説明

建設途上躯体の気密検証方法

【課題】気密施工完了後の躯体の気密性を簡易且つ所望の精度で確認することができる施工途上の建物の気密測定方法を提供する。
【解決手段】基礎構造上に上部構造を建ち上げると共に当該上部構造に外壁と屋根等の建材とを設置して躯体を形成する躯体施工を終えた後に、当該躯体に気密層を形成する気密施工までを完了した施工途上の建物の内外に圧力差を生じさせて当該躯体の気密性を検証する施工途上建物の気密検証方法であって、気密施工が完了した躯体に設けられる強制排気設備を運転して前記躯体の排気を行うことにより、躯体の内外に差圧を生じさせ、該差圧から前記躯体の気密状態を確認する気密確認工程を備える。強制排気設備としては、躯体の内部空間に外気を導入して建材の含有水分の放出を促進するために設置される強制排気装置を利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高気密躯体等の躯体を建設する途上での気密性を検証する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の空調効率を高める等の目的で、高気密躯体が建てられることが多くなっている。
この種の高気密躯体の施工においては、梁や柱等の骨組みからなる上部構造に外壁や屋根を設置して躯体を形成した後に、当該躯体に気密層を形成する気密施工を行い、その後当該躯体及び気密層に貫通孔等を設けて配管や配線を行う設備施工を行うことが一般的になされている。また、当該気密施工と設備施工とは、夫々異なる業者によってなされることが通常である。そうすると、設備施工を完了させて施工の最終段階に至った時点や建物完成後に当該建物の気密性に問題があると発覚した場合、それが気密施工を行った気密施工業者の施工に基づくものであるのか、或いは当該気密施工により形成された気密層に開口を形成した設備施工業者の施工に基づくものであるのか判断することが著しく困難となり、両者の間で無用の争いとなる虞がある。このため、建設途上の躯体においても簡易に気密性を計測する方法の提示が望まれている。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1には、「躯体の内外に生じる圧力差から躯体の気密を測定する躯体の気密測定方法であって、前記躯体に予め備えられている給排気設備を用いて吸気または排気を行うことにより、前記躯体の内外に圧力差を生じさせて前記躯体の気密を測定する」こととした躯体の気密測定方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1は、前述の設備施工が終了した後における気密測定方法を開示するものであって、設備施工前の施工途上躯体の気密検証については開示も示唆もしていない。
【特許文献1】特開2001−91397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、気密施工完了後の躯体の気密性を簡易且つ所望の精度で確認することができる施工途上の建物の気密測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題解決のための具体的手段として、本願発明は、
(1)基礎構造上に上部構造を建ち上げると共に当該上部構造に外壁と屋根等の建材とを設置して躯体を形成する躯体施工を終えた後に、当該躯体に気密層を形成する気密施工までを完了した施工途上の建物の内外に圧力差を生じさせて当該躯体の気密性を検証する施工途上建物の気密検証方法であって、
前記気密施工が完了した躯体に設けられる強制排気設備を運転して当該躯体の排気を行うことにより、当該躯体の内外に差圧を生じさせ、該差圧に基づいて当該躯体の気密状態を確認する気密確認工程を備えていることを特徴としている。
このような構成によれば、気密施工が完了した段階で、躯体に設けられる強制排気設備を利用して躯体の気密性を検証することができ、きわめて簡便に躯体の現状での気密状態を確認することができる。ここで、強制排気設備は、建物の竣工後にそのまま利用される給排気設備を利用してもよいし、別途、一時的に強制排気装置を取外し可能に設置して利用しても構わない。但し、住宅等の建物にそのまま設置されたままとなる給排気ファン、台所レンジファン、換気扇、天井扇等の給排気設備を利用する場合は、当然ながら、気密検証を実施する際に、かかる設備が既に備えられていることが必要であり、設備施工がなされていない気密施工終了の段階では、かかる設備を利用できない場合がある。また建物全体の気密性の検証には比較的高出力の排気設備が必要となるので、備わっている設備が高出力の条件を満たさない場合は、気密性測定のための十分な気圧差を得ることができず、高精度の差圧計が必要になったり、測定に著しく手間がかかってしまったりする等のため、結局利用できない場合もある。
一方、強制排気設備を一時的に設置する場合は、気密検証に必要な十分な出力を備えた強制排気設置を設置しなければならないのは当然であるが、更に設置と撤去が容易な装置とされる必要がある。
従って、両者を比較すると、強制排気設備は、建物の竣工後にそのまま利用される給排気設備を利用してもよいが、一時的に強制排気装置を取外し可能に設置して利用する方が好ましい場合が多い。
【0006】
なお、躯体とは、基礎構造(コンクリート基礎や土台)より上部に構築される上部構造及び当該上部構造に支持される外壁を含むものを示している。躯体は、柱梁で構成される軸組の骨組に屋根・床スラブや外壁で覆われた躯体や壁式構造の躯体など特に限定されるものではない。
躯体の内部空間を形成する屋根・床スラブや外壁は、建物の設計の基準となるモジュール寸法に基づいた規格化された寸法を有する建材であり、例えばコンクリートパネルやサイディングパネルなどを用いて構成され、躯体が完成すれば(棟上げ工事段階)、外部から雨水等が流入しない一定の内部空間が構成されているが、窓や建材間の間隙等を通じて外気が導入されうる。
よって、躯体は、外部に対して換気の必要のないほど開放された構造ではないし、内部空間が外部に対して密閉された構造でもなく、外部との自然換気が可能となる開口面積等(隙間相当面積)を具備し、躯体を形成する建材の含有水分の放出に必要な換気量に相当する換気回数が確保される構造であり、換気の空気の流れ(内部空間の空気を強制換気扇により循環させて、内部の空気を外気に置換する)によって水分が運搬されるものである。
また、基礎構造は、躯体を含んだ建物の上部荷重を地盤に伝える基礎や土台で構成される下部構造であるが、その内部空間の換気のための換気口が外周基礎の立上り部の要所に適宜形成されているものである。
また、建材は、モルタルなどの水分を含有する建材と接触したり、雨水などにさらされることにより水分の吸収する建材を必須に含み、かかる吸水性の建材としては、工場成型される軽量気泡コンクリート(ALC)などのコンクリートパネル、サイディングパネルなどが特に例示される。
また、躯体施工完了とは、例えば、軸組構造の建物では、基礎や土台の上部に軸組である柱や梁が組立てられ、屋根パネルや床パネルが敷設され、外壁パネルの配設が完了した状態を指す。また、壁構造の建物においても同様に、基礎や土台の上部に屋根や床が敷設され、外壁パネルの配設が完了した状態である。
【0007】
(2)また、前記強制排気設備が、躯体の内部空間に外気を導入して前記建材の含有水分の放出を促進するために設置される強制排気装置であることが好ましい。
本願発明者らは、気密性計測に十分な出力を備えた一時的に設置する強制排気装置について鋭意検討したところ、気密施工後の躯体の気密性を計測するに際し、躯体の内部空間に外気を導入して上記建材の含有水分の放出を促進する強制排気装置を用いることが好ましいことを知見した。当該強制排気装置は、外気である乾燥空気を躯体の内部空間に導き、該乾燥空気を躯体内に循環させた後に排出するものであって、該強制排気装置により躯体の隙間や開口から該躯体の内部空間に導入される乾燥空気は、当該躯体を形成する建材等の水分を吸収して湿潤空気となった後に強制排気装置を通じて躯体の外方に排出されるものとなる。この様な強制空気流を躯体の内外で形成すべく、上記強制排気装置の換気量は、主に施工後の建物の日常生活上で必要とされる機械換気のために配備される各種の換気設備よりも著しく大きい。当該強制排気装置を利用することにより、躯体に気密層を形成した後であっても当該強制排気装置を起動すると、当該躯体(気密層)内外で10Pa程度の大きな差圧を発生させることが可能となることも本願発明者は確認している。これにより、当該差圧の測定が容易なものとなり、躯体に気密層を形成する気密施工直後の躯体の気密性を判断することが可能となるのである。
【0008】
また、当該強制排気装置は、上記気密施工を行う以前から、躯体を形成する建材の水分を除去するために当該躯体に設置されているものであって、気密を測定するため目的のために設置されるものではなく、そうすると、建物の施工の過程において、躯体を形成する建材の水分を除去するという別の目的で設けられた換気装置を利用して躯体の気密をも確認することができ、気密確認のための装置設置の工程を著しく軽減又は省略することができ、施工の遅延化を回避しつつ気密の確認を行うことができる。
【0009】
(3)また、 前記気密施工後に、前記躯体の外壁及び気密層を貫通する通気孔などの貫通孔の形成を伴う施工を行う設備施工を備え、
前記気密確認工程は、
前記気密施工までを完了させた時点で、前記強制給排気装置により強制排気を行うことにより、前記躯体の内外に差圧を生じさせて気密性を確認する当初気密確認工程と、
前記設備施工までを完了させた時点で、前記強制給排気装置により強制排気を行うことにより、前記躯体の内外に差圧を生じさせて気密性を確認する設備施工後気密確認工程と、
を備えていることが好ましい。
これによれば、設備施工により生じる可能性がある気密欠損により躯体の気密性がどの程度低下したかを確認することができるものとなる。
【0010】
(4)また、前記設備施工を複数回に亘って行い、
各設備施工を完了させる度に、前記強制排気装置による強制排気により生じる内外差圧に基づいて当該設備施工後の躯体の気密性を確認する設備施工後気密確認工程を行う、
ことが好ましい。
これによれば、各設備施工工程ごとにどれだけ躯体の気密性が低下したかを判断することができる。
【0011】
(5)また、上記計測を可能な強制排気装置としては、
前記躯体に形成されている開口部の開口縁部を形成する枠材に載置される支持部材と、
該支持部材に取り付けられ、前記躯体の内部空間の空気を吸引して躯体の外方に排気する換気扇本体と、
該換気扇本体よりも風上に配設されて換気扇本体を保護する保護部材と、
上記換気扇本体の風下に配設されて排気流れを変更させる風向変更部材と
を具備することが好ましい。
【0012】
(6)また、上記強制排気装置の位置は、強制排気装置の運転により、躯体の内部空間に導入せしめられた外気が、躯体の内部空間を循環して、再び外部に排出されるならば、何処であっても構わないが、前記強制排気装置が設置される開口部は、躯体施工により形成される基礎構造の上に構築された躯体の内部空間を基礎構造の内部空間に連通させるものであることが特に好ましい。
これによれば、強制排気装置からの排気により、躯体と基礎構造によって包囲される床下空間を加圧状態とすることができる。このため、躯体の内部空間と基礎構造の内部空間との差圧は、該躯体の内部空間と屋外空間との差圧よりも加圧分だけ大きなり、これによって、躯体の内部空間と基礎構造の内部空間とを連通する漏気路が存在する場合には、当該漏気路を通じての該基礎構造の内部空間から躯体の内部空間に向けての漏気を過大に評価することができ、ひいては当該漏気路の存在を厳しく評価することができる。即ち、内外差圧が著しく小さい場合等は、先ずかかる漏気路の存在を疑うことができるのである。冬季等の温度差による換気は、この様な躯体の下方に存在する漏気路によって大きくなりやすいため、当該漏気路の存在を可及的減じることが躯体の気密性能向上に有効であるが、上述の如く基礎構造の内部空間に向けて排気させることにより、当該漏気路の発見に有利に作用することとなるのである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の建設途上の建物の気密測定方法によれば、上記気密施工を完了した直後の気密性能を簡易且つ所望の精度で測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、図1に示す如く、躯体を基礎構造の上に構築する躯体施工(ステップS1)を完了させた後に、当該躯体に気密層を形成する気密施工(ステップS2)を施し、その後、当該施工途上の建物の気密性を確認する気密性確認作業(当初気密確認工程(ステップS3))を行い、その後、設備施工(ステップS4)を行った後にさらに気密性確認作業(設備施工後気密確認工程(ステップS5))を行うものである。
各気密性確認作業(ステップS3,S4)においては、躯体に用いられた建材の含有水分を放出すべく上記躯体施工の完了後に当該躯体に設置されたまま残置されている強制排気装置を運転させて躯体と外部空間との間に圧力差(以後、内外差圧又は単に差圧とも言う)を生じさせ、当該圧力差を計測することで当該建設途上の建物の当該計測時点での気密性を確認する。
【0015】
躯体施工(ステップS1)は、図2に示す如き建物の基礎構造1を形成する基礎構築工程(ステップS1-1)と、該基礎構造1上に建物の躯体2を構築する躯体構築工程(ステップS1-2)と、当該躯体2の水分を除去する水分除去工程(ステップS1-3)とを備えている。
基礎構築工程(ステップS1-1)は、地盤に基礎を立ち上げる工程であって、本実施形態においては、躯体2を支持する基礎構造1として鉄筋コンクリート連続布基礎を採用している。当該基礎構造1の外周部を形成する立上り部には、後記する図3(b)に示されるように、複数の換気口3aが長手方向に沿って適宜間隔を開けて設けられている。内周部の基礎構造の立上り部にも基礎グリッド間を互いに連通させる複数の換気口3bが長手方向に沿って適宜間隔をあけて設けられており、これら換気口3a,3bを通じて基礎構造の内部空間の自然換気がなされる。該換気口3a,3bは、例えば概ね4mおきに約300cmの見付け面積(基礎立上り面に設ける)を有し、強制排気装置による排気に十分な開口面積を得ることができる。
【0016】
躯体構築工程(ステップS1-2)は、上記基礎構造に躯体2を構築する工程であって、本実施形態において、躯体は、基礎構造の上に構築される通常の一階建て、二階建て、三階建て等の梁4や柱からなる骨組み構造に工場成型されるコンクリートパネル等の建材により壁5、床6、屋根7が構築されたもので、躯体2を建ち上げた時点では、壁5、床6、屋根7等が組み上げられて一定の内部空間が形成され、雨水等が流入しないように屋根部等に防水工事が施される一方、窓サッシ、建材間の隙間等が密閉(シール)されていないか、外形的にはシールされていてもまだ不完全な状態であり、壁5等に一定の開口部、隙間等が存在し、躯体の内外である程度の空気の流出入を許容し得る状態のものである。すなわち、躯体施工を完了した躯体とは、各種部材及び部材間に隙間を有し、後記する必要な換気量に相当する換気回数が確保される構造である。
なお、上記基礎構造に躯体2を立ち上げることにより、躯体2の1階床スラブ6aの下方には、基礎構造及び1階床スラブ6aに包囲される床下空間Sが形成されることとなる。
【0017】
ところで、当該躯体施工までを完了させた躯体2においては、外壁や床スラブに用いられているコンクリートパネルやサイディングパネル等の建材の内部に工場での成型完了後も水分が残留しているばかりでなく、これらの建材は吸水性も有しているので、現場施工においてモルタル等の水分を含有する材料と接触すると、その水分を吸収して水分を含んだ状態となる。或いは、建材の現場搬入後、降雨等にさらされることによって吸水する場合もある。
上記のような理由から過剰な水分を含んでしまうこととなった建材をそのまま過水分状態で建物を完成させてしまうと、当該水分に起因して建物の内部に結露が生じたり、建物の居住者に高湿感をもたらす原因となるばかりでなく、建材の耐久性やひいては建物全体の耐久性にも悪影響を与える可能性もある。
【0018】
そこで、本実施形態においては、上記躯体構築工程(ステップS1-2)の完了の後、建材内に残留する水分を可及的除去することを目的として水分除去工程(ステップS1-3)を設けている。
該水分除去工程(ステップS1-3)は、躯体内に強制換気流を形成し、当該換気流によって建材を内側から乾燥させるものである。上記強制換気流は、躯体に強制排気装置を取り付け、該強制排気装置を起動させることによって躯体内に発生させることが可能となる。
該強制排気装置は、躯体の内部空間に外気を導入できる位置であれば、何処に設置しても構わず、例えば窓等の開口部に設置することが可能である。とは云え、例えば窓の開口部に当該強制排気装置を設置すると、幾つかの問題が生じる場合がある。すなわち、窓に強制排気装置を設備すると、雨天時に雨水の吹込みがありうること、開口部周辺の施工に障害が多いこと、防犯上の問題があること、サッシを傷つける恐れがあること、排気や騒音が隣家に迷惑をかける恐れがあることなどの不具合がある。
【0019】
そこで、本発明の好適な実施形態に係る方法では、これらの問題を回避するために、図3(b)に示すように、一階床スラブ6aに強制排気装置9を設置し、基礎構造の内部空間(以下、床下空間Sとも言う)を通じて外部に排気する。
空気を基礎構造の内部空間を通じて排出するには、強制排気装置9を、基礎構造の内部空間に連通する躯体2の開口部8に設置する。該開口部8は、建物完成後においても床下点検口として存在するものである。
【0020】
上記強制排気装置により建材の含有水分の放出を行う場合に必要な換気量等について検討する。図3(a)は、基礎構造の上に二階建て家屋の躯体2が構築された状態を示しており、一階床の開口部(床下点検口)8に設置された強制排気装置9の運転により、躯体の開口部、隙間等から外気が一階、二階の室内に導入され、躯体2の壁5、床6、天井、屋根7を構成する吸水した建材の乾燥を行い、一階に導入された外気はそのまま一階の床下点検口8に設置した強制排気装置9を経由し、二階に導入された外気は吹き抜け等を経てやはり一階の床下点検口8に設置した強制排気装置9によって吸引されて床下空間Sに導かれ、基礎構造の換気口3a,3bから再び外部に排気される。なお、一般的に設計された住宅の場合、一階の床下空間Sである基礎構造1の内部空間の気積は、躯体2の内部空間の気積の約1/10程度以上で、換気回数としては躯体2の内部空間の約10倍以上に相当する。
【0021】
一例として、躯体2を構成する建材が含んでいる水分重量のうち2tを強制換気により除去するための換気量は次のようにして試算される。
先ず、躯体2の内部空間に流入する外気が、例えば、東京の4月の月平均である気温が15.1℃、相対湿度が61%RHであると仮定する。そして、このときの躯体2の内部空間の相対湿度を100%RHとし、流入外気が躯体の内部空間を強制循環した後、床下の基礎構造1の内部空間に吸引されるときの相対湿度を、前記流入外気(61%RH)と躯体の内部空間(100%RH)の相対湿度値の中央値である80.5%RHと仮定する。ここで、簡易計算のため温度は変化しないものと仮定する。
この場合、建物に流入する前の外気は気温15.1℃、相対湿度61%RHの状態であるから、7.869g/mの水分を有していることになるが、躯体2の内部空間に入った新しい湿度の低い空気が余剰水分を含有する建材に接することにより平衡状態が崩れて、水分が建材から室内空気に移動する。そして、その空気が床下の基礎構造1の内部空間に吸引される際には、気温15.1℃、相対湿度80.5%RHであり、10.385g/mの水分を含有している状態となる。したがって、計算上、流入外気は、躯体の内部空間を対流して、基礎構造の内部空間を経て外部に戻る間に、10.385g/m−7.869g/m=2.51g/mの水分を移動させることができることになる。
ここで、強制排気を実施できる工事期間を40日間とする場合、躯体の内部空間を構成する建材から2tの水分を排出するには、
2,000,000g/(40日×24時間)/(2.5g/m)=833m/時
の換気量が必要となる。
そこで、1000m/時の換気能力を有する換気設備を使用すれば十分と考えられる。
ちなみに1000m/時の換気能力を有する換気設備を使用した場合の東京の月別の水分重量を試算すると、強制排気を実施できる工事期間40日で、1月は、1.8tの水分重量、4月は、2.4tの水分重量、7月は、2.4tの水分重量、10月は、3.0tの水分重量の排出が期待できる。
実際には、強制排気装置の設置初期は、躯体内が高湿度のため、排出量が大きく、乾燥が進むにつれて、躯体内の相対湿度は低下し、水分排出量は減少する。また、現場での作業のため、強制排気装置の運転時間が減少することはあり得るので、その点を見込む必要がある。
【0022】
以上説明した1000m/時の換気量は、例えば延べ床面積が40坪の住宅(階数は2階でも3階でもよい)の換気回数としては3.3回/時に相当し、現場における躯体を構成する建材の含有水分の放出を行うためには、通常の換気を行う場合に比して多くの換気量が必要となる。その換気回数は、実居住環境での換気に比べて大きすぎるレベルである。
ちなみに、一般に、住宅内では、2003年の建築基準法改正により、室内空気質の観点から0.5回/時の換気設備の設置が義務づけられているが、居住する環境下、特に冬期において、換気量が多い場合、気流感により快適性が損なわれる場合があり、このため1.0回/時を超える場合が過換気とされる。なお、窓開けにより通風換気を行う場合の換気量は概ね30回/時以上である。
【0023】
上記のように強制排気装置9は、風量が多いものが使用され、好適には2〜10回/時の換気回数を達成できるものが選択され、特に、内外差圧が大きくとも排気量が落ち難い有圧型換気扇が用いられる。
なお、建材の含有する水分、当該施工を行う季節、気候や天気、さらには建物の大きさ等によって換気期間や強制排気装置9の換気量は適宜異なるものの、換気期間としては少なくとも3〜4週間を設定し、強制排気装置9としては1000m/時以上の換気量のものを用いることが好ましい。
【0024】
次に本発明に係る強制排気装置9の設置構造について説明する。
図3(b)に示す如く、基礎構造1である連続布基礎は、外周部の立上り部と内周部の立上り部が一体化されて形成されており外周部には複数の換気口3aが長手方向に沿って適宜間隔を開けて設けられ、また内周部にも基礎グリッド間を互いに連通させる複数の換気口3bが長手方向に沿って適宜間隔をあけて設けられており、基礎構造内の換気が可能な構造とされている。この換気口3a,3bは、例えば概ね4mおきに配され、例えば約300cmの見付け面積を有しており、強制排気装置9による排気に十分な開口面積を得ることができる。また、躯体2は、基礎構造1の上に構築されており、6aaは床パネルの表面、6bはは二階床スラブ、10は一階と二階を連通させる吹き抜け部、11は窓等が設置されている開口部である。
【0025】
上記躯体2の一階床スラブ6aには、開口部としての床下点検口8が設けられており、この床下点検口8に、有圧型換気扇からなる強制排気装置9が、吸気側を一階居室側に、排気側を基礎構造3の内部空間に向けて取外し自在に設置される。
そして、この強制排気装置9を運転することにより、躯体2の開口部11や図示しない部材間の隙間等から外気が室内に導入され、強制排気装置9によって吸引されて、基礎構造1の内部空間に導かれ、換気口3a,3bから再び外部に排出されて換気がなされ、その間の空気の強制循環により、躯体2を構成する建材が乾燥せしめられ、また基礎構造1内の含有水分も放出されるようになっている。
【0026】
強制排気装置9は、図3(b)〜図5に示す如く、箱状の支持部材12に収納して支持部材12ごと床下点検口8から床下に落とし込まれ、支持部材12が床下点検口8において一階床面より下側に納められ突出することがない。また、強制排気装置9の上は、床下点検口8の周縁を利用して載置した格子状の保護部材13で保護する。すなわち、保護部材13は、床下点検口8周縁に沿って支持部材12のフランジ状縁部12b上に嵌め込まれ、その設置高さは、一階床面とほぼ同じレベルになっている。
図4に示す如く、床下点検口8は、一階床スラブ6aに形成された矩形の貫通口であり、貫通口は、該貫通口を設けるべき1枚の床パネル領域に断面視L字状の部材で構成された床敷設用鋼製枠部材14を敷設し、部分的に床パネルを敷設することにより形成される。
そして、貫通口の内周縁部には、その鋼製枠部材14に沿って床開口枠部材15が固定して取り付けられている。すなわち、該床開口枠部材15は、鋼製枠部材14の断面視L字状の立上り片に当接させ、一階床スラブ6a側の水平片に当接させて取り付けられている。
【0027】
また該枠部材14の略水平な上面には、枠部材14と略同じ外周寸法であるが幅が枠部材14よりも小さい外枠部材16が固定して取り付けられ、これによって枠部材15の上面で外枠部材16の内側部分に受け座17が形成されている。この構造は、通常の工業化住宅において施工される床下点検口8の床開口部構造で、規格化された複数のコンクリートパネルを基礎、土台又は梁に設けた床スラブである。
強制排気装置9は、フレーム18と、駆動部19と羽根部材20とからなる換気扇本体とで構成され、支持部材12の矩形の開口部が形成された底部12aに載せられている。
フレーム18は、着座部がフランジ状に外方に広がった矩形のフレーム枠18a上に複数のタスキ状のアーム部18bが設けられ、駆動部19は、駆動軸19aがフレーム枠18aの略中心側を向く状態でアーム部18bに支持され、羽根部材20は、駆動軸19aに取り付けられてフレーム枠18aに囲まれた位置に配されて、支持部材12に取り付けられて支持部材12ごと、上記受け座17に載置されている。
【0028】
本発明では、床下点検口8に対する前記支持部材12や前記支持部材12に対する前記強制排気装置9の着脱が容易に可能となるように構成されているので、建物の工事中の任意に時期に、工程や職種にかかわらず、だれでも強制排気装置9の設置や撤去が可能である。また、この強制排気装置9は、建物の建設工事中に仮設で設置する換気扇装置であり、また換気装置装置9の着脱作業は、床スラブ面6aaの上側から行うワンサイド作業であるため、上下両側から作業しなければならないボルトなどによる固定を排除している。この場合、換気装置運転時に振動が発生することが問題となるが、これを抑制するべく床敷設用の鋼製枠部材14と支持部材12間のクリアランスを3〜5mm程度に設定し、支持部材12が横ずれしないように外枠部材16の内側部分の受け座17枠に嵌め込んだ形にしている。
【0029】
図5に示されるように、支持部材12は、矩形の開口部が形成されて底部12aが帯状とされた矩形の箱状枠体であり、強制排気装置9は、この底部12aにフレーム枠18aのフランジ状部分が着座せしめられてボルト・ナット等の締結手段21で締結され、支持部材12に取り付けられている。
また、支持部材12の上縁部は、外側方に折曲されてフランジ状に形成され、このフランジ状縁部12bが上記受け座17に着座されて、支持部材12が強制排気装置9ごと、上記枠部材15に載置されている。更に、支持部材12の床下側方向の長さ(深さ)は、強制排気装置9の頂部である駆動部19が、枠部材15の上面の高さよりも低い位置に位置せしめられるような深さが確保されている。
【0030】
そして、図6に示すように、支持部材12の上には、矩形の周部材13aに複数の棒状の格子13bが設けられてなる矩形の保護部材13が、周部材13aを、上記枠部材15の受け座17に着座された支持部材12のフランジ状縁部12b上に当接させて載置され、この保護部材13の上面は、上記外枠部材16の上面とほぼ同一高さとされている。この保護部材13は、好ましくは、床面との段差が0〜30mmとなるように設置される。
また強制排気装置9は、設置状態で上方に当たる躯体側を吸気側とし、下方に当たる基礎構造1の内部空間側を排気側とするもので、有圧型であり、排気は軸方向下方に向けてなされる。よって、強制排気装置9には、風向変更手段が設けられている。すなわち、強制排気装置9が取り付けられた上記支持部材12には、風向変更手段を構成する邪魔板22が、強制排気装置9の羽根部材16から下方に一定間隔をおいて配され、複数のボルト・ナット等からなる連結手段23によって固定されており、軸方向下方に排気された空気の流れはこの邪魔板22に当たって水平方向に風向を変更して流れていく構成とされている。
【0031】
以上のような強制排気装置9は、箱状の支持部材12に収納して支持部材12ごと一階床面に設けられた床下点検口8から一階床下に落とし込むことにより、簡便に設置でき、また装置の自重があるため、設置状態も安定である。また、含有水分の放出作業が完了した段階では、支持部材12ごと床下点検口8から引き上げることによって容易に撤去することが可能となっている。
更に、支持部材12が床下点検口8において一階床面より下側に納められ突出することがないので、強制排気装置9の上は、床下点検口8の周縁を利用して載置した(嵌め込んだ)格子状の保護部材13で保護する。すなわち、保護部材13は、その設置高さは、一階床面とほぼ同じレベルにするようにしている。
強制排気装置9の上に床下点検口8の周縁を利用して載置した格子状の保護部材13で保護することができ、空気の流入を確保しながら強制排気装置9の上に工事資材等が落下することを未然に防止することができ、また保護部材13は、床下点検口8周縁に沿って支持部材12のフランジ状縁部12b上に嵌め込まれ、その設置高さを一階床面とほぼ同じレベルにするようにしたので、作業者は強制排気装置9の上を自由に歩行でき、荷物の移動時にも換気装置を引っ掛けたりすることはなく、現場での良好な作業性が担保される。
【0032】
上記のような構造の強制排気装置9は、有圧型であるので、空気の除湿に必要な多量の風量を一基で確保できる。上記強制排気装置9を運転すると、躯体2の内部空間は、減圧気味になり、ALC建材等の建材からの余剰水分の放出が促進される。
更に、床下点検口8への設置なので、窓に設置する場合のように、作業者が不在の夜間でも防犯上の問題を生じさせることはなく、また排気や騒音等で隣家に迷惑をかけることもない。
強制排気装置9を運転して、外気を躯体2の内部空間に導き、躯体2の内部空間において強制循環させて、基礎構造1の内部空間を経由してその換気口3aから再び外部に排出するが、その流通せしめられる外気が吸水している躯体2の建材周辺を通過して、建材の表面から水分を吸収し、これを乾燥させ、建設工事中において建材の含有水分の放出が促進される。強制排気装置9の運転は、各建材の含有水分の放出がある程度完了するまでの間実施され、作業者がいる日中のみならず、夜間でも継続的に実施される。
【0033】
そして、上述の如き水分除去工程(ステップS1-3)を所定期間(例えば3〜7日)行って躯体施工(ステップS1)を完了した建物について、図7(a)に示す如く、当該上部構造躯体2に気密層を形成する気密施工(ステップS2)を施すのである。
なお、上記水分除去工程(ステップS1-3)は躯体施工(ステップS1)に属するものの、建材の含有水分の放出具合に応じ、一方で気密施工(ステップS2)やその後の施工を行いつつ続行することも可能である。その場合であっても、水分除去工程は、作業開始から概ね2〜4週間程度、建物完成前まで完了する。上述の如く水分除去工程は強制換気装置9を運転しつづける工程であるため、他の工程作業を阻害することなく行うことが可能となっているのである。
気密施工(ステップS2)は、上記躯体施工(ステップS1)を行う業者とは異なる業者によってなされるものであって、外壁よりも内側に気密性断熱材25を配備する沿外壁気密工程(ステップS2-1)と、屋根スラブに沿って気密性断熱材25を設ける沿屋根気密施工(ステップS2-2)と、1階床スラブ上に気密性断熱材25を敷設する沿床気密工程(ステップS2-3)と、を備えている。
沿外壁気密施工(ステップS2-1)は、外壁の内側の面に沿って気密性断熱材25を配備する外壁断熱工程と、当該外壁を支持する梁や当該梁を支持する柱周りに気密性断熱材を配備する構造断熱工程とを備えている。構造断熱工程は、上記構造部材のうち、外壁等を支持すべく最外に位置する構造部材の内側の面又は外側の面の何れかに沿って気密性断熱材25を設ける工程であって、本実施形態においては、当該構造部材の内側の面に沿って気密性断熱材25を敷設する。
また、沿屋根気密施工(ステップS2-2)は、屋根スラブの上面又は下面に沿って気密性断熱材25を敷設するものであって、本実施形態においては、屋根スラブの上面に気密性断熱材25を敷設することとし、その後、当該気密性断熱材25上に防水層を形成することとしている。
また、沿床気密工程(ステップS2-3)は、上述の如く1階の床スラブ6a上に気密性断熱材25を敷設することとするが、当該気密性断熱材25を1階床スラブの下方に設ける構成も採用可能である。
【0034】
なお、当該気密施工(ステップS2)により用いられる気密性断熱材25は、フェノール樹脂発泡体等の気密性と断熱性の両方を具備する硬質プラスチック系の板状の断熱パネルによって形成されており、これによって当該断熱パネルを通じての通気は著しく制限される。上記各断熱施工においては、複数の断熱パネルを互いに突きつけて連続させることによって断熱層が形成されている。
さらに、各断熱パネル間の継目はもちろん、各気密施工(ステップS2)によって形成される気密層間は、気密テープにより目張りされており、該気密テープによる目張りがなされることにより、当該気密性断熱材25と気密テープとによって躯体の内側に気密層(断熱気密層)が形成されることとなるのである。
【0035】
なお、沿外壁気密施工(ステップS2-1)においては屋根スラブ上に気密性断熱材25が敷設されることとなるが、最上階での外壁断熱施工においては、当該屋根スラブを支持する梁を覆う気密性断熱材25の上端部を屋根スラブに当接させ、当該屋根スラブと気密性断熱材25との境界となる継目を気密テープ等で目張りすることによって気密性が確保されている。
上記施工により気密施工(ステップS2)を完了することにより、躯体2に断熱層が形成されると共に気密層が形成されることとなる。ここで、本実施形態においては、当該気密施工(ステップS2)により形成された気密層の気密性能を確認する目的で、上記気密施工の完了の後、気密確認作業(ステップS3)を行う。
【0036】
図7(b)に示す当該気密確認作業(ステップS3)は、躯体2の内外に亘って差圧計26を設けると共に開口部等を塞ぐ準備工程と、当該準備工程の後に上記強制排気装置9を起動させて建物の内外に差圧を発生させる差圧発生工程と、当該差圧工程の後に建物内外の差圧を測定するする測定工程とを備えている。
差圧計26は、U字管マノメータ、ブルドン管式差圧計、ダイヤフラム式微差圧計等の公知のものであって、本実施形態においては、管を湾曲形成してなるU字管部26aと、該U字管部の一端に連結される一方のチューブ26bと、他端に連結される他方のチューブ26cとを備えている。
当該準備工程は、躯体2内にあっては一方のチューブ26bの先端を強制排気装置9による送風の影響を受け難い場所に、屋外にあっては他方のチューブ26cの先端を外部風の影響を受け難い場所に設置する。また、躯体2の外壁には、上述の如く何れかの位置には、常時換気の通気口等、竣工後には通気孔となる貫通穴2aが形成されているので、気密層にも当該貫通穴2aに対向する位置に貫通穴25aを形成することとし、上記差圧計26を設置するには、何れか一方のチューブ26b,26cを貫通穴2a、25aを通じて躯体2の内外に亘って設け、その後、当該貫通穴2a、25aに充填材等の詰め物を充填して隙間を埋める。
【0037】
なお、3階建てのような高い建物や内外温度差が大きい場合の建物内の圧力差測定の高さ位置は、上下圧力分布の中性帯近傍が好ましい。また、測定の正確を期すためには、建物内の測定対象期間の圧力差の分布は内外圧力差の10%以内であることを確認することが好ましい。また、当該準備工程においては、差圧計26のゼロ点の確認をすべく、圧力差を測定する前に、チューブ26b,26cを外して圧力差測定器の差圧のゼロ点を確認しておく。
なお、測定工程を終えた測定終了後に、強制排気装置9を停止させて再びゼロ流量時の内外圧力差を測定し、測定前後に圧力差を生じていないことを確認することは好ましい。
また、上述の如く差圧計26を設置すると共に、窓等、通常の開口部や、上記気密施工の段階で形成されている貫通穴等を適宜隙間なく塞ぎ、これら開口部や貫通穴等を通じて躯体内外への空気の流出入を確実に防止する。
【0038】
次に、差圧発生工程は、図7(c)に示す如く強制排気装置9を起動させて上部構造躯体内の空気を1階床スラブ下方の床下空間に向けて排出し、当該上部構造躯体内を減圧する。
ここで、強制排気装置9は上述の如く1000m/時の換気能力を有する有圧型の換気装置であって、当該強制排気装置は、台所レンジ等の局所換気を行うために完成後の建物に常設される通常の換気装置(400m/時〜600m/時程度の換気能力)よりも著しく大きな換気量で躯体内を減圧することが可能であると共に、当該躯体内が外気よりも減圧される場合であっても、換気量を著しく低下する虞はなく、所定の換気能力を発揮して躯体内を減圧するものとなる。
【0039】
本実施形態においては、図8に示す静圧―風量特性を有する強制排気装置9を採用しており、本願発明者は、当該強制排気装置9を起動させることにより、100〜150m程度の床面積を有する2階建ての躯体の内外で少なくとも10Pa程度の差圧を生じさせることが可能であることを知見しており、この程度の差圧を確認することができれば、上記差圧計による差圧の測定には充分であることも確認している。
なお、上記静圧―風量特性を有する強制排気装置9は、上述の如き水分除去工程に用いられる強制排気装置としても充分な性能を有している。
また、当該強制排気装置9により、床下空間Sに排気を行うこととなるので、躯体2と基礎構造によって包囲される床下空間を加圧状態とすることができる。このため、躯体2の内部空間と基礎構造1の内部空間(床下空間S)との差圧は、該躯体2の内部空間と屋外空間との差圧よりも加圧分だけ大きなり、これによって、躯体2の内部空間と基礎構造1の内部空間とを連通する漏気路が存在する場合には、当該漏気路を通じての該基礎構造1の内部空間から躯体2の内部空間に向けての漏気を過大に評価することができ、ひいては当該漏気路の存在を厳しく評価することが可能となっている。即ち、内外差圧が著しく小さい場合等は、先ずかかる漏気路の存在を疑うことができるのである。冬季等の温度差による換気は、この様な躯体の下方に存在する漏気路によって大きくなりやすいため、当該漏気路の存在を可及的減じることが躯体の気密性能向上に有効であるが、上述の如く基礎構造1の内部空間に向けて排気させることにより、当該漏気路の発見に有利に作用することとなる。
【0040】
そして、強制排気装置9を所定時間起動させて上部構造体内外に差圧を生じさせた後、当該差圧Paを差圧計により測定し、当該測定した差圧Paを対応表に対応させて、現計測時点での気密状態を確認する(測定工程)。その後、強制排気装置9を停止させ、気密性確認作業(ステップS3)を終了する。
【0041】
上記対応表は、図9に示す如く、躯体の延べ床面積を横軸、内外差圧を縦軸として示されるグラフGであって、当該グラフGは、隙間特性値n=1.67とした場合に各延べ床面積に対し躯体の有効隙間面積C=3cm/mとなる内外差圧Pをプロットしたものであり、上記計測差圧Paの値がグラフGの下側に位置する場合(Pa<P)、気密性は充分に保たれている(C=3cm/m以下)ことが確認される一方、上記計測差圧Paの値がグラフGの上側に位置する場合(Pa>P)、気密性が確保されていない(C=3cm/m以上)であることが確認される。
【0042】
ここで、隙間特性値とは、隙間の状態を示し、以下の式1で示される通気特性式を対数で表した場合の直線の傾きを示すものであって、1.0〜2.0の範囲で定められ、それぞれの隙間がきわめて狭い場合にはnは1.0に近づき、広くなるにつれてnは2.0に近づく。本願発明者は、実証試験等を繰り返すことで、住宅等の建物においては当該隙間特性値が1.5〜1.7の範囲内に納まることを確認しており、対応表の作成おいては、当該範囲内で適宜建物に合った数値を採用すればよい。
【数1】

但し、Q:通気量(m/h、送風機により建物内外に圧力差を生じさせたとき、建物外皮の隙間を通して外から内へ、もしくは内から外へ流れる空気の量。また、本願においては強制排気装置の換気量に相当)
a:通気率(m/h・Pa1/n、通気特性式の係数で、建物内外の圧力差が1Paのときの1時間当たりの通気量)
ΔP:内外圧力差(Pa、建物の内外圧力差)
n:隙間特性値
また、相当隙間面積とは、総相当隙間面積を建物外皮内の実質延べ面積で除したものであり、以下の式2で示される。実質延べ床面積は建物によって明らかになるものであるから、総相当隙間面積を仮定することにより、相当隙間面積を仮定することができる。
【数2】

但し、C:相当隙間面積(cm/m、総相当隙間面積を建物外皮内の実質延べ床面積で除したもの)
αA:総相当隙間面積(cm、建物内外の圧力差9.8Pa時の通気量から、隙間と等価の単純開口の有効面積を算出したもの)
S:実質延べ床面積(m、原則的に建物外皮内の換気にかかわる部分の延べ床面積)
【0043】
なお、該強制排気装置は、図8に示す如く、例えば内外差圧を10Pa程度の低静圧とする場合、当該内外差圧(静圧)に対する風量の低下が比較的小さいため、上記対応表を予め作成するにつき、内外差圧による風量低下に基づく補正等を行う必要はない。一方、例えば内外差圧を10Pa程度以上となる場合には、当該内外差圧に伴う風量の低下が生じてしまうため、上記対応表の作成においては、かかる風量の低下を見込んでグラフを作成しておく必要がある。
また、当該グラフは、建物の隙間特性値nや仮定すべき相当隙間面積Cの値によって傾きや形状を異にするものであるが、検証すべき建物によって適正なグラフを作成し、当該グラフを計測値の比較対象として採用することが望ましい。本実施形態においては、上述の如き対応表を採用しているが、対応表としては上記のものに限定されず、検証すべき建物の隙間特性や当該建物に要求される相当隙間面積に対しある程度の許容値や安全率を見込むことによって得られる当該建物の実情に合ったグラフを予め作成したものも含む。また、対応表としては、これら隙間特性と相当隙間面積の何れか一方又は両方を変更したグラフが複数用意されているものも含み、当該対応表においては、検証すべき建物に応じて用いるべきグラフを予め決定しておく等の対応と取ることが可能となり、これによって、検証のさらなる容易化が図られるのである。
さらには、グラフと得られた座標とを比較する場合においても、用いるグラフのある程度下方まで気密性が確保されている、又は用いるグラフのある程度上方まで気密性が確保されていない、と仮定する等、当該グラフを測定対象となる躯体2の実情等に応じた気密性判断の目安に用いることも可能である。
【0044】
また、当該気密性確認作業(ステップS3)は、躯体2の内外で差圧を形成するための装置が既設の上記強制排気装置9を用いて行われ、また、差圧計26の設置も上記貫通孔を通じてなされることによりきわめて容易になされ、準備工程は、躯体2の開口部の目張り等に時間を要するとしても10数分程度で完了する。また、当該強制排気装置9の換気量(又は風量)を安定させて躯体内外の差圧をある程度定常状態にする差圧発生工程には1分程度を要するのみである。さらには、上記強制排気装置9によれば差圧を10Pa程度生じさせることが可能となっているので、上述の如き差圧計26であっても充分に目視可能な差圧が示されることとなり、これによって差圧の確認する差圧確認作業は数秒で済むこととなるので、当該気密性確認作業(ステップS3)は、差圧計26を取り外す作業を含めても全体でも1時間弱程度で完了し、きわめて短時間で且つ簡易になされることとなる。
【0045】
そして、上記対応表を参照することにより、当該差圧Paが当該躯体2に要求されるC値を維持するために必要とされる内外差圧Pよりも大きいと確認される場合には、図9に示す如く、上記気密施工(ステップS2)では躯体2に対し所望の気密性が確保されていないと判断され(ステップS3-1)、当該気密施工を行った業者は、気密性を確保すべく各箇所の点検・気密確保のための補修等を行う(ステップS2-1,S2-2,S2-3)。
また、当該差圧Paが当該躯体2に要求されるC値を維持するために必要とされる内外差圧Pよりも小さいと確認される場合には、上記気密施工により躯体の気密性が要求される気密性以上に確保されていると判断され(ステップS3-1)、気密施工を行った業者は当該気密施工を完了させると共に躯体2は次工程に移行する。
【0046】
次に、上記気密施工を行う業者とは異なる業者によって、図10(a)に示す設備施工(ステップS4)を行う。当該設備施工とは、躯体2の内外に亘って水道管や排水管等を配設する水道配管工程(ステップS4-1)や、躯体2の内外に亘って電気配線等を行う電気配線工程(ステップS4-3)等であって、これらの施工は同一の業者又は異なる業者によって行われる。
また、これらの設備施工は、気密層を事前に形成しているにも拘らず、躯体2の外壁及び気密層を貫通させる貫通孔を開設し、当該貫通孔内に配管や配線等(以下、配管等27という)を配設する施工を伴うものであって、当該配管等27を配設した後には当該貫通孔に充填材等を充填して隙間を塞ぐ。当該作業(気密回復工程(ステップS4-2,S4-4))は、孔を開設することにより一旦は気密性が劣化するものの、充填材の充填による隙間の封止により、気密性は一応回復されると考えられる。
【0047】
本実施形態は、上述の如き設備施工(ステップS4)による躯体2の気密性の変動を確認すべく、当該設備施工(ステップS4)の完了の後に、図10(b)に示す如く開設した貫通孔を閉塞した状態で上述の気密性確認作業を再び行い、躯体2の当該測定時点での差圧Pbを測定し、当該測定値がグラフGに対し上下いずれに位置するかを確認する(ステップS5)。
そして、当該差圧PbがグラフGよりも上側に位置する場合には、図9に示す如く上記設備施工によって躯体の気密性が要求される気密性よりも悪化したことと判断され(ステップS5-1)、設備施工を行った業者は、気密性を確保すべく加工した部分を中心に各箇所の点検・気密確保のための補修等を行う(ステップS4-2,S4-4)。
また、当該差圧PbがグラフGよりも下側に位置する場合には、上記設備施工を行ったにも拘らず躯体の気密性が要求される気密性以上に確保されていると判断され(ステップS5-1)、設備施工を行った業者は、施工を完了させると共に躯体2についての施工は内装施工、仕上げ施工等(ステップS6)を経て完成する。
【0048】
本実施形態によれば、気密施工(ステップS2)が完了した段階で、躯体2に設けられる強制排気装置9を利用して躯体2の気密性を検証するので、気密施工(ステップS2)までの施工における気密性を検証することができ、自己の作業責任を達成できたことを確認することができることとなる。また、これにより、建物に対する気密性についての各工程完了時点での責任の所在をはっきりさせることができ、この結果、例えば気密施工業者と設備施工業者との間でいずれが気密性を損なう施工を行ってしまったのか、といった無用の争いが生じる虞はない。
また、強制排気装置9として、躯体の内部空間に外気を導入して上記建材の含有水分の放出を促進する装置を流用できるので、気密確認のためにだけ強制排気装置9を準備し設置する必要がなく、施工の遅延化を回避しつつ気密の確認を行うことができる。また、強制排気装置9より、所定の換気量を確保することにより、建物内外の差圧を確保することができ、測定の精度はそれほど高いものではないものの、簡便な差圧計26により、また予め作成した図9の如くの対応表を利用することにより、各施工段階に於ける気密の変動を十分な精度で検査することができる。また、強制排気装置9は、床下点検口8に設置するようにしたので、躯体2と基礎構造1によって包囲される床下空間Sを加圧状態とすることができ、躯体2の内部空間と床下空間Sとの差圧は、躯体2の内部空間と屋外空間との差圧よりも加圧分だけ大きなり、よって、躯体2の内部空間と基礎構造1の内部空間とを連通する漏気路の存在を厳しく評価することができる。また、強制排気装置9は、床下点検口8に落とし込むだけで容易に設置でき、撤去も極めて容易に行えるので作業性が良好である。更に、強制排気装置9等の設置や差圧の測定等が簡便であるため、施工の進捗に応じて適宜気密性を測定することができ、また外的条件(気温・湿度等)を除いて原則的に常に同一条件で計測することとなるので、施工の進捗に応じた測定結果の信頼性も比較的高い。
【0049】
なお、参考として、「住宅の気密性能試験方法」(発行:財団法人 建築環境・省エネルギー機構、編集:気密測定技術普及委員会)に基づく住宅の気密性の試験方法によれば、試験装置として、温度計、送風機、流量測定器、流量測定装置及び圧力差測定器を必要とし、1試験を完了するには60〜120分程度を要し、試験を行うにはきわめて大掛かりでなく多大な時間を要するものとなってしまう。
【0050】
以上、本発明の施工途上の建物の気密性確認方法の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではない。
例えば、上記気密施工後の気密性確認作業において、差圧のみを確認して当該気密施工完了直後の差圧を記録等しておき、その後、設備施工を完了直後の気密性確認作業において、再び差圧を確認しておき、これら2つの記録差圧の大小を比較する構成を採用することも可能であって、当該気密性確認方法によれば、差圧を比較するだけで当該設備施工により気密施工完了直後よりも気密性が悪化したか否か、悪化したとすればどの程度悪化したのか等を確認することができる。
また、設備施工は、配管設備施工、電気設備施工等の複数の施工を異なる業者によって順次行う態様をとることも可能であって、この種の設備施工においては、各施工を完了させる度に上記気密性確認作業を行い、各施工においてどの程度気密性が変動したのか明確にしつつ、或全体の施工を進めていく構成を採用することも可能であり、これによって、各業者単位で躯体の気密性に対する責任の所在を明確なものとすることができる。
【0051】
また、異なる業者間のみならず、同一の業者間であっても、各施工の完了ごとに上記気密性確認作業を行うことによって、いずれの時点で気密性を損なってしまったのかを確認することができ、これによって、各作業者間での気密性に対する責任の所在を明確なものとすることができるばかりでなく、気密性を損なった部位に早期特定にも繋がり、ひいては、気密性悪化に起因する施工全体の手戻りを最小限に抑えつつ、最終工程に至るまで躯体を気密性を確保することが可能となる。
また、各施工において、各工程は上述の順序を遵守する必要はなく、例えば、気密施工にて沿屋根断熱工程の後に沿外壁気密工程を行う等、各施工での工程の順序は適宜変更することが可能である。また、防水加工等、躯体を仕上げていく他の施工も、躯体施工の後であれば、気密施工や設備施工と同時期またはこれらの施工と前後して適宜行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る気密検証工程を含む建物の施工工程を示すフロー図である。
【図2】本発明に係る気密検証方法が実施される建物の概略断面図である。
【図3】(a)は、二階建て家屋の躯体において、強制排気装置により建材の含有水分の放出を行う場合に必要な換気量の検討に参照される躯体の概略断面図、(b)は強制排気装置を設置して運転している状態を示す概略断面図である。
【図4】強制排気装置を建物の床下点検口に取り付けた状態を示す断面図である。
【図5】強制排気装置が取り付けられる支持部材の平面図である。
【図6】強制排気装置の上に配置される保護部材の平面図である。
【図7(a)】気密施工工程後の気密検証方法を示す断面模式図で、気密施工が完了した時点の図である。
【図7(b)】気密施工工程後の気密検証方法を示す断面模式図で、差圧計、強制排気装置を設置した状態を示す図である。
【図7(c)】気密施工工程後の気密検証方法を示す断面模式図で、気密性検証のために強制排気装置を運転している状態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態において用いられている強制排気装置の静圧―風量特性を示すグラフである。
【図9】上部構造体内外の差圧と気密状態の対応表である。
【図10(a)】設備施工後の気密検証方法を示す図7(a)と同様の模式図で、設備施工が完了した時点の図である。
【図10(b)】設備施工後の気密検証方法を示す図7(b)と同様の模式図で、差圧計、強制排気装置を設置した状態を示す図である。
【図10(c)】設備施工後の気密検証方法を示す図7(c)と同様の模式図で、気密性検証のために強制排気装置を運転している状態を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 基礎構造
2 躯体
3a、3b 換気口
4 梁
5 壁
6 床
6a 1階床スラブ
6aa 床パネルの表面
6b 2階床スラブ
7 屋根
8 点検口
9 強制排気装置(強制排気設備)
10 吹き抜け部
11 開口部
12 支持部材
13 保護部材
14 枠部材
15 開口枠部材
16 外枠部材
17 受け座
18 フレーム
18a フレーム枠
18b アーム部
19 駆動軸
20 羽根部材
21 締結手段
22 邪魔板
23 連結手段
25 気密性断熱材
26 差圧計
26a U字管部
26b 一方のチューブ
26b 他方のチューブ
27 配管等
S 床下空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎構造上に上部構造を建ち上げると共に当該上部構造に外壁と屋根等の建材とを設置して躯体を形成する躯体施工を終えた後に、当該躯体に気密層を形成する気密施工までを完了した施工途上の建物の内外に圧力差を生じさせて当該躯体の気密性を検証する施工途上建物の気密検証方法であって、
前記気密施工が完了した躯体に設けられる強制排気設備を運転して当該躯体の排気を行うことにより、当該躯体の内外に差圧を生じさせ、該差圧に基づいて当該躯体の気密状態を確認する気密確認工程を備えていることを特徴とする施工途上建物の気密検証方法。
【請求項2】
前記強制排気設備が、躯体の内部空間に外気を導入して前記建材の含有水分の放出を促進するために設置される強制排気装置であることを特徴とする請求項1に記載の施工途上建物の気密検証方法。
【請求項3】
前記気密施工後に、前記躯体の外壁及び気密層を貫通する通気孔などの貫通孔の形成を伴う施工を行う設備施工を備え、
前記気密確認工程は、
前記気密施工までを完了させた時点で、前記強制給排気装置により強制排気を行うことにより、前記躯体の内外に差圧を生じさせて気密性を確認する当初気密確認工程と、
前記設備施工までを完了させた時点で、前記強制給排気装置により強制排気を行うことにより、前記躯体の内外に差圧を生じさせて気密性を確認する設備施工後気密確認工程と、
を備えていることを特徴とする請求項2に記載の施工途上建物の気密検証方法。
【請求項4】
前記設備施工を複数回に亘って行い、
各設備施工を完了させる度に、前記強制排気装置による強制排気により生じる内外差圧に基づいて当該設備施工後の躯体の気密性を確認する設備施工後気密確認工程を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の施工途上建物の気密検証方法。
【請求項5】
前記強制排気装置は、
前記躯体に形成されている開口部の開口縁部を形成する枠材に載置される支持部材と、
該支持部材に取り付けられ、前記躯体の内部空間の空気を吸引して躯体の外方に排気する換気扇本体と、
該換気扇本体よりも風上に配設されて換気扇本体を保護する保護部材と、
上記換気扇本体の風下に配設されて排気流れを変更させる風向変更部材と
を具備することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の施工途上建物の気密検証方法。
【請求項6】
前記強制排気装置が設置される開口部は、躯体施工により形成される基礎構造の上に構築された躯体の内部空間を基礎構造の内部空間に連通させるものであることを特徴とする請求項5に記載の施工途上建物の気密検証方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7(a)】
image rotate

【図7(b)】
image rotate

【図7(c)】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10(a)】
image rotate

【図10(b)】
image rotate

【図10(c)】
image rotate


【公開番号】特開2010−71950(P2010−71950A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242904(P2008−242904)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】