説明

建築用部材および建築構造物

【課題】真空断熱材を適用した断熱性能に優れ、かつ長期的な性能安定性を有し、安価で容易に施工でき、なおかつリサイクル性にも優れた断熱壁を提供する。
【解決手段】真空断熱材および保護材を組み合わせた断熱パネルからなる建築用部材であって、前記真空断熱材はグラスウールの芯材と、ゲッター剤と、前記芯材および前記ゲッター剤を収納するガスバリア性の外包材とを備え、前記外包材の内部を真空封止した真空断熱材において、真空断熱材の屈曲部では平坦部以上の厚さの保護材を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性を有する建築用部材および建築構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化を防止するため、家電製品や産業機器並びに住宅等の建築構造物の省エネルギー化対策として、近年では特に建築物に対する高断熱化が求められている。その際、断熱層の厚さを厚くして建築用部材の断熱パネルの性能向上を図ろうとすると、設置スペースの確保や施工方法の問題が生じてくる。そこで、グラスウールや樹脂フォームに比べ断熱性能に優れた真空断熱材を用いた断熱パネルが提案されている。真空断熱材はガスバリア性を有する外包材中に断熱性に優れた芯材を入れ、内部を真空にすることで作製される。
【0003】
従来の真空断熱材を用いた断熱素材として、特許文献1では真空断熱材をカバー部材で包んだ断熱素材が示されており、カバー部材として軟質発泡樹脂、繊維状、エラストマーなどが挙げられている。真空断熱材を軟状のカバー部材で包むと衝撃や摩擦などによりラミネートフィルム(外包材)に傷が付き難くなるので、真空断熱材の破袋を防止することができ、断熱性能の長期信頼性が向上する。
【0004】
また、従来の真空断熱材を適用した建築物の断熱壁として、特許文献2では、真空断熱材を使用した断熱モジュールとそれを適用した断熱壁が示されている。図6は、特許文献2に記載された建築物の壁の断面図を示す。断熱モジュール23は、四角形の板状体である真空断熱材21と真空断熱材の各辺に取り付けられたフレーム24を有し、フレーム24の外周に連結用の結合部25が設けられている。断熱モジュール23は、内壁22と外壁27の間に設けられた柱28によって支持され、柱28の両側面には断熱モジュール23の結合部25を受け入れ断熱モジュール23を支持する溝26が設けられている。このように、真空断熱材21を断熱モジュール化することにより、真空断熱材21の壁への施工を容易にし、壁を厚くすることなく断熱性に優れた建築物の壁を構成している。
【0005】
また、特許文献3では、隣接する真空断熱材を封止用のミミ部で重ね合わせた状態で、壁部を通過しようとする水蒸気の流れの上流側に真空断熱材を配置した断熱壁が示されている。図7は、特許文献3に記載された建築物の壁の断面図を示す。隣接する真空断熱材31同士は、周縁のミミ部36を重ね合わせた状態で、図7の下方から上方に壁部を通過しようとする水蒸気の流れの上流側の内壁32に接する位置に配置されている。ミミ部36は柱34の位置に配置され、真空断熱材31と柱34に囲まれた空間内には繊維系または発泡樹脂系の断熱材33が充填されている。このように配置することにより、断熱材33の内部に結露を生じることなく、断熱性の低下や断熱材の耐久性低下を防止している。
【0006】
また、特許文献4では、真空断熱材のヒレ状の周縁部を折り曲げて柱側面に接するように配置する固定方法が示されている。図8は、特許文献4に記載された従来の建築物の壁の断面図を示す。40は断熱材、42は通気層、43は外装材、45は内装材である。真空断熱材41は、断熱性を持たないヒレ状の周縁部46を折り曲げて柱44の側面に接するように設置されている。真空断熱材41を柱44との間に発生する摩擦によって保持させて固定するので、真空断熱材41を柱44の間に押し込むという簡単な施工にて、真空断熱材を柱間に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−76100号公報
【特許文献2】特開2003−27622号公報
【特許文献3】特開2008−255733号公報
【特許文献4】特開2008−261221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、真空断熱材を軟質発泡樹脂、繊維状、エラストマーなどのカバー部材で包んでおり、主な用途として布団・マット等身体に接触する用途を想定したもので、建築物への直接適用は困難である。さらに断熱素材を曲げる場合は芯材のない部分を設ける必要があるが、芯材のない部分では真空断熱効果は発揮されず全体としての断熱性能が低下する。
【0009】
特許文献2に示す断熱壁では、連結用部品を使用するため高コスト化する。また、柱にモジュールのフレーム連結部を受け入れるための溝を設ける必要があるため、施工に手間がかかる。
【0010】
特許文献3のように、隣接する真空断熱材をミミ部同士で重ね合わせた状態で配置した断熱壁では、真空断熱材の芯材が入っている部分が柱の側面部分を覆っていないため、柱の側面部分からの熱漏洩を充分抑止できない。
【0011】
特許文献4のように、真空断熱材のヒレ状の周縁部を折り曲げて柱側面に接するように配置する断熱壁では、真空断熱材の芯材が入っている部分が柱の側面部分を覆っていないため、柱の側面部分における熱漏洩を充分抑止できない。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、断熱性能に優れ、かつ長期的な性能安定性を有し、安価で容易に施工でき、なおかつリサイクル性にも優れた真空断熱材を適用した建築用部材のよい建築構造物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、真空断熱材および該真空断熱材外周を被覆した保護材を有する断熱パネルを備えた建築用部材であって、前記真空断熱材は芯材と、ゲッター剤と、前記芯材および前記ゲッター剤を収納するガスバリア性の外包材とを備え、該外包材の内部を真空封止した真空断熱材において、前記真空断熱材の屈曲部では真空断熱材の平坦部以上の厚さの保護材を有することを特徴とする。
【0014】
また、建築用部材において、前記真空断熱材の芯材はグラスウールからなることを特徴とする。
【0015】
また、建築用部材において、前記真空断熱材の平坦部における保護材の厚さを、1.0mm以上2.00mm以下としたことを特徴とする。
【0016】
また、建築用部材において、前記真空断熱材の屈曲部における保護材の厚さを、2.0mm以上8.0mm以下としたことを特徴とする。
【0017】
また、建築用部材において、前記真空断熱材を覆う保護材として、圧縮永久歪み(70℃、22h)が54%以下およびメルトマスフローレート(以下MFRと略記) (230℃、49N)が3g/10分以上の高分子材料を用いることを特徴とする。
【0018】
また、建築用部材において、前記真空断熱材を保護材で被覆した断熱パネルの熱伝導率が10mW・m-1・K-1以下であることを特徴とする。
【0019】
また、建築用部材において、前記保護材がスチレン系熱可塑性エラストマーまたはオレフィン系熱可塑性エラストマーのいずれか一方を含むことを特徴とする。
【0020】
また、建築用部材において、該建築用部材は釘打ち可能部を有することを特徴とする。
【0021】
また、建築用部材において、該建築用部材は建築物の少なくとも内壁と隣接する2本の支持材に囲まれた空間内で前記支持材の側面および前記内壁面を被覆するように配置されたことを特徴とする。
【0022】
さらに、上記建築用部材を住宅等の断熱施工面に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、真空断熱材の外周に保護材を設け輸送時等の真空断熱材の外包材の損傷を防ぐとともに、真空断熱材の屈曲部に他の平坦部よりも厚く保護材を配しているため屈曲部での性能劣化が少ない。
【0024】
また、真空断熱材の表面に室温で弾性を有する層が存在することにより、内壁と隣接する2本の支持材に囲まれた空間内に容易に周囲と隙間無く施工することができ、熱漏洩・湿気の移動を防止することができ、保護材の形状復元力により真空断熱材と周囲の壁面などとの間に摩擦力が生じ、施工後の位置ずれも防止される。
【0025】
さらに、建築物を解体する際、真空断熱材の保護材を容易にリサイクルできるため、廃棄物の減量化・資源の再利用にも貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の断熱パネル屈曲部の断面図である。
【図2】本発明の実施例1を示す建築物の断熱施工面の断面図である。
【図3】本発明の断熱パネルの端部断面を拡大した模式図である。
【図4】本発明の実施例26を示す建築構造物の垂直断面図である。
【図5】本発明の実施例と比較例を示す説明図である
【図6】従来例における建築物の壁の水平断面図である。
【図7】従来例における建築物の壁の水平断面図である。
【図8】従来例における建築物の壁の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の真空断熱材は、外周を保護材が覆っており、その保護材の厚さが真空断熱材の屈曲部においては平坦部以上の厚さとなっていることを特徴とする。
〔芯材〕
まず、真空断熱材の芯材は内外の気圧差による圧縮力に耐えその形状を保持するスペーサの機能を持ち、圧縮力を受けても内部に充分な空隙を確保できるグラスウールの芯材が好ましく、熱伝導率が約2.0mW・m-1・K-1程と優れた真空断熱材である。真空断熱材は初期の熱伝導率が非常に優れる。
【0028】
ウレタン発泡体等の従来用いられている断熱材では熱伝導率が約20mW・m-1・K-1以上と高く、真空断熱材に比べ約10倍以上断熱性能が劣る。
【0029】
真空断熱材の芯材は、内外の気圧差による圧縮応力下でも内部に充分な空隙が確保され熱伝導率を低減できる平均繊維径が約3〜6μmのグラスウールを用い、約250℃の乾燥熱処理で吸着水分を除去したものが好ましい。これに対し、グラスウールの繊維径が大きいと繊維の接触が点接触から線接触に近くなり、接触面積の増大により熱伝導率が高くなるので好ましくない。また、繊維径が極細になると取扱いが不便となるうえに、グラスウールが非常に高価となるので好ましくない。グラスウールに関してはこの他、アウトガスの発生により内部の真空度が低下し熱伝導率が高くなるのを避けるため、バインダー等を含まないものが好ましい。なお、平均繊維径の測定については、走査型電子顕微鏡を用い視野内に約10本の繊維を含む倍率下で繊維直径を測定し平均値を求めた。
〔外包材〕
外包材のラミネートフィルムを透過あるいは溶着部から浸入するガスや真空断熱材の内部に付着する水分等により、真空度が徐々に低下して断熱性能もそれにつれて低下するためにハイバリア性の外包材を用いることが好ましい。冷蔵庫等では、省エネルギー化のために真空断熱材が多く用いられており、真空断熱材の長期信頼性は、約10〜15年を想定した劣化試験を行なっているが、時間的に制約があるため電気部品の寿命を推定するアレニウスプロットを用いて評価している。
【0030】
また、ハイバリア性を有する外包材としては、内部に気密部を設け芯材を覆うため、減圧封止で芯材の形状を反映する材質が好ましい。このような外包材として、最内層に熱溶着層を有し、中間層にガスバリア層としてのアルミニウム箔またはアルミニウム蒸着層を有し、最外層に表面保護層を有するラミネートフィルムが適用できる。但し、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着層は熱の良導体であるため、ヒートブリッジによる断熱性能の低下を抑制するために厚さを6μm以下とすることが好ましい。
【0031】
以上を踏まえ、具体例として最内層に高密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリプロピレン等のフィルム、中間層にアルミニウム蒸着層を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、最外層に耐突き刺し性に優れたポリアミドフィルムを用いたプラスチックラミネートフィルムが挙げられる。
〔ゲッター剤〕
また、真空断熱材内部の真空度の維持のためゲッター剤を使用した。ゲッター剤は二酸化炭素、酸素、窒素等のガス、水蒸気を吸収するものであれば良く、具体的にはドーソナイト、ハイドロタルサイト、金属水酸化物、モレキュラーシーブス、シリカゲル、酸化カルシウム、ゼオライト、疎水性ゼオライト、活性炭等が利用できる。
【0032】
次に、真空断熱材は作製直後には平板形状を有しており、必要に応じて一部屈曲させて使用する場合があるが、屈曲部においては内周側に圧縮応力、外周側に引張応力が働き、特に外周側で過大な引張応力が作用すると、内部の芯材の断裂や外周側の外包材の破袋が生じ断熱性能の低下につながる。
〔保護材〕
本発明ではこの屈曲部により厚く保護材を配することにより、屈曲部の耐久性・性能安定性を向上させることができる。本発明の真空断熱材外周に位置する保護材の厚さは、保護材も含めた断熱パネルの熱伝導率を低減するため平坦部では2mm以下が好適である。保護材の厚さが薄いほど断熱パネル全体の熱伝導率が低下するが、保護材の厚さが薄すぎると保護材としての機能を充分果たさなくなるため、平坦部保護材の厚さは1mm以上2mm以下であればさらに好ましい。
【0033】
屈曲部については平坦部以上の保護性能を発揮させるため2mm厚さ以上が好適である。但し、厚すぎると施工の際に断熱パネルの設置面からの浮き上がりが生じやすくなるため、最大でも8mm以下であればさらに好ましい。
【0034】
本発明の保護材は圧縮永久歪み(70℃、22時間)が54%以下であることを特徴とする。保護材として室温で弾性を有する層を設けているため、仮に断熱パネルの外部から硬い鋭利な物体が押し当てられても、保護材の無い場合に比べて真空断熱材の真空が破られる危険性が低下し、耐久性・性能安定性を向上させることができる。
【0035】
また同時に、この保護材はMFR(230℃、49N)が3g/10分以上であることを特徴とする。加熱により保護材が流動性を有するため、前記屈曲部により厚く保護材を容易に配することが可能である。また住宅解体時などには、本発明の断熱パネルを加熱することにより軟化した保護材を容易にリサイクルでき、廃棄物の減量化と再利用に貢献する。
【0036】
本発明の真空断熱材外周に位置する保護材としては、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂などを用いることができる。建材用としては、これら耐候性、耐水性などに優れたスチレン系樹脂(ポリスチレン−ポリエチレン・ポリブチレン−ポリスチレン系)やオレフィン系樹脂が好適である。
【0037】
本発明の真空断熱材外周に位置する保護材には発泡処理を施しても良い。保護材内部に気泡が無い場合に比べて保護材の熱伝導率が低下するため、保護材も含めた断熱パネルの熱伝導率を低減でき好適である。
〔施工〕
本発明の真空断熱材は、建築物の内壁と隣接する2本の支持材に囲まれた空間内で、支持材の側面と内壁面を被覆するように設置される。もし、支持材の側面が真空断熱材で被覆されていない場合は、支持材の側面から建築物の外部へ熱が漏洩することになる。
【0038】
一方、本発明においては、真空断熱材が内壁面だけでなく支持材の側面も覆うため、支持材の側面部分における熱漏洩を抑止することができる。この場合、断熱パネルの屈曲部には曲げ歪みが生じる。過大な曲げ歪みは断熱パネルの性能の低下に繋がるおそれがあるため好ましくない。曲げ歪みは曲率半径が小さいほど、また断熱パネル内部の真空断熱材の芯材の厚さが厚いほど大きくなる。このため、曲げ歪みが断熱パネルの性能低下に繋がらぬよう、屈曲部の曲率半径は10mm以上であることが好ましい。また、断熱パネル内部の真空断熱材の芯材の厚さは10mm以下であることが好ましい。但し、真空断熱材はその内部を減圧空間とすることにより高い断熱性能を実現しているため、ある程度の厚さが必要とされる。このため、真空断熱材の芯材の厚さは8mm以上10mm以下であればさらに好ましい。
【0039】
本発明の断熱パネルの内壁・外装材との位置関係については、内壁側を被覆するのが好ましい。真空断熱材と内壁側との間に空間が存在すると、例えば、冬季に室内を暖房している場合、室内の温度上昇が内壁を伝わって内壁に接する空間内の空気を暖め、暖められた空気は軽くなり内壁面に沿って上昇する空気の流れが生じる。この際に、床下の冷たい空気が内壁と断熱パネルの間の空間に吸い込まれ、内壁を冷却することになる。結果的に、室内の暖房の熱がこの空間内の空気の流れによって建築物の外へ逃げてしまう。これを防ぐために断熱パネルは内壁側を被覆するように施工する。
【0040】
本発明の真空断熱材の外周の保護材は前述のとおり室温で弾性を有するため、断熱パネルの外寸法を設置場所の寸法より少し大きくすることにより、施工の際に圧縮変形した断熱パネルの表面保護材に形状復元力が生じる。これにより、断熱パネルの表面と、その周囲の内壁の面、支持材の側面との間に摩擦力が生じるので、断熱パネルを容易に固定でき、施工後の位置ずれを防止することができる。なお、さらに強固に断熱パネルを固定するために、その周囲の内壁の面、支持材の側面などとの間を接着剤や粘着テープなどで接着してもよい。この時、断熱パネルの表面と、その周囲の内壁の面、支持材の側面が隙間なく接する。これにより、熱漏洩を抑止し、さらに壁・床などを通過しようとする水蒸気・湿気の移動を抑止し、壁内などの結露を防止することができる。
【0041】
本発明の断熱パネルより外装材側の空間には、耐震補強用の筋交いや水道管などが通る場合があり、また、大雨の後などに壁内などに水が浸入した場合、通気性の良い方が速やかに乾燥し、結露やカビの発生防止につながるので断熱材などを充填しない方が好ましい。
【0042】
本発明の真空断熱材の外周を保護材で覆う際には、真空断熱材より一回り大きい前記保護材のシート2枚で真空断熱材を挟み、保護材周縁部をヒートシールすることが好ましい。またこの際に、真空断熱材の芯材部を封止するために形成される周縁部は折り返しておくことが好ましい。周縁部を折り返さぬまま表面保護層を形成すると、断熱パネルの端部が真空断熱効果の乏しい部位となり、ここから熱漏洩するため好ましくない。
【0043】
以下、本発明による実施例について説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
図1は実施例1の断熱パネルの屈曲部を示す断面図であり、図2は建築用部材を示す建築物の壁の水平断面図である。
【0045】
図1において、真空断熱材1は芯材7と、これを真空外包する外包材8からなり、その外側に保護材9を設けている。真空断熱材1の屈曲部Bには平坦部Fより厚い保護材9を設けている。図2において、実施例1の建築用部材は、表面を保護材9で覆った可撓性を有する断熱パネル5に2か所の屈曲部Bを設け、前記屈曲部Bに平坦部F以上の厚さに保護材9を配し、内壁2と隣接する2本の支持材4の対向する側面を被覆するように施工している。断熱パネル5は可撓性を有するため、図2に示すように当該部位に「コ」の字型に曲げて設置することが可能である。
【0046】
実施例1の真空断熱材は以下のように作製した。まず、真空断熱材の芯材として、平均繊維径4.3μmの結合剤を含まないグラスウール中に、大きさ450mm×350mm、厚さ30μmのアルミニウム製フィルムを挟み、更に250℃で1時間の乾燥熱処理を行なって作製した。その後、ラミネートフィルムからなる外包材として熱溶着層の高密度ポリエチレンとエチレン−ビニルアルコール共重合体とアルミ箔(約6μm)とナイロンおよびポリエチレンテレフタレートからなる外包材中に前記グラスウールとガスを吸着するゲッター剤(モレキュラ−シ−ブス13X)を詰め、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空断熱材の内部圧力が1.5Paになるまで排気した後、外包材の端部をヒートシールで封止した。真空断熱材の大きさは500mm×400mm×10mmで、熱伝導率を測定したところ、1.8mW・m-1・K-1であった。
【0047】
この真空断熱材の外周に保護材層を形成した。真空断熱材の周縁封止部を折り返した後、圧縮永久歪み(70℃、22h)が43%、MFR(190℃、21.18N)が3g/10分の住友化学工業(株)製エスポレックスSBスチレン系熱可塑性エラストマーに発泡処理を施した厚さ1mmの保護材シート2枚の間に真空断熱材を挟み、保護材シート周縁部をヒートシールして保護層を形成し、熱伝導率を調べたところ7.3mW・m-1・K-1であった。
【0048】
この保護材付き真空断熱材を図2のような模擬施工形状に成形した。屈曲部となる板状の真空断熱材の長さ約400mmの辺から平行に100mm内側へ移動した線上に、加熱して溶融状態となった前記住友化学工業(株)製エスポレックスSBスチレン系熱可塑性エラストマーを塗布して屈曲部の保護材厚さを片面4mm程度とした。室温付近まで空冷した後屈曲予定部にφ20mmの丸棒を当て、曲げ試験機を用いて10mm/minで90度に曲げ、断面が「コ」の字型になるように成形した。この真空断熱材を60℃の高温槽に入れ30日間放置した後、熱伝導率を調べたところ8.3mW・m-1・K-1であった。劣化試験によっても熱伝導率の増加の少ない建築用部材であった。
【0049】
作製した保護材付き真空断熱材を、木造住宅の壁を模擬した木枠に取り付けた。木枠は400mm×400mm×1mmの木板2枚の間に50mm×400mm×厚さ100mmの木材角柱2本を平行に挟んで接着したもので、内部に300mm×400mm×100mmの空洞部分を有する。この空洞部分に図2と同様の断面構造となるように前記保護材付き真空断熱材を設置して、木枠の側面部分には熱漏洩を防ぐため、別に作製した熱伝導率2.0mW・m-1・K-1の真空断熱材4枚を隙間の無いように貼りつけて測定用の試料とした。
【0050】
前記試料を熱流計に取り付け、住宅では内壁に相当する側を30℃、外壁に相当する側を10℃に設定し、熱貫流量を測定したところ1.4Wであり、断熱性に優れた建築用部材であった。
なお、図5に記載の、熱伝導率および熱貫流量は英弘精機(株)製AUTO-Λ・HC−071型(熱流計法、平均温度10℃)を用いて評価した。
【実施例2】
【0051】
実施例2の真空断熱材は以下のように作製した。まず、真空断熱材の芯材として、平均繊維径4.5μmの結合剤を含まないグラスウール中に、大きさ450mm×350mm、厚さ30μmのアルミニウム製フィルムを挟み、更に250℃で1時間の乾燥熱処理を行なって作製した。その後、実施例1と同様にラミネートフィルムを用い真空断熱材を作製した。真空断熱材の大きさは500mm×400mm×10mmで、熱伝導率を測定したところ、2.0mW・m-1・K-1であった。
【0052】
この真空断熱材の外周に保護層を形成した。真空断熱材の周縁封止部を折り返した後、圧縮永久歪み(70℃、22h)が35%、MFR(220℃、98N)が50g/10分の住友化学工業(株)製エスポレックスTPEオレフィン系熱可塑性エラストマーに発泡処理を施した厚さ1mmの保護材シート2枚の間に真空断熱材を挟み、保護材シート周縁部をヒートシールして保護層を形成し、熱伝導率を調べたところ8.8mW・m-1・K-1であった。
【0053】
この保護材付き真空断熱材を模擬施工形状に成形した。屈曲部となる板状の真空断熱材の長さ約400mmの辺から平行に100mm内側へ移動した線上に、加熱して溶融状態となった前記住友化学工業(株)製エスポレックスTPEオレフィン系熱可塑性エラストマーを塗布して屈曲部の保護材厚さを片面4mm程度とした。室温付近まで空冷した後屈曲予定部にφ20mmの丸棒を当て、曲げ試験機を用いて10mm/minで90度に曲げ、断面が『コ』の字型になるように成形した。この真空断熱材を60℃の高温槽に入れ30日間放置した後、熱伝導率を調べたところ9.8mW・m-1・K-1であった。劣化試験によっても熱伝導率の増加の少ない建築用部材であった。
【0054】
作製した保護材付き真空断熱材を、実施例1と同様に木造住宅の壁を模擬した木枠に取り付け、測定用の試料とした。この試料を熱流計に取り付け、住宅では内壁に相当する側を30℃、外壁に相当する側を10℃に設定し、熱貫流量を測定したところ1.4Wであり、断熱性に優れた建築用部材であった。
【実施例3】
【0055】
実施例3の真空断熱材は以下のように作製した。まず、真空断熱材の芯材として、平均繊維径4.3μmの結合剤を含まないグラスウール中に、大きさ450mm×350mm、厚さ30μmのアルミニウム製フィルムを挟み、更に250℃で1時間の乾燥熱処理を行なって作製した。その後、ラミネートフィルムからなる外包材として熱溶着層の高密度ポリエチレンとアルミ蒸着(約50nm)を行なったエチレン−ビニルアルコール共重合体とアルミ蒸着を行なったポリエチレンテレフタレートとナイロンからなる外包材中に前記グラスウールとガスを吸着するゲッター剤(モレキュラ−シ−ブス13X)を詰め、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空断熱材の内部圧力が1.5Paになるまで排気した後、外包材の端部をヒートシールで封止した。真空断熱材の大きさは500mm×400mm×10mmで、熱伝導率を測定したところ、1.7mW・m-1・K-1であった。
【0056】
この真空断熱材の外周に実施例1と同様に保護層を形成し、熱伝導率を調べたところ7.2mW・m-1・K-1であった。さらにこの保護材付き真空断熱材を実施例1と同様に模擬施工形状に成形した。この真空断熱材を60℃の高温槽に入れ30日間放置した後、熱伝導率を調べたところ8.2mW・m-1・K-1であった。劣化試験によっても熱伝導率の増加の少ない建築用部材であった。
【0057】
作製した保護材付き真空断熱材を、実施例1と同様に木造住宅の壁を模擬した木枠に取り付け、測定用の試料とした。この試料を熱流計に取り付け、住宅では内壁に相当する側を30℃、外壁に相当する側を10℃に設定し、熱貫流量を測定したところ1.4Wであり、断熱性に優れた建築用部材であった。
【実施例4】
【0058】
実施例4の真空断熱材は以下のように作製した。まず、真空断熱材の芯材として、平均繊維径4.5μmの結合剤を含まないグラスウール中に、大きさ450mm×350mm、厚さ30μmのアルミニウム製フィルムを挟み、更に250℃で1時間の乾燥熱処理を行なって作製した。その後、実施例3と同様にラミネートフィルムを用い真空断熱材を作製した。真空断熱材の大きさは500mm×400mm×10mmで、熱伝導率を測定したところ、1.9mW・m-1・K-1であった。
【0059】
この真空断熱材の外周に実施例2と同様に保護層を形成し、熱伝導率を調べたところ8.7mW・m-1・K-1であった。さらにこの保護材付き真空断熱材を実施例2と同様に模擬施工形状に成形した。この真空断熱材を60℃の高温槽に入れ30日間放置した後、熱伝導率を調べたところ9.7mW・m-1・K-1であった。劣化試験によっても熱伝導率の増加の少ない建築用部材であった。
【0060】
作製した保護材付き真空断熱材を、実施例1と同様に木造住宅の壁を模擬した木枠に取り付け、測定用の試料とした。この試料を熱流計に取り付け、住宅では内壁に相当する側を30℃、外壁に相当する側を10℃に設定し、熱貫流量を測定したところ1.4Wであり、断熱性に優れた建築用部材であった。
【実施例5】
【0061】
実施例5の真空断熱材は以下のように作製した。まず、真空断熱材の芯材として、平均繊維径4.4μmの結合剤を含まないグラスウール中に、大きさ450mm×350mm、厚さ30μmのアルミニウム製フィルムを挟み、更に250℃で1時間の乾燥熱処理を行なって作製した。その後、ラミネートフィルムからなる外包材として熱溶着層の高密度ポリエチレンとアルミ蒸着(約50nm)を行なったエチレン−ビニルアルコール共重合体とアルミ蒸着を行なったポリエチレンテレフタレートとナイロンからなる外包材中に前記グラスウールとガスを吸着するゲッター剤(モレキュラ−シ−ブス13X)を詰め、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空断熱材の内部圧力が1.5Paになるまで排気した後、外包材の端部をヒートシールで封止した。真空断熱材の大きさは500mm×400mm×10mmで、熱伝導率を測定したところ、1.8mW・m-1・K-1であった。
【0062】
この真空断熱材の外周に保護層を形成した。真空断熱材の周縁封止部を折り返した後、圧縮永久歪み(70℃、22h)が35%、MFR(220℃、98N)が50g/10分の住友化学工業(株)製エスポレックスTPEオレフィン系熱可塑性エラストマーに発泡処理を施した厚さ1mmの保護材シート2枚の間に真空断熱材を挟み、保護材シート周縁部をヒートシールして保護層を形成し、熱伝導率を調べたところ8.6mW・m-1・K-1であった。
【0063】
この保護材付き真空断熱材を、屈曲部の曲げ角度が90度以上となるように成形した。屈曲部となる板状の真空断熱材の長さ約400mmの辺から平行に100mm内側へ移動した線上に、加熱して溶融状態となった前記住友化学工業(株)製エスポレックスTPEオレフィン系熱可塑性エラストマーを塗布して屈曲部の保護材厚さを片面4mm程度とした。室温付近まで空冷した後屈曲予定部にφ20mmの丸棒を当て、曲げ試験機を用いて10mm/minで初期状態から135度曲げ、成す角45度になるように成形した。この真空断熱材を60℃の高温槽に入れ30日間放置した後、熱伝導率を調べたところ9.8mW・m-1・K-1であった。劣化試験によっても熱伝導率の増加の少ない建築用部材であった。
[比較例1]
【0064】
本発明の比較例として、外周を保護材で覆った真空断熱材を内壁面のみを被覆するように施工した断熱施工面の模擬試料を作製し、熱貫流量を測定した。
【0065】
比較例1の真空断熱材は以下のように作製した。まず、真空断熱材の芯材として、平均繊維径4.4μmの結合剤を含まないグラスウール中に、大きさ250mm×350mm、厚さ30μmのアルミニウム製フィルムを挟み、更に250℃で1時間の乾燥熱処理を行なって作製した。その後、ラミネートフィルムからなる外包材として熱溶着層の高密度ポリエチレンとアルミ蒸着(約50nm)を行なったエチレン−ビニルアルコール共重合体とアルミ蒸着を行なったポリエチレンテレフタレートとナイロンからなる外包材中に前記グラスウールとガスを吸着するゲッター剤(モレキュラ−シ−ブス13X)を詰め、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空断熱材の内部圧力が1.5Paになるまで排気した後、外包材の端部をヒートシールで封止した。真空断熱材の大きさは300mm×400mm×10mmで、熱伝導率を測定したところ、1.8mW・m-1・K-1であった。
【0066】
この真空断熱材の外周に保護層を形成した。真空断熱材の周縁封止部を折り返した後、圧縮永久歪み(70℃、22h)が43%、MFR(190℃、21.18N)が3g/10分の住友化学工業(株)製エスポレックスSBスチレン系熱可塑性エラストマーに発泡処理を施した厚さ1mmの保護材シート2枚の間に真空断熱材を挟み、保護材シート周縁部をヒートシールして保護層を形成し、熱伝導率を調べたところ7.3 mW・m-1・K-1であった。さらにこの保護材付き真空断熱材を60℃の高温槽に入れ30日間放置した後、熱伝導率を調べたところ8.3mW・m-1・K-1であった。劣化試験によっても熱伝導率の増加の少ない建築用部材であった。
【0067】
作製した保護材付き真空断熱材を、木造住宅の壁を模擬した木枠に取り付けた。木枠は400mm×400mm×1mmの木板2枚の間に50mm×400mm×厚さ100mmの木材角柱2本を平行に挟んで接着したもので、内部に300mm×400mm×100mmの空洞部分を有する。この空洞部分に図2と同様の断面構造となるように前記保護材付き真空断熱材を設置して、木枠の側面部分には熱漏洩を防ぐため、別に作製した熱伝導率2.0mW・m-1・K-1の真空断熱材4枚を隙間の無いように貼りつけて測定用の試料とした。
【0068】
前記試料を熱流計に取り付け、住宅では内壁に相当する側を30℃、外壁に相当する側を10℃に設定し、熱貫流量を測定したところ1.7Wであった。支持材の側面部分を真空断熱材で被覆しなかったことにより、熱貫流量が約21%増加し、断熱性能の劣る建築用部材であった。
[比較例2]
【0069】
比較例2として、外周を保護材で覆った真空断熱材を内壁面のみを被覆するように施工した断熱施工面の模擬試料を作製し、熱貫流量を測定した。
【0070】
比較例2の真空断熱材は以下のように作製した。まず、真空断熱材の芯材として、平均繊維径4.3μmの結合剤を含まないグラスウール中に、大きさ250mm×350mm、厚さ30μmのアルミニウム製フィルムを挟み、更に250℃で1時間の乾燥熱処理を行なって作製した。その後、ラミネートフィルムからなる外包材として熱溶着層の高密度ポリエチレンとエチレン−ビニルアルコール共重合体とアルミ箔(約6μm)とナイロンおよびポリエチレンテレフタレートからなる外包材中に前記グラスウールとガスを吸着するゲッター剤(モレキュラ−シ−ブス13X)を詰め、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空断熱材の内部圧力が1.5Paになるまで排気した後、外包材の端部をヒートシールで封止した。真空断熱材の大きさは300mm×400mm×10mmで、熱伝導率を測定したところ、1.8mW・m-1・K-1であった。
【0071】
この真空断熱材の外周に保護層を形成した。真空断熱材の周縁封止部を折り返した後、圧縮永久歪み(70℃、22h)が35%、MFR(220℃、98N)が50g/10分の住友化学工業(株)製エスポレックスTPEオレフィン系熱可塑性エラストマーに発泡処理を施した厚さ1mmの保護材シート2枚の間に真空断熱材を挟み、保護材シート周縁部をヒートシールして保護層を形成し、熱伝導率を調べたところ8.6 mW・m-1・K-1であった。さらにこの保護材付き真空断熱材を60℃の高温槽に入れ30日間放置した後、熱伝導率を調べたところ9.6mW・m-1・K-1であった。劣化試験によっても熱伝導率の増加の少ない建築用部材であった。
【0072】
作製した保護材付き真空断熱材を、比較例1と同様に木枠の内壁相当面に取り付け熱貫流量を測定したところ、1.7Wであった。支持材の側面部分を真空断熱材で被覆しなかったことにより、熱貫流量が約21%増加し、断熱性能の劣る建築用部材であった。
[比較例3]
【0073】
比較例3として、外周を保護材で覆った真空断熱材を図2に示すように内壁2と、隣接する2本の支持材4の対向する側面を被覆するように施工したが屈曲部に保護材を厚く配さない断熱施工面の模擬試料を作製し、熱貫流量を測定した。
【0074】
比較例3の真空断熱材は以下のように作製した。まず、真空断熱材の芯材として、平均繊維径4.5μmの結合剤を含まないグラスウール中に、大きさ450mm×350mm、厚さ30μmのアルミニウム製フィルムを挟み、更に250℃で1時間の乾燥熱処理を行なって作製した。その後、比較例2と同様にラミネートフィルムを用い真空断熱材を作製した。真空断熱材の大きさは500mm×400mm×10mmで、熱伝導率を測定したところ、2.0mW・m-1・K-1であった。
【0075】
この真空断熱材の外周に比較例1と同様に保護層を形成し、熱伝導率を調べたところ7.5 mW・m-1・K-1であった。さらにこの保護材付き真空断熱材を模擬施工形状に成形した。屈曲部となる板状の真空断熱材の長さ約400mmの辺から平行に100mm内側へ移動した線上にφ20mmの丸棒を当て、曲げ試験機を用いて10mm/minで90度に曲げ、断面が「コ」の字型になるように成形した。この真空断熱材を60℃の高温槽に入れ30日間放置した後、熱伝導率を調べたところ17.5mW・m-1・K-1であった。屈曲部に保護材を厚く配さなかったため劣化試験により熱伝導率が著しく増加し、断熱性能の劣る建築用部材であった。
【0076】
作製した保護層付き真空断熱材を、比較例1と同様に木枠の内壁相当面に取り付け熱貫流量を測定したところ、1.7Wであった。支持材の側面部分を真空断熱材で被覆してはいるが、屈曲部に保護材を厚く配さなかったため熱貫流量が約21%増加し、断熱性能の劣る建築用部材であった。
[比較例4]
【0077】
比較例4として、外周を保護材で覆った真空断熱材を図2に示すように内壁2・隣接する2本の支持材4の対向する側面を被覆するように施工したが屈曲部に保護材を厚く配さない断熱施工面の模擬試料を作製し、熱貫流量を測定した。
【0078】
比較例4の真空断熱材は以下のように作製した。まず、真空断熱材の芯材として、平均繊維径4.4μmの結合剤を含まないグラスウール中に、大きさ450mm×350mm、厚さ30μmのアルミニウム製フィルムを挟み、更に250℃で1時間の乾燥熱処理を行なって作製した。その後、比較例1と同様にラミネートフィルムを用い真空断熱材を作製した。真空断熱材の大きさは500mm×400mm×10mmで、熱伝導率を測定したところ、1.8mW・m-1・K-1であった。
【0079】
この真空断熱材の外周に比較例2と同様に保護層を形成し、熱伝導率を調べたところ8.6mW・m-1・K-1であった。さらにこの保護材付き真空断熱材を模擬施工形状に成形した。屈曲部となる板状の真空断熱材の長さ約400mmの辺から平行に100mm内側へ移動した線上にφ20mmの丸棒を当て、曲げ試験機を用いて10mm/minで90度に曲げ、断面が「コ」の字型になるように成形した。この真空断熱材を60℃の高温槽に入れ30日間放置した後、熱伝導率を調べたところ18.6mW・m-1・K-1であった。屈曲部に保護材を厚く配さなかったため劣化試験により熱伝導率が著しく増加し断熱性能の劣る建築用部材であった。
【0080】
作製した保護層付き真空断熱材を、比較例1と同様に木枠の内壁相当面に取り付け熱貫流量を測定したところ、1.7Wであった。支持材の側面部分を真空断熱材で被覆してはいるが、屈曲部に保護材を厚く配さなかったため熱貫流量が約21%増加し、断熱性能の劣る建築用部材であった。
【実施例6】
【0081】
図4に示す実施例6は、本発明の建築用部材を建築構造物に使用した例を示す。なお、図4は建築構造物の柱と柱の中間線を含む切断面における断面図であるため、柱または柱の近傍は描かれていない。建築構造物では、コンクリート基礎18上の構造材19に柱を組み、内壁(または天井板、床板)2の面と支持材(柱など)の側面を被覆するように断熱パネル5を設置する。実施例6の建築用部材は、真空断熱材および保護材を組み合わせた断熱パネルからなるものであって、真空断熱材はグラスウールからなる芯材を備え、保護材はスチレン系熱可塑性エラストマー等で形成され、真空断熱材が保護材中に配置される建築用部材の断熱パネルである。
【0082】
この時、建築用部材の断熱パネルは、以下のように作製した。真空断熱材にはグラスウールからなる芯材およびガス吸着のゲッター剤をラミネートフィルムからなる外包材に入れ、真空包装機で真空封止して熱伝導率が約2.0mW・m-1・K-1程の高性能な真空断熱材を用いた。また、真空断熱材の保護材として発泡処理を施したスチレン系熱可塑性エラストマーのシート2枚を用い、その間に真空断熱材を挟み周縁部をヒートシールして熱伝導率が7.5 mW・m-1・K-1程の高性能な断熱パネルを用いた。更に、建築構造物としての断熱性能向上のため、断熱パネルの屈曲予定部に加熱により軟化したスチレン系熱可塑性エラストマーを塗布し、この部分で曲率半径10mm以上で90度に曲げたうえで、内壁2の面と支持材の側面を被覆するように設置した。断熱パネルを内壁2の面を被覆するように設置したことで、室内からの熱漏洩を抑制し、かつ外壁側は空間が存在するため通気性が良く壁内部の結露を抑止する効果も得られる。
【0083】
実施例6の断熱パネルには面上に釘打ち可能部が設けられているため、必要に応じて釘打ちによる位置の固定が可能である。断熱性能に優れる真空断熱材を用いた断熱パネルを内壁面および支持材の側面を被覆するように設置することで、断熱パネルを設置しなかったものに比べて断熱性能を長期間維持する効果が得られ、省エネルギー効果に優れる住宅等の建築構造物が提供できる。
【0084】
図5は、本発明の実施例1〜5と比較例1〜4の仕様を対比して示す説明図である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
真空断熱材の外周に保護材が存在することにより建築現場への輸送時などにも周囲の物体との接触により真空断熱材の外包材が損傷するのを防ぎ、断熱性能の維持に寄与する。さらに、屈曲部に他の部位よりも厚く保護材を配しているため屈曲部での性能劣化が少ない。さらに、真空断熱材の表面に室温で弾性を有する層が存在することにより、内壁と隣接する2本の支持材に囲まれた空間内に容易に周囲と隙間無く施工することができ、熱漏洩・湿気の移動を防止することができる。
【0086】
結果として建築物の省エネルギー性を向上し、地球温暖化防止の一助とすることができる。さらに表面の保護材の形状復元力により真空断熱材と周囲の壁面などとの間に摩擦力が生じるため、施工後の位置ずれも防止される。また、建築物を解体する際、本発明の真空断熱材の保護材を容易にリサイクルできるため、廃棄物の減量化・資源の再利用にも貢献する。
【符号の説明】
【0087】
1…真空断熱材、2…内壁、3… 外壁、4…支持材、5…断熱パネル、6…周縁部、7…芯材、8…外包材、9…保護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱材および該真空断熱材外周を被覆した保護材を有する断熱パネルを備えた建築用部材であって、前記真空断熱材は芯材と、ゲッター剤と、前記芯材および前記ゲッター剤を収納するガスバリア性の外包材とを備え、該外包材の内部を真空封止した真空断熱材において、前記真空断熱材の屈曲部では真空断熱材の平坦部以上の厚さの保護材を有することを特徴とする建築用部材。
【請求項2】
請求項1に記載された建築用部材において、前記真空断熱材の芯材はグラスウールからなることを特徴とする建築用部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された建築用部材において、前記真空断熱材の平坦部における保護材の厚さを、1.0mm以上2.00mm以下としたことを特徴とする建築用部材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された建築用部材において、前記真空断熱材の屈曲部における保護材の厚さを、2.0mm以上8.0mm以下としたことを特徴とする建築用部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載された建築用部材において、前記真空断熱材を覆う保護材として、圧縮永久歪み(70℃、22h)が54%以下およびメルトマスフローレート (230℃、49N)が3g/10分以上の高分子材料を用いることを特徴とする建築用部材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載された建築用部材において、前記真空断熱材を保護材で被覆した断熱パネルの熱伝導率が10mW・m-1・K-1以下であることを特徴とする建築用部材。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載された建築用部材において、前記保護材がスチレン系熱可塑性エラストマーまたはオレフィン系熱可塑性エラストマーのいずれか一方を含むことを特徴とする建築用部材。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載された建築用部材において、該建築用部材は釘打ち可能部を有することを特徴とする建築用部材。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載された建築用部材において、該建築用部材は建築物の少なくとも内壁と隣接する2本の支持材に囲まれた空間内で前記支持材の側面および前記内壁面を被覆するように配置されたことを特徴とする建築用部材。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載された建築用部材を、住宅等の断熱施工面に備えたことを特徴とする建築構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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