説明

建物の壁面緑化構造

【課題】外壁面に沿って設けた立体的な植栽により、直射日光による外壁温度の上昇を抑制して外壁まわりの熱負荷を低減すると同時に空調機械室に導入する外気を冷却して、建物内部の熱負荷を低減できるようにした省エネルギー性に優れた建物の壁面緑化構造を提供する。
【解決手段】建物の空調機械室1の外壁をルーバー3で構成し、ルーバー3の外面には上下に間隔を隔てて複数段のプランター4を設け、プランター4に植栽された植物5により壁面緑化を行うと共に、壁面緑化用植物5の水分蒸発による冷却作用によって冷やされた外気を空調機械室1に設置された空調機2に導入するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、事務所用ビルや商業施設用ビル等の建物の壁面緑化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部におけるヒートアイランド現象の抑制、都市景観の向上、直射日光による外壁温度の上昇を抑制して外壁まわりの熱負荷を低減することなどを意図して、様々な建物の壁面緑化構造が提案されている。
【0003】
しかし、従来の壁面緑化構造では、何れも、特許文献1〜3等に見られるように、省エネルギーに関しては、外壁の熱負荷を小さくするという機能を有するに留まり、建物内部の熱負荷を処理するには至っていない。一般に、外壁まわり(ペリメータゾーン)は建物全体の表面積の20%程度であり、外壁の熱負荷を小さくすることによる省エネルギー効果は限定的なものである。
【0004】
尚、特許文献4には、建物における居住空間の外周部に、居住快適性を創り出す領域としてバッファーゾーンを設け、バッファーゾーンの床面に鉢植え植物による緑化部を設け、居住空間とバッファーゾーンを仕切る間仕切と、バッファーゾーンと外界を隔てる建物外壁に、夫々、通気ガラリを設け、バッファーゾーンの植物の水分蒸発による冷却作用によって冷やされた外気を居住空間に導入して、居住空間における冷房負荷を低減するようにした建物が開示されている。
【0005】
しかし、この従来例では、緑化部が建物の外壁より内側のバッファーゾーンに設けられているので、緑化部が外壁の熱負荷を小さくすることに全く寄与していない。また、緑化部が建物の外壁より内側に位置するので、外部からはガラス窓を通して緑化部が見える程度であり、壁面緑化にも寄与していない。
【0006】
【特許文献1】特開2007−222015号公報
【特許文献2】特開2007−20415号公報
【特許文献3】特開2006−296230号公報
【特許文献4】特開平7−224552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を踏まえてなされたものであって、その目的とするところは、外壁面に沿って設けた立体的な植栽により、直射日光による外壁温度の上昇を抑制して外壁まわりの熱負荷を低減すると同時に空調機械室に導入する外気を冷却して、建物内部の熱負荷を低減できるようにした省エネルギー性に優れた建物の壁面緑化構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明が講じた技術手段は次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明による建物の壁面緑化構造は、建物の空調機械室の外壁をルーバーで構成し、ルーバーの外面には上下に間隔を隔てて複数段のプランターを設け、プランターに植栽された植物により壁面緑化を行うと共に、壁面緑化用植物の水分蒸発による冷却作用によって冷やされた外気を空調機械室に設置された空調機に導入するように構成したことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建物の壁面緑化構造であって、空調機から排出されるドレン水をプランターに灌水するように構成したことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の建物の壁面緑化構造であって、外壁の外側に避難通路用のバルコニーを設け、バルコニーの床材をグレーチングとすることにより、バルコニーによる壁面への影を減少すると共に、斜め下方からバルコニーより上方の壁面緑化用植物を目視できるようにし、バルコニーの先端には上下に間隔を隔てて複数段の透明板を設けて、非常時における歩行者の安全を確保するように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、空調機械室の外壁を構成するルーバーの外面に沿って設けられた複数段のプランターによる立体的な植栽によって壁面緑化を行うので、直射日光による外壁温度の上昇を抑制して外壁まわりの熱負荷を低減することができ、しかも、壁面緑化用植物の水分蒸発による冷却作用によって冷やされた外気を空調機械室内の空調機に導入するので、建物内部の熱負荷を低減でき、これらによって建物全体としての省エネルギー効果を達成できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、上記の効果に加え、空調機械室に設置した空調機から排出されるドレン水をプランターに灌水するので、壁面緑化用植物への人為的な灌水作業が軽減されることと、ドレン水の利用による節水効果とによって経済性を確保できるという効果がある。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、外壁の外側に避難通路用のバルコニーがあり、バルコニーの先端には上下に間隔を隔てて複数段の透明板を設けて、非常時における歩行者の安全を確保するように構成してあるので、壁面緑化用植物の移植や消毒、その他の手入れを、ゴンドラ等を使用せずに安全に行うことができる。また、バルコニーの先端に設けられる安全確保用部材として、上下に間隔を隔てて複数段の透明板を設けるので、これらの部材によって壁面緑化用植物への採光、通風が妨げられることがない。
【0014】
殊に、バルコニーの床材をグレーチングとすることにより、バルコニーによる壁面への影を減少すると共に、斜め下方からバルコニーより上方の壁面緑化植物を目視できるようにしたので、バルコニーが壁面緑化による景観の妨げになることを極力防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る建物の壁面緑化構造の一例を示す。1は建物における各階の空調機械室であり、空調機2が設置されている。3は空調機械室1の外壁を構成するアルミ等の金属製のルーバーである。ルーバー3の外面には上下に間隔を隔てて複数段のプランター4が設けられており、プランター4に植栽された植物5により壁面緑化を行うように構成されている。
【0016】
そして、プランター4に植栽された壁面緑化用植物5の水分蒸発による冷却作用によって冷やされた外気は、ルーバー3から空調機械室1内部の空調機2に導入するように構成され、当該空調機2によって、居室、オフィス、店舗等々に供される建物の内部空間を空調するように構成されている。上階の空調機械室1に設置した空調機2から排出されるドレン水は、下階のプランター4に重力で灌水されるようにパイプ配管6されている。
【0017】
上記の構成によれば、空調機械室1の外壁を構成するルーバー3の外面に沿って設けられた複数段のプランター4による立体的な植栽によって壁面緑化を行うので、直射日光Aによる外壁温度の上昇を抑制して外壁まわりの熱負荷を低減することができる。
【0018】
しかも、壁面緑化用植物5の水分蒸発による冷却作用によって冷やされた外気Bを空調機械室1内の空調機2に導入するので、建物内部の熱負荷を低減でき、これらによって建物全体としての省エネルギー効果を達成できる。
【0019】
また、空調機械室1に設置した空調機から排出されるドレン水をプランター4に灌水するので、壁面緑化用植物5への人為的な灌水作業が軽減されることになり、ドレン水の利用による節水効果と相まって経済性を確保できる。
【0020】
図示しないが、建物の空調機械室1以外の外壁は、例えば、プレキャストコンクリート版、ガラスカーテンウォール等によって構成されており、これらの外壁のうち、壁面緑化を行う領域には、外壁の外面に沿って、前記ルーバー3と同じデザインの金属製ルーバーが設置される。そして、これらのルーバーの外面にも、空調機械室1外面と同じデザインとなるように、上下に間隔を隔てて複数段のプランターを設け、プランターに植栽された植物により壁面緑化を行うことになる。
【0021】
図2〜図4は、本発明に係る建物の壁面緑化構造の他の例を示す。この実施形態は、アルミ等の金属製のルーバー3で構成された外壁の外側に避難通路用のバルコニー7を設け、バルコニー7の先端に適当間隔おきに立設した支柱7bに、上下幅が400mm程度の透明板8を上下に400mm程度の間隔を隔てて複数段に架設して、非常時における歩行者の安全を確保するように構成すると共に、前記バルコニー7の床材をアルミ等の金属製のグレーチング7aとすることにより、図3に示すように、矢印a−aの範囲に斜め上方から直射日光が当たった際のバルコニー7による壁面への影を減少すると共に、建物を外部から見上げたとき、図3に矢印bで示すように、斜め下方からバルコニー7より上方の壁面緑化植物5をグレーチング7aの格子状の隙間を通して目視できるように構成した点に特徴がある。透明板8としては、例えば、強化合せガラスが用いられる。7cは、グレーチング7aと支柱7bを支持する小梁鉄骨であり、梁9に片持ち状に支持されている。
【0022】
上記の構成によれば、外壁の外側に避難通路用のバルコニー7があり、バルコニー7の先端には上下に間隔を隔てて複数段の透明板8を設けて、非常時における歩行者の安全を確保するように構成してあるので、壁面緑化用植物5の移植や消毒、その他の手入れを、ゴンドラ等を使用せずに安全に行うことができる。
【0023】
また、バルコニー7の先端に設けられる安全確保用部材として、上下に間隔を隔てて複数段の透明板8を設けるので、これらの部材によって壁面緑化用植物5への採光、通風が妨げられることがない。
【0024】
殊に、バルコニー7の床材をグレーチング7aとすることにより、バルコニー7による壁面への影を減少すると共に、斜め下方からバルコニー7より上方の壁面緑化植物5を目視できるようにしたので、バルコニー7が壁面緑化による景観の妨げになることを防止できる。その他の構成や作用は、図1の実施形態と同じであるため、同一構成部材に同一符号を付し、説明を省略する。
【0025】
以上、複数の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態を示す建物の壁面緑化構造の縦断側面図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2で示した建物の壁面緑化構造の縦断側面図である。
【図4】要部の拡大縦断側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 空調機械室
2 空調機
3 ルーバー(外壁)
4 プランター
5 壁面緑化用植物
6 パイプ配管
7 バルコニー
7a グレーチング
7b 支柱
7c 小梁鉄骨
8 透明板
9 梁
A 直射日光
B 外気
a 矢印
b 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の空調機械室の外壁をルーバーで構成し、ルーバーの外面には上下に間隔を隔てて複数段のプランターを設け、プランターに植栽された植物により壁面緑化を行うと共に、壁面緑化用植物の水分蒸発による冷却作用によって冷やされた外気を空調機械室に設置された空調機に導入するように構成したことを特徴とする建物の壁面緑化構造。
【請求項2】
空調機から排出されるドレン水をプランターに灌水するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の建物の壁面緑化構造。
【請求項3】
外壁の外側に避難通路用のバルコニーを設け、バルコニーの床材をグレーチングとすることにより、バルコニーによる壁面への影を減少すると共に、斜め下方からバルコニーより上方の壁面緑化植物を目視できるようにし、バルコニーの先端には上下に間隔を隔てて複数段の透明板を設けて、非常時における歩行者の安全を確保するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の壁面緑化構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−219429(P2009−219429A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67158(P2008−67158)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】