説明

建設機械

【課題】作業部材をアーム部に近接するように回動させることができると共に、製造コストの増大を抑えることができる建設機械を提供する。
【解決手段】建設機械は、車両本体と、ブーム部3と、アーム部5と、マグネット部34と、第1シリンダ8と、爪部51と、一対の第2シリンダ10,11とを備える。ブーム部3は、車両本体に回動可能に取り付けられる。アーム部5は、ブーム部3の先端部に回動可能に取り付けられる。マグネット部34は、アーム部5の先端部に回動可能に取り付けられる。第1シリンダ8は、アーム部5の上方または下方に設けられ、伸縮することによってマグネット部34を回動させる。爪部51は、アーム部5の先端部に回動可能に取り付けられる。一対の第2シリンダ10,11は、アーム部5の両側方にそれぞれ設けられ、伸縮することによって爪部51を回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルなどの建設機械においては、車両本体と、車両本体に回動可能に取り付けられるブーム部と、ブーム部の先端部に回動可能に取り付けられるアーム部とを備え、2つの作業部材がアーム部の先端部に回動可能に取り付けられるものがある。これらの作業部材は、アーム部の上方と下方とにそれぞれ設けられたシリンダによって駆動される。
【特許文献1】特開2002−348902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような建設車両では、作業部材の1つがアーム部の下面に近接するように回動することができるが、この場合、アーム部の下方に設けられたシリンダが、作業部材の回動の障害となる恐れがある。
【0004】
また、アーム部の下方に設けられたシリンダがこのような障害とならないように、アーム部の下面に窪みを設けて、シリンダをこの窪みに設けることも従来行われている。しかし、この場合、アーム部に特別の加工を施す必要があり、製造コストが増大する。
【0005】
上記の問題は、作業部材がアーム部の上面に近接するように回動する場合にも生じる。
【0006】
本発明の課題は、作業部材をアーム部に近接するように回動させることができると共に、製造コストの増大を抑えることができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の建設機械は、車両本体と、ブーム部と、アーム部と、第1作業部材と、第1シリンダと、第2作業部材と、一対の第2シリンダとを備える。ブーム部は、車両本体に回動可能に取り付けられる。アーム部は、ブーム部の先端部に回動可能に取り付けられる。第1作業部材は、アーム部の先端部に回動可能に取り付けられる。第1シリンダは、アーム部の上方または下方に設けられ、伸縮することによって第1作業部材を回動させる。第2作業部材は、アーム部の先端部に回動可能に取り付けられる。一対の第2シリンダは、アーム部の両側方にそれぞれ設けられ、伸縮することによって第2作業部材を回動させる。
【0008】
この建設機械では、第2作業部材は、アーム部の両側方にそれぞれ設けられる一対の第2シリンダによって回動される。このため、第2作業部材をアーム部に近接させる際に第2シリンダが障害とならない。また、第2シリンダが第2作業部材の回動の障害にならないため、第2作業部材を配置するための窪みをアーム部に設ける必要がない。これにより、この建設機械では、第2作業部材をアーム部に近接するように回動させることができると共に、製造コストの増大を抑えることができる。
【0009】
第2発明の建設機械は、第1発明の建設機械であって、ピン部材をさらに備える。ピン部材は、アーム部とブーム部とを回動可能に連結し、両端がアーム部の側面から突出する。そして、一対の第2シリンダの先端部は、第2作業部材にそれぞれ取り付けられる。また、一対の第2シリンダの基端部は、ピン部材によってアーム部の側面にそれぞれ取り付けられる。
【0010】
この建設機械では、ピン部材が、第2作業部材のアーム部への取付と、アーム部のブーム部への取付とに共用されている。このため、部品点数を削減することができる。また、第2作業部材をアーム部に取り付けるための加工を低減することができる。
【0011】
第3発明の建設機械は、第1発明または第2発明の建設機械であって、アーム部は、アーム本体と、アーム本体の先端部に取り付けられアーム本体とは別体の取付部材とを有する。そして、第1作業部材と第2作業部材とは取付部材に取り付けられる。
【0012】
この建設機械では、アーム本体とは別体の取付部材を用いることによって、第1作業部材と第2作業部材とをアーム部に取り付けることができる。このため、取付部材を第1作業部材と第2作業部材との取付に適したものとして、アーム本体として汎用の部材を利用することができる。これにより、製造コストをより低減することができる。
【0013】
第4発明の建設機械は、第3発明の建設機械であって、取付部材は、アーム本体と重なってアーム本体に取り付けられる取付部分と、アーム本体から第1作業部材が位置している方向へ突出する突出部分とを有する。そして、第1作業部材は突出部分に取り付けられ、第2作業部材は取付部分に取り付けられる。
【0014】
この建設機械では、第1作業部材が突出部分に取り付けられ、第2作業部材はアーム本体と重なった取付部分に取り付けられる。このため、取付部材をアーム本体から第2作業部材側に突出しない形状にすることができ、取付部材が第2作業部材の回動の障害となることを抑えることができる。
【0015】
第5発明の建設機械は、第1発明から第4発明のいずれかの建設機械であって、第1作業部材は、磁力で金属を引きつけるマグネット部を有し、第2作業部材は、マグネット部との間に対象物を挟んで把持する爪部を有する。
【0016】
この建設機械では、第1作業部材が有するマグネット部と、第2作業部材が有する爪部とが回動することによって、対象物を把持したり解放したりすることができる。また、このような建設機械では、爪部の回動範囲は大きい方が望ましいため、爪部をアーム部に近接するように回動させることができる本発明がより有効である。
【0017】
第6発明の建設機械は、第5発明の建設機械であって、アーム部が鉛直方向に平行となり、且つ、マグネット部が水平方向に平行となり、且つ、爪部がアーム部に近接する位置まで回動した状態を取りうる。
【0018】
この建設機械では、上記のような状態で所定の場所に対象物を運ぶことができる。すなわち、水平方向に平行となっているマグネット部に対象物を吸着させて搬送し、所定の場所でマグネット部の磁力をオフにすることで対象物を落下させ所定の場所に置くことができる。そして、この建設機械では、爪部が回動する際の障害となるものが少ないため、上記の状態において爪部をアーム部に近接する位置まで回動させることができる。このため、対象物を運ぶ際に爪部が邪魔にならず搬送作業を容易に行うことができる。
【0019】
第7発明の建設機械は、第1発明から第4発明のいずれかの建設機械であって、第2作業部材は、先端が第1先端部と第2先端部との2つに分かれた形状を有しマグネット部との間に対象物を挟んで把持する爪部を有する。そして、一対の第2シリンダは、それぞれの軸線の延長線が、幅方向に距離を隔てて配置された第1先端部と第2先端部とを通るように第2作業部材を支持する。
【0020】
この建設機械では、一対の第2シリンダの軸線の延長線が、それぞれ第1先端部と第2先端部とを通るように一対の第2シリンダが配置されている。このため、第2作業部材が1つのシリンダで支持される場合よりも捻れ方向の力に対して安定的に第2作業部材を支持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る建設機械では、第2作業部材は、アーム部の両側方にそれぞれ設けられる一対の第2シリンダによって回動される。このため、第2作業部材をアーム部に近接させる際に第2シリンダが障害とならない。また、第2シリンダが第2作業部材の回動の障害にならないため、第2作業部材を配置するための窪みをアーム部に設ける必要がない。これにより、この建設機械では、第2作業部材をアーム部に近接するように回動させることができると共に、製造コストの増大を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<構成>
本発明の一実施形態にかかる建設機械1を図1に示す。この建設機械1は、車両本体2、ブーム部3、ブームシリンダ4、アーム部5、アームシリンダ6、第1作業部材7、第1シリンダ8、第2作業部材9、一対の第2シリンダ10,11を備えている。
【0023】
〔車両本体2、ブーム部3、ブームシリンダ4の構成〕
車両本体2は、図示しないエンジンや油圧ポンプなどが搭載されていると共に、履帯12を有する走行装置13や運転室14などを有している。
【0024】
ブーム部3は、車両本体2に回動可能に取り付けられており、車両本体2に近い側に位置する基端部を支点として上下方向に回動することができる。また、ブーム部3の長手方向の中間部分の上面には、後述するアームシリンダ6が取り付けられる第1アームシリンダ取付部21が設けられている。このアームシリンダ取付部21は、ブーム部3の上面から上方に突出して設けられている。
【0025】
なお、以下の説明において、ブーム部3やアーム部5における「上下」とは、ブーム部3やアーム部5が水平方向に沿った状態における上下方向を意味するものとする。
【0026】
ブームシリンダ4は、油圧によって駆動される油圧シリンダであり、伸縮することによってブーム部3を回動させる。ブームシリンダ4の基端部は車両本体2に回動可能に取り付けられており、ブームシリンダ4の先端部はブーム部3の長手方向の中間部分に回動可能に接続されている。
【0027】
〔アーム部5およびアームシリンダ6の構成〕
アーム部5近傍の拡大図を図2に示す。アーム部5は、アーム本体22と、アーム本体22とは別体の取付部材23とを有している。
【0028】
アーム本体22は、ブーム部3の先端部に回動可能に取り付けられており、基端部を支点として上下方向に回動することができる。アーム本体22の基端部には幅方向に貫通する貫通孔22aが設けられており、この貫通孔22aには、ピン部材24が通されている。ピン部材24は、アーム本体22とブーム部3とを回動可能に連結し、両端がアーム本体22の両側面からそれぞれ突出している。アーム本体22の上面には、後述する第1シリンダ8が取り付けられる第1シリンダ取付部25が設けられている。第1シリンダ取付部25は、アーム本体22の上面から突出して設けられている。アーム本体22の基端部には、アームシリンダ6が取り付けられる第2アームシリンダ取付部26が設けられている。また、アーム本体22の先端部には、幅方向に貫通する2つの貫通孔22b,22cが設けられている。これらの貫通孔22b,22cはアーム本体22の長手方向に距離を隔てて配置されている。
【0029】
取付部材23は、アーム本体22の先端部に取り付けられており、後述する第1作業部材7と第2作業部材9とをアーム部5に取り付けるための部材である。取付部材23は、固定ピン55によってアーム本体22に着脱可能に固定されている。取付部材23の拡大図を図3に示す。取付部材23は、一対の側板27,28と、連結部材29とを有している。一対の側板27,28は、アーム本体22を間に挟んで幅方向に距離を隔てて配置されており、連結部材29は、これらの側板27,28を連結している。側板27,28は、アーム本体22と重なってアーム本体22に取り付けられる取付部分31と、アーム本体22から第1作業部材7が位置している方向すなわち上方へ突出する突出部分32とを有している。また、側板27,28には、幅方向に貫通する4つの貫通孔23a−23dが設けられている。第1貫通孔23aおよび第2貫通孔23bは、取付部分31に設けられており、上述したアーム本体22の貫通孔22b,22cに対応して設けられている。第3貫通孔23cと第4貫通孔23dとは、突出部分32に設けられており、第3貫通孔23cは第1貫通孔23aの上方に設けられ、第4貫通孔23dは第2貫通孔23bの上方に設けられている。図4に示すように、第1貫通孔23aと第3貫通孔23cとを結ぶ仮想線L1と、第2貫通孔23bと第4貫通孔23dとを結ぶ仮想線L2とは平行になっている。また、第3貫通孔23cは、第4貫通孔23dを通り第1貫通孔23aと第2貫通孔23bとを結ぶ仮想線L3と平行な仮想線L4よりも上方に位置している。
【0030】
なお、取付部材23の下端部はアーム本体22の下面に沿った形状となっており、取付部材23はアーム本体22の下面から下方に突出していない。
【0031】
図1および図2に示すアームシリンダ6は、油圧によって駆動される油圧シリンダであり、伸縮することによってアーム本体22を回動させる。アームシリンダ6は、ブーム部3の上方に設けられており、アームシリンダ6の基端部はブーム部3の第1アームシリンダ取付部21に取り付けられ、アームシリンダ6の先端部はアーム本体22の第2アームシリンダ取付部26に取り付けられている。
【0032】
〔第1作業部材7および第1シリンダ8の構成〕
第1作業部材7は、図2に示すように、マグネット部34と、第1リンク部材35とを有する。
【0033】
マグネット部34は、金属を磁力によって引きつけることができる部材である。なお、建設機械1のオペレーターは、運転室14に内装された操作部(図示せず)を操作することによって、マグネット部34の磁力のオン・オフを切り替えることができる。マグネット部34は、アーム部5の先端部に回動可能に取り付けられており、アーム部5の長手方向を含む鉛直面に沿った方向に回動することができる。マグネット部34は、取付部材23の突出部分32に取り付けられている。マグネット部34は、概ね円盤状の形状を有するマグネット本体36と、マグネット本体36から突出する取付リブ37とを有している。取付リブ37には幅方向に貫通する2つの貫通孔37a,37bが設けられている。マグネット本体36が水平な状態においてマグネット本体36の上方に位置する貫通孔37aには第1リンク部材35が回動可能に取り付けられる。マグネット本体36の側方に位置する貫通孔37bは、上述した取付部材23の第3貫通孔23c(図4参照)に対応して設けられており、貫通孔37bと第3貫通孔23cとに固定ピン38が通されることによって、マグネット本体36がアーム部5に対して回動可能となっている。
【0034】
第1リンク部材35は、第1シリンダ8の伸縮動作をマグネット部34に伝達する部材であり、互いに回動可能に連結された第1シャフト41と第2シャフト42とを有している。第1シャフト41の先端部は取付部材23の第4貫通孔23dに回動可能に取り付けられており、第2シャフト42の先端部はマグネット部34の取付リブ37の貫通孔37aに回動可能に取り付けられている。また、第1シャフト41と第2シャフト42との連結部分43には第1シリンダ8の先端部が回動可能に取り付けられている。
【0035】
第1シリンダ8は、アーム部5の上方に設けられている。第1シリンダ8の先端部は第1シャフト41と第2シャフト42との連結部分43に回動可能に取り付けられており、第1シリンダ8の基端部はアーム本体22の第1シリンダ取付部25に回動可能に取り付けられている。第1シリンダ8は、油圧シリンダであり、伸縮することによってマグネット部34を回動させることができる。第1シリンダ8は、第1リンク部材35を介してマグネット部34を移動させて固定ピン38を中心に回動させる。
【0036】
〔第2作業部材9および第2シリンダ10,11の構成〕
第2作業部材9は、図2および図5に示すように、爪部51と、一対の第2リンク部材52,53とを有している。
【0037】
爪部51は、先端が第1先端部61と第2先端部62との2つに分かれた形状を有し先端側が尖った形状を有する部材であり、アーム部5の先端部に回動可能に取り付けられている。第1先端部61と第2先端部62とは幅方向に距離を隔てて配置されている。図5に示すように、爪部51の基端部の中央部には爪部51の長手方向に沿って凹んだ凹部54が設けられており、爪部51の基端部には、幅方向に貫通して凹部54に連通する貫通孔51aが設けられている。この凹部54には、アーム本体22の先端部および取付部分31の先端部が挿入される。爪部51の貫通孔51aと、上述した取付部材23の第1貫通孔23a(図3参照)とアーム本体22の貫通孔22b(図2参照)には固定ピン55が通されており、爪部51は、固定ピン55を中心にしてアーム本体22および取付部材23に対して回動可能となっている。爪部51は固定ピン55を中心にして回動することにより、マグネット部34との間に対象物を挟んで把持したり、把持した対象物を解放したりすることができる。
【0038】
一対の第2リンク部材52,53は、後述する一対の第2シリンダ10,11に対応して設けられており、幅方向に距離を隔てて配置されている。ここでは、一方の第2リンク部材52について説明するが他方の第2リンク部材53も同様の構造である。第2リンク部材52は、互いに回動可能に連結された第3シャフト56と第4シャフト57とを有する。第3シャフト56の先端部は、取付部材23の第2貫通孔23bに回動可能に取付られており、第4シャフト57の先端部は、爪部51の長手方向の中間部分に設けられた貫通孔51bに固定ピン58によって回動可能に取り付けられている。また、第3シャフト56と第4シャフト57との連結部分59には、第2シリンダ10の先端部が回動可能に取り付けられている。
【0039】
一対の第2シリンダ10,11は、アーム部5の両側方にそれぞれ設けられている。第2シリンダ10,11は、アーム本体22を間に挟んで幅方向に距離を隔てて配置されている。より詳細には、一対の第2シリンダ10,11は、それぞれの軸線の延長線が、第1先端部61と第2先端部62とを通るように配置されており、第2シリンダ10,11は、第2リンク部材52,53を介して爪部51の両側端部を支持している。ここでは、一方の第2シリンダ10について説明するが、他方の第2シリンダ11についても同様の構造である。第2シリンダ10の先端部は、第3シャフト56と第4シャフト57との連結部分59に回動可能に取り付けられており、第2シリンダ10の基端部は、ピン部材24によってアーム部5の側面に回動可能に取り付けられている。第2シリンダ10は、油圧シリンダであり、伸縮することによって爪部51を回動させることができる。第2シリンダ10,11は、第2リンク部材52,53を介して爪部51を移動させて固定ピン55を中心に回動させることができる。
【0040】
<第1作業部材7および第2作業部材9の動作>
この建設機械1では、第1作業部材7および第2作業部材9を用いることによって、鉄屑などを含む廃棄物の処理作業を行うことができる。
【0041】
例えば、図6は、マグネット部34と爪部51とによる掴み動作が行われる場合の建設機械1の状態(以下、「第1状態」)を示しており、マグネット部34と爪部51とが近接している。マグネット部34と爪部51とが広がった状態からこの第1状態に移行することによって、マグネット部34と爪部51との間に対象物を挟んで把持することができる。
【0042】
また、図7は、積み込み作業時の建設機械1の状態(以下、「第2状態」)を示しており、アーム部5が鉛直方向に平行となり、且つ、マグネット部34が水平方向に平行となり、且つ、爪部51がアーム部5の下面に近接する位置まで回動した状態となっている。この建設機械1では、爪部51をアーム部5の下面に近接する位置まで回動させることができるため、第2状態では、マグネット部34の外側端部から爪部51の先端部までの幅方向の寸法D1が小さくなっている。このことは、爪部51の回動範囲が狭い場合のマグネット部34の外側端部から爪部51の先端部までの幅方向の寸法D2と比べれば明らかである。このため、マグネット部34および爪部51の移動範囲が制限されるトラックの荷台においても、積み込み作業を容易に行うことができる。
【0043】
<特徴>
(1)
この建設機械1では、爪部51を回動させるための一対の第2シリンダ10,11がアーム部5の側方に配置されている。このため、爪部51を回動させるためのシリンダがアーム部5の下方に配置される場合と比べて、第2シリンダ10,11が爪部51の回動の障害となり難い。このため、爪部51をアーム部5の下面に近接する位置まで回動させることができる。
【0044】
また、爪部51の回動範囲を拡大させるために第2シリンダ10,11を埋め込むための窪みをアーム部5の下面に設ける必要がないため、アーム部5の加工が少なくてもよい。このため、製造コストを低減させることができる。
【0045】
(2)
この建設機械1では、アーム部5の両側方に設けられた2つの第2シリンダ10,11によって爪部51が支持されるため、1つのシリンダで支持される場合よりも、捻れ方向の力に対して安定的に爪部51を支持することができる。
【0046】
(3)
この建設機械1では、アーム部5とブーム部3とを連結するピン部材24が、第2シリンダ10,11をアーム部5の側面に取り付けるためにも用いられている。このため、部品点数を削減することができる。また、第2シリンダ10,11を取り付けるためのアーム本体22の加工が少なくてもよい。このため、製造コストを低減させることができる。
【0047】
(4)
この建設機械1では、アーム本体22とは別体の取付部材23によって第1作業部材7および第2作業部材9がアーム部5に取り付けられる。このため、第1作業部材7および第2作業部材9をアーム部5に取り付けるためのアーム本体22への加工が少なくてもよい。
【0048】
また、上述したように第2シリンダ10,11をアーム部5に取り付けるための加工も少なくてもよいため、アーム本体22として汎用の部材を利用することができる。例えば、バケットなどの1種類の作業部材のみが取り付けられるアーム本体をこの建設機械1のアーム本体22として利用することができる。これにより、製造コストを削減することができる。
【0049】
さらに、取付部材23は、アーム部5の上面から上方に突出しているが下面から下方には突出しないように設けられている。このため、取付部材23が爪部51の回動の障害となることもない。
【0050】
(5)
この建設機械1では、マグネット部34が、突出部分32に設けられた第3貫通孔23cに取り付けられている。また、第3貫通孔23cは、第4貫通孔23dを通り第1貫通孔23aと第2貫通孔23bとを結ぶ仮想線L3と平行な仮想線L4よりも上方に位置している。これにより、マグネット部34の回動範囲を増大させることができる。
【0051】
<他の実施形態>
(1)
上記の実施形態では、第1シリンダ8がアーム部5の上面に設けられ、一対の第2シリンダ10,11が第2アーム部5の側方に設けられているが、第1作業部材7と第2作業部材9とが逆に設けられ、第1シリンダ8がアーム部5の下方に設けられてもよい。この場合も、一対の第2シリンダ10,11が第2アーム部5の側方に設けられることによって、第2作業部材9をアーム部5の上面に近接する位置まで大きく回動させることができる。
【0052】
また、この場合、第1作業部材7は第2作業部材9と比べてアーム本体22の下面に近接する位置まで回動させる必要が少ないため、第1シリンダ8がアーム部5の下方に設けられても、第1シリンダ8が第1作業部材7の回動の障害となる恐れは少ない。
【0053】
(2)
上記の実施形態において、マグネット部34の代わりにバケットが第1作業部材7に含まれてもよい。また、爪部51の代わりにバケットの蓋部材が第2作業部材9に含まれてもよい。さらに、第1作業部材7と第2作業部材9とのそれぞれに爪部が含まれてもよい。
【0054】
(3)
上記の実施形態では、取付部材23は取付部分31と突出部分32とを有しているが、突出部分32に相当する部材が取付部材としてアーム本体22の上面に固定されてもよい。
【0055】
(4)
上記の実施形態では、取付部材23は、固定ピン55によってアーム本体22に着脱可能に固定されているが、溶接などの固定手段によってアーム本体22に固定されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、作業部材をアーム部に近接するように回動させることができると共に、製造コストの増大を抑えることができる効果を有し、建設機械として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】建設機械の全体図。
【図2】アーム部近傍の拡大図。
【図3】取付部材の拡大図。
【図4】取付部材の拡大図。
【図5】第2作業部材と一対の第2シリンダとの構造を示す概略図。
【図6】掴み動作時のマグネット部と爪部との状態を示す図。
【図7】積み込み作業時のマグネット部と爪部との状態を示す図。
【符号の説明】
【0058】
1 建設機械
2 車両本体
3 ブーム部
5 アーム部
7 第1作業部材
8 第1シリンダ
9 第2作業部材
10,11 第2シリンダ
23 取付部材
24 ピン部材
31 取付部分
32 突出部分
34 マグネット部
51 爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体に回動可能に取り付けられるブーム部と、
前記ブーム部の先端部に回動可能に取り付けられるアーム部と、
前記アーム部の先端部に回動可能に取り付けられる第1作業部材と、
前記アーム部の上方または下方に設けられ、伸縮することによって前記第1作業部材を回動させる第1シリンダと、
前記アーム部の先端部に回動可能に取り付けられる第2作業部材と、
前記アーム部の両側方にそれぞれ設けられ、伸縮することによって前記第2作業部材を回動させる一対の第2シリンダと、
を備える建設機械。
【請求項2】
前記アーム部と前記ブーム部とを回動可能に連結し、両端が前記アーム部の側面から突出するピン部材をさらに備え、
一対の前記第2シリンダの先端部は、前記第2作業部材にそれぞれ取り付けられ、
一対の前記第2シリンダの基端部は、前記ピン部材によって前記アーム部の側面にそれぞれ取り付けられる、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記アーム部は、アーム本体と、前記アーム本体の先端部に取り付けられ前記アーム本体とは別体の取付部材とを有し、
前記第1作業部材と前記第2作業部材とは前記取付部材に取り付けられる、
請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記取付部材は、前記アーム本体と重なって前記アーム本体に取り付けられる取付部分と、前記アーム本体から前記第1作業部材が位置している方向へ突出する突出部分とを有し、
前記第1作業部材は前記突出部分に取り付けられ、
前記第2作業部材は前記取付部分に取り付けられる、
請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記第1作業部材は、磁力で金属を引きつけるマグネット部を有し、
前記第2作業部材は、前記マグネット部との間に対象物を挟んで把持する爪部を有する、
請求項1から4のいずれかに記載の建設機械。
【請求項6】
前記アーム部が鉛直方向に平行となり、且つ、前記マグネット部が水平方向に平行となり、且つ、前記爪部が前記アーム部に近接する位置まで回動した状態を取りうる、
請求項5に記載の建設機械。
【請求項7】
前記第2作業部材は、先端が第1先端部と第2先端部との2つに分かれた形状を有し前記マグネット部との間に対象物を挟んで把持する爪部を有し、
一対の前記第2シリンダは、それぞれの軸線の延長線が、幅方向に距離を隔てて配置された前記第1先端部と前記第2先端部とを通るように前記第2作業部材を支持する、
請求項1から4のいずれかに記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−326682(P2007−326682A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159261(P2006−159261)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】