説明

建物の換気装置

【課題】室内の換気効率を好適に向上すること。
【解決手段】建物10における浴室21の第1外壁部31には、第1外壁部31の幅方向に相互に離間して配された2つの窓開口41,42と、それら窓開口41,42を各々塞ぐ窓パネル51,52とが設けられている。窓パネル51,52は、上記幅方向において互いに近い側となる端部が回動基端部、同幅方向において互いに遠い側となる端部が回動先端部となるように構成されており、屋内外に回動可能となっている。第1外壁部31は、同第1外壁部の幅方向両側から挟んで対峙する壁部33,34とともに浴室空間BSを区画形成している。両窓パネル51,52のうち風下側の一方が室内側への回動限界位置へ配置され壁部33,34と対峙した状態となることで、両窓開口41,42のうち風上側となる一方から流入し風下側となる他方へ向う空気が壁部33,34に沿って移動するように整流される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁部には、屋内外に貫通する窓開口とその窓開口を塞ぐ窓パネルとが設けられており、窓開口を適宜開放することで換気を行うことができる。これにより、室内の空気とともに湿気やにおい等を屋外へ排出し、室内環境を好適なものとすることができる。
【0003】
近年では、窓開口を開放した際の窓パネルの姿勢(例えば屋外への張り出し方)を工夫することにより、窓開口の面積を過度に大きくすることなく換気効率の向上を図った換気構造が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−170138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載された換気構造では、窓パネルを屋外側に突出させて室内への外気の流入を促進することで換気効率の向上が図られている。しかしながら、かかる構成に示すように単に外気の流入量を増大させる工夫をしただけでは、例えば部屋の中心部での換気効率を向上することができるものの部屋の壁部沿いとなる部分や角部分では換気が上手く行われないと懸念される。つまり、部分的な換気効率の向上は期待できても、部屋全体で見た場合には換気効率向上の恩恵が小さくなると想定される。
【0006】
本発明は、上記事情等に鑑みてなされたものであり、室内の換気効率を好適に向上することができる建物の換気装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0008】
手段1.建物の一面となる外壁部(第1外壁部31)に設けられ、少なくとも同外壁部の幅方向に相互に離間して配された2つの窓開口(窓開口41,42)と、
それら窓開口に各々設けられ、同窓開口を開閉する窓開閉パネル(窓パネル51,52等)と
を備え、
前記窓開閉パネルとして、前記窓開口を塞ぐ閉位置及び同窓開口から屋外側へ突出し同窓開口を開放する開位置の両位置を含む範囲にて回動可能な第1窓パネル(窓パネル51,52)を有し、
前記両第1窓パネルは、前記幅方向において互いに近い側となる端部が回動基端部、同幅方向において互いに遠い側となる端部が回動先端部となるように構成されており、
前記外壁部は、当該外壁部を同外壁部の幅方向両側から挟んで対峙する第1壁部(仕切り壁部34や第3外壁部33)及びそれら第1壁部を隔てて同外壁部と対峙する第2壁部(第2外壁部32)の各壁部とともに室内空間を区画形成しており、
前記両窓開口のうち風上側となる一方から流入し風下側となる他方へ向う風が前記第1壁部に沿って流れるように整流する整流手段(窓パネル51,52、内側窓パネル101,102又はカーテン56)を備えていることを特徴とする建物の換気装置。
【0009】
手段1によれば、屋外にて外壁部(詳しくはその外壁面)に沿うようにして風が吹いている場合に、例えば両窓開口を開放することで室内の換気を行うことができる。具体的には、風上側となる窓開口を通じて外気(屋外の空気)を屋内側へ導くことができる程度に、各窓開口に設けられた両第1窓パネルのうち風上側の第1窓パネルを屋外側へ回動させるとともに、風下側となる窓開口を通じて屋内の空気を排出可能となるように風下側の第1窓パネルを回動させる。このような状態とすれば、風上側の窓開口ではそれに付随する第1窓パネルによって室内に外気が導かれる。また、風下側の窓開口付近では負圧が生じることで屋内の空気の屋外への排出が促される。これにより、本手段に示す窓構造が採用された部屋の換気を行うことができる。
【0010】
また、本手段においては特に、風上側の窓開口から流入し風下側の窓開口へ向う風が第1壁部に沿って流れるように整流されることとなる。このように第1壁部に沿った風の流れを生じさせることにより、第1壁部付近の空気の入れ替えを促して、部屋全体での換気効率を好適に向上することができる。
【0011】
手段2.前記整流手段は、前記室内空間において少なくとも前記窓開口と同じ高さ位置であって、且つそれら窓開口において互いに近い側となる端部又はそれら端部の間となる位置に設けられる整流面(カーテン56において壁部33,34を向いている面)を有し、風上側から流入した風の室内空間における風向きを前記整流面により調整するものであることを特徴とする手段1に記載の建物の換気装置。
【0012】
手段2によれば、風上側の窓開口を通じて室内に流入した風の流れが整流面によって調整される。これにより、手段1に示した第1壁部に沿った風の流れを好適に実現することができる。
【0013】
例えば、整流面を、第1壁部に対向させるとともに外壁部から第2壁部側へ延びる構成とすることにより、上記整流機能を好適に発揮させることができる。
【0014】
手段3.前記窓開閉パネルは、前記第1窓パネルに屋内側から対峙するようにして配置された第2窓パネル(内側窓パネル101,102)を有してなり、
前記第2窓パネルは、前記第1窓パネルの回動基端部と同じ側の端部を基端として屋内側へ回動可能となっており、
さらに、前記第2窓パネルは、前記整流手段を構成し、当該第2窓パネルが屋内側に回動された状態で前記室内空間内の風を整流することを特徴とする手段1又は手段2に記載の建物の換気装置。
【0015】
手段3によれば、第1窓パネルを屋外側に回動させるとともに第2窓パネルを室内側へ回動させることにより、窓開口が開放される。ここで、例えば、第2窓パネルを窓開口に対して斜めに対向させたり外壁部に対して直交させたりすることで、屋内空間における風の流れを当該第2窓パネルに最寄りとなる第1壁部に沿うように整流することができる。
【0016】
手段4.前記第2窓パネルの室内側への回動に連動して、前記第1窓パネルを屋外側へ回動させる連動機構を備えていることを特徴とする手段3に記載の建物の換気装置。
【0017】
手段4によれば、換気を行う場合には、屋内側の窓パネル(第2窓パネル)を回動させることで、それに追従して屋外側の窓パネル(第1窓パネル)が屋外側へ回動することとなる。このため、換気を行う際には、ユーザが第2窓パネルを屋内側に回動させることで第1窓パネルが屋外側に回動して窓開口が開放され、第2窓パネルを回動させた後に第1窓パネルを回動させる必要がない。故に、内外の窓パネルを併用して換気効率の向上を図りつつ、それに起因した換気の準備作業の煩雑化を抑制できる。
【0018】
手段5.前記第1窓パネルは、前記窓開口よりも屋外側の開位置と屋内側の開位置との間で回動可能であって、且つ前記第2窓パネルと同じ回動角度で屋内側へ回動可能となっていることを特徴とする手段3又は手段4に記載の建物の換気装置。
【0019】
風上側の第1窓パネルを屋外側へ突出させる場合、当該第1窓パネルの外面側(より詳しくは第1窓パネルの回動先端部付近)で負圧が生じ、風上側の第1窓パネルを通過した屋外風が外壁部側へ引き寄せられることとなる。このようにして引き寄せられた屋外風が風下側の窓開口に流入すると、風下側の窓開口を通じた空気の排出が妨げられ、換気効率が低下し得る。この点、風下側の窓パネルを屋外側へ回動させることで、そのような風の流入を妨げて換気効率の低下を回避することができる。
【0020】
ここで、風下側の窓開口付近では、屋外風が当該窓開口を横切ることで同窓開口付近に負圧が発生して屋内空気の吸出しが生じ、その吸出しにより換気効率を高めることができる。このため、例えば風上側の窓パネルを迂回した屋外風が風下側の窓開口を超えた下流位置へ引き寄せられる場合には、風下側の第1窓パネルを屋外側に突出させる必要がなく、寧ろ屋外側へ突出することで当該第1窓パネルが抵抗となって風下側の窓開口付近での屋外風の風速が低下すると想定される。これは風下側の窓開口を通じた屋内空気の吸出しを弱くして換気効率の向上を妨げる要因となり得る。本手段においては、この点に着目して、第1窓パネルを屋内側に回動可能とした。これにより、屋外風の風速等に応じて効率よく換気ができるように換気態様を変更可能としている。
【0021】
なお、第1窓パネルについては第2窓パネルに重ねた状態で(例えば第2窓パネルと同じ回動角度で)屋内側に回動可能とすることにより当該第2窓パネルに代えて第1窓パネルに屋内風の整流機能を付与できる。かかる構成を採用する場合には、例えば第1窓パネルの回動基端部を第2窓パネルの回動基端部よりも両第1壁部のうち最寄りとなる一方側へ偏倚させるとよい。
【0022】
手段6.前記第1窓パネルは、前記窓開口よりも屋外側の開位置と屋内側の開位置との間で回動可能となっており、
前記両第1窓パネルのうち風上側となる一方が前記屋外側の開位置に回動され且つ風下側となる他方が前記屋内側の開位置に回動された状態で、当該他方の第1窓パネルが整流手段として機能することを特徴とする手段1又は手段2に記載の建物の換気装置。
【0023】
手段6によれば、風下側の第1窓パネルを室内側に回動させて窓開口に対して斜めに対向させたり外壁部に対して直交させたり(すなわち第1壁部に対峙させたり)することで、室内空間での風が当該窓開口に近い側の第1壁部に沿って移動するように整流することができる。
【0024】
手段7.前記整流手段は、前記窓開口と同じ高さ位置に設けられ前記両第1壁部に対向するカーテン部材(カーテン56)を有し、
前記カーテン部材は、前記外壁部側の端部が前記2つの窓開口の間においてそれら両窓開口の端部を含む中間壁部に対峙し、前記第2壁部側の端部が同第2壁部に対して離れた状態となるようにして配置されることを特徴とする手段1乃至手段6のいずれか1つに記載の建物の換気装置。
【0025】
手段7によれば、風上側の窓開口から室内に流入した外気は、風上側の第1壁部→第2壁部→反対側の第1壁部に沿って移動することとなる。これにより、壁部に沿う位置に存在する空気を好適に移動させることができる。
【0026】
また、外気を室内空間における奥側(第2壁部側)へ導くことができ、一方の窓開口から室内に流入した外気が隣の窓開口から直ちに流出するといった不都合を好適に回避することができる。故に、室内空間全体での換気効率の向上を好適に実現することが可能となる。
【0027】
手段8.前記外壁部は、浴室(浴室21)と屋外とを仕切るものであり、
前記窓開口は、前記浴室と屋外とを連通していることを特徴とする手段1乃至手段7のいずれか1つに記載の建物の換気装置。
【0028】
手段8によれば、浴室においては、内壁に水滴が付着したままとなることがあり、衛生上好ましくない。手段1等に示した技術的思想によれば、外気を導入することで、室内全体での空気の移動を促すことができる。これにより、内壁に付着した水滴等を好適に蒸発させることができる。
【0029】
手段9.屋外に設けられ、前記外壁部に沿って流れる屋外風の風速を検出する風速検出手段(風速センサ81)と、
前記窓開閉パネルを前記閉位置及び前記開位置の両位置を含む範囲で動作させるパネル駆動手段(窓パネル用駆動部91,92)と、
前記風速検出手段によって検出された風速に基づいて前記パネル駆動手段を制御して前記窓開閉パネルを開閉させる制御手段(制御装置70)と
を有することを特徴とする手段1乃至手段8の何れか1つに記載の建物の換気装置。
【0030】
手段9によれば、外壁部に沿った屋外風の風速に基づいて(例えば屋外風の風速が予め設定された値よりも大きい場合に)窓開閉パネルが開閉される。これにより、換気装置の利便性の向上が期待できる。
【0031】
手段10.前記外壁部によって屋内外が区画されている部屋(浴室21)に設けられ、室内の湿度を検出する湿度検出手段(湿度センサ83)を備え、
前記制御手段は、前記湿度検出手段によって検出された湿度に基づいて前記窓開閉パネルを開閉させることを特徴とする手段9に記載の建物の換気装置。
【0032】
手段10によれば、室内の湿度に基づいて(例えば湿度が予め設定された値よりも大きい場合に)窓開閉パネルが開閉される。これにより、換気装置の利便性の向上が期待できる。
【0033】
なお、以下の技術的思想を上記各手段に適宜適用してもよい。
【0034】
前記外壁部によって内外が区画されている部屋(浴室21)に設けられ、室内に人がいることを検出する人検出手段(人感センサ82)と、前記人検出手段によって人が検出された場合には、前記制御手段による駆動制御を規制する規制手段とを採用すれば、人が部屋を使用している場合には、換気を規制することができる。これにより、換気装置が滞動作して部屋の使用者に不快感を与えることを回避できる。
【0035】
また、前記外壁部によって屋内外が区画されている部屋には、開閉可能に設けられた扉部(ドア39)と当該扉部を動作させる扉駆動手段とが設けられており、前記制御手段は、前記パネル駆動手段を制御して換気を実行する場合に、前記扉駆動手段を制御して前記扉部を閉じるように設定されている構成を採用すれば、一方の窓開口から流入した空気が他方の窓開口から流出するという空気の流れを担保し、部屋内に上手く換気されない部分が生じることを好適に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)建物の構造を示す横断面図、(b)建物の構造を示す縦断面図。
【図2】換気の様子を示す概略図。
【図3】電気的構成を示すブロック図。
【図4】換気制御処理を示すフローチャート。
【図5】(a)換気にかかる構成の変形例を示す概略図、(b)換気の様子を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物の浴室に設けられた換気装置に具体化されている。なお、図1(a)は建物10の浴室21を示す横断面図であり、図1(b)は浴室21を示す縦断面図(図1のA−A線断面図)である。
【0038】
図1(a)に示すように、建物10は、隣接する建物11に面する第1外壁部31と、その第1外壁部31に対して建物11とは反対側から対向する第2外壁部32と、それら第1外壁部31及び第2外壁部32に跨るようにして設けられた第3外壁部33とを有し、それら各外壁部31〜33によって屋内外が仕切られてなる。第1外壁部31と第2外壁部32との間には、浴室21と脱衣室22とを仕切る仕切壁部34が設けられており、これら各壁部31〜34によって浴室空間BSが区画形成されている。
【0039】
第1外壁部31と第2外壁部32との距離寸法L1は、第3外壁部33と仕切壁部34との距離寸法L2よりも大きく設定されており、浴室21が全体として横長状をなしている。浴室21においては、第1外壁部31に添うようにしてバスタブが配設され、このバスタブよりも第2外壁部32側となる部分が洗い場となっている。
【0040】
仕切壁部34において洗い場に面している部分には浴室21と脱衣室22とを繋ぐ出入口38(ドア39)が設けられている。出入口38には、ドア39の開閉位置を検知するドアセンサやドア39を駆動するためのドア用駆動部が設けられている(図示略)。ドア用駆動部については後述する自動換気用の制御装置に対して電気的に接続されており、その制御装置から出力される駆動信号に基づいてドア39が開閉される構成となっている。これにより、ドア39は、手動での開閉だけではなく電気的な制御による開閉が可能となっている。また、浴室21の天井部36には換気扇(図示略)が取り付けられているが、この換気扇については省略することも可能である。
【0041】
第1外壁部31においてバスタブの上方となる部分(詳しくは床部35及び天井部36のうち後者寄りとなる部分)には(図1(b)参照)、屋内外に貫通する略矩形状の窓開口41,42が形成されている。窓開口41,42は第1外壁部31の幅方向に離して設けられており、それら窓開口41,42に1対1で対応させて窓サッシが設けられている。窓サッシは、第1外壁部31に対する取付対象としてのサッシ枠(図示略)と、略矩形状の窓パネル51,52(詳しくはガラスパネル)とを有してなる。
【0042】
窓パネル51,52は、片開き式の窓パネルであり、窓開口41,42を塞ぐ閉位置と窓開口41,42を開放する開位置との両位置を含む所定の範囲で回動可能となるようにして窓サッシに取り付けられている。より具体的には、窓パネル51,52は、お互いに近い側の端部が回動基端部、それとは反対側の端部が回動先端部となるようにして取り付けられており、屋外側へ90度(第1外壁部31に対して直交する状態)〜屋内側へ90度(第1外壁部31に対して直交する状態)となる範囲での回動が許容されている。
【0043】
なお、第1外壁部31には、各窓パネル51,52を個別に駆動させる窓パネル用駆動部が設けられており、これら各駆動部が後述する自動換気用の制御装置に対して電気的に接続されている。そして、制御装置から出力された駆動信号に基づいて窓パネル51,52が開閉される。これにより、窓パネル51,52については手動での開閉だけでなく電気的な制御による開閉が可能となっている。
【0044】
第1外壁部31の厚さ寸法については、窓パネル51,52の厚さ寸法よりも大きく設定されているため、それら窓パネル51,52については閉位置に配置されている場合には窓開口41,42内に収容された状態となっている。より詳しくは、各窓パネル51,52は、閉位置に配置されている状態では、窓開口41,42における最外位置にしている。窓開口41,42の開放に際して、窓パネル51,52が屋外側へ回動された場合には、それら窓パネル51,52のほぼ全体が窓開口41,42から突出することとなる。
【0045】
また、窓パネル51,52の横幅寸法は、第1外壁部31の厚さ方向における窓開口41,42の長さ寸法よりも大きく設定されている。このため、窓開口41,42の開放に際して、窓パネル51,52が屋内側へ回動された場合には、窓パネル51,52の回動先端部を含む大部分が窓開口41,42から突出することとなる。
【0046】
図1(a)に示すように、隣の建物11と本建物10とによって挟まれた空間においては、第1外壁部31と交差する方向ではなく、第1外壁部31に沿う方向に風が流れやすい。本実施の形態においては、第1外壁部31に沿って(詳しくは第1外壁部31の幅方向に)風が吹いている場合に当該風を用いて浴室21の換気を行うことで換気効率の向上を図っていることを特徴の1つとしている。
【0047】
ここで、図1及び図2を参照して、窓開口41,42及び窓パネル51,52を利用した浴室21における換気の様子について説明する。図2は換気の様子を示す概略図であり、屋外での風の流れ及び屋内での空気の動きを大小の矢印によって表示している。以下の説明においては屋外風の風向きが仕切壁部34側から第3外壁部33側へ向いている場合について例示し、風上側の窓開口41及び窓パネル51を「風上側窓開口41」及び「風上側窓パネル51」、風下側の窓開口42及び窓パネル52を「風下側窓開口42」及び「風下側窓パネル52」と称する。
【0048】
浴室21の換気については、第1外壁部31に沿って流れる風の速度(風速)によって、効果的な換気態様が異なるため、以下の説明では先ず風速が比較的低い場合について説明し、その後風速が比較的高い場合について説明する。
【0049】
図2(a)に示すように、屋外での風向きが風上側窓開口41側→風下側窓開口42側となっている場合には、ドア39を閉じた状態とするとともに、両窓パネル51,52を屋外へ回動させて両窓開口41,42を開放させる。風上に位置する風上側窓開口41においては、窓パネル51が開放されることで、風上側窓開口41を通じた外気の流入が許容される。具体的には、第1外壁部31に沿って流れる風の一部は、第1外壁部31(風上側窓開口41)から突出する風上側窓パネル51により誘導されて風上側窓開口41側へとその向きを変え、風上側窓開口41を通じて浴室21(浴室空間BS)へと流入する。
【0050】
このように風上側窓パネル51を屋外に突出させて外気導入の足掛かりとして活用した場合には、風上側窓パネル51の外面付近(より詳しくは回動先端部の直下流となる領域)に負圧領域が生じる。このため、風上側窓パネル51(風上側窓開口41)よりも外側を通過した風の一部は第1外壁部31側へ引き寄せられることとなる。ここで、風下側窓開口42の開放に際して風下側窓パネル52を屋外側へ回動させておく(突出させておく)ことで、上述の如く第1外壁部31側に引き寄せられた風が風下側窓パネル52に衝突し、当該風の風上側窓開口41への流入が回避される。風上側窓開口41を通じて浴室内に流入した外気は、仕切壁部34に沿うようにして第2外壁部32側へ移動する。
【0051】
仕切壁部34に沿って第2外壁部32側へ移動する外気においては、浴室21へ流入した際の勢いが第2外壁部32に近づくにつれて弱まることとなる。しかしながら、第2外壁部32に到達して第3外壁部33側に向うことで、風下側窓開口42付近に発生する負圧により風下側窓開口42側へ引き寄せられることとなり、その勢いが減衰して淀みが生じることが回避される。
【0052】
このようにして浴室21内を移動した空気は、風下側窓開口42を通じて屋外に排出される。特に、風下側窓パネル52によって風下側窓開口42への外気の流入を抑制することで、同風下側窓開口42を通じた浴室21内空気の排出が担保される。つまり、風上側窓開口41が取込口、風下側窓開口42が排出口として機能し、外気が排出口側から流入して取込口側へ流れることを抑制している。これにより、換気機能が好適に発揮されることとなる。
【0053】
次に、図2(b)を参照して風速が比較的大きい場合の換気態様について説明する。なお、本実施の形態において風速が比較的小さい場合とは、屋外側において上述の如く風上側窓パネル51を迂回した風が風下側窓開口42又は第1外壁部31において風下側窓開口42よりも風上側となる部位へ引き寄せられる場合を示し、風速が比較的大きい場合とは、屋外側において風上側窓パネル51を迂回した風が第1外壁部31において風下側窓開口42よりも風下側となる部位へ引き寄せられる場合を示している。
【0054】
風速が比較的大きい場合には、風上側窓パネル51を迂回した風が風下側窓開口42に飛び込むことがないため、風下側窓パネル52を屋外側へ突出させて、当該風の流入を規制する必要はない。そこで、風下側窓パネル52を屋内側へ回動させることで、風下側窓開口42付近での風の抵抗を減らし、屋外側での風速(第1外壁部31に沿った風の流速)の低下を抑える。この結果、風下側窓開口42付近に生じる負圧が大きくなり、同風下側窓開口42における空気の吸い出しが強まる。故に、換気効率の向上が期待できる。
【0055】
また、屋内側に風下側窓開口42を突出させておくことで、風下側窓開口42付近で発生する負圧の影響が第3外壁部33に沿って存在する空気に対しておよびやすくなり、第3外壁部33に沿った空気の移動が促進される。つまり、少なくとも風下側窓開口42に近い位置では、風下側窓開口42に向う空気が第3外壁部33に沿って移動するように整流される。
【0056】
本実施の形態においては、浴室21の内壁に沿った空気の移動(風の流れ)をより確実に且つ効果的に発生させるための工夫が施されている。以下、図1及び図2を参照して、その工夫にかかる構成について説明する。
【0057】
図1(b)に示す浴室21において天井部36に隣接する位置には、レール部材55が配されている。レール部材55は、第1外壁部31において両窓開口41,42の中間となる部分と第2外壁部32とに跨っており、このレール部材55に対してカーテン56を取付可能となっている。
【0058】
レール部材55における第1外壁部31側の端部にカーテン56の一端を固定した状態で、カーテン56を第2外壁部32側へ広げることで、換気対応位置へのカーテン56の配置が完了する(図1(b)参照)。
【0059】
カーテン56の横幅寸法Wは、両外壁部31,32の距離寸法L1よりも小さく設定されている(図1(a)参照)。このため、換気対応位置にカーテン56が配置された状態では、カーテン56と第2外壁部32との間に離間部分が形成される。
【0060】
より詳しくは、浴室空間BSがカーテン56によって風上側窓開口41側の領域と風下側窓開口42側の領域とに大別され、各壁部32〜34及びカーテン56によって上記離間部分を経由した空気(風)の通り道(通過経路)が形成される。このようにして、空気の通り道を形成することで、浴室21内に誘導された外気が各壁部31〜34に沿って移動するように整流される。
【0061】
浴室21の換気を行う場合には、外気の流入速度が小さく浴室21内の空気の排出速度が大きい場合等に、風上側窓開口41から流入した外気が直ちに風下側窓開口42に向かい図2の1点鎖線に示すショートカットが発生する可能性がある。このような事象が発生した場合には、浴室21全体、特に各壁部33,34において第2外壁部32側となる部分や第2外壁部32付近での換気が上手く行われないと懸念される。
【0062】
この点、カーテン56を換気対応位置へ配置すれば、外気の通り道が上記離間部分を通過するように規制されるため、外気が第2外壁部32へ届かなくなることを回避できる。故に、上記不都合の発生を抑え、浴室21全体(特に内壁沿いとなる部分)での換気効率を好適に向上することができる。
【0063】
なお、窓開口41,42を開放させて上述した自然換気を行う場合には、ドア39を閉じることで浴室21と脱衣室22と間での空気の流れを遮断しておくことが好ましい。これにより、両窓開口41,42の関係性が低下して一方の窓開口から他方の窓開口へ上手く空気が移動しなくなることを抑制できる。
【0064】
以上詳述したように、本実施の形態においては、窓開口41,42、窓パネル51,52及びカーテン56等を用いて換気構造を構築した。かかる換気構造によれば、以下の効果が期待できる。
【0065】
第1外壁部31に沿うようにして風が吹いている場合に、例えば両窓パネル51,52を開位置へと移動させることで、浴室21内の換気を行うことができる。具体的には、風上側の窓パネルを屋外側へ回動させて風上側の窓開口を開放するとともに、風下側の窓パネルを屋外側又は屋内側へ回動させて風下側の窓開口を開放する。このようにして両窓開口を開放すれば、風上側となる窓パネルによって浴室21内に外気が導かれ、風下側の窓開口付近が負圧となることで浴室21内の空気が室外へ排出されることとなり、浴室21内に一方の窓開口(入口又は流入口)から他方の窓開口(出口又は排出口)へ向う空気の流れを発生させることができる。
【0066】
特に、浴室21内にカーテン56を配して空気の通り道を規制することで、浴室21内の空気が壁部31〜34に沿って移動するように整流されることとなる。これにより、壁部32〜34沿いに滞留している空気の移動を促進し、例えば本手段に示す窓構造が採用された部屋全体(壁際を含む)の換気を効率よく行うことができる。特に、壁際での換気を積極的に行うことで、内壁に付着した水滴等の除去効率を向上することができる。
【0067】
このようにして浴室21の乾燥を促進することで、乾燥に要する時間、すなわち窓開口41,42を開放したままにする時間を短縮できる。これにより、防犯性の低下を抑えることもできる。
【0068】
また、風下側の窓パネルを屋内側に回動させて風下側の窓開口を開放することで、同窓パネルが最寄りの壁部(第3外壁部33又は仕切壁部34)に対峙した状態となる。これにより、少なくとも室内空気が風下側となる壁に沿うようにして整流され、壁際での換気効率を向上することができる。
【0069】
また、本実施の形態に示す換気構造によれば、風上側窓開口41側から風下側窓開口42側に風が吹いている場合、風下側窓開口42側から風上側窓開口41側に風が吹いている場合の両者にて、換気機能を好適に発揮させることができる。
【0070】
各窓パネル51,52を開きさえすれば換気を実行できるため、換気効率の向上に起因した準備作業の煩雑化を抑えることができる。
【0071】
また、本実施の形態においては、上述した換気構造に換気を制御するための電気的構成を組み合わせることで換気装置(換気システム)60が構築されており、利便性の向上及び換気効率の更なる向上が図られている。以下、図3のブロック図を参照して換気装置60における電気的構成について説明する。
【0072】
換気装置60は、自動換気に関する制御を実行する制御装置70を有している。制御装置70には、各種演算を行うMPUや入出力ポートが設けられている。
【0073】
制御装置70の入力側には、第1外壁部31に沿って流れる屋外風の風速及びその方向を検出する風速センサ81と、浴室21に人がいるか否かを検出する人感センサ82と、浴室21における湿度を検出する湿度センサ83と、ドア39の位置を検知するドアセンサ84と、自動換気のオン/オフを切り替える自動換気スイッチ85とが接続されている。制御装置70においては、これら各種構成81〜85から入力された情報に基づいて自動換気に関する各種制御が実行される。
【0074】
なお、風速センサ81については、第1外壁部31の外壁面において上記窓開口41,42に隣接する位置に設けられており、人感センサ82及び湿度センサ83は浴室21内に設けられており、ドアセンサ84及び自動換気スイッチ85については脱衣室22に設けられているがこれら各種構成81〜85の詳細な配置については任意である。
【0075】
制御装置70の出力側には、風上側窓パネル51を駆動させる第1窓パネル用駆動部91と、風下側窓パネル52を駆動させる第2窓パネル用駆動部92と、ドア39を駆動させるドア用駆動部93と、換気扇94とが接続されている。
【0076】
制御装置70からそれら各種構成91〜94に対して駆動信号が出力されることで、窓パネル51,52、ドア39、換気扇94が動作することとなる。
【0077】
次に、図4のフローチャートを参照して、制御装置70にて定期的(例えば1sec毎)に実行される換気制御処理について説明する。
【0078】
換気制御処理においては先ず、ステップS101にて自動換気スイッチ85がオンになっているか否かを判定する。ステップS101にて否定判定をした場合には、そのまま換気制御処理を終了する。
【0079】
一方、ステップS101にて肯定判定をした場合には、ステップS102に進み、自動換気を実行している最中であるか否かを判定する。ステップS102にて否定判定をした場合には、ステップS103に進む。
【0080】
ステップS103では、浴室が使用中であるか否かを判定する。具体的には、人感センサ82からの検出信号(検出情報)に基づいて、浴室21内に人がいるか否かを判定する。ステップS103にて肯定判定をした場合にはそのまま本換気制御処理を終了する。一方、ステップS103にて否定判定をした場合、すなわち浴室21が使用中でないと判定した場合(浴室21に人がいないと判定した場合)には、ステップS104に進む。
【0081】
ステップS104では、湿度センサ83からの検出信号(検出情報)に基づいて浴室21の湿度が予め設定された値(規定値)以上であるか否かを判定する。ステップS104にて否定判定をした場合、すなわち浴室21が湿っていないと判定した場合には、そのまま本換気制御処理を終了する。一方、ステップS104にて肯定判定をした場合すなわち浴室21が湿っていると判定した場合には、ステップS105以下の換気実行処理を行う。すなわち、本実施の形態においては、自動換気スイッチがオンであること、浴室が使用中でないこと、湿度が規定値以上であることの全ての条件を満たした場合に自動換気が実行される。自動換気実行処理では、第1外壁部31に沿って流れている風の風速に応じて異なる換気態様が選択されることとなる。
【0082】
換気実行用処理においては先ず、ステップS105にて第1外壁部31に沿って流れている風の速度が予め設定された値(規定値)以上であるか否かを判定する。ステップS105にて肯定判定をした場合、すなわち上記窓開口41,42を利用した換気を行うのに十分な風速であると判定した場合には、ステップS106に進む。
【0083】
ステップS106では、窓開口41,42を利用した換気を行うための第1自動換気開始処理を実行する。第1自動換気開始処理においては、先ずドアセンサ84からの検出情報に基づいてドア39が開放されているか否かを判定し、仮にドア39が開放されている場合にはドア用駆動部93に対して駆動信号を出力してドア39を閉鎖する。
【0084】
また、制御装置70は、風向き及び風速毎に効率よく換気を行うことができる各窓パネル51,52の回動位置情報を予め記憶しており、現状の風向き及び風速に対応する回動位置情報を把握した後、その回動位置情報に合わせて各窓パネル用駆動部91,92に駆動信号を出力する。具体的には、例えば図2に示したように、屋外風の風速が予め設定された値よりも小さい場合には風下側となる窓パネルの回動位置が屋外側となるように設定され、同値よりも大きい場合には風下側となる窓パネルの回動位置が屋内側となるように設定されている。これにより、屋外風の風速に応じてより換気効率の高い側の換気態様が選択される。
【0085】
なお、屋外風の風速に応じて風上側の窓パネルの回動位置(回動角度)を段階的に設定してもよい。例えば、風速が大きくなるにつれて回動角度を小さくする構成とすることも可能である。
【0086】
その後、第1自動換気の実行時間を定めるためのタイマ設定処理を実行して、本第1自動換気開始処理を終了する。なお、タイマ設定処理にてセットされた値は換気制御処理が実行される度に減算され、当該値が0になった場合に自動換気を終了する構成となっている。
【0087】
ステップS105にて出力された駆動信号に基づいて各窓パネル用駆動部91,92が動作することにより、各窓パネル51,52が最適位置に配置され、窓開口41,42を利用した自然換気が開始される。
【0088】
一方、ステップS105にて否定判定をした場合、すなわち窓開口41,42を利用した自然換気に十分な風速が担保されていないと判断した場合には、ステップS107に進み、換気扇94を利用した強制換気を行うための第2自動換気開始処理を開始する。第2自動換気開始処理においては、換気扇94に対して駆動信号の出力を開始して、そのまま本換気制御処理を終了する。なお、第2自動換気開始処理においても、上記タイマ設定処理と同様の処理を実行する。
【0089】
ステップS102に戻り、ステップS102にて肯定判定をした場合、すなわち自動換気を実行している最中であると判定した場合には、ステップS108に進む。ステップS108では、自動換気を終了するタイミングであるか否かを判定する。具体的には、タイマ設定処理にて設定されたタイマの値を参照して、同タイマの値が0になっているか否かを判定する。
【0090】
ステップS108にて否定判定をした場合、すなわちまだ自動換気処理を終了するタイミングでないと判定した場合には、ステップS109に進み、現在実行中の換気処理が第1自動換気処理であるか否かを判定する。ステップS109にて否定判定をした場合、すなわち換気扇94を用いて強制換気を行っていると判定した場合には、そのまま本換気制御処理を終了する。
【0091】
一方、ステップS109にて肯定判定をした場合には、ステップS110に進み、通風量調整処理を実行する。具体的には、風速センサ81から入力された風向き及び風速に関する情報に基づいて、現在の各窓パネル51,52の位置が最適であるか否かを判定する。仮に、風向きや風速が換気を開始したタイミングから変化して最適な状態ではなくなっていると判定した場合には、再び最適位置を定めた上記回動位置情報を参照して、各窓パネル51,52が最適な位置に配置されるように窓パネル用駆動部91,92に対して駆動信号を出力する。かかる処理を行うことで、窓パネル51,52が最も換気効率がよくなる位置に維持される。ステップS110の処理を実行した後は、そのまま本換気制御処理を終了する。
【0092】
ステップS108の説明に戻り、同ステップS108にて肯定判定をした場合、すなわち、自動換気処理を終了するタイミングであると判定した場合には、ステップS111にて自動換気停止処理を実行した後、本換気制御処理を終了する。
【0093】
自動換気停止処理においては、先ず実行されている換気の態様を把握し、それに応じて換気実行前の状態への復帰処理を行う。具体的には、第1自動換気が行われている場合には各窓パネル用駆動部91,92に各窓パネル51,52を閉位置へ復帰させるようにして駆動信号出力し、第2自動換気が行われている場合には換気扇94への駆動信号の出力を停止する。なお、各窓パネル51,52を閉位置へ移動させる際には、風上側の窓パネルを先に閉位置へ復帰させて、その後に風下側の窓パネルを閉位置に復帰させることが好ましい。
【0094】
以上、詳述した実施形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0095】
風速に応じて、第1自動換気(自然換気)と第2自動換気(強制換気)とを使い分けることにより、換気効率を向上させつつ、それに起因した電力の消費量を抑えることができる。
【0096】
第1自動換気を行っている場合には、風速に応じて各窓パネル51,52の位置を調整することで換気効率の向上を図り、浴室21の換気に要する時間を短縮することができる。
【0097】
浴室21を使用している場合には、自動換気を行わない構成とすることにより、浴室21の使用者に対して煩わしい印象を与えることを回避できる。
【0098】
自動換気を行う場合には、ドア39を強制的に閉じた状態とすることにより、浴室21と脱衣室22との間での空気の移動を遮ることで脱衣室22側への空気の漏れを抑制し、浴室21における整流機能を好適に発揮させることが可能となる。これにより、換気効率の向上が期待できる。
【0099】
浴室21のようにプライバシーの確保が優先させる環境においては、窓開口41,42をなるべく高い位置に配することで屋外から浴室21内を見えないようにすることができる。しかしながら、このような高い位置へ窓開口41,42を配置すると、窓開口41,42を手動で開放することが困難になる。この点、自動換気が実行される場合には、窓開口41,42を手動で開け閉めする必要がない。これにより、プライバシーの保護を図りつつ、それに起因した利便性の低下を抑えることができる。
【0100】
なお、上述した実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。因みに、以下の別形態の構成を、上記実施の形態における構成に対して、個別に適用してもよく、相互に組み合わせて適用してもよい。
【0101】
(a)上記実施の形態では、「整流手段」として窓パネル51,52及びカーテン56を利用する構成としたが、「整流手段」を複数種採用する必要は必ずしもなく、一方を省略することも可能である。例えば、窓パネル51,52の整流機能を省略する場合には、窓パネル51,52を屋内外に回動可能な構成とするのではなく、屋内側へ回動しない構成とすることも可能である。
【0102】
(b)窓開口41,42は、少なくとも水平方向に離間していればよく、例えば斜めに並べて配することも可能である。
【0103】
(c)上記実施の形態では、第1外壁部31に風上側窓開口41と風下側窓開口42とをそれぞれ形成したが、これを変更し、第1外壁部31に内外に貫通する貫通口を形成し、同貫通口をサッシ枠や固定式の窓パネル等で仕切ることで複数の窓開口を形成することも可能である。
【0104】
また、各窓開口41,42については必ずしも1の窓パネルによって塞ぐ必要はなく、複数の窓パネルによって塞ぐ構成としてもよい。例えば、各窓開口41,42を第1外壁部31の面広がり方向に並べて設けられた複数の窓パネルによってそれぞれ塞ぐ構成とすることも可能である。
【0105】
(d)上記実施の形態では、「整流手段」として窓パネル51,52を屋内側へ回動可能とする構成やカーテン56を採用したが、これらに代えて、以下の構成を採用することも可能である。すなわち、図5(a1)の概略図に示すように、第1外側窓パネル51A及び第2外側窓パネル52Aに1対1で対応させて第1内側窓パネル101及び第2内側窓パネル102を設ける。各内側窓パネル101,102については、外側窓パネル51A,52Aと同様にガラス板を主体として構成されており、それら外側窓パネル51A,52Aに対して隙間を隔てて浴室21の内側から対向している。内側窓パネル101,102の外形についても外側窓パネル51A,52Aと同様に窓開口41,42に合わせて形成されており、それら内側窓パネル101,102によって窓開口41,42が塞がれている。
【0106】
外側窓パネル51A,52Aについては、上記実施の形態とは異なり、窓開口41,42を開放する際に屋外側への回動が許容される一方、屋内側への回動が許容されない構成となっている。一方、内側窓パネル101,102については、対向している外側窓パネル51A,52Aの回動基端側と同じ側の端部が回動基端部となっており、同回動基端部を中心として外側窓パネル51A,52Aとは逆側(屋内側)に回動可能となっている。なお、内側窓パネル101,102の回動範囲は最大で90度となる程度に規制されている。
【0107】
窓開口41,42を開放する場合には、図5(a2)に示すように、内側窓パネル101,102を屋内側へ回動させるとともに外側窓パネル51A,52Aを屋外側へ回動させる。これにより、窓開口41,42を通じた外気の出入が許容されることとなる。内側窓パネル101,102については、その先端部が窓開口41,42から突出しており、当該内側窓パネル101,102によって、空気が壁部32〜34に沿って移動するように整流されることとなる。
【0108】
本変形例に示す構成を採用する場合には、合わせて以下の構成を採用するとよい。すなわち、内側窓パネル101,102が室内側に開放される場合に、それら内側窓パネル101,102の動作に基づいて(連動して)、外側窓パネル51A,52Aが回動するように窓パネル間の動きを連動させるための連動機構を採用するとよい。具体的には、外側窓パネル51A,52Aと内側窓パネル101,102とを歯車等からなるリンク機構によって連結し、内側窓パネル101,102の屋内側への回動に追従して外側窓パネル51A,52Aが屋外側へ、内側窓パネル101,102と同じ角度開くように構成する。これにより、換気を行う際には、ユーザが内側窓パネル101,102を屋内側へ回動させることで外側窓パネル51A,52Aが屋外側へ回動することとなる。故に、内外の窓パネルの併用に起因した、浴室21の換気時の作業の低下を抑えることができる。なお、連度機構については、内側窓パネル101,102の屋内側への回動角度と外側窓パネル51A,52Aの屋外側への回動角度とが同じとなるように構成する必要は必ずしもなく、内側窓パネル101,102の回動角度が外側窓パネル51A,52Aの回動角度よりも大きくなるように、又は内側窓パネル101,102の回動角度が外側窓パネル51A,52Aの回動角度よりも小さくなるように構成することも可能である。
【0109】
また、内外の窓パネルを併用した上記変形例においては、外側窓パネル51A,52Aを屋外側へのみ回動可能としたが、上記実施の形態と同様に室内側への回動を許容する構成としてもよい。かかる構成とする場合には、外側窓パネル51A,52Aの回動中心部(回動中心軸)を内側窓パネル101,102の回動中心部(回動中心軸)よりも、最寄りの壁部33,34側へ偏移させておくとよい。これにより、内側窓パネル101,102が外側窓パネル51A,52Aを室内側へ回動させる際の妨げとなることを抑制することができる。かかる構成を採用することにより、風速に応じて外側窓パネル51A,52Aの回動方向を屋内外で選択可能となり、換気効率の向上に貢献することができる。
【0110】
なお、本変形例(d)に示すように内外の窓パネルを併用する場合には、内側の窓パネルと外側の窓パネルとの間にそれら両窓パネルが閉じた状態で密閉空間が形成される構成とすることが好ましい。かかる構成とすることで、浴室21の断熱機能や防音機能を好適に向上することができる。
【0111】
(e)上記実施の形態においては、両窓開口41,42の離間距離をそれら窓開口41,42の横幅よりも大きく設定したが、これに限定されるものではない。両窓開口41,42の離間距離を窓開口41,42の横幅よりも小さくすることも可能である。
【0112】
このような変更を行う場合には、図5の(b1)に示すように、各窓パネル51B,52Bの屋内側への回動角度を約90度に設定するとよい。この場合、図5(b2)に示すように、風上側窓開口41から流入した外気は、仕切壁部34に沿って移動するように風下側窓パネル52Bによって整流され、風下側窓開口42から流出する空気は第3外壁部33に沿って移動するように整流されることとなる。つまり、2つの窓パネルのうち一方を外開き他方を内開きとすることで、内開きとなる他方の窓パネルが整流手段として機能することとなる。
【0113】
(f)各窓パネル51,52を開放した場合に、同窓パネル51,52を所望とする位置で固定可能なロック装置を採用すれば、風圧によって窓パネル51,52の位置が変わるといった不都合を生じにくくすることができる。
【0114】
(g)上記実施の形態では、浴室21の長手方向における両側に位置する外壁部31,32のうち第1外壁部31に窓開口41,42を設けたが、これに限定されるものではなく、第2外壁部32に窓開口を設けてもよい。更には、浴室21の短手方向における両側に位置する壁部33,34のうち外壁を構成する第3外壁部に窓開口を設けてもよい。但し、浴室21の内壁に沿った空気の移動を促進するには、上記実施の形態に示したように浴室21の長手方向における一方の外壁部に窓開口を配設することが好ましい。
【0115】
(h)上記実施の形態においては、浴室21の換気を行う構成としたが、浴室21とともに脱衣室22の換気をまとめて行う構成とすることも可能である。このような換気を行う場合には、浴室21のドア39を開放して浴室21と脱衣室22とを連通するとともに、脱衣室22のドアを閉めて他の部屋等からの空気の出入を阻止するとよい。
【0116】
(i)上記実施の形態では、浴室21に換気構造(換気装置60)を適用したが、換気構造の適用対象は浴室に限定されるものではなく、例えばリビング等の居室に適用することも可能である。
【0117】
(j)上記実施の形態では、換気構造、各種センサ81〜84、自動換気スイッチ85、各種駆動部91〜93及び制御装置70を用いて換気装置60を構築したが、少なくとも上記換気構造に相当する構成があればよい。すなわち手動によって換気が行える構成であれば足り、電気的構成を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0118】
10…建物、21…浴室、31…外壁部としての第1外壁部、32…第2外壁部、33…第3外壁部、34…仕切壁部、38…出入口、39…ドア、41,42…窓開口、51,52…窓パネル、56…整流手段又はカーテン部材を構成するカーテン、60…換気装置、70…制御装置、81…風速センサ、82…人感センサ、83…湿度センサ、84…ドアセンサ、91,92…窓パネル用駆動部、93…ドア用駆動部、101,102…整流手段を構成する内側窓パネル、BS…浴室空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の一面となる外壁部に設けられ、少なくとも同外壁部の幅方向に相互に離間して配された2つの窓開口と、
それら窓開口に各々設けられ、同窓開口を開閉する窓開閉パネルと
を備え、
前記窓開閉パネルとして、前記窓開口を塞ぐ閉位置及び同窓開口から屋外側へ突出し同窓開口を開放する開位置の両位置を含む範囲にて回動可能な第1窓パネルを有し、
前記両第1窓パネルは、前記幅方向において互いに近い側となる端部が回動基端部、同幅方向において互いに遠い側となる端部が回動先端部となるように構成されており、
前記外壁部は、当該外壁部を同外壁部の幅方向両側から挟んで対峙する第1壁部及びそれら第1壁部を隔てて同外壁部と対峙する第2壁部の各壁部とともに室内空間を区画形成しており、
前記両窓開口のうち風上側となる一方から流入し風下側となる他方へ向う風が前記第1壁部に沿って流れるように整流する整流手段を備えていることを特徴とする建物の換気装置。
【請求項2】
前記整流手段は、前記室内空間において少なくとも前記窓開口と同じ高さ位置であって、且つそれら窓開口において互いに近い側となる端部又はそれら端部の間となる位置に設けられる整流面を有し、風上側から流入した風の室内空間における風向きを前記整流面により調整するものであることを特徴とする請求項1に記載の建物の換気装置。
【請求項3】
前記窓開閉パネルは、前記第1窓パネルに屋内側から対峙するようにして配置された第2窓パネルを有してなり、
前記第2窓パネルは、前記第1窓パネルの回動基端部と同じ側の端部を基端として屋内側へ回動可能となっており、
さらに、前記第2窓パネルは、前記整流手段を構成し、当該第2窓パネルが屋内側に回動された状態で前記室内空間内の風を整流することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物の換気装置。
【請求項4】
前記第2窓パネルの室内側への回動に連動して、前記第1窓パネルを屋外側へ回動させる連動機構を備えていることを特徴とする請求項3に記載の建物の換気装置。
【請求項5】
前記第1窓パネルは、前記窓開口よりも屋外側の開位置と屋内側の開位置との間で回動可能であって、且つ前記第2窓パネルと同じ回動角度で屋内側へ回動可能となっていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の建物の換気装置。
【請求項6】
前記第1窓パネルは、前記窓開口よりも屋外側の開位置と屋内側の開位置との間で回動可能となっており、
前記両第1窓パネルのうち風上側となる一方が前記屋外側の開位置に回動され且つ風下側となる他方が前記屋内側の開位置に回動された状態で、当該他方の第1窓パネルが整流手段として機能することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物の換気装置。
【請求項7】
前記整流手段は、前記窓開口と同じ高さ位置に設けられ前記両第1壁部に対向するカーテン部材を有し、
前記カーテン部材は、前記外壁部側の端部が前記2つの窓開口の間においてそれら両窓開口の端部を含む中間壁部に対峙し、前記第2壁部側の端部が同第2壁部に対して離れた状態となるようにして配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の建物の換気装置。
【請求項8】
前記外壁部は、浴室と屋外とを仕切るものであり、
前記窓開口は、前記浴室と屋外とを連通していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の建物の換気装置。
【請求項9】
屋外に設けられ、前記外壁部に沿って流れる屋外風の風速を検出する風速検出手段と、
前記窓開閉パネルを前記閉位置及び前記開位置の両位置を含む範囲で動作させるパネル駆動手段と、
前記風速検出手段によって検出された風速に基づいて前記パネル駆動手段を制御して前記窓開閉パネルを開閉させる制御手段と
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の建物の換気装置。
【請求項10】
前記外壁部によって屋内外が区画されている部屋に設けられ、室内の湿度を検出する湿度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記湿度検出手段によって検出された湿度に基づいて前記窓開閉パネルを開閉させることを特徴とする請求項9に記載の建物の換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−149832(P2012−149832A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9191(P2011−9191)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】