説明

建材用透湿防水シート

【課題】軽量であって、厳しい環境条件を経ても優れた釘穴シール性を維持できて十分に防水できると共に、透湿性にも優れた建材用透湿防水シートを提供する。
【解決手段】この発明の建材用透湿防水シート1は、かさ密度が0.01g/cm3以上の不織布層2と、不織布層2の上側に積層された、防水性及び透湿性を有する多孔性ポリオレフィンフィルム層3と、不織布層2と多孔性ポリオレフィンフィルム層3とを接着した接着樹脂層であって、平面視において線状の樹脂11が多数本略平行状に配置されて形成された通気性接着樹脂層4とを備え、通気性接着樹脂層4における線状樹脂の幅が0.5〜3mmであり、隣り合う線状樹脂の間の隙間の幅が0.1〜1mmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば屋根下地材として使用される透湿性及び防水性に優れた建材用透湿防水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、家屋の屋根下地材としては、アスファルトを含浸した布帛が多く使用されている。このアスファルトを含浸した布帛は、防水性を有し、寸法安定性が良く、物理的強度が大きく、釘を打設した時の釘軸周りの釘穴シール性が良いという点で優れている。
【0003】
しかし、前記アスファルトを含浸した布帛は、アスファルト含有により20m程度の巻物で30kgを超す重量を有するので、施工時の取り扱い性が非常に悪いという問題があった。また、前記アスファルト含浸布帛は、透湿性が殆どなく、施工後屋根下の湿気が抜けずに野地板が水分を含んで腐食しやすいという問題もあった。また、施工後において寒暖の温度差によりアスファルト含浸布帛の劣化や伸縮を生じやすく、このため時間が経過すると釘軸周りやタッカー部分の釘穴シール性が低下しやすかった。
【0004】
一方、上記従来のアスファルト含浸布帛に代わる屋根下地材として、特許文献1には、布帛の表面に、伸縮性と粘着性を有する樹脂層が積層され、さらにその上に粘着性の少ない樹脂層が積層されてなる屋根下地材が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、防水性及び透湿性を有するポリエチレンフィルムの上面に、防滑層を上面に有する不織布が接着され、前記ポリエチレンフィルムの下面に、上面に高吸水性ポリマーからなる膨潤層を有した不織布が接着されてなる建築用防水シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−269277号公報
【特許文献2】特開2002−316373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の屋根下地材では、釘を打設した時の釘穴シール性が十分なものではなかった。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の建築用防水シートでは、釘を打設した状態での透水試験で24時間経過後では水の裏抜けが生じることがなく良好な防水性が維持されるが、寒暖の温度差や湿度の高低差等のより厳しい環境条件が負荷された後では釘穴シール性は必ずしも十分なレベルを維持できるものではなかったことから、より厳しい環境条件下においても十分な釘穴シール性を維持できる建材用透湿防水シートの開発が望まれていた。
【0009】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、軽量であって、厳しい環境条件を経ても優れた釘穴シール性を維持できて十分に防水できると共に、透湿性にも優れた建材用透湿防水シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]かさ密度が0.01g/cm3以上の不織布層と、
前記不織布層の上側に積層された、防水性及び透湿性を有する多孔性ポリオレフィンフィルム層と、
前記不織布層と前記多孔性ポリオレフィンフィルム層とを接着した接着樹脂層であって、平面視において線状の樹脂が多数本略平行状に配置されて形成された通気性接着樹脂層とを備え、
前記通気性接着樹脂層における線状樹脂の幅が0.5〜3mmであり、隣り合う線状樹脂の間の隙間の幅が0.1〜1mmであることを特徴とする建材用透湿防水シート。
【0012】
[2]前記線状樹脂の厚さ方向の少なくとも一部が前記不織布層に含浸されていることを特徴とする前項1に記載の建材用透湿防水シート。
【0013】
[3]前記通気性接着樹脂層において隣り合う線状樹脂同士がその長さ方向に沿って部分的に溶着していることを特徴とする前項1または2に記載の建材用透湿防水シート。
【0014】
[4]前記通気性接着樹脂層は、熱可塑性樹脂を押出機により糸状に溶融押出したものを用いて形成されたものである前項1〜3のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。
【0015】
[5]前記不織布層は、スパンボンド不織布またはメルトブロー不織布で形成されている前項1〜4のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。
【0016】
[6]前記スパンボンド不織布はポリオレフィン製である前項5に記載の建材用透湿防水シート。
【0017】
[7]前記多孔性ポリオレフィンフィルム層の上側に、合成樹脂フィルムに金属蒸着膜が蒸着されてなる多孔性遮熱層が積層されている前項1〜6のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。
【0018】
[8]前記多孔性遮熱層の上側に合成樹脂保護層が積層されている前項1〜7のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。
【発明の効果】
【0019】
[1]の発明では、重量のあるアスファルトを用いないから、軽量性に優れている。また、防水性及び透湿性を有する多孔性ポリオレフィンフィルム層が、不織布層の上側に配置されているから、建材用透湿防水シートとして十分な防水性及び透湿性を確保できる。また、不織布層が設けられているから、施工時に多孔性ポリオレフィンフィルム層が野地板との接触等により傷付けられるようなことを十分に防止できる。更に、前記不織布層はかさ密度が0.01g/cm3以上であることに加えて、接着樹脂層は平面視において線状の樹脂が多数本略平行状に配置されて形成された通気性接着樹脂層からなる構成であり、線状樹脂の厚さ方向の少なくとも一部が不織布層に含浸しやすいから、これら樹脂含浸不織布が、打設された釘に十分に密着し、強力に打設釘を圧迫するので、十分に止水することができる(優れた釘穴シール性が得られる)。更に、通気性接着樹脂層における線状樹脂の幅が0.5〜3mmであり、隣り合う線状樹脂の間の隙間の幅が0.1〜1mmであるから、より強力に打設釘を圧迫することができて止水効果の確実性をより高めることができると共により優れた透湿性も確保できる。
【0020】
[2]の発明では、線状樹脂の厚さ方向の少なくとも一部が不織布層に含浸されているから、これら樹脂含浸不織布が、打設された釘に十分に密着し、より強力に打設釘を圧迫するものとなるので、確実に止水することができる。
【0021】
[3]の発明では、通気性接着樹脂層において隣り合う線状樹脂同士がその長さ方向に沿って部分的に溶着しているから、より一層強力に打設釘を圧迫することができ、止水効果の確実性をより高めることができる。
【0022】
[4]の発明では、通気性接着樹脂層は、熱可塑性樹脂を押出機により糸状に溶融押出したものを用いて形成されたものであるから、線状樹脂としてより均一なものを形成でき、これにより十分な接着強度を確保できる。
【0023】
[5]の発明では、不織布層は、スパンボンド不織布またはメルトブロー不織布で形成されているので、止水効果の確実性をより一層高めることができる。
【0024】
[6]の発明では、スパンボンド不織布はポリオレフィン製であり、ポリオレフィンは疎水性であるので、止水効果の確実性をさらに高めることができる。
【0025】
[7]の発明では、多孔性ポリオレフィンフィルム層の上側に、合成樹脂フィルムに金属蒸着膜が蒸着されてなる多孔性遮熱層が積層されているから、十分な遮熱性が得られるものとなる。
【0026】
[8]の発明では、多孔性遮熱層の上側に合成樹脂保護層が積層されているから、遮熱層の傷付き等を十分に防止することができ、長期間にわたって十分な遮熱性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明に係る建材用透湿防水シートの一実施形態を示す模式的断面図である。
【図2】図1の建材用透湿防水シートにおける通気性接着樹脂層を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明に係る建材用透湿防水シート(1)の一実施形態を図1に示す。本実施形態の建材用透湿防水シート(1)は、屋根下地材として特に好適に用いられるシートである。この建材用透湿防水シート(1)は、かさ密度が0.01g/cm3以上の不織布層(2)の上面に、通気性接着樹脂層(4)を介して、防水性及び透湿性を有する多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)が積層された積層シート体からなる。前記通気性接着樹脂層(4)は、図2に示すように、平面視において線状の樹脂(11)が多数本略平行状に配列されて形成された通気性接着樹脂層である。前記線状樹脂(11)の厚さ方向の少なくとも一部が前記不織布層(2)に含浸されている。
【0029】
本実施形態では、図2に示すように、前記通気性接着樹脂層(4)の隣り合う線状樹脂(11)同士は、その長さ方向に沿って部分的に溶着しており、平面視において該溶着部(12)が散在状態に配置された構成になっている。即ち、前記接着樹脂層(4)は平面視において略網目状に形成されている。このような略網目状は、線状樹脂(11)を略平行状に介在させても、前記不織布層(2)表面における該樹脂の含浸度合いの微妙な差異によって生じる。
【0030】
更に、本実施形態では、前記多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)の上面に、合成樹脂フィルムに金属蒸着膜が蒸着されてなる多孔性遮熱層(5)が積層されている。なお、この遮熱層(5)の多孔性は、前記遮熱層(5)を構成することになるシート(金属蒸着合成樹脂フィルム)に対して物理的に微小孔を多数穿設することによって付与されたものである。更に、この多孔性遮熱層(5)の上面に合成樹脂保護層(6)が積層されている。即ち、前記多孔性遮熱層(5)の表層に存在する金属蒸着膜の上面に合成樹脂保護層(6)が積層されている。
【0031】
この発明において、前記多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)は、防水性及び透湿性を有し、建材用透湿防水シート(1)としての防水性及び透湿性を発現させる上で主要な役割を果たすものである。前記多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)としては、特に限定されないが、防水性及び透湿性を有する多孔性ポリエチレンフィルム又は防水性及び透湿性を有する多孔性ポリプロピレンフィルムで構成されるのが好ましい。中でも、多孔性ポリエチレンフィルムで構成されるのがより好ましく、この場合には透湿性をより増大させることができる。なお、前記多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)の多孔性は、例えば無機粒子(炭酸カルシウム等)を含有することにより付与される。即ち、例えば多孔性ポリオレフィンフィルムの製造時に無機粒子(炭酸カルシウム等)の存在位置で微小な亀裂を生じて微小孔が形成され、このような微小孔の形成により防水性が維持されつつ透湿性が付与される。前記無機粒子の粒径は5μm以下であるのが好ましい。
【0032】
前記多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)の厚さは20〜100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで施工時の釘の打設により釘とフィルムとの間に生じる隙間(釘穴)を埋めようとする弾性力が十分に得られて釘穴シール性が十分に得られると共に、100μm以下であることで十分な軽量性を確保できる。
【0033】
また、前記多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)(5)の透湿度は1000g/m2・24hr以上であるのが好ましく、この場合には建材用透湿防水シート(1)として十分な透湿性を確保することができて野地板が水分を含んで腐食するようなことを十分に防止できる。
【0034】
前記不織布層(2)を構成する不織布としては、かさ密度0.01g/cm3以上の不織布を用いる。0.01g/cm3未満では打設釘を十分に圧迫することができず十分に止水することができない。中でも、かさ密度0.01〜0.05g/cm3の不織布を用いるのが好ましく、更にかさ密度0.02〜0.03g/cm3の不織布を用いるのが特に好ましい。
【0035】
前記不織布層(2)の厚さは0.5〜3mmに設定するのが好ましい。厚さを0.5mm以上とすることで打設釘を十分に圧迫することができるし、厚さを3mm以下とすることでコストを低減できるし、より軽量化できる。
【0036】
前記不織布層(2)としては、特に限定されるものではないが、例えばスパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布等が挙げられる。これらの中でも、スパンボンド不織布またはメルトブロー不織布を用いるのが、止水効果の確実性をより高めることができる点で、好ましい。中でも、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布を用いるのが特に好ましい。
【0037】
前記通気性接着樹脂層(4)における線状樹脂(11)の幅(W)は、0.5〜3mmに設定される(図2参照)。0.5mm未満では打設釘を十分に圧迫することができず十分な止水性が得られないし、3mmを超えると十分な透湿性が得られない。
【0038】
前記通気性接着樹脂層(4)における隣り合う線状樹脂(11)(11)の間の隙間(13)の幅(S)は、0.1〜1mmに設定される(図2参照)。0.1mm未満では十分な透湿性が得られないし、1mmを超えると打設釘を十分に圧迫することができず十分な止水性が得られない。中でも、隣り合う線状樹脂(11)(11)の間の隙間(13)の幅(S)は、0.2〜0.7mmに設定されるのが好ましい。
【0039】
また、前記通気性接着樹脂層(4)の付与量(塗布量)は30〜150g/m2に設定されるのが好ましい。30g/m2以上とすることで該樹脂が不織布(2)に含浸しやすくなると共に150g/m2以下とすることで十分な透湿性を確保できる。中でも、前記通気性接着樹脂層(4)の付与量(塗布量)は30〜130g/m2に設定されるのが特に好ましい。
【0040】
前記通気性接着樹脂層(4)は、熱可塑性樹脂を押出機により糸状に溶融押出したものを用いて形成されたものであるのが好ましい。この場合には、線状樹脂(11)としてより均一なものを形成できるので十分な接着強度を確保できる。例えば、熱可塑性樹脂を押出機により糸状に溶融押出したものを不織布層(2)の上に塗布した後、この上に更に多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)を重ね合わせ、次いでこれらをロール間で挟圧することによって本発明の建材用透湿防水シート(1)を製造できる。
【0041】
前記通気性接着樹脂層(4)を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0042】
前記多孔性遮熱層(5)としては、特に限定されるものではないが、例えば合成樹脂フィルムに金属蒸着膜が蒸着されてなる多孔性フィルム等が挙げられる。前記金属蒸着膜の金属種としては、特に限定されないが、例えばアルミニウム等が挙げられる。前記合成樹脂フィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。
【0043】
前記合成樹脂保護層(6)としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン層、ポリプロピレン層等が挙げられる。
【0044】
前記多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)と前記多孔性遮熱層(5)の積層一体化や、前記多孔性遮熱層(5)と前記合成樹脂保護層(6)の積層一体化は、いずれも、接着により行われるのが好ましいが、特にこのような手法に限定されるものではない。その接着手法としては、通気性を確保しつつ接着できるものであれば特に限定されず、例えばドライラミネート法、ウェットラミネート法、熱ラミネート法等が挙げられる。接着剤の種類も特に限定されない。
【0045】
なお、上記実施形態では、前記通気性接着樹脂層(4)を構成する線状樹脂(11)は、1方向に沿って延ばされた構成が採用されているが(図2参照)、特にこのような形態に限定されるものいではなく、例えば1方向に沿って延ばされた線状樹脂及び該1方向と略直交する方向に沿って延ばされた線状樹脂によって前記通気性接着樹脂層(4)が形成された構成(交差型)を採用しても良く、本願の特許請求の範囲は、このような交差型の実施形態の建材用透湿防水シートも含むものである。
【実施例】
【0046】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
透湿度が7000g/m2・24hrである防水性及び透湿性を有する厚さ30μmの多孔性ポリエチレンフィルム(3)と、厚さ20μmのポリプロピレンフィルムにアルミニウム蒸着膜が蒸着されてなる多孔性フィルム(多孔性遮熱層)(5)と、厚さ12μmの耐候剤含有ポリエチレンフィルム(合成樹脂保護層)(6)とがこの順で重ね合わされるように各層間をドライラミネート法により接着一体化して、表材を得た。
【0048】
次に、ポリエチレン樹脂を押出機により多数本の糸状に溶融押出したものを、かさ密度が0.022g/m3で厚さ0.7mmのポリプロピレン製スパンボンド不織布(2)の上面に塗布量70g/m2で塗布した後、この上に、前記表材を多孔性ポリエチレンフィルム(3)を下側にして重ね合わせ、次いでこれらをロール間で挟圧することによって、図1に示す建材用透湿防水シート(1)を得た。
【0049】
得られた建材用透湿防水シート(1)において、通気性接着樹脂層(4)の線状樹脂(11)の幅(W)は1.5mmであり、隣り合う線状樹脂(11)の間の隙間(S)は0.5mmであり、接着樹脂層(4)は、図2に示すように、隣り合う線状樹脂(11)同士がその長さ方向に沿って部分的に溶着した構成であった。
【0050】
<実施例2〜3、比較例1、2>
材料設計等を表1に示す条件に設定した以外は、実施例1と同様にして、表1に示す構成を備えた建材用透湿防水シートを得た。
【0051】
上記のようにして得られた各建材用透湿防水シートについて下記試験法に基づいて評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0052】
<透湿性評価法>
JIS L1099の4.1のA法(繊維製品の透湿度試験方法)に準拠して、各建材用透湿防水シートの透湿度(g/m2・24hr)を求めた。
【0053】
<釘穴シール性評価法>
建材用透湿防水シートを、80℃×20%RH×15.5時間、−40℃×0%RH×7.5時間、80℃×95%RH×15.5時間、−40℃×0%RH×7.5時間の各環境条件下に順に置く工程を1サイクルとし、これを5サイクル繰り返す。
【0054】
次に、12mm厚さの合板の上に、前記5サイクルを経た後の建材用透湿防水シートを防滑層を上にして載置し、コロニアル瓦用釘(長さ30mm、最大直径3.3mm、最小直径2.9mm、最大直径部と最大直径部との間隔1.3mm)を打ち付け、この上に塩化ビニル製のパイプを立ててその底部をシーリング剤で水密状態にシールした後、パイプ内に水を充填し上端開口部をゴム栓で封じて150mmの水頭圧をかけて放置し、24時間経過後のパイプ内の水の減少量(mL)を測定した。水の減少量が1.0mL以下であるものを「合格」とした。なお、各実施例、比較例についてそれぞれ5サンプルづつ試験を行い、その合格割合を表1に示した。例えば、表中「5/5」と記載されたものは5サンプル全数について釘穴シール性試験が合格であったことを示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から明らかなように、この発明の実施例1〜3の建材用透湿防水シートは、良好な透湿性が得られると共に、厳しい環境条件を経た後でも釘穴シール性が良好で十分な防水性が得られた。
【0057】
これに対し、隣り合う線状樹脂の間の隙間(S)が本発明の規定範囲よりも小さい比較例1では、十分な透湿性を得ることができなかった。また、隣り合う線状樹脂の間の隙間(S)が本発明の規定範囲よりも大きい比較例2では、厳しい環境条件を経た後では釘穴シール性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明の建材用透湿防水シートは、例えば建築用下地材として使用され、特に屋根下地材として好適に使用される。
【符号の説明】
【0059】
1…建材用透湿防水シート
2…不織布層
3…多孔性ポリオレフィンフィルム層
4…通気性接着樹脂層
5…多孔性遮熱層
6…合成樹脂保護層
11…線状樹脂
12…溶着部
13…隣り合う線状樹脂の間の隙間
S…隙間の幅
W…線状樹脂の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かさ密度が0.01g/cm3以上の不織布層と、
前記不織布層の上側に積層された、防水性及び透湿性を有する多孔性ポリオレフィンフィルム層と、
前記不織布層と前記多孔性ポリオレフィンフィルム層とを接着した接着樹脂層であって、平面視において線状の樹脂が多数本略平行状に配置されて形成された通気性接着樹脂層とを備え、
前記通気性接着樹脂層における線状樹脂の幅が0.5〜3mmであり、隣り合う線状樹脂の間の隙間の幅が0.1〜1mmであることを特徴とする建材用透湿防水シート。
【請求項2】
前記線状樹脂の厚さ方向の少なくとも一部が前記不織布層に含浸されていることを特徴とする請求項1に記載の建材用透湿防水シート。
【請求項3】
前記通気性接着樹脂層において隣り合う線状樹脂同士がその長さ方向に沿って部分的に溶着していることを特徴とする請求項1または2に記載の建材用透湿防水シート。
【請求項4】
前記通気性接着樹脂層は、熱可塑性樹脂を押出機により糸状に溶融押出したものを用いて形成されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。
【請求項5】
前記不織布層は、スパンボンド不織布またはメルトブロー不織布で形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。
【請求項6】
前記スパンボンド不織布はポリオレフィン製である請求項5に記載の建材用透湿防水シート。
【請求項7】
前記多孔性ポリオレフィンフィルム層の上側に、合成樹脂フィルムに金属蒸着膜が蒸着されてなる多孔性遮熱層が積層されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。
【請求項8】
前記多孔性遮熱層の上側に合成樹脂保護層が積層されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−184451(P2010−184451A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30678(P2009−30678)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【出願人】(000214043)蝶理株式会社 (14)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】