説明

廃物自然処理建造物

【課題】 ゴミ回収車によるゴミ処理では人件費や車両の手配等のコスト高になり、又、その場所での焼却処理では人件費は勿論のこと火災の心配の恐れや煙に含まれるダイオキシンによる公害あるいは焼却灰の排気処分の手間が生ずるという問題点がある。
【解決手段】 地上に設けた建造物1に便所2とゴミ投入口3が別々に設けられ、当該建造物の地下にこれら便所2における排出物及びゴミ投入口3から投入されたゴミ類が収集される貯留タンク4が前記便所2及びゴミ投入口3より下方に設置され、該貯留タンク4内に収集された排出物やゴミ類を複合菌で処理して無害な気体と水に分解する分解消滅処理装置5が設けられ、更に、この分解消滅処理装置5に必要な電力を供給する自然発電装置6が具備されたことを特徴とする廃物自然処理建造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は公園や野山等の自然環境の中で人が集まる場所に設置して、ゴミ類や排泄物を菌で処理して無害な気体と水に分解する廃物自然処理建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
公園やハイキング、登山コースなどの野山等の自然環境の中の広場等の人が集まる場所では、食べ残し食物、空箱、包装紙、料理の生ゴミなどのゴミ類が多く出ているが、これらを処分するためには、ゴミ集収車で麓のゴミ焼却場へ搬送して処理しているが、ゴミ回収車が通行できない山地等ではその場所で焼却炉をあらかじめ設置しておいて、その場で焼却処分をしている。又、便所での排泄物の処理は、道路が整備されている場所ではタンク車で回収されているが、その他の場所ではその多くは、いわゆるタレ流し的になっている。
【0003】
また、このような従来技術に類似するものとして、特許文献1に示されるような、資源リサイクル型住居がある。
【特許文献1】特開2000−17854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴミ回収車によるゴミ処理では人件費や車両の手配等のコスト高になり、又、その場所での焼却処理では人件費は勿論のこと火災の心配の恐れや煙に含まれるダイオキシンによる公害あるいは焼却灰の廃棄処分の手間が生ずるという問題点がある。さらに、郊外若しくは野山の便所の排泄物の回収はコスト高となり、又、タレ流しの場合には周囲の環境に悪影響を及ぼすという問題点がある。
【0005】
また、前記特許文献1の資源リサイクル型住居は人が居住することを前提とし、地上での生活を基本としているために、住居の中に人の生活に必要な台所その他の場所が設けられているので、多くの便所やゴミ類を集収することができないという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その手段とするところは、請求項1の発明にあっては、地上に設けた建造物に便所とゴミ投入口が別々に設けられ、当該建造物の地下にこれら便所における排出物及びゴミ投入口から投入されたゴミ類が集収される貯溜タンクが前記便所及びゴミ投入口より下方に設置され、該貯溜タンク内に集収された排出物やゴミ類を複合菌で処理して無害な気体と水に分解する分解消滅処理装置が設けられ、更に、この分解消滅処理装置に必要な電力を供給する自然発電装置が具備された廃物自然処理建造物としたことにある。
【0007】
請求項2の発明にあっては、前記ゴミ投入口が大型ゴミ投入口と小型ゴミ投入口に分けられ、大型ゴミ投入口にはゴミ粉砕機が設けられている廃物自然処理建造物としたことにある。
【0008】
請求項3の発明にあっては、前記分解消滅処理装置又はゴミ粉砕機が故障した時にそれを通報する報知装置を具備していることを特徴とする請求項2に記載の廃物自然処理建造物。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、地上に設けた1つの建造物に便所とゴミ投入口が別々に設けられ、それらの場所で発生し投入された排泄物やゴミ類は建造物の地下に設けられた貯溜タンクに全て集められる。従って、作業者の人手を要することなく1箇所に集めることができる。そして、この貯溜タンクに集収された排泄物やゴミ類は分解消滅処理装置で生物学的に複合菌で処理されて無害な気体と水に分解される。そして、この分解消滅処理装置が駆動するには、貯溜タンク内の排泄物やゴミ類の攪拌、菌の繁殖、増殖に必要な湿度、温度管理などのために電力が必要となるが、この電力は前記建造物の屋根面などに設置した太陽光発電装置あるいは建造物の近辺に設置した風力発電装置などの自然発電装置によって発生する電力が利用される。これによって、送電線の必要がなくなるので、山奥の山地などのハイキングコースの広場や登山者が集う高地での利用に好適となる。又、建造物自体も、周囲の環境に見合った構造、外観、色彩を自由に選択できるので、違和感を生じることがないようにできる。さらに又、1つの建造物で便所とゴミ集積場の2つを兼ね合わせることができるために、これらを別々に建造する場合に較べて安価に建造できる。
【0010】
請求項2の発明によると、ゴミ投入口が大型ゴミ投入口と小型ゴミ投入口に分けられて、大型ゴミ投入口にはゴミ粉砕機が設けられているので、これによって適度な大きさに粉砕されたゴミ類だけが貯溜タンク内へ投入されて、効率良く生物学的に処理される。粉砕を要するゴミ類としては、段ボール、発泡プラスチック、食品トレー、食肉・魚介類などの硬い肩、骨などである。このゴミ粉砕機は前記の自然発電装置から発生した電力を貯えたものが利用される。
【0011】
請求項3の発明によると、報知装置によって自然発電装置、分解消滅処理装置、ゴミ粉砕機等の機器類の異常を直ちに知らせられるので、故障を直ちに修理できるので常に稼動状態を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施例について以下図面に基づいて詳細に説明する。
この発明の廃物自然処理建造物は、地上に設けた建造物1と、この建造物1に設けられた便所2と、ゴミ投入口3と、これら便所2からの排泄物やゴミ投入口3から投入されたゴミ類を集める貯溜させる地下に埋設された貯溜タンク4と、該貯溜タンク4内に集収された排泄物やゴミ類を複合菌で処理して無害な気体と水に分解する分解消滅処理装置5と、この分解消滅処理装置5に必要な電力を供給する自然発電装置6を具備している。
【0013】
前記建造物1は、設置場所の周囲の環境に見合った構造、外観、色彩を選択して使用することができる。野山で使用する場合はログハウスや、木造和式建造物として調和を図ることができる。又、都市近郊部や公園、遊園地などでは洋式の建造物とし、色彩も明彩色を用いて明るくすることができる。この建造物1には、少なくとも便所2とゴミ投入口3を具備している。それぞれのスペースの割合は目的に応じて自由に決定される。この実施例においては、便所2の入口とゴミ投入口3を建造物1の反対側に設けたが、同一方向であってもよく、とくに限定されるものではないが、目的別に別方向に設置する方が使用並びに作業効率の点から好ましい。便所2で使用する水は、雨水を図外の集水装置によって集めてタンクに貯蔵したものを使用しても、地下水をポンプで汲み上げて使用してもよいが、動力節減の観点からは集水装置の水を使用するのが望ましい。
【0014】
前記ゴミ投入口3は、この実施例においては、大型ゴミ投入口31と、小型ゴミ投入口32に分けたものを示しているが、1つであってもよく、この場合には投入後に分別する構造のものを内部に具備しておいて、大型のゴミは小さく粉砕する必要がある。大型ゴミ投入口31から投入された段ボール、発泡プラスチックなどのゴミは投入と同時に稼動するゴミ粉砕機7によって、小さく粉砕される。又、食肉・魚介類などの硬い肩、骨なども同様にこの大型ゴミ投入口31から投入してゴミ粉砕機7で粉砕して小型にして、複合菌による生物学的処理がスムーズにゆくようにしている。このような投入口31、32の選択は、ゴミを捨てる人が判断しなければならないので、投入口近辺にその旨の表示を掲げておくことが望ましい。又、ゴミ粉砕機7を設置できない場合には、投入前に利用者が自らゴミを小さく粉砕できるような器具をゴミ投入口3の近辺に設置しておくことが望ましい。ゴミ投入口3には衛生上の観点及び小動物の侵入を防止する観点から開閉自在な蓋を設けておくのが望ましい。
【0015】
前記貯溜タンク4は、便所2やゴミ投入口3からの汚物などを集収するタンクで、自重でここに投入できるようにするために、便所2やゴミ投入口3の下方に設けられている。この実施例においては、地中に貯溜タンク4を埋設し、この貯溜タンク4の周囲のコンクリート壁を建造物1の基礎と兼用しているが、必ずしも地下に埋設しなければならないというものではなく、便所2やゴミと投入口3の下方に位置するようにすれば、地上に設置してもよい。この場合には貯溜タンク4の高さ分だけ建造物1の高さが高くなり、その結果、使用に際しては、階段を昇降する必要が生じるので不便となるが、建造物1と貯溜タンク4が一体となっているので、現場での設置工事が簡単となる利点がある。
【0016】
前記、分解消滅処理装置5は、複合菌によって人の排泄物や食べのこし、料理くず等の生ゴミのみならず、発泡プラスチック、食品トレー、包装紙、トイレットペーパー、段ボールなどをも分解して気体と水を生成するものである。このような複合菌は適度な温度と湿度を保っておくことによって繁殖し増殖するので、最初に投入しておくだけの手数でよい。この分解消滅処理装置5を利用することによって残渣が限りなくゼロに近くなって後処理がほとんどなくなり人件費の節減を図ることができる。
【0017】
前記自然発電装置6は、図4に示すような、前記建造物1の屋根面や周囲の壁面などに設置した太陽光発電装置61や、図5に示すような前記建造物1に隣接して設けた風力発電装置62などがある。これらは、建造物1と一体型ではなく別途設置されているものでもよい。太陽光や風などの自然現象を利用した燃料を使用しない近隣に設けた発電装置から供給される電力であればよく、従って、近くに常に水を絶つことがない清流がありそこから導水した水の流速によって発電する装置であってもよい。このような自然発電装置6は、昼夜にかかわらず24時間発電しているので、電力を全くか若しくは少ししか使用しない時には貯電しておく蓄電池を備えておき、必要に応じてこれらを切り換えて使用することが望ましいことは当然である。
【0018】
報知装置8は、前記分解消滅装置5、自然発電装置6、ゴミ粉砕機7、さらには、建造物1の屋内外構成物の自然による又は人為的破損を管理事務所に報知する装置である。通常は建造物1の内部に設置されている無線通信装置を用いて通知されるが、有線であっても、又、ランプが点滅する方式のものであっても、更には、拡声機による音声であってもよい。これらの報知には電力を必要とするので、このための電力は前記した各装置の電源とは異なる電源を用いるようにするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明の廃物自然処理建造物1は以上のような構成からなるので、1つの建造物内の別々の場所で発生した人の排泄物やゴミ類を1つの貯溜タンク4に集収して、これを生物学的に複合菌によって無公害に気体と水に分解してほとんど残渣を残さないようにするために、自然環境を壊すこともないので、人里離れた環境保全地域などにおいても有効に活用でき得る。又、汚物を回収する回収車が入り込めない山地や高所などにおいても有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の廃物自然処理建造物の全体斜視図。
【図2】図1の垂直方向断面説明図。
【図3】図1の水平方向断面説明図。
【図4】太陽光の発電装置を具備した建造物の全体斜視図。
【図5】風力発電装置を具備した建造物の全体斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1 建造物
2 便所
3 ゴミ投入口
4 貯溜タンク
5 分解消滅処理装置
6 自然発電装置
7 ゴミ粉砕機
8 報知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設けた建造物に便所とゴミ投入口が別々に設けられ、当該建造物の地下にこれら便所における排出物及びゴミ投入口から投入されたゴミ類が集収される貯溜タンクが前記便所及びゴミ投入口より下方に設置され、該貯溜タンク内に集収された排出物やゴミ類を複合菌で処理して無害な気体と水に分解する分解消滅処理装置が設けられ、更に、この分解消滅処理装置に必要な電力を供給する自然発電装置が具備されたことを特徴とする廃物自然処理建造物。
【請求項2】
前記ゴミ投入口が大型ゴミ投入口と小型ゴミ投入口に分けられ、大型ゴミ投入口にはゴミ粉砕機が設けられていることを特徴とする請求項1の廃物自然処理建造物。
【請求項3】
前記分解消滅処理装置又はゴミ粉砕機が故障した時にそれを通報する報知装置を具備していることを特徴とする請求項2に記載の廃物自然処理建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−7560(P2007−7560A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191898(P2005−191898)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(501228989)株式会社サンフェイス (3)
【Fターム(参考)】