説明

延伸フィルムの改良

【課題】延伸フィルムに基づく膜の経済的な製造である。
【解決手段】本発明は、延伸後の膜化工程として1つ或は複数の第二処理段階を介して合成される、(A)ポリマブレンド、及び少なくとも(B)0.1〜15μmの平均粒径を持つ1つの追加含有成分から成る延伸ポリマフィルムに関連する。含有成分(B)の平均粒子径は0.1〜15μm、好ましくは0.5〜8.0μmであり、特に好ましくは1.0〜7.0μmである。膜はアルケン-アルカン分離、電気透析、海水の淡水化、燃料電池やその他の膜技術への応用に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は延伸フィルムに基づく膜に関連している。
【背景技術】
【0002】
延伸フィルムは20年間以上工業技術に利用されている。押出成形により形成されたポリプロピレン或はポリエチレンフィルムは、食品包装、食品容器等の応用品に広く使用されている。延伸ポリプロピレンフィルム、特に二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、その優れた機械的・光学的特性のために包装材において広く使用されている。一般的にそれらは、テンタを用いた連続二軸延伸により製造される。
【0003】
最近、無機充填剤入りの延伸箔がおむつ用通気性箔として利用されている。しかし、一般的に使用され、非常に経済的なこれらのフィルムの孔径は、極めて大きく、そのため、これらの箔は、燃料電池等の厚膜が必要とされる応用分野には利用することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、延伸フィルムに基づく膜の経済的な製造である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、(A)ポリマー(ポリマ)或はポリマブレンド、及び(B)少なくとも0.1〜15μmの平均粒径を持つもう1つの含有成分から成る延伸ポリマフィルムと、(C)その膜化のための(延伸後の)1つ以上の後処理段階を行う本発明により克服することができる。
本発明は、20〜98重量%のポリマ成分(A)と、前記ポリマ成分(A)のマトリクス内で分散されており、2〜80重量%のフィロシリケート及び/又はテクトシリケート(B)とを含む箔が、一軸方向又は二軸方向に延伸され、延伸後一つ又はそれ以上の後処理工程(C)を膜へ施す膜の生産方法であって、(A)は、先に記述されたポリマであり、(B)は、少なくとも0.5meq/gの陽イオン交換容量を持ち、(C)は、フィロシリケート、及び/又はテクトシリケートの陽イオンが、一般式I又はII:
【化1】

(式中、置換基は、R1、R2、R3、及びR4が、互いに独立して、水素、直鎖、分枝、飽和又は不飽和の1〜40のC基(1〜20のC原子が望ましい)を表すことによって特徴付けられ、必要な場合は、少なくとも一つの官能基、或は二つの基を、特に5〜10のC原子を持つ複素環式に結合させることが可能で、一つ或はそれ以上のN原子を含むことが望ましく、式中では、X:リン、窒素又は炭素、Y:酸素、硫黄又は炭素、N:1〜5の整数で、1〜3が望ましく、Z:陰イオンを示す。)を含む有機官能基導入疎水化剤によって、すべて又は一部で置換され、前記箔が、1〜85重量%酸濃度で多価金属塩及びホスホン酸水溶液と部分的に交換しながら処理されることを特徴とする膜の生産方法にかかる。
また、本発明は、20〜98重量%のポリマ成分(A)と、前記ポリマ成分(A)のマトリクス内で分散され、2〜80重量%のフィロシリケート及び/又はテクトシリケート(B)とを含む箔が、一軸方向、又は二軸方向に延伸され、延伸後一つ又はそれ以上の後処理工程(C)を膜へ施す膜の生産方法であって、(A)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリノルボルネン、ポリメチルペンテン、1,4-ポリイソプレン、3,4-ポリイソプレン、1,4-ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン等のようなポリオレフィン、ポリメチルスチレン、ポリトリフルオロスチレン、ポリペンタフルオロスチレン等のような一つのスチレン・コポリマ、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンイミン、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(3-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)等のような一つのN構造を含むポリマ、ポリエーテルケトンPEK Victrex(R)(商標)、ポリエーテルエーテルケトンPEEK Victrex(R)、ポリエーテルエーテルケトンケトンPEEKK、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンPEKEKK Ultrapek(R)等のような一つのヘテロアリール主鎖ポリマ、ポリスルホンUdel(R)、ポリフェニルスルホンRadel R(R)、ポリエーテルエーテルスルホンRadel A(R)、ポリエーテルスルホンPES Victrex(R)等のような一つのポリエーテルスルホン、PBI Celazol(R)、2,6-ポリジメチルオキシフェニレンとされるポリフェニレンエーテル、2,6-ジフェニルオキシフェニレン等のような一つのポリベンズイミダゾール、一つのポリフェニレンスルファイド、及び/又はポリフェニレンスルファイドの一つのコポリマであり、(B)が、少なくとも0.5meq/gの陽イオン交換容量を有し、(C)は、フィロシリケート及び/又はテクトシリケートの陽イオンが、イミダゾール或はピリジン基を含む有機官能基導入疎水化剤によって、すべて又は一部を置換することを特徴とし、その後、箔が、銀塩溶液中に投入され、更に箔は再びイミダール或はピリジン基を含む溶液中に投入され、その後に必要とされる場合には、銀塩溶液中にて、二つの最後の工程を数回繰り返すことが可能なさらなる後処理がなされることを特徴とする膜の生産方法にかかる。
さらに、本発明は、上記に記載の方法により使用可能な箔、アルケン-アルカン分離における上記箔の使用方法、燃料電池、アルケン-アルカン分離、電気透析、逆浸透、透析、浸透気化、及び電解における上記箔の使用にかかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
現在、ポリマ(A)及び粒子状含有成分(B)からなる延伸箔なしには同じ後処理段階(C)で同じ特性をもつ膜を形成することはできないことが知られている。
【0007】
構成成分(B)の平均粒径は0.1〜15μmである。望ましくは0.5-8.0μmであり、更に望ましくは1.0-7.0μmである。直径が0.1μmより小さい場合、二次凝集を起こし、結果生じる粒子の直径が大きくなり、一般に延伸工程において箔の破れの原因となる。粒子の形状に関しては、特別な制限はない。但し、球状粒子が好まれる。
【0008】
延伸前の非延伸箔含有成分(B)の含有量は2〜80重量%である。10〜70重量%が望ましく、20〜60重量%が更に望ましい。したがって、延伸前のポリマ成分(A)の重量比率は20〜98重量%であり、望ましくは30から90重量%、更に望ましくは40〜80重量%である。
【0009】
粒子状含有成分(B)をポリマ成分(A)に組み込む方法に関しては、特に制限はない。
【0010】
前述の方法には単純な混合法が含まれる。混錬処理は、融解した含有成分(A)に含有成分(B)を加えることにより行うことができる。混錬処理は、スクリュ押出成形ニーダ(例えば、単軸スクリュ押出機或は二軸スクリュ押出機)、バンブリミキサ、連続ミキサ、ミキシング・ロール、或はその他の機器を用いることによって行うことができる。
【0011】
含有成分(A)を融解することができない、或は含有成分(A)が望ましくない場合、含有成分(A)を適当な溶媒或は混合溶媒中に溶解する。含有成分(A)は溶解するが含有成分(B)は溶解しないすべての溶媒を使用することができる。良溶媒は、水、及びテトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、スルホラン、そしてジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性溶媒である。これにより含有成分(B)は溶存成分(A)中に高分散される。
【0012】
いかなる場合でも、この混錬処理により複合物が生成される。溶媒を使用する場合は、フィルムを適当な下敷き上に引き伸ばした後、乾燥或は沈澱処理で溶媒を取り除かなければならない。これは、技術水準であり、PCT/EP 00/03910とWO 01/87992で説明された例を指す。生成される箔は複合箔或は複合膜である。含有成分(B)は含有成分(A)のマトリクス中に分散している。非延伸フィルムに用いられるポリマの結晶化度が非常に高いために乾燥状態での伸延が不可能な場合は、溶媒を完全に除去する必要はない。
【0013】
驚いたことに、溶媒プロセスとその後の乾燥プロセスによって製造される含有成分(A)と(B)からなる箔が、乾燥状態では伸縮性がなかったものの溶媒が残留していると非常に伸縮性に富むことを見出した。
【0014】
この後、膜中に残留する溶媒の融点以上沸点以下の温度で、延伸処理が行われる。この延伸工程の後、更に無溶媒延伸処理を行うことができる。非延伸箔中の残留溶媒濃度は2〜30重量%である。しかしながら、非延伸箔中の残留溶媒濃度は5〜20重量%が望ましい。
【0015】
本発明の延伸複合フィルムは、追跡処理(C)の前或は後に、必要に応じてコロナ放電やプラズマ処理等の表面処理が片面或は両面に施される。本発明の延伸複合フィルムは、後処理(C)の前或は後に、必要な場合には官能基を有するポリマ或はポリマ混合物の溶媒層或は無溶媒層をもつ片面或は両面にコーティング或はラミネート加工が施される。官能基を示す。
【0016】
含有成分(A)が破壊されずに溶解することができる場合、成分(A)及び(B)を含有する、工程(C)の後処理がまだ施されていない延伸フィルムは、いかなる制限なく既知の処理を用いて製造することができる。例えば、同じ温度で不溶粒子状成分(B)を含有する可溶成分(A)の組成を左右する処理を用いて、延伸複合フィルムの製造を行うことができる。
【0017】
これがTダイ法を使用することで、押出物は、冷却ロールを通り抜けて、エアナイフに混ぜられるか、又はニップ・ロールを用いてフィルムを形成する。テンタを使用した連続二軸延伸による二軸延伸フィルムの製造が、以下の処理を使用して行われるのが望ましい。
【0018】
上で説明されるように、Tダイ法或はインフレーション法を用いてシート或はフィルムが製造される。次に、シート或はフィルムは縦型延伸機へ供給され、そして、0.5〜10倍の縦方向の伸延が行われる(機械的延伸比と表される)。この延伸は、100〜380℃の加熱ロール温度で行われる。120〜350℃が望ましく、130〜250℃が特に望ましい。
【0019】
そして、100℃〜380℃のテンタ温度でテンタを使用することにより、一軸延伸フィルムに0.5〜15倍の横方向の延伸を施す。テンタ温度は120〜350℃が望ましく、130〜250℃が特に望ましい。その結果形成される二軸延伸フィルムに対し、必要に応じて80〜380℃の熱処理を施す。(この熱処理における横緩和の許容量は0-25%である。)当然、上記延伸の後、更に延伸処理を行う場合もある。縦方向の延伸では、多段式の延伸、圧延、引抜加工等を組み合わせることが可能である。延伸フィルムを得るためには一軸延伸のみを採用することができる。
【0020】
粒子状の含有成分(B)は、有機或は無機物質とすることができる。粒子状含有成分(B)には、以下の延伸処理において好ましくは球状である粒子の表面に孔或は空隙が形成されていなければならない。好ましくは球状である粒子は延伸処理の後に得られる。
【0021】
空洞か適当な厚さを持つフィルム部分では、粒子状含有成分(B)の表面に孔が形成される。十分な空洞が互いに隣接し、又それらの断面が重複すると、フィルムの片面から反対の面まで連続した経路が形成される。これも又ポアである。含有成分(B)は延伸の後でもフィルムに残留している。
【0022】
延伸を介して第2経路がフィルム中に形成される。第1経路或は第1相はポリマ(A)を表す。フィルムはポリマ(A)から成る。第2経路或は第2相が空洞であり、延伸工程により形成される。粒子状含有成分(B)は空洞にある。片面から反対側の面に通じる連続相は経路と定義されるものとする。実際の浸透が可能でなければならないので経路或は相は連続している。言い換えれば、浸透物質、液体(例えば水)、気体又はイオンが片面からから反対側の面まで透過できなければならない。空洞が充填されている場合、新しい経路の特性はその「充填剤」に依存している。充填剤がイオン伝導性である場合は、経路全体がイオン伝導性をもつ。経路が連続しているということが重要である。
【0023】
層構造か骨格構造を形成するすべての無機物が極めて良好な粒子状含有成分(B)となる。フィロシリケート及び/又はテクトシリケートが特に好ましい。テクトシリケートとしてはすべての合成及び天然ゼオライトが好まれる。
【0024】
無機成分(B)がフィロシリケートである場合、それはモンモリロナイト、スメクタイト、イライト、海泡石、パリゴルスカイト、白雲母、アレバルダイト、アメサイト、ヘクトライト、タルク、フルオロヘクトライト、サポナイト、ベイデライト、ノントロナイト、ステベンサイト、ベントナイト、マイカ、バーミキュライト、フルオロバーミキュライト、ハロイサイト、合成タルク型を含むホタル石、又は2つ又はそれ以上の上記フィロシリケート混合物である。フィロシリケートは脱アミノ化或はピラー化することができる。特に好ましいのは、モンモリロナイトである。モンモリロナイトより更に効果的であるのは、フィロシリケート及び/又はテクトシリケートのプロトン化型である。
【0025】
本発明の実施例の1つでは、層構造、及び/又は骨格構造を含む含有成分(B)が延伸前及び/又は延伸後に官能基導入が行われる。官能基導入が延伸後に行われる場合、それは後処理(C)の一部である。好ましい実施例ではフィロシリケート及び/又はテクトシリケートは、延伸の前或は後に官能基が導入される。
【0026】
官能基導入フィロシリケートの説明:
「フィロシリケート」の語は、SiO4四面体が二次元無限のネットワークで結合したシリケートを意味する。(陰イオンの実験式は(Si2O52-)nである。)単層はそれらの間に位置する陽イオンによってお互いに架橋される。天然フィロシリケートでは、陽イオンとして通常Na、K、Mg、Al、及び/又は、Caのイオンが挙げられる。
【0027】
「官能基導入フィロシリケート或はテクトシリケート」の語は、官能基導入剤との反応により、分子のインターカレーションを介して最初に層間の距離が増すフィロシリケート或はテクトシリケートと理解される。官能基を有する分子の脱アミノ化前のこれらのシリケートの層の厚さは、望ましくは0.5〜10nmである。望ましくは0.5〜5nm、更に望ましくは0.8〜2nmである。フィロシリケート或はテクトシリケートに官能基を導入するためには、(本発明に従う複合物の製造の前或は後に)いわゆる官能基導入疎水化剤と反応させる。疎水化剤は又、しばしばオニウムイオン或はオニウム塩と呼ばれる。有機分子の挿入によっても同様にシリケートを疎水化することができることが多い。したがって、ここでは官能基導入疎水化剤という表現を用いる。フィロシリケート或はテクトシリケートの陽イオンは有機官能基導入疎水化剤に置換される。有機残基の性質により、シリケート内部及び/又は表面で望ましい化学的官能基導入を調整することができる。化学的官能基導入は、フィロシリケートに組み込まれる官能基導入分子の種類、つまりオリゴマ或はポリマに依存する。金属陽イオン或はプロトンの交換は通常、部分的或は完全である。陽イオンの完全な交換が好ましい(金属イオン或はプロトン)。交換可能な陽イオン、金属イオン或はプロトンの量は、通常フィロシリケート或はテクトシリケート1gあたりのミリ当量(meq)として表され、イオン交換容量と呼ばれる。少なくとも5meq/gの陽イオン交換容量を持つフィロシリケート或はテクトシリケートが好ましい。0.8〜1.3meq/gの陽イオン交換容量がより望ましい。適切な有機官能基導入疎水化剤は、オキソニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、及びスルホニウムイオンから導かれる。これらのイオン類は1つ以上の有機残基を有している。
【0028】
適切な官能基導入疎水化剤として、一般公式I及び/又はIIで表されるものが挙げられる:
【化2】

式中、置換基は、以下の意味を有する。R1、R2、R3、R4は互いに独立して水素、1〜40個、好ましくは1〜20個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、飽和或は非飽和ラジカル由来であり、任意選択的に少なくとも1つの官能基を有し、2つのラジカルが互いに好ましくは5〜10個の炭素原子、より好ましくは1つ以上の窒素原子を有する複素環の残基に連結している。ここで、
Xはリン、窒素或は炭素を表し、
Yは酸素、硫黄或は硫黄を表し、
Nは1〜5、好ましくは1〜3の整数であり、
Zは陰イオンである。
Yが炭素を表す場合、ラジカルR1、R2又はR3の1つはこの炭素に二重結合を形成している。適当な官能基はヒドロキシル基、ニトロ基、ホスホン酸基又はスルホン酸基である。カルボキシル基とスルホン酸基が特に好ましい。同様に、スルホン酸クロリド基とカルボキシル酸クロリド基が特に好ましい。適切な陰イオン(Z)は、プロトンを供給する酸、特に鉱酸から派生する。塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲン、硫酸塩やスルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、亜リン酸塩、カルボン酸塩、特に酢酸塩が好ましい。
【0029】
出発物質として使用されるフィロシリケート及び/又はテクトシリケートは、一般に懸濁液として反応する。好ましい懸濁剤は水であり、任意にアルコール系溶剤、特に炭素原子数1〜3の低級アルコールと混合される。官能基導入疎水化剤が水可溶性でない場合は、その疎水化剤が可溶である溶媒が好ましい。つまり非プロトン性溶媒である。懸濁剤の例として、他にケトンと炭化水素がある。通常、水と混合できる懸濁剤が好ましい。疎水化剤がフィロシリケートに加えられる際、イオン交換が起き、通常溶液からフィロシリケートが沈殿する。イオン交換の副産物として生じる金属塩は水溶性であることが好ましく、この場合例えば濾過により疎水化フィロシリケートを結晶固体として分離することができる。延伸後にフィルム中で官能基導入が行われる際、当然フィロシリケート或はテクトシリケートは官能基導入の前に固体として有効である。陽イオン交換は官能基導入物質を含有する溶液中での延伸フィルムの二次処理により行われる。元来シリケートに結合していた陽イオンは同じ溶媒或は別の適当な溶媒によって第二段階で除去される。また、固体、特に難溶性塩としてのシリケートの表面及び内部で元来結合した陽イオンを修復することも可能である。これは元来シリケートに結合していた陽イオンが、金属陽イオン等の2価、3価、或は4価の陽イオンである場合に多い。その例として、Ti4+、Zr4+、ZrO2+そしてTiO2+が挙げられる。
【0030】
イオン交換は反応温度にほとんど影響されない。好ましい温度は、官能基導入物質が存在する媒質の結晶化温度以上、そして官能基導入物質の沸点以下である。水溶液系においては、0〜100℃の間、好ましくは40〜80℃の間である。
【0031】
官能基導入物質としては、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。また、官能基としてカルボキシル酸クロリド或はスルホン酸クロリドも同分子内に存在すると特に有効である。 アルキルアンモニウムイオンはヨウ化メチル等の通常のメチル化試薬により得ることができる。アンモニウムイオンはα-ω-アミノカルボン酸が良好であり、以下の物質が更に望ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
乾燥によって疎水化及び官能基導入フィロシリケートから水を除去する。一般に、そのようにして処理したフィロシリケートは、0〜5重量%の水を依然として含んでいる。その後、疎水化フィロシリケートを、できるだけ水を含まない懸濁剤中で懸濁液の形態で記載のポリマと混合し、更に処理して膜を得ることができる。非延伸箔を得るための方法として押出成形を選択した場合、官能基導入フィロシリケート或はテクトシリケートが溶解物に加えられる。未改質フィロシリケート或はテクトシリケートを溶解物に加え、又延伸後にシリケートに官能基を導入することが好ましい。これは押出加工の温度が官能基導入物質の分解温度を超える場合には特に好ましい。
【0034】
特に好ましいテクトシリケート及び/又はフィロシリケートの官能基導入は、一般に、修飾色素又はその前駆体、特にトリフェニルメタン色素を用いて行う。これらは以下の一般式で表される。
【化4】

本発明では、以下の基本骨格に由来する色素を使用する。

ラジカルRは互いに独立して水素、1〜40個の炭素原子を有し、好ましくは直鎖或は非分岐鎖のアルキル、シクロアルキル-或は任意にアルキル化したアリール基であり、場合によって1つ以上のフッ素原子を含む。官能基導入疎水化剤に関しては、ラジカルRは上記の一般式(I)及び(II)から官能基をもつラジカル R1、R2、R3又はR4とそれぞれ独立して一致する。フィロシリケートに官能基を導入するために、色素又はその還元前駆体を、非プロトン性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、DMAc、NMP)中でフィロシリケートと反応させる。約24時間後、色素或は前駆体がフィロシリケートの空洞にインターカレーションする。イオン伝導基がシリケート粒子表面上に存在するようにインターカレーションされなければならない。
【0035】
以下の図は、この過程を概略的に示したものである。
【化5】

【0036】
したがって、出願DE10024575.7に記載のように、官能基導入フィロシリケートを添加物としてポリマ溶液に添加する。フィロシリケート或はテクトシリケートへの官能基導入は、延伸フィルム内での陽イオン交換を介して再び行われる。 色素前駆体を使用することが特に好ましいことが見出された。酸性条件の二次処理によって、以下の酸化反応において水が分離することにより、色素自体が形成される。驚くべきことに、トリフェニルメタン色素の場合、本発明によって調製された膜中でこれらの色素がプロトン伝導性を支持することが見出された。水を含まない場合でもこのプロトン伝導性を支持すると充分な確実性を持って明言することはできない。色素がシリケートと結合しない場合、つまり色素が遊離形態で延伸膜中に存在する場合、色素は短時間で反応水を有する燃料電池から排出される。
【化6】

【0037】
本発明によれば、上記親特許出願のスルフィナート基を含有するポリマブレンド、最も好ましくは熱可塑性官能基導入ポリマ(アイオノマ)を疎水化フィロシリケート懸濁液に添加する。これは、既に溶解させた形態のポリマを使用して或はポリマを懸濁液自体に溶解して行うことができる。好ましくは、フィロシリケートの重量比は1〜70重量%、より好ましくは2〜40重量%、最も好ましくは5〜15重量%である。
【0038】
親特許出願に対する更なる改良は、膜ポリマ溶液及びフィロシリケート及び/又はテクトシリケートの空洞への塩化ジルコニル(ZrOCl2)の添加である。リン酸中で膜の二次処理を行った場合、膜中のシリカ粒子の極近くにほとんど溶解しないリン酸ジルコニウムが沈殿する。リン酸ジルコニウムは、燃料電池を稼動させた場合、自己プロトン伝導性を示す。プロトン伝導性は、中間工程としてのリン酸水素形成を介して作用し、これは本技術水準の一部である。 貯水剤(シリケート)のすぐ近くへの封入を制御することは新規である。
【0039】
粒子状成分(B)を含む延伸ミクロポーラスフィルムに対し、本発明に従って1つ以上の二次処理(C)が施される。本発明の特別実施例においては、ミクロポーラス箔はフィロシリケート及び/又はテクトシリケートを含む。これらは1つ或は複数の段階で官能基が導入される。
【0040】
官能基導入充填剤、特にゼオライト及び代表的なベイデライト系及びベントナイトが唯一のイオン伝導性成分である場合、その重量比は通常5〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、最も好ましくは30〜60重量%である。
【0041】
本発明の複合膜の成分(A)のポリマ成分は、以下の様に定義される。
(1)本発明のポリマの主鎖(バックボーン)
実際にはすべてのポリマが主鎖となる可能性がある。しかしながら、好ましくは以下が主鎖となる。
-ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリノルボルネン、ポリメチルペンテン、ポリ(1,4-イソプレン)、ポリ、(3,4-イソプレン)、ポリ(1,4-ブタジエン)、ポリ(1,2-ブタジエン)等のポリオレフィン
-ポリスチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(α、α、β-トリフルオロスチレン)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)等のスチレン(コ)ポリマ
-Nafion(R)或はNafion(R)のSO2ハロゲン-前駆体(ハロゲン=F、Cl、Br)、Dow(R)膜、GoreSelect(R)膜等のペルフルオロイオノマ。
-ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンイミン、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(3-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)等のN塩基性ポリマ
-図示した構造パターンを含む(ヘテロ)アリール主鎖ポリマ。

(ヘテロ)アリール主鎖ポリマとしては特に以下が好ましい。
-ポリエーテルケトンPEK Victrex(R)、ポリエーテルエーテルケトンPEEK Victrex(R)、ポリエーテルエーテルケトンケトンPEEKK、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンPEKEKK Ultrapek(R)等のポリエーテルケトン
-ポリスルホンUdel(R)、ポリフェニルスルホンRadel(R)、ポリエーテルエーテルスルホンRadel A(R)、ポリエーテルスルホンPES Victrex(R)のようなポリエーテルスルホン
-PBI Celazol(R)その他、主鎖或は重合体側鎖において(ベンゾ)イミダゾールが有効であるオリゴマ及びポリマ含有(ベンゾ)イミダゾール類等のポリ(ベンゾ)イミダゾル。
-ポリ(2,6-ジメチルオキシフェニレン)、ポリ(2,6-ジフェニルオキシフェニレン)等のポリフェニレンエーテル。
-ポリフェニレンサルファイドとコポリマ
-場合によってベンゾイル、ナフトイル或はo-フェニルオキシ-1,4-ベンゾイル類、m-フェニルオキシ-1,4-ベンゾイル類或はp-フェニルオキシ-1,4-ベンゾイル類によって側基での改質か可能なポリ(1,4-フェニレン)或はポリ(1,3-フェニレン)。
-ポリ(ベンゾオキサゾール)とコポリマ
-ポリ(ベンゾチアゾール)とコポリマ
-ポリ(フタラジノン)とコポリマ
-ポリアニリンとコポリマ
-ポリチアゾール
-ポリピロール
【0042】
(2)ポリマ・タイプA(陽イオン交換基か非イオン性前駆体があるポリマ):
ポリマ・タイプAは上記のポリマ主鎖(1)と以下の陽イオン交換基或はそれらの非イオン性前駆体から成るすべてのポリマを含む。
【化7】

【0043】
(3)ポリマ・タイプB(N-塩基性基、及び/又は、陰イオン交換基があるポリマ):
ポリマ・タイプBは上記のポリマ主鎖(1)から成り、以下の陰イオン系交換基或はそれらの非イオン性前駆体(第一級、第二級、第三級N−塩基性基を有する)すべてのポリマを含む。
N(R2)3+Y-、P(R2)3+Y、ここでR2ラジカルは同じ或は互いに異なる、
N(R2)2(第一級、第二級、又は第三級アミン)、
N-塩基性(ヘテロ)アリール及び複素環基をもつポリマを図2に示す。
ポリマ主鎖としてポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(ベンズイミダゾール)等の(ヘテロ)アリール主鎖ポリマが望ましい。塩基性基として、第一級、第二級、第三級のアミノ基やピリジン基、イミダゾール基が好ましい。
【0044】
(4)ポリマ・タイプC(スルホン酸基、及び/又は、不飽和基のような架橋処理する重合体を含むポリマ):
ポリマ・タイプCは上記のポリマの主鎖(1)と架橋結合基から成るあらゆるのポリマを含む。例えば、架橋結合基:
4a)アルケン基:ポリマC(R13)=R13、R14、R15を持つC(R14R15)=R2又はR4
4b)ポリマ-Si(R16R17)-H、R16, R17=R2又はR4を持つ
4c)ポリマ-COX、ポリマ-SO2X、ポリマ-POX2
4d)スルフィナート基-SO2Me
4e)ポリマ-N(R2)2でR2≠Hを持つ。
前述の架橋結合基の1つ又はいくつかの前述の架橋結合基はポリマの主鎖上にあることができる。次の資料によると架橋結合は既知の反作用により遂行され得る:
(I)過酸化物の添加による4a)の基;
(II)ハイドロシレイションによるPtの触媒作用の下の4a)の基と4b)の基;
(III)スルホン酸基のS-アルキル化のジハロゲンアルカン又はジハロゲンアリールの架橋剤(例えばHal-(CH2)x-Hal、x=3-20)を有する基4d);
(IV)第三のNベース基のアルキル化があるジハロゲナルキル又はジハロゲンアリールの架橋剤(例えばHal-(CH2)x-Hal、x=3-20)を有する基4e)
(V)基4d)とスルホン酸基のS-アルキル化と第三のNベース基のアルキル化のジハロゲンアルカンとジハロゲンアリールの架橋剤(例えばHal-(CH2)x-Hal、x=3-20)を有する4e)
(VI)ジアミンとの反作用による基4c)
架橋結合反応(III)と(IV)と(V)、特に架橋結合反応(III)は好まれている。
(5)ポリマ・タイプD(陽イオン交換基及び陰イオン交換基、及び/又は基本的なNの基、及び/又は架橋剤の基が付いてるポリマ):
ポリマタイプDは前述のポリマの主鎖(1)を含んで、種々雑多な基を運ぶことができるポリマを含む:(2)に記載されている陽イオン基又は非イオンの前駆物質及び、(3)に記載されている陰イオン基又は第一、第二、第三のN塩基性基、及び/又は(4)に記載される架橋基
以下の組み合わせが可能である:
ポリマD1:陽イオン交換基か非イオンの前駆物質と陰イオン交換基、及び/又は、N塩基性基があるポリマ
ポリマD2:陽イオン交換基か非イオンの前駆物資と架橋結合基を有するポリマ
ポリマD3:陰イオン交換基、及び/又は、N塩基性基と架橋処理基を有するポリマ
ポリマD4:陽イオン交換基か非イオンの前駆物質と陰イオン交換基、及び/又は、N塩基性基と架橋処理基を有するポリマ
【0045】
以下では、無機の粒子状含有成分(B)を含む後処理の延伸したフィルムに使用される過程が細目にわたり、この過程は、膜が燃料電池アプリケーション、アルケンのアルカン分離、電気透析、逆浸透、透析、浸透気化法、電解、及び他の膜のアプリケーションに利用可能であるという可能性を与え得る。
【0046】
溶け易い伸縮可能なポリマ(例えば、ポリプロピレン)は無機の粒子状含有成分(B)で合成される。望ましい含有成分(B)は層状構造で、及び/又は、枠組みの構造であり、特にフィロシリケート、及び/又は、5ミクロから10ミクロの平均した粒径のテクトシリケートを含む。合成の定義:ポリマは溶融状態で無機の含有成分、(この場合珪酸塩)に混ぜられる。共通の方法は二軸スクリュ押し出し機で含有成分を混ぜることである。結果1が合成物を得るのに従って、この場合、珪酸塩はポリプロピレンになる。ベントナイトモンモリロナイトは次に成分を含んでいる珪石として非常によく使用される。しかしながら、これはベントナイトの特別な制限を意味するものではない。
【0047】
既知の方法によると、フィルムは現在、上で説明されるように伸ばされる。
現在、延伸された箔はミクロ多孔質膜である。孔径は、粒径、ポリマの延伸の特性、ストレッチ間に使用された牽引用の力に従属する。濃い膜は完全に無用である。例えば、ガスは妨害されずに浸透する。
【0048】
本発明の膜に関しては、有機的に変更された粘土かゼオライトが使用されている。ベントナイトは粘土で、そして、モンモリロナイトは特別なベントナイトである。モンモリロナイトは好まれる。但し、低分子化合物が挿入可能な他の全ての基質が使用され得るモンモリロナイトは挿入によりそれ自身に分子を結ぶことができる。モンモリロナイトが変更されているので、強力な基本的成分は、粒子から出ているか、又は粒子の表面にある。この有機的な変更は従来の技術である。望ましい有機的な成分は窒素を含む。複素環部分は特に好まれる。複素環部分においては、イミダゾールとグアニジン誘導体は特に好まれる。これはこの2つの基質のクラスの制限を意味しない。強い端永続的なベースを含む他のあらゆる物質のクラスは、又可能である。この有機的に変更されたモンモリロナイトはポリマによって合成され、箔に解放され、その後延伸される。ポリプロピレンの例では、重さに従い最大70%まで容易に取り入れることが可能であり、重さにより特に望ましい数値は50%から60%である。その結果、表面のイミダゾールの基を運ぶ粘土の粒子が付着するミクロ多孔性の延伸したフィルムを得る。このフィルムは、現在、リン酸で後処理される。リン酸は、フィルムに入り込んで、イミダゾール基と共に化合物を形成する。その上、無機の粒子と外部の両方のまだ既存の空洞はリン酸で満たされる。フィルムは、現在、濃い陽子を伝導する膜になって、燃料電池の状態で使用が可能である。
【0049】
さらにリン酸の「にじみ」に対して膜を閉ざすために、本発明に従い、膜はオキシ塩化ジルコニウム溶液に浸される。不溶解性のジルコニウムリン酸塩は膜へ又膜自体における界面で沈殿する。膜はこの工程で更に密封される。ジルコニウムリン酸塩は陽子伝導率を支える。燃料電池はこの膜の使用に適している。ポリマ成分としてポリスルホン或はVectra950(R)(Ticona社製)等の熱可塑性物質を使用した場合、形成される膜はPEM燃料電池に適用することができる。また、80℃以上の温度でも使用できる。
【0050】
本発明の工程の利点は、フィルムが溶媒から引き出されるのではなく押出されるということである。延伸フィルムとなるポリマ、有機的に改質された粘土、イミダゾール、リン酸を用い、その後部分的にリン酸ジルコニウムへ沈殿が生じる上記工程は、基本的な発明の特別の模範例にすぎない。第2経路はフィルム内で延伸を介して形成される。フィルムの原料であるポリマ成分(A)はそれ自体が第1経路である。延伸工程から生じた空洞或は細孔が第2経路である。片面から反対側の面へ通じた通路が経路として理解される。真の浸透が可能となるためには、経路が連続していなければならない。
【0051】
即ち、例えば水蒸気ならば片面から反対側の面に透過することができなければならない。空洞が充填された場合、新しい経路の特性は「充填剤」に依存する。充填剤がイオン伝導性であるなら、経路全体がイオン伝導性を示す。経路が連続していることが重要である。延伸前のフィルムは、押出成形により製造することができる。しかしながら、溶媒からフィルムを製造することも可能である。改質或は未改質充填剤を用いた溶媒からのフィルム製造は従来技術である。押出成形はポリマの溶解を前提とする。
【0052】
官能基導入ポリマのほとんどは、押出し成形の際極めて大きな損失が生じる。ポリマがスルホクロライド等の化学的前駆体やスルホン酸を含む場合、溶融前にそれは縮重している。そのような場合、製造法としては溶媒を解した処理が好ましい。 ほぼ任意に2つの経路の特性を変更することができる。
【0053】
燃料電池技術においては、含水膜(例えば、Nafion R(R))を特に良好に機能させるために、プロトン伝導性を80℃以下で作用させることが問題となる。この温度以上では、水が次第に失われ、その結果プロトン伝導性が低下しそれに伴い性能も低下する。従来技術によると、又プロトン伝導であるかプロトン伝導性を支持するポリマと無機の充填剤から複合材を作り出すことにより問題を解決する試みがなされて来た。
【0054】
個々の経路、即ち無機の充填剤或は有機的なイオノマが互いの如何にかかわらず膜の片面から反対側の面まで連続していないことが問題であった。従来技術からの進歩のために本発明に従って膜が製造された。それは、例えば、高分子スルホン酸や、場合によっては以前有機的に改質された無機成分等の水依存性高分子プロトン伝導体を含む。
【0055】
このフィルムは延伸され、結果生じる第2経路はより高い温度(T>80℃)でプロトン伝導性物質により充填される。例えば、リン酸やオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2)を微細孔膜の代わりに用いることにより、充填構造が得られる。それ以上リン酸ジルコニウムが全く膜に沈殿しなくなるまで、この処理を何度も繰り返すことができる。しかしながら、リン酸ジルコニウムの沈殿は1つの可能性であるにすぎない。例えば、スルホン化ポリエーテルケトン或はポリスルホンがポリマとして使用される。
【0056】
その結果、連続したプロトン伝導経路を持つ膜を得る。80℃未満では、プロトン伝導性は水中で膨張したポリマスルホン酸を介して支配的に作用し、それ以上の温度領域では無機プロトン伝導体を介して作用する。その遷移は緩やかである。別の具体例では、貫通経路の概念は少なく、未完成の微細孔膜に対し望まれる応用へ向けた二次改質工程が施される。二つの膜が、膜自体の機能を阻害することなく1つに組み合わされる。異なる色をした二つの糸から織られた繊維状物質を考えると明確である。選択できる糸の範囲は幅広い。しかしながら、完成した均質な繊維に後に糸が挿入される。
【0057】
特に好ましい場合における工程を再度図式的に説明する。含有成分(A)は劣化していない可溶性ポリマであり、粒子状成分(B)は平均粒子径が0.1〜15μmであるフィロシリケート或はテクトシリケートである。成分(A)及び(B)を含有する複合物の押出成形とその後の延伸により微細多孔性フィルムが得られる。この微孔性箔に、同じ分子中に少なくとも2つの官能基を持っている分子の溶液中で後処理が施される。分子中の官能基の1つは陽電荷を有し、望ましくは、これは窒素原子の陽イオンである。シリケイトの層構造或は骨格構造に窒素陽イオンがインターカレートする。そして陽イオン交換が行われる。
【0058】
また、例えば、シリケート中にインターカレートする酸性ケイ酸塩により、窒素の1価、2価、3価の陽イオン化から窒素陽イオンが生じる。既に上で詳述したように、シリケートでの陽イオン交換は、完全に或は部分的に行うことができる。結果として形成される膜は既に十分目塗りされ、アルケン/アルカン分離等の膜応用に適している。フィロシリケート或はテクトシリケートにインターカレートしていない残留官能基は、イオン伝導基の前駆体となることができる。例えば、スルホン酸クロライド、炭酸クロライド或は又はホスホン酸クロライド等である。陽イオン或は陰イオン交換基の前駆体さらなる例を上に示す。これらの前駆体は、さらなる後処理において選択透過を支持する基に転換する。例えば、酸性、中性、或はアルカリ性の媒質中でスルホン酸ハライドが生じる場合、これは加水分解である。さらにフィルムを目塗りするためには、延伸フィルムは、多価金属塩、例えば、Ti4+、Zr4+、Ti3+、Zr3+、TiO2+、ZrO2+と酸により、交互に結合させ、低分子或は高分子となることができる。リン酸塩及び硫酸を水で希釈することが好ましい。リン酸濃度は、1〜85重量%である。好ましくは20〜80重量%である。硫酸濃度は、1〜80重量%である。20〜50重量%が好ましい。
【0059】
膜中の難溶性プロトン伝導体の沈殿過程は何度も繰り返すことができる。
【0060】
延伸の結果空洞が表面上に形成する無機成分としては、どんな物質も使用することができる(図1:延伸による空洞形成過程参照)。含有成分が必ずしも無機である必要はない。
【0061】
既に説明したように、唯一の条件は、ボイドスペースが延伸後の粒子表面に形成されるということである。この延伸は、一軸或は又二軸方向に行うことができる。二軸延伸が好ましい。しかしながら、中空繊維における応用では、一軸延伸で十分である。
【0062】
さらに、3番目の方向、即ち三軸方向への延伸も可能である。このために、例えばフィルム状に押出された複合物は、真空ノズルとプレートの上の保持レベルにあり、又上から接地する細孔を通して真空に引くことができる。フィルムは2枚のプレートの間で修復される。真空に引かれた状態で二つのプレートが引き出され、フィルムが破れずに延伸されるのみである間隔を選択した場合、延伸フィルムが得られる。
【0063】
本発明のさらなる応用は電気透析である。
微孔性延伸膜は陽イオン交換体から成り、そして、第2経路は陰イオン交換体から成る。例えば、DE19836514A1で説明されるように、必要な場合はプロトンリーチングを伴う(図3:図面2頁目)。この膜の周りには電界が生じており、その中では水はプロトンと水酸イオンに解離している。電解に従って、プロトンは陽イオン交換経路に沿って陰極側に移動し、一方水酸イオン(OH-)は陰イオン交換経路に沿って陽極側に移動する。このように、非常に経済的かつ単純に電気透析用膜を作成することができる。
【0064】
しかしながら、経路も交換することができる。次に、陰イオン交換膜或は陰イオン交換基の化学的前駆体が最初に延伸される。ここで、第2経路は陽イオン交換膜である。それに応じて無機成分の改良が選択されなければならない。
【0065】
本発明の利点上で簡潔に述べられただけである。原則としてイオノマを押出すことはできない。したがって、可塑剤なしでNafion R(R)を押出すことは不可能である。後になると可塑剤(押出成形のための助剤)は膜から取り除くのが非常に困難になる。しかしながら、膜の操作性のためには可塑剤が必要である。
【0066】
本発明では、有機的に改質された粒子(例えばモンモリロナイト)を可溶のポリマ中で加工することが可能であり、従ってフィルムを形成することができる。第2段階では、延伸により連続した経路が形成され、続いてイオン導体で満たされる。成分(B)を含有する粒子状無機層構造或は骨格構造により、さもなければ膜の応用条件の下、一般化学式(I)或は(II)で表される疎水化官能基導入剤を有する易動性或は揮発性官能基が技術的に適切な期間に渡り微孔性フィルムに固定されるため、膜応用に利用することができる。これにより製造費を大幅に削減することができる。既存の大型プラントで大面積の「生の」膜を製造することができる。これは第2段階における応用に依存して調整することができる。本工程に従い、海水の脱塩処理のための膜が非常に経済的に製造できる。例えば基本的ポリマとしてポリプロピレンがここで使用される。無機成分(例えば、モンモリロナイト)が事前に有機的に改質されていれば、荷電基が表面に残る。例えばα-ω-アミノスルホン酸に対してこれが可能である。延伸の結果、充填されたマイクロ多孔質膜が形成される。これは逆浸透膜法に適している。その上、細孔の中で架橋可能官能基導入剤基を介して架橋反応を起こすことができる。これは、共有結合性、及び/又は、イオン結合性の架橋となることができる。
【0067】
他の応用としてアルケン/アルカン分離がある。非共有電子対がある複素環の窒素は銀イオン、例えば硝酸銀溶液と反応し、難溶性の錯体が形成される。驚くべきことに、この錯体が膜内に存在する場合、アルケンを結合することができるのを見出した。
【0068】
フィルムがポリベンゾイミダゾールから形成され、24時間から最大2週間低濃度から高濃度の銀塩溶液(硝酸塩が好ましい)に浸すと、この膜はアルケン/アルカン混合液の分離効率が高い膜となる。溶媒としては、銀塩水溶液或は非プロトン性溶媒を使用することができる。アルケンとオレフィンは技術的に適切な流量で水をほとんど含まずにそのような膜を透過する。ヘテロ環窒素が表面にある有機的に改質されたモンモリロナイトの挿入により、例えば、少なくとも1つの非共有電子対を生じ、流量の向上が達成される。
膜を慎重に延伸した後、銀塩溶液に浸す。延伸により、より容易な移動が可能となるチャネル構造が膜内に形成される。ポリプロピレン等の未改質ポリマが有機的に改質されたモンモリロナイトにより延伸される場合はかなりのコスト低減を得る。モンモリロナイトは、再びその表面上でイミダゾール或はピリジン基を有するようになる。延伸後に、微細孔膜は銀イオン含有溶液に浸される。この後得られる膜はアルケン/アルカン分離に適している。この膜は低分子量の物質の分離に適している。ここで、混合液の1つの成分は二重結合を含み、銀イオンと可逆的な錯体を形成する。低分子性オレフィン/アルカン混合液の分離が特に好ましい。モンモリロナイトは必ずしも改質されている必要はない。ポリプロピレンは、モンモリロナイトに混合され、延伸される。この後、多孔質フィルムは芳香族窒素を含む溶液との後処理により、少なくとも1つの非共有電子対を生じる。溶媒としては、いかなる適当な溶媒或は溶媒混合液を使用することができる。水及び非プロトン性溶媒が好ましい。窒素を含む相当分子が粘土の空洞に浸潤し、細孔を充填するということだけが重要である。以下の段階では、銀イオン或は銅イオン含有溶液により膜に後処理が施される。銀イオン或は銅イオンを溶液中に保持する溶媒ならいかなる溶媒も使用できる。特に好ましいのは、水及びDMSO、NMP、THF等の非プロトン性溶媒である。結果として、窒化銀イオン錯体か窒化銅イオン錯体が膜に沈殿する。必要な場合はこの処理が何度か繰り返される。この膜は無水アルケンアルカン分離に適している。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、延伸による空洞形成過程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填される、延伸膜。

【図1】
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【公開番号】特開2007−262419(P2007−262419A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134592(P2007−134592)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【分割の表示】特願2002−589551(P2002−589551)の分割
【原出願日】平成14年5月13日(2002.5.13)
【出願人】(507055877)
【出願人】(501421498)
【Fターム(参考)】