説明

建設機械の上部フレーム

【課題】下部走行体の上で旋回可能に搭載される上部フレームにおいて、作業中、作業装置を通じて固定ピンに伝わる荷重に対して剛性及び柔軟性を発揮し、左・右側側板を支持できるようにする。
【解決手段】建設機械の上部フレーム2は、下部走行体の上に旋回可能に搭載され、作業装置が取り付けられる建設機械の上部フレームにおいて、上部フレームを旋回させる駆動手段が装着されているベースプレート13と、ベースプレートの上に対向するように垂直溶接され、ブーム及びブームシリンダがそれぞれの固定ピン16、17により回動可能に固定される内側及び外側の垂直板からなる左・右側側板14、15と、内側垂直板の内側面に両側面が溶接され、ベースプレート上に下端部が溶接され、作業中、作業装置に生じる荷重により固定ピンに反力が生じるとき、剛性及び柔軟性を発揮することによって、左・右側側板を支持することが可能な継手連結板とを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部走行体上に旋回可能に搭載される上部フレームにおいて、ベースプレートの上に対向するように溶接される左・右側側板と、左・右側側板とベースプレートにそれぞれ溶接される板状の継手連結板とからなる建設機械の上部フレームに係る。
【0002】
詳述すれば、ベースプレートの上に対向するように溶接された左・右側側板にブーム及びブームシリンダを支持するそれぞれの固定ピンを結合し、左・右側側板とベースプレートに板状の継手連結板をそれぞれ溶接することにより(継手連結板の3面が溶接される)、作業中、作業装置を通じて固定ピンに伝わる荷重に対して剛性及び柔軟性の特性を発揮し、左・右側側板を支持することができるようにした建設機械の上部フレームに係る。
【背景技術】
【0003】
図1に示したように、一般の無限軌道式掘削機は、
下部走行体1と、
下部走行体1の上に旋回可能に搭載される上部フレーム2と、
上部フレームの前方及び後方にそれぞれ装着される運転室3及びエンジンルーム4と、
上部フレーム2に連結されるブーム5、アーム6及びバケット7と、これらをそれぞれ駆動せしめる油圧シリンダ8、9、10を備える作業装置11と、
上部フレーム2の後方に装着され、作業時、建設機械の均衡を維持するためのカウンタウェイト12を包含する。
【0004】
図2ないし図4に示したように従来技術による建設機械の上部フレームは、
上部フレーム2を旋回させるように旋回リングギア及びスイングモータなどが装着されるベースプレート13と、
ベースプレート13の上に対向するように垂直にそれぞれ溶接される左・右側側板14、15(側板14、15はそれぞれ対向する内側及び外側の垂直板(14a、15a)(14b、15b)からなる)、
側板14、15の上端部に取り付けられ、ブーム5を回動可能に支持する固定ピン16、17と、
側板14、15の下端部に取り付けられ、ブームシリンダ8を回動可能に支持する固定ピン18、19と、
内側垂直板14a、15aの内側面に両端部が溶接され、側板14、15の上端部を継手連結して支持する円筒状の上端連結部材20と、
内側垂直板14a、15aの内側面とベースプレート13とに三面が溶接され、これらを支持するアングル形状の下端連結部材21を包含する。
【0005】
従来技術による建設機械の上部フレームは、作業中、ブーム5に作用する荷重が大きくなり、これを効率よく分布せしめて支持する役割を果たすと共に、ブーム5の重量を減らすことができるように固定ピン16、17を用いて側板14、15にブーム5を回動可能に固定する。
【0006】
作業中、作業装置から伝わる荷重に対して安全な剛性を有するように側板14、15の上端部は、上端連結部材20により相互連結されて支持され、側板14、15の下端部は、下端連結部材21及びベースプレート13にそれぞれ溶接される。
【0007】
図2及び図3に示したように、従来技術による建設機械の上部フレームにおいて、側板14、15間に上端連結部材20を溶接する場合、上端連結部材20の断面が円筒状に形成されているので、円形の形状に沿って溶接を行う作業者の姿勢が不安定になる。そのため、側板14、15に対する上端連結部材20の溶接部の品質を確保しにくいという問題が生じる。
【0008】
また、新しいモデルの建設機械を開発する場合、使用者の要求に応じて建設機械の作業能率を向上させるために作業装置に作用するパワーを増大させることがある。このように増大される作業装置のパワーに対応して、側板14、15の厚み及び上端連結部材20の規格(例えば、サイズ及び厚みをいう)を大きくしなければならない。したがって、該当部品を特別注文生産することになるので、製造コストの増加につながるという問題が生じる。
【0009】
図4A、Bに示したように、作業中、ブーム5を通じて固定ピン16、17に伝わる荷重(矢印で示す)により、断面積が一定である上端連結部材20の両終端部にモーメントが作用する場合、上端連結部材20の両終端の溶接部には、長手方向の中央母材部と同じ大きさのモーメントが作用することになる。
【0010】
この際、上端連結部材20の両終端は、側板14、15に対して垂直に溶接されているので、応力が集中し、構造強度において脆弱である。また、上端連結部材20の両終端は溶接部なので、長手方向の中央部よりも疲労強度の側面で脆弱である(一例で溶接部の疲労強度は、母材部に対して30%程度である)。
【0011】
よって、上端連結部材20の長手方向の中央部は、構造強度において不必要な余裕が生じてしまう。
【0012】
図面には示されていないが、作業中、ブーム5を介して固定ピン16、17に伝わる荷重により下端連結部材21の両終端部にモーメントが作用するときに生じる問題点は、上端連結部材20に関する説明と同じ原理により適用されるので、これらに対する詳しい説明は省略する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の実施例は、ブーム及びブームシリンダを支持する固定ピンが結合される左・右側板間に板状の継手連結板を溶接することにより、溶接部の品質に対する信頼性を向上させることができるようにした建設機械の上部フレームに係る。
【0014】
また、本発明の実施例は、新しいモデルの建設機械の開発時、使用者の要求に応じて作業装置のパワーを増大したい場合、継手連結板の厚みを変更することにより、作業装置に要求される安全な剛性及び柔軟性を確保することができるようにした建設機械の上部フレームに係る。
【0015】
さらに、本発明の実施例は、容易に供給を受けることが可能な板状の継手連結板により終端溶接部(側板に溶接される部位)の形状を最適化し、断面積を増大させることによって、疲労強度を補完すると共に、構造強度において不必要な中央部を切り取ることにより、製造コストを削減し、建設機械の重量を減らすことが可能となるようにした建設機械の上部フレームに係る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の実施例による上部フレームは、
下部走行体の上に旋回可能に搭載され、作業装置が取り付けられる建設機械の上部フレームにおいて、
上部フレームを旋回させる駆動手段が装着されているベースプレートと、
ベースプレートの上に対向するように垂直溶接され、ブーム及びブームシリンダがそれぞれの固定ピンにより回動可能に固定される内側及び外側の垂直板からなる左・右側側板と、
内側垂直板の内側面に両側面が溶接され、ベースプレート上に下端部が溶接され、作業中、作業装置に生じる荷重により固定ピンに反力が生じるとき、剛性及び柔軟性を発揮することによって、左・右側側板を支持することが可能な継手連結板とを包含する。
【0017】
望ましい実施例によれば、前述した継手連結板は、単一体からなり、ベースプレート及び内側垂直板に溶接される。
【0018】
前述した継手連結板に少なくとも一ヶ所以上の折曲部が形成される。
【0019】
前述した継手連結板は、ベースプレート及び内側垂直板に溶接される下部継手連結板と、内側垂直板に溶接される上部継手連結板とに分割形成される。
【0020】
前述した継手連結板の下部継手連結板及び上部継手連結板のうち、少なくとも何れか一つに少なくとも一ヶ所以上の折曲部が形成される。
【0021】
前述した継手連結板の上端部の中央には、切開部が切り取り形成されている。
【発明の効果】
【0022】
前述したように、本発明の実施例による建設機械の上部フレームは、次のよう効果を奏する。
ブーム及びブームシリンダを回動可能に支持するように固定ピンが組み合わされる左・右側の側板間に板状の継手連結板を溶接することにより、溶接部の品質に対する高信頼性を期待することができる。
【0023】
また、新しいモデルの建設機械の開発時、使用者の要求に応じて作業装置のパワーを大きくしたいとき、継手連結板の厚みを変更することにより、作業装置に要求される安全な剛性及び柔軟性を確保できるので、該当部品のための特別注文生産を不要とし、建設機械の製作コストを低減することが可能となる。
【0024】
また、容易に供給を受けることが可能な板状の継手連結板により溶接部材の形状を最適化し、断面積を増大させることによって、疲労強度を補完できる。また、構造強度において不必要な中央部位を切り取ることにより、製造コストの低減が図れると共に、建設機械の重量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一般の無限軌道式掘削機の概略図である。
【図2】従来技術による建設機械の上部フレームの要部図である。
【図3】従来技術による建設機械の上部フレームの使用状態図である。
【図4A】従来技術による建設機械の上部フレームにおいて、ブームに生じる荷重により固定ピンに反力が発生時、上端連結部材にモーメントが生じることを説明するための図面である。
【図4B】従来技術による建設機械の上部フレームにおいて、ブームに生じる荷重により固定ピンに反力が発生時、上端連結部材にモーメントが生じることを説明するための図面である。
【図5】本発明の一実施例による建設機械の上部フレームの概略図である。
【図6】本発明の一実施例による建設機械の上部フレームにおいて、ブームに生じる荷重により固定ピンに反力が発生時、継手連結板により左・右側側板を支持することを説明するための図面である。
【図7】本発明の一実施例による建設機械の上部フレームの使用状態図である。
【図8】本発明の他の実施例による建設機械の上部フレームにおいて、左・右側側板に溶接される継手連結板の正面図及びA-A線、B-B線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の望ましい実施例を添付図面に基づいて説明するが、これは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が発明を容易に実施し得る程度に詳細に説明するためのものであって、これに本発明の技術的思想及び範疇が限られるものではない。
【0027】
図5、図6、図7に示したように、本発明の一実施例による建設機械の上部フレームは、
下部走行体の上に旋回可能に搭載され、作業装置が回動可能に取り付けられる建設機械の上部フレームにおいて、
上部フレーム2を旋回せしめる駆動手段(一例で旋回リングギア、スイングモータなど)が装着されているベースプレート13と、
ベースプレート13の上に対向するように垂直溶接され、ブーム5及びブームシリンダ8がそれぞれの固定ピン(16、17)(18、19)により回動可能に取り付けられる内側及び外側の垂直板(14a、15a)(14b、15b)からなる左・右側側板14、15と、
内側垂直板14a、15aの内側面に両側面が溶接され、ベースプレート13の上に下端部が溶接され、作業中、作業装置に生じる荷重により固定ピン16、17に反力(reaction loads from boom)が生じる場合、剛性及び柔軟性を発揮することにより、左・右側側板14、15を支持することができる板状の継手連結板22とを包含する。
【0028】
前述した継手連結板22は、単一体からなり、ベースプレート13及び内側垂直板14a、15aに溶接される。
【0029】
前述した継手連結板22に少なくとも一ヶ所以上の折曲部23が形成される。
【0030】
前述した継手連結板22の上端部の中央には、切開部24が切り取り形成される。
【0031】
この際、内側垂直板14a、15aの内側面及びベースプレート13の上面に溶接され、作業中、ブーム5に生じる荷重により固定ピン16、17に反力が生じる場合、左・右側側板14、15を支持する継手連結板22の構成を除いては、従来技術による建設機械の上部フレームの構成と実質的に同様に適用されるので、これらに対する詳しい説明は省略し、同じ構成要素には同じ図面符号を付する。
【0032】
以下では、本発明の一実施例による建設機械の上部フレームの使用例について添付図面を参照して説明する。
図5、6及び7に示したように、ブーム5及びブームシリンダ8が固定ピン(16、17)(18、19)により回動可能に固定される左・右側側板14、15の内側面(内側垂直板14a、15aの内側面をいう)に継手連結板22の両側面が溶接される。また、ベースプレート13の上面に継手連結板22の下端部が溶接される(つまり、継手連結板22の三面が溶接されることになる)。
【0033】
この際、継手連結板22に少なくとも一ヶ所以上形成される折曲部23により内側垂直板14a、15aに溶接される継手連結板22の固定位置を最適化することが可能となる。
【0034】
前述したように、左・右側側板14、15に対して板状の継手連結板22を溶接することになるので、溶接部位の品質に対する信頼性が向上する。
【0035】
また、新モデルの建設機械の開発時、クライアントのニーズに応じてブームなどの作業装置のパワーを増大したい場合、継手連結板22の厚み変更により断面積を増大させることによって、作業装置に要求される安全な剛性及び柔軟性を確保することができ、該当部品の特別注文生産を不要とする。
【0036】
また、作業中に発生する荷重が、ブーム5を通じて固定ピン16、17に伝わる場合(図6に矢印で示している)、側板14、15間に溶接されている板状の継手連結板22の断面積を増大するか、または溶接部の形状を最適化することにより疲労強度を補完することができる。
【0037】
この時、構造強度において不必要となる継手連結板22の上端部の中央部を切り取ることにより切開部24を形成し、製造コストの低減、建設機械の重量を減らすことができる。
【0038】
図8に示した本発明の他の実施例による建設機械の上部フレームは、
図5、6、7に示したように、前述した継手連結板22は、ベースプレート13及び内側垂直板14a、15aに溶接の下部継手連結板22aと、内側垂直板14a、15aに溶接の上部継手連結板22bとに分割形成される。この時、継手連結板22の下部継手連結板22a及び上部継手連結板22bのうち、少なくとも何れかの一つに少なくとも一ヶ所以上の折曲部23が形成される。
【0039】
前述したように継手連結板22を下部継手連結板22aと上部継手連結板22bとに分割形成することにより、内側垂直板14a、15a(図6、7に示す)に対して継手連結板22が溶接される位置を最適化することができ、且つ、継手連結板22を製作する作業性を向上させることができる。
【0040】
この際、折曲部23がそれぞれ形成され、下部継手連結板22aと上部継手連結板22bとに分割形成される継手連結板の構成を除いては、本発明の一実施例による建設機械の上部フレームの構成と実質的に同様に適用されるので、これらに対する詳しい説明は省略し、同じ構成要素には同じ図面符号を付する。
【符号の説明】
【0041】
1 下部走行体
3 運転室
5 ブーム
7 バケット
9 アームシリンダ
11 作業装置
13 ベースプレート
15 右側側板
17、19 固定ピン
21 下端連結部材
23 折曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に旋回可能に搭載され、作業装置が取り付けられる建設機械の上部フレームにおいて、
上部フレームを旋回させる駆動手段が装着されているベースプレートと、
前記ベースプレートの上に対向するように垂直溶接され、ブーム及びブームシリンダがそれぞれの固定ピンにより回動可能に固定される内側及び外側の垂直板からなる左・右側側板と、
前記内側垂直板の内側面に両側面が溶接され、前記ベースプレートの上に下端部が溶接され、作業中、作業装置から生じる荷重により前記固定ピンに反力が生じる場合、剛性及び柔軟性を発揮することにより、前記左・右側側板を支持することができる継手連結板とを包含することを特徴とする建設機械の上部フレーム。
【請求項2】
前記継手連結板は、単一体からなり、前記ベースプレート及び内側垂直板に溶接されることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の上部フレーム。
【請求項3】
前記継手連結板に少なくとも一ヶ所以上の折曲部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の建設機械の上部フレーム。
【請求項4】
前記継手連結板は、前記ベースプレート及び内側垂直板に溶接される下部継手連結板と、前記内側垂直板に溶接される上部継手連結板とに分割形成されることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の上部フレーム。
【請求項5】
前記継手連結板の下部継手連結板及び上部継手連結板のうち、少なくとも何れか一つに少なくとも一ヶ所以上の折曲部が形成されることを特徴とする請求項4に記載の建設機械の上部フレーム。
【請求項6】
前記継手連結板の上端部の中央には切開部が切り取り形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のうち、少なくとも何れか一項に記載の建設機械の上部フレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−202869(P2009−202869A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43544(P2009−43544)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(502032378)ボルボ コンストラクション イクイップメント アーベー (156)
【Fターム(参考)】