説明

建物周壁部構造

【課題】中空部を有する建物周壁部構造として、湿気による悪影響を排除し、木材害虫に蝕まれたり菌類によって腐るの防止し、耐久性を飛躍的に高める手段を提供する。
【解決手段】建物周壁6が、木製土台2の屋外面側に下端部内面側を接する外装壁材6aと、木製土台2の屋内面側に下端部内面側を接する内装壁材6bとの間に中空部7を備え、中空部7内の空気を外部へ強制排気する機械的排気手段8が設けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造建物の周壁部構造、特に床下空間を設けない平地式基礎を採用する場合に好適な建物周壁部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造住宅の周壁部構造として、断熱保温性を高めるために、基礎コンクリート上に設けた木製土台の屋外面側に下端部内面側を接する外装壁材と、該木製土台の屋内面側に下端部内面側を接する内装壁材との間に中空部を設けた構造が多用されている。しかるに、このような中空部に湿気が籠もる場合、白蟻を始めとする木材害虫や菌類が入り込んで繁殖し易く、早期に構造用木材が蝕まれたり腐ったりする要因になる。
【0003】
一方、木造住宅の基礎構造として、断面逆T字形のコンクリートからなる布基礎や、建物敷地全体にコンクリートを打設して周辺部等の土台受け部分を布基礎状に立ち上げたべた基礎、更に布基礎とその内側のべた基礎との組み合わせ等が汎用されているが、近年において床下空間を形成しない平地式基礎が登場している。
【0004】
この平地式基礎は、べた基礎における前記の布基礎状に立ち上がる土台受け部分を設けず、該べた基礎の平面部を床レベル近くに設定し、この平面部上に載置した木製土台をアンカーボルトを介して固定するようにした構造であり、構築に際して型枠配置用の溝堀りが基礎の外周部のみで済むと共に、その内側には割栗石を敷設するだけでよいから、基礎工事が極めて簡略化すると共に、べた基礎同様に全体が一体化して、且つ換気孔周辺に応力集中を生じ易い布基礎状部分がないため、耐震性に優れるという利点がある(特許文献1)。
【0005】
ところが、平地式基礎における基礎上面は、コンクリート消費量が膨大になるために高位に設定できず、布基礎やべた基礎の土台受け部分に比較して地面に近い位置になることから、土台及び周壁下部が地面近くの重い湿気の影響を受け易いという難点がある。
【特許文献1】特開平11−350500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述の事情に鑑みて、中空部を有する建物周壁部構造として、湿気による悪影響を排除し、木材害虫に蝕まれたり菌類によって腐るの防止し、もって耐久性を飛躍的に高める手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供する。
【0008】
〔1〕基礎コンクリート上に基礎パッキンを介して木製土台が配置し、
建物周壁が、前記木製土台の屋外面側に下端部内面側を接する外装壁材と、該木製土台の屋内面側に下端部内面側を接する内装壁材との間に中空部を備え、前記中空部内の空気を外部へ強制排気する機械的排気手段が設けられてなることを特徴とする建物周壁部構造。
【0009】
〔2〕前記木製土台の全長にわたり、当該木製土台の屋外面と前記基礎コンクリートの屋外面との間を覆う非通気性シートが貼着されてなる前項1に記載の建物周壁部構造。
【0010】
〔3〕前記非通気性シートが、シート基材の片面に防虫剤成分を含む粘着層を有してなる前項2に記載の建物周壁部構造。
【0011】
〔4〕前記基礎コンクリートが床下空間を形成しない平地式基礎である前項1〜3のいずれか1項に記載の建物周壁部構造。
【発明の効果】
【0012】
〔1〕の発明に係る建物周壁部構造では、機械的排気手段によって建物周壁の中空部内の空気を外部へ強制排気することにより、該中空部内の湿気も同時に排除できるから、該中空部に臨む構造用木材の含水率を低い範囲に制御でき、もって木材害虫や菌類が入り込んで繁殖するのを防止し、耐久性を飛躍的に高めることができる。
【0013】
〔2〕の発明によれば、木製土台の屋外面と基礎コンクリートの屋外面との間が非通気性シートで覆われて気密封止されるため、外部の湿気が木製土台と基礎コンクリートとの間から屋内へ侵入するのを確実に阻止できる。
【0014】
〔3〕の発明によれば、非通気性シートの粘着層に防虫剤を含むことから、木材害虫の木製土台や屋内への侵入を確実に防止できる。
【0015】
〔4〕の発明によれば、基礎コンクリートが床下空間を形成しない平地式基礎であるため、土台及び周壁下部が地面近くの重い湿気の影響を受け易いが、木製土台の屋外面と基礎コンクリートの屋外面との間が非通気性シートで覆われて気密封止されることと、周壁の中空部の強制排気によって湿気を排除できることから、木材害虫や菌類が入り込んで繁殖するのを防止して優れた耐久性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明に係る建物周壁部構造の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
この建物周壁部構造では、図1の縦断側面図で示すように、床下空間を形成しない平地式基礎の基礎コンクリート1の周辺部上に、角材からなる木製土台2が半硬質ゴム等の弾性材料からなる帯板状の基礎パッキン3を介して水平に載置されており、基礎コンクリート1に垂直に植設されたアンカーボルト4が基礎パッキン3及び木製土台2を貫通し、その木製土台2より上方突出した頂部4aに螺合するナット5の締め付けにより、該木製土台2を基礎コンクリート1に固定している。
【0018】
そして、周壁6は、木製土台2の屋外面側に下端部内面側を接する外装壁材6aと、該木製土台2の屋内面側に下端部内面側を接する内装壁材6bとの間に中空部7を備えると共に、中間高さの位置に機械的排気手段としての電動式の排気ファン8が組み付けられ、矢印で示すように該排気ファン8によって中空部7内の空気を外部へ強制排気できるようになっている。
【0019】
なお、周壁6の外装壁材6aは、内側より構造用合板61、断熱材層62、胴縁63、サイディング64よりなる積層構造をなし、その下縁部に断面Z状に曲折した水切り鋼板9が取り付けられている。
【0020】
また、木製土台3と基礎コンクリート1との間は、基礎パッキン4によって土台全長にわたって閉鎖されているが、その屋外面側に更に、木製土台3の下部から基礎コンクリート1の上部を覆う幅の非通気性シート10を貼着することにより、土台全長にわって気密封止されている。
【0021】
一方、基礎コンクリート1の屋内側上面には床面を構成するフローリング11が設けられ、また屋外側面には断熱ボード12が接合されると共に、該断熱ボード12の前面にはモルタル13が刷毛塗りされている。
【0022】
このような建物周壁部構造では、排気ファン8を稼働した際、周壁6の中空部7内の空気と共に湿気も外部へ排出でき、これに伴う減圧によって該中空部7に臨む木製土台2、構造用合板61、内装壁材6b等の構造用木材に含まれる湿気が吸引されて中空部7に放出される。従って、該排気ファン8を定期的に、あるいは湿度センサー(図示省略)等による湿度の測定値が設定値を越えた際に、自動操作もしくは手動操作で稼働させることにより、これら構造用木材の含水率を例えば10〜20%といった低い範囲に制御することが可能であり、もって白蟻を始めとする種々の木材害虫や菌類が入り込んで繁殖するのを防止し、周壁6の耐久性を飛躍的に高めることができる。
【0023】
また、上記実施形態では基礎コンクリート1が床下空間を形成しない平地式基礎であるため、木製土台2及び周壁6下部が地面近くの重い湿気の影響を受け易いが、木製土台3と基礎コンクリート1との間が基礎パッキン3によって全長にわたって閉塞されていることに加えて、木製土台3から基礎コンクリート1にわたる屋外側面に貼着された非通気性シート10により、土台全長にわたって気密封止されているから、外部の湿気が木製土台2と基礎コンクリート1との間から屋内へ侵入する懸念がないと共に、該湿気が木製土台2に滲み込むのも抑えられる。
【0024】
このような非通気性シート10としては、不織布や織布又はビニルフィルム、塩化ビニール、ポリエチレンフィルム等の合成樹脂フィルム等よりなるシート基材の片面に、ゴムやアスファルト等よりなる非通気性の粘着層を設けたものが好適に使用できるが、特に粘着層に防蟻剤等の防虫剤成分を含有させたものが推奨される。すなわち、粘着層に防虫剤成分を含むことにより、白蟻等の木材害虫の木製土台2や屋内への侵入を確実に防止できる。
【0025】
なお、この発明においては、周壁6の中空部7内の空気を外部へ強制排気する機械的排気手段として、排気ファン8以外の種々の機械装置を使用できる。また、周壁6の外装壁材6a及び内装壁材6bの細部構造等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明に係る建物周壁部構造の一実施形態を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 基礎コンクリート
2 木製土台
3 基礎パッキン
4 アンカーボルト
5 ナット
6 周壁
6a 外装壁材
6b 内装壁材
7 中空部
8 排気ファン(機械的排気手段)
10 非通気性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリート上に基礎パッキンを介して木製土台が配置し、
建物周壁が、前記木製土台の屋外面側に下端部内面側を接する外装壁材と、該木製土台の屋内面側に下端部内面側を接する内装壁材との間に中空部を備え、
前記中空部内の空気を外部へ強制排気する機械的排気手段が設けられてなることを特徴とする建物周壁部構造。
【請求項2】
前記木製土台の全長にわたり、当該木製土台の屋外面と前記基礎コンクリートの屋外面との間を覆う非通気性シートが貼着されてなる請求項1に記載の建物周壁部構造。
【請求項3】
前記非通気性シートが、シート基材の片面に防虫剤成分を含む粘着層を有してなる請求項2に記載の建物周壁部構造。
【請求項4】
前記基礎コンクリートが床下空間を形成しない平地式基礎である請求項1〜3のいずれか1項に記載の建物周壁部構造。

【図1】
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【公開番号】特開2010−84351(P2010−84351A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252320(P2008−252320)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(508110548)株式会社ルネッサンス (2)
【Fターム(参考)】