説明

建物

【課題】上下階居室の各々から利用可能な空間を広くできる建物を提供することを目的とする。
【解決手段】上階居室および下階居室を有する建物であって、上階居室の床下かつ下階居室の天井の上に上階居室および下階居室より天井高さの低い収納用空間を形成する。この収納用空間は、その内部を2つに仕切る壁を設け、この壁はラチス梁441を備えて構成されている。ラチス梁441は上下に対向配置された梁部441Aと、これらの梁部441Aの間に斜めに接合固定されるラチス部441Bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の上下階間に形成される収納庫を備えた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の床下や天井裏を収納庫として利用するようにした建物が利用されている。このような収納庫を形成した建物とすれば、通常使用されていない天井裏や床下の空間を有効利用することが可能となり、建物内部の空間の利用率を向上することができる。
一方、工場で製造された箱状の建物ユニット(居室ユニット)を建築現場で組み合わせて形成されるユニット式建物が利用されている。このユニット式建物に上述した収納庫を形成する場合、上下に積み重ねられた上階居室ユニットおよび下階居室ユニットの間に、これらのユニットよりも高さ寸法の小さい収納用ユニットを介装し、当該収納用ユニットの内部を収納庫としている。
【0003】
ここで、集合住宅として用いられる建物において、上階と下階とが別個の住戸となる場合には、耐火性能を有する床面材で形成された界床で上下の階を仕切り、一方の住戸から他方の住戸への火災の延焼を防止している。
一方、このような集合住宅において、上階の床および下階の天井との間に水平面材を設け、いわゆる天井フトコロを上下に仕切ることにより、上階用の収納庫および下階用の収納庫の両方を形成することが考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような収納庫では、天井フトコロの高さ寸法が十分にとれないので、収納庫として有効に利用することができないという問題がある。
また、収納庫として有効に利用するために、天井フトコロの高さを拡張しようとすると、建物の高さ寸法を著しく大きくしてしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、上下階居室の各々から利用可能な収納庫を形成しかつ建物を著しく高くすることのない建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建物は、上下階に上階居室および下階居室を有する建物であって、前記上階居室の床下かつ前記下階居室の天井の上に前記上階居室および下階居室より天井高さの低い空間を形成し、この空間は、その内部を2つに仕切る壁を設け、この壁はラチス梁を備えて構成したことを特徴とする。
ここで、前記空間は収納用空間であることが好ましい。
前記上階居室、前記下階居室および前記空間はそれぞれ柱および梁を備えたユニットから構成されていることが好ましい。
前記ラチス梁は上下に対向配置された梁部と、これらの梁部の間に斜めに接合固定されるラチス部とを備え、前記梁部は前記空間を構成するユニットの互いに対向する梁に固定されている構成が好ましい。
前記ラチス梁の梁背は前記空間の高さと略同じであることが好ましい。
前記ラチス梁の下端部は前記収納用空間を構成する面材に一体形成され、前記ラチス梁の上端部は前記上階居室の床部に一体形成されている構成が好ましい。
【0007】
建物の収納構造は、図1の建物の縦断面図を参照して説明すれば、建物1の上下階2、3間に形成される収納庫4を備えた建物の収納構造であって、前記収納庫の上面には前記建物の上階2から出入り可能な上階用開口部5が形成されているとともに、その下面には前記建物の下階3から出入り可能な下階用開口部6が形成され、これらの上階用開口部および下階用開口部の平面位置が互いに異なることを特徴とする。
このような本発明によれば、収納庫に上下階両方から出入り可能な開口部が設けられているので、建物を著しく高くすることなく上下階各々の専用の収納庫が形成可能となるうえ、下階用開口部および上階用開口部の平面位置が互いに異なっているので、それぞれの開口部を利用して上階用の収納庫と下階用の収納庫との区分けが容易になる。
また、高さ寸法のある収納庫が上階居室部と下階居室部との間に全面に亘って形成されているので、集合住宅で必要とされる十分な遮音構造が容易に確保される。さらに、収納庫に収納物が増えると、遮音性能が一層向上するという利点もある。
【0008】
以上において、上階の床面と下階の天井面との間には、縦断面が矩形波状となる仕切面部7が設けられ、この仕切面部が上階および下階の平面全体を上下に仕切るとともに、仕切面部の上方に開口された内部が上階用の収納庫とされ、仕切面部の下方に開口された内部が下階用の収納庫とされているのが好ましい。
すなわち、上下階を仕切る仕切面部が矩形波状の縦断面を有し、収納庫が仕切面部を構成する垂直面材8によって区画されるので、収納庫の上階用開口部が設けられた部分を上階専用の収納庫とし、下階用開口部が設けられた部分を下階専用の収納庫とすることが可能となる。
【0009】
また、仕切面部としては、水平に設けられる水平面材9と垂直に設けられる垂直面材8とを有し、これらの面材は耐火性能を備え、前記水平面材が界床となるとともに、前記垂直面材が界壁となる仕切面部を採用するのが好ましい。
すなわち、水平面材および垂直面材が耐火性能を備えているので、建物の上下階の全面に亘って形成される仕切面部が耐火的に区画され、上下階の一方から他方への火災の延焼が確実に防止される。
【0010】
また、垂直面材としては、上階の床面を支持するラチス梁等の梁441を備えた垂直面材を採用するのが好ましい。
垂直面材が梁を備えているので、仕切面部を形成することにより、ラチス梁等の大断面の梁が所定の間隔をおいて複数配置されることとなるので、高強度の床構造を有する建物を形成することが可能となるうえ、梁自身が垂直面材の下地骨組部材ともなるので、省部材化をも図られる。
【0011】
さらに、図2以下の図面の符号を参照して説明すると、建物が複数の略箱状の建物ユニットを組み合わせて形成されるユニット式建物10である場合、当該建物の上階に配置される上階居室ユニット20と、この上階居室ユニット20の下階に配置される下階居室ユニット30と、前記上階居室ユニットおよび前記下階居室ユニットの間に介装される収納用ユニット40とを有し、仕切面部7を構成する垂直面材8および水平面材9はこの収納ユニットに設けられているのが好ましい。
すなわち、仕切面部を構成する水平面材および垂直面材が収納ユニットに設けられているので、収納ユニットを上階居室ユニットと下階居室ユニットとの間に介装するだけで矩形波状の仕切面部を形成することが可能となる。
【0012】
また、上述した垂直面材は、ラチス梁441とこのラチス梁441の両側を覆う耐火被覆材442とを備えているのが好ましい。
ここで、耐火被覆材とは、金属製のラチス梁を覆って熱的に保護する面材をいい、例えば、珪酸カルシウム板やロックウール板等が考えられる。
すなわち、垂直面材がラチス梁およびこのラチス梁を覆う耐火被覆材からなる壁用耐火パネルによって形成されているので、当該壁用耐火パネルの軽量化を図ることが可能となり、収納用ユニット全体の軽量化が図られる。
【0013】
さらに、水平面材は軽量気泡コンクリート(以下ALC)からなっているのが好ましい。
すなわち、水平面材がALC板からなっているので、水平面材を備えた収納用ユニット40の軽量化が図られるとともに、ALC板の厚みによる遮音性の向上が図られ、気泡を内部に含むことによる断熱性の向上が図られる。
【0014】
そして、上述したユニット式建物が複数の住戸50、60を有する集合住宅である場合に本発明に係る建物の収納構造を採用するのが好ましい。
すなわち、集合住宅では、上下階に異なる住戸が設定された場合、上下階の居室間の火災の延焼を確実に防止する必要があるので、耐火性能を有する面材により形成された仕切部の有用性は一層向上するうえ、上下階の各住戸にそれぞれ専用の収納庫を形成することが可能となる。
また、集合住宅(10)の場合、2階住戸用の電気、給排水設備71、72、73、74の配線、配管75のためのスペースを2階居室部の床下に確保しなければならないが、収納庫を利用して配線、配管を行うことが可能となるので、配線、配管用のスペースを別途新たに確保する必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図2には、本発明の第1実施形態に係る建物の収納構造を備えたユニット式建物が示されている。
ユニット式建物10は、上階居室部2と、下階居室部3と、上下階居室部2、3間に形成される収納庫4と、を含んで形成され、内部に6住戸を有する2階建ての集合住宅である。
また、ユニット式建物10の外側には、外廊下13と、上階への昇降用階段14と、バルコニ15とが突出して形成され、上述した収納庫4は、外廊下13およびバルコニ15の床下まで拡張されている。
【0016】
このようなユニット式建物10は、略箱状の上階居室ユニット20および下階居室ユニット30を組み合わせて形成され、上下に積み重ねられる上階居室ユニット20および下階居室ユニット30の間には、収納用ユニット40が介装され、収納用ユニット40の屋外側面には、外廊下13を形成する外廊下ユニット130と、バルコニ15を形成するバルコニユニット150が突出して設けられる。
尚、上階居室ユニット20および下階居室ユニット30は共に、四隅に立設される柱21と、これらの柱21の上端間、下端間を連絡する梁22とを含んで形成され、高さ寸法H1の箱状のユニットであり、介装される収納用ユニット40の高さ寸法H2は、このH1よりも小さくなっている。
【0017】
ユニット式建物10内の住戸配置は、図3の2階部分の平面配置図に示されるように、前記上階居室ユニット20を短辺方向に3つつなぎ合わせた空間に1の住戸50が設定され、2階部分に異なる3つの住戸50が居住可能となっている。そして、ユニット式建物10の外周は、ALC板からなる外周壁11により仕切られているとともに、隣り合う住戸50の間は界壁12によって仕切られている。
また、図3中左側の住戸50に示されるように、居室内に洗面所71、トイレ72、キッチン73、風呂74が設けられ、これらは2階居室部2の床下に配置される収納庫4の上面部近傍に配管される給排水管75が接続されている。
この給排水管75の端部は、パイプシャフト76内で下方一階に至る給排水管77に接続されている。
尚、図3における他の住戸50もこれと同様の給排水管が配管されている。
【0018】
また、ユニット式建物10の上下間の配置は、図4の断面図に示されるように、上階居室部2に設定される住戸50と下階居室部3に設定される住戸60とが対応配置され、上下階居室部2、3間は仕切面部7によって仕切られている。
この仕切面部7は、垂直面材8と水平面材9とを矩形波状に組み合わせて形成され、垂直面材8および水平面材9の配置されていない部分には、上階用開口部5および下階用開口部6が形成され、その平面位置は互いに異なっている。
【0019】
このような仕切面部7は、収納用ユニット40を複数個並設することにより形成される。
垂直面材8は後述する壁用耐火パネル440と、隣接する2つの収納用ユニット40同士の対向側面とを含んで形成される。
水平面材9は後述する下面用耐火パネル411および上面用耐火パネル421によって形成される。
そして、壁用耐火パネル440によって、収納用ユニット40の内部は上階用収納庫410と下階用収納庫420とに区画されている。
そして、上下階に対応設定される住戸50および住戸60間は、収納用ユニット40を仕切る壁用耐火パネル440と、下階用収納庫420の上面を覆う上面用耐火パネル421と、上階用収納庫410の下面を覆う下面用耐火パネル411とによって区画され、住戸50および住戸60間の一方から他方への火災の延焼を防止する界床および界壁となっている。
【0020】
収納用ユニット40は、図5に示されるように、四隅に立設される柱401と、これらの柱401の上端間、下端間を連絡する梁402とからなる箱状のフレーム403を備え、その略中央部が垂直面材8の一部となる壁用耐火パネル440によって仕切られ、それぞれの部分が上階用収納庫410、下階用収納庫420とされる。
また、収納用ユニット40の短辺を形成する側面には、珪酸カルシウム板404が貼られ、当該側面の梁402および柱401は、この珪酸カルシウム板404と、隣り合う収納用ユニット40の珪酸カルシウム板404とによって耐火被覆され、上述した壁用耐火パネル440以外の垂直面材8の部分を構成している。
【0021】
上階用収納庫410の下面はALC製の下面用耐火パネル411で覆われているとともに、下階用収納庫420の上面もALC製の上面用耐火パネル421で覆われている。
また、下階用収納庫420の下面には、互いに対向配置される収納用ユニット40の下側の梁402間に根太422(図4では図示略)が架設され、この根太422には、下階用収納庫420の床面を形成する床面材423が貼られている。
尚、ユニット式建物1の屋外端部に配置される収納用ユニット40の外側には、前述したように、バルコニユニット150および外廊下ユニット130が接合されるが、これらのユニット130、150は、軸組構造の箱状フレームの上面、下面のそれぞれに床面材を敷設し、側面を外壁材で覆うとともに、中央部に仕切を設けたものである。
そして、このようなユニット130、150が前述した収納用ユニット40に接合されて、ユニット式建物10の収納庫4が拡張されている。
【0022】
上述した収納用ユニット40は、前述の如く上階居室ユニット20および下階居室ユニット30の間に、図6に示すような納まりで介装されている。
尚、上階居室ユニット20の下側には、床面材23を固定するための根太24が複数本設けられているとともに、下階居室ユニット30の上側には、天井面材25が固定される天井小梁26が複数本設けられている。
上階用収納庫410は、前記下面用耐火パネル411の上面を床スラブとしてこの上に床仕上げ材412が敷設されている。
【0023】
そして、下面用耐火パネル411と対向する収納用ユニット40の上面側には、上階居室ユニット20の床面材23が延出配置されている。この床面材23の一部に矩形状の上階用開口部5が形成され、この上階用開口部5の下部に設けられる昇降用階段413によって、上階用収納庫410に出入り可能となっている。尚、上階用収納庫410を使用しない場合には、扉414により上階用開口部5を塞ぎ、上階居室ユニット20内での歩行の障害とならないようになっている。
【0024】
下階用収納庫420は、前記上面用耐火パネル421を天井面とし、この上面用耐火パネル421と対向する収納用ユニット40の下面側には、下階居室ユニット30の天井面材25が延出配置され、この天井面材25の上部に前述した床面材423、根太422からなる下階用収納庫410の床面が形成されている。上記天井面材25および床面材423にはその一部に矩形状の下階用開口部6が形成され、下階居室ユニット30からの出入りが可能となっている。尚、下階用開口部6には、収納可能な昇降用梯子424と扉425とが設けられており、扉425を開けて昇降用梯子424を降ろすことにより、下階用収納庫420への出入りが可能となる。
【0025】
垂直面材8の一部を構成する壁用耐火パネル440は、図7に示すように、ラチス梁441の両側面と、上下面を珪酸カルシウム板442で覆った複合パネルである。
ラチス梁441は、上下に対向配置された2本のC形鋼からなる梁部441Aと、これらの梁部441A間に斜めに接合固定される等辺山形鋼からなるラチス部441Bとを備え、梁部441Aは、図7では図示を略したが、前記収納用ユニット40の互いに対向する梁402(図5における長辺方向に延出する梁402)に溶接されて接合固定されている。また、梁部441Aのウエブの内面とラチス部441Bの山形鋼の外面とは、溶接により接合され、このラチス梁441の両側が珪酸カルシウム板で覆われて、壁用耐火パネル440は軽量かつ高強度になっている。
【0026】
上面用耐火パネル421および下面用耐火パネル411は、共に一方の端部が上記壁用耐火パネル440のラチス梁441に支持されているとともに、他方の端部は、収納用ユニット40の梁402によって支持されている。
上面用耐火パネル421は、図7に示されるように、その端部がラチス梁441の上側の梁部441Aのウエブ外側面に溶接されたLアングル426によって壁用耐火パネル440に支持されている。尚、上面用耐火パネル421とLアングル426との固定は、図7では図示を略したが、Lアングル426に所定ピッチで孔を開けておくとともに、上面用耐火パネル421に埋め込みナットを複数設け、当該孔にボルトを挿通してLアングル426と上面用耐火パネル421とを接合することによって行われる。
【0027】
上面用耐火パネル421は、当該Lアングル426の延出方向に沿って延びる断面L字状の切り欠きを有し、この切り欠きにLアングル426の突出片が収納される。そして、上面用耐火パネル421と、ラチス梁441の側面を覆う珪酸カルシウム板442と、上面を覆う珪酸カルシウム板442とによってLアングル426はラチス梁441と共に耐火被覆されている。
上述と同様に、ラチス梁441の下側の梁部441AにもLアングル427が溶接接合されており、このLアングル427が下面用耐火パネル411を支持するとともに、ラチス梁441の下面に固定される珪酸カルシウム板442によってラチス梁441とともに、Lアングル427も耐火被覆されている。
【0028】
上面用耐火パネル421の他の端部は、図8に示すように、収納用ユニット40の梁402にLアングル428および接合金物429によって支持されている。
収納用ユニット40の前記梁402の内側には、断面C形状の接合金物429が嵌合固定されているとともに、この接合金物429には、Lアングル428が溶接接合される。
このLアングル428に上面用耐火パネル421が載せられ、上述と同様に接合固定されるとともに、Lアングル428は、収納用ユニット40の短辺方向側面を覆う珪酸カルシウム板404によって梁402とともに耐火被覆されている。
尚、下面用耐火パネル411も上述と略同様に支持固定され、珪酸カルシウム板404によって耐火被覆されている。
【0029】
このような第1実施形態によれば、次のような効果がある。
収納庫4に上下階両方から出入り可能な開口部5、6が設けられているので、ユニット式建物10を著しく高くすることなく上下階各々の専用の収納庫410、420を形成することができるうえ、下階用開口部6および上階用開口部5の平面位置が互いに異なっているので、それぞれの開口部を利用して上階用収納庫410と下階用収納庫420との区分けを容易に行うことができる。
【0030】
また、上下階居室部2、3を仕切る仕切面部7が矩形波状の縦断面を有し、収納庫4が仕切面部7を構成する垂直面材8によって区画されるので、収納庫4の上階用開口部5が設けられた部分を上階2の専用の収納庫410とし、下階用開口部6が設けられた部分を下階3の専用の収納庫420とすることができる。
さらに、ユニット式建物10の上下階居室部2、3を仕切る仕切面部7が耐火性能を有する面材411、421、440によって形成されているので、上下階2、3の一方から他方への火災の延焼を確実に防止することができ、仕切面部7を上下に異なる住戸50、60間の界床および界壁とすることができる。
【0031】
そして、仕切面部7を構成する垂直面材8および水平面材9が収納用ユニット40に設けられているので、収納用ユニット40を上階居室ユニット20と下階居室ユニット30との間に介装するだけで矩形波状の仕切面部7を形成することができる。
また、垂直面材8がラチス梁441およびこのラチス梁441を覆う耐火被覆材(珪酸カルシウム板)442からなる壁用耐火パネル440によって形成されているので、当該壁用耐火パネル440の軽量化を図ることができ、収納用ユニット40全体の軽量化を図ることができる。
【0032】
さらに、水平面材9である上面用耐火パネル421と下面用耐火パネル411とがALC板からなっているので、これらのパネル411、421が取り付けられた収納用ユニット40の軽量化を図ることができるうえ、ALC板の厚みによる遮音性の向上を図ることができ、気泡を内部に含むことによる断熱性の向上を図ることができる。
そして、高さ寸法のある収納庫4が上階居室部2と下階居室部1との間に全面に亘って介装形成されているので、集合住宅で必要とされる十分な遮音構造を容易に確保することができる。さらに、収納庫に収納物が増えると、遮音性能が一層向上するという利点もある。
【0033】
図9には本発明の第2実施形態が示されており、図9は第1実施形態における図6に相当する図である。尚、以下の説明では、既に説明した部材又は部分と同一の部材又は部分には、同一符号を付し、その説明を省略又は簡略にする。
第1実施形態では、上階居室ユニット20には、床面材23が設けられていたのに対して、第2実施形態の上階居室ユニット120には設けられておらず、収納用ユニット40の上面用耐火パネル421を床面としている点が相違する。
【0034】
上階居室ユニット120の床面は、下階用収納庫420の上面を覆う上面用耐火パネル421と上階用収納庫410の下面用耐火パネル411に対向配置され、上階用収納庫410の上面を覆う木質パネル450とによって形成されている。
この木質パネル450は、収納用ユニット40の互いに対向配置される2本の梁402間に架設される根太451と、この根太451上に貼られる床面材452とを含んで形成され、この木質パネル450に上階用開口部5が設けられている。
【0035】
このように上階居室ユニット120の床面を収納用ユニット40の上面とすることにより、上階居室ユニット120の天井高さをより大きくとることができるので、上階の居室空間を開放感のあるものとすることができる。
また、垂直面材8を構成する壁用耐火パネル440がラチス梁441のような大断面の梁を備え、このラチス梁441が床面材を兼ねるALC板製の上面用耐火パネル421を支持することとなるため、2階居室部2の床構造を高強度とすることができるうえ、当該ラチス梁441が珪酸カルシウム板442の止め付け下地をも兼ねているので、高強度の床構造を省部材で形成することができる。
【0036】
尚、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、次に示すような変形等をも含むものである。すなわち、前述の実施形態では、壁用耐火パネル440は、ラチス梁441とこのラチス梁441の両側を覆う珪酸カルシウム板442とを含んで形成されていたが、これに限らず、ALC板単体で壁用耐火パネルを形成し、これを垂直面材として仕切面部を形成してもよい。
【0037】
また、前述の実施形態では、水平面材9である上面用耐火パネル421、下面用耐火パネル411はALC製の面材であったがこれに限らず、セメント押し出し成形板等であってもよい。
要するにこれらの耐火パネル411、421、440は、延焼防止という機能を備えている他、要求されるパネルとしての性能に応じてその材料、構成を適宜選択すればよい。
【0038】
さらに、前述の実施形態では、収納庫4はバルコニ15および外廊下13の床下部分まで拡張されていたが、これに限らず、居室部分2、3の平面形状に対応する平面形状の収納庫としてもよい。要するに建物の居室部分の床下全体に収納庫が形成されていればよい。
そして、前述の実施形態では、複数の住戸を有する集合住宅となるユニット式建物10に本発明に係る建物の収納構造を採用していたが、これに限らず、通常の戸建住宅として使用されるユニット式建物に本発明に係る収納用ユニット40を用いてもよい。これにより、各個室間の火災の際の延焼を一層確実に防止することができる。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、収納庫を備えた建物に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る建物の収納構造を表す模式断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る建物の収納構造を採用したユニット式建物を表す概要斜視図である。
【図3】前述の実施形態におけるユニット式建物の平面配置図である。
【図4】前述の実施形態におけるユニット式建物の垂直断面図である。
【図5】前述の実施形態における収納用ユニットを表す概要斜視図である。
【図6】前述の実施形態における上階居室ユニットと下階居室ユニットとの間に収納用ユニットが介装された納まりを示す断面詳細図である。
【図7】前述の実施形態における壁用耐火パネルの構造と、上面用耐火パネル、下面用耐火パネルの接合構造を表す概要斜視図である。
【図8】前述の実施形態における上面用耐火パネルと収納用ユニットのフレームとの接合構造を表す概要斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態を表す、図6に相当する断面詳細図である。
【符号の説明】
【0041】
1 建物
4 収納庫
5 上階用開口部
6 下階用開口部
7 仕切面部
8 垂直面材
9 水平面材
10 ユニット式建物
20 上階居室ユニット
30 下階居室ユニット
40 収納用ユニット
50、60 住戸
410 上階用収納庫
420 下階用収納庫
440 壁用耐火パネル
441 ラチス梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下階に上階居室および下階居室を有する建物であって、前記上階居室の床下かつ前記下階居室の天井の上に前記上階居室および下階居室より天井高さの低い空間を形成し、この空間は、その内部を2つに仕切る壁を設け、この壁はラチス梁を備えて構成したことを特徴とする建物。
【請求項2】
請求項1に記載された建物において、前記空間は収納用空間であることを特徴とする建物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された建物において、前記上階居室、前記下階居室および前記空間はそれぞれ柱および梁を備えたユニットから構成されていることを特徴とする建物。
【請求項4】
請求項3に記載された建物において、前記ラチス梁は上下に対向配置された梁部と、これらの梁部の間に斜めに接合固定されるラチス部とを備え、前記梁部は前記空間を構成するユニットの互いに対向する梁に固定されていることを特徴とする建物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された建物において、前記ラチス梁の梁背は前記空間の高さと略同じであることを特徴とする建物。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれかに記載された建物において、前記ラチス梁の下端部は前記収納用空間を構成する面材に一体形成され、前記ラチス梁の上端部は前記上階居室の床部に一体形成されていることを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−37714(P2006−37714A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264162(P2005−264162)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【分割の表示】特願平9−10279の分割
【原出願日】平成9年1月23日(1997.1.23)
【出願人】(000114086)ミサワホーム株式会社 (288)
【Fターム(参考)】