建染染色方法及び建染染色装置
【課題】天然皮革のような天然素材からなる被染物を建染染色しても、被染物の変質や変形、劣化を抑えて好適な染色を施すことができる建染染色方法及び建染染色装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る建染染色装置1は、天然素材からなる天然皮革シート(被染物)Sを建染染料を用いて染色する建染染色装置であって、弱アルカリ水溶液中に還元剤とともに建染染料を溶解させた染色液Lと天然皮革シートSとが混入される容器2と、容器2の壁面に配された超音波照射部6と、を備えている。
【解決手段】本発明に係る建染染色装置1は、天然素材からなる天然皮革シート(被染物)Sを建染染料を用いて染色する建染染色装置であって、弱アルカリ水溶液中に還元剤とともに建染染料を溶解させた染色液Lと天然皮革シートSとが混入される容器2と、容器2の壁面に配された超音波照射部6と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然素材からなる被染物の建染染色方法及び建染染色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被染物に藍等を建染めする際には、建染染料をアルカリ水溶液中で還元剤により還元してロイコ体とした染色液を被染物に含浸させた後、空気に晒して酸化することにより、被染物中のロイコ体をもとの化学構造に戻すことにより染色している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−121136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、天然皮革のような天然素材を上記従来の建染染色方法で染色しても、天然素材が変質して変形してしまう。また、天然素材の柔軟性や表面光沢性を劣化させ、染色しても摩擦によってすぐに染料が剥がれてしまう問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、天然皮革のような天然素材からなる被染物を建染染色しても、被染物の変質や変形、劣化を抑えて好適な染色を施すことができる建染染色方法及び建染染色装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る建染染色方法は、天然素材からなる被染物を建染染料を用いて染色する建染染色方法であって、弱アルカリ水溶液中に還元剤とともに前記建染染料を溶解させた染色液を前記被染物に含浸させる浸漬工程を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る建染染色方法は、前記建染染色方法であって、前記弱アルカリ水溶液が、アンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る建染染色方法は、前記建染染色方法であって、室温状態で前記染色液に超音波を照射する照射工程を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る建染染色方法は、前記建染染色方法であって、減圧して前記被染物内の空気を放出させる減圧工程と、前記染色液を加圧する加圧工程と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る建染染色装置は、天然素材からなる被染物を建染染料を用いて染色する建染染色装置であって、弱アルカリ水溶液中に還元剤とともに前記建染染料を溶解させた染色液と前記被染物とが混入される容器を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る建染染色装置は、前記建染染色装置であって、前記弱アルカリ水溶液が、アンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る建染染色装置は、前記建染染色装置であって、室温状態で前記染色液に超音波を照射する超音波照射部を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る建染染色装置は、前記建染染色装置であって、前記容器内を減圧する減圧部と、前記容器内を加圧する加圧部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、天然皮革のような天然素材からなる被染物を建染染色しても、被染物の変質や変形、劣化を抑えて好適な染色を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る建染染色装置を示す概要図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る建染染色方法を示すフロー図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る建染染色装置を示す概要図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る建染染色方法を示すフロー図である。
【図5】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおける天然皮革のそれぞれの染色表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の各実施形態に係る建染染色方法における天然皮革の染色表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおけるシルクのそれぞれの染色表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図8】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおける天然皮革のそれぞれの染色表面の摩擦試験前の状態を示す写真である。
【図9】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおける天然皮革のそれぞれの染色表面及び未染色表面の摩擦試験前の状態を示す写真である。
【図10】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおける天然皮革のそれぞれの染色表面の摩擦試験後の状態を示す写真である。
【図11】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおける天然皮革のそれぞれの染色表面及び未染色表面の摩擦試験後の状態を示す写真である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る建染染色方法における天然皮革のそれぞれの染色表面の摩擦試験前後の状態を示す写真である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る建染染色方法における天然皮革のそれぞれの染色表面の摩擦試験前後の状態を示す写真である。
【図14】従来の建染染色方法における天然皮革のそれぞれの染色表面の摩擦試験前後の状態を示す写真である。
【図15】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とで天然皮革を建て染めした後における摩擦試験前後の表面の明度状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
本発明に係る第1の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
本実施形態に係る建染染色装置1は、図1に示すように、弱アルカリ水溶液中で還元剤とともに建染染料を溶解させた染色液Lと天然皮革シート(被染物)Sとが混入される容器2を備えている。
【0017】
容器2には蓋3及び排水口5が配され、壁面には、超音波照射部6が複数配されている。還元剤は、公知の方法と同様、例えば、ハイドロサルファイトナトリウムを使用する。弱アルカリ水溶液には、ハイドロサルファイトナトリウムの還元性を発揮させるための還元助剤として、アンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムが溶質として含まれることが好ましい。
【0018】
建染染料は、6.6’−ジブロモインジゴ(古代紫、貝紫、チリアンパール)又は藍(インジゴ)からなる。
【0019】
次に、本実施形態に係る建染染色方法について、建染染色装置1の作用とともに説明する。本実施形態に係る建染染色方法は、図2に示すように、浸漬工程(S11)、照射工程(S12)、酸化工程(S13)を備えている。
【0020】
浸漬工程(S11)は、弱アルカリ水溶液中にハイドロサルファイトナトリウムの還元剤とともに建染染料を溶解させた染色液Lを天然皮革シートSとともに容器2にいれて、室温にて天然皮革シートSに染色液Lを含浸させる。
【0021】
照射工程(S12)では、室温状態で、超音波照射部6から所定の強さの超音波を所定時間照射する。これによって、天然皮革シートS内に閉じ込められていた空気が外部に放出され、代わりに染色液Lが、天然皮革シートSの内部まで染み込んでいく。
【0022】
酸化工程(S13)では、天然皮革シートSを容器2から取り出し、空気中に放置、又は過酸化水素水等の酸化液に浸漬させる等、公知の方法によって酸化させる。こうして、天然皮革シートSが発色する。
【0023】
この建染染色装置1及び建染染色方法によれば、従来のように苛性ソーダ等による強アルカリ水溶液を使用する代わりに弱アルカリ水溶液を用いるので、天然皮革シートSのような天然素材の変形、変質、劣化を好適に抑えることができ、かつ、好適に建て染めすることができる。
【0024】
特に、弱アルカリ水溶液が、還元助剤としてアンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含むので、安全に取り扱うことができる。
【0025】
また、照射工程(S12)にて超音波照射部6より超音波を照射することによって、天然皮革シートSを振動させて内部の空気を外部に容易に放出させることができる。そのため、空気が放出された隙間に染色液Lを容易に染み込ませることができる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、第2の実施形態について図3及び図4を参照しながら説明する。
なお、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同一符号を付すとともに説明を省略する。
第2の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、本実施形態に係る建染染色装置10が、超音波照射部6の代わりに、減圧部11及び加圧部12を備え、建染染色方法が、照射工程(S12)の代わりに、減圧工程(S22)及び加圧工程(S23)を備えているとした点である。
【0027】
建染染色装置10は、図3に示すように、蓋13及び排水口5が配された容器15と、容器15内を減圧する減圧部11と、容器15内を加圧する加圧部12とを備えている。蓋13には、密閉用のパッキン16と、染色液Lが導入される導入口17Aが配されて容器15の底部まで延びる導液管17と、を備えている。導液管17には、さらに開閉弁18が配されている。
【0028】
減圧部11は、蓋13と接続された第一減圧配管11Aと、第一減圧配管11Aの途中に配された第一調整弁11Bと、第一減圧配管11Aと連通されたトラップ部11Cと、トラップ部11Cと連通された第二減圧配管11Dと、第二減圧配管11Dと連通された不図示の真空ポンプと、を備えている。このトラップ部11Cは、アンモニアが溶解された弱アルカリ水溶液を還元助剤として使用した場合に、アンモニアの臭いを緩和するために設けられる。
【0029】
トラップ部11Cは、上部に空間部SPができるように内部に水又は弱酸性水SLが配されたトラップ容器11Eを備えている。第一減圧配管11Aのトラップ部11C側の先端には、複数の孔11Fが設けられており、水又は弱酸性水SL内に没入されている。第二減圧配管11Dのトラップ部11C側の先端は、空間部SP内に開口されている。なお、炭酸ナトリウム等を使用する還元助剤の場合には、トラップ部11Cがなく、第一減圧配管11Aと第二減圧配管11Dとが直接連通されたものでもかまわない。
【0030】
加圧部12は、一端が蓋13と接続されるとともに他端が大気開放された加圧配管12Aと、加圧配管12Aの途中に配された第二調整弁12Bと、を備えている。
【0031】
次に、本実施形態に係る建染染色方法について、建染染色装置10の作用とともに説明する。本実施形態に係る建染染色方法は、図4に示すように、減圧工程(S21)、浸漬工程(S22)、加圧工程(S23)、酸化工程(S24)を備えている。
【0032】
減圧工程(S12)は、容器15内に天然皮革シートSを導入し、蓋13を閉じて容器15を密閉した後、開閉弁18及び第二調整弁12Bを閉じた状態で第一調整弁11Bを開いて真空ポンプを駆動して、容器15内を所定の圧力まで減圧する。この際、天然皮革シートS内に閉じ込められていた空気が、第一減圧配管11Aを介して外部に放出される。所定時間経過後、第一調整弁11Bを閉じるとともに真空ポンプを停止する。
【0033】
浸漬工程(S22)は、容器15内に空気が入らないように注意しながら開閉弁18を開いて導液管17を通じて容器15内に染色液Lを入れて、室温にて天然皮革シートSに染色液Lを含浸させる。
【0034】
加圧工程(S23)は、開閉弁18及び第一調整弁11Bを閉じた状態で第二調整弁12Bを開いて、外部の空気を加圧配管12Aを介して容器15内に導入して容器15の内圧を大気圧に戻す。この際、染色液Lが天然皮革シートSの内部まで染み込んでいく。
【0035】
酸化工程(S24)は、第1の実施形態に係る建染染色方法における酸化工程(S13)と同じである。こうして、天然皮革シートSが発色する。
【0036】
この建染染色装置10及び建染染色方法によれば、第1の実施形態と同様に、天然皮革シートSのような天然素材の変形、変質、劣化を好適に抑えることができ、かつ、好適に建て染めすることができる。
【0037】
特に、建染染色装置10が減圧部11及び加圧部12を備え、建染染色方法における減圧工程(S21)及び加圧工程(S23)にて圧力変動させるので、天然皮革シートS内の空気をより容易に外部に放出させるとともに、天然皮革シートSに染色液Lを確実に含浸させることができる。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記第2の実施形態において、減圧工程(S21)、浸漬工程(S22)の順に工程を進めているが、これに限らず、浸漬工程を先に行ってから減圧工程に移行してもよい。すなわち、天然皮革シートSに染色液Lを含浸させてから容器15内を減圧しても構わない。
【0039】
また、還元助剤としてアンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含む弱アルカリ水溶液を使用するとしているが、これに限らず、炭酸水素ナトリウムや、炭酸カリウム、又はエタノールアミン等の有機アミン系のものを溶質として使用しても構わない。また、還元剤は、ハイドロサルファイトナトリウムに限定されることはない。さらに、建染染料は、6.6’−ジブロモインジゴ(古代紫、貝紫、チリアンパール)又は藍(インジゴ)に限定されることはない。また、天然素材としては、天然皮革に限定されることはなく、シルクのようなものでも構わない。
【実施例1】
【0040】
染色状態を確認するために、アンモニア又は炭酸ナトリウムを含む弱アルカリ水溶液を使用して、天然皮革及びシルクを染色したときの表面状態を、無染色の場合と、還元助剤として従来から一般的に使用されている水酸化ナトリウムを含む強アルカリ水溶液の場合とで比較した。表面の電子顕微鏡(SEM)による写真を図5に示す。なお、観察の際には、試料に白金パラジウム蒸着をした。
【0041】
天然皮革の場合、無染色では、図5(a)に示すように、表面の繊維が細かく観察されている。これに対して、アンモニアを使用した場合では、図5(b)に示すように、若干膨潤した様子が観察されるが無染色とほぼ同じ状態であった。また、炭酸ナトリウムを使用した場合では、図5(c)に示すように、表面の一部が溶け一部は無染色と同様の繊維が観察されている。つまり表面の一部は溶けたものの、一部は未変化といえる。一方、水酸化ナトリウムの場合には、図5(d)に示すように、表面全面が溶解して平滑面となっていた。
【0042】
すなわち、実際に染色をした場合、変形することなく無染色とほとんど変わらない柔軟性を保つことができたのは、アンモニアと、それとほぼ同様な炭酸ナトリウムであった。一方、水酸化ナトリウムでは、激しい硬化と縮みをおこしていた。
【0043】
また、上記第2の実施形態に係る方法において、還元助剤としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含む、弱アルカリ水溶液を用いて天然皮革を染色した。このときの表面状態の電子顕微鏡(SEM)写真を図6に示す。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの場合、図6(a)を見ると幾分か表面の溶解がみられるが、実際の手触りでは問題はないものであった。四ほう酸ナトリウムの場合、加温することによって、図6(b)に示すように、表面の劣化等なく染色することができた。これらの還元助剤は、上記第2の実施形態において、建染染色装置がトラップ部11Cを備えない場合に、臭いのあるアンモニアの代わりに使用することができる。
【0044】
天然皮革に代えてシルクに対しても同様の染色を試みた。結果を図7に示す。無染色では、図7(a)に示すように、シルク表面の繊維が観察されており、アンモニアの場合も、図7(b)に示すように、無染色のものとほとんど変わらない。また、炭酸ナトリウムの場合も、図7(c)に示すように、無染色の場合とほとんど変わらない。これに対して、水酸化ナトリウムの場合には、図7(c)に示すように、繊維の表面がささくれ立ち、劣化していることが観察できる。
【0045】
すなわち、現在行われている染色液の調整法で強アルカリ水溶液を使用した場合には、シルク繊維の劣化がみられる。しかし、弱アルカリ水溶液を使用した場合には劣化が見られず、シルクの光沢も維持されていた。
【実施例2】
【0046】
次に、上記第1の実施形態における建染染色方法(超音波)及び上記第2の実施形態における建染染色方法(減圧)をそれぞれ5回繰り返して天然皮革シートSをそれぞれ染色した場合と、染色液Lに5回浸した状態で染色する従来の場合とで、染色度合いを比較するための試験を実施した。ここでは、JIS L 0805に示された方法において、コルク法で汚染用グレースケールとの比較による摩擦堅牢度試験を実施し、摩擦前後の表面状態を観察した。観察は、株式会社島津製作所製の紫外可視分光光度計(SHIMAZU UV-2550 型)に付属の積分球を取り付けて反射光の吸収スペクトルの変化を測定した。あわせて、コニカミノルタセンシング株式会社製の測色計(KONICA MINOLUTA Color Reador CR-13 型)も用いた。結果を図8から図15に示す。
【0047】
図8は、上記第1の実施形態における建染染色方法、上記第2の実施形態における建染染色方法、従来の建染染色方法によりそれぞれ染色した天然皮革シートSの摩擦試験前における各吸収スペクトルを示す。図9は、図8に染色前の場合を加えたときの吸収スペクトルを示す。
【0048】
図10は、上記第1の実施形態における建染染色方法、上記第2の実施形態における建染染色方法、従来の建染染色方法によりそれぞれ染色した天然皮革シートSの摩擦試験後における各吸収スペクトルを示す。図11は、図10に染色前の場合を加えたときの吸収スペクトルを示す。
【0049】
図12は、上記第1の実施形態における建染染色方法にて染色した天然皮革シートSの摩擦試験前後における吸収スペクトルを比較した状態を示す。図13は、上記第2の実施形態における建染染色方法にて染色した天然皮革シートSの摩擦試験前後における吸収スペクトルを比較した状態を示す。図14は、従来の建染染色方法にて染色した天然皮革シートSの摩擦試験前後における吸収スペクトルを比較した状態を示す。図15は、各建染染色方法にて染色した天然皮革シートSの摩擦試験前後における明度を比較した状態を示す。
【0050】
摩擦試験前では、各図に示すように、何れの方法においても同程度の濃度に染めることができていることがわかる。しかし、摩擦試験後を比較すると、第2の実施形態に係る建染染色方法が最も色落ちが少ない一方、従来の方法が最も色落ちが激しいことがわかった。
【符号の説明】
【0051】
1,10 建染染色装置
2,15 容器
6 超音波照射部
11 減圧部
12 加圧部
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然素材からなる被染物の建染染色方法及び建染染色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被染物に藍等を建染めする際には、建染染料をアルカリ水溶液中で還元剤により還元してロイコ体とした染色液を被染物に含浸させた後、空気に晒して酸化することにより、被染物中のロイコ体をもとの化学構造に戻すことにより染色している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−121136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、天然皮革のような天然素材を上記従来の建染染色方法で染色しても、天然素材が変質して変形してしまう。また、天然素材の柔軟性や表面光沢性を劣化させ、染色しても摩擦によってすぐに染料が剥がれてしまう問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、天然皮革のような天然素材からなる被染物を建染染色しても、被染物の変質や変形、劣化を抑えて好適な染色を施すことができる建染染色方法及び建染染色装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る建染染色方法は、天然素材からなる被染物を建染染料を用いて染色する建染染色方法であって、弱アルカリ水溶液中に還元剤とともに前記建染染料を溶解させた染色液を前記被染物に含浸させる浸漬工程を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る建染染色方法は、前記建染染色方法であって、前記弱アルカリ水溶液が、アンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る建染染色方法は、前記建染染色方法であって、室温状態で前記染色液に超音波を照射する照射工程を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る建染染色方法は、前記建染染色方法であって、減圧して前記被染物内の空気を放出させる減圧工程と、前記染色液を加圧する加圧工程と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る建染染色装置は、天然素材からなる被染物を建染染料を用いて染色する建染染色装置であって、弱アルカリ水溶液中に還元剤とともに前記建染染料を溶解させた染色液と前記被染物とが混入される容器を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る建染染色装置は、前記建染染色装置であって、前記弱アルカリ水溶液が、アンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る建染染色装置は、前記建染染色装置であって、室温状態で前記染色液に超音波を照射する超音波照射部を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る建染染色装置は、前記建染染色装置であって、前記容器内を減圧する減圧部と、前記容器内を加圧する加圧部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、天然皮革のような天然素材からなる被染物を建染染色しても、被染物の変質や変形、劣化を抑えて好適な染色を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る建染染色装置を示す概要図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る建染染色方法を示すフロー図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る建染染色装置を示す概要図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る建染染色方法を示すフロー図である。
【図5】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおける天然皮革のそれぞれの染色表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の各実施形態に係る建染染色方法における天然皮革の染色表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおけるシルクのそれぞれの染色表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図8】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおける天然皮革のそれぞれの染色表面の摩擦試験前の状態を示す写真である。
【図9】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおける天然皮革のそれぞれの染色表面及び未染色表面の摩擦試験前の状態を示す写真である。
【図10】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおける天然皮革のそれぞれの染色表面の摩擦試験後の状態を示す写真である。
【図11】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とにおける天然皮革のそれぞれの染色表面及び未染色表面の摩擦試験後の状態を示す写真である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る建染染色方法における天然皮革のそれぞれの染色表面の摩擦試験前後の状態を示す写真である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る建染染色方法における天然皮革のそれぞれの染色表面の摩擦試験前後の状態を示す写真である。
【図14】従来の建染染色方法における天然皮革のそれぞれの染色表面の摩擦試験前後の状態を示す写真である。
【図15】本発明の各実施形態に係る建染染色方法と従来の方法とで天然皮革を建て染めした後における摩擦試験前後の表面の明度状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
本発明に係る第1の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
本実施形態に係る建染染色装置1は、図1に示すように、弱アルカリ水溶液中で還元剤とともに建染染料を溶解させた染色液Lと天然皮革シート(被染物)Sとが混入される容器2を備えている。
【0017】
容器2には蓋3及び排水口5が配され、壁面には、超音波照射部6が複数配されている。還元剤は、公知の方法と同様、例えば、ハイドロサルファイトナトリウムを使用する。弱アルカリ水溶液には、ハイドロサルファイトナトリウムの還元性を発揮させるための還元助剤として、アンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムが溶質として含まれることが好ましい。
【0018】
建染染料は、6.6’−ジブロモインジゴ(古代紫、貝紫、チリアンパール)又は藍(インジゴ)からなる。
【0019】
次に、本実施形態に係る建染染色方法について、建染染色装置1の作用とともに説明する。本実施形態に係る建染染色方法は、図2に示すように、浸漬工程(S11)、照射工程(S12)、酸化工程(S13)を備えている。
【0020】
浸漬工程(S11)は、弱アルカリ水溶液中にハイドロサルファイトナトリウムの還元剤とともに建染染料を溶解させた染色液Lを天然皮革シートSとともに容器2にいれて、室温にて天然皮革シートSに染色液Lを含浸させる。
【0021】
照射工程(S12)では、室温状態で、超音波照射部6から所定の強さの超音波を所定時間照射する。これによって、天然皮革シートS内に閉じ込められていた空気が外部に放出され、代わりに染色液Lが、天然皮革シートSの内部まで染み込んでいく。
【0022】
酸化工程(S13)では、天然皮革シートSを容器2から取り出し、空気中に放置、又は過酸化水素水等の酸化液に浸漬させる等、公知の方法によって酸化させる。こうして、天然皮革シートSが発色する。
【0023】
この建染染色装置1及び建染染色方法によれば、従来のように苛性ソーダ等による強アルカリ水溶液を使用する代わりに弱アルカリ水溶液を用いるので、天然皮革シートSのような天然素材の変形、変質、劣化を好適に抑えることができ、かつ、好適に建て染めすることができる。
【0024】
特に、弱アルカリ水溶液が、還元助剤としてアンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含むので、安全に取り扱うことができる。
【0025】
また、照射工程(S12)にて超音波照射部6より超音波を照射することによって、天然皮革シートSを振動させて内部の空気を外部に容易に放出させることができる。そのため、空気が放出された隙間に染色液Lを容易に染み込ませることができる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、第2の実施形態について図3及び図4を参照しながら説明する。
なお、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同一符号を付すとともに説明を省略する。
第2の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、本実施形態に係る建染染色装置10が、超音波照射部6の代わりに、減圧部11及び加圧部12を備え、建染染色方法が、照射工程(S12)の代わりに、減圧工程(S22)及び加圧工程(S23)を備えているとした点である。
【0027】
建染染色装置10は、図3に示すように、蓋13及び排水口5が配された容器15と、容器15内を減圧する減圧部11と、容器15内を加圧する加圧部12とを備えている。蓋13には、密閉用のパッキン16と、染色液Lが導入される導入口17Aが配されて容器15の底部まで延びる導液管17と、を備えている。導液管17には、さらに開閉弁18が配されている。
【0028】
減圧部11は、蓋13と接続された第一減圧配管11Aと、第一減圧配管11Aの途中に配された第一調整弁11Bと、第一減圧配管11Aと連通されたトラップ部11Cと、トラップ部11Cと連通された第二減圧配管11Dと、第二減圧配管11Dと連通された不図示の真空ポンプと、を備えている。このトラップ部11Cは、アンモニアが溶解された弱アルカリ水溶液を還元助剤として使用した場合に、アンモニアの臭いを緩和するために設けられる。
【0029】
トラップ部11Cは、上部に空間部SPができるように内部に水又は弱酸性水SLが配されたトラップ容器11Eを備えている。第一減圧配管11Aのトラップ部11C側の先端には、複数の孔11Fが設けられており、水又は弱酸性水SL内に没入されている。第二減圧配管11Dのトラップ部11C側の先端は、空間部SP内に開口されている。なお、炭酸ナトリウム等を使用する還元助剤の場合には、トラップ部11Cがなく、第一減圧配管11Aと第二減圧配管11Dとが直接連通されたものでもかまわない。
【0030】
加圧部12は、一端が蓋13と接続されるとともに他端が大気開放された加圧配管12Aと、加圧配管12Aの途中に配された第二調整弁12Bと、を備えている。
【0031】
次に、本実施形態に係る建染染色方法について、建染染色装置10の作用とともに説明する。本実施形態に係る建染染色方法は、図4に示すように、減圧工程(S21)、浸漬工程(S22)、加圧工程(S23)、酸化工程(S24)を備えている。
【0032】
減圧工程(S12)は、容器15内に天然皮革シートSを導入し、蓋13を閉じて容器15を密閉した後、開閉弁18及び第二調整弁12Bを閉じた状態で第一調整弁11Bを開いて真空ポンプを駆動して、容器15内を所定の圧力まで減圧する。この際、天然皮革シートS内に閉じ込められていた空気が、第一減圧配管11Aを介して外部に放出される。所定時間経過後、第一調整弁11Bを閉じるとともに真空ポンプを停止する。
【0033】
浸漬工程(S22)は、容器15内に空気が入らないように注意しながら開閉弁18を開いて導液管17を通じて容器15内に染色液Lを入れて、室温にて天然皮革シートSに染色液Lを含浸させる。
【0034】
加圧工程(S23)は、開閉弁18及び第一調整弁11Bを閉じた状態で第二調整弁12Bを開いて、外部の空気を加圧配管12Aを介して容器15内に導入して容器15の内圧を大気圧に戻す。この際、染色液Lが天然皮革シートSの内部まで染み込んでいく。
【0035】
酸化工程(S24)は、第1の実施形態に係る建染染色方法における酸化工程(S13)と同じである。こうして、天然皮革シートSが発色する。
【0036】
この建染染色装置10及び建染染色方法によれば、第1の実施形態と同様に、天然皮革シートSのような天然素材の変形、変質、劣化を好適に抑えることができ、かつ、好適に建て染めすることができる。
【0037】
特に、建染染色装置10が減圧部11及び加圧部12を備え、建染染色方法における減圧工程(S21)及び加圧工程(S23)にて圧力変動させるので、天然皮革シートS内の空気をより容易に外部に放出させるとともに、天然皮革シートSに染色液Lを確実に含浸させることができる。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記第2の実施形態において、減圧工程(S21)、浸漬工程(S22)の順に工程を進めているが、これに限らず、浸漬工程を先に行ってから減圧工程に移行してもよい。すなわち、天然皮革シートSに染色液Lを含浸させてから容器15内を減圧しても構わない。
【0039】
また、還元助剤としてアンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含む弱アルカリ水溶液を使用するとしているが、これに限らず、炭酸水素ナトリウムや、炭酸カリウム、又はエタノールアミン等の有機アミン系のものを溶質として使用しても構わない。また、還元剤は、ハイドロサルファイトナトリウムに限定されることはない。さらに、建染染料は、6.6’−ジブロモインジゴ(古代紫、貝紫、チリアンパール)又は藍(インジゴ)に限定されることはない。また、天然素材としては、天然皮革に限定されることはなく、シルクのようなものでも構わない。
【実施例1】
【0040】
染色状態を確認するために、アンモニア又は炭酸ナトリウムを含む弱アルカリ水溶液を使用して、天然皮革及びシルクを染色したときの表面状態を、無染色の場合と、還元助剤として従来から一般的に使用されている水酸化ナトリウムを含む強アルカリ水溶液の場合とで比較した。表面の電子顕微鏡(SEM)による写真を図5に示す。なお、観察の際には、試料に白金パラジウム蒸着をした。
【0041】
天然皮革の場合、無染色では、図5(a)に示すように、表面の繊維が細かく観察されている。これに対して、アンモニアを使用した場合では、図5(b)に示すように、若干膨潤した様子が観察されるが無染色とほぼ同じ状態であった。また、炭酸ナトリウムを使用した場合では、図5(c)に示すように、表面の一部が溶け一部は無染色と同様の繊維が観察されている。つまり表面の一部は溶けたものの、一部は未変化といえる。一方、水酸化ナトリウムの場合には、図5(d)に示すように、表面全面が溶解して平滑面となっていた。
【0042】
すなわち、実際に染色をした場合、変形することなく無染色とほとんど変わらない柔軟性を保つことができたのは、アンモニアと、それとほぼ同様な炭酸ナトリウムであった。一方、水酸化ナトリウムでは、激しい硬化と縮みをおこしていた。
【0043】
また、上記第2の実施形態に係る方法において、還元助剤としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含む、弱アルカリ水溶液を用いて天然皮革を染色した。このときの表面状態の電子顕微鏡(SEM)写真を図6に示す。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの場合、図6(a)を見ると幾分か表面の溶解がみられるが、実際の手触りでは問題はないものであった。四ほう酸ナトリウムの場合、加温することによって、図6(b)に示すように、表面の劣化等なく染色することができた。これらの還元助剤は、上記第2の実施形態において、建染染色装置がトラップ部11Cを備えない場合に、臭いのあるアンモニアの代わりに使用することができる。
【0044】
天然皮革に代えてシルクに対しても同様の染色を試みた。結果を図7に示す。無染色では、図7(a)に示すように、シルク表面の繊維が観察されており、アンモニアの場合も、図7(b)に示すように、無染色のものとほとんど変わらない。また、炭酸ナトリウムの場合も、図7(c)に示すように、無染色の場合とほとんど変わらない。これに対して、水酸化ナトリウムの場合には、図7(c)に示すように、繊維の表面がささくれ立ち、劣化していることが観察できる。
【0045】
すなわち、現在行われている染色液の調整法で強アルカリ水溶液を使用した場合には、シルク繊維の劣化がみられる。しかし、弱アルカリ水溶液を使用した場合には劣化が見られず、シルクの光沢も維持されていた。
【実施例2】
【0046】
次に、上記第1の実施形態における建染染色方法(超音波)及び上記第2の実施形態における建染染色方法(減圧)をそれぞれ5回繰り返して天然皮革シートSをそれぞれ染色した場合と、染色液Lに5回浸した状態で染色する従来の場合とで、染色度合いを比較するための試験を実施した。ここでは、JIS L 0805に示された方法において、コルク法で汚染用グレースケールとの比較による摩擦堅牢度試験を実施し、摩擦前後の表面状態を観察した。観察は、株式会社島津製作所製の紫外可視分光光度計(SHIMAZU UV-2550 型)に付属の積分球を取り付けて反射光の吸収スペクトルの変化を測定した。あわせて、コニカミノルタセンシング株式会社製の測色計(KONICA MINOLUTA Color Reador CR-13 型)も用いた。結果を図8から図15に示す。
【0047】
図8は、上記第1の実施形態における建染染色方法、上記第2の実施形態における建染染色方法、従来の建染染色方法によりそれぞれ染色した天然皮革シートSの摩擦試験前における各吸収スペクトルを示す。図9は、図8に染色前の場合を加えたときの吸収スペクトルを示す。
【0048】
図10は、上記第1の実施形態における建染染色方法、上記第2の実施形態における建染染色方法、従来の建染染色方法によりそれぞれ染色した天然皮革シートSの摩擦試験後における各吸収スペクトルを示す。図11は、図10に染色前の場合を加えたときの吸収スペクトルを示す。
【0049】
図12は、上記第1の実施形態における建染染色方法にて染色した天然皮革シートSの摩擦試験前後における吸収スペクトルを比較した状態を示す。図13は、上記第2の実施形態における建染染色方法にて染色した天然皮革シートSの摩擦試験前後における吸収スペクトルを比較した状態を示す。図14は、従来の建染染色方法にて染色した天然皮革シートSの摩擦試験前後における吸収スペクトルを比較した状態を示す。図15は、各建染染色方法にて染色した天然皮革シートSの摩擦試験前後における明度を比較した状態を示す。
【0050】
摩擦試験前では、各図に示すように、何れの方法においても同程度の濃度に染めることができていることがわかる。しかし、摩擦試験後を比較すると、第2の実施形態に係る建染染色方法が最も色落ちが少ない一方、従来の方法が最も色落ちが激しいことがわかった。
【符号の説明】
【0051】
1,10 建染染色装置
2,15 容器
6 超音波照射部
11 減圧部
12 加圧部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然素材からなる被染物を建染染料を用いて染色する建染染色方法であって、
弱アルカリ水溶液中に還元剤とともに前記建染染料を溶解させた染色液を前記被染物に含浸させる浸漬工程を備えていることを特徴とする建染染色方法。
【請求項2】
前記弱アルカリ水溶液が、アンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含むことを特徴とする請求項1に記載の建染染色方法。
【請求項3】
室温状態で前記染色液に超音波を照射する照射工程を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建染染色方法。
【請求項4】
減圧して前記被染物内の空気を放出させる減圧工程と、
前記染色液を加圧する加圧工程と、
を備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載の建染染色方法。
【請求項5】
天然素材からなる被染物を建染染料を用いて染色する建染染色装置であって、
弱アルカリ水溶液中に還元剤とともに前記建染染料を溶解させた染色液と前記被染物とが混入される容器を備えていることを特徴とする建染染色装置。
【請求項6】
前記弱アルカリ水溶液が、アンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含むことを特徴とする請求項5に記載の建染染色装置。
【請求項7】
室温状態で前記染色液に超音波を照射する超音波照射部を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の建染染色方法。
【請求項8】
前記容器内を減圧する減圧部と、
前記容器内を加圧する加圧部と、
を備えていることを特徴とする請求項5から7の何れか一つに記載の建染染色装置。
【請求項1】
天然素材からなる被染物を建染染料を用いて染色する建染染色方法であって、
弱アルカリ水溶液中に還元剤とともに前記建染染料を溶解させた染色液を前記被染物に含浸させる浸漬工程を備えていることを特徴とする建染染色方法。
【請求項2】
前記弱アルカリ水溶液が、アンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含むことを特徴とする請求項1に記載の建染染色方法。
【請求項3】
室温状態で前記染色液に超音波を照射する照射工程を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建染染色方法。
【請求項4】
減圧して前記被染物内の空気を放出させる減圧工程と、
前記染色液を加圧する加圧工程と、
を備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載の建染染色方法。
【請求項5】
天然素材からなる被染物を建染染料を用いて染色する建染染色装置であって、
弱アルカリ水溶液中に還元剤とともに前記建染染料を溶解させた染色液と前記被染物とが混入される容器を備えていることを特徴とする建染染色装置。
【請求項6】
前記弱アルカリ水溶液が、アンモニア、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又は四ほう酸ナトリウムを溶質として含むことを特徴とする請求項5に記載の建染染色装置。
【請求項7】
室温状態で前記染色液に超音波を照射する超音波照射部を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の建染染色方法。
【請求項8】
前記容器内を減圧する減圧部と、
前記容器内を加圧する加圧部と、
を備えていることを特徴とする請求項5から7の何れか一つに記載の建染染色装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−246837(P2011−246837A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120169(P2010−120169)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(500132214)学校法人明星学苑 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(500132214)学校法人明星学苑 (23)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]