建築物の防火構造
【課題】従来の防火構造の弱点とされていた目地部の防火性能を施工コスト的に有利で且つ簡便な構造により向上させることができるスレート(波板)を外装材として用いた建築物の防火構造を提供することにある。
【解決手段】JIS A 5430のスレート(波板)を外装材として使用してなる建築物の防火構造において、建築物の構造躯体に所定の間隔で設置された横胴縁の屋外側に、前記JISのタイプ2で0.8か同等の物性で厚さ15mm以上のけい酸カルシウム板、またはJIS A 5404に規定される物性で厚さ20mm以上の木毛セメント板である外装下地材を留付け、前記外装下地材どうしの目地部の屋外側に、前記のタイプ2の0.8か同等の物性を有する少なくとも6mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板からなる目地板を留付け、前記外装下地材及び目地板上に、前記スレート(波板)を留付けることを特徴とする。
【解決手段】JIS A 5430のスレート(波板)を外装材として使用してなる建築物の防火構造において、建築物の構造躯体に所定の間隔で設置された横胴縁の屋外側に、前記JISのタイプ2で0.8か同等の物性で厚さ15mm以上のけい酸カルシウム板、またはJIS A 5404に規定される物性で厚さ20mm以上の木毛セメント板である外装下地材を留付け、前記外装下地材どうしの目地部の屋外側に、前記のタイプ2の0.8か同等の物性を有する少なくとも6mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板からなる目地板を留付け、前記外装下地材及び目地板上に、前記スレート(波板)を留付けることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防火構造に関し、更に詳細には、スレート(波板)(ノンアスベスト波板)を外装材として用いた建築物の防火構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スレート(波板)は、工場や倉庫等の外装材として広く使用されてきた建築材料である。従来のスレート(波板)の原料構成は、マトリックス原料としてのセメントと、繊維原料としてのアスベスト(石綿)を主原料とするものであったが、最近のノンアスベスト化に伴い、繊維原料としてセルロースパルプ等の有機繊維が使用されるようになっている。 このようなスレート(波板)を外装材とする建築物の防火構造の防火性能を評価するための建築基準法の防火性能試験・評価方法における加熱条件は、従来、図9の曲線bで示されるものであった。この防火試験条件下で、スレート(波板)を外装材として用いた建築物の防火構造として図10に示すような防火構造が採用され、防火構造として認定されていた。即ち、図10に示す建築物の防火構造おいては、横胴縁(21)の屋外側に、厚さ15mm以上の木毛セメント板を外装下地材(22)として、外装下地材留付金具(23)により留付け、外装下地材(22)の屋外側に、標準的な厚さ(6.3mm)のスレート(波板)(26)を、パッキン(27)、座金(28)を介して外装材留付金具(29)により留付けている。
【0003】
しかしながら、平成12年の建築基準法改正により、防火性能試験・評価方法における加熱条件は、図9の曲線aに示されるように改正され、加熱条件がより厳しいものとなった。なお、この加熱条件は、ISO834による加熱曲線であり、T=345log10(8t+1)+20[式中、Tは温度(℃)、tは時間(分)をそれぞれ表す]で表され、防火構造は、30分間の試験中に裏面温度上昇が180K以下であると、合格とされる。このような試験条件下では、図10に示すような従来の防火構造では、外装下地材(22)の目地部が弱点となり、外装下地材(22)の裏面温度を判定温度以下に抑えて防火構造としての認定を得ることができなかった。外装下地材(22)の目地部の防火性能を高めるためには、(A)外装下地材の厚さを厚くする;(B)外装下地材を二層構造としてそれぞれの層の目地部が重ならないようにする;(C)外装下地材の小口に相欠加工を施す;(D)目地部の屋外側に加熱膨張材等を挿入する等の方策が考えられてきた。
【0004】
しかしながら、上述の(A)ないし(D)に記載するような方策は、施工コスト並びに材料コストの面で問題がある。そこで、現在、図11に示すように防火構造が採用され、防火構造として認定されている。即ち、図10に示す防火構造に加えて、横胴縁(21)の室内側に、厚さ9.5mm以上の石膏ボードを内装材(25)として配し、且つ外装下地材(22)と内装材(25)の間に形成される中空部に、ロックウール(24)を充填することにより、改正された建築基準法に基づく防火構造の性能を充足して、防火構造として認定を受けている(非特許文献1)。
【0005】
【非特許文献1】国土交通省 国住指第2074号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、横胴縁(21)の室内側に内装材(25)を留付け、更に、ロックウール(24)を充填することは、施工コスト及び施工効率の面で大きな問題点となる。そこで、防火性能に関してはアスベスト品よりも不利であるノンアスベスト品のスレート(波板)を外装材として使用し、且つ室内側に内装材を施工し、且つロックウール等を充填することなく、改正された建築基準法の防火構造の条件を満足することができる建築物の防火構造を提供することが望まれている。
【0007】
従って、本発明の目的は、従来の防火構造の弱点とされていた目地部の防火性能を施工コスト的に有利で且つ簡便な構造により向上させることができるスレート(波板)を外装材として用いた建築物の防火構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の建築物の防火構造は、JIS A 5430に規定されるスレート(波板)を外装材として使用してなる建築物の防火構造において、建築物の構造躯体に所定の間隔で設置された横胴縁の屋外側に、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板と同等の物性を有し且つ少なくとも15mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板、またはJIS A 5404に規定される物性を有し且つ少なくとも20mm以上の厚さを有する木毛セメント板から選択される外装下地材を留付け、前記外装下地材どうしの目地部の屋外側に、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板またはこれと同等の物性を有する少なくとも6mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板からなる目地板を留付け、前記外装下地材及び目地板上に、前記スレート(波板)を留付けることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の建築物の防火構造は、外装下地材が、外装下地材留付金具により横胴縁に留付けられていることを特徴とする。
【0010】
更に、本発明の建築物の防火構造は、目地板が、目地板留付金具により留付けられていることを特徴とする。
【0011】
更に、本発明の建築物の防火構造は、外装下地材どうしの目地部の室内側にT字型形状の目地ジョイナーが設置されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の建築物の防火構造は、スレート(波板)が、外装材留付金具により横胴縁に留付けられていることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の建築物の防火構造は、外装材留付金具が、ねじ、フックボルト及びナット、またはチャンネルボルト及びナットから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の建築物の防火構造によれば、防火性能に関してはアスベスト品よりも不利であるノンアスベスト品のスレート(波板)を外装材として使用し、従来の防火構造の弱点とされていた目地部の防火性能を施工コスト的に有利で且つ簡便な構造により向上させることができるという利点を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここで、本明細書に規定する「JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板」とは、原料が石灰質原料、けい酸質原料、石綿以外の繊維並びに混和材料から構成され、見掛け密度:0.6g/cm3以上0.9g/cm3未満、曲げ強さ:10.0N/mm2以上、吸水による長さ変化率:0.15%以下、熱伝導率:0.18W/m・K以下、難燃性:難燃1級を有するけい酸カルシウム板を意味するものである。
【0016】
また、「JIS A5404に規定された物性を有し且つ少なくとも20mm以上の厚さを有する木毛セメント板」とは、木質原料の最大長さが450mm以下で、製品のかさ比重が0.7以上の硬質木毛セメント板であって、例えば厚さ20mmで、曲げ破壊荷重:800N以上、たわみ:5mm以下、難燃性:難燃2級を有するもの並びに木質原料の最大長さが450mm以下で、製品のかさ比重が0.4以上0.7未満の普通木毛セメント板であって、例えば厚さ20mmで、曲げ破壊荷重:500N以上、たわみ:9mm以下、熱抵抗:0.18m2・K/W以上、難燃性:難燃2級を有するものを意味するものである。
【0017】
更に、「JIS A 5430に規定されるスレート(波板)」とは、原料がセメント、石綿以外の繊維並びに混和材料から構成され、厚さ:6.3±0.6mm、曲げ破壊荷重:1470N以上、吸水率:30%以下、透水性:裏面に水滴が生じてはならない、難燃性:難燃1級のスレート波板(小波)並びに曲げ破壊荷重:3920N以上、吸水率:30%以下、透水性:裏面に水滴が生じてはならない、難燃性:難燃1級のスレート波板(大波)を意味するものである。なお、「小波」とは、山の数:11.5山、谷の深さ:15mm以上のものであり、「大波」とは、山の数:7.5山、谷の深さ:35mm以上のものである。また、スレート(波板)は、表面に塗膜層(化粧層)を設けたものも使用することができる。なお、スレート(波板)は、例えばマトリックス原料としてセメントを使用し、繊維原料としてセルロースパルプを使用し、更に、ビニロン等の合成繊維やカーボン繊維等を1種または2種以上併用する。特に、カーボン繊維の併用は、スレート(波板)の防火性能を向上させる上で好適である。また、必要に応じてウォラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム粉末、珪石粉等の充填材やシリカヒューム等の混和材を使用し、抄造法等の任意の公知の方法により製造することができる。
【0018】
次に、本発明の建築物の防火構造を図により説明する。
図1は、本発明の建築物の防火構造において、外装材[スレート(波板)]を山留施工する場合の水平断面図であり、図2は、鉛直断面図である。横胴縁(1)は、構造躯体(柱)(11)に取り付けられた横胴縁取付材(図示せず)により構造躯体(柱)(11)に取り付けられている。横胴縁(1)には、外装下地材(2)が外装下地材留付金具(3)により留付けられている。
ここで、横胴縁(1)としては、例えばJIS G 3350に規定される一般構造用軽量形鋼を用いることができる。また、外装下地材(2)としては、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板と同等の物性を有し且つ少なくとも15mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板、またはJIS A 5404に規定される物性を有し且つ少なくとも20mm以上の厚さを有する木毛セメント板を使用する。ここで、外装下地材(2)の厚さが上記条件未満であると、所定の防火性能を得られなくなることがあるために好ましくない。なお、外装下地材(2)の厚さの上限は、性能の面からは特に限定されるものではないが、防火構造の厚さが厚くなるに伴い材料コストも増加するため、性能面とコストの兼ね合いで自ずと決定される。また、外装下地材留付金具(3)としては、鉄製またはステンレス製のねじ、例えばドリルねじ、タッピンねじ等のねじ類を使用することができる。
【0019】
次に、外装下地材(2)のどうしの縦目地の表面(屋外側)には、目地板(5)を、縦目地が目地板(5)の中央に位置するように被せ、目地板留付金具(10)により留め付ける。ここで、目地板(5)は、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板またはこれと同等の物性を有する少なくとも6mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板から構成される。目地板(5)の厚さが前記条件を下回ると、所定の防火性能が得られなくなることがある。また、目地板(5)の厚さの上限値は、性能の面からは特に限定されるものではないが、防火構造の厚さが厚くなるに伴い材料コストも増加するため、性能面とコストの兼ね合いで自ずと決定される。更に、目地板の幅は、60〜300mmの範囲内であることが好ましい。ここで、目地板の幅が60mm未満であると、充分な防火性能が得られなかったり、施工性が低下するために好ましくなく、また、300mmを超えても、それに見合った性能の向上が得られず、コストの上昇を招くために好ましくない。更に、目地板留付金具(10)としては、鉄製またはステンレス製のねじ、例えばドリルねじ、タッピンねじ等のねじ類を使用することができる。
【0020】
なお、外装下地材どうしの目地部の外装下地材(2)の裏面(室内側)には、T字型形状の目地ジョイナー(4)を設置しておくこともできる。ここで、目地ジョイナー(4)は、厚さ0.27mm以上の溶融亜鉛めっき鋼板、塗装溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板、塗装溶融亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板、溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、塗装溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板等から構成することができる。なお、目地ジョイナー(4)としては、例えば図4に示すような形状を有するものを使用することができる。
【0021】
次に、外装材(6)をパッキン(7)、座金(8)を介して外装材留付金具(9)により横胴縁(1)に留付ける。ここで、外装材(6)としては、JIS A 5430に規定されるスレート(波板)を使用することができる。また、外装材留付金具(9)としては、例えばねじ、フックボルト及びナット、またはチャンネルボルト及びナット等を用いることができる。図3(a)には、外装材留付金具(9)としてねじ(9−a)を使用した場合を示す。この場合には、ねじ(9−a)に、パッキン(7)及び座金(8)を通した上で、外装材(6)の表面から外装材(6)、外装下地材(2)等を貫通させて横胴縁(1)に留付ける。なお、ねじ(9−a)としては、鉄製またはステンレス製の例えばタッピンねじのねじ山をもつドリルねじ、ドリリングタッピンねじ、すりわり付きタッピンねじ、十字穴付きタッピンねじ、六角タッピンねじ、フランジ付き六角タッピンねじ、ヘクキロビュラ穴付きタッピンねじ、平座金組込みタッピンねじ等を使用することができる。また、パッキン(7)としては、例えばアスファルト含浸羊毛フェルト、アスファルト含浸牛毛フェルト、羊毛フェルト、牛毛フェルト、ポリエチレン系パッキン、塩化ビニル系パッキン、ポリスチレン系パッキン等を使用することができる。更に、座金(8)としては、鉄製またはステンレス製のものを使用することができる。
【0022】
また、図3(b)には、外装材留付金具(9)としてナット(9−b)とフックボルト(9−c)を使用した場合を示す。更に、図3(c)には、外装材留付金具(9)としてナット(9−b)とチャンネルボルト(9−d)を使用した場合を示す。これらの場合には、フックボルト(9−c)またはチャンネルボルト(9−d)の先端(屈曲部)を横胴縁(1)に引掛け、外装材(6)に予め設けた孔にフックボルト(9−c)またはチャンネルボルト(9−d)の他端を通してパッキン(7)、座金(8)及びナット(9−b)で押さえて留付ける。ここで、ナット(9−b)としては、鉄製またはステンレス製のものを使用することができる。
なお、外装材留付金具(9)の留付け位置は、1横胴縁あたり2本以上とすれば良い。また、外装材(6)の横方向、縦方向とも重なる部分は、重ねの中間層に位置する外装材のみ、角部の切断(重ねによって生じたすき間を小さくするための措置)を行うことができる。また、外装材(6)、外装下地材(2)並びに目地板(5)で区画される空間は、断熱層として作用する。
【0023】
上記のように、図1ないし3は、外装材として使用されるスレート(波板)を山留施工する場合を示すものであるが、本発明の建築物の防火構造はこれに限定されるものではなく、外装材として使用されるスレート(波板)を谷留施工することによっても本発明の建築物の防火構造を得ることもできることは勿論である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明のスレート(波板)を外装材として用いる建築物の防火構造を実施例により更に説明する。
実施例1
図1及び2に示す建築物の防火構造において、横胴縁(1)として、C−100×50×20×2.3mmを使用し、構造躯体(柱)(11)に相当するミゾ形鋼より構成される試験体用枠に865mmの間隔で取り付けた。次に、外装下地材(2)としてJIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板の(厚さ15mm)を使用し、外装下地材留付金具(3)としてステンレス製ねじ(皿頭、径:φ4mm、長さ:40mm)を使用し、前記横胴縁に、けい酸カルシウム板をねじにより留付けた。なお、留付けピッチは、横方向303mm、縦方向865mmとした。
次に、目地板(5)としてJIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板(厚さ6mm、幅220mm)を使用し、目地板留付金具(10)としては、ステンレス製ねじ(皿頭、径:φ4mm、長さ:40mm)を使用し、外装下地材であるけい酸カルシウム板どうしの縦目地の表面(屋外側)に、目地板(5)を、縦目地が目地板(5)の中央に位置するように被せ、ねじにより留付けた。
また、外装下地材であるけい酸カルシウム板どうしの目地部の裏面(室内側)には、図4に示す形状のT字型形状の目地ジョイナー(4)を設置した。ここで、目地ジョイナー(4)は、厚さ0.27mmの溶融亜鉛めっき鋼板から構成されるものであった。
次に、外装材(6)として、JIS A 5430に規定されるスレート(波板)[大波板(長さ:1820mm、幅950mm、厚さ:6.3mm、山の数:7.5山、谷の深さ:35mm)]を、パッキン(7)として塩化ビニル系パッキンを、座金(8)としてステンレス製座金を、外装材留付金具(9)として六角タッピンねじ(ステンレス製、径:φ6mm、長さ:115mm)をそれぞれ用い、スレート(波板)をパッキン、座金を介して六角タッピングねじにより横胴縁に留付けた。なお、留付けピッチは、390mmとした。
上述のようにして本発明の建築物の防火構造の3200mm×3200mmの試験体を組み立てた。
【0025】
上記試験体を加熱炉に設置し、3050mm×3050mmの加熱面について
T=345log10(8t+1)+20[T=温度(℃)、t=時間(分)]の加熱条件により防火試験を行い、試験体の加熱面の裏面側に設置した9個の熱電対により裏面温度上昇を測定したところ、いずれの熱電対でも試験開始から30分経過後でも180K以下で、充分な防火性能を有していることが確認された。なお、目地部及び一般部の裏面に設置された熱電対により得られた温度変化を図5に示す。図5において、aは目地部の温度変化を示し、bは一般部の温度変化を示す。
【0026】
実施例2
外装下地材(2)として、JIS A5404に規定された物性を有する普通木毛セメント板(厚さ:20mm)を、外装下地材留付金具(3)として、ステンレス製ねじ(皿頭、径:φ4mm、長さ:50mm)を、外装材留付金具(9)として、六角タッピンねじ(ステンレス製、径:φ6mm、長さ:135mm)をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の構成を有する本発明の建築物の防火構造の試験体を組み立てた。
得られた試験体について、実施例1と同様の方法で防火試験を行ったところ、試験体の裏面温度上昇は、試験開始から30分経過後でも180K以下で、充分な防火性能を有していることが確認された。なお、目地部及び一般部の裏面に設置された熱電対により得られた温度変化を図6に示す。図6において、aは目地部の温度変化を示し、bは一般部の温度変化を示す。
【0027】
比較例1
目地板(5)を留付けない以外は、実施例1と同様の構成を有する建築物の防火構造の試験体を組み立てた。得られた試験体について、実施例1と同様の方法で防火試験を行ったところ、試験開始から22.5分経過後に、目地部が開き、温度が上昇し、27.5分後に試験を中止せざるを得なくなり、満足な防火性能を得ることはできなかった。なお、目地部の裏面に設置された熱電対により得られた温度変化を図7に示す。
【0028】
比較例2
目地板(5)を留付けない以外は、実施例2と同様の構成を有する建築物の防火構造の試験体を組み立てた。得られた試験体について、実施例1と同様の方法で防火試験を行ったところ、試験開始から20分経過後に、目地部が開き、温度が上昇し、26.5分後に試験を中止せざるを得なくなり、満足な防火性能を得ることはできなかった。なお、目地部の裏面に設置された熱電対により得られた温度変化を図8に示す。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のスレート(波板)を外装材として用いる防火構造は、建築物の外壁として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の防火構造において、外装材[スレート(波板)]を山留施工する場合の水平断面図である。
【図2】本発明の防火構造において、外装材[スレート(波板)]を山留施工する場合の鉛直断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の防火構造において、外装材[スレート(波板)]を山留施工する場合に使用可能な外装材留付金具の実施態様を示す図である。
【図4】目地ジョイナーの形状を示す図である。
【図5】実施例1で得られた本発明の建築物の防火構造における防火性能試験における目地部と一般部の温度変化を示す図である。
【図6】実施例2で得られた本発明の建築物の防火構造における防火性能試験における目地部と一般部の温度変化を示す図である。
【図7】比較例1で得られた建築物の防火構造における防火性能試験における目地部の温度変化を示す図である。
【図8】比較例2で得られた建築物の防火構造における防火性能試験における目地部の温度変化を示す図である。
【図9】建築基準法の防火性能試験・評価方法における加熱条件を示すグラフである。
【図10】従来のスレート(波板)を外装材として用いた建築物の防火構造を示す図である。
【図11】従来のスレート(波板)を外装材として用いた建築物の防火構造を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 横胴縁、2 外装下地材、3 外装下地材留付金具、4 目地ジョイナー、5 目地板、6、外装材 7 パッキン、 8 座金、9 外装材留付金具、9−a ねじ、9−b ナット、9−c フックボルト、9−d チャンネルボルト、10 目地板留付金具、11 構造躯体(柱)、21 横胴縁、22 外装下地材、23 外装下地材留付金具、24 ロックウール、25 内装材、26 スレート波板、27 パッキン、28 座金、29 外装材留付金具。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防火構造に関し、更に詳細には、スレート(波板)(ノンアスベスト波板)を外装材として用いた建築物の防火構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スレート(波板)は、工場や倉庫等の外装材として広く使用されてきた建築材料である。従来のスレート(波板)の原料構成は、マトリックス原料としてのセメントと、繊維原料としてのアスベスト(石綿)を主原料とするものであったが、最近のノンアスベスト化に伴い、繊維原料としてセルロースパルプ等の有機繊維が使用されるようになっている。 このようなスレート(波板)を外装材とする建築物の防火構造の防火性能を評価するための建築基準法の防火性能試験・評価方法における加熱条件は、従来、図9の曲線bで示されるものであった。この防火試験条件下で、スレート(波板)を外装材として用いた建築物の防火構造として図10に示すような防火構造が採用され、防火構造として認定されていた。即ち、図10に示す建築物の防火構造おいては、横胴縁(21)の屋外側に、厚さ15mm以上の木毛セメント板を外装下地材(22)として、外装下地材留付金具(23)により留付け、外装下地材(22)の屋外側に、標準的な厚さ(6.3mm)のスレート(波板)(26)を、パッキン(27)、座金(28)を介して外装材留付金具(29)により留付けている。
【0003】
しかしながら、平成12年の建築基準法改正により、防火性能試験・評価方法における加熱条件は、図9の曲線aに示されるように改正され、加熱条件がより厳しいものとなった。なお、この加熱条件は、ISO834による加熱曲線であり、T=345log10(8t+1)+20[式中、Tは温度(℃)、tは時間(分)をそれぞれ表す]で表され、防火構造は、30分間の試験中に裏面温度上昇が180K以下であると、合格とされる。このような試験条件下では、図10に示すような従来の防火構造では、外装下地材(22)の目地部が弱点となり、外装下地材(22)の裏面温度を判定温度以下に抑えて防火構造としての認定を得ることができなかった。外装下地材(22)の目地部の防火性能を高めるためには、(A)外装下地材の厚さを厚くする;(B)外装下地材を二層構造としてそれぞれの層の目地部が重ならないようにする;(C)外装下地材の小口に相欠加工を施す;(D)目地部の屋外側に加熱膨張材等を挿入する等の方策が考えられてきた。
【0004】
しかしながら、上述の(A)ないし(D)に記載するような方策は、施工コスト並びに材料コストの面で問題がある。そこで、現在、図11に示すように防火構造が採用され、防火構造として認定されている。即ち、図10に示す防火構造に加えて、横胴縁(21)の室内側に、厚さ9.5mm以上の石膏ボードを内装材(25)として配し、且つ外装下地材(22)と内装材(25)の間に形成される中空部に、ロックウール(24)を充填することにより、改正された建築基準法に基づく防火構造の性能を充足して、防火構造として認定を受けている(非特許文献1)。
【0005】
【非特許文献1】国土交通省 国住指第2074号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、横胴縁(21)の室内側に内装材(25)を留付け、更に、ロックウール(24)を充填することは、施工コスト及び施工効率の面で大きな問題点となる。そこで、防火性能に関してはアスベスト品よりも不利であるノンアスベスト品のスレート(波板)を外装材として使用し、且つ室内側に内装材を施工し、且つロックウール等を充填することなく、改正された建築基準法の防火構造の条件を満足することができる建築物の防火構造を提供することが望まれている。
【0007】
従って、本発明の目的は、従来の防火構造の弱点とされていた目地部の防火性能を施工コスト的に有利で且つ簡便な構造により向上させることができるスレート(波板)を外装材として用いた建築物の防火構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の建築物の防火構造は、JIS A 5430に規定されるスレート(波板)を外装材として使用してなる建築物の防火構造において、建築物の構造躯体に所定の間隔で設置された横胴縁の屋外側に、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板と同等の物性を有し且つ少なくとも15mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板、またはJIS A 5404に規定される物性を有し且つ少なくとも20mm以上の厚さを有する木毛セメント板から選択される外装下地材を留付け、前記外装下地材どうしの目地部の屋外側に、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板またはこれと同等の物性を有する少なくとも6mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板からなる目地板を留付け、前記外装下地材及び目地板上に、前記スレート(波板)を留付けることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の建築物の防火構造は、外装下地材が、外装下地材留付金具により横胴縁に留付けられていることを特徴とする。
【0010】
更に、本発明の建築物の防火構造は、目地板が、目地板留付金具により留付けられていることを特徴とする。
【0011】
更に、本発明の建築物の防火構造は、外装下地材どうしの目地部の室内側にT字型形状の目地ジョイナーが設置されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の建築物の防火構造は、スレート(波板)が、外装材留付金具により横胴縁に留付けられていることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の建築物の防火構造は、外装材留付金具が、ねじ、フックボルト及びナット、またはチャンネルボルト及びナットから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の建築物の防火構造によれば、防火性能に関してはアスベスト品よりも不利であるノンアスベスト品のスレート(波板)を外装材として使用し、従来の防火構造の弱点とされていた目地部の防火性能を施工コスト的に有利で且つ簡便な構造により向上させることができるという利点を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここで、本明細書に規定する「JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板」とは、原料が石灰質原料、けい酸質原料、石綿以外の繊維並びに混和材料から構成され、見掛け密度:0.6g/cm3以上0.9g/cm3未満、曲げ強さ:10.0N/mm2以上、吸水による長さ変化率:0.15%以下、熱伝導率:0.18W/m・K以下、難燃性:難燃1級を有するけい酸カルシウム板を意味するものである。
【0016】
また、「JIS A5404に規定された物性を有し且つ少なくとも20mm以上の厚さを有する木毛セメント板」とは、木質原料の最大長さが450mm以下で、製品のかさ比重が0.7以上の硬質木毛セメント板であって、例えば厚さ20mmで、曲げ破壊荷重:800N以上、たわみ:5mm以下、難燃性:難燃2級を有するもの並びに木質原料の最大長さが450mm以下で、製品のかさ比重が0.4以上0.7未満の普通木毛セメント板であって、例えば厚さ20mmで、曲げ破壊荷重:500N以上、たわみ:9mm以下、熱抵抗:0.18m2・K/W以上、難燃性:難燃2級を有するものを意味するものである。
【0017】
更に、「JIS A 5430に規定されるスレート(波板)」とは、原料がセメント、石綿以外の繊維並びに混和材料から構成され、厚さ:6.3±0.6mm、曲げ破壊荷重:1470N以上、吸水率:30%以下、透水性:裏面に水滴が生じてはならない、難燃性:難燃1級のスレート波板(小波)並びに曲げ破壊荷重:3920N以上、吸水率:30%以下、透水性:裏面に水滴が生じてはならない、難燃性:難燃1級のスレート波板(大波)を意味するものである。なお、「小波」とは、山の数:11.5山、谷の深さ:15mm以上のものであり、「大波」とは、山の数:7.5山、谷の深さ:35mm以上のものである。また、スレート(波板)は、表面に塗膜層(化粧層)を設けたものも使用することができる。なお、スレート(波板)は、例えばマトリックス原料としてセメントを使用し、繊維原料としてセルロースパルプを使用し、更に、ビニロン等の合成繊維やカーボン繊維等を1種または2種以上併用する。特に、カーボン繊維の併用は、スレート(波板)の防火性能を向上させる上で好適である。また、必要に応じてウォラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム粉末、珪石粉等の充填材やシリカヒューム等の混和材を使用し、抄造法等の任意の公知の方法により製造することができる。
【0018】
次に、本発明の建築物の防火構造を図により説明する。
図1は、本発明の建築物の防火構造において、外装材[スレート(波板)]を山留施工する場合の水平断面図であり、図2は、鉛直断面図である。横胴縁(1)は、構造躯体(柱)(11)に取り付けられた横胴縁取付材(図示せず)により構造躯体(柱)(11)に取り付けられている。横胴縁(1)には、外装下地材(2)が外装下地材留付金具(3)により留付けられている。
ここで、横胴縁(1)としては、例えばJIS G 3350に規定される一般構造用軽量形鋼を用いることができる。また、外装下地材(2)としては、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板と同等の物性を有し且つ少なくとも15mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板、またはJIS A 5404に規定される物性を有し且つ少なくとも20mm以上の厚さを有する木毛セメント板を使用する。ここで、外装下地材(2)の厚さが上記条件未満であると、所定の防火性能を得られなくなることがあるために好ましくない。なお、外装下地材(2)の厚さの上限は、性能の面からは特に限定されるものではないが、防火構造の厚さが厚くなるに伴い材料コストも増加するため、性能面とコストの兼ね合いで自ずと決定される。また、外装下地材留付金具(3)としては、鉄製またはステンレス製のねじ、例えばドリルねじ、タッピンねじ等のねじ類を使用することができる。
【0019】
次に、外装下地材(2)のどうしの縦目地の表面(屋外側)には、目地板(5)を、縦目地が目地板(5)の中央に位置するように被せ、目地板留付金具(10)により留め付ける。ここで、目地板(5)は、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板またはこれと同等の物性を有する少なくとも6mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板から構成される。目地板(5)の厚さが前記条件を下回ると、所定の防火性能が得られなくなることがある。また、目地板(5)の厚さの上限値は、性能の面からは特に限定されるものではないが、防火構造の厚さが厚くなるに伴い材料コストも増加するため、性能面とコストの兼ね合いで自ずと決定される。更に、目地板の幅は、60〜300mmの範囲内であることが好ましい。ここで、目地板の幅が60mm未満であると、充分な防火性能が得られなかったり、施工性が低下するために好ましくなく、また、300mmを超えても、それに見合った性能の向上が得られず、コストの上昇を招くために好ましくない。更に、目地板留付金具(10)としては、鉄製またはステンレス製のねじ、例えばドリルねじ、タッピンねじ等のねじ類を使用することができる。
【0020】
なお、外装下地材どうしの目地部の外装下地材(2)の裏面(室内側)には、T字型形状の目地ジョイナー(4)を設置しておくこともできる。ここで、目地ジョイナー(4)は、厚さ0.27mm以上の溶融亜鉛めっき鋼板、塗装溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板、塗装溶融亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板、溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、塗装溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板等から構成することができる。なお、目地ジョイナー(4)としては、例えば図4に示すような形状を有するものを使用することができる。
【0021】
次に、外装材(6)をパッキン(7)、座金(8)を介して外装材留付金具(9)により横胴縁(1)に留付ける。ここで、外装材(6)としては、JIS A 5430に規定されるスレート(波板)を使用することができる。また、外装材留付金具(9)としては、例えばねじ、フックボルト及びナット、またはチャンネルボルト及びナット等を用いることができる。図3(a)には、外装材留付金具(9)としてねじ(9−a)を使用した場合を示す。この場合には、ねじ(9−a)に、パッキン(7)及び座金(8)を通した上で、外装材(6)の表面から外装材(6)、外装下地材(2)等を貫通させて横胴縁(1)に留付ける。なお、ねじ(9−a)としては、鉄製またはステンレス製の例えばタッピンねじのねじ山をもつドリルねじ、ドリリングタッピンねじ、すりわり付きタッピンねじ、十字穴付きタッピンねじ、六角タッピンねじ、フランジ付き六角タッピンねじ、ヘクキロビュラ穴付きタッピンねじ、平座金組込みタッピンねじ等を使用することができる。また、パッキン(7)としては、例えばアスファルト含浸羊毛フェルト、アスファルト含浸牛毛フェルト、羊毛フェルト、牛毛フェルト、ポリエチレン系パッキン、塩化ビニル系パッキン、ポリスチレン系パッキン等を使用することができる。更に、座金(8)としては、鉄製またはステンレス製のものを使用することができる。
【0022】
また、図3(b)には、外装材留付金具(9)としてナット(9−b)とフックボルト(9−c)を使用した場合を示す。更に、図3(c)には、外装材留付金具(9)としてナット(9−b)とチャンネルボルト(9−d)を使用した場合を示す。これらの場合には、フックボルト(9−c)またはチャンネルボルト(9−d)の先端(屈曲部)を横胴縁(1)に引掛け、外装材(6)に予め設けた孔にフックボルト(9−c)またはチャンネルボルト(9−d)の他端を通してパッキン(7)、座金(8)及びナット(9−b)で押さえて留付ける。ここで、ナット(9−b)としては、鉄製またはステンレス製のものを使用することができる。
なお、外装材留付金具(9)の留付け位置は、1横胴縁あたり2本以上とすれば良い。また、外装材(6)の横方向、縦方向とも重なる部分は、重ねの中間層に位置する外装材のみ、角部の切断(重ねによって生じたすき間を小さくするための措置)を行うことができる。また、外装材(6)、外装下地材(2)並びに目地板(5)で区画される空間は、断熱層として作用する。
【0023】
上記のように、図1ないし3は、外装材として使用されるスレート(波板)を山留施工する場合を示すものであるが、本発明の建築物の防火構造はこれに限定されるものではなく、外装材として使用されるスレート(波板)を谷留施工することによっても本発明の建築物の防火構造を得ることもできることは勿論である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明のスレート(波板)を外装材として用いる建築物の防火構造を実施例により更に説明する。
実施例1
図1及び2に示す建築物の防火構造において、横胴縁(1)として、C−100×50×20×2.3mmを使用し、構造躯体(柱)(11)に相当するミゾ形鋼より構成される試験体用枠に865mmの間隔で取り付けた。次に、外装下地材(2)としてJIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板の(厚さ15mm)を使用し、外装下地材留付金具(3)としてステンレス製ねじ(皿頭、径:φ4mm、長さ:40mm)を使用し、前記横胴縁に、けい酸カルシウム板をねじにより留付けた。なお、留付けピッチは、横方向303mm、縦方向865mmとした。
次に、目地板(5)としてJIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板(厚さ6mm、幅220mm)を使用し、目地板留付金具(10)としては、ステンレス製ねじ(皿頭、径:φ4mm、長さ:40mm)を使用し、外装下地材であるけい酸カルシウム板どうしの縦目地の表面(屋外側)に、目地板(5)を、縦目地が目地板(5)の中央に位置するように被せ、ねじにより留付けた。
また、外装下地材であるけい酸カルシウム板どうしの目地部の裏面(室内側)には、図4に示す形状のT字型形状の目地ジョイナー(4)を設置した。ここで、目地ジョイナー(4)は、厚さ0.27mmの溶融亜鉛めっき鋼板から構成されるものであった。
次に、外装材(6)として、JIS A 5430に規定されるスレート(波板)[大波板(長さ:1820mm、幅950mm、厚さ:6.3mm、山の数:7.5山、谷の深さ:35mm)]を、パッキン(7)として塩化ビニル系パッキンを、座金(8)としてステンレス製座金を、外装材留付金具(9)として六角タッピンねじ(ステンレス製、径:φ6mm、長さ:115mm)をそれぞれ用い、スレート(波板)をパッキン、座金を介して六角タッピングねじにより横胴縁に留付けた。なお、留付けピッチは、390mmとした。
上述のようにして本発明の建築物の防火構造の3200mm×3200mmの試験体を組み立てた。
【0025】
上記試験体を加熱炉に設置し、3050mm×3050mmの加熱面について
T=345log10(8t+1)+20[T=温度(℃)、t=時間(分)]の加熱条件により防火試験を行い、試験体の加熱面の裏面側に設置した9個の熱電対により裏面温度上昇を測定したところ、いずれの熱電対でも試験開始から30分経過後でも180K以下で、充分な防火性能を有していることが確認された。なお、目地部及び一般部の裏面に設置された熱電対により得られた温度変化を図5に示す。図5において、aは目地部の温度変化を示し、bは一般部の温度変化を示す。
【0026】
実施例2
外装下地材(2)として、JIS A5404に規定された物性を有する普通木毛セメント板(厚さ:20mm)を、外装下地材留付金具(3)として、ステンレス製ねじ(皿頭、径:φ4mm、長さ:50mm)を、外装材留付金具(9)として、六角タッピンねじ(ステンレス製、径:φ6mm、長さ:135mm)をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の構成を有する本発明の建築物の防火構造の試験体を組み立てた。
得られた試験体について、実施例1と同様の方法で防火試験を行ったところ、試験体の裏面温度上昇は、試験開始から30分経過後でも180K以下で、充分な防火性能を有していることが確認された。なお、目地部及び一般部の裏面に設置された熱電対により得られた温度変化を図6に示す。図6において、aは目地部の温度変化を示し、bは一般部の温度変化を示す。
【0027】
比較例1
目地板(5)を留付けない以外は、実施例1と同様の構成を有する建築物の防火構造の試験体を組み立てた。得られた試験体について、実施例1と同様の方法で防火試験を行ったところ、試験開始から22.5分経過後に、目地部が開き、温度が上昇し、27.5分後に試験を中止せざるを得なくなり、満足な防火性能を得ることはできなかった。なお、目地部の裏面に設置された熱電対により得られた温度変化を図7に示す。
【0028】
比較例2
目地板(5)を留付けない以外は、実施例2と同様の構成を有する建築物の防火構造の試験体を組み立てた。得られた試験体について、実施例1と同様の方法で防火試験を行ったところ、試験開始から20分経過後に、目地部が開き、温度が上昇し、26.5分後に試験を中止せざるを得なくなり、満足な防火性能を得ることはできなかった。なお、目地部の裏面に設置された熱電対により得られた温度変化を図8に示す。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のスレート(波板)を外装材として用いる防火構造は、建築物の外壁として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の防火構造において、外装材[スレート(波板)]を山留施工する場合の水平断面図である。
【図2】本発明の防火構造において、外装材[スレート(波板)]を山留施工する場合の鉛直断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の防火構造において、外装材[スレート(波板)]を山留施工する場合に使用可能な外装材留付金具の実施態様を示す図である。
【図4】目地ジョイナーの形状を示す図である。
【図5】実施例1で得られた本発明の建築物の防火構造における防火性能試験における目地部と一般部の温度変化を示す図である。
【図6】実施例2で得られた本発明の建築物の防火構造における防火性能試験における目地部と一般部の温度変化を示す図である。
【図7】比較例1で得られた建築物の防火構造における防火性能試験における目地部の温度変化を示す図である。
【図8】比較例2で得られた建築物の防火構造における防火性能試験における目地部の温度変化を示す図である。
【図9】建築基準法の防火性能試験・評価方法における加熱条件を示すグラフである。
【図10】従来のスレート(波板)を外装材として用いた建築物の防火構造を示す図である。
【図11】従来のスレート(波板)を外装材として用いた建築物の防火構造を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 横胴縁、2 外装下地材、3 外装下地材留付金具、4 目地ジョイナー、5 目地板、6、外装材 7 パッキン、 8 座金、9 外装材留付金具、9−a ねじ、9−b ナット、9−c フックボルト、9−d チャンネルボルト、10 目地板留付金具、11 構造躯体(柱)、21 横胴縁、22 外装下地材、23 外装下地材留付金具、24 ロックウール、25 内装材、26 スレート波板、27 パッキン、28 座金、29 外装材留付金具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS A 5430に規定されるスレート(波板)を外装材として使用してなる建築物の防火構造において、建築物の構造躯体に所定の間隔で設置された横胴縁の屋外側に、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板と同等の物性を有し且つ少なくとも15mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板、またはJIS A 5404に規定される物性を有し且つ少なくとも20mm以上の厚さを有する木毛セメント板から選択される外装下地材を留付け、前記外装下地材どうしの目地部の屋外側に、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板またはこれと同等の物性を有する少なくとも6mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板からなる目地板を留付け、前記外装下地材及び目地板上に、前記スレート(波板)を留付けることを特徴とする建築物の防火構造。
【請求項2】
外装下地材は、外装下地材留付金具により横胴縁に留付けられている、請求項1記載の建築物の防火構造。
【請求項3】
目地板は、目地板留付金具により留付けられている、請求項1記載の建築物の防火構造。
【請求項4】
外装下地材どうしの目地部の室内側にT字型形状の目地ジョイナーが設置されている、請求項1記載の建築物の防火構造。
【請求項5】
スレート(波板)は、外装材留付金具により横胴縁に留付けられている、請求項1記載の建築物の防火構造。
【請求項6】
外装材留付金具は、ねじ、フックボルト及びナット、またはチャンネルボルト及びナットから構成される、請求項5記載の建築物の防火構造。
【請求項1】
JIS A 5430に規定されるスレート(波板)を外装材として使用してなる建築物の防火構造において、建築物の構造躯体に所定の間隔で設置された横胴縁の屋外側に、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板と同等の物性を有し且つ少なくとも15mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板、またはJIS A 5404に規定される物性を有し且つ少なくとも20mm以上の厚さを有する木毛セメント板から選択される外装下地材を留付け、前記外装下地材どうしの目地部の屋外側に、JIS A 5430に規定されるタイプ2の0.8けい酸カルシウム板またはこれと同等の物性を有する少なくとも6mm以上の厚さを有するけい酸カルシウム板からなる目地板を留付け、前記外装下地材及び目地板上に、前記スレート(波板)を留付けることを特徴とする建築物の防火構造。
【請求項2】
外装下地材は、外装下地材留付金具により横胴縁に留付けられている、請求項1記載の建築物の防火構造。
【請求項3】
目地板は、目地板留付金具により留付けられている、請求項1記載の建築物の防火構造。
【請求項4】
外装下地材どうしの目地部の室内側にT字型形状の目地ジョイナーが設置されている、請求項1記載の建築物の防火構造。
【請求項5】
スレート(波板)は、外装材留付金具により横胴縁に留付けられている、請求項1記載の建築物の防火構造。
【請求項6】
外装材留付金具は、ねじ、フックボルト及びナット、またはチャンネルボルト及びナットから構成される、請求項5記載の建築物の防火構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−277827(P2007−277827A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102095(P2006−102095)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【Fターム(参考)】
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