説明

建築要素及びその製造方法

異なる材料及び材料性質の二つの層(12、13)により、一方の外向きの支持体層(13)が特に高い強度を有し、他方の内向きの露出層(12)が、特定の用途固有の条件、たとえば高熱に対応するように適合された材料組成を有するようなやり方で構成された、特に火炎に対するトンネルの保護のための建築要素。支持体層(13)はアプライトを主接合剤として含有する。支持体層(13)と露出層(12)との間の区域にはマット形の強化材(14)が埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分に述べられた、特にトンネル内の保護壁を構築するための建築要素及び当該建築要素の製造方法に関する。
【0002】
背景
岩石トンネルの側面を覆うため及び他の目的のため、鉱物含有注型材料の平面的な建築要素が要望される。このような建築要素は様々な要件を満たさなければならない。これが、それぞれが異なる性質を有する二つの層で構成された建設要素の開発を招いた。
【0003】
ドイツ国特許出願第10243253号(Bilfinger Berger AG、2004)から、一方の側に一つの材料特性を有し、他方の側にもう一つの異なる材料特性を有する平面的な建築要素を製造することが公知である。そのような建築要素の一例として、二つの異なるコンクリートの性質及び埋め込まれた繊維強化材を有する実施態様が挙げられている。
【0004】
この構造は、そのような建築要素を特定の目的に適合させる可能性を提供する。しかし、トンネル固定ならびに長い寿命、密度及び耐熱性が特に重要な要件である他の目的に適用可能な要件を満たす建築要素を製造する方法は教示されていない。
【0005】
日本国特許公開公報第72033048号(Shiga-Ken、1972)から、接合剤としてアルミナセメントを用い、主な充填化合物としてのアプライトを用いる注型材料を製造することが公知である。これは結果的に多孔質構造を生じさせ、したがって、高い強度及び長い寿命を要する建築要素には特に適していない。
【0006】
目的
本発明の主な目的は、外部の影響、たとえば熱、水及び霜に対して特に耐性であると同時に長期安定性を示す、層で構成された建築要素を創り出すことである。加えて、層の少なくとも一つが亀裂又は孔を全く有しない建築要素を提供することを目的とする。さらには、加工しやすい材料から効率的なやり方で製造することができるような建築要素を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は請求項1で述べられている。この組成を用いると、様々な利点、
特に高い密度、
高い機械的強度
長い寿命
火炎及び他の熱負荷に対する高い抵抗性
が得られる。
【0008】
請求項2〜9では、特に有利な実施態様が述べられている。本発明はまた、請求項10で述べられている建築要素を製造する方法を含む。
【0009】
アプライトは、主に石英及び長石を含有する花崗岩種である。アプライトは、とりわけ、米国バージニア州のMontpellier、米国カリフォルニア州のOwens Valley、ノルウェーのFinnvoll渓谷、イタリアのTuscanyならびにロシア及び日本の何カ所かに存在する。アプライトは、とりわけ、イタリアのMaffei Natural Resources及び米国ウエストバージニア州のUS Silica Companyから市販されている。アプライトは通常、ケイ素、マグネシウム、鉄、ナトリウム、カリウム、チタンおよびカルシウムを含有するが、もっとも重要な成分は、それぞれ60〜85重量%および10〜25重量%の範囲の相対量で存在することができる(酸化物の形態にある)ケイ素及びアルミニウムである。
【0010】
本発明に関しては、60〜95重量%、より好ましくは68〜90重量%の石英含有率を有するアプライトを使用することが好ましい。使用されるアプライトは天然に存在するアプライトであることが好ましい。しかし、本明細書における用語「アプライト」は一般に、天然に存在するアプライト中に見られる最も重要な岩石種の混合物を含む。
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施態様を説明する。
【0012】
露出層12及び支持体層13で構成された長方形の平面的な建築要素11が図示されている。この例では、二つの層それぞれが建築要素の厚さの約半分を構成する。建築要素全体を部分的に強化するための炭素マット14の形態の強化材が二つの層の間に埋め込まれている。
【0013】
建築要素11は、当該用途に適合される様々な比率及び寸法を有することができる。建築要素は、その周囲に延びる溝又は対応するさねはぎ又は壁へのアセンブリもしくはおそらくは他の建築要素との併用の際に要素どうしを固定するのに適した別の縁形状を備えることができる。
【0014】
この例では、建築要素11の露出層12は、冶金工業からのセメント及び粒状スラグならびに硬石膏を含む注型素材で構成されている。精錬業、特に銑鉄の製造からのスラグが特に有用である。そのようなスラグは顆粒形態で加えることができる。硬石膏の代替として、別のアルカリ性要素、たとえば石膏を加えることもできる。有利には、層の少なくとも一方が微粉化カルサイト(炭酸カルシウム)をセメント量の20重量%までの量で含有することができる。
【0015】
微粉化アプライトが唯一の接合剤又は主要な接合剤として露出層に加えられるならば、これは特に有利である。微粉化アプライトとは、主として200ミクロン未満の粒径を有するアプライトをいう。アプライトはまた、充填化合物として、その場合ずっと大きな粒子の形態で加えることもできる。
【0016】
これは、露出層12が熱、湿分及び温度変動に対して非常に高い耐性を有するコンクリート製品を生じさせる。支持体層13と合わさると、高い全体強度、密度および長い寿命が保証される。
【0017】
支持体層13は、主接合剤としての微粉化アプライトに基づく注型素材である。これは、適切な充填材とともに、コンクリート製品に非常に高い強度及び密度を与える。発案された組成は、結果的に、水を浸入させるおそれのあるスクラッチの形成を最小限にする。
【0018】
支持体層13には、ポルトランドセメントのような水硬セメントを一部、たとえば25重量%加えることができる。ポルトランドセメントに代えて又はそれに加えて他の水硬セメント、たとえばポゾランセメント、石膏セメント、アルミナセメント、シリカセメント及びスラグセメントを使用することもできる。
【0019】
露出層12及び支持体層13の両方に関して、炭素繊維15を注型素材に加えて、それにより、強度の増大に寄与することができる。炭素繊維15は、長さが最大10cmであるべきであり、好ましくは0.3〜0.7cmであり、粗い骨材とともに適用される。混合時、より多くの繊維が結着するため、そのような繊維の使用は特に問題なく実施することができる。約7ミクロンであることができる小さな横方向直径に関して、炭素繊維が特に良好な強化を与える。
【0020】
緩い形態にある又はマットとしての適当な炭素繊維は、Devold AMT AS(N-6030 Langevag)から購入することができる。
【0021】
製造
建築要素11は、ほぼ水平な支持体上で型によって成形することができる。まず露出層12のための注型素材を適用することによって成形物を分割する。そして、炭素マットをプラスチック注型素材上に配設する。最後に、支持体層13を構成するための表面コーティングを適用する。両方の注型素材に対し、炭素繊維15を混合工程で加えて強度を高めることができる。
【0022】
本発明の建築要素はまた、受け要素又は別の構造要素として、たとえば保護される材料、たとえば放射性材料の保管及び/又は保護のために形成することもできる。
【0023】
建築要素は、高い温度に対して特に良好な保護を提供し、したがって、火炎に対するトンネルの保護として使用することができる。支持体層13は特に高い強度を有し、一方、露出層12は、高熱への暴露に適合された材料組成を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施態様の一部切欠き斜視図である。
【図2】図1の建築要素の断面図である。
【図3】図2の建築要素の拡大断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる材料及び材料特性の二つの注型素材層(12、13)により、一方の外向きの支持体層(13)が特に高い強度を有し、他方の内向きの露出層(12)が、特定の用途固有の条件、たとえば高熱に対応するように適合された材料組成を有するようなやり方で構成された、部屋及び通路ならびに区域もしくは区画が画定される他の区域のための壁、コーティング、隔壁の建築のための、特に火炎に対するトンネルの保護のための建築要素であって、前記支持体層(13)が微粉化アプライトを主接合剤として含有する建築要素。
【請求項2】
マット形の強化材(14)が前記支持体層(13)と前記露出層(12)との間の区域に埋め込まれている、請求項1記載の建築要素。
【請求項3】
前記マット形の強化材(14)が炭素繊維である、請求項2記載の建築要素。
【請求項4】
前記二つの層(12、13)の少なくとも一方において、好ましくは長さ10cm未満の炭素繊維(15)が注型素材中に埋め込まれている、請求項1〜3のいずれか1項記載の建築要素。
【請求項5】
前記露出層における前記炭素繊維(15)が主として0.3〜0.7cmの範囲の長さを有する、請求項4記載の建築要素。
【請求項6】
前記露出層(12)における前記注型材料が硬石膏を骨材として含有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の建築要素。
【請求項7】
前記露出層における前記注型材料に対し、金属製造からのスラグが骨材として加えられている、請求項1〜6のいずれか1項記載の建築要素。
【請求項8】
前記支持体層(13)が、微粉化アプライトとポルトランドセメントとの、好ましくは重量比3:1の混合物を含有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の建築要素。
【請求項9】
前記層(12、13)の少なくとも一方が、セメントの量に対して20重量%までの微粉化カルサイトを含有する、請求項1〜8のいずれか1項記載の建築要素。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の建築要素を製造する方法であって、
実質的に平坦な底を有する型に前記露出層のためのプラスチック注型素材を充填する工程、
前記プラスチック素材の上に炭素マットを配設する工程、及び
前記支持体層を構成するためのプラスチック表面層を充填する工程
を含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−539349(P2008−539349A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508777(P2008−508777)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/NO2006/000154
【国際公開番号】WO2006/115415
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507354079)
【氏名又は名称原語表記】EIDE,Hallvar
【出願人】(507354080)
【氏名又は名称原語表記】SAASEN,Arild
【Fターム(参考)】