説明

建物の庇装置

【課題】部品点数を減らし、製作工程を簡略にし、意匠性を向上させ、通風もよくする。
【解決手段】建物躯体に沿って配設された基枠4と基枠4の両端から補強ブラケット5を介して側枠6を突設し、両側の側枠6の先端を前枠で連結して形成された庇枠の内側に複数のルーバー材を取り付けた建物の庇装置において、基枠4には、ルーバー材と略同一面をなすように前方に張出す張出し部を有する基枠本体と、基枠本体の上下方にそれぞれ突出して建物躯体に取り付けるための取付部10とを形成し、補強ブラケット5には、背面板5aと背面板5aの端部から略直角に折り曲げられて基枠本体と取付部の端面に当接する側面板5bとを設け、側面板5bを側枠6とともに基枠4の端面に固定するとともに、側面板5bで基枠4の取付部10の端面を塞いだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に建物の壁建物躯体に付設される庇装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の庇装置は太陽光を遮光するために設けられるものであるが、最近は、太陽光を完全に遮る機能を有するもののほか、太陽が高くて日射が厳しいときは陽射しを遮り、太陽が傾いているときは採光により明るくしたいとする要望が高まっており、これに対応するものとして、例えば特許文献1のような庇装置が提案されている。
【0003】
これは、庇屋根をルーバー構造とし、ルーバー材の両端を、建物から突出するアーム材に所定の角度で固定することにより、太陽光が地面に対して垂直又は垂直に近い状態で当たるときは、遮光し、太陽光が地面に対して傾いてきたときは、隣り合うルーバー材の間から射し込んで採光が得られるようにしたものである。アーム材は建物躯体に取り付けられるベース部材に直接に取り付けるのではなく、まずベース部材に固定用アングルを取り付けておき、この固定用アングルにアーム材を固定するようになっている。固定用アングルはベース部材にビス止めされる固定板と固定板から垂直に突出してアーム材に差し込まれる差し込み部とから構成されている。固定用アングルの固定板と差し込み部とは溶接によって一体になっているので、庇部分自体が重かったり、庇に積雪等の荷重が加わったりすると、固定用アングルの溶接部分に応力が集中するので強度不足となる。このため、ベース部材を幅広にし、ルーバー材を短くするとともに、両端のアーム材の間に中間アームを設け、両端のアームと中間アームとの間にルーバーを取り付ける構造が採用されている。
【特許文献1】特開2006−183345
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベース部材を幅広にし、ルーバー材の間に中間アームを設ける構成では、部品点数が多くなり、製作工程が増えてコストが高くなるほか、見栄えもよくなく、通風も妨げられるという問題点がある。
【0005】
本発明は上記問題点を解消し、建物躯体に固定される基枠と基枠の両端から突出する側枠とを高強度のジョイント部材によって連結することにより、中間アームを省き、部品点数を減らし、製作工程を簡略にしてコストを低減し、意匠性を向上させ、さらに通風もよくすることができる建物の庇装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、建物躯体に沿って配設された基枠と基枠の両端から補強ブラケットを介して側枠を突設し、両側の側枠の先端を前枠で連結して形成された庇枠の内側に複数のルーバー材を取り付けた建物の庇装置において、上記基枠には、上記ルーバー材と略同一面をなすように前方に張出す張出し部を有する基枠本体と、基枠本体の上下方にそれぞれ突出して建物躯体に取り付けるための取付部とを形成し、上記補強ブラケットには、上記基枠の上下の取付部の背面側に配置される背面板と、背面板の端部から略直角に折り曲げられて基枠本体と取付部の端面に当接する側面板とを設け、この側面板を上記側枠とともに基枠の端面に固定するとともに、上記側面板によって上記基枠の取付部の端面を塞いだことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記補強ブラケットを上記基枠と側枠との間に配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、上記取付部を、上記基枠本体の基部からそれぞれ上下方に突出して上記建物躯体に固着される取付片と、取付片の先端から前方に突出する突片とから構成し、上記基枠本体と取付部とによって形成された凹状部の開口端をカバー材によって覆ったことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、屋根部分にルーバー材を設けたことにより、太陽が高くて日射が厳しいときは陽射しを遮り、太陽が傾いているときは採光することができ、しかも通風効果も得ることができる。
【0010】
上記補強ブラケットは、上記基枠の上下の取付部の背面側に配置される背面板と、背面板の端部から略直角に折り曲げられて基枠本体と取付部の端面に当接する側面板とを設けた構成であり、折り曲げ部の長さが基枠本体に上下の取付部を加えたものとなり、非常に長いので、応力が集中しにくく、十分な強度を確保することができる。
【0011】
このように、建物躯体に固定される基枠と基枠の両端から突出する側枠とを高強度のジョイント部材によって連結することにより、中間アームを省き、部品点数を減らし、製作工程を簡略にしてコストを低減することができる。また、ルーバー材は両側の側枠に通しで設けられるので意匠性が向上する。
【0012】
また、上記補強ブラケットの側面板により上記基枠の取付部の端面を塞いでいるので、別途取付部の端面をキャップで覆う必要がない。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、上記補強ブラケットを上記基枠と側枠との間に配置したので、外部に補強ブラケットが大きく露出することがないので、庇装置の外観意匠が損なわれることがない。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、上記取付部を、上記基枠本体の基部からそれぞれ上下方に突出して上記建物躯体に固着される取付片と、取付片の先端から前方に突出する突片とから構成し、上記基枠本体と取付部とによって形成された凹状部の開口端をカバー材によって覆ったので、基枠の取付けネジを隠して見栄えを良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の最良の実施形態を図面によって説明する。
【0016】
図1は庇装置を建物躯体に取り付けた状態の斜視図、図2はその縦断面図であり、図3は庇装置の斜視図である。符号1は建物躯体に形成された窓開口部である。この窓開口部1には窓サッシAが設けられ、建物躯体の外壁2から室外側に張り出してアルミニウム製の庇装置3が取り付けられている。この庇装置3は、採光性と遮光性とを兼ね備えている。
【0017】
すなわち、庇装置3は、図3に示すように、建物躯体の外壁2に沿って取り付けられる基枠4と、この基枠4の両端から補強ブラケット5を介して突出する側枠6と、これら側枠6の先端同士を接続する前枠7とを備え、これら基枠4、側枠6及び前枠7の内側には複数のルーバー材8を設けたものである。
【0018】
上記基枠4は、図4に示されるように、基枠本体4aと、基枠本体4aの上下方にそれぞれ突出する取付部10とから形成されている。
【0019】
基枠本体4aは、図4および図5に示されるように、ルーバー材8と同じ高さで、逆台形状の中空の張出し部11の上下部から後方に段部12を介して突出する平行な水平片13、14を設けたもので、張出し部11にはビスホール15が形成されている。上部水平片13の端部には下方に屈曲する屈曲部16が形成されている。水平片13、14の両側の端部は後述の補強ブラケット5の背面板5aの大きさ分だけ切欠き形成されている。
【0020】
取付部10は、基枠本体4aの基部からそれぞれ上下方に突出して上記建物躯体に固着される取付片17、18と、取付片17、18の先端から前方に突出する突片20とから構成されている。取付部10と基枠本体4aの水平片13、14とによって前方に開口する凹状部が形成されている。凹状部の開口端には係止部23が形成されている。なお、上下の取付片17、18の先端部近傍には後方に突出する突部21が形成されている。
【0021】
図5及び図6に示されるように、側枠6の内側にはルーバー材8の嵌合溝24が形成され、外側上下部にはリブ状の係止部25が突出形成されている。嵌合溝24の上部溝壁26には下向きに開口する受け溝27が形成されている。なお、上部溝壁26の基部には切欠き部30(図4参照)が形成されている。
【0022】
補強ブラケット5は、基枠4の上下の取付部10の背面側に配置される背面板5aと、背面板5aの端部から前方に略直角に折り曲げられた側面板5bとから構成されている。背面板5aの高さは、図5及び図6に示されるように、上記取付部10の突片20の上下の突部21、21間に嵌り合う程度に形成されている。側面板5bは基枠本体4aの端面を覆うとともに、側枠6に差し込まれる差込み部31と、該差込み部31の上下に延出する覆い部32とから横向きT字形に形成され、全体で基枠本体4aの前後幅と略同じに形成されている。差し込み部31の長さは特に限定されない。
【0023】
前枠7は、図7に示されるように、前側の第1前枠7aと後ろ側の第2前枠7bとから構成され、第2前枠7bの前部に形成された係止溝33に第1前枠7aの係止突片34を係止し、上記係止溝33の下部に形成された係合板35の下面に第1前枠7aの底板36の上面を係合させ、係合板35と底板36とをビス止めするとともに、第1前枠7aの両端面に蓋体37(図3参照)を嵌め込み固定することによって構成されている。
【0024】
なお、第2前枠7bの後面と上記基枠本体4aの前面とは、図2に示されるように、次に示すルーバー材8の前後面と同じ角度で傾斜している。
【0025】
ルーバー材8は断面が前後面が傾斜した平行四辺形状に形成され、各後面部にはビスホール15が形成されている。
【0026】
次に、庇装置3を組み立てるときは、まず図4及び図6に示されるように、補強ブラケット5の側面板5bの差込み部31を側枠6の嵌合溝24内の上部溝壁26の受け溝27と嵌合溝24の下部溝壁38との間に差し込むとともに、ビスで固定する。そして、側枠6と一体に結合した補強ブラケット5の側面板5bを基枠4の端面に当接し、側枠6の外側からビスを挿通して図5のように基枠本体4aのビスホール15にビス止め固定する。また、補強ブラケット5の背面板5aを基枠4の取付部10の背面側に形成された上下の取付片17、18の突部21、21間に嵌合させる。
【0027】
次に、図8に示されるように、両側の側枠6の嵌合溝24内にルーバー材8を嵌合させてスライドさせ、所定の位置で側枠6の外側からビスを挿通してルーバー材8のビスホール15にビス止め固定する。さらに、図9に示されるように、前枠7の第2前枠7bを側枠6の嵌合溝24の前端から挿入し、図2に示されるように、側枠6の外側からビスを挿通して第2前枠7bのビスホール15にビス止め固定する。さらに、図10および図11に示されるように、側枠6の外側係止部25(図10参照)には側枠カバー40を係止装着する。
【0028】
さらに、庇装置3を建物躯体に取り付けるときは、図5のように予め建物躯体の外壁2の所定位置に仮止め用の金具41を2、3個固定しておき、上記基枠4の基枠本体4aの水平片13の端部の屈曲部16を上記仮止め金具41に係止する。そして、図12に示されるように、上下の取付片17、18から固定ネジ42を貫通させて建物躯体に基枠4を固定する。端部の固定ネジ42は上下の取付片17、18とともに補強ブラケットの背面板5aのネジ挿通孔45を貫通して建物躯体にねじ込まれる。最後に、基枠本体4aの上下の凹状部の開口端の係止部23にカバー材43の係止部44を係止させて装着する。カバー材43の両端部は補強ブラケット5の覆い部32の内面に突き当てられる。これにより、庇装置3が完成する。
【0029】
上記庇装置3によれば、屋根部分にルーバー材8を設けたことにより、太陽が高くて日射が厳しいときは陽射しを遮り、太陽が傾いているときは採光することができ、しかも通風効果も得ることができる。
【0030】
上記補強ブラケット5は、上記基枠4の上下の取付部10の背面側に固定される背面板5aと、背面板5aの端部から略直角に折り曲げられて基枠本体4aと取付部10の端面に当接する側面板5bとを設けた構成であり、折り曲げ部の長さが基枠本体4aに上下の取付部10を加えたものとなり、非常に長いので、応力が集中しにくく、十分な強度を確保することができる。
【0031】
このように、建物躯体に固定される基枠4と基枠4の両端から突出する側枠6とを高強度のジョイント部材によって連結することにより、中間アームを省き、部品点数を減らし、製作工程を簡略にしてコストを低減することができる。また、ルーバー材8は両側の側枠6に通しで設けられるので意匠性が向上する。
【0032】
また、上記補強ブラケット5の側面板5bにより上記基枠4の取付部10の端面を塞いでいるので、別途取付部10の端面をキャップで覆う必要がない。
【0033】
さらに、上記取付部10を、上記基枠本体4aの基部からそれぞれ上下方に突出して上記建物躯体に固着される取付片17、18と、取付片17、18の先端から前方に突出する突片20とから構成し、上記基枠本体4aと取付部10とによって形成された凹状部の開口端をカバー材43によって覆ったので、基枠4の固定ネジ42を隠して見栄えを良くすることができる。しかも、カバー材43の両端は上記補強ブラケット5の側面板5bに当接するので、上記凹状部から抜け出ることが防止される。
【0034】
なお、庇装置3を組み立てる場合、図3、図7、図8等に示したように、初めに基枠4の一端から補強ブラケット5を介して両側の側枠6を取り付ける実施形態に限定されない。図示は省略するが、最初は基枠の一端から補強ブラケットを介して一方の側枠のみを取り付けておき、この側枠に対して各ルーバー材の一端を突き当ててビス止めし、その後、同様にして基枠の他端に補強ブラケットを介して他方の側枠を取り付け、この側枠に各ルーバー材の他端を突き当ててビス止め固定し、さらに両側枠の外側からビスを挿通して前枠を固定するという手順によってもよい。
【0035】
また、上述の形態は、補強ブラケットを上記基枠と側枠との間に配置したものであるが、これに限定されない。補強ブラケットを上記基枠と側枠の外側に配置する形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】庇装置を建物躯体に取り付けた状態の斜視図
【図2】本発明に係る庇装置の縦断面図
【図3】上記庇装置の斜視図
【図4】上記庇装置の基枠と側枠との組立て分解斜視図
【図5】基枠部分の拡大断面図
【図6】補強ブラケットの側枠への取付態様図
【図7】前枠の構成態様説明図
【図8】上記庇装置のルーバー材の取付態様説明図
【図9】上記庇装置の前枠の取付態様説明図
【図10】上記庇装置の側枠カバーの取付態様説明図
【図11】上記庇装置の完成直前の斜視図
【図12】上記庇装置の壁躯体への取付態様説明図
【符号の説明】
【0037】
4 基枠
4a 基枠本体
5 補強ブラケット
5a 背面板
5b 側面板
6 側枠
8 ルーバー材
10 取付部
11 張り出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体に沿って配設された基枠と基枠の両端から補強ブラケットを介して側枠を突設し、両側の側枠の先端を前枠で連結して形成された庇枠の内側に複数のルーバー材を取り付けた建物の庇装置において、上記基枠には、上記ルーバー材と略同一面をなすように前方に張出す張出し部を有する基枠本体と、基枠本体の上下方にそれぞれ突出して建物躯体に取り付けるための取付部とを形成し、上記補強ブラケットには、上記基枠の上下の取付部の背面側に配置される背面板と、背面板の端部から略直角に折り曲げられて基枠本体と取付部の端面に当接する側面板とを設け、この側面板を上記側枠とともに基枠の端面に固定するとともに、上記側面板によって上記基枠の取付部の端面を塞いだことを特徴とする庇装置。
【請求項2】
上記補強ブラケットを上記基枠と側枠との間に配置したことを特徴とする、請求項1に記載の庇装置。
【請求項3】
上記取付部を、上記基枠本体の基部からそれぞれ上下方に突出して上記建物躯体に固着される取付片と、取付片の先端から前方に突出する突片とから構成し、上記基枠本体と取付部とによって形成された凹状部の開口端をカバー材によって覆ったことを特徴とする、請求項1又は2に記載の庇装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−264020(P2009−264020A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115767(P2008−115767)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】