説明

建具

【課題】枠体を変更することなく框を視界から隠すことが可能な建具を提供することにある。
【解決手段】開口に設けられ、上枠、下枠、及び、左右の縦枠が矩形状に枠組みされた枠体、前記枠体に設けられ、面材と、当該面材の周縁を保持する上框、下框、及び、左右の縦框が矩形状に枠組みされた框体と、を備えた障子、及び、前記上枠と前記左右の縦枠とに取り付けられ、前記枠体及び前記障子を見込み方向における一方側から見たときに、前記上框と前記左右の縦框との前記一方側の側面を覆う覆い部材、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口に設けられた枠体と、前記枠体に設けられ面材及び当該面材を保持する框を備えた障子と、を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の開口部に取り付けられた枠体に、ガラスパネルと該ガラスパネルの外周端部に取り付けられた框とを備えた障子を有する建具(開口部装置)が知られている(特許文献1参照)。この建具は、障子が有する一対の縦框と一対の横框のうちの少なくとも一方の一部又は全部が、室内側又は室外側正面視で見えないように、開口部を形成する壁の周縁部、例えば額縁や枠体により覆われて隠蔽されている。
【特許文献1】特開2007−177431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、障子の框は必ずしも隠蔽しなければならないものではないにも拘わらず、枠体等により框を隠蔽する構造とするために枠体の形状が複雑になったり、サイズが大きくなったりして、コストが高騰する畏れがある。このため、框を隠蔽して美観に優れた建具を求めるユーザーと、コストを抑えた建具を求めるユーザーとの要望に応えるために、1つの仕様の製品に対し2種類の枠体を備えると、在庫の管理が煩雑になると共に、広い保管場所が必要となるという課題がある。
【0004】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、枠体を変更することなく框を視界から隠すことが可能な建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、開口に設けられ、上枠、下枠、及び、左右の縦枠が矩形状に枠組みされた枠体、前記枠体に設けられ、面材と、当該面材の周縁を保持する上框、下框、及び、左右の縦框が矩形状に枠組みされた框体と、を備えた障子、及び、前記上枠と前記左右の縦枠とに取り付けられ、前記枠体及び前記障子を見込み方向における一方側から見たときに、前記上框と前記左右の縦框との前記一方側の側面を覆う覆い部材、を有することを特徴とする建具である。
【0006】
このような建具によれば、障子が備える上框及び左右の縦框の一方側の側面を覆う覆い部材が上枠、及び、左右の縦枠に取り付けられているので、見込み方向における一方側から見たときには、上枠、及び、左右の縦枠に取り付けられた覆い部材により障子の上框及び左右の縦框が見えないように隠すことが可能である。すなわち、上枠、及び、左右の縦枠に覆い部材を取り付けるだけで、既存の枠体を変更することなく、一方側からの視界から上框及び左右の縦框を隠すことが可能である。
【0007】
かかる建具であって、前記上枠及び前記左右の縦枠は、前記覆い部材が取り付けられる取付孔を有し、前記取付孔は、見込み方向に沿う面に設けられていることが望ましい。
このような建具によれば、覆い部材を取り付けるための取付孔が見込み方向に沿う面に設けられているので、覆い部材を用いない場合や取り外した場合であっても、取付孔は屋内側や屋外側から視認されにくい。このため、覆い部材を用いない場合や取り外した場合であっても美観に優れた建具を提供することが可能である。
【0008】
また、かかる建具であって、前記上枠及び前記左右の縦枠は、前記覆い部材が取り付けられる取付部を有し、前記取付部は、見付け方向に向かって開放された凹部であることとしてもよい。
このような建具によれば、覆い部材を取り付けるための取付部は見付け方向に開放された凹部なので、覆い部材を用いない場合や取り外した場合であっても、取付孔は屋内側や屋外側から視認されにくい。このため、覆い部材を用いない場合や取り外した場合であっても美観に優れた建具を提供することが可能である。
【0009】
かかる建具であって、前記障子は、開かれる際に見込み方向における他方側に突出し、前記障子の前記一方側には、前記覆い部材を介して取り付けられる網戸を有することが望ましい。
このような建具は、障子は開かれる際に見込み方向における他方側に突出するため、網戸は障子の一方側に設けられる。また、覆い部材は、上框と左右の縦框との一方側の側面を覆うために設けられるので障子の一方側に設けられる。このため、網戸を取り付けるための部位が枠体に設けられていなくとも、枠体に覆い部材を取り付けることによって網戸を、覆い部材を介して取り付けることが可能である。
【0010】
かかる建具であって、前記上枠及び前記左右の縦枠はそれぞれ、断熱部材を介して見込み方向連結された異なる2つの部材にて構成されており、前記覆い部材は、前記2つの部材のうちのいずれか一方のみに取り付けられていることが望ましい。
このような建具によれば、覆い部材が断熱部材を介して見込み方向連結された異なる2つの部材のうちのいずれか一方にのみ当接されて取り付けられているので、覆い部材を介して2つの部材のうちの一方側から他方側へ熱が伝達される畏れはない。このため、建具の断熱性を確保しつつ框を覆うことが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、枠体を変更することなく框を視界から隠すことが可能な建具を提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
本実施形態では建具として、建物の開口に設けられた枠体に回動可能に設けられた障子を、一方側としての屋内側に設けられたハンドルを操作することにより開閉可能な縦辷り出し窓を例に挙げて説明する。以下の説明では、建具を屋内側から見た状態にて上下となる方向を上下方向、及び左右となる方向を左右方向又は見付け方向、屋内外となる方向見込み方向として説明する。尚、障子単体としての説明であっても、障子を枠体に取り付けた状態における上下を上下方向として説明する。
【0013】
本実施形態に係る建具10は、図1、図2に示すように、開口3が設けられて屋内外の境界となる壁1内の躯体2に取り付けられた枠体20と、枠体20を構成する上枠22及び下枠25に回動自在に支持された障子50と、障子50を開閉するために操作するハンドル62を有する開閉機構部60と、障子50に対し見込み方向における一方側としての屋内側に着脱自在に設けられる網戸68と、枠体20に取り付けられて障子50の見込み方向における一方側としての屋内側の側面52aを覆う覆い部材70と、を有している。本実施形態の建具10が開かれる際には、上枠22及び下枠25に支持された障子50が回動して、見込み方向における他方側としての屋外側に突出する。
【0014】
建具10が設けられている屋内側の壁面には内面材1aが躯体2に取り付けられており、内面材1aと枠体20との端部を覆うように全周に亘って額縁5が設けられている。
【0015】
枠体20は、障子50の上下に位置する上枠22及び下枠25と、左右に位置する縦枠30、32を有し、矩形状に枠組みされている。以下の説明では、左に位置する縦枠を左縦枠30、右に位置する縦枠を右縦枠32という。
【0016】
上枠22は、見込み方向における屋外側に配置され躯体2に屋外側からねじ止めされた外側上枠部23と、外側上枠部23と断熱部材29を介して屋内側に設けられ、額縁5を介して躯体2にねじ止めされた内側上枠部24とを有しており、断熱部材29と共に一体成形されたアルミニウム製の押出部材である。
【0017】
外側上枠部23は、躯体2の屋外側の面に当接されてねじ止めされる外側取付部23aと、外側取付部23aの下端と繋がった中空部23bと、中空部23bの屋外側の下端に障子50の上框54が当接されるシール材9が取り付けられるシール取付凹部23cと、中空部23bの屋内側の下端に断熱部材29の屋外側の端部が収容された断熱部材収容部23dと、を有している。
【0018】
内側上枠部24は、中空部24aと、中空部24aの上面における屋外側に立設されて断熱部材29の屋内側の端部が収容される断熱部材収容部24bと、中空部24aの屋内側の端部から上方に立設されて先端が躯体2に当接された内側壁部24cと、中空部24aの屋内側の下端からほぼ水平方向に延設されて、屋内側から躯体2の下側に亘って設けられた額縁5の下面に当接されてねじ止めされた内側取付部24dと、中空部24aの屋外側の下端から屋外側にほぼ水平に突出された突出部24eと、突出部24eの屋外側の端部から垂設され下端部に上框54が当接されるシール材9が保持されるシール保持部24fと、を有している。
【0019】
下枠25は、見込み方向における屋外側に配置され躯体2に屋外側からねじ止めされた外側下枠部26と、外側下枠部26と断熱部材29を介して屋内側に設けられ躯体2上に載置されるとともに額縁5にねじ止めされた内側下枠部27とを有しており、断熱部材29と共に一体成形されたアルミニウム製の押出部材である。
【0020】
外側下枠部26は、躯体2の屋外側の面に当接されてねじ止めされる外側取付部26aと、外側取付部26aの上端と繋がって上下2つの空間を有する中空部26bと、中空部26bの屋外側の上端に障子50の下框55が当接されるシール材9が取り付けられるシール取付凹部26cと、中空部26bの屋内側の上端に断熱部材29の屋外側の端部が収容された断熱部材収容部26dと、を有している。
【0021】
内側下枠部27は、中空部27aと、中空部27aの屋外側の下端に断熱部材29の屋内側の端部が収容される断熱部材収容部27bと、中空部27aの屋内側にて下方に垂設されて躯体2に当接される脚部27cと、中空部27aから屋内方向に延出されて額縁5にねじ止めされる内側下取付部27dと、中空部27aの屋外側に設けられ障子50の下框55がシール材9を介して当接される下框当接部27eと、中空部27aの上方に設けられた網戸係合部27fと、を有している。
【0022】
網戸係合部27fは、中空部27aの上方に立設されて網戸68の屋内側に配置される網戸ガイド部27hと、網戸ガイド部27hの上端より低い位置から屋外側に延設され、網戸68が載置される網戸載置部27iとを有している。網戸載置部27iは、上枠22の内側上枠部24が有する中空部24a、及び、中空部24aの屋外側の端部の下端から突出された突出部24eと対向する位置に配置されている。
【0023】
図3に示すように、左縦枠30と右縦枠32とは、左右対称形状なので、ここでは、右縦枠32について説明し、左縦枠30は右縦枠32と対称な部位に同符号を付して説明は省略する。
【0024】
右縦枠32は、見込み方向における屋外側に配置され躯体2に屋外側からねじ止めされた外側縦枠部33と、外側縦枠部33と断熱部材29を介して屋内側に設けられ額縁5に皿ねじにて止められた内側縦枠部34とを有しており、断熱部材29と共に一体成形されたアルミニウム製の押出部材である。
【0025】
外側縦枠部33は、躯体2の屋外側の面に当接されてねじ止めされる外側取付部33aと、見込み方向に沿う面を有する外側面部33bと、外側面部33bの屋内側の端部に設けられ断熱部材29の屋外側の端部が収容される断熱部材収容部33cと、障子50の右框56の屋外側の部位がシール材9を介して当接される框外側当接部33dと、を有している。
【0026】
内側縦枠部34は、外側面部33bの内側にほぼ直線上に配置される内側面部34aと、内側面部34aの屋外側の端部にて躯体2側に突出して断熱部材29の屋内側の端部が収容される断熱部材収容部34bと、内側面部34aの屋外側の端部から断熱部材収容部34bと反対方向に突出されて障子50の右框56の屋内側の部位がシール材9を介して当接される框内側当接部34cと、框内側当接部34cの屋内側に設けられ框内側当接部34cと対向するように反躯体側に突出させて設けられ、先端に屋外側に突出された係合片34eが形成された突出部34dと、係合片34eとほぼ直線上に形成され屋内側にて額縁にねじ止めされる屋内側固定部34hと、框内側当接部34cにおいて係合片34eと対向する位置に設けられ屋内側に向かって突出する突起34fと、を備えている。
【0027】
係合片34eと突起34fとは見込み方向に間隔を隔てて対向する位置に設けられており、係合片34e及び突起34fより躯体2側には、框内側当接部34cと内側面部34aと突出部34dとにて囲まれ、係合片34eと突起34fとの間にて連通された空間34gが形成されている。この空間34gには右覆い部材74の端部が挿入され、右覆い部材74は係合片34e及び突起34fと係合することにより右縦枠32に取り付けられる。ここで、係合片34eと突起34fを含み、連通された空間34gを構成する部位が、見付け方向に向かって開放された凹部である取付部の一例である。
【0028】
障子50は、2枚のガラス51aを有する面材としてのガラスユニット51と、ガラスユニット51の外周縁部を収容しガスケット59を介して保持する框体52とを有している。框体52を構成し矩形状に枠組みされ、ガラスユニット51の上下に配置された横框である上框54及び下框55と、ガラス51aの左右に配置された縦框である右框56及び左框57とは、屋外側の部位が屋内側の部位より、それぞれ枠体側に突出させて形成されており、各框54、55、56、57の屋内側及び屋外側の部位がそれぞれ枠体20に設けられたシール材9に当接されている。
【0029】
網戸68は、図2、図3に示すように、矩形状に形成された網戸用框68aの内周側に、網戸用框68aの内周側に突出されて網材68bの端部を保持するための保持部68cが全周に亘って設けられている。網戸用框68aは断面が矩形状をなす中空の押出成形部材であり、保持部68cは網戸用框68aの見込み方向における厚みのおよそ半分より屋外側に設けられ、屋外側に向かう開放部68dを有している。
【0030】
保持部68cには開放部68d側から網材68bの端部が挿入されてゴム製の取付部材68eが収容されて網材68bが保持されている。網戸68が取り付けられた際に、上方に位置する網戸用框68aの見付け方向におけるほぼ中央には、網戸68を枠体20側に保持させるためのラッチ部材69が設けられている。
【0031】
ラッチ部材69は、ケーシング69aと、ケーシング69a内に収容可能に上方に突出されると共に上方に付勢されたスライド部材69bと、ケーシング69aから下方に突出されてスライド部材69bを上下に移動させるための把持部69cとを有している。
【0032】
ケーシング69aは上方の網戸用框68a内に収容され、スライド部材69bは上方の網戸用框68aより上方に突出され、把持部69cは網材68bより屋内側にて上方の網戸用框68aの下方に突出されている。そして、把持部69cを下方に引くことによりスライド部材69bがケーシング69a内に収容され、把持部69cを引く力を弱めるとスライド部材69bに作用する付勢力にてスライド部材69bがケーシング69a及び網戸用框68aの上方に突出する。
【0033】
枠体20には、覆い部材70として、上枠22に取り付けられる上覆い部材72、左縦枠30に取り付けられる左覆い部材76、右縦枠32に取り付けられる右覆い部材74、が、矩形状の枠体20の三方に設けられている。上覆い部材72、左覆い部材76、及び、右覆い部材74はいずれもアルミニウム製の押出成形部材である。
【0034】
上覆い部材72は、図2に示すように、内側上枠部24の中空部24aの下面及び突出部24eに対向し、下方に間隔を隔てて配置される水平部72aと、水平部72aの屋内側の端部と繋がって水平部72aより下方に突出された垂設突部72bと、水平部72aの屋外側の端部と繋がって垂設され内側上枠部24のシール保持部24fと屋内側にて間隔を隔てて配置された内側壁部72cと、内側壁部72cの下端から屋内側に延設されシール保持部24fの下面に沿わされた延設部72dと、シール保持部24fの屋外側の縁と揃うように垂設され延設部72dの屋外側の端と繋がった外側壁部72eとを有している。
【0035】
水平部72aの上面には上方に突出されて内側上枠部24に当接される上突起72fが設けられている。
垂設突部72bは、水平部72aの屋内側の端から垂設された垂設壁部72gと、垂設壁部72gと屋内側に間隔を隔てて配置される屋内側壁部72hと、垂設壁部72gと屋内壁部との下端を連結する壁連結部72iとが繋がって形成されている。壁連結部72iは水平部72aより下方に配置され、屋内側壁部72hの上端は水平部72aより上方に配置されて内側上枠部24に当接するように構成されている。
【0036】
また、水平部72aは見込み方向に沿う面を形成しており、この見込み方向に沿う面に上覆い部材72を上枠22に固定するねじが貫通される取付孔としての貫通孔(不図示)が設けられている。そして、上覆い部材72が上枠22にねじ止めされる際には、ねじは貫通孔を通って内側上枠部24の中空部24aの下面に螺合される。ねじが螺合された状態で、ねじ頭部が垂設突部72bより下方に突出しないように垂設突部72bは水平部72aより下方に突出している。
【0037】
内側壁部72cの上端部と屋外側の面には、屋外側に向かって突出されてシール保持部24fに当接される側方突起72jが設けられている。
外側壁部72eは、障子50の上框54と対向する位置に配置され、その下端は上框54の下端とほぼ同じ位置まで延出されている。
【0038】
左覆い部材76と右覆い部材74とは、左右対称形状なので、ここでは、右覆い部材74について説明し、左覆い部材76は右覆い部材74と対称な部位に同符号を付して説明は省略する。
【0039】
右覆い部材74は、図3に示すように、内側縦枠部34に嵌合される嵌合部を有する本体部74aと、本体部74aと繋がって反右枠材側に設けられた覆い壁部74cとを有している。本体部74aは、内側縦枠部34の突出部34dとほぼ直線状に位置するように配置される内側嵌合壁部74dと、内側嵌合壁部74dと見込み方向に間隔を隔てて配置され内側嵌合壁部74dと対向する外側嵌合壁部74eと、内側嵌合壁部74dと外側嵌合壁部74eとを反右枠材側にて連結し見込み方向に沿う壁面を形成する嵌合連結壁部74fとを有している。
【0040】
内側嵌合壁部74dの右枠側には、框内側当接部34cと内側面部34aと突出部34dとにて囲まれた空間34g内に挿入されて係合片34eと係合する内側係合部74gが設けられ、外側嵌合壁部74eの右枠側には、框内側当接部34cと内側面部34aと突出部34dとにて囲まれた空間34g内に挿入されて突起34fと係合する外側係合部74hが設けられている。
【0041】
覆い壁部74cは、嵌合連結壁部74fが屋外側に延設されて内側縦枠部34の框内側当接部34cに当接される部位の端部側から見付け方向における反右枠材側に設けられており、その先端は、閉止された障子50の右框56の先端とほぼ同じ位置まで延出されている。覆い壁部74cには、先端部と本体部側とに屋外側に突設されたリブ74iが設けられている。本体部側のリブ74iは右覆い部材74が内側縦枠部34に嵌合された際に、框内側当接部34cの左側面に沿って当接されるように構成されている。
【0042】
本実施形態の建具10は、上枠22の内側上枠部24が有する中空部24aに上覆い部材72がねじにて固定され、左右の左縦枠30及び右縦枠32の係合片34eと内側係合部74gとが、突起34fと外側係合部74hとが係合されて左覆い部材76及び右覆い部材74が取り付けられる。取り付けられた上覆い部材72、左覆い部材76、右覆い部材74は、障子50の上框54、左框57、右框56の先端とほぼ同じ位置まで突出しており、上框54、左框57、右框56の見込み方向における屋内側の側面52aを覆うように構成されている。
【0043】
また、上覆い部材72、左覆い部材76、右覆い部材74が取り付けられた状態で、網戸68が取り付け可能となる。網戸68を取り付ける場合には、まず、網戸68の上端側が下端側より屋内側に位置するように傾けて、網戸68の下端部を屋内側から下枠25の網戸係合部27fが有する網戸ガイド部27hの屋外側に挿入すると共に網戸載置部27iに載置しつつ網戸68の姿勢が鉛直方向に沿うように移動させる。このとき、網戸68の上部に設けられているラッチ部材69の把持部69cを引いてスライド部材69bをケーシング69a側に引き寄せておく。
【0044】
網戸68をほぼ鉛直に立てると、網戸用框68aが、上覆い部材72の内側壁部72c、左覆い部材76及び右覆い部材74の覆い壁部74cと対向する。そして、ラッチ部材69の把持部69cを解放することによりスライド部材69bに付勢力が作用し、スライド部材69bの上端が上覆い部材72の壁連結部72iより上方に移動して網戸68が枠体20側に保持される。また、取り付けられた網戸68はラッチ部材69を操作することにより容易に取り外すことが可能である。
【0045】
本実施形態の建具10によれば、障子50が備える上框54、左框57、右框56の屋内側の側面52aを覆う上覆い部材72、左覆い部材76、右覆い部材74、が枠体20に取り付けられているので、見込み方向における屋内側から見たときには、枠体20に取り付けられた上覆い部材72、左覆い部材76、右覆い部材74により障子50の上框54、左框57、右框56がそれぞれ覆われて隠されている。すなわち、枠体20に上覆い部材72、左覆い部材76、右覆い部材74を取り付けるだけで、既存の枠体20を変更することなく、屋内側の視界から上框54、左框57、右框56を隠すことが可能である。
【0046】
また、障子50の屋内側に配置される網戸68は、ラッチ部材69のスライド部材69bが係合する部材を別途設けることなく枠体20に上覆い部材72を介して取り付けることが可能である。
【0047】
また、上覆い部材72が取り付けられる貫通孔は水平部72aの見込み方向に沿う面に設けられており、左覆い部材76及び右覆い部材74を取り付けるために左覆い部材76及び右覆い部材74が挿入される空間34gは見付け方向における反枠体側、すなわち枠体20が設けられている開口3の中央側に向かって開放されているので、上覆い部材72、左覆い部材76、右覆い部材74を用いない場合や取り外した場合であっても、貫通孔や取付部となる空間34gに連通する開口は屋内側からは視認されにくい。このため、上覆い部材72、左覆い部材76、右覆い部材74を用いない場合や取り外した場合であっても美観に優れた建具10を提供することが可能である。
【0048】
また、上覆い部材72は、断熱部材29を介して見込み方向に連結された外側上枠部23と内側上枠部24とのうちの内側上枠部24のみに取り付けられているので、上覆い部材72を介して屋外側から屋内側へ熱が伝達される畏れはない。また、左覆い部材76、右覆い部材74も、断熱部材29を介して見込み方向連結された外側縦枠部33と内側縦枠部34とのうちの内側縦枠部34のみに当接されて取り付けられているので、左覆い部材76または右覆い部材74を介して屋外側から屋内側へ熱が伝達される畏れはない。このため、建具10の断熱性を確保しつつ障子50の上框54、左框57、右框56を覆うことが可能である。
【0049】
上記実施形態においては、ラッチ部材の上下方向に移動するスライド部材が上方に突出した際に、上覆い部材72が有する垂設突部72bの屋外側に挿入されて網戸68が取り付けられる例について説明したが、これに限るものではない。例えば、図4に示すように、上記実施例の上覆い部材72における内側壁部72cを延設部72dより下方に延出させた上覆い部材73を上枠22に取り付け、上側の網戸用框68aの屋外側に、屋内側からの操作により上下方向に移動可能なスライド部材78aを有するラッチ部材78を備えた構成としてもよい。この場合には上側の網戸用框68aの屋外側にてスライド部材78aが、内側壁部73aの延設部73bより下方に延出させた部位73cに係合されることにより網戸68が取り付けられる。
【0050】
また、網戸68の上端を上枠22に係止する方法は、スライドタイプのラッチ機構に限るものではない。例えば、図5、図6に示すように網戸68の上側の網戸用框68aに回動させて上覆い部材と係合する回動式の係合機構75を備えた構成としても良い。
【0051】
この場合にも例えば、覆い部材として延設部73bより下方に延出させた部位73cを有する上覆い部材73を上枠22に取り付けておく。そして、網戸68の上側の網戸用框68aには、屋内側に硬貨やドライバなどにて回動させることが可能な操作部75aを設け、操作部75aから見込み方向に繋がって網戸用框68aの屋外側に突出する軸部75bの先端に係合部材75cを設けておく。係合部材75cは、見込み方向に臨む面が長方形状をなし、軸部75bに固定されて長辺側が上下方向に沿わされたときに係合部材75cの先端側が網戸用框68aより上方に突出し、短辺側が上下方向に沿わされたときに係合部材75cが網戸用框68aより上方に突出しないように構成されている。
【0052】
そして、係合部材75cが網戸用框68aの上方に突出しない状態にて、網戸68を枠体20に配置した後、操作部75aを操作することにより係合部材75cを回動させて、その先端が網戸用框68aから上方に突出されると共に上覆い部材73の延設部73bより下方に延出された部位73cに係合されて網戸68が取り付けられる。
【0053】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態に係る建具を屋内側から見た外観図である。
【図2】建具の構造を説明するための縦断面図である。
【図3】建具の構造を説明するための横断面図である。
【図4】網戸の、異なる係止構造を説明するための縦断面図である。
【図5】本実施形態に係る建具が有する網戸を取り付ける回動係止部材を説明するための外観図である。
【図6】回動係止部材を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0055】
3 開口、10 建具、20 枠体、22 上枠、23 外側上枠部、
24 内側上枠部、25 下枠、29 断熱部材、30 左縦枠、32 右縦枠、
33 外側縦枠部、34 内側縦枠部、50 障子、51 ガラスユニット、
52 框体、52a 側面、54 上框、55 下框、56 右框、57 左框、
68 網戸、68a 網戸用框、69 ラッチ部材、70 覆い部材、
72 上覆い部材、72e 外側壁部、73 上覆い部材、74 右覆い部材、
75 係合機構、76 左覆い部材、78 ラッチ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口に設けられ、上枠、下枠、及び、左右の縦枠が矩形状に枠組みされた枠体、
前記枠体に設けられ、面材と、当該面材の周縁を保持する上框、下框、及び、左右の縦框が矩形状に枠組みされた框体と、を備えた障子、及び、
前記上枠と前記左右の縦枠とに取り付けられ、前記枠体及び前記障子を見込み方向における一方側から見たときに、前記上框と前記左右の縦框との前記一方側の側面を覆う覆い部材、
を有することを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記上枠及び前記左右の縦枠は、前記覆い部材が取り付けられる取付孔を有し、
前記取付孔は、見込み方向に沿う面に設けられていることを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記上枠及び前記左右の縦枠は、前記覆い部材が取り付けられる取付部を有し、
前記取付部は、見付け方向に向かって開放された凹部であることを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建具であって、
前記障子は、開かれる際に見込み方向における他方側に突出し、
前記障子の前記一方側には、前記覆い部材を介して取り付けられる網戸を有することを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の建具であって、
前記上枠及び前記左右の縦枠はそれぞれ、断熱部材を介して見込み方向連結された異なる2つの部材にて構成されており、
前記覆い部材は、前記2つの部材のうちのいずれか一方のみに取り付けられていることを特徴とする建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−275433(P2009−275433A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128638(P2008−128638)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】