説明

建築物を丸ごと遮熱、断熱する工法及び建築物

【課題】従来、建築物に関して屋根、天井、外壁など個別の遮熱、断熱に関する工法があるが建築物全体を考慮しての工法がなくそれぞれの工法を組み合わせて施工する状態にあった。さらに床下の空間を考慮していないため寒冷地においては水道配管の凍結が懸念されるところであった、
【解決手段】建築物躯体の屋外側と、該基礎外周部分の屋内側と、該床下防湿コンクリートの上面に前記アルミ熱線反射材を張り、該その屋内側に現場発泡硬質ウレタンを吹き付け施工する事によって建築物内部と床下空間の暖房、冷房効果のアップと床下の水道配管の凍結不安の解消をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室内及び床下を含む建築物全体を遮熱、断熱施工する施工方法及び遮熱、断熱建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物に関して屋根、天井、外壁など個別の遮熱、断熱に関する工法がある。しかし、床下空間の断熱、暖房が考慮されておらず、特に寒冷地においては冬季間の水道配管の凍結が懸念されるところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開 2007−138558
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の屋根構造では足場状態の悪い高所作業となるため積雪地域等に多くみられる急こう配屋根では危険を伴う。垂木上面に取り付けられたアルミ箔と樹脂系気泡シートの結合されたアルミ熱線反射材を、軒桁部分で垂木の両側面に沿って切断して垂れ下げる工程についても100m程度の建築物でさえ数十か所におよぶと共に切断ヵ所の気密テープによる補修も容易なものではない。前記アルミ熱線反射材は、通気胴縁を取り付け施工する際にシート内の気泡によって通気胴縁の浮き上がりや、取り付け不良などの不安定要素があり、それらを解決して強固な下地を作るには多大な労力が必要とされることになる。
【0005】
又、天井下地材の小屋裏側にアルミ箔と樹脂系気泡シートの結合されたアルミ熱線反射材を取り付け前記アルミ熱線反射材の室内側に現場発泡硬質ウレタン樹脂を吹き付け施工するとなっているが、碁盤目状の天井下地材を組み終えてから前記アルミ熱線反射材を取り付けるとなれば天井裏の空間は狭く作業員が乗る、又は密に組まれた天井下地材の間から作業するには弱すぎる下地であり非常に作業効率が悪く、下地を踏み抜くなどの危険が伴う。さらに壁の外周部には柱、間柱が有りその部分の前記アルミ熱線反射材はカッターナイフなどを用いて切り取り、外周の柱、間柱の屋外に取り付けられた前記アルミ熱線反射材と気密テープを用いて、その部分を補修する作業、さらに室内にも仕切り壁や、耐力壁が有り壁外周部と同様に非常に作業性が悪く多大な手間や費用が掛かることになる。
【0006】
文献1では床下の遮熱、断熱が考慮されておらず、寒冷地においては冬期間における床下の水道管の凍結や、1階床の暖房が懸念される所である
【0007】
本発明は建築物躯体の屋外側及び基礎の屋内側と床下の防湿コンクリートの上面にアルミ熱線反射材を取り付けその屋内側に現場発泡ウレタン材を吹き付け施工して、特許文献1で考慮されていなかった床下を含む建築物全体を遮熱、断熱施工して、特に寒冷地における床下の水道配管の凍結不安を解消し、対流熱対策、伝導熱対策、輻射熱対策、表面結露対策且つ作業性に優れた安全対策、及びコストダウンを可能にした遮熱、断熱工法と建築物を提供して、省エネ対策や住環境の改善、温熱環境の改善に貢献するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の解決手段は安全性に配慮し且つコストダウンを図りつつ遮熱断熱の効果を最良の状態で施工可能にした工法である。
建築物の小屋組、小屋梁間に樹脂製メッシュシートの両面にアルミ箔を貼ったアルミ熱線反射材(厚さ0.2mm)のたるみ防止用受け材及び補強材を取り付けその上面に前記アルミ熱線反射材を取り付け、該建築物外周部分の柱、及び間柱の屋外側に取り付けられた前記アルミ熱線反射材とアルミ製の気密テープで貼り合わせ、前記アルミ熱線反射材の屋内側に現場発泡の硬質ウレタン断熱材を吹き付け施工する方法である。これによって足場状態の悪い屋根上面での作業ではなく、小屋組み上面での作業となり、作業効率の向上とともに安全性も向上する。この場合前記アルミ熱線反射材の切断ヵ所及び補修箇所は小屋束部分数か所だけに減少して作業性が向上するうえに軒桁上部の垂木両側面の前記アルミ熱線反射材の切断も不要となる。
【0009】
本発明の第2の解決手段は、外壁部分においては、該建築物外周部分の柱、及び間柱の屋外側に前記アルミ熱線反射材を取り付け、前記アルミ熱線反射材の屋内側に現場発泡の硬質ウレタン断熱材を吹き付け施工する構築方法である。
前記アルミ熱線反射材には空気層が無いので屋外側の通気胴縁取り付けに際しても空気抜きの作業もなく通気胴縁の取り付け作業が容易になり、強固な下地が出来上がることになる。
【0010】
本発明の第3の解決手段は、特許文献1では1階床下の遮熱、断熱が考慮されてないが、本発明では、基礎外周部の内側と床下の防湿コンクリートの上面及び内部仕切り基礎の基礎外周部より屋内側1.0m以上の部分まで前記アルミ熱線反射材を貼り、その屋内側に現場発泡硬質ウレタン樹脂を吹き付け施工する事によってヒートブリッジの原因を抑制し解決しようとするものであり、床下空間を遮熱、断熱施工する事によって水道配管の凍結不安の解消と1階床の暖房を同時に可能にするものである。
【発明の効果】
【0011】
ここで使用する遮熱材は、ポリエチレン製で縦横2.5mmのメッシュシートの両面にアルミ箔が貼られ、重さはm2当たり140グラムと軽量で熱線反射率は95%と高く、腐食性は無い。引張強度は横方向655Kg/cm2,縦方向632Kg/cm2と強く、アルミ純度は99.35%です。市販品としては,株式会社ライフテックより販売されているサーモバリアスリムがあげられる。これにより夏季は太陽からの熱線を反射し建築物内部の温度上昇を抑え、エアコンの使用量を減らし、冬には暖房費を減らす効果があり、CO2削減に貢献します。高断熱化だけでは太陽から放射される熱線(電磁波)を止めることは、わずか10%程度にしかすぎませんが、前記アルミ熱線反射材と現場発泡吹き付け硬質ウレタンフォーム断熱材を合わせて使用する事によって、硬質ウレタンフォーム断熱材単体使用の場合に起こる屋内の“熱こもり現象”などを抑制し床下を含む建築物全体を遮熱、断熱施工して、特に寒冷地における床下の水道配管の凍結不安を解消し、対流熱対策、伝導熱対策、輻射熱対策、表面結露対策且つ作業性に優れた安全対策、及びコストダウンを可能にした遮熱、断熱工法と建築物を提供して、省エネ対策や住環境の改善、温熱環境の改善に貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】軒桁の加工方法
【図2】小屋組周りの施工方法
【図3】外壁部分の施工方法
【図4】基礎部分の施工方法
【図5】内部仕切り基礎部分の施工方法
【図6】入隅部分の施工方法
【図7】基礎平面図
【図8】建築物全体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施例を木造住宅在来工法の平屋建て及び総2階建て、一部2階建てを例にとって図面に基づき説明する。
軒桁の加工方法(図1)
従来は屋根垂木の取り付け位置決めなどの理由によって桁上面に屋根勾配に合わせた欠き込みを設けていた。この工法では前記アルミ熱線反射材取り付けの際、前記アルミ熱線反射材の破れや、カッターナイフによる切込みが必要不可欠となるため、軒桁上面を屋根勾配に合わせて欠きとる工法である。
従来のカッターナイフによる切込みとその後の気密テープを貼る工程に掛かる資材や人件費に比べれば、施工の容易さや労力の低減にも極めて有効であり、仕上がりの均一化にも繋がりコストダウンに大きな効果がある。
この方法では垂木取り付け位置の決定方法が心配されるが、母屋には垂木取り付け部分の欠き込みが有り垂木取り付け位置が決まっているので、垂木はその位置、間隔を保ったまま軒桁部分に伸びて来るため軒桁部分での垂木取り付け位置は容易に決定でき、確認のためにスケールなどを用いて計測するとさらに精度が増すことになる。
【0014】
小屋組み周りの施工方法。(図2)
軒桁、小屋梁、たるみ防止のための補強材の上面に、前記アルミ熱線反射材はタッカーなどを用いて取り付けるが、タッカーで留める間隔はおおむね10cm程度で良いが、現場発泡ウレタン材が構造材と前記アルミ熱線反射材の隙間に入り込んで後の作業に支障を来す様であれば、タッカーで留める間隔を狭くすれば良い。この場合タッカー留めした部分は専用のアルミテープを貼りつけておく。軒桁部分への前記アルミ熱線反射材の貼り付けは垂木取り付け前に実施するが、小屋周りで作業人が通れる程度の空間がある場所であれば垂木取り付け後でも施工できる。軒桁部分においては個々の垂木取り付け部分を欠きこむのではなく、軒桁の上面を屋根の勾配なりに切り取って前記アルミ熱線反射材を取り付け10cm程度垂れ下げておきます。
そうすることによりカッターナイフなどによる切込み作業の省略化や、個々の作業員による仕上げのバラつきが大幅に軽減できてコスト削減に繋がり、仕上がりの均一化にも結びつきます。この様にして取り付けられた前記アルミ熱線反射材の屋内側には現場発泡の硬質ウレタン断熱材を吹き付け施工する。
【0015】
小屋周り、妻部分
小屋周りにおいては小屋束部分にだけ、前記アルミ熱線反射材に切込みを入れ軒桁部分と同じように10cm程度垂れ下げておきます。
小屋束と前記アルミ熱線反射材の取り合い部分は専用のアルミテープを貼り気密を確保しておきます。
切り妻屋根、小屋外壁部の下地組の際は前記アルミ熱線反射材の上に間柱受け材を取り付け、その上に間柱を組みさらに防湿通気シートを張り、それから通気胴縁(厚さ15mm程度〜21mm程度)と外壁の張り付け(サイデイングなど)となります
【0016】
外壁部分(図3)
建築物外周部分の柱、間柱の屋外側へ前記アルミ熱線反射材を、タッカーを用いて横長にたるみやしわが出来ない様に取り付けていきます。
同じように、2段目、3段目と3cm程度重ね合わせ取り付けていき、最上部分で軒桁、小屋梁、たるみ防止のための補強材の上面から垂れ下がっている前記アルミ熱線反射材の下に重ね入れ、それぞれの重ね部分はアルミ製の気密テープを貼ります。窓などの開口部には雨水の侵入防止を考慮してアルミ製の気密テープを貼り万が一の場合に備えておきます。この様にして取り付けられた前記アルミ熱線反射材の屋内側には現場発泡の硬質ウレタン断熱材を吹き付け施工し、屋内側には内壁下地材さらに内壁仕上げ材を張って仕上げます。一方前記アルミ熱線反射材の屋外側には通気胴縁(厚さ15mm程度〜21mm程度)そして外壁張り付け(サイデイングなど)となります
【0017】
基礎部分(図4)
建築物外周の土台下に前記アルミ熱線反射材を敷き、屋外側には10cm程度伸ばしておき、建築物の屋外側に取り付けられた前記アルミ熱線反射材の下に重ね合わせてアルミ製の気密テープを貼ります。
一方基礎外周部土台下より屋内側に伸びてきた前記アルミ熱線反射材は基礎の内側に前記アルミ熱線反射材をスポット接着(接着剤を全面に塗布するのではなく、点状に塗布して張り付ける施工法で、接着剤塗布間隔は各方向15cm〜20cm程度とする)して床下の防湿コンクリート上面まで貼り付けさらに床下の防湿コンクリート上面では建築物外周部基礎より屋内側に1m以上の長さまで、前記アルミ熱線反射材をスポット接着方法にて貼り付けします。その両者の室内側に現場発泡の硬質ウレタン断熱材を吹き付け施工します。
建築物の内部仕切り基礎部分(図5)についても、建築物外周部基礎より屋内側に1m以上の長さまで、土台下に前記アルミ熱線反射材を敷き、その両面は仕切り基礎立ち上がり部分にスポット接着して床下の防湿コンクリート上面に貼り付けられている前記アルミ熱線反射材とアルミ製の気密テープで貼り繋ぎます。その両面には現場発泡の硬質ウレタン断熱材を吹き付け施工します。これらは基礎外周部分における外気からのヒートブリッジを抑制するためです。
建築物の遮熱、断熱区画の基礎部分で、基礎外周部より屋内側に1m以上まで遮熱、断熱施工を施しますが、残りの屋内側床下防湿コンクリート部分は地中の熱を取り入れるため遮熱、断熱施工はせずにそのままとします。
【0018】
一部2階建て建築物、入隅部分(図6)
軒桁、小屋梁、たるみ防止の為の補強材の上面に貼られた前記アルミ熱線反射材を2階外周部分の外壁下部、入隅部分で10cm程度立ち上げておきます。その上に2階外周部分の柱、間柱の屋外側にはりつけられた前記アルミ熱線反射材を重ね張りして外壁部分で記した様に作業を進めていきますが、2階壁外周部分の、1階屋根取り付け箇所には前記アルミ熱線反射材を1階の屋根垂木受け材取り付け前に取り付けておきます。
【0019】
一部2階建て建築物全体の断面図(図7)
基礎、外壁、一部2階建ての小屋周りと入隅部分、小屋周りに前記アルミ熱線反射材と現場発泡の硬質ウレタン断熱材を吹き付け施工して建築物全体を包み込んで遮熱、高断熱、高気密建築物が完成します。
【符号の説明】
【0020】
A−1 土台
A−2 柱、間柱
A−3 軒桁
A−4 胴差し
A−5 床梁
A−6 小屋梁
A−7 小屋束
A−8 母屋
AH アルミ熱線反射材
G−1 通気胴縁
G−2 通気層
G−3 外壁仕上げ材
K−1 基礎
K−2 防湿コンクリート
K−3 中仕切り基礎
N−1 内壁下地
N−2 内壁仕上げ材
S−1 アルミ熱線反射材受け材
S−2 補強材
UD 現場吹き付けウレタンフォーム
Y−1 屋根仕上げ材
Y−2 野地板
Y−3 屋根垂木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物小屋組、小屋梁間に樹脂製メッシュシートの両面にアルミ箔を貼ったアルミ熱線反射材の受け材及び補強材を取り付ける工程と、該その上面に、前記アルミ熱線反射材を取り付ける工程と、該前記アルミ熱線反射材同士をアルミテープで貼り繋ぐ工程と、該建築物外周部の土台、柱、間柱、軒桁、妻梁の屋外側に前記アルミ熱線反射材を取り付け、その上に通気胴縁を取り付けその上に外壁仕上げ材を取り付ける工程と、該土台下より立ち上げられた前記アルミ熱線反射材及び軒桁及び妻梁上部より垂れ下げられた前記アルミ熱線反射材同士をアルミテープで貼り繋ぐ工程、該その小屋組、柱、間柱で構成された区画間隔内の、屋内側に現場発泡の硬質ウレタン断熱材を吹き付け施工する工程と内壁下地材の上に内壁仕上げ材を張る工程、
建築物の外周部土台下に前記アルミ熱線反射材を敷き外壁部分屋外側に取り付けられた前記アルミ熱線反射材の下に重ね合わせてアルミ製の気密テープで貼り合わせ、該基礎外周部土台下より屋内側に伸びてきた前記アルミ熱線反射材は基礎の内側にスポット接着して床下の防湿コンクリート上面まで貼り付け、さらに床下の防湿コンクリート上面では建築物外周部基礎より屋内側に1m以上の長さまで、前記アルミ熱線反射材をスポット接着して敷き、その両者の屋内側に現場発泡の硬質ウレタン断熱材を吹き付け施工し、
該建築物の内部仕切り基礎部分も、建築物外周部基礎より屋内側に1m以上の長さまで、土台下に前記アルミ熱線反射材を敷き、その両面は仕切り基礎立ち上がり部分にスポット接着方法で貼り付け、床下の防湿コンクリート上面に貼り付けられている前記アルミ熱線反射材とアルミ製の気密テープで貼り繋ぎ、該建物内部の仕切り基礎部分では、基礎外周部より屋内側両面で、1m以上の長さまでの部分には現場発泡の硬質ウレタン断熱材を吹き付け施工する工法。この一連の工程を含む、特徴ある建築物を丸ごと遮熱、断熱施工する工法及び建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−172513(P2012−172513A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54751(P2011−54751)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(511064959)
【Fターム(参考)】