熱材69は、温度相転移材からなり、蓄熱材69の相転移温度T2は、温度相転移材である熱膨張材63の相転移温度T1よりも低い。又、蓄熱材69の相転移温度T2は、膨張機15へ流入する冷媒の望ましい温度の上限(所定温度To)以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度作動アクチュエータを備えた廃熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃熱源(例えば内燃機関)の廃熱を回収する廃熱回収装置に用いられる熱交換器は、廃熱流体(排気ガスあるいはエンジン冷却用の冷却水)と冷媒との間で熱交換を行なう。廃熱によって加熱された高温高圧の冷媒は、膨張機に導入されて膨張機内で膨張する。膨張機は、冷媒の膨張によって回転エネルギーを得て発電機を駆動する。このような膨張機内の冷媒閉じ込め空間からの冷媒洩れを防止するためのシール部材の耐熱性の観点から、冷媒の温度をシール部材の耐熱温度以下に制御する必要がある。
【0003】
特許文献1には、冷媒の温度を所定温度以下に制御するための温度作動アクチュエータを備えた廃熱回収装置が開示されている。
特許文献1に開示の廃熱回収装置では、排気ガスと熱交換を行なう熱交換器を迂回するバイパス経路が弁体によって開閉されるようになっており、前記弁体は、温度作動アクチュエータによって開駆動されるようになっている。温度作動アクチュエータは、熱膨張する熱膨張体(ワックス)の膨張によって伸長運動する。
【0004】
熱交換器から排出された直後の媒体(冷媒)の温度が所定値以上になると、温度作動アクチュエータが伸長運動して弁体が開状態に駆動される。これにより、高温の排気ガスが熱交換器を迂回するバイパス経路を流れ、排気ガスと冷媒との熱交換による冷媒の異常な高温化の抑制が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−157211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、温度相転移材であるワックスの膨張速度が低い、つまり温度作動アクチュエータの応答性が低いため、弁体が閉状態から開状態に移行するのに時間が掛かり、冷媒の温度が異常な高温になってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、温度作動アクチュエータを備えた廃熱回収装置において冷媒の異常な高温化を確実に回避することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、廃熱源の廃熱を受け取る冷媒を循環させる冷媒流路が廃熱流体を導入する廃熱流体室を通されている熱交換器と、前記冷媒を介して廃熱源の廃熱を回収するための膨張機と、前記廃熱流体室を迂回するバイパス通路と、前記バイパス通路における通路断面積を調整する調整弁と、前記調整弁の弁開度を制御する温度作動アクチュエータとを備え、前記温度作動アクチュエータが前記熱交換器で熱を受け取った冷媒の温度に感応する感温部を有する廃熱回収装置を対象とし、請求項1の発明では、前記感温部より下流かつ前記膨張機より上流の前記冷媒流路に吸熱部が設けられており、前記吸熱部は、前記感温部より下流かつ前記膨張機より上流の前記冷媒流路内の冷媒の温度が所定温度以上の場合に、前記感温部より下流の前記冷媒流路内の冷媒から熱を吸収する。
【0009】
所定温度とは、膨張機にとって望ましい流入冷媒の温度の上限である。感温部より下流かつ膨張機より上流の冷媒流路内の冷媒の温度が所定温度以上になると、吸熱部がこの冷媒から熱を吸収する。そのため、温度作動アクチュエータの応答遅れが生じても、膨張機に流入する冷媒の異常な高温化が確実に回避される。
【0010】
好適な例では、前記感温部は、前記膨張機より上流の前記冷媒流路内の冷媒の温度に感応する。
膨張機より上流の冷媒流路内の冷媒が所定温度以上になると、吸熱部がこの冷媒から熱を吸収し、膨張機に流入する冷媒の異常な高温化が確実に回避される。
【0011】
好適な例では、前記熱交換器内における前記冷媒流路から分岐する導入路が設けられており、前記導入路は、前記温度作動アクチュエータの感温部に接続されており、前記吸熱部は、前記冷媒流路に対する前記導入路の分岐部より下流の前記冷媒流路に設けられている。
【0012】
冷媒流路に対する導入路の分岐部より下流かつ膨張機より上流の冷媒流路内の冷媒が所定温度以上になると、吸熱部がこの冷媒から熱を吸収し、膨張機に流入する冷媒の異常な高温化が確実に回避される。
【0013】
好適な例では、前記吸熱部における温度相転移材の相転移温度は、前記所定温度以下である。
分岐部より下流かつ膨張機より上流の冷媒流路内の冷媒が所定温度以上になると、吸熱部がこの冷媒から熱を吸収し、膨張機に流入する冷媒の異常な高温化が確実に回避される。
【0014】
好適な例では、前記感温部は、温度相転移材を有しており、前記吸熱部は、温度相転移材を有しており、前記吸熱部における温度相転移材の相転移温度は、前記感温部における温度相転移材の相転移温度以下である。
【0015】
吸熱部における温度相転移材の相転移温度が感温部における温度相転移材の相転移温度よりも低い場合、温度作動アクチュエータが作動開始する以前にも、感温部における熱吸収が行なわれる。吸熱部における温度相転移材の相転移温度が感温部における温度相転移材の相転移温度と同じ場合には、温度作動アクチュエータの作動開始と共に感温部における熱吸収が行なわれる。従って、膨張機に流入する冷媒の異常な高温化が確実に回避される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、温度作動アクチュエータを備えた廃熱回収装置において冷媒の異常な高温化を確実に回避することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態を示し、(a)は、廃熱回収装置の模式図。(b)は、熱交換器及びバイパス管を示す平面図。
【図2】熱交換器の断面図。
【図3】図1(b)のA−A線断面図。
【図4】温度作動アクチュエータ及び吸熱部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、廃熱回収装置11は、廃熱源としてのエンジン12(燃焼機関)と、ランキンサイクル回路13とを備えている。ランキンサイクル回路13では、エンジン12からの廃熱によって加熱される冷媒が循環する。廃熱回収装置11を構成する回転電機14は、ランキンサイクル回路13の一部を構成している。ランキンサイクル回路13は、膨張機15、凝縮器16、ギヤポンプ17、及び熱交換器18によって構成されている。回転電機14は、膨張機15、ギヤポンプ17、オルタネータ25(発電機)から構成される。
【0019】
熱交換器18は、ギヤポンプ17と膨張機15との間の第1冷媒流路19上に設けられていると共に、エンジン12に接続された排気通路20上に設けられている。エンジン12から排気通路20へ排気された廃熱流体としての排気ガスの熱は、熱交換器18を介して第1冷媒流路19内の冷媒に伝達される。排気通路20内の排気ガスは、マフラ21から排気される。
【0020】
なお、エンジン12を冷却した冷却水は、冷却水循環経路22を循環してラジエータ23で放熱する。
熱交換器18で加熱された高温高圧の冷媒は、第1冷媒流路19を経由して膨張機15に導入される。膨張機15は、例えばスクロール式の膨張機である。
【0021】
凝縮器16は、膨張機15とギヤポンプ17との間の第2冷媒流路24上に設けられている。膨張機15は、膨張機15内で膨張する冷媒を利用してギヤポンプ17及びオルタネータ25(発電機)を駆動する。駆動されたオルタネータ25は、発電し、発電された電気は、バッテリ10に蓄えられる。
【0022】
膨張機15で膨張した低圧の冷媒は、第2冷媒流路24を経由して凝縮器16へ送られる。凝縮器16を通過した冷媒は、ギヤポンプ17のポンプ作用により、ポンプ室に吸入されてポンプ室から第1冷媒流路19へ吐出される。ポンプ室から吐出された冷媒は、熱交換器18を経由して膨張機15へ還流する。
【0023】
第2冷媒流路24及び第1冷媒流路19は、冷媒を循環させる冷媒流路を構成する。
図1(b)は、熱交換器18と、排気通路20の一部となる流路管26,27とを示す。エンジン12から排気された排気ガスは、流路管26側から熱交換器18を通過して流路管27側へ流れ、さらにマフラ21〔図1(a)参照〕側へ流れる。
【0024】
次に、熱交換器18の構造を説明する。
図2に示すように、熱交換器18は、廃熱流体ケース28と冷媒ヘッダータンク30とを備えている。廃熱流体ケース28は、一対の側壁29,31と、側壁29,31間の底壁32と、側壁29,31間の上壁33とから構成されている。廃熱流体ケース28内は、廃熱流体である排気ガスを導入して排出する廃熱流体室281となっており、流路管26〔図1(b)参照〕側の排気ガスが廃熱流体室281を通って流路管27〔図1(b)参照〕側へ流れる。
【0025】
廃熱流体室281内には多数枚の放熱板34が並設されており、各放熱板34には偶数本の直管351,361,352,362,353,363が貫通されている。隣り合う最上位の一対の直管351,361の一端〔図2において左端〕は、U字管371によって互いに接続されている。隣り合う中位の一対の直管352,362の一端〔図2において左端〕は、U字管372によって互いに接続されており、隣り合う最下位の一対の直管353,363の一端〔図2において左端〕は、U字管373によって互いに接続されている。
【0026】
直管351,361及びU字管371は、廃熱流体室281を通る冷媒流路の一部となる組管381を構成する。直管352,362及びU字管372は、廃熱流体室281を通る冷媒流路の一部となる組管382を構成し、直管353,363及びU字管373は、廃熱流体室281を通る冷媒流路の一部となる組管383を構成する。各直管351,361,352,362,353,363の他端部〔図2において右端部〕は、廃熱流体ケース28の側壁29を貫通している。
【0027】
冷媒ヘッダータンク30は、容器本体39と横蓋40とから構成されている。容器本体39は、廃熱流体ケース28の側壁29に対向する対向壁41と、対向壁41から横蓋40に向けて立設された周壁42と、周壁42の周内で対向壁41から横蓋40に向けて立設された複数の区画壁43,44,45とから構成されている。区画壁43は、冷媒ヘッダータンク30内に第1ヘッダータンク室301を区画し、区画壁43及び区画壁44は、冷媒ヘッダータンク30内に第2ヘッダータンク室302を区画する。区画壁44及び区画壁45は、冷媒ヘッダータンク30内に第3ヘッダータンク室303を区画し、区画壁45は、冷媒ヘッダータンク30内に第4ヘッダータンク室304を区画する。
【0028】
第1ヘッダータンク室301には流入管46が周壁42を貫通して通じており、第4ヘッダータンク室304には流出管47が周壁42を貫通して通じている。流入管46及び流出管47は、第1冷媒流路19〔図1(a)参照〕の一部である。
【0029】
廃熱流体ケース28の側壁29を貫通する直管351の端部は、冷媒ヘッダータンク30の対向壁41を貫通して第1ヘッダータンク室301に通じている。廃熱流体ケース28の側壁29を貫通する直管361,352の端部は、対向壁41を貫通して第2ヘッダータンク室302に通じている。廃熱流体ケース28の側壁29を貫通する直管362,353の端部は、対向壁41を貫通して第3ヘッダータンク室303に通じている。廃熱流体ケース28の側壁29を貫通して廃熱流体ケース28外に突出する直管363の端部は、冷媒ヘッダータンク30の対向壁41を貫通して第4ヘッダータンク室304に通じている。
【0030】
図3に示すように、排気通路20〔図1(a)参照〕の一部となる排気流入管48と、排気通路20の一部となる排気流出管49との間には熱交換器18及びバイパス管50が並列状態に設けられている。バイパス管50の管内は、熱交換器18(廃熱流体室281)を迂回するバイパス通路501である。排気流入管48の出口端には接続プレート51が止着されている。接続プレート51には一対の接続孔511,512が貫設されている。接続孔511には流路管26が嵌合されており、接続孔512にはバイパス管50が嵌合されている。
【0031】
排気流出管49の入口端には接続プレート52が止着されている。接続プレート52には一対の接続孔521,522が貫設されている。接続孔521には流路管27が嵌合されており、接続孔522にはバイパス管50が嵌合されている。
【0032】
排気流入管48内には開閉弁53が回動可能な支軸54に止着されている。開閉弁53は、支軸54を中心にして、図3に実線で示す閉位置(位置規制片55に接する位置)と、図3に鎖線で示す開位置との間で切り換え配置される。開閉弁53は、図示しないねじりばねによって閉位置から開位置に向かう方向に付勢されている。開閉弁53が閉位置にあるときには、排気流入管48からバイパス管50への排気ガスの流れが阻止される。開閉弁53が開位置にあるときには、排気流入管48からバイパス管50への排気ガスの流れが許容される。開閉弁53は、バイパス通路501における通路断面積を調整する調整弁である。
【0033】
図4に示すように、支軸54は、排気流入管48の側面を貫通して排気流入管48の外部に突出している。支軸54の突出端部にはレバー56が止着されている。レバー56にはガイド孔561が形成されている。
【0034】
排気流入管48の側方には、開閉弁53の弁開度を制御する温度作動アクチュエータ57が配設されている。温度作動アクチュエータ57は、円筒状のハウジング58と、ハウジング58内に収納された感温筒59と、感温筒59内にスライド可能に収納されたピストン60と、ピストンロッド601の直上で感温筒59内に配設された駆動ロッド61とを備えている。駆動ロッド61は、圧縮ばね62のばね力によってピストンロッド601の先端に押接されている。
【0035】
感温筒59の筒内から外部へ突出する駆動ロッド61の先端部には駆動ピン611が止着されている。駆動ピン611は、レバー56のガイド孔561にスライド可能に嵌入されている。
【0036】
感温筒59の下部の筒内には、ピストン60が突入されていると共に、熱膨張材63が充填されている。本実施形態では、熱膨張材63は、温度相転移材であるワックスである。感温筒59と共に感温部を構成する熱膨張材63の周囲において、感温筒59とハウジング58との間には冷媒導入室64が形成されている。冷媒導入室64は、熱膨張材63を包囲している。
【0037】
ハウジング58と冷媒ヘッダータンク30との間には導入パイプ65及び排出パイプ66が設けられている。導入パイプ65は、第2ヘッダータンク室302と冷媒導入室64とを連通しており、排出パイプ66は、冷媒導入室64と第4ヘッダータンク室304とを連通している。導入パイプ65は、熱交換器18内における冷媒流路の上流端(第1ヘッダータンク室301)よりも下流、且つ熱交換器18内における前記冷媒流路の下流端(第4ヘッダータンク室304)よりも上流から分岐する導入路を構成する。第2ヘッダータンク室302は、冷媒流路に対する導入路の分岐部となる。排出パイプ66は、前記分岐の位置よりも下流の冷媒流路(第4ヘッダータンク室304)に合流接続される導入路を構成する。第4ヘッダータンク室304は、冷媒流路に対する導入路の合流部となる。導入パイプ65と排出パイプ66とを連通する冷媒導入室64は、導入路の一部である。
【0038】
第2ヘッダータンク室302内の冷媒温度は、熱交換器18下流の冷媒温度と比例しており、第2ヘッダータンク室302内の冷媒温度から熱交換器18下流の冷媒(膨張機15に流入する冷媒)の温度を推定できる。よって、熱交換器18下流の冷媒温度が膨張機15へ流入する望ましい温度の上限(所定温度To)となるときに、熱膨張材63が膨張し温度作動アクチュエータ57が作動するよう熱膨張材63の相転移温度T1は設定される。これらの構成により、所定温度Toに比べて相転移温度T1を低くすることができる。
【0039】
流出管47の外周面には筒状の室形成部材67が止着されている。室形成部材67は、流出管47の外周面との間に環状の収納室68を区画する筒形状に形成されている。収納室68には蓄熱材69が収納されている。
【0040】
室形成部材67と共に吸熱部を構成する蓄熱材69は、温度相転移材からなり、蓄熱材69の相転移温度T2は、膨張機15へ流入する冷媒の望ましい温度の上限(所定温度To)以下である。
【0041】
次に、本実施形態の作用を説明する。
第1冷媒流路19の一部である流入管46から第1ヘッダータンク室301へ流入した冷媒は、組管381を経由して第2ヘッダータンク室302へ流入する。第2ヘッダータンク室302へ流入した冷媒の一部は、組管382を経由して第3ヘッダータンク室303へ流入する。第3ヘッダータンク室303へ流入した冷媒は、組管383を経由して第4ヘッダータンク室304へ流入する。第4ヘッダータンク室304へ流入した冷媒は、第1冷媒流路19の一部である流出管47へ流出する。
【0042】
第2ヘッダータンク室302へ流入した冷媒の一部は、導入パイプ65、冷媒導入室64及び排出パイプ66を経由して第4ヘッダータンク室304へ流入する。冷媒の温度が低い場合、熱膨張材63が殆ど膨張せず、ピストン60及び駆動ロッド61が圧縮ばね62のばね力によって図4に示す最下位位置に保持される。ピストン60及び駆動ロッド61が最下位位置にある状態では、開閉弁53が図4に破線で示す閉位置に配置される。
【0043】
エンジン12から排気された排気ガスは、排気通路20の一部である排気流入管48へ流入する。開閉弁53が閉位置にある状態では、排気流入管48へ流入した排気ガスは、流路管26、熱交換器18の廃熱流体室281及び流路管27を経由して排気流出管49へ流れる。従って、排気ガスの熱が熱交換器18を介して冷媒に伝達される。
【0044】
冷媒の温度が高くなって熱膨張材63が膨張すると、ピストン60及び駆動ロッド61が圧縮ばね62のばね力に抗して押し上げられる。駆動ロッド61と共に上動する駆動ピン611は、ガイド孔561内を移動しながらレバー56を押し上げる。レバー56の上動は、図4において支軸54及び開閉弁53を反時計回り方向に回動させる。これにより、開閉弁53が図4に2点鎖線で示す開位置に向けて移動する。
【0045】
開閉弁53が開位置にある状態では、排気流入管48へ流入した排気ガスの大部分は、バイパス管50内のバイパス通路501を経由して排気流出管49へ流れる。従って、開閉弁53が図4に2点鎖線で示す開位置まで開いてしまえば、高温の排気ガスから熱交換器18を介した冷媒への伝達熱量が少なくなり、排気ガスが高温の場合でも、冷媒の過熱が抑制される。
【0046】
温度作動アクチュエータ57の応答性は悪く、開閉弁53が図4に2点鎖線で示す開位置まで開くのに時間が掛かる。開閉弁53が図4に2点鎖線で示す開位置に至らない状態では、排気ガスが高温である場合には、熱交換器18を通過して流出管47へ流出した冷媒の温度は異常な高温である。しかし、温度相転移材である蓄熱材69における温度相転移材の相転移温度T2は、膨張機15へ流入する冷媒の望ましい温度の上限である所定温度Toよりも低い。そのため、熱交換器18から流出管47へ流出した冷媒の温度が所定温度Toを超えていても、熱交換器18を通過して流出管47へ流出した異常な高温の冷媒の熱は、室形成部材67内の蓄熱材69へ伝達されて蓄熱される。その結果、温度作動アクチュエータ57の応答遅れ中に熱交換器18を通過して流出管47へ流出した異常な高温の冷媒が異常な高温のまま膨張機15に至ることはない。
【0047】
従って、長時間のエンジン高速回転状態や、長時間の回転数上昇状態等の排気ガスの温度が高くなる状態においても、流出管47を通過した冷媒の温度が異常な高温になることはない。又、短時間の回転数上昇状態で熱交換器18を通過した冷媒の熱が蓄熱材69に蓄熱され、短時間の回転数上昇状態から定回転数状態へ移行すると、蓄熱材69に蓄えられている熱が流出管47を流れる冷媒に戻される。蓄熱材69から流出管47内の冷媒に戻された熱は、発電に使われる。
【0048】
本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)感温部を構成する熱膨張材63より下流、且つ膨張機15より上流の冷媒流路(流出管47)内の冷媒の温度が相転移温度T1以上になると、蓄熱材69がこの冷媒から熱を迅速に吸収する。そのため、温度作動アクチュエータ57の応答遅れが生じても、膨張機15に流入する冷媒の異常な高温化が確実に回避される。
【0049】
(2)蓄熱材69における温度相転移材の相転移温度T2は、膨張機15へ流入する冷媒の望ましい温度の上限である所定温度To以下である。そのため、温度作動アクチュエータ57の応答遅れ中に熱交換器18を通過して流出管47へ流出した異常な高温の冷媒が異常な高温のまま膨張機15に至ることはなく、膨張機15に流入する冷媒の異常な高温化が確実に回避される。
【0050】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○温度相転移材である蓄熱材69における温度相転移材の相転移温度T2が膨張機15へ流入する冷媒の望ましい温度の上限である所定温度Toと同じであってもよい。この場合には、温度作動アクチュエータの作動開始と共に感温部における熱吸収が行なわれ、膨張機に流入する冷媒の異常な高温化が確実に回避される。
【0051】
○導入パイプ65を第4ヘッダータンク室304に連通させ、蓄熱材69における温度相転移材の相転移温度T2が温度相転移材である熱膨張材63の相転移温度T1と同じとしてもよい。例えば、蓄熱材69が熱膨張材63と同じ材質であってもよい。
【0052】
○導入パイプ65は第2ヘッダータンク室302に限らず、熱交換器18内における冷媒流路や熱交換器18下流の冷媒通路に導入パイプ65を連結してもよい。また、導入パイプ65や冷媒導入室64を備えず、熱膨張材63を熱交換器18内における冷媒流路や熱交換器18下流の冷媒通路に直接配置しても良い。
【0053】
○前記した実施形態において、排出パイプ66を無くしてもよい。
○前記した実施形態において、バイパス管50あるいは排気流出管49に開閉弁53を設けてもよい。
【0054】
○廃熱流体ケース28の両側に冷媒ヘッダータンクを配置した熱交換器を用いてもよい。
○廃熱流体は、エンジンを冷却する冷却水であってもよい。
【0055】
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下に記載する。
(イ)前記廃熱流体は、排気ガスである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に廃熱回収装置。
【符号の説明】
【0056】
11…廃熱回収装置。12…廃熱源であるエンジン。15…膨張機。18…熱交換器。19…冷媒流路を構成する第1冷媒流路。24…冷媒流路を構成する第2冷媒流路。281…廃熱流体室。302…分岐部となる第2ヘッダータンク室。501…バイパス通路。53…調整弁としての開閉弁。57…温度作動アクチュエータ。63…感温部を構成する熱膨張材。64…導入路を構成する冷媒導入室。65…導入路を構成する導入パイプ。66…導入路を構成する排出パイプ。69…吸熱部を構成する温度相転移材である蓄熱材。To…所定温度。T1,T2…相転移温度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃熱源の廃熱を受け取る冷媒を循環させる冷媒流路が廃熱流体を導入する廃熱流体室を通されている熱交換器と、前記冷媒を介して廃熱源の廃熱を回収するための膨張機と、前記廃熱流体室を迂回するバイパス通路と、前記バイパス通路における通路断面積を調整する調整弁と、前記調整弁の弁開度を制御する温度作動アクチュエータとを備え、前記温度作動アクチュエータは、前記熱交換器で熱を受け取った冷媒の温度に感応する感温部を有する廃熱回収装置において、
前記感温部より下流かつ前記膨張機より上流の前記冷媒流路に吸熱部が設けられており、
前記吸熱部は、前記感温部より下流かつ前記膨張機より上流の前記冷媒流路内の冷媒の温度が所定温度以上の場合に、前記感温部より下流の前記冷媒流路内の冷媒から熱を吸収する廃熱回収装置。
【請求項2】
前記感温部は、前記膨張機より上流の前記冷媒流路内の冷媒の温度に感応する請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項3】
前記熱交換器内における前記冷媒流路から分岐する導入路が設けられており、前記導入路は、前記温度作動アクチュエータの感温部に接続されており、前記吸熱部は、前記冷媒流路に対する前記導入路の分岐部より下流の前記冷媒流路に設けられている請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の廃熱回収装置。
【請求項4】
前記吸熱部における温度相転移材の相転移温度は、前記所定温度以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の廃熱回収装置。
【請求項5】
前記感温部は、温度相転移材を有しており、前記吸熱部は、温度相転移材を有しており、前記吸熱部における温度相転移材の相転移温度は、前記感温部における温度相転移材の相転移温度以下である請求項4に記載の廃熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246870(P2012−246870A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120584(P2011−120584)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】