説明

建設機械の旋回フレーム

【課題】 センタフレームに対するキャブ支持用内フレームの接合強度を高める。
【解決手段】 キャブ支持用前フレーム32と共にキャブ6を支持するキャブ支持用内フレーム26を、底板13上を左,右方向に延びる横フレーム部26Aと、横フレーム部26Aから底板13よりも前方に突出する縦フレーム部26Bとにより、L字状をなすボックス構造体として形成する。そして、キャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aを、センタフレーム12の底板13と左縦板14とに溶接等によって接合する。これにより、旋回フレーム11のうち最も強度が高い強度部材であるセンタフレーム12に対し、直接的にキャブ支持用内フレーム26の基端側を接合することができ、センタフレーム12に対するキャブ支持用内フレーム26の接合強度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等に用いられる建設機械の旋回フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部側に設けられた作業装置とにより大略構成されている。そして、上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームを有し、この旋回フレームの前部側には作業装置が俯仰動可能に設けられ、旋回フレームの後部側には、作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトが設けられている。また、旋回フレームの前部左側には運転室を画成するキャブが支持されている。
【0003】
ここで、建設機械の旋回フレームは、通常、底板及び該底板上に立設された左,右の縦板からなるセンタフレームと、該センタフレームの左,右両側に配設された左,右のサイドフレームと、センタフレームと左,右のサイドフレームとの間にそれぞれ設けられた左,右の張出しビームと、左,右の縦板のうち一方の縦板よりも外側に設けられ、基端側がセンタフレームに接合されると共に先端側が各サイドフレームのうち一方のサイドフレームと間隔をもって対面しつつ前,後方向に延びるキャブ支持用内フレームと、該キャブ支持用内フレームの先端部と前記一方のサイドフレームの先端部との間を連結するキャブ支持用前フレームとを備えて構成されている。
【0004】
そして、キャブの後端側は、左サイドフレームとセンタフレームとの間に設けられた張出しビームのうちの一つの張出しビームによって支持され、キャブの前端側は、キャブ支持用内フレームとキャブ支持用前フレームとによって支持される構成となっている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−32262号公報
【特許文献2】特開2002−61226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、旋回フレームを構成する各縦板の前端部には、通常、ブームシリンダの一端側が取付けられている。従って、ブームシリンダとキャブとの干渉を避けるため、旋回フレームの左縦板とキャブとの間には一定の間隔を保つ必要がある。このため、従来技術による建設機械の旋回フレームでは、旋回フレームの左縦板に対してキャブ支持用内フレームが左側に離間して配置され、キャブ支持用内フレームの基端側は、センタフレームの底板と、センタフレームと各サイドフレームとを連結する張出しビームのうちキャブの下側に配置された張出しビームとに接合される構成となっている。
【0007】
しかし、市街地等の狭隘な作業現場に好適に用いられる後方小旋回式の油圧ショベルにおいては、上部旋回体の旋回半径を低減するため、旋回フレームの前,後方向の長さ寸法を小さく抑える必要がある。このため、センタフレームと各サイドフレームとを連結する張出しビームの前,後方向の寸法(幅寸法)が小さくなり、キャブの下側に配置される張出しビームの幅寸法も小さくなる。
【0008】
また、旋回フレームの長さ寸法を低減するために、エアコンユニットを運転席フロアの下側に配置した場合には、このエアコンユニットとキャブの下側に配置された張出しビームとの干渉を避けるため、キャブの下側に配置される張出しビームの底板からの高さ寸法が小さくなる。
【0009】
このように、後方小旋回式の油圧ショベルにおいては、キャブの下側に配置される張出しビームの幅寸法と高さ寸法とが小さくなるため、当該張出しビームの剛性が低くなる傾向にある。従って、従来技術の如くキャブの下側に配置される張出しビームにキャブ支持用内フレームの基端側を接合する構成とした場合には、この張出しビームに大きな応力が作用してしまい、キャブの支持強度が低下してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、センタフレームに対するキャブ支持用内フレームの接合強度を高めることができ、キャブの支持強度を高めることができるようにした建設機械の旋回フレームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため本発明は、底板と該底板上に立設された左,右の縦板とからなるセンタフレームと、該センタフレームの左,右両側に前,後方向に延びて配設された左,右のサイドフレームと、前記センタフレームと前記左,右のサイドフレームとの間にそれぞれ設けられ前記センタフレームに対し前記各サイドフレームを接合する左,右の張出しビームと、前記左,右の縦板のうち一方の縦板よりも外側に位置して設けられ、基端側が前記センタフレームに接合されると共に先端側が前記各サイドフレームのうち一方のサイドフレームと間隔をもって対面しつつ前記底板よりも前方に延びるキャブ支持用内フレームと、該キャブ支持用内フレームの先端部と前記一方のサイドフレームの先端部との間を左,右方向に連結するキャブ支持用前フレームとを備えてなる建設機械の旋回フレームに適用される。
【0012】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記キャブ支持用内フレームは、前記一方の縦板と前記底板とに接合され前記底板上を左,右方向に延びる横フレーム部と、該横フレーム部から前記底板よりも前方に突出し先端部が前記キャブ支持用前フレームに接合される縦フレーム部とによりL字状のボックス構造体として形成したことにある。
【0013】
請求項2の発明は、前記キャブ支持用内フレームの横フレーム部と前記一方のサイドフレームとの間は、前記張出しビームのうちの一つを形成する中間連結ビームによって連結する構成としたことにある。
【0014】
請求項3の発明は、前記キャブ支持用内フレームは、平面視でL字状をなし前記底板と上,下方向で対面する上板と、該上板を挟んで前記一方の縦板側に配置された内側板と、前記上板を挟んで前記一方のサイドフレーム側に配置され前記内側板と間隔をもって対面する外側板とを有し、前記上板、前記内側板および前記外側板によって閉断面空間を形成するボックス構造体として形成したことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、キャブ支持用内フレームを、横フレーム部と縦フレーム部とによりL字状のボックス構造体として形成し、センタフレームの底板と一方の縦板とに接合することにより、張出しビーム等を介材させることなく、旋回フレームのうち最も強度が高い強度部材であるセンタフレームに直接的にキャブ支持用内フレームを接合することができるので、センタフレームに対するキャブ支持用内フレームの接合強度を高めることができる。
【0016】
これにより、例えば後方小旋回式の建設機械において、センタフレームとサイドフレームとを連結する張出しビームの幅寸法や高さ寸法が小さくなったとしても、この張出しビームにキャブ支持用内フレームを接合する必要がない。この結果、建設機械の仕様に関わらず、センタフレームに対するキャブ支持用内フレームの接合強度を高めることができる。
【0017】
しかも、キャブ支持用内フレームをボックス構造体とすることにより、このキャブ支持用内フレーム自体の強度も高めることができる。このように、センタフレームに対するキャブ支持用内フレームの接合強度を高めることに加え、キャブ支持用内フレーム自体の強度を高めることができるので、キャブ支持用内フレームとキャブ支持用前フレームによるキャブの支持強度を高めることができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、キャブ支持用内フレームの横フレーム部と一方のサイドフレームとの間を中間連結ビームによって連結したので、底板と一方の縦板とに接合されたキャブ支持用内フレームを、中間連結ビームによって補強することができる。この結果、キャブ支持用内フレームとキャブ支持用前フレームによるキャブの支持強度を一層高めることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、キャブ支持用内フレームをセンタフレームに接合した状態で、キャブ支持用内フレームとセンタフレームの底板との間には、キャブ支持用内フレームの上板、内側板および外側板と、センタフレームの底板とによって囲まれた閉断面空間を形成することができる。この結果、センタフレームに対してキャブ支持用内フレームを強固に接合することができ、該キャブ支持用内フレームとキャブ支持用前フレームによるキャブの支持強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態による旋回フレームを備えた油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】旋回フレームを上方からみた平面図である。
【図3】旋回フレームを単体で示す斜視図である。
【図4】旋回フレームの底板、左縦板、キャブ支持用内フレーム、キャブ支持用前フレーム、中間連結ビーム等を拡大して示す要部拡大の斜視図である。
【図5】図4中のキャブ支持用内フレーム、キャブ支持用前フレーム、中間連結ビームを分解して示す分解斜視図である。
【図6】キャブ支持用内フレームを単体で示す分解斜視図である。
【図7】図2中の底板、左縦板、キャブ支持用内フレーム、キャブ支持用前フレーム、中間連結ビーム等を拡大して示す要部拡大の平面図である。
【図8】底板、左縦板、キャブ支持用内フレーム等を図7中の矢示VIII−VIII方向から見た断面図である。
【図9】底板、左縦板、左サイドフレーム、キャブ支持用内フレーム等を図7中の矢示IX−IX方向から見た断面図である。
【図10】底板、左縦板、キャブ支持用前フレーム、中間連結ビーム等を図7中の矢示X−X方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る建設機械の旋回フレームの実施の形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
図中、1は建設機械の代表例である油圧ショベルを示し、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回輪3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4とにより大略構成されている。そして、上部旋回体4の前部側には、土砂等の掘削作業を行う作業装置5が俯仰動可能に設けられている。
【0023】
この場合、油圧ショベル1は、上部旋回体4が下部走行体2上で旋回動作を行ったときに、後述するカウンタウエイト7の後面がほぼ下部走行体2の車幅内に収まる後方小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。
【0024】
ここで、上部旋回体4は、後述の旋回フレーム11と、該旋回フレーム11の前部左側に配設され運転室を画成するキャブ6と、旋回フレーム11の後端側に設けられ作業装置5との重量バランスをとるカウンタウエイト7と、該カウンタウエイト7の前側に配設されエンジン、油圧ポンプ等(いずれも図示せず)を収容する建屋カバー8とにより大略構成されている。
【0025】
一方、作業装置5は、基端側が後述の旋回フレーム11に回動可能に取付けられたブーム5Aと、該ブーム5Aの先端側に回動可能に取付けられたアーム5Bと、該アーム5Bの先端側に回動可能に取付けられたバケット5Cと、旋回フレーム11とブーム5Aとの間に設けられたブームシリンダ5Dと、ブーム5Aとアーム5Bとの間に設けられたアームシリンダ5Eと、アーム5Bとバケット5Cとの間に設けられたバケットシリンダ5Fとにより大略構成されている。
【0026】
次に、11は本実施の形態による旋回フレームを示している。この旋回フレーム11は、上部旋回体4のベースとなるもので、図2および図3に示すように、後述のセンタフレーム12、左サイドフレーム18、左張出しビーム19、右サイドフレーム21、右張出しビーム23,24、キャブ支持用内フレーム26、キャブ支持用前フレーム32、中間連結ビーム35等により構成され、強固な支持構造体をなしている。
【0027】
12は旋回フレーム11の中央部分を構成するセンタフレームで、該センタフレーム12は、厚肉な鋼板等を用いて平板状に形成され前,後方向に延びた底板13と、該底板13の上面側に溶接等の手段を用いて立設され、左,右方向で一定の間隔を保ちつつ前,後方向に延びた左縦板14,右縦板15とにより大略構成されている。また、左縦板14の前部側と右縦板15の前部側との間は、両者に接合された前側の縦板補強板16によって補強され、左縦板14の後端側と右縦板15の後端側との間は、両者に接合された後側の縦板補強板17によって補強されている。
【0028】
ここで、左縦板14と右縦板15の前部側は、それぞれ山形状に隆起したブラケット部14A,15Aとなり、これら左,右のブラケット部14A,15Aには、図1に示す作業装置5のブーム5Aの基端側とブームシリンダ5Dの基端側とが、それぞれ上,下に離間して回動可能にピン結合される構成となっている。また、左,右の縦板14,15の後部側は、それぞれ断面I字状をなしてブラケット部14A,15Aから後方へと延び、左,右の縦板14,15の後端側は、図1に示すカウンタウエイト7が取付けられるウエイト取付部14B,15Bとなっている。
【0029】
さらに、左縦板14のうち後述する左サイドフレーム18と対向する外側面は、後述する左張出しビーム19、キャブ支持用内フレーム26等が接合されるビーム接合面14Cとなり、右縦板15のうち後述する右サイドフレーム21と対向する外側面は、後述する各右張出しビーム23,24等が接合されるビーム接合面15Cとなっている。
【0030】
18はセンタフレーム12を挟んで左側に配置された左サイドフレームを示している。ここで、左サイドフレーム18と後述の右サイドフレーム21とは、例えば断面D字状の筒体からなるD型フレームを用いて形成され、センタフレーム12に沿って前,後方向に延びている。そして、左サイドフレーム18は、後述の左張出しビーム19、中間連結ビーム35等を介してセンタフレーム12の左側に取付けられるものである。
【0031】
19は後述する中間連結ビーム35の後側に位置してセンタフレーム12と左サイドフレーム18との間に設けられた左張出しビームで、該左張出しビーム19は、中間連結ビーム35等と共に、センタフレーム12に対し左サイドフレーム18を接合するものである。
【0032】
ここで、左張出しビーム19は、例えば鋼板材に折曲加工を施すことにより、略Z字型の断面形状をもって左,右方向に延びる板状体として形成されている(図10参照)。そして、左張出しビーム19の長さ方向(左,右方向)の一端側は、底板13の上面と左縦板14のビーム接合面14Cとに溶接され、左張出しビーム19の長さ方向の他端側は、左サイドフレーム18に溶接されている。また、左張出しビーム19の上面側には、長さ方向の両側に位置して左,右のマウント取付孔19Aが設けられ、これら各マウント取付孔19Aには、キャブ6の後部側を弾性的に支持するマウント部材(図示せず)が取付けられる構成となっている。
【0033】
20は左縦板14の後端側と左サイドフレーム18の後端側との間に設けられた左後部プレートで、該左後部プレート20は、鋼板等を略く字状に折曲げることにより形成されている。そして、左後部プレート20は、左縦板14と左サイドフレーム18の後端側との間を連結するものである。
【0034】
21はセンタフレーム12を挟んで右側に配置された右サイドフレームを示し、この右サイドフレーム21は、左サイドフレーム18と同様なD型フレームを用いて形成され、センタフレーム12に沿って前,後方向に延びている。そして、右サイドフレーム21は、後述の各右張出しビーム23,24等を介してセンタフレーム12の右側に取付けられるものである。また、右サイドフレーム21の前端側は、センタフレーム12に向けて直角に折曲げられた屈曲部21Aとなり、該屈曲部21Aの先端部は、連結プレート22を介して右縦板15の先端側に連結されている。
【0035】
23,24はセンタフレーム12の右縦板15と右サイドフレーム21との間に設けられた前,後の右張出しビームで、これら各右張出しビーム23,24は、前,後方向に適度な間隔をもって配置され、センタフレーム12に対して右サイドフレーム21を接合するものである。ここで、各右張出しビーム23,24は、例えば鋼板材に折曲加工を施すことにより形成され、左端側が右縦板15のビーム接合面15Cに溶接されると共に、右端側が右サイドフレーム21に溶接されている。
【0036】
25は右縦板15の後端側と右サイドフレーム21の後端側との間に設けられた右後部プレートで、該右後部プレート25は、鋼板等を略く字状に折曲げることにより形成されている。そして、右後部プレート25は、右縦板15と右サイドフレーム21の後端側との間を連結するものである。
【0037】
次に、26は本実施の形態に適用されるキャブ支持用内フレームを示している。このキャブ支持用内フレーム26は、一方の左縦板14の外側(右縦板15とは反対側)に位置して該左縦板14の前端側に配置され、後述のキャブ支持用前フレーム32と共にキャブ6の前端側を支持するものである。
【0038】
ここで、キャブ支持用内フレーム26は、図4ないし図6に示すように、センタフレーム12を構成する底板13と左縦板14とに接合され、底板13上を左,右方向に延びる基端側の横フレーム部26Aと、該横フレーム部26Aから底板13よりも前方に突出し、先端部が後述のキャブ支持用前フレーム32に接合される縦フレーム部26Bとにより、全体としてL字状をなすボックス構造体として形成されている。そして、キャブ支持用内フレーム26は、図6等に示すように、後述の上板27と、内側板28と、外側板29との3部材を互いに接合することにより形成されている。
【0039】
27はキャブ支持用内フレーム26を構成する上板で、該上板27は、底板13と上,下方向で対面するものである。ここで、上板27は、鋼板材等を用いて平面視で略L字状をなす平板として形成され、横フレーム部26Aに対応する左,右方向に広幅な広幅部27Aと、縦フレーム部26Bに対応して前,後方向に延び左,右方向に狭幅となった狭幅部27Bとを有している。
【0040】
そして、広幅部27Aの前端縁部27A1は、後述する内側板28の後面部28Aに接合され、後端縁部27A2は、後述する外側板29の後面部29Aに接合されている。また、広幅部27Aの右端縁部27A3は、左縦板14のビーム接合面14Cに接合され、左端縁部27A4は、後述する外側板29の側面部29Bに接合される構成となっている。一方、狭幅部27Bの右端縁部27B1は、後述する内側板28の側面部28Bに接合され、狭幅部27Bの左端縁部27B2は、後述する外側板29の側面部29Bに接合される構成となっている。
【0041】
28は左縦板14と左サイドフレーム18とのうち上板27を挟んで左縦板14側に配置された内側板で、該内側板28は、上板27を挟んで外側板29と対面するものである。ここで、内側板28は、鋼板材等に折曲加工を施すことにより形成され、横フレーム部26Aに対応する後面部28Aと、該後面部28Aから前方に屈曲し縦フレーム部26Bに対応する側面部28Bと、該側面部28Bの下端側から左側方に屈曲し縦フレーム部26Bに対応する下面部28Cとを有している。
【0042】
そして、後面部28Aの下端縁部28A1と側面部28Bの下端縁部28B1とは、底板13の上面に接合され、後面部28Aの右端縁部28A2は、左縦板14のビーム接合面14Cに接合される構成となっている。また、側面部28Bの前端縁部28B2と下面部28Cの前端縁部28C1とは、後述のキャブ支持用前フレーム32に接合される構成となっている。
【0043】
29は左縦板14と左サイドフレーム18とのうち上板27を挟んで左サイドフレーム18側に配置された外側板で、該外側板29は、上板27を挟んで内側板28と対面するものである。ここで、外側板29は、鋼板材等に折曲加工を施すことにより形成され、横フレーム部26Aに対応する後面部29Aと、該後面部29Aから前方に屈曲し縦フレーム部26Bに対応する側面部29Bとを有している。
【0044】
そして、後面部29Aの上端縁部29A1と側面部29Bの上端縁部29B1とは、上板27の下面に接合されている。また、後面部29Aの下端縁部29A2と側面部29Bの下端縁部29B2の後部側とは、底板13の上面に接合され、側面部29Bの下端縁部29B2の前部側は、内側板28の下面部28Cに接合される構成となっている。さらに、後面部29Aの右端縁部29A3は、左縦板14のビーム接合面14Cに接合され、側面部29Bの前端縁部29B3は、後述のキャブ支持用前フレーム32に接合される構成となっている。
【0045】
このように、キャブ支持用内フレーム26は、上板27、内側板28、外側板29の2部材を互いに接合することにより形成され、横フレーム部26Aと縦フレーム部26Bとにより全体としてL字状をなすボックス構造体を構成している。
【0046】
そして、キャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aは、内側板28を構成する後面部28Aおよび側面部28Bの下端縁部28A1,28B1、外側板29を構成する後面部29Aおよび側面部29Bの下端縁部29A2,29B2を、底板13の上面に溶接等によって接合することにより、この底板13に強固に接合されている。
【0047】
また、キャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aは、上板27を構成する広幅部27Aの右端縁部27A3、内側板28を構成する後面部28Aの右端縁部28A2、外側板29を構成する後面部29Aの右端縁部29A3を、左縦板14のビーム接合面14Cに溶接等によって接合することにより、当該左縦板14に強固に接合されている。
【0048】
ここで、図8に示すように、キャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aを底板13と左縦板14とに接合した状態で、キャブ支持用内フレーム26を構成する上板27の広幅部27A、内側板28の後面部28A、外側板29の後面部29Aと、底板13との間に閉断面空間30が形成される。
【0049】
また、キャブ支持用内フレーム26の縦フレーム部26Bにおいては、上板27の狭幅部27Bと、内側板28の側面部28Bおよび下面部28Cと、外側板29の側面部29Bとによって囲まれた閉断面空間31が形成される。
【0050】
このように、本実施の形態によるキャブ支持用内フレーム26は、底板13上を左,右方向に延びる横フレーム部26Aと、該横フレーム部26Aから底板13よりも前方に突出する縦フレーム部26BとによりL字状をなすボックス構造体として形成され、横フレーム部26Aを、センタフレーム12の底板13と左縦板14とに接合することにより、図4に示すように、左縦板14の左側方にキャブとブームシリンダ(いずれも図示せず)との干渉を避けるための一定の間隔をもったスペースSを確保する構成となっている。
【0051】
32はキャブ支持用内フレーム26の先端部と左サイドフレーム18の先端部との間を連結するキャブ支持用前フレームを示し、該キャブ支持用前フレーム32は、キャブ支持用内フレーム26と共にキャブ6の前端側を支持するものである。そして、キャブ支持用前フレーム32は、図4および図5に示すように、キャブ支持用内フレーム26の縦フレーム部26Bと左サイドフレーム18との間を左,右方向に延びる上面板33と、該上面板33の前端部に接合された前面板34とにより大略構成されている。
【0052】
ここで、上面板33は、左,右方向の両端側に配置された左,右の広幅部33A,33Bと、該各広幅部33A,33Bの後端側から下方へと断面L字状に屈曲した左,右の屈曲部33C,33Dとを有している。そして、左,右の広幅部33A,33Bには、マウント取付孔33Eがそれぞれ設けられ、これら各マウント取付孔33Eには、キャブ6の前部側を弾性的に支持するマウント部材(図示せず)が取付けられる構成となっている。
【0053】
一方、前面板34は、上面板33よりも大きな長さ寸法をもって左,右方向に延び、上端側から下端側に向けて斜め後方へと傾斜した傾斜面部34Aと、該傾斜面部34Aの下端側から後方へと水平に張出す下面部34Bとを有し、傾斜面部34Aの上端部が、上面板33の前端縁部に溶接等によって接合されている。
【0054】
そして、上面板33の右広幅部33Bと前面板34の傾斜面部34Aとの右端縁部を、キャブ支持用内フレーム26を構成する内側板28の側面部28Bに接合し、上面板33の右屈曲部33Dを、キャブ支持用内フレーム26を構成する上板27の狭幅部27Bと外側板29の側面部29Bとの後端縁部に接合し、前面板34の下面部34Bの後端縁部を、キャブ支持用内フレーム26の内側板28を構成する下面部28Cの後端縁部に接合することにより、キャブ支持用内フレーム26の縦フレーム部26Bとキャブ支持用前フレーム32との間を強固に接合することができる構成となっている。
【0055】
一方、上面板33を構成する左広幅部33Aの左端縁部を左サイドフレーム18の内側面に接合し、前面板34を構成する傾斜面部34Aの後面を左サイドフレーム18の前端縁部に接合することにより、キャブ支持用前フレーム32と左サイドフレーム18との間を強固に接合することができる構成となっている。
【0056】
次に、35は左張出しビーム19よりも前側に位置してキャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aと左サイドフレーム18との間に設けられた中間連結ビームを示している。この中間連結ビーム35は、左張出しビーム19と同様に、センタフレーム12に対して左サイドフレーム18を接合する張出しビームを形成すると共に、キャブ支持用内フレーム26を補強するものである。
【0057】
ここで、中間連結ビーム35は、図4および図5に示すように、例えば鋼板材に折曲加工を施すことにより、略Z字型の断面形状をもって左,右方向に延びる板状体として形成され、キャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aと左サイドフレーム18との間に配置された上板部35Aと、センタフレーム12の底板13と左サイドフレームとの間に配置された下板部35Bとを有している。
【0058】
そして、中間連結ビーム35は、上板部35Aの右端縁部が、キャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aを構成する外側板29の側面部29Bに接合されると共に、上板部35Aの左端縁部が、左サイドフレーム18の内側面に接合されている。また、下板部35Bの右端縁部は底板13の左端部に接合され、下板部35Bの左端縁部は左サイドフレーム18の内側面に接合されている。
【0059】
これにより、中間連結ビーム35は、下板部35Bによってセンタフレーム12と左サイドフレーム18との間を連結すると同時に、上板部35Aによってキャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aを補強する構成となっている。
【0060】
本実施の形態による油圧ショベル1の旋回フレーム11は、上述の如き構成を有するもので、キャブ支持用前フレーム32と共にキャブ6を支持するキャブ支持用内フレーム26を、底板13上を左,右方向に延びる横フレーム部26Aと、横フレーム部26Aから底板13よりも前方に突出する縦フレーム部26Bとにより、L字状をなすボックス構造体として形成している。
【0061】
このため、キャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aを、センタフレーム12の底板13と左縦板14とに接合することにより、図7中に二点鎖線で示すキャブ6の右側面と左縦板14のブラケット部14Aとの間に、キャブ6とブームシリンダ(図示せず)との干渉を避けるための一定の間隔をもったスペースSを確保した状態で、キャブ支持用内フレーム26とキャブ支持用前フレーム32とによってキャブ6を強固に支持することができる。この結果、キャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aは、張出しビーム等の他の部材を介材させることなく、旋回フレーム11のうち最も強度が高い強度部材であるセンタフレーム12に対し、直接的にキャブ支持用内フレーム26の基端側を接合することができる。
【0062】
従って、後方小旋回式の油圧ショベル1において、例えばセンタフレーム12と左サイドフレーム18とを連結する張出しビームの幅寸法や高さ寸法が小さくなったとしても、この張出しビームにキャブ支持用内フレーム26を接合する必要がない。この結果、油圧ショベル1の仕様に関わらず、センタフレーム12に対するキャブ支持用内フレーム26の接合強度を高めることができる。
【0063】
しかも、本実施の形態によるキャブ支持用内フレーム26は、上板27と、内側板28と、外側板29との3部材を組合わせたボックス構造体として形成したので、キャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aを底板13と左縦板14とに接合した状態で、上板27の広幅部27A、内側板28の後面部28A、外側板29の後面部29Aと底板13との間に、閉断面空間30を形成することができる(図8参照)。また、キャブ支持用内フレーム26の縦フレーム部26Bにおいては、上板27の狭幅部27Bと、内側板28の側面部28Bおよび下面部28Cと、外側板29の側面部29Bとによって囲まれた閉断面空間31を形成することができる。
【0064】
このように、キャブ支持用内フレーム26をボックス構造体とすることにより、キャブ支持用内フレーム26自体の強度も高めることができる。このため、センタフレーム12に対するキャブ支持用内フレーム26の接合強度を高めることに加え、キャブ支持用内フレーム26自体の強度を高めることができるので、キャブ支持用内フレーム26とキャブ支持用前フレーム32によるキャブ6の支持強度を高めることができる。
【0065】
さらに、本実施の形態によれば、キャブ支持用内フレーム26の横フレーム部26Aと左サイドフレーム18との間を、中間連結ビーム35によって連結する構成としている。これにより、底板13と左縦板14とに接合されたキャブ支持用内フレーム26の基端側を、中間連結ビーム35によって補強することができる。この結果、キャブ支持用内フレーム26の接合強度を一層高めることができ、キャブ支持用内フレーム26とキャブ支持用前フレーム32によるキャブ6の支持強度を一層高めることができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態では、キャブ支持用内フレーム26を、上板27、内側板28、外側板29の3部材を互いに接合することにより、L字状をなすボックス構造体として形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば中空なパイプ材等をL字状に屈曲させることにより、キャブ支持用内フレームを形成してもよい。
【0067】
また、上述した実施の形態では、旋回フレーム11の前部左側に配置されたキャブ6を支持するため、左縦板14と左サイドフレーム18との間に、キャブ支持用内フレーム26とキャブ支持用前フレーム32とを配設した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば右縦板と右サイドフレームとの間にキャブ支持用内フレームとキャブ支持用前フレームを配設し、旋回フレームの前部右側でキャブを支持する構成としてもよい。
【0068】
さらに、上述した実施の形態では、油圧ショベルに適用される旋回フレームを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン等の他の建設機械に広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 油圧ショベル(建設機械)
6 キャブ
11 旋回フレーム
12 センタフレーム
13 底板
14 左縦板
15 右縦板
18 左サイドフレーム
19 左張出しビーム
21 右サイドフレーム
23,24 右張出しビーム
26 キャブ支持用内フレーム
26A 横フレーム部
26B 縦フレーム部
27 上板
28 内側板
29 外側板
30,31 閉断面空間
32 キャブ支持用前フレーム
35 中間連結ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と該底板上に立設された左,右の縦板とからなるセンタフレームと、該センタフレームの左,右両側に前,後方向に延びて配設された左,右のサイドフレームと、前記センタフレームと前記左,右のサイドフレームとの間にそれぞれ設けられ前記センタフレームに対し前記各サイドフレームを接合する左,右の張出しビームと、前記左,右の縦板のうち一方の縦板よりも外側に位置して設けられ、基端側が前記センタフレームに接合されると共に先端側が前記各サイドフレームのうち一方のサイドフレームと間隔をもって対面しつつ前記底板よりも前方に延びるキャブ支持用内フレームと、該キャブ支持用内フレームの先端部と前記一方のサイドフレームの先端部との間を左,右方向に連結するキャブ支持用前フレームとを備えてなる建設機械の旋回フレームにおいて、
前記キャブ支持用内フレームは、前記一方の縦板と前記底板とに接合され前記底板上を左,右方向に延びる横フレーム部と、該横フレーム部から前記底板よりも前方に突出し先端部が前記キャブ支持用前フレームに接合される縦フレーム部とによりL字状のボックス構造体として形成したことを特徴とする建設機械の旋回フレーム。
【請求項2】
前記キャブ支持用内フレームの横フレーム部と前記一方のサイドフレームとの間は、前記張出しビームのうちの一つを形成する中間連結ビームによって連結する構成としてなる請求項1に記載の建設機械の旋回フレーム。
【請求項3】
前記キャブ支持用内フレームは、平面視でL字状をなし前記底板と上,下方向で対面する上板と、該上板を挟んで前記一方の縦板側に配置された内側板と、前記上板を挟んで前記一方のサイドフレーム側に配置され前記内側板と間隔をもって対面する外側板とを有し、
前記上板、前記内側板および前記外側板によって閉断面空間を形成するボックス構造体として形成してなる請求項1または2に記載の建設機械の旋回フレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−67447(P2012−67447A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210680(P2010−210680)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】