説明

建物用空調熱源システム

【課題】フィードバック制御およびフィードフォワード制御が有する問題点を解消し、効果的に省エネルギーを図ることができる建物用空調熱源システムを提供する。
【解決手段】熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上を有する建物用空調熱源装置群10と、熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転方策を予め設定しておき、フィードフォワード制御により上記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転を行うフィードフォワード制御手段12と、フィードバック制御により上記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転を行うフィードバック制御手段14と、フィードフォワード制御手段における制御量と、フィードバック制御手段における制御量とを比較し、いずれの制御量で熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の制御を行うかを選択する選択手段16とを具備する建物用空調熱源システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物(ビル、工場、住宅等)の空調(冷房、暖房等)を行う建物用空調熱源システムに関し、さらに詳述すると、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを併用して省エネルギーを図る建物用空調熱源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単数または複数の空調機(外調機、ファンコイルユニット等を含む)を備えた建物用空調システムの制御方法では、各空調機において室内設定温度と実際の室内温度との偏差量に基づいて必要な空調用冷水量または温水量を制御し、各空調機の合計空調用冷水量または温水量から建物全体の空調需要量を決定している。これは、制御目標である室内温度の変化量に対応して空調用冷温水量を制御するフィードバック制御である(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
上記フィードバック制御においては、制御量(空調用冷温水量)を変更してから実際の室内温度が変化するまでにタイムラグが生じるため、その時点で必要な空調需要量が供給されず、無駄な空調エネルギーが消費されてしまう。
【0004】
例えば、空調需要が増加する場合(事例として冷房)は、室内温度が上昇し空調需要が増加したときに、室内温度を設定値に戻すために制御量である空調用冷水量が増加するが、室内温度が変化するまでにはタイムラグがあるため、空調需要が実質上満たされても室内温度は設定値にはならず、まだ偏差量が存在するために必要量以上の空調用冷水が供給されてしまう。したがって、無駄な空調用エネルギーが消費されることになる。特に、室内の空調需要が増大して偏差量が急峻に増加した場合(空調開始時など)には、偏差量が大きく、そのため制御量も大きいことから、フィードバック制御にともなうタイムラグによる無駄な空調用エネルギーの消費が大きくなる。
【0005】
また、室内温度が低下して空調需要が減少した場合においては、室内温度を設定値に戻すために制御量である空調用冷水量は減少するが、室内温度が変化するまでにはタイムラグがあるためその間は室内温度が設定値にならず、まだ偏差量が存在するために必要以上に空調用冷水が消費されてしまう。
【0006】
これに対し、本出願人は、上述したフィードバック制御の問題点、すなわち、制御応答にタイムラグが生じることにより、無駄な空調エネルギーが消費されるという問題点を解消するため、特許文献1に示されたフィードフォワード制御による建物用空調熱源システムの運転方法を提案した。
【0007】
特許文献1の運転方法は、複数の熱源機および複数のポンプを有する建物用空調熱源システムの運転方法であって、外気エンタルピまたは外気温度の値と建物の空調需要量とを予め関連付けておくとともに、前記関連付けられた空調需要量を供給するための熱源機およびポンプの運転方策を予め設定しておき、空調熱源システムの運転時の外気エンタルピまたは外気温度の値に基づいて、前記運転時における熱源機およびポンプの運転方策を選択するものである(請求項1)。
【0008】
上述した特許文献1の運転方法によれば、制御応答にタイムラグのない最適な空調制御が実施可能であり、これにより無駄な空調エネルギーが消費されることを防止して省エネルギーを図ることができる。ここで、図7(a)にフィードバック制御による建物用空調熱源システムの運転結果、図7(b)に特許文献1のフィードフォワード制御による建物用空調熱源システムの運転結果を示す。図7(a)のフィードバック制御では制御のタイムラグにおける空調エネルギーの無駄が生じているが、図7(b)のフィードフォワード制御では上記空調エネルギーの無駄が生じないことがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−117039号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】空気調和・衛生工学便覧
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、建物用空調熱源システムの運転制御を、特許文献1に示されたフィードフォワード制御のみで行った場合、空調熱源システムの運転時の外気エンタルピまたは外気温度の値が、異常気象などにより制御データベースの範囲外のものとなった場合、あるいは内部負荷(機器発熱、人体発熱等)の影響が外部負荷(外気取り入れによる負荷、壁からの熱伝達負荷、日射負荷等)に対して大きくなった場合などは、建物用空調熱源システムの制御が異常になり、省エネルギーを図ることができなくなる可能性があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、前述したフィードバック制御およびフィードフォワード制御が有する問題点を解消し、効果的に省エネルギーを図ることができる建物用空調熱源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記目的を達成するため、
熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上を有する建物用空調熱源装置群と、
外気エンタルピ、外気温度、日射量、建物用途および建物仕様から選ばれる1種以上の要因と建物の空調需要量とを予め関連付けておくとともに、前記関連付けられた空調需要量を供給するための前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転方策を予め設定しておき、前記外気エンタルピ、外気温度、日射量、建物用途および建物仕様から選ばれる1種以上の要因に基づいて空調需要を満たすための制御量を制御することにより、前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転を行うフィードフォワード制御手段と、
室内設定温度と実際の室内温度との偏差量に基づいて空調需要を満たすための制御量を制御することにより、前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転を行うフィードバック制御手段と、
前記フィードフォワード制御手段における制御量と、前記フィードバック制御手段における制御量とを比較し、いずれの制御量で前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の制御を行うかを選択する選択手段と
を具備することを特徴とする建物用空調熱源システムを提供する。
【0014】
本発明では、前記選択手段において、フィードフォワード制御手段における制御量およびフィードバック制御手段における制御量のうち、前記建物用空調熱源装置群に供給するエネルギー量が小さくなるような制御量を選択することが適当であり、これにより熱源機、ポンプあるいは空調機を含めた熱源システム全体の効率が向上し、効果的に省エネルギーを図ることが可能となる。ただし、電力消費量が多くなると電力契約が有利になり、結果的に電気料金が安価になる場合があるので、制御量は目的に応じて適宜選択することができ、建物用空調熱源装置群に供給するエネルギー量が大きくなるような制御量を選択することもできる。
【0015】
この場合、前記選択手段で選択した制御量を用い、フィードフォワード制御手段およびフィードバック制御手段のいずれかで前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の制御を行うことができ、いずれの制御手段を用いた場合も、前述したフィードバック制御およびフィードフォワード制御が有する問題点を解消し、効果的に省エネルギーを図ることができる。ただし、前記選択手段で選択した制御量を用い、フィードフォワード制御手段で制御を行うことが、省エネルギー等の点でより好ましい。
【0016】
また、前記フィードフォワード制御手段において、前記要因と空調負荷との対応関係に基づいて前記制御量を算出し、前記フィードバック制御手段において、前記偏差量と空調負荷との対応関係に基づいて前記制御量を算出し、かつ、前記両制御量は同じ単位とすることが適当である。これにより、フィードフォワード制御手段における制御量と、フィードバック制御手段における制御量とを容易に比較することができる。
【0017】
さらに、前記フィードフォワード制御手段は、複数の前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転方策のデータベースを備え、前記制御量のレベルに対応して、前記複数の運転方策のデータベースのうちの1種以上を用いて前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の制御を行うことが好ましい。これにより、フィードフォワード制御手段による熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の制御を適切に行うことができる。ここで複数の熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転方策のデータベース(DB)とは、ポンプ運転台数DB、ポンプ運転周波数DB、熱源機運転台数DB、熱源機出力温度DB、熱源機運転組み合わせDB、熱源機出力冷温水温度制御DB、空調機運転台数DB、空調機運転周波数DB、空調温度設定DB、空調加湿量設定DB等である。
【0018】
以下、本発明について説明する。まず、フィードフォワード制御手段について説明する。フィードフォワード制御手段において、熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転方策(以下、単に「熱源運転方策」という)の構成は必ずしも限定されないが、熱源機の運転機種、運転台数および出力冷温水温度から選ばれる1種以上と、ポンプの運転台数および運転周波数から選ばれる1種以上と、空調機の運転台数および運転周波数から選ばれる1種以上との組み合わせによって構成することが好ましい。
【0019】
フィードフォワード制御手段では、前述した要因の中で、外気エンタルピまたは外気温度の値と建物の空調需要量とを予め関連付けておくことが特に好ましい。その理由は以下のとおりである。建物の空調需要には、大きく分けて、内部負荷(機器発熱、人体発熱等)による需要と、外部負荷(外気取り入れによる負荷、壁からの熱伝達負荷、日射負荷等)による需要がある。しかし、内部負荷を一定とみなした場合は、空調需要の変動は外部負荷による変動のみとなる。特に、コンピュータルームやクリーンルームなどは使用機器や在室人員の変動が小さいため、内部負荷は一定とみなすことができる。
【0020】
一方、上述した外部負荷の中で壁からの熱伝達負荷や日射負荷は、外壁の断熱性の向上や熱反射窓ガラスの採用などから負荷自体が小さくなってきている。したがって、空調需要の変動は外気取り入れによる負荷の影響が大きく、また外気の状態は外気エンタルピまたは外気温度で表すことができるため、結局、空調需要の変動は外気エンタルピまたは外気温度の変動として表現することができる。
【0021】
したがって、フィードフォワード制御手段では、外気エンタルピまたは外気温度の値と建物の空調需要量とを事前に関連付けておくとともに、関連付けられた空調需要量を供給するための熱源運転方策も事前に決定しておき、空調熱源システムの制御は運転時における外気エンタルピまたは外気温度の値に基づいて一義的に決定すること、すなわちフィードフォワード制御を行うことにより、制御応答にタイムラグを生じさせることなく、運転時の外気エンタルピまたは外気温度に応じた空調エネルギーを供給できるので、空調エネルギーの供給に無駄が生じず、省エネルギーを図ることができる。
【0022】
以下、上述した点についてさらに述べる。本発明において、外気エンタルピは、下記式(a)により算出することができる。
h=cpat+x(r+cpwt) …(a)
t :外気温度(℃)
x :外気の絶対湿度(kg/kg(DA))
h :外気エンタルピ(比エンタルピ)(kJ/kg(DA))
pa:乾き空気の定圧比熱(1.006kJ/kg(DA)K)
pw:水蒸気の定圧比熱(1.805kJ/kg(DA)K)
:0℃における水の蒸発潜熱(2501.6kJ/kg)
【0023】
図3の左図に示すように、外気エンタルピと外気温度との間には比例的な関係があるので、本発明のフィードフォワード制御手段では、空調熱源システムの運転日における外気温度の値を用いて熱源運転方策を選択することができる。
【0024】
本発明のフィードフォワード制御手段において、外気エンタルピまたは外気温度の値と建物の空調需要量とを予め関連付けておく方法としては、例えば、所定の外気エンタルピまたは外気温度の値に対応する建物の空調需要量を予め設定しておく方法が挙げられる。所定の外気エンタルピまたは外気温度の値に対応する建物の空調需要量は、建物の特性を考慮して設定する。
【0025】
本発明のフィードフォワード制御手段では、上記関連付けられた空調需要量を供給するための熱源運転方策(例えば、熱源機の運転機種、運転台数および出力冷温水温度から選ばれる1種以上と、ポンプの運転台数および運転周波数から選ばれる1種以上と、空調機の運転台数および運転周波数から選ばれる1種以上との組み合わせ)を予め設定しておく。その方法としては、例えば、最適運転解析手法などを用いて省エネルギーや排出COの点で最適となる熱源運転方策を事前に解析により求めておく方法を挙げることができる。
【0026】
本発明のフィードフォワード制御手段では、クラスタ分析法などの類型化手法を用いて1年間の各日を空調需要量の類似性が強い日同士をまとめた複数のグループに類型化し、上記各グループ毎に熱源運転方策を予め設定することができる。すなわち、外気エンタルピは外気温度と外気湿度から求められるが、外気温度と外気湿度は時刻毎に変動するため、外気エンタルピの値も様々な値となる。そのため、空調需要も外気エンタルピや外気温度に従って非定常に変動する。しかし、空調需要を供給する場合には、運転すべき熱源機、ポンプ、空調機の組み合わせは限られており、空調需要が多少変動しても同じ熱源運転方策で供給することができる。そこで、空調需要量をクラスタ分析手法などを用いて類型化しておき、この類型化した空調需要量と空調負荷とを関連付けることが好ましい。
【0027】
この場合、上記クラスタ分析法としては、一般に使用されている方法を用いることができる。また、グループに類型化するに当たって使用する外気エンタルピまたは外気温度の値としては、各日の特定の時刻における外気エンタルピまたは外気温度の値、各日の特定の時間帯(例えば8時から18時)における外気エンタルピまたは外気温度の平均値、あるいは各日の1日の外気エンタルピまたは外気温度の平均値などを使用することができる。上記グループの数に限定はないが、9〜15個とすることが適当である。
【0028】
また、上述のように類型化したグループ毎に熱源運転方策を設定する場合、1年間の各日における任意時刻の外気エンタルピまたは外気温度と各グループの熱源運転方策とが関連付けられたデータベースを用い、空調熱源システムの運転日の任意時刻における外気エンタルピまたは外気温度の値を用いてグループの熱源運転方策を選択することができる。これにより、空調熱源システムの運転日の実際の気候特性に応じて熱源運転方策を容易に選択することができる。
【0029】
本発明のフィードフォワード制御手段では、前述のようにクラスタ分析法などの類型化手法を用いて1年間の各日を空調需要量の類似性が強い日同士をまとめた複数のグループに類型化し、各グループに分類番号を付与して、外気エンタルピの分類データベースを構築することができる。また、上記各グループ毎の外気エンタルピの値と建物の空調需要量とを予め関連付けておくとともに、関連付けられた空調需要量を供給するための熱源運転方策を予め設定しておくことにより、外気エンタルピ分類番号と熱源運転方策のデータベースを構築することができる。
【0030】
次に、フィードバック制御手段について説明する。本発明のフィードバック制御手段において、空調需要を満たすための制御量としては、例えば、各熱源機に供給する空調用冷温水量が挙げられる。具体的には、室内設定温度を28℃に設定した冷房の場合、実際の室内温度が29℃になったときには、室内温度を設定値に戻すために制御量である空調用冷水量を増加させ、実際の室内温度が27℃になったときには、室内温度を設定値に戻すために制御量である空調用冷水量を減少させる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、前述したフィードバック制御およびフィードフォワード制御が有する問題点を解消し、効果的に省エネルギーを図ることができる。すなわち、本発明によれば、空調熱源システムの運転時の外気エンタルピ、外気温度等の値が、異常気象などにより制御データベースの範囲外のものとなったり、内部負荷の影響が外部負荷に対して大きくなったりしたときに、建物用空調熱源システムの制御が異常になる可能性があるというフィードフォワード制御の問題点、および、制御応答にタイムラグが生じることにより、無駄な空調エネルギーが消費されるというフィードバック制御の問題点をいずれも解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の建物用空調熱源システムの一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の建物用空調熱源システムの運転方法の一例を示すフロー図である。
【図3】外気エンタルピと制御信号との関係の一例を示すグラフである。
【図4】空調負荷と外気エンタルピの関係との関係の一例を示すグラフである。
【図5】フィードフォワード制御手段における制御信号レベルと制御用データベースの制御レベルとの関連付けの一例を示す図である。
【図6】フィードフォワード制御手段における外気エンタルピ、制御量、制御レベルおよび熱源運転方策の関連付けの一例を示す図である。
【図7】(a)はフィードフォワード制御手段による建物用空調熱源システムの運転結果、(b)はフィードバック制御手段による建物用空調熱源システムの運転結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を示すが、本発明は下記例に限定されるものではない。本発明に係る建物用空調熱源システムの一例を図1に示す。図1において、10は建物用空調熱源装置群、12はフィードフォワード制御手段、14はフィードバック制御手段、16は選択手段を示す。
【0034】
本例の建物用空調熱源装置群10は、単数または複数の熱源機と、単数または複数のポンプと、単数または複数の空調機とを有するものである。熱源機としては、例えば、冷温水発生機、ターボ冷凍機、ヒートポンプチラー、ボイラ、蓄熱槽等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ポンプとしては、例えば、1次ポンプ、2次ポンプ、3次ポンプ等が挙げられ、また、2次ポンプとしては、複数の空調機にそれぞれ接続された冷温水ポンプ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。空調機としては、例えば、空調機、外調機、ファンコイルユニット等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、建物用空調熱源装置群の機器構成は適宜設定することができる。
【0035】
さらに、本例の建物用空調熱源装置群10には、ポンプ稼動台数制御データベースおよびポンプ運転周波数制御データベースを有するポンプコントローラと、熱源機運転台数制御データベース、熱源機出力温度制御データベース、熱源機運転組み合わせ制御データベースおよび熱源機出力容量制御データベースを有する熱源機コントローラと、空調機稼働台数制御データベースおよび空調機運転周波数制御データベースを有する空調機コントローラとが設けられている。
【0036】
本発明の建物用空調熱源システムの運転方法の一例を図2に示す。本例では、下記工程(1)〜(6)により建物用空調熱源システムを運転する。
【0037】
(1)フィードフォワード制御手段12において、外気温度と外気湿度から前記式(a)を用いて外気エンタルピを算出し(S1)、この外気エンタルピの値を、空調需要を満たすための制御量に変換する(S2)。上記制御量としては、例えば、図3に示すように、外気エンタルピ0〜100kJ/kg・DAの範囲に対応する制御信号4〜20mAを算出する。この場合、本例では、冷房時および暖房時の外気エンタルピ適用範囲(レンジ)を設定し、さらに外気エンタルピ適用範囲幅を制御信号量(4〜20mA)に変換している。また、上記変換においては、空調負荷と外気エンタルピの関係に基づいて制御信号量を設定している。このようにすることで、フィードフォワード制御手段12における制御信号と、フィードバック制御手段14における制御信号との比較が可能となる。さらに詳しくは、本例では、図4に示すように、空調負荷1の関係では線形式を適用して外気エンタルピを制御量に変換し、空調負荷2の関係では非線形式(二次関数)を適用して外気エンタルピを制御量に変換している
【0038】
(2)フィードバック制御手段14において、空調用送水ポンプの送水流量を計測し(S3)、この送水流量を、空調需要を満たすための制御量に変換する(S4)。上記制御量としては、送水流量0〜1800m/hの範囲に対応する制御信号4〜20mAを算出する。なお、S1〜S4は、通常、同時に行う。
【0039】
(3)選択手段16において、フィードフォワード制御手段12における制御量(S2)と、フィードバック制御手段14における制御量(S4)とを比較し、いずれの制御量で建物用空調熱源装置群10の制御を行うかを選択する(S5)。この場合、通常、建物用空調熱源装置群10に供給するエネルギー量が小さくなるような制御量を選択する(Lower Select)。
【0040】
(4)フィードフォワード制御手段12において、S5で選択した制御信号レベルに対応する熱源運転方策を選択する(S6)。ここで、フィードフォワード制御手段12における制御信号レベルと、制御用データベース(熱源機制御データベース、ポンプ制御データベース、空調機制御データベース)の制御レベルとの関連付けの一例を図5に示す。この場合、各制御用データベース(ポンプ運転台数、ポンプ運転周波数、熱源機運転台数、熱源機出力温度、熱源機運転組み合わせ、熱源機出力冷温水温度、空調機運転台数、空調機運転周波数等)は、各制御特性を考慮してそれぞれ特有のデータベースを設定する。
【0041】
(5)フィードフォワード制御手段12によって建物用空調熱源装置群10を所定時間運転する(S7)。制御としては、例えば、ポンプ台数制御、熱源機台数制御、熱源機出力容量制御、熱源機組み合わせ制御等(一部のみ図2に記載)が挙げられる。ここで、フィードフォワード制御手段12における外気エンタルピ、制御量、制御レベルおよび熱源運転方策の関連付けの一例を図6に示す。図6では、外気エンタルピレンジと、それに対応する制御信号レンジと、上記制御信号に対応する制御レベルと、上記制御レベルに応じて適用する熱源機台数制御データベース、ポンプ台数制御データベースおよび冷水温度制御データベースを示している。
【0042】
(6)建物用空調熱源装置群10の設定運転時間が経過したらS1〜S4に戻り、S5〜S7を繰り返す。
【0043】
なお、本例の建物用空調熱源システムの運転方法は上記に限定されるものではなく、例えばS7に代えて、フィードバック制御手段14によって建物用空調熱源装置群10を所定時間運転するようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上を有する建物用空調熱源装置群と、
外気エンタルピ、外気温度、日射量、建物用途および建物仕様から選ばれる1種以上の要因と建物の空調需要量とを予め関連付けておくとともに、前記関連付けられた空調需要量を供給するための前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転方策を予め設定しておき、前記外気エンタルピ、外気温度、日射量、建物用途および建物仕様から選ばれる1種以上の要因に基づいて空調需要を満たすための制御量を制御することにより、前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転を行うフィードフォワード制御手段と、
室内設定温度と実際の室内温度との偏差量に基づいて空調需要を満たすための制御量を制御することにより、前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転を行うフィードバック制御手段と、
前記フィードフォワード制御手段における制御量と、前記フィードバック制御手段における制御量とを比較し、いずれの制御量で前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の制御を行うかを選択する選択手段と
を具備することを特徴とする建物用空調熱源システム。
【請求項2】
前記選択手段において、フィードフォワード制御手段における制御量およびフィードバック制御手段における制御量のうち、前記建物用空調熱源装置群に供給するエネルギー量が小さくなるような制御量を選択することを特徴とする請求項1に記載の建物用空調熱源システム。
【請求項3】
前記選択手段で選択した制御量を用い、フィードフォワード制御手段で前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の建物用空調熱源システム。
【請求項4】
前記選択手段で選択した制御量を用い、フィードバック制御手段で前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の建物用空調熱源システム。
【請求項5】
前記フィードフォワード制御手段において、前記要因と空調負荷との対応関係に基づいて前記制御量を算出し、前記フィードバック制御手段において、前記偏差量と空調負荷との対応関係に基づいて前記制御量を算出し、かつ、前記両制御量は同じ単位とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の建物用空調熱源システム。
【請求項6】
前記フィードフォワード制御手段は、複数の前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の運転方策のデータベースを備え、前記制御量のレベルに対応して、前記複数の運転方策のデータベースのうちの1種以上を用いて前記熱源機、ポンプおよび空調機から選ばれる1種以上の制御を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の建物用空調熱源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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