説明

建設機械の非常停止システムおよび建設機械

【課題】非常停止時にも機械の状況把握や非常停止か否かを判断できる建設機械の非常停止システムおよび建設機械を提供する。
【解決手段】第1スイッチ52と、第2スイッチ53と、作業機を停止させる作業機停止手段54と、エンジンを停止させる第1の電子機器14と、第1および第2スイッチからの信号に基づいて、作業機停止手段に作業機を停止させる作業機停止指令および第1の電子機器にエンジンを停止させるエンジン停止指令を行う第2の電子機器51とを備え、第1および第2の電子機器を含む複数の電子機器の各々は、イグニッションスイッチ21を介してバッテリに接続される電力供給ラインを備え、第2の電子機器51は、イグニッションスイッチ21および第1スイッチ52を介してバッテリに接続される第1信号供給ラインと、イグニッションスイッチ21および第2スイッチ53を介してバッテリに接続される第2信号供給ラインとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機および複数の電子機器を備えた建設機械の非常停止システム、およびこの非常停止システムを備えた建設機械に関する、
【背景技術】
【0002】
近年、建設機械では、作業効率の向上や作業時の快適性の改善を図るために、各種センサや電子機器が搭載されている。これら電子機器の処理によって、作業用機械における稼動状況や故障状況等の各種情報が取得できるようになっており、取得した情報が作業用機械のメンテナンス管理や作業管理に用いられている。
【0003】
ところで、建設機械においては、安全性確保の理由から、非常時に作業用機械の動作を停止させるための種々の方法が提案されている。
建設機械を非常停止させる最も簡単な方法は、イグニッションスイッチをオフすることである。イグニッションスイッチをオフすれば、電子機器への通電が遮断されるため、建設機械の走行、操舵、および制動等の動作やエンジンなどを全て停止することができる。
【0004】
また、建設機械を非常停止させる別の方法として、バッテリと各種電子機器との間に非常停止スイッチを設け、スイッチの操作により電子機器への電力供給を強制的に遮断する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−173299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、イグニッションスイッチは、一般的に運転室内に設けられている。このため、整備等の理由で運転室外にいる人間が、イグニッションスイッチをオフして建設機械を非常停止させようとした場合には、一旦運転席まで移動しなければならないという問題がある。
【0007】
一方、上記特許文献1の構成において非常停止スイッチをオンしたり、またはイグニッションスイッチをオフしたりして、建設機械の動作を停止させた場合には、電子機器への通電が遮断されるため、電子機器が機能しなくなってしまう。このため、電子機器から建設機械の各種状況を把握することができなくなり、必要な情報が得られなくなるという問題がある。
また、全電子機器が機能しなくなるため、スイッチ操作が非常停止操作なのか、または通常の停止操作なのかを判断することができず、非常停止時の状況解析ができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、建設機械の非常停止時にも、建設機械の状況や非常停止操作を取得できる非常停止システム、およびこの非常停止システムを備えた建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る非常停止システムは、作業機および複数の電子機器を備えた建設機械の非常停止システムであって、第1スイッチと、前記第1スイッチとは別に設けられた第2スイッチと、前記作業機の動作を停止させる作業機停止手段と、前記建設機械のエンジンを停止させる第1の電子機器と、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチからの信号に基づいて、前記作業機停止手段に前記作業機の動作を停止させる作業機停止指令と、前記第1の電子機器に前記エンジンを停止させるエンジン停止指令とを行う第2の電子機器とを備え、前記第1の電子機器および前記第2の電子機器を含む前記複数の電子機器の各々は、イグニッションスイッチを介して前記建設機械のバッテリに接続される電力供給ラインを備え、前記第2の電子機器は、前記イグニッションスイッチおよび前記第1スイッチを介して前記バッテリに接続される第1信号供給ラインと、前記イグニッションスイッチおよび前記第2スイッチを介して前記バッテリに接続される第2信号供給ラインとを備えていることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る非常停止システムは、第1発明において、前記第2の電子機器は、前記第1スイッチの開閉状態を判定する第1スイッチ状態判定手段と、前記第2スイッチの開閉状態を判定する第2スイッチ状態判定手段と、前記第1スイッチ状態判定手段および前記第2スイッチ状態判定手段の判定結果に基づいて、前記作業機停止指令および前記エンジン停止指令の生成および出力を行う制御指令生成手段とを備え、前記制御指令生成手段は、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのうち前記第1スイッチのみが閉状態のときには、前記作業機停止手段に前記作業機停止指令を出力し、前記第2スイッチが閉状態のときには、前記作業機停止手段に前記作業機停止指令を出力し、かつ、前記第1の電子機器に前記エンジン停止指令を出力することを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る建設機械は、当該建設機械における作業を行う作業機と、複数の電子機器と、第1発明または第2発明の非常停止システムとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明に係る非常停止システムによれば、作業機停止手段に作業機の動作を停止させる作業機停止指令と、第1の電子機器にエンジンを停止させるエンジン停止指令とを行う第2の電子機器を備え、第2の電子機器は、イグニッションスイッチを介して建設機械のバッテリに接続される電力供給ライン40と、イグニッションスイッチおよび第1スイッチを介してバッテリに接続される第1信号供給ライン41と、イグニッションスイッチおよび第2スイッチを介してバッテリに接続される第2信号供給ライン42とを備えている。
【0013】
これによれば、第2の電子機器を含む複数の電子機器の各々は、イグニッションスイッチを介してバッテリに接続される電力供給ライン40を備えているため、第1スイッチおよび第2スイッチの開閉状態にかかわらず、イグニッションスイッチが閉状態であれば各電子機器に電力が供給される。また、第2の電子機器は、電力供給ライン40とは別に、第1信号供給ライン41および第2信号供給ライン42を備え、第2の電子機器には、第1スイッチおよび第2スイッチの開閉状態に応じた信号が供給される。このため、第2の電子機器は、各電子機器に電力が供給されたままの状態で、第1スイッチおよび第2スイッチからの信号に基づいて、作業機停止手段に作業機の動作を停止させる作業機停止指令および第1の電子機器にエンジンを停止させるエンジン停止指令を行うことができる。従って、非常停止時にも、各電子機器における建設機械の状況や、第1スイッチおよび第2スイッチの非常停止状況に関する情報を取得することができる。
【0014】
第2発明に係る非常停止システムによれば、第2の電子機器は、第1スイッチおよび第2スイッチのうち第1スイッチのみが閉状態のときには、作業機停止手段に作業機停止指令を出力し、第2スイッチが閉状態のときには、作業機停止手段に作業機停止指令を出力するとともに、第1の電子機器にエンジン停止指令を出力する。
これによれば、第1スイッチおよび第2スイッチにより、作業機のみを停止させる場合と、作業機およびエンジンを停止させる場合とに分けて建設機械を停止させることができるため、非常時の停止パターンを状況に応じて選択できる。このため、作業機のみを停止させれば安全性が確保されるような状況で、必要以上にエンジンが停止されてしまうのを防止でき、非常停止状態の解除後に再度エンジンを始動する手間を省くことができる。
また、非常停止時にも第1スイッチおよび第2スイッチの開閉状態が把握できるので、第1スイッチおよび第2スイッチの開閉状態から、非常停止時の状況をより詳細に分析することができる。
【0015】
第3発明によれば、第1発明および第2発明の効果を奏する非常停止システムを備えた建設機械を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
〔1〕非常停止システムの構成
図1には、本発明の第1実施形態に係る非常停止システムを備えたショベル1の模式図が示されている。
ショベル1は、作業機11、キャブ12、エンジン13、エンジンコントローラ(第1の電子機器)14、モニタパネル15、モニタ装置(電子機器)16、通信端末(電子機器)17、アンテナ18、バッテリ19、および非常停止コントローラ(第2の電子機器)51を備えている。
【0017】
作業機11は、図示しない作業機コントローラにより制御され、キャブ12内の操作レバーの操作信号に基づいて、掘削や地均し等の作業を行う。この作業機11は、エンジン13を動力源として油圧駆動され、エンジン13の出力はエンジンコントローラ14によって制御される。エンジン13の冷却水温や燃料残量等のショベル1の各種状態は、キャブ12内に設けられたモニタパネル15に表示され、モニタパネル15の表示がモニタ装置16により制御される。通信端末17は、モニタパネル15に表示される冷却水温や燃料残量の他、エンジン回転数、バッテリ電圧、ショベル1の稼動時間および故障履歴等の各種情報を取得し、通信端末17に接続されたアンテナ18を介して、図示しない管理サーバに送信する。
【0018】
これらの要素のうち、エンジンコントローラ14、モニタ装置16、通信端末17、および非常停止コントローラ51は、図2に示すように、ネットワーク20に接続され、互いに通信可能に構成されている。また、エンジンコントローラ14、モニタ装置16、通信端末17、および非常停止コントローラ51は、それぞれイグニッションスイッチ21を介してバッテリ19に接続される電力供給ライン40を備えている。
【0019】
非常停止システム5の構成を模式的に示す図2において、非常停止システム5は、非常停止コントローラ51、第1スイッチ52、第2スイッチ53、作業機制御弁54、第1警告ランプ55、第2警告ランプ56、および警報ブザー57を備えている。
【0020】
第1スイッチ52および第2スイッチ53は、作業機11やエンジン13を非常停止させるスイッチであり、誤作動を防止するためのロック式のカバーに覆われて、ショベル1の外部に設けられている。このうちの第1スイッチ52は、ショベル1の走行動作や作業機11の動作等、エンジン13以外のショベル1の動作を停止させるスイッチであり、第2スイッチ53は、ショベル1の全動作およびエンジン13を停止させるスイッチである。これら第1スイッチ52および第2スイッチ53において、それぞれの一方の端子はイグニッションスイッチ21を介してバッテリ19に電気的に接続され、それぞれの他方の端子は、非常停止コントローラ51に電気的に接続されている。
【0021】
作業機制御弁(作業機停止手段)54は、作業機コントローラからの制御指令に基づいて、作業機11の駆動を制御する電磁弁であり、図2に太線で示すように、作業機制御弁54のソレノイドへの通電が実施されることで作業機制御弁54の弁位置が動き、作業機11が駆動される。従って、この作業機制御弁54のソレノイドへの通電が遮断されると、作業機11の動作が停止されることになる。
【0022】
第1警告ランプ55、第2警告ランプ56、および警報ブザー57は、ショベル1が非常停止状態であることを報知させるものであり、それぞれが非常停止コントローラ51およびグランドに電気的に接続されている。そして、これら第1警告ランプ55、第2警告ランプ56、および警報ブザー57は、第1スイッチ52および第2スイッチ53と同様に、ショベル1の外部に設けられている。
【0023】
非常停止コントローラ51は、第1スイッチ52および第2スイッチ53の信号状態に基づいて、ショベル1の走行や作業機11等の動作、およびエンジン13を停止させる。このため、非常停止コントローラ51は、イグニッションスイッチ21および第1スイッチ52を介してバッテリ19に接続される第1信号供給ライン41と、イグニッションスイッチ21および第2スイッチ53を介してバッテリ19に接続される第2信号供給ライン42とを備え、非常停止コントローラ51の入力側には、ショベル1に設けられ、ショベル1の走行情報を出力する走行圧力スイッチ22が電気的に接続されている。
【0024】
また、非常停止コントローラ51の出力側には、作業機制御弁54、第1警告ランプ55、第2警告ランプ56、警報ブザー57が電気的に接続され、非常停止コントローラ51は、作業機制御弁54に作業機11の動作を停止させる作業機停止指令を行うとともに、第1警告ランプ55、第2警告ランプ56、および警報ブザー57の駆動を制御する。さらに、非常停止コントローラ51は、ネットワーク20を介してエンジンコントローラ14、モニタ装置16、通信端末17と接続されており、非常停止コントローラ51からは、エンジン13を停止させるエンジン停止指令がエンジンコントローラ14に送信される。また、非常停止コントローラ51からは、ショベル1が非常停止状態にある旨の警告表示をモニタパネル15に表示させる指令がモニタ装置16に送信され、第1スイッチ52および第2スイッチ53の信号状態やショベル1の停止状態などの情報が通信端末17に送信される。
【0025】
〔2〕非常停止コントローラ51におけるの非常停止制御の制御構造
次に、図3を参照して、非常停止コントローラ51における非常停止制御の制御構造について説明する。
非常停止コントローラ51は、エンジン起動状態判定手段511、第1スイッチ状態判定手段512、第2スイッチ状態判定手段513、イグニッションスイッチ状態判定手段514、停車判定手段515、および制御指令生成手段516を備えている。
【0026】
エンジン起動状態判定手段511は、エンジンコントローラ14から取得したエンジン回転数に基づいて、エンジン13が起動状態にあるか否かを判定する。具体的に、エンジン起動状態判定手段511は、エンジン回転数が所定値以上になっているか否かを判定する。
ここで、判定に用いられる所定回転数は、エンジンのアイドリング回転数の近傍値であり、例えば500rpmが用いられる。
【0027】
第1スイッチ状態判定手段512は、第1スイッチ52からの入力信号に基づいて、第1スイッチ52の開閉状態を判定し、第2スイッチ状態判定手段513は、第2スイッチ53からの入力信号に基づいて、第2スイッチ53の開閉状態を判定する。すなわち、第1スイッチ状態判定手段512は、第1スイッチ52がオンの状態にあるか否かを判定し、第2スイッチ状態判定手段513は、第2スイッチ53がオンの状態にあるか否かを判定する。
【0028】
イグニッションスイッチ状態判定手段514は、イグニッションスイッチ21からの入力信号に基づいて、イグニッションスイッチ21の開閉状態を判定する。
停車判定手段515は、ショベル1に設けられた走行圧力スイッチ22の出力信号に基づいて、ショベル1が停車しているか否かを判定する。具体的に、停車判定手段515は、ショベル1の速度がゼロまたは最低速度にある場合は停車していると判定し、そうでない場合には走行していると判定する。
【0029】
制御指令生成手段516は、各判定手段512,513,514,515の判定結果に基づいて、作業機制御弁54に作業機11の動作を停止させる作業機停止指令を行うとともに、第1警告ランプ55、第2警告ランプ56、および警報ブザー57に対する制御指令の生成および出力を行う。この際、制御指令生成手段516は、モニタパネル15に警告表示させる旨の制御指令をモニタ装置16に対して出力する。また、制御指令生成手段516は、各判定手段512,513,514,515の判定結果に基づいて、エンジンコントローラ14に対してエンジン13を停止させるエンジン停止指令を行う。つまり、制御指令生成手段516は、ショベル1の走行や作業機11等の動作の停止させる指令と、エンジン13を停止させる指令と、第1警告ランプ55、第2警告ランプ56、警報ブザー57、およびモニタパネル15等の警告手段に警告させる指令とを行う。
【0030】
〔3〕非常停止システム5の作用
以下、図4〜図6に基づき、非常停止システム5の作用について説明する。
先ず、非常停止コントローラ51のエンジン起動状態判定手段511は、エンジンが起動状態にあるか否かを判定する(ステップS1)。ここで、エンジンが起動されていないと判定された場合は、エンジンが起動されたと判定されるまで、ステップS1の処理を繰り返す。
【0031】
次に、第2スイッチ状態判定手段513は、第2スイッチ53がオンされているか否か、つまり、第2スイッチ53が閉状態にあるか否かを判定する(ステップS2)。
ステップS2において、第2スイッチ53がオンの状態にないと判定されると、第1スイッチ状態判定手段512は、第1スイッチ52がオンされているか否かを判定する(ステップS3)。
【0032】
そして、第1スイッチ52がオンの状態にあると判定されると、制御指令生成手段516は、ショベル1の動作を停止させる指令を生成し、作業機制御弁54への通電を遮断する。これにより、作業機11の動作が停止される。また、制御指令生成手段516は、第1警告ランプ55を点灯する制御指令と警報ブザー57を鳴動させる制御指令とを生成し、それぞれ第1警告ランプ55および警報ブザー57に出力する。さらに、制御指令生成手段516は、作業機11を含むショベル1の動作が非常停止されている旨をモニタパネル15に表示させる制御指令を生成し、モニタ装置16に出力する(ステップS4)。
【0033】
この際、エンジンコントローラ14、モニタ装置16、通信端末17、および非常停止コントローラ51には、図5に太線で示すように、電力供給ライン40から電力が供給されているため、エンジンコントローラ14、モニタ装置16、通信端末17、および非常停止コントローラ51は、それぞれ機能し続けることができる。例えば、エンジンコントローラ14は、エンジン回転数を出力でき、モニタ装置16は、モニタパネル15の表示制御を行うことができる。そして、通信端末17は、エンジン回転数、ショベル1の稼動時間および故障履歴等の各種情報を取得し、管理サーバに送信することができる。
【0034】
また、非常停止コントローラ51には、図5に示すように、第1信号供給ライン41から第1スイッチ52を介して信号が入力する。非常停止コントローラ51は、この信号入力に基づいて、作業機制御弁54への通電を遮断するとともに、第1警告ランプ55および警報ブザー57への通電を行う。
【0035】
図4に戻り、ステップS4の後、イグニッションスイッチ状態判定手段514は、イグニッションスイッチ21がオフされているか否かを判定する(ステップS5)。
ステップS5でイグニッションスイッチ21がオフの場合には、通信端末17以外の電子機器への通電が遮断されて、電子機器がリセットされるため、ショベル1の非常停止状態は自動的に解除される。そして、イグニッションスイッチ21をオンにして再度エンジン13を起動すれば、ショベル1を通常通り動作させることができる。
【0036】
これに対し、ステップS5で、イグニッションスイッチ21がオンの状態にあると判定されると、第1スイッチ状態判定手段512は、第1スイッチ52がオフとなっているか否かを判定し、停車判定手段515は、ショベル1が停車しているか否かを判定する(ステップS6)。
そして、ステップS6において、第1スイッチ52がオンの状態にあると判定された場合、または、ショベル1が走行していると判定された場合は、ショベル1の非常停止状態を解除すべき状況には至っていないため、非常停止コントローラ51は、ステップS5に戻り同じ処理を繰り返す。
【0037】
これに対し、ステップS6において、第1スイッチ52がオフで、かつショベル1が停車していると判定された場合に、制御指令生成手段516は、ショベル1の非常停止状態を解除する制御指令を生成し、ショベル1の動作の停止を解除する。これにより、作業機制御弁54への通電が許可され、作業機11の動作が可能となる。また、制御指令生成手段516は、第1警告ランプ55、警報ブザー57、およびモニタパネル15の警告表示または警告音を終了させる制御指令を生成し出力する(ステップS7)。この場合には、イグニッションスイッチ21によるリセットを必要とせずに、エンジン13が起動された状態のまま、ショベル1の非常停止状態が解除される。
【0038】
一方、ステップS2において、第2スイッチ53がオンの状態にあると判定されると、制御指令生成手段516は、エンジン13を停止させる指令をエンジンコントローラ14に対して出力し、エンジンコントローラ14は、エンジン13を停止する。また。制御指令生成手段516は、ショベル1の動作を停止させる指令を生成し、作業機制御弁54への通電を遮断する。このため、作業機制御弁54の弁位置が変化し、作業機11の動作が停止する。
さらに、制御指令生成手段516は、第1および第2警告ランプ55,56を点灯する制御指令と、警報ブザー57を鳴動させる制御指令とを生成し、それぞれ第1および第2警告ランプ55,56と、警報ブザー57とに出力する。また、制御指令生成手段516は、モニタパネル15にショベル1の動作が非常停止されている旨の表示をさせる制御指令を生成し、モニタ装置16に出力する(ステップS8)。
【0039】
この際、エンジンコントローラ14、モニタ装置16、通信端末17、および非常停止コントローラ51には、図6に太線で示すように、電力供給ライン40から電力が供給されるため、各電子機器とも機能し続けることができる。また、非常停止コントローラ51には、第2信号供給ライン42から第2スイッチ53を介して信号が入力する。非常停止コントローラ51は、この信号入力に基づいて、作業機制御弁54への通電を遮断するとともに、第1警告ランプ55、第2警告ランプ56、および警報ブザー57への通電を行う。
【0040】
図4に戻り、ステップS8の後、イグニッションスイッチ状態判定手段514は、イグニッションスイッチ21がオフの状態にあるか否かを判定する(ステップS9)。そして、ステップS8において、イグニッションスイッチ21がオンの状態にあると判定された場合に、非常停止コントローラ51は、ステップS9の判定を繰り返す。
これに対し、ステップS9でイグニッションスイッチ21がオフの場合には、通信端末17以外の電子機器への通電が遮断され、ショベル1の非常停止状態は自動的に解除される。つまり、イグニッションスイッチ21をオンにして再度エンジン13を起動すれば、ショベル1を通常通り動作させることができる。
【0041】
以上のような非常停止システム5によれば、第1スイッチ52や第2スイッチ53の開閉状態にかかわらず、エンジンコントローラ14、モニタ装置16、通信端末17、および非常停止コントローラ51等の各電子機器に電力が供給されるため、ショベル1の非常停止時にも、各機器が機能し続けることができる。これにより、ショベル1の非常停止時においても、ショベル1に関する情報や、第1スイッチ52および第2スイッチ53の操作状況を取得でき、ショベル1の状況把握や非常停止理由の分析等に必要な情報を得ることができる。
【0042】
特に、ショベル1に通信端末17が搭載されている場合には、非常停止時におけるショベル1の各種情報を管理サーバに送信することができるので、管理サーバにアクセスすることで、ショベル1が非常停止状態であることを把握することができる。また、非常停止時のショベル1の状況や第1スイッチ52および第2スイッチ53の操作状況を管理サーバに蓄積してデータベース化することができ、このデータベースをショベル1の非常停止時の状況分析に利用できる。
【0043】
また、ショベル1の非常停止操作用に第1スイッチ52および第2スイッチ53を設けているため、エンジン13を停止せずに作業機11を停止する場合と、作業機11およびエンジン13とも停止する場合とを、状況に応じて選択できる。従って、必要以上にエンジン13が停止されるのを防止できる。
【0044】
さらに、第1警告ランプ55、第2警告ランプ56、および警報ブザー57がショベル1の外部に設けられ、モニタパネル15がキャブ12内に設けられているため、ショベル1が非常停止中であることが、ショベル1の内外に報知される。従って、第1スイッチ52や第2スイッチ53を操作した者のみならず、ショベル1の周囲やキャブ12内にいる者に対しても、ショベル1が非常停止中であることを知らせることができる。
【0045】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、非常停止システム5は、ショベル1の動作を停止させていたがこれに限られず、例えば、ダンプトラックやホイールローダ等の他の建設機械に用いられてもよい。
【0046】
前記実施形態では、非常停止コントローラ51は、ショベル1における作業機11の動作を停止させていたがこれに限られない。例えば、非常停止コントローラ51は、ショベル1の前後進を制御するコントローラにショベル1の動作を停止させる制御指令を出力してショベル1の走行を禁止したり、ショベル1の制動を制御する制御指令をコントローラに出力してショベル1を停止させるようにしてもよい。
【0047】
前記実施形態では、非常停止コントローラ51は、作業機制御弁54の通電状態を直接制御して作業機11の動作を停止させていたがこれにかぎられない。要は、非常停止コントローラ51の指令に従って作業機11の動作を停止させられればよく、例えば、非常停止コントローラ51は、作業機11の動作を制御する作業機コントローラに作業機11の動作を停止させる制御指令を出力し、作業機コントローラに作業機11の動作を停止させてもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、作業機制御弁54は、作業機コントローラによる作業機11の制御用に設けられたものを用い、非常停止コントローラ51は、作業機制御弁54への通電を遮断して作業機11を停止させていたがこれに限られない。例えば、作業機コントローラによる作業機11の制御用の電磁弁とは別に作業機11の非常停止用の電磁弁を設け、この非常停止用の電磁弁を非常停止コントローラ51で制御するようにしてもよい。
【0049】
前記実施形態では、非常停止コントローラ51のエンジン起動状態判定手段511は、エンジンコントローラ14から取得したエンジン回転数に基づいて、エンジン13が起動状態にあるか否かを判定していたがこれに限られず、エンジン回転数センサからエンジン回転数を取得して、エンジン13が起動状態にあるか否かを判定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、建設機械に用いられる他、作業機および複数の電子機器を備えた他の作業機械の非常停止システムに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る建設機械を示す模式図。
【図2】前記一実施形態に係る非常停止システムの構成を示すための図。
【図3】前記一実施形態に係る非常停止コントローラの制御ブロック図。
【図4】前記一実施形態に係る非常停止システムの作用を説明するためのフローチャート。
【図5】前記一実施形態に係る非常停止システムの作用を説明するための図。
【図6】前記一実施形態に係る非常停止システムの作用を説明するための別の図。
【符号の説明】
【0052】
1…ショベル(建設機械)、5…非常停止システム、11…作業機、14…エンジンコントローラ(第1の電子機器)、21…イグニッションスイッチ、51…非常停止コントローラ(第2の電子機器)、52…第1スイッチ、53…第2スイッチ、54…作業機制御弁(作業機停止手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機および複数の電子機器を備えた建設機械の非常停止システムであって、
第1スイッチと、
前記第1スイッチとは別に設けられた第2スイッチと、
前記作業機の動作を停止させる作業機停止手段と、
前記建設機械のエンジンを停止させる第1の電子機器と、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチからの信号に基づいて、前記作業機停止手段に前記作業機の動作を停止させる作業機停止指令と、前記第1の電子機器に前記エンジンを停止させるエンジン停止指令とを行う第2の電子機器とを備え、
前記第1の電子機器および前記第2の電子機器を含む前記複数の電子機器の各々は、イグニッションスイッチを介して前記建設機械のバッテリに接続される電力供給ラインを備え、
前記第2の電子機器は、前記イグニッションスイッチおよび前記第1スイッチを介して前記バッテリに接続される第1信号供給ラインと、前記イグニッションスイッチおよび前記第2スイッチを介して前記バッテリに接続される第2信号供給ラインとを備えている
ことを特徴とする非常停止システム。
【請求項2】
請求項1に記載の非常停止システムにおいて、
前記第2の電子機器は、
前記第1スイッチの開閉状態を判定する第1スイッチ状態判定手段と、
前記第2スイッチの開閉状態を判定する第2スイッチ状態判定手段と、
前記第1スイッチ状態判定手段および前記第2スイッチ状態判定手段の判定結果に基づいて、前記作業機停止指令および前記エンジン停止指令の生成および出力を行う制御指令生成手段とを備え、
前記制御指令生成手段は、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのうち前記第1スイッチのみが閉状態のときには、前記作業機停止手段に前記作業機停止指令を出力し、前記第2スイッチが閉状態のときには、前記作業機停止手段に前記作業機停止指令を出力し、かつ、前記第1の電子機器に前記エンジン停止指令を出力する
ことを特徴とする非常停止システム。
【請求項3】
建設機械であって、
当該建設機械における作業を行う作業機と、
複数の電子機器と、
請求項1または請求項2に記載の非常停止システムとを備えている
ことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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