説明

廃食油の処理方法及び廃食油の処理装置

【課題】異物の混入した廃食油を直接ディーゼルエンジンの燃料、或いはバイオディーゼル燃料の前処理として使用可能な廃食油の処理方法及び廃食油の処理装置を得ること。
【解決手段】廃食油中に含まれる有機不純物のうち、100μm以上の有機不純物をストレーナで分離除去後、廃食油中に残っている100μm未満の有機不純物を、超音波キャビテーションの発生によって10μm以下に破砕するようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃食油の処理方法及び廃食油の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、廃食油をディーゼルエンジンの燃料として利用する技術として、バイオディーゼル燃料を製造する特許文献はいくつかある。代表的なものでは、特許文献1に示すように植物油にメタノールと触媒としてのアルカリを加えて脂肪酸メチルエステル化する方法が多い。このような脂肪酸メチルエステル化する反応としては油脂類の主成分であるトリグリセリドをエステル交換反応するというものである。
【0003】
特許文献1に記載の方法ではグリセリンが発生したり、メタノールを使用するため、製造ラインの構成が複雑となることから、廃食油を直接使用できる手法の開発が望まれている。
【0004】
一方、特許文献2には、液体燃料と、水等の不溶性液体を混合する際に、超音波キャビテーション発生装置の効果を有効に利用することによって、液体混合物の超微細化・高混合密度化を達成できる技術が記載されている。
【特許文献1】特開2007−211139
【特許文献2】再公表WO(特許国際公開番号)2004/004881
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
廃食油を直接燃料として使用する揚合及びメチルエステル化する揚合においては、燃料が使用された廃食油であるため、てんぷらやフライなどを揚げた際にその食品から発生する揚げカスや、メチルエステル化する際に発生するグリセリン等の夾雑物、異物が混入しており、様々な悪影響を及ぼす。
【0006】
すなわち、このような異物が油に混入しているとディーゼルエンジンの燃料フィルターを詰まらせたり、燃料噴射ノズルに悪影響を及ぼしたり、または燃料配管を詰まらせたりする。
【0007】
また、エンジン内部の汚れに影響する。さらには異物が不完全燃焼を起こし、排ガスにカーボン状の微粒子が混入することも起こりうる。
【0008】
よって、異物を分離するためにろ過式のフィルターや、遠心分離機などが考えられるが、いずれも高価なものとなり、コスト的に見合わない。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、異物の混入した廃食油を直接ディーゼルエンジンの燃料、或いはバイオディーゼル燃料の前処理として使用可能な廃食油の処理方法及び廃食油の処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、
廃食油中に含まれる有機不純物のうち、100μm以上の有機不純物をストレーナで分離除去し、この分離除去で残った100μm未満の有機不純物を含む廃食油を次の工程に送る第1の工程と、
この第1の工程で得られた100μm未満の有機不純物を含む廃食油を超音波キャビテーション発生装置に供給して10μm以下に有機不純物を破砕する第2の工程と、
を含む廃食油の処理方法である。
【0011】
前記目的を達成するため、請求項4に対応する発明は、廃食油を処理してディーゼルエンジンに供給する廃食油処理系に設けられ、
前記廃食油を通過させることで前記廃食油中に含まれる有機不純物のうち、100μm以上の有機不純物を分離除去するストレーナと、
前記ストレーナを通過した廃食油中に残っている100μm未満の有機不純物を、超音波キャビテーションの発生によって前記ディーゼルエンジンの動作に支障のない10μm以下の大きさに破砕する超音波キャビテーション発生装置と、
を含む廃食油の処理装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、廃食油中に含まれる有機不純物のうち、100μm以上の有機不純物をストレーナで分離除去後、廃食油中に残っている100μm未満の有機不純物を、超音波キャビテーションの発生によって10μm以下に破砕することで、異物の混入した廃食油を直接ディーゼルエンジンの燃料として使用可能な廃食油の処理方法及び廃食油の処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る廃食油の処理方法及び廃食油の処理装置の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、全体の概略構成(概略の流れ)を説明するための図である。本実施形態は、廃食油タンク1、ポンプ吸い込み側ストレーナ2、移送ポンプ3、ポンプ吐き出し側ストレーナ4、ポンプ吐出側圧力計5及び流量計6、超音波キャビテーション発生装置7、燃料タンク8、ディーゼル発電機9から構成されている。
【0014】
このような構成により、本発明の廃食油の処理方法は、概略ストレーナ4と超音波キャビテーション発生装置7で実現できる。すなわち、廃食油中に含まれる有機不純物のうち、100μm以上の有機不純物をストレーナ4で分離除去し、この分離除去で残った100μm未満の有機不純物を含む廃食油を次の工程に送る第1の工程と、この第1の工程で得られた100μm未満の有機不純物を含む廃食油を超音波キャビテーション発生装置7に供給して10μm以下に有機不純物を破砕する第2の工程と、を含む廃食油の処理方法である。
【0015】
また、本発明の廃食油の処理装置は、概略廃食油を処理してディーゼルエンジンに供給する廃食油処理系に設けられものであって、以下の構成を備えたものである。すなわち、廃食油を通過させることで廃食油中に含まれる有機不純物のうち、100μm以上の有機不純物を分離除去するストレーナ4と、ストレーナ4を通過した廃食油中に残っている100μm未満の有機不純物を、超音波キャビテーションの発生に伴って生ずる圧力波により、ディーゼルエンジンの動作の支障のない10μm以下の大きさに破砕する超音波キャビテーション発生装置7と、を含む廃食油の処理装置である。
【0016】
ここで、超音波キャビテーション発生装置7は、図2に示すように20KHz以上の高周波振動を発生する振動子71を含む高周波振動発生装置72と、高周波振動発生装置72からの高周波振動を連結棒74を介して伝達する振動板73と、振動板73に対して10mm以下で望ましくは数mm程度の間隔を存して対向配置された反射板75と、底面にストレーナ4を通過した廃食油を導入する油供給口76aを備えると共に、処理済の油を燃料タンク8に供給するための油排出口76bを有する異物破砕タンク76を備えたものである。
このように構成された本実施形態において、まず廃食油タンク1に燃料となる廃食油を給油しておく。廃食油タンク1からまず配管をとおしてポンプ吸い込み側ストレーナ2に廃食油が流れていく。このストレーナ2はポンプ3の保護のために用いられており、通常80メッシュ程度の網目である。このストレーナ2を通った廃食油はポンプ3で加圧されポンプ吐き出し側のストレーナ4へ圧送される。このストレーナ4のメッシュは200メッシュ(100μm)程度を用いる。これにより100μm以上の異物は分離される。廃食油が一定流量で超音波キャビテーション発生装置7へ送られる様に流量調整バルブ10にて調整する。
【0017】
超音波キャビテーション発生装置7では、油供給口76aから異物破砕タンク76内に導入されたストレーナ4を通過後の廃食油は、異物破砕タンク76内の振動板73と反射板75の間にキャビテーションが発生する。この細かい泡はすぐに崩壊するが、このときに非常に高い圧力波が発生する。
【0018】
この圧力波は50MPa以上にも達し、廃食油中の異物を破壊する能力がある。ストレーナ4を通過してきた廃食油に含まれる100μm以下の異物は、異物破砕タンク76内において、反射板75と振動板73の間を通過する間に圧力波により10μm以下に破壊されてしまう。これにより超音波キャビテーション発生装置7の異物破砕タンク76の油排出口76bを通過して燃料タンク8に供給される。燃料タンク8に供給された廃食油は、それに含まれる異物が10μm以下と微小なため、ディーゼルエンジン9のフィルターや燃料噴射ノズルを詰まらせることなく、またエンジンシリンダーの内部では完全に燃焼してしまうため、エンジン内部の汚れや排ガスへの未燃粒子を発生する問題がなく、ディーゼル発電機9を運転することができる。
【0019】
以上述べた実施形態によれば、廃食油中に含まれる有機不純物のうち、100μm以上の有機不純物をストレーナで分離除去後、廃食油中に残っている100μm未満の有機不純物を、超音波キャビテーションの発生によって10μm以下に破砕することで、異物の混入した廃食油を直接ディーゼルエンジンの燃料として使用可能な廃食油の処理方法及び廃食油の処理装置を提供できる。
【0020】
前述の超音波キャビテーション発生装置7を長時間運転していくと、ストレーナ4に異物が閉塞し流れなくなる問題が発生する。その対策としてはストレーナ4として複式のストレーナを使用する。ストレーナ4の網目が詰まってくると、圧力計5の圧力が増加する。よって許容値を超えた段階で複式ストレーナを逆側に流れを切り替える。そして、詰まった方のストレーナの網をクリーニングして再充填しておけば、逆側のストレーナが詰まってもまた同様に切り替えることで、運転を継続することができる。
【0021】
本実施形態は廃食用油を直接ディーゼルエンジンに使用する場合以外に、廃食油を水や化石燃料等他の液体と混合して使用する場合や、廃食油をメチルエステル化してバイオディーゼル燃料を得る際の廃食油の前処理としても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の廃食油の処理方法及び廃食油の処理装置の実施形態を説明するための概略構成図。
【図2】図1の本発明の超音波キャビテーション発生装置を説明するための概略構成図。
【符号の説明】
【0023】
1…廃食油タンク、2…ストレーナ、3…移送ポンプ、4…ストレーナ、5…圧力計、6…流量計、7…超音波キャビテーション発生装置、8…燃料タンク、9…デイーゼル発電機、10…流量調整バルブ、71…振動子、72…高周波振動発生装置、73…振動板、74…連結棒、75…反射板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃食油を処理してディーゼルエンジンに供給する廃食油の処理方法において、
廃食油中に含まれる有機不純物のうち、100μm以上の有機不純物をストレーナで分離除去し、この分離除去で残った100μm未満の有機不純物を含む廃食油を次の工程に送る第1の工程と、
この第1の工程で得られた100μm未満の有機不純物を含む廃食油を超音波キャビテーション発生装置に供給して10μm以下に有機不純物を破砕する第2の工程と
を含む廃食油の処理方法。
【請求項2】
前記超音波キャビテーション発生装置は、20KHz以上の高周波振動を発生する高周波振動発生装置と、前記高周波振動発生装置の高周波振動を連結棒を介して伝達する振動板と、前記振動板に対して10mm以下の間隔を存して対向配置された反射板とを備えたことを特徴とする請求項1記載の廃食油の処理方法。
【請求項3】
前記ストレーナとして複式のストレーナを使用し、前記ストレーナの前段側に設置する圧力計が規定値を超えたとき、前記ストレーナのうち使用中のものを、ストレーナのうち未使用のものに切り替え、前記使用中のストレーナのエレメントを交換することを特徴とする請求項1又は2記載の廃食油の処理方法。
【請求項4】
廃食油を処理してディーゼルエンジンに供給する廃食油処理系において、
前記廃食油を通過させることで前記廃食油中に含まれる有機不純物のうち、100μm以上の有機不純物を分離除去するストレーナと、
前記ストレーナを通過した廃食油中に残っている100μm未満の有機不純物を、超音波キャビテーションの発生によって前記ディーゼルエンジンの動作に支障のない10μm以下の大きさに破砕する超音波キャビテーション発生装置と、
を含む廃食油の処理装置。
【請求項5】
前記超音波キャビテーション発生装置は、20KHz以上の高周波振動を発生する高周波振動発生装置と、前記高周波振動発生装置の高周波振動を連結棒を介して伝達する振動板と、前記振動板に対して10mm以下の間隔を存して対向配置された反射板とを備えたことを特徴とする請求項4記載の廃食油の処理装置。
【請求項6】
前記ストレーナとして複式のストレーナを使用し、前記ストレーナの前段側に設置する圧力計が規定値を超えたとき、前記ストレーナのうち使用中のものを、ストレーナのうち未使用ものに切り替え、前記使用中のストレーナのエレメントを交換することを特徴とする請求項4又は5記載の廃食油の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−209266(P2009−209266A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53716(P2008−53716)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】