説明

建設機械の運転装置

【課題】操作レバーを操作するときと腕を休めるときとの両方におけるアームレストに対する前腕の座りを向上させることができる建設機械の運転装置の提供。
【解決手段】アームレスト11が、オペレータ100の前腕101を操作レバー18の把持部18aの方向に傾いた姿勢にして支持する操作時用支持面11aと、前腕101を床6aとほぼ平行な姿勢にして支持する非操作時用支持面11bを有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル、ホイールローダ、リフトトラック等の建設機械に搭載され、運転席と、この運転席の側方に配置され、オペレータの前腕を支持するアームレストと、このアームレストの前方に配置される操作レバーとを備える建設機械の運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建設機械の運転装置は、運転席と、この運転席の側方に配置され、オペレータの前腕を支持するアームレストと、このアームレストの前方に配置される操作レバーとを備えている。
【0003】
前記アームレストの上面全体、すなわちオペレータの前腕を支持する面は、運転席が設置される床と平行な平面からなっている。また、アームレストの上面の高さ位置は、操作レバーの把持部と同じ高さ位置か、低い位置に配置されている。
【0004】
このように構成された建設機械の運転装置では、操作レバーの把持部がアームレストの上面と同じ高さ位置か低い位置に配置されているので、オペレータは、自身の前腕を、操作レバーの把持部の方向へ傾けた状態で、すなわち斜め下方に傾けた向けた状態で、アームレストの前端部にもたせかけて、操作レバーの操作を行う。しかし、アームレストの前端部に前腕をもたせかけた状態では、前腕の一部が集中的にアームレストの前端部に圧迫されるので、アームレストに対する前腕の座りが悪い。
【0005】
これに対し、特許文献1に記載の技術は、床に対するアームレストの角度が調整可能になっている。これにより、アームレストを操作レバーの把持部に向かって斜めに傾けておけば、アームレストに前腕を載置したときに、前腕がアームレストによって操作レバーの把持部の方向に傾けられた姿勢で支持されるので、前述したアームレストに対する前腕の座りの悪さは解消できる。しかし、アームレストが傾いた状態では、操作レバーを操作するときだけでなく、操作レバーの操作を行わず腕を休めるときにも、前腕がアームレストによって斜めに傾けられた姿勢で支持されるので、アームレストに対する前腕の座りが悪くなる。
【特許文献1】特開平10−331199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来の建設機械の運転装置に備えられるアームレストは、操作レバーを操作するときと腕を休めるときのいずれかにおいて、アームレストに対する前腕の座りが悪く、オペレータの腕や肩の疲労を軽減ために改善する余地があった。
【0007】
本発明は、上述の現状を考慮してなされたものであり、その目的は、操作レバーを操作するときと腕を休めるときとの両方におけるアームレストに対する前腕の座りを向上させることができる建設機械の運転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明は、次の〔1〕,〔2〕のように構成してある。
【0009】
〔1〕 本発明は、運転席と、この運転席の側方に配置され、オペレータの前腕を支持するアームレストと、このアームレストの前方に配置される操作レバーとを備える建設機械の運転装置において、前記アームレストが、前記前腕を前記操作レバーの把持部の方向に傾いた姿勢にして支持する操作時用支持面と、この操作時用支持面の後方に設けられ、前記前腕を前記運転席が設置される床とほぼ平行な姿勢にして支持する非操作時用支持面とを有することを特徴とする。
【0010】
このように構成した本発明では、操作レバーを操作するときに、前腕を操作時用支持面に載置すると、操作時用支持面が前腕を操作レバーの把持部の方向に傾いた姿勢にして支持する。また、操作レバーを操作せず腕を休めるときに、前腕を非操作時用支持面に載置すると、非操作時用支持面が前腕を床とほぼ平行な姿勢にして支持する。これらにより、操作レバーを操作するときと腕を休めるときとの両方におけるアームレストに対する前腕の座りを向上させることができる。
【0011】
〔2〕本発明は、〔1〕記載の発明において、前記操作時用支持面が、前記非操作時用支持面側から前記操作レバーの把持部に向かって傾斜する面からなり、前記非操作時用支持面が、前記床と平行な面からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前述したように、本発明によれば、操作レバーを操作するときと腕を休めるときとの両方におけるアームレストに対する前腕の座りを向上させることができる。この結果、オペレータの腕や肩の疲労の軽減に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の建設機械の運転装置の一実施形態について図を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明の建設機械の運転装置の一実施形態が備えられるホイールローダの側面図である。図2は本実施形態を示す図であって、オペレータが操作レバーを操作するときの、オペレータの前腕とアームレストの位置関係を示す図であり、図3はオペレータが腕を休めるときの、オペレータの前腕とアームレストの位置関係を示す側面図である。
【0015】
はじめに、本実施形態が備えられる建設機械、例えば図1に示すホイールローダ1の構成の概略について説明する。
【0016】
図1において、2はホイールローダ1の車体である。車体2は、作業機3および前輪4が設けられる車体前部2aと、運転室6、機械室7および後輪5が設けられる車体後部2bとを、運転室2の下方において回動可能に連結してある。つまり、ホイールローダ1は、車体2を屈折させることによって操舵されるようになっている。図1に示す2cは、車体前部2aと車体後部2bを回動可能に結合するピン結合部である。
【0017】
前記作業機3は、一端部が車体前部2aに上下方向への回動が可能となるよう結合されるブーム3aと、このブーム3aの他端部に上下方向への回動が可能となるよう結合されるバケット3bとを備えている。
【0018】
次に、本実施形態の構成について図2を用いて説明する。
【0019】
本実施形態は、図2に示す運転装置7であり、ホイールローダ1の運転室6内に設けられている。
【0020】
図2において、8は、運転室6の床6aに設置される運転席である。この運転席8は、座部9、背もたれ10を備えている。図2において、12は、運転席8が固定される台である。この台12は、運転席8の前後位置、高さ位置、および背もたれ10の角度の調節を可能にする機構を備えている。
【0021】
運転席8の両側方には、オペレータ100の前腕101を支持するアームレスト11を配置して、背もたれ10の側部に取付けてある。アームレスト11の前方には、作業機3の動作を指令する操作レバー18を設けてある。
【0022】
また、運転席8の前方には、インストルメントパネル13を設けてある。このインストルメントパネル13からは、ステアリングコラム14を後方斜め上向きに突出させてあり、このステアリングコラム14の上端には、車体2の屈折を指令するためのステアリングホイール15を設けてある。ステアリングコラム14の側部には、前後進を切換えるための前後進切換レバー16を設けてある。
【0023】
また、インストルメントパネル13の下方における床6aには、走行速度を指令するアクセルペダル17を設置してある。床6aには、図示しないが、アクセルペダル17の他にブレーキペダルも設置してある。
【0024】
特に本実施形態では、アームレスト11が、前腕101を操作レバー18の把持部18aの方向に傾いた姿勢にして支持する操作時用支持面11a(図3参照)と、この操作時用支持面11aの後方に設けられ、前腕101を床6aとほぼ平行な姿勢にして支持する非操作時用支持面11bとを形成してある。
【0025】
操作時用支持面11aは、側面視直線状の面からなり、非操作時用支持面11b側から操作レバー18に向かって傾斜させてある。操作時用支持面11aの前後方向の長さは、例えば前腕101の長さの3分の1以上となるよう設定してある。また、非操作時用支持面11bは、側面視直線状の面からなり、床6aと平行にしてある。
【0026】
このように構成した本実施形態では、図3に示すように、操作レバー18を操作するときに、オペレータ100が前腕101を操作時用支持面11aに載置すると、操作時用支持面11aが前腕101を操作レバー18の把持部18aの方向に傾いた姿勢にして支持する。また、図2に示すように、操作レバー18を操作せず腕を休めるときに、オペレータ100が前腕101を非操作時用支持面11bに載置すると、非操作時用支持面11bが前腕101を床6aとほぼ平行な姿勢にして支持する。
【0027】
本実施形態では、次の効果を得られる。
【0028】
本実施形態では、アームレスト11に操作時用支持面11aと非操作時用支持面11bを設けたことによって、操作レバー18を操作するときと腕を休めるときとの両方におけるアームレスト11に対する前腕の座りを向上させることができる。この結果、オペレータ100の腕や肩の疲労の軽減に貢献できる。
【0029】
なお、本実施形態では、操作時用支持面11aを側面視直線状にしてあるが、本発明はこれに限るものではなく、曲線状にしてもよい。このようにしたものでは、運転席8の前後位置や高さ位置を調節したことに伴って、操作レバー18の把持部18aに対する操作時支持面11aの位置が変化した場合に、前腕101の角度を曲線状の操作時用支持面11aに沿って傾けることによって、把持部18aに対する操作時用支持面11aの位置の変化量を吸収することができる。
【0030】
また、本実施形態は、ホイールローダ1に設けられた場合の例であるが、本発明を設けることのできる建設機械はホイールローダ1に限るものではない。つまり、操作時用支持面11aと非操作時用支持面11bとを形成したアームレスト11は、アームレストの前方に操作レバーが配置される運転装置であれば適用でき、したがって、そのような運転装置を備える油圧ショベル、リフトトラック、クレーン等の建設機械に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の建設機械の運転装置の一実施形態が備えられるホイールローダの側面図である。
【図2】本実施形態を示す図であって、オペレータが操作レバーを操作するときの、オペレータの前腕とアームレストの位置関係を示す側面図である。
【図3】オペレータが腕を休めるときの、オペレータの前腕とアームレストの位置関係を示す側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ホイールローダ(建設機械)
6 運転室
7 運転装置
8 運転席
11 アームレスト
11a 操作時支持面
11b 非操作時支持面
18 操作レバー
100 オペレータ
101 前腕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席と、この運転席の側方に配置され、オペレータの前腕を支持するアームレストと、このアームレストの前方に配置される操作レバーとを備える建設機械の運転装置において、
前記アームレストが、前記前腕を前記操作レバーの把持部の方向に傾いた姿勢にして支持する操作時用支持面と、
この操作時用支持面の後方に設けられ、前記前腕を前記運転席が設置される床とほぼ平行な姿勢にして支持する非操作時用支持面とを有することを特徴とする建設機械の運転装置。
【請求項2】
前記操作時用支持面が、前記非操作時用支持面側から前記操作レバーの把持部に向かって傾斜する面からなり、前記非操作時用支持面が、前記床と平行な面からなることを特徴とする建設機械の運転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−6721(P2006−6721A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190108(P2004−190108)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】