説明

建設材料を疎水化し且つ該材料のビーディング効果を改善するための方法

本発明は、多孔質建設材料、例えば、無機又は(リグノ)セルロース材料に含浸させるための防水性液体シリコーン組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、湿気に影響を受けやすい多孔質建設材料(特に無機又は[リグノ]セルロース建設材料)を疎水化する分野である。一般に、疎水化は、建物の部分を形成するように組み立てられた建設材料の構成部分について実施される。
【背景技術】
【0002】
疎水化は、処理済みの材料の表面張力を改変する物質の塗布によって水の浸透を制限することを目的とした表面処理である。疎水化処理に必要なことは、
・毛管作用による水の吸収を低減させること(水の吸収係数を>90%にまで低減させること);
・水蒸気に対する透過性にほとんど影響を及ぼさないこと(透過係数の変動が<20%);及び
・処理材料の外観(色、光沢、粗さ)を変化させないこと
である。
【0003】
表面疎水化剤は、多孔質建設材料の表面層を、その外観又は水蒸気透過性を実質的に変化させることなく、不浸透性にすることが可能な無色の物質である。例えば、この多孔質建設材料がコンクリートの場合には、このコンクリートの細孔及び毛管の内部が被覆されているが、満たされてはいないことが望ましい。その表面で皮膜が形成されることはない。
【0004】
この疎水化は、特に、一般に激しい雨や地面からの水の浸透によって生じる水の浸透に対してその材料を可能な限りベストに保護することを目的とするものである。建設材料をその製造中や設置後に疎水化剤(石材、石膏又は煉瓦のような材料の場合にはシリコーン系組成物が最も一般的である。)を使用して疎水化させることはよく知られている。
【0005】
好適な水性又は非水性の溶媒や液体に予め溶解又は分散された疎水化剤を使用した疎水化は、その表面で効果的に実施でき(この場合、この材料の表面は、疎水化剤を使用して塗装を施されたりスプレーされたりする)、或いはこの材料の奥深くまで実施できる(この場合には、疎水化剤はこの材料の胴部にまで導入される。これは、例えば、煉瓦、木材、コンクリート、石膏又は再生石材について可能である。)。
【0006】
天然石材や現場で成形する材料、例えば既設の壁の場合には、所定の表面処理を実施したり、材料の本体に加圧下でパイプを使用してこの材料内に適切に作られた注入穴に疎水化剤を強制的に導入することによって注入したりすることができる;また、疎水化剤を毛管作用による含浸及び拡散により材料に浸潤させることや浸透させることも可能である。
【0007】
疎水化液体シリコーン組成物は、揮発油又はヘプタンのような有機溶媒の溶液の状態か、又は近年市場に出現してきた水性エマルジョンの状態のいずれかで存在する。従来、含浸後に、これらの組成物の有機溶媒相又は水性相は蒸発し、そのシリコーン活性材料は、湿気に対する障壁をなすように多孔質建設材料の本体内部又はその表面にとどまっていた。
【0008】
液体シリコーン組成物を使用して疎水化を成功させるためには、次のことが重要である:
・液体シリコーン組成物のレオロジーによって、多孔質建設材料に数ミリメートルから数センチメートルの範囲の厚さにわたり浸透することが可能になること、
・多孔質建設材料と疎水化活性珪素質材料との間で反応が生じること、及び
・好ましくは、この活性珪素質材料が多孔質建設材料中で架橋し、この架橋が該多孔質建設材料と疎水化軽質材料との結合を生じさせる反応であることが可能なこと。
【0009】
しかしながら、疎水化液体組成物を処方する際に直面する困難さの一つは、申し分のないビーディング効果に関する調査である。このビーディング効果は、最終使用者が直ちに気付くため、その適用のための重要な特性である。これは、例えば基材が雨で湿ったときの該基材の外観を特徴付けるものである。その表面に付着したままの水が少なければ少ないほど、ビーディング効果は良好である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明において利益が得られる疎水化処理は、ポリオルガノシロキサン樹脂を含む液体シリコーン組成物を使用して実施されるものである。対象となる多孔質建設材料は、例えば、炭酸カルシウム及び/又はシリカ及び/又はアルミノ珪酸塩を基材とする石材、コンクリート、モルタル、石膏、焼粘土(煉瓦、タイルなど)、木材或いは疎水化剤の使用を可能にする多孔度若しくは表面状態を有する他の同様の建設材料であることができる。
【0011】
用語「木材」とは、特に既設の古い又は最近の建築物に使用される木材、例えば、内装及び外装パネル、梁、ハーフティンバー又は骨組を意味するものとする。木材は、知られているように、水を強力に吸収する多孔質材料である。
【0012】
従って、本発明の目的は、もはや上記不利益を示さない液体シリコーン組成物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、本発明者は、全く驚くべき且つ予期しないことに、シリコーン樹脂と、少なくとも1種の金属アルコキシド及び好ましくはシリケートから選択される架橋剤を含む触媒混合物の成分のうちいずれかの成分からなる注意深く選択された成分とを基材とする疎水化組成物によって、有利な疎水化特性の他に、顕著なビーディング効果を示す組成物を得ることが可能になることを実証した。
【0014】
特に、本発明は、多孔質建設材料、例えば無機又は(リグノ)セルロース建設材料に含浸させることを目的とした疎水化液体シリコーン組成物の使用に関する。
【0015】
また、本発明は、前記シリコーン組成物を使用して多孔質建設材料、好ましくは無機又は(リグノ)セルロース建設材料を疎水化するための方法も目的とする。
【0016】
これらの目的は、特に、本発明であって、その第1の主題が、多孔質建設材料を疎水化させ且つ該材料のビーディング効果を改善させるための、次の成分:
(a)1分子あたり、一方ではM、D、T及びQ型から選択される少なくとも2種の異なるシロキシル単位であって、これらの単位の一つがT単位又はQ単位であるものと、他方ではOH及び/又はOR1型(ここで、R1は直鎖又は分岐のC1〜C6アルキル基である。)の少なくとも3個の加水分解性/縮合性基とを有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン樹脂A;
(b)該ポリオルガノシロキサン樹脂Aに対して≧5重量%、好ましくは≧6重量%、より好ましくはさらに≧7重量%の含有量の少なくとも1種の金属アルコキシドB(ここで、この金属Mは1個以上の配位子に部分的に結合していてよい。)であって、次の一般式:
M[(OCH2CH2a−OR2n (I)
(式中、
・MはTi、Zr、Ge、Mn及びAlよりなる群から選択される金属であり;
・n=Mの原子価であり;
・R2置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又分岐のC1〜C12アルキル基を表し;
・aは0、1又は2を表し;
・ただし、該記号aが0を表すときには、該R2アルキル基は2〜12個の炭素原子を有し、しかも、該記号aが1又は2を表すときには、該R2アルキル基は1〜4個の炭素原子を有するものとする。)
を有するもの、及び
(c)該ポリオルガノシロキサン樹脂Aに対して≧4重量%、好ましくは≧5重量%、より好ましくはさらに≧6重量%の含有量の少なくとも1種の架橋剤Cであって、次式:
Si[(OCH2CH2a−OR]4 (II)
(式中、
・該R置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又は分岐のC1〜C12アルキル基を表し、
・aは0、1又は2を表す。)
を有するもの
から本質的になる液体シリコーン組成物の使用である本発明によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
別の実施形態によれば、本発明に従う組成物は、建設材料の疎水化のために使用できる有機溶媒をさらに含む。溶媒の例としては、揮発油又はヘプタンのような有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
成分Aは、別々に使用しても混合物として使用してもよい、従来のシリコーン樹脂であるが、これらのなかでは、式(R33SiCl、(R32Si(Cl)2、R3Si(Cl)3及びSi(Cl)4のクロロシランよりなる群から選択されるクロロシランの共加水分解及び共縮合によって製造される有機珪素樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、市販されている周知の分岐オルガノポリシロキサンのオリゴマー又は重合体である。これらのものは、それらの構造内に、式(R33SiO0.5(M単位)、(R32SiO(D単位)、R3SiO1.5(T単位)及びSiO2(Q単位)から選択される少なくとも2種の異なるシロキシル単位を有し、ここでこれらの単位の少なくとも一つはT又はQ単位である。このR3基は、該樹脂が珪素原子当たりおよそ0.8〜1.8個のR3基を有するような方法で割り当てられる。さらに、これらの樹脂は完全には縮合されず、しかも、これらは、珪素原子当たりおよそ0.001〜1.5個のOH及び/又はOR1アルコキシル基をさらに有する。
【0019】
3基は、同一もの又は異なるものであり且つ直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基、C2〜C4アルケニル基、フェニル又は3,3,3−トリフルオルプロピルから選択される。R3アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びn−ヘキシル基が挙げられる。
【0020】
分岐オルガノポリシロキサンのオリゴマー又は重合体の例としては、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂及びMDT樹脂が挙げられるが、ここで、そのOH及び/又はOR1基はM、D及び/又はT単位によって保持されることが可能であり、OH及び/又はOR1基の重量に基づく含有量は0.2〜10重量%である。
【0021】
成分Bに関して、式(I)の金属Mの有機誘導体における記号R2の例としては、次の基:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル及びドデシルが挙げられる。
【0022】
好ましい成分Bの具体例としては、チタン酸アルキル、例えばチタン酸エチル、チタン酸プロピル、チタン酸イソプロピル、チタン酸ブチル、チタン酸2−エチルヘキシル、チタン酸オクチル、チタン酸デシル、チタン酸ドデシル、チタン酸β−メトキシエチル、チタン酸β−エトキシエチル、チタン酸β−プロポキシエチル又は式Ti[(OCH2CH22−OCH34のチタネート;ジルコン酸アルキル、例えばジルコン酸プロピル又はジルコン酸ブチル;及びこれらの物質の混合物が挙げられる。また、これらのものは、金属Mが1個以上の配位子、例えば、特にβ−ジケトン、β−ケトエステル及びマロン酸エステル(例えば、アセチルアセトンのようなもの)又はトリエタノールアミンから誘導されるものに部分的に結合できる金属アルコキシドからなることもできる。
【0023】
好ましい成分Cの具体例としては、珪酸アルキル、例えば、珪酸メチル、珪酸エチル、珪酸イソプロピル又は珪酸n−プロピルが挙げられる。
【0024】
好ましい実施形態によれば、架橋剤Cは、式Si(OR)4 (式中、R置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又は分岐のC1〜C12アルキル基を表す。)のシリケートである。
【0025】
別の好ましい実施形態によれば、金属アルコキシドBは、式Ti(OR')4(式中、R'置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又は分岐のC1〜C12アルキルを表す。)のチタネートである。
【0026】
特に有利な形態によれば、架橋剤は、式Si(OR)4(式中、R置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又は分岐のC1〜C12アルキル基を表す。)のシリケートであり、金属アルコキシドは、式Ti(OR')4(式中、R'置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又は分岐のC1〜C12アルキルを表す。)のチタネートである。
【0027】
この賢明な選択によって、疎水化の性能を最適にすると共に、顕著なビーディング効果を得ることが可能になる。
【0028】
また、本発明は、多孔質建設材料を疎水化し且つ該材料のビーディング効果を改善させるための方法であって、この対象の材料に上記の本発明に従う組成物を塗布する方法に関するものでもある。
【0029】
多孔質材料の例としては、次の基材:石材、コンクリート、石膏、モルタル、煉瓦、タイル及び木材が挙げられる。
【0030】
本発明の他の利点及び特徴は、単なる例示であって限定ではない次の実施例を読めば明らかになるであろう。
【実施例】
【0031】
例:
次の成分で様々な処方物を調製する:
・0.5重量%のOHを有し且つ62重量%のCH3SiO3/2単位、24重量%の(CH32SiO2/2単位及び14重量%の(CH33SiO1/2単位から構成されるヒドロキシル化MDTシリコーン樹脂:100重量部;
・次の物質の混合物:
式Ti(OBu)4のチタン酸n−ブチル(Bu):当該シリコーン樹脂に対して重量部;
式Si(OEt)4の珪酸エチル(Et):当該シリコーン樹脂に対して重量部。
その後、塗布前に、これらの処方物を溶媒(揮発油)で再度希釈して、最終的に5重量%の濃度の溶液を得る。
【0032】
処理:
・複数の石材(この場合にはソープストーン)を、5秒間の溶液中への浸漬を2回行うことによって処理する。
・これらの石材を15日間50%相対湿度の雰囲気下において周囲温度で放置して乾燥させる。
・2タイプの測定を実施する:
毛管作用による水の吸収による疎水化の測定:処理した試料を水と接触した状態に置き、次いで定期的に秤量する。水の吸収の減少を、試料の水の吸収を未処理の対照の水の吸収で標準化することによって決定する。
ビーディング効果の測定:この性能を、処理した試料を雨にさらすことによって測定する。この試料を垂直な位置から45°の角度に置き、この試料の上20cmに水平に設置された穴あきのパイプから水を噴射させることによって降雨とした。注ぎだした水の量は250mLである。この試料をこの試験の前後で秤量し、重量の差をによりビーディング効果を得る。
【0033】
結果:
これら組成物の全ては、疎水化(毛管作用による水の吸収の測定)に関して、同様の良好な結果を与えた。
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
対照的に、ビーディング効果の点では、本発明に従うチタネート及びシリケートの濃度を使用すると、顕著なビーディング効果を得ることが可能である。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質建設材料を疎水化させ且つ該材料のビーディング効果を改善させるための、次の成分:
(a)1分子あたり、一方ではM、D、T及びQ型から選択される少なくとも2種の異なるシロキシル単位であって、これらの単位の一つがT単位又はQ単位であるものと、他方ではOH及び/又はOR1型(ここで、R1は直鎖又は分岐のC1〜C6アルキル基である。)の少なくとも3個の加水分解性/縮合性基とを有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン樹脂A;
(b)該ポリオルガノシロキサン樹脂Aに対して≧5重量%、好ましくは≧6重量%、より好ましくはさらに≧7重量%の含有量の少なくとも1種の金属アルコキシドB(ここで、この金属Mは1個以上の配位子に結合していてよい。)であって、次の一般式:
M[(OCH2CH2a−OR2n (I)
(式中、
・MはTi、Zr、Ge、Mn及びAlよりなる群から選択される金属であり;
・n=Mの原子価であり;
・R2置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又分岐のC1〜C12アルキル基を表し;
・aは0、1又は2を表し;
・ただし、該記号aが0を表すときには、該R2アルキル基は2〜12個の炭素原子を有し、しかも、該記号aが1又は2を表すときには、該R2アルキル基は1〜4個の炭素原子を有するものとする。)
を有するもの、及び
(c)該ポリオルガノシロキサン樹脂Aに対して≧4重量%、好ましくは≧5重量%、より好ましくはさらに≧6重量%の含有量の少なくとも1種の架橋剤Cであって、次式:
Si[(OCH2CH2a−OR]4 (II)
(式中、
・R置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又は分岐のC1〜C12アルキル基を表し、
・aは0、1又は2を表す。)
を有するもの
から本質的になる液体シリコーン組成物の使用。
【請求項2】
前記液体シリコーン組成物が建設材料の疎水化のために使用できる有機溶媒をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記架橋剤が式Si(OR)4(式中、R置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又は分岐のC1〜C12アルキル基を表す。)のシリケートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記金属アルコキシドがTi(OR')4(式中、R'置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又は分岐のC1〜C12アルキルを表す。)のチタネートであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記金属アルコキシドBが式Ti(OR')4(式中、R'置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又は分岐のC1〜C12アルキル基を表す。)のチタネートであり、前記架橋剤が式Si(OR)4(式中、R置換基は、同一のもの又は異なるものであり、それぞれ直鎖又は分岐のC1〜C12アルキルを表す。)のシリケートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項6】
多孔質建設材料を疎水化し且つ該材料のビーディング効果を改善させるための方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載の液体シリコーン組成物を前記材料に塗布する、前記方法。
【請求項7】
前記組成物を次の基材:石材、コンクリート、モルタル、煉瓦、タイル及び木材から選択される材料に塗布する、請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2009−502468(P2009−502468A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523393(P2008−523393)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001600
【国際公開番号】WO2007/012716
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(507421304)ブルースター シリコーン フランス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】