説明

建設機械の通信システム

【課題】建設機械のアタッチメントを制御するアタッチメント用コントローラと建設機械本体に搭載された情報制御コントローラとを容易に通信可能とする。
【解決手段】建設機械10に設けられ、建設機械10の稼働情報を収集する第1のコントローラ11と、建設機械本体10に着脱可能に取り付けられ、作業用アタッチメント20の稼働情報を取得する第2のコントローラ26と、第1のコントローラ11と第2のコントローラ26とが所定の通信プロトコルに従って通信可能となるように第2のコントローラ26から送信されたデータのデータ構造を変換する変換装置50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等に取り付けられた作業用アタッチメントの稼働情報などを取得する建設機械の通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベル等の建設機械は制御の電子化、高機能化が進み、建設機械本体にはエンジンや油圧ポンプ等の構成要素毎にそれぞれ制御コントローラが設けられる。これら制御コントローラには作業量や稼働状態などの情報を記憶あるいは出力する機能が設けられ、制御コントローラからの情報に基づき建設機械の稼働管理やメンテナンス等が行われる。この場合、例えば特許文献1記載のシステムでは、各制御コントローラと通信可能な情報管理用コントローラを設け、各制御コントローラからの情報を所定の通信プロトコルに従って情報管理用コントローラに収集する。
【0003】
【特許文献1】特開2000−297443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記建設機械には作業内容に応じて種々の作業用アタッチメントが取り付けられ、通信仕様の全く異なるアタッチメント用制御コントローラを追加することがある。その場合に、アタッチメント用制御コントローラと情報管理用コントローラを通信可能とするためには、情報管理用コントローラの改造やプログラム変更等が必要となり、通信仕様の違いに容易に対応することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による建設機械の通信システムは、建設機械に設けられ、建設機械の稼働情報を収集する第1のコントローラと、建設機械本体に着脱可能に取り付けられ、作業用アタッチメントの稼働情報を取得する第2のコントローラと、第1のコントローラと第2のコントローラとが所定の通信プロトコルに従って通信可能となるように第2のコントローラから送信されたデータのデータ構造を変換する変換装置とを備えることを特徴とする。
建設機械本体の稼働情報を取得する第3のコントローラをさらに備え、第1のコントローラに設けた変換部で、第3のコントローラから送信されたデータのデータ構造を変換するようにしてもよい。
変換装置を、プログラマブルとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、建設機械の稼働情報を収集する第1のコントローラと作業用アタッチメントの稼働情報を取得する第2のコントローラとが所定の通信プロトコルに従って通信可能となるように、第2のコントローラから送信されたデータのデータ構造を変換するようにしたので、アタッチメントを変更した場合にも第1のコントローラと第2のコントローラを容易に通信可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図1〜図5を参照して本発明による建設機械の通信システムの実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る通信システムを油圧ショベルに適用した全体構成を示す図である。油圧ショベル10のアームの先端にはフロントアタッチメントとして林業用アタッチメント20が取り付けられている。このアタッチメント20の稼働情報(稼働データ)は後述するように油圧ショベル本体の情報制御コントローラ11内に取り込まれ、通信衛星30を介して、遠隔にある管理事務所の管理端末40に送信される。
【0008】
図2は林業用アタッチメント20の構成を示す拡大斜視図である。林業用アタッチメント20は、伐採された材木を把持するための一対のグラップル部21と、枝葉切りを行うための枝払い部22と、把持した材木を送り出す送材部23と、設定した長さに材木を切断するチェーンソー部24と、材木の長さを計測する計測部25とを有する。これら各部21〜25はアタッチメント制御コントローラ26(図3)により制御される。
【0009】
図3は、本実施の形態に係る通信システムの主要な構成を示すブロック図である。油圧ショベル本体10にはエンジンと、油圧ポンプや油圧アクチュエータなどの油圧機器とが設けられ、運転室にはエンジンや油圧機器の稼働状態等を表示するモニタが設けられている。エンジンはエンジン制御コントローラ12により制御され、油圧機器は油圧制御コントローラ13により制御され、モニタはモニタ制御コントローラ14により制御される。これらコントローラ12〜14は油圧ショベル本体10に搭載されている。エンジン制御コントローラ12と油圧制御コントローラ13はそれぞれエンジンおよび油圧機器の稼働データを記憶、あるいは外部ユニットへ送信し、モニタ制御コントローラ14は例えば車体のパワーニング警報や、燃料残量,冷却水温等の表示データを外部ユニットへ送信する。
【0010】
さらに油圧ショベル本体10には情報制御コントローラ11が搭載され、上記各コントローラ12〜14は情報制御コントローラ11に接続されている。情報制御コントローラ11は、所定の通信プロトコルに従いコントローラ12〜14と通信可能となるように、変換部11a〜11cにおいて各コントローラ12〜14に対応した通信プロトコル処理を行う。これによりコントローラ12〜14内のエンジンや油圧ポンプの稼働データが所定のデータ形式で情報制御コントローラ11に格納される。なお、油圧ショベル本体10に搭載されるコントローラ12〜14の仕様は設計段階で決まっており、変換部11a〜11cにおける処理はコントローラ12〜14の仕様に応じて予めプログラムされている。情報制御コントローラ11に収集された稼働データは通信端末15,アンテナを介して送信され、管理端末40(図1)に集計される。
【0011】
一方、アタッチメント制御コントローラ26は、林業用アタッチメント20の作動を制御するとともに、アタッチメント20の作動によって得られた材木の径や造材本数等の作業情報、および油圧異常等の故障情報を記憶する。この場合、作業用アタッチメントは油圧ショベル本体10に搭載されたエンジンや油圧ポンプ等と異なり、作業用途に応じて種々のものに変更され、自社製のアタッチメントを常に用いるとも限らない。そのため、アタッチメント制御コントローラを情報制御コントローラ11と通信可能とするには、情報制御コントローラ11の交換やプログラム変更等が必要となり、これではアタッチメント変更に容易に対応することができない。とくに林業用アタッチメント20などは稼働データの種類も多く、アタッチメント制御コントローラ26の構成が複雑であるため、情報制御コントローラ自体の構成を変更することで通信可能とすることは容易ではない。また、情報制御コントローラ11にはコントローラ12〜14からの稼働データが累積して記憶され、端末装置15との通信プロトコルも決まっているため、この点でもアタッチメントの変更の度に情報制御コントローラ11の交換やプログラム変更等をすることは好ましくない。
【0012】
そこで、本実施の形態では、アタッチメント制御コントローラ26と情報制御コントローラ11の間にプログラム可能なプロトコル変換器(プログラマブルプロトコル変換器)50を設け、プロトコル変換器50を介してコントローラ11,26間の通信を行う。すなわち所定の通信プロトコルに従って情報制御コントローラ11と通信可能となるように、プロトコル変換器50によりコントローラ26のデータフォーマット(データ構造)を変換する。
【0013】
図4は、本実施の形態に係る通信システムにおけるデータ構造の一例を示す図である。情報制御コントローラ11には図示のように共通通信フォーマットB14の形式でデータが格納され、このデータ構造により通信端末15を介し管理端末40との通信を行う。すなわち共通通信フォーマットは、データID,機種コード,号機,データ長,種々のデータ,チェックサムの各項目を含むデータ構造B14として表される。
【0014】
制御コントローラ12,13からのデータは、例えば図示のように車体システム作業日報としてのデータ構造B15に変換部11a〜11cにて変換される。すなわちデータID(D1),日付,油圧制御コントローラ13に記憶されたポンプ稼働時間,エンジン制御コントローラ12に記憶されたエンジン稼働時間を含むデータ構造B15に変換される。情報制御コントローラ11は、データ構造B15を有するデータを共通通信フォーマットのデータ構造B14に変換する。すなわち図4で矢印で示すように、制御コントローラ12,13からのデータは、共通通信フォーマットB14の対応するデータ項目位置に格納される。なお、図示は省略するが、制御コントローラ12〜14からのデータは、アラーム情報やヒストグラム情報のデータ構造にも変換され、同様に共通通信フォーマットB14の対応するデータ項目位置に格納される。
【0015】
アタッチメント制御コントローラ26には例えば作業詳細情報B10として造材本数,材積,材径別作業本数,材長別作業本数などが記憶され、故障情報B11として油圧異常,センサ類異常,その他エラーが記憶されている。材積とは加工した木材の径と長さから求められる生産材の体積を意味する。コントローラ26はアタッチメントメーカ独自の仕様であり、コントローラ26に記憶されたデータのうち必要なものをプロトコル変換器50が取得する。
【0016】
作業詳細情報B10のデータは、プロトコル変換器50により例えばアタッチメント20の作業日報に対応したデータ構造B12に変換される。すなわちデータID(D2),日付,作業時間,造材本数,材積などを含むデータ構造B12に変換される。この場合、プロトコル変換器50は作業詳細情報B10のうち造材本数と材積のみを取得し、日付および時刻のデータを情報制御コントローラ11から一定間隔で通信により取得し、作業時間を内部のタイマでカウントする。
【0017】
また、故障情報B11のデータは、プロトコル変換器50により例えばアタッチメント20のアラーム情報に対応したデータ構造B13に変換される。すなわちデータID(A2),アラームの発生日付,エラーコードなどを含むデータ構造B13に変換される。これらデータ構造B12,B13のデータは、図4で矢印で示すように、それぞれ共通通信フォーマットB14の対応するデータ項目位置に格納され、これによりデータフォーマットの変換が行われる。
【0018】
なお、アタッチメント制御コントローラ26とプロトコル変換器50、およびプロトコル変換器50と情報制御コントローラ11の間の通信形態は有線でもよく、無線でもよい。
【0019】
次に、アタッチメント制御コントローラ26とプロトコル変換器50と情報制御コントローラ11における処理の一例を図5(a)〜(c)のフローチャートにより説明する。まず、所定のタイミングでプロトコル変換器50がアタッチメント制御コントローラ26にアタッチメント情報要求のコマンドを出力する(ステップS3)。アタッチメント制御コントローラ26はこのコマンドを受信すると(ステップS1)、そのアタッチメント情報要求に従い図4の作業詳細情報B10や故障情報B11をプロトコル変換器50に送信する(ステップS2)。
【0020】
プロトコル変換器50はこのアタッチメント制御コントローラ26からの信号を受信する(ステップS4)。そして、受信したデータのデータ構造を変換し、図4のB12,B13に示すようにアタッチメントの作業日報,アラーム情報やヒストグラム情報等に対応したデータを作成する(ステップS5)。さらに、作成したデータを情報制御コントローラ11に送信する(ステップS6)。
【0021】
情報制御コントローラ11はエンジン制御コントローラ12からエンジン情報のデータを受信し(ステップS7)、油圧制御コントローラ13から油圧情報のデータを受信し(ステップS8)、モニタ制御コントローラ14からモニタ情報のデータを受信する(ステップS9)。そして、これらのデータから、油圧ショベル本体の作業日報やアラーム情報,ヒストグラム情報等に対応したデータB14を作成し、データIDとデータ項目を共通通信フォーマットB14の対応するデータ項目位置に格納する(ステップS10)。さらに、プロトコル変換器50からプロトコル変換されたデータを受信し、そのデータIDとデータ項目を共通通信フォーマットB14の対応するデータ項目位置に格納する(ステップS11)。次いで、油圧ショベル本体10とアタッチメント20の稼働データを通信端末15を介して管理端末40へ送信する(ステップS12)。
【0022】
なお、ステップS5のヒストグラム情報およびステップS10のアラーム情報,ヒストグラム情報もそれぞれ作業日報のデータ構造B12およびB15と同一のデータ構造を有し、それらのデータも共通通信フォーマットB14の対応するデータ項目位置に格納され、これによりデータフォーマットの変換が行われる。
【0023】
このように本実施の形態では、アタッチメント制御コントローラ26と情報制御コントローラ11の通信経路の間にプロトコル変換器50を介装し、アタッチメント制御コントローラ26のデータ構造をプロトコル変換器50により変換するようにした。これによりアタッチメント制御コントローラ26と情報制御コントローラ11の通信仕様が異なる場合において、情報制御コントローラ自体の構成を変更することなく、所定の通信プロトコルに従いコントローラ11,26間の通信を行うことができる。すなわち図4に示す林業アタッチメント稼働データのデータ構造B10,B11を、プロトコル変換器50によりデータ構造B12,B13にそれぞれ変換し、情報制御コントローラ11において、変換されたデータのデータIDとデータ項目を共通通信フォーマットB14の対応するデータ項目位置に格納してデータ変換処理を行い、その結果、コントローラ11,26間の通信を容易に行うことができる。この場合、油圧ショベル本体10に搭載された制御コントローラ12〜14と情報制御コントローラ11との通信はプロトコル変換器50を介さずに行うので、プロトコル変換器50はアタッチメント制御コントローラ26に対応したプロトコル変換処理を行うだけでよく、プロトコル変換器50の構成を簡素化できる。さらに、プロトコル変換器50はプログラマブルプロトコル変換器であり、各種アタッチメントに、すなわち種々のデータ構造を有するアタッチメントに対して、適切にデータ構造変換プロトコルを定義することができ、汎用性に富むものである。
【0024】
なお、上記実施の形態では、プロトコル変換器50からのコマンドを受けてアタッチメント制御コントローラ26が内部データを出力するようにしたが、アタッチメントメント制御コントローラ26が所定周期で内部データを出力するように構成してもよい。情報制御コントローラ11から管理端末40へデータを送信するようにしたが、データ読み取り装置などを情報制御コントローラ11に接続し、情報制御コントローラ11からデータを読み取ってもよい。
【0025】
情報制御コントローラ11(第1のコントローラ)とアタッチメント制御コントローラ26(第2のコントローラ)とが所定の通信プロトコルに従って通信可能となるようにアタッチメント制御コントローラ26から送信されたデータのデータ構造を変換するのであれば、変換装置としてのプロトコル変換器50の構成は上述したものに限らない。油圧ショベル本体10の制御コントローラ12〜14(第3のコントローラ)から送信されたデータを情報制御コントローラ11の変換部11a〜11cで変換して制御コントローラ12〜14と情報制御コントローラ11を通信可能としたが、他の制御コントローラと情報制御コントローラ11を通信可能としてもよい。プログラマブルなプロトコル変換器50としたが、プログラマブルではなくアタッチメントに対応した専用品としてもよい。
【0026】
油圧ショベル本体10に林業用アタッチメント以外の他の作業用アタッチメントを取り付けるようにしてもよく、プロトコル変換器50で変換されるデータ構造は上述したものに限らない。また、上記実施の形態は、油圧ショベル10に適用したが、作業用アタッチメントを着脱可能な他の建設機械にも本発明を同様に適用できる。すなわち本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の通信システムに限定されない。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システムを油圧ショベルに適用した全体構成を示す図。
【図2】林業用アタッチメントの構成を示す斜視図。
【図3】本発明の実施の形態に係る通信システムの主要な構成を示すブロック図。
【図4】本発明の実施の形態に係る通信システムにおけるデータ構造の一例を示す図。
【図5】本発明の実施の形態に係る通信システムにおける処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0028】
10 油圧ショベル
11 情報制御コントローラ
11a〜11c 変換部
12 エンジン制御コントローラ
13 油圧制御コントローラ
14 モニタ制御コントローラ
20 林業用アタッチメント
26 アタッチメント制御コントローラ
50 プロトコル変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に設けられ、前記建設機械の稼働情報を収集する第1のコントローラと、
前記建設機械本体に着脱可能に取り付けられ、作業用アタッチメントの稼働情報を取得する第2のコントローラと、
前記第1のコントローラと前記第2のコントローラとが所定の通信プロトコルに従って通信可能となるように前記第2のコントローラから送信されたデータのデータ構造を変換する変換装置とを備えることを特徴とする建設機械の通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の通信システムにおいて、
前記建設機械は、建設機械本体の稼働情報を取得する第3のコントローラをさらに備え、
前記第1のコントローラは、前記第3のコントローラから送信されたデータのデータ構造を変換する変換部を有することを特徴とする建設機械の通信システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械の通信システムにおいて、
前記変換装置は、プログラマブルであることを特徴とする建設機械の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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