説明

建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法と配置構造

【課題】本発明は、建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法に関し、従来の建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法におけるコストを低減して更に工期短縮を図ることが課題であって、それを解決することである。
【解決手段】建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法において、前記基礎梁のうち建物側から突出させる基礎梁3,3を平面視してX型若しくはV型に配置して、その突出させた基礎梁同士が交差する個所の直下に支持用の杭4を配置する配置方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物のエントランス庇や外部階段等の比較的荷重負担の少ない平面的な張出部を支持する基礎の構造に係り、当該基礎構造において必要な基礎梁と杭との配置方法と配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図4に示すように、エントランス庇20は、庇の建物21から突出した先端の両隅に2本の柱22で支持される。そして、前記庇20を囲うように基礎梁23が四辺周囲に配置される。前記柱22の直下に杭24が設けられるものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−330532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法によれば、四辺周囲に配置した基礎梁の先端側の2個所に柱を設けたので、その柱直下に杭を設けるようにしていることから、杭の本数が2本となっている。これでは、荷重負担が少ないにもかかわらず杭本数が多くなっている。また、杭の支持層の深度が深い場合には、2本分の杭のコストが嵩むことになり、必要支持力に対するコストが高くなるという課題がある。本発明に係る建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法と配置構造は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法において、前記基礎梁のうち建物側から突出させる基礎梁を交差させて配置し、当該基礎梁同士が交差する個所の直下に支持用の杭を配置することである。
前記基礎梁は、平面視してX型,V型,U型若しくはW型に配置して交差させたことを含むものである。
また、建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置構造の要旨は、建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置構造において、前記基礎梁のうち建物側から突出させる基礎梁を交差するように配置して形成され、当該基礎梁同士が交差する個所の直下に支持用の杭が形成されていることである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法と配置構造によれば、杭の本数が従来例に比較して減少することになる。よって、躯体コスト,工期,掘削土量の低減が図れる。負担荷重と杭支持力とのバランスが良くなる。特に地盤が悪く基礎が深い場合には、杭1本のコストが嵩むので、低減効果が増すものである。
庇エリアなどの張出部の中心付近で杭が荷重を受けることになり、床の沈下対策としても有効になる等と言う数々の優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置構造を示す図である。
【図2】同本発明の他の実施例に係る建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置構造を示す図である。
【図3】同本発明の他の実施例を示す概略平面図(A),側面図(B),基礎梁3と杭4との配置を示す概略平面図(C),(D)である。
【図4】従来例に係る張出部を支持する基礎梁と杭との配置構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法は、図1に示すように、建物1の張出部用基礎2における建物側から突出した基礎梁3,…と杭4との配置方法において、前記基礎梁3を平面視してX型に配置して、その基礎梁3,3同士が交差する個所の直下に支持用の杭4を配置することである。
【実施例1】
【0009】
前記張出部用基礎2は、建物1から平面的に突出する上部庇5の下位置における地盤部分である。前記基礎梁3は、建物1から突出して上部庇5を支持する柱6,6との間に設けられる基礎梁である。また、前記柱6,6間の基礎梁は符号7で示している。
【0010】
更に、前記柱6は、上部庇5の先端部側において支持するように配設されているものである。こうして、前記杭4を、予め前記基礎梁3,3の交差する点の位置に構築する。その後、基礎梁3,3をX型状に形成するものである。そして、地盤を基礎梁3,3の間に埋戻してその上に土間コンクリートを形成する。また、柱6、6と上部庇5とを現場コンクリート打ち、若しくは、プレキャストコンクリート製,鉄骨製の柱等を建て入れなどして構築する。
【0011】
前記杭4を構築する際に、地盤が軟弱であったりして基礎が深いときにはコストが嵩むことになるが、図1に示すように、本発明に係る方法では1本の杭4で済むので、従来例に比較してコストが低減される。このような配置方法により、図1に示す基礎梁と杭との配置構造ができ上がる。X(クロス)型の基礎梁3,3により、庇下を車寄せとして利用する場合には、繰り返しの活荷重に対する沈下防止としても作用して効果的である。
【実施例2】
【0012】
図2に示すように、建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法の他の実施例として、前記基礎梁のうち建物側から突出させる基礎梁3,3を平面視してV型に配置して、その突出させた基礎梁3を平面視してV型に配置し、その基礎梁3,3同士が交差する個所の直下に支持用の杭4を配置するものである。実施例1のX型からの発展形となっている。その他、前記基礎梁3,3は、上記実施例1,2において直線状にX型,V型に配置するだけに限らず、平面視してU型若しくはW型に配置したり、その他に曲線状のX型やV型,U型,W型等に配置したりして交差させる配置も含むものである。この配置構造も上記実施例1と同様の効果を奏するものである。
【実施例3】
【0013】
図3(A),(B)に示すように、建物1におけるセットバックに、鉄骨造の下屋部分8が有る場合にも、図3(C),(D)に示すように、基礎梁3,3を平面視して直線状のX型,V型,U型若しくはW型、その他に、曲線状のX型やV型,U型,W型等に配置し交差させて配置して、杭4を1本にするものである。このように、本発明の配置方法を適用することが可能である。この場合にも、上記実施例1,2と同様の作用・効果を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明に係る建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法と配置構造は、比較的荷重負担の小さい突出物を支持する場合の基礎部分に広く適用することができてコスト低減をもたらすものである。
【符号の説明】
【0015】
1 建物、
2 張出部用基礎、
3 基礎梁、
4 杭、
5 上部庇、
6 柱、
7 基礎梁、
8 下屋部分、
20 エントランス庇、
21 建物、
22 柱、
23 基礎梁、
24 杭。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法において、
前記基礎梁のうち建物側から突出させる基礎梁を交差させて配置し、当該基礎梁同士が交差する個所の直下に支持用の杭を配置すること、
を特徴とする建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法。
【請求項2】
基礎梁は、平面視してX型,V型,U型若しくはW型に配置して交差させたこと、
を特徴とする請求項1に記載の建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置方法。
【請求項3】
建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置構造において、
前記基礎梁のうち建物側から突出させる基礎梁を交差するように配置して形成され、
当該基礎梁同士が交差する個所の直下に支持用の杭が形成されていること、
を特徴とする建物の張出部を支持する基礎梁と杭との配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−157783(P2011−157783A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22018(P2010−22018)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】