説明

弁装置

【課題】 弁装置において、弁体が第1の位置に向かって移動して、弁体が本体の当接面に衝突する際の本体と弁体の衝突力を緩和することができる。
【解決手段】 インジェクタ10は、本体12と弁体20とスプリング28を備えている。本体12の第2流体管18には、開口18bが形成されている。弁体20は、第2流体管18の当接面18cに当接して開口18bを閉封する第1の位置と、当接面18cから離間して開口18bを開放する第2の位置に移動可能に本体12内に収容されている。スプリング28は、弁体20を第1の位置に向けて付勢している。弁体20は、粘弾性体24,26によって本体12と接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弁装置に関する。特に、弁体が本体の当接面に衝突するときの、弁体と本体の衝突力を緩和する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
弁体を移動させて、閉弁状態である第1の位置と開弁状態である第2の位置に切り替えられる弁装置が知られている。この弁装置には、開弁状態から閉弁状態に切り替わるとき、弁体が本体に衝突するものがある。この種の弁装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
特許文献1の弁装置は、本体と弁体とスプリングとアクチュエータを備えている。本体は、開口を有している。弁体は、本体の当接部に当接して開口を閉封する第1の位置と、本体の当接部から離間して開口を開放する第2の位置に移動可能である。スプリングは、弁体を第1の位置に向けて付勢している。アクチュエータは、通電されると弁体を第2の位置まで移動させる。
【0003】
【特許文献1】特開平11−94115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の弁装置では、第2の位置に移動された弁体は、アクチュエータへの通電が停止されると、スプリングの付勢力によって第1の位置に向かって移動する。このとき、弁体が第1の位置に到達すると、弁体と本体の当接面が衝突する。特許文献1の弁装置では、弁体と本体の当接面が衝突することによって、弁体と本体の両者の当接面が磨耗してしまう。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされてものであり、その目的は、弁体が第1の位置に向かって移動して、弁体が本体の当接面に衝突する際の本体と弁体の衝突力を緩和することができる弁装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁装置は、本体と弁体と付勢手段と粘弾性体を備えている。本体は、その内部を流体が通過する。本体は、開口を有する。弁体は、本体に対して第1の位置と第2の位置に移動可能である。弁体が第1の位置にあるとき、弁体は、本体の当接面に当接して開口を閉封する。弁体が第2の位置にあるとき、弁体は、本体の当接面から離間して開口を開放する。付勢手段は、弁体を第1の位置に向けて付勢する。粘弾性体は、本体と弁体を接続している。
【0007】
この弁装置では、付勢手段の付勢力によって、弁体が第2の位置から第1の位置に向かって移動する。粘弾性体は、弁体の移動に伴って変形する。このとき、粘弾性体の粘性に起因して、弁体の移動速度に比例する力と逆向きの力が作用する。これにより、弁体が本体に衝突する際の衝突力が緩和される。
【0008】
この弁装置では、弁体が第1の位置と第2の位置の中間の位置に位置するときに、粘弾性体が自然長となることが好ましい。
この構成によれば、第1の位置と第2の位置との間を移動する弁体に対して、粘弾性体の弾性力が弁体に過剰に作用することを防止することができる。
【0009】
弁体は、その外周面から外側に向かって延びるフランジを有していてもよい。この場合、粘弾性体を、フランジの第1の位置側の面とその面に対向する本体の内面との間と、フランジの第2の位置側の面とその面に対向する本体の面との間の一方側又は両側に配置してもよい。
【0010】
この弁装置では、粘弾性体が弁体の外周面に沿って周方向に間隔を空けて複数配置されていてもよい。この構成によれば、粘弾性体は、弁体に対して弁体の周方向にバランスの取れた力を付与することができる。これにより、弁体が傾くことを抑制することができる。また、粘弾性体間に間隔を設けることによって、本体の内部を流れる流体の流れの邪魔にならない。
【0011】
この弁体では、弁体の外周面とその外周面に対向する本体の内面を接続する板バネを備えていてもよい。この構成によれば、板バネで弁体を支持することができるため、弁体を摺動可能に支持する支持部材を配置しなくてもよい。そのため、弁体と支持部材との間の摺動抵抗や磨耗を考慮しなくてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の弁装置によれば、本体と弁体の当接部分の磨耗を低減することができる。これにより、弁装置の流量制御性の低下を抑制しつつ、弁体の寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
下記の実施例に記載の技術の主要な特徴について列記する。
(形態1) 本実施例の弁装置では、本体には、弁体と付勢手段が収容されている。
(形態2) 本実施例の弁装置の弁体は、フランジを有しており、フランジの第1の位置側の面とその面に対向する本体の内面との間と、フランジの第2の位置側の面とその面に対向する本体の面との間の少なくとも一方側に弾性体が配置されている。
【実施例】
【0014】
(第1実施例)
本発明を具現化した第1実施例にかかるインジェクタを図面に基づいて説明する。図1は、インジェクタ10の縦断面図である。図1に示すように、インジェクタ10は、本体12と弁体20を備えている。図1は、弁体20が第1の位置にある状態(閉弁状態)を示している。インジェクタ10には、例えば、水素ガス等の流体が供給される。
【0015】
本体12は、ケーシング14と支持部16と第1流体管34と第2流体管18を備えている。ケーシング14は、ケーシング部14aとコネクタ部14bが一体で成形されている。コネクタ部14bには、端子14cが一体成形されている。端子14cは、コイル32に接続されている。端子14cは、外部電源(図示省略)から供給される電力をコイル32に供給する。ケーシング部14aは、円管形状を有している。ケーシング部14aの中空部14dの一方側には第1流体管34の一部が嵌入され、ケーシング部14aに固定されている。ケーシング部14aの中空部14dの他方側には支持部16の一部が嵌入され、ケーシング部14aが固定されている。
【0016】
第1流体管34は、略円管形状を有している。第1流体管34には、軸方向に貫通する第1流体経路34aが形成されている。ケーシング14と反対側の第1流体管34の端部には、配管(図示省略)が接続されている。配管には、流体が流れている。配管を流れる流体は、第1流体管34の開口34bから第1流体経路34aに流入する。第1流体経路34aに流入した流体は、第1流体経路34aの左端に向かって流れる。第1流体経路34aの上流端には、フィルタ36が配置されている。フィルタ36は、第1流体管34の上流側の開口34bに嵌合されて固定されている。フィルタ36は、流体から異物を取り除く。第1流体経路34aの中間部には、スプリング受け30が挿入されている。スプリング受け30は、第1流体経路34aの内壁に嵌合されて固定されている。スプリング受け30の下流側には、スプリング28の上流側が当接している。スプリング28の上流側の一部は、第1流体経路34aに挿入されている。スプリング28の外径は、第1流体経路34aの内径と略同一である。
【0017】
支持部16には、貫通孔16aが、第1流体管34と同軸上に支持部16を貫通して形成されている。貫通孔16aの上流側には、第1流体管34の下流側の一部が挿入されおり、支持部16と第1流体管34の接合部は溶接されて固定されている。貫通孔16aの下流側には、第2流体管18の一部が挿入されており、支持部16と第2流体管18の接合部は溶接されて固定されている。
第2流体管18には、第2流体経路18aが第1流体経路34aと同軸上に第2流体管18を貫通して形成されている。支持部16側の第2流体経路18aの端には、開口18bが形成されている。第2流体経路18aは、開口18bを介して支持部16と第1流体管34と第2流体管18とで囲まれる空間16bに連通している。支持部16と反対側の第2流体管18の端には、例えば、燃料電池自動車の燃料電池等(図示省略)が接続されている。
【0018】
支持部16と第1流体管34と第2流体管18とで囲まれる空間16b内には、弁体20が収容されている。弁体20のボディ20fは、円筒形状を有している。ボディ20fの上流側の外径は、下流側の外径より大きくなっている。弁体20には、第2流体経路34aの内径と略同一の直径を有する弁流体経路20cが形成されている。弁流体経路20cは、第2流体経路34aと同軸上に形成されている。第2流体経路34aの下流側に達した流体は、弁流体経路20cに流入する。弁流体経路20cの下流側には、流体流出経路20aが連通されている。流体流出経路20aは、弁流体経路20cの下流側から弁体20の外周に開口している。弁流体経路20cに流入した流体は、流体流出経路20aを通過して、空間16bに流出する。
弁流体経路20cには、スプリング28の下流端が挿入されている。弁体20は、スプリング28の付勢力によって、第2流体管18に向かって付勢されている。弁体20は、スプリング28の付勢力によって、第2流体管18の当接面18c(シート面)に当接される。即ち、弁体20は、第1の位置に位置する。弁体20が第1の位置にある状態で、開口18bは弁体20によって閉封される。これにより、空間16bと第2流体経路18aとが遮断される。弁体20が第1の位置にある状態では、弁体20の上流側端面20hは、第1流体管34の下流側端面34cと所定の距離だけ離間している。
【0019】
弁体20のボディ20fには、その外周に延出するフランジ20bが形成されている。フランジ20bは、ボディ20fの外周面から弁体20の軸方向に対して略垂直に立設されている。フランジ20bは、その外周端が支持部16の内面16dに接触しないように、所定の距離だけ離間して形成されている。フランジ20bの上流側(第2位置側)の面20eとそれに対向する支持部16の面16hの間には、粘弾性体26が配置されている。粘弾性体26の両端は、面20e,16hのそれぞれに接着固定されている。図2は、図1のII−II断面における粘弾性体26の断面図である。図2に示すように、粘弾性体26は、弁体20に設けたフランジ20bの外周面に沿って周方向に等間隔に複数配置されている。フランジ20bの下流側(第1位置側)の面20dとそれに対向する第2流体管18の当接面18cの間には、粘弾性体24が配置されている。粘弾性体24は、粘弾性体26と同様に、弁体20に設けたフランジ20bの外周面に沿って周方向に等間隔に複数配置されている。粘弾性体24の両端は、面20d,18cのそれぞれに接着固定されている。粘弾性体24,26の材質は、例えば、粘弾性を有するゴムである。この場合、粘弾性体24,26と面20d,20e,16h,18cとの接着は、焼付け等によって行われる。また、粘弾性体24,26の他の材質としては、例えば、ジェル状の物質(例えば、機能性高分子ゲル)をゴムなどで形成した袋状部材に封入した複合材で形成することができる。
【0020】
ケーシング部14a内には、第1流体管34の外側にコイル32が収容されている。コイル32には、端子14cから電力が供給されると、コイル32の周辺に磁界が発生する。この磁力によって、弁体20が上流側即ち、第2の位置側に向かって移動される。図3に示すように、弁体20が第1の位置から上流側に向かって移動すると、弁体20の上流側の端面が第2流体管34の下流側に当接する。これにより、弁体20の移動が停止される。
弁体20が第1の位置にある場合、粘弾性体26は、自然長よりも引張られて長くなっている。即ち、粘弾性体26は、その弾性力によって弁体20を上流側に引張っている。粘弾性体24は、自然長よりも圧縮されて短くなっている。即ち、粘弾性体24は、その弾性力によって弁体20を上流側に押圧している。
一方において、弁体20が第2の位置にある場合、粘弾性体26は、自然長よりも圧縮されて短くなっている。即ち、粘弾性体26は、その弾性力によって弁体20を下流側に押圧している。粘弾性体24は、自然長よりも引張られて長くなっている。即ち、粘弾性体24は、その弾性力によって弁体20を下流側に引張っている。
【0021】
次に、インジェクタ10の動作について説明する。第1流体管34の第1流体経路34aには、配管から流体が流入する。第1流体経路34aに流入した流体は、フィルタ36を通過して、弁体20の弁流体経路20cに流入する。弁流体経路20cに流入した流体は、流体流出経路20aを通過して、空間16bに流入する。弁体20が第1の位置にある状態では、第2流体管18の開口18bは閉封されている。空間16b内の流体は、空間16b内に留まっている状態となる。
空間16b内に流体が留まっている状態で、端子14cに電力が供給されると、弁体20は、コイル32の磁力により第2の位置に向かって移動する。弁体20が第2の位置に向かって移動すると、弁体20の下流側端面20gは、第2流体管18の当接面18cから離間する。これにより、開口18bが開放される。図3に示すように、弁体20は、当接面18cから離間してさらに移動し、弁体20の上流側端面20hが第1流体管34の下流側端面34cに当接する、即ち、第2の位置に至る。空間16b内の流体は、開口18bを通過して、第2流体経路18aに流出する。第2流体経路18aに流出した流体は、燃料電池等に流入して消費される。
【0022】
弁体20が第2の位置にある状態で、端子14cへの電力の供給が停止されると、磁界が消失し、弁体20は、スプリング28の付勢力によって第1の位置に向かって移動する。粘弾性体24,26は、弁体20の移動に伴って変形される。このとき、粘弾性体24,26の粘性に起因して、粘弾性体24,26には、それらの変形方向に対して反力が発生する。粘弾性体24,26に発生した反力は、粘弾性体24,26の変形速度、即ち、弁体20の移動速度に比例する。したがって、粘弾性体24,26の反力は、弁体20が第1の位置に近づくにしたがって大きくなる。弁体20には、粘弾性体24,26の反力によって、弁体20の移動と反対向きの力が作用される。これにより、弁体20が第2流体管18の当接面18cに衝突する際の衝突力を緩和することができる。弁体20の下流側端面20gと第2流体管18の当接面18cとの衝突による磨耗を低減することができる。
【0023】
このインジェクタ10では、弁体20が第1の位置から第2の位置に移動する場合にも、粘弾性体24,26が、弁体20の移動に伴って変形される。これにより生じた粘弾性体24,26の反力によって、弁体20には、弁体20の移動と反対向きの力が作用する。これにより、弁体20の上流側端面20hが第1流体管34の下流側端面34cに衝突する際の衝突力を緩和することができ、弁体20の上流側端面20hと第1流体管34の下流側端面34cとの衝突による磨耗を低減することができる。
粘弾性体24,26は、弁体20の周方向に間隔を空けて配置されている。そのため、空間16bに流入した流体の流れを妨げることがない。
粘弾性体24,26は、弁体20の移動に伴って変形されても、その弾性によって、その形状を維持することができる。
【0024】
図4は、上記したインジェクタ10の一部を置き換えた実施例を示している。ここで、上記のインジェクタ10と同じ構成のものには、図1と同じ符号を付し、説明を省略する。
図4に示すように、インジェクタ10Aには、粘弾性体24が配置されていない。インジェクタ10Aには、ボディ20fの外周面20iから、その外周面20iに対向する支持部16の内面16gまで延びる板バネ50が配置されている。板バネ50は、略円板形状をなしている。板バネ50は、弁体20が挿入された状態で配置されている。板バネ50は、その平面内に複数の連通孔を備えている。これにより、空間16b内の流体は、板バネ50を越えて流れることができる。
図4に示すインジェクタ10では、板バネ50と粘弾性体26によって、弁体20を支持しその姿勢を安定させることができる。
【0025】
(第2実施例)
本発明を具現化した第2実施例にかかる減圧弁を図面に基づいて説明する。図5に示すように、本実施例の減圧弁100は、加圧流体(例えば、水素ガス等)の供給装置から供給される加圧流体を減圧し、減圧した加圧流体を消費装置(例えば、燃料電池、内燃機関等)に供給する。図5に示すように、減圧弁100は、本体102と弁体118を備えている。図5は、弁体118が前述の第2の位置に位置している状態(開弁状態)を示している。
本体102は、ケーシング104と本体105とを備えている。ケーシング104内の空間は、ケーシング104と本体105で挟持されているダイアフラム122によって第1空間106及び第2空間111が形成されている。本体105の下端部には、円筒形状の凹所132が形成されている。凹所132には、蓋130が嵌入されている。蓋130の上端面130aは、凹所132の底面132aと所定の距離だけ離間して位置している。凹所132の底面132aと蓋130の上端面130aとの間に上部空間134が形成されている。上部空間134には、外部を連通する流入路126が形成されている。流入路126の入口には、フィルタ128が嵌入されている。蓋130には、その軸方向の中間部に円管形状のシールゴム130bが配置されている。シールゴム130bは、上部空間134に流入した流体が蓋130と本体105との隙間から外部に漏れ出ることを防止している。
【0026】
第1空間106には、スプリング108とダイアフラム保持部112とダイアフラム122が配置されている。スプリング108の上端は、ケーシング104の上端の内面に形成されているスプリング保持部106aに保持されている。スプリング108の下端には、ダイアフラム保持部112が固定されている。スプリング108は、ダイアフラム保持部112を下方に付勢している。ダイアフラム保持部112の下端面には、十字溝112cが形成され流路を形成している。弁体118が第2の位置にある状態では、ダイアフラム保持部112の当接面112bが本体105の第2空間111の底面111aと当接している。ダイアフラム保持部112は、上保持部材112eと下保持部材112fとを有しており、ダイアフラム122の中心部に設けた開口122aに挿入されてダイアフラム122を挟持している。ダイアフラム122の外周縁部は、ケーシング104と本体105に挟持されている。第1空間106は、通気孔106bを介して外部と連通している。第1空間106には、通気孔106bを介して大気が出入可能となっている。第1空間106内の圧力は、大気圧と同じである。第2空間111には、流出路114が連通され、流出路114を介して消費装置に接続されている。第2空間111は、連通孔116を介して上部空間134と連通している。
【0027】
上部空間134には、弁体118が収容されている。弁体118は、弁部118bに連結する連結部118aを備えている。連結部118aの上端は、ダイアフラム保持部112の下面に接続されている。連結部118aの下端は、弁部118bの上端面118cに固定されている。弁体118が第1の位置にある状態(図6に示す状態)では、弁部118bの上端面118cは、凹所132の底面132aに当接する。弁部118bの上端面118cには、連通孔116の内径より大きいゴムシール120が配置されている。これにより、弁体118が第1の位置にある状態で、弁部118bの上端面118cと凹所132の底面132a(シート面)の隙間から流体が漏れ出ることを防止している。弁部118bの段部118dには、板バネ136が挿入されている。板バネ136は、略円板形状をなしている。板バネ136の平面部には、複数の貫通孔136aが形成されている。これら貫通孔136aは、板バネ136が上部空間134に流入した流体の妨げにならない大きさに形成されている。
【0028】
弁部118bの下端面118eと蓋130の上端面130aの間には、粘弾性体124が配置されている。粘弾性体124の上端は、弁部118bの下端面118eに接着されている。粘弾性体124の下端は、蓋130の上端面130aに接着されている。粘弾性体124は、円筒形状で等間隔に複数配置されている。弁体118が第2の位置にある状態では、粘弾性体124は自然長よりも圧縮され短くなっている。
【0029】
次に、減圧弁100の動作について説明する。減圧弁100は、その流入路126が加圧流体の供給装置(図示省略)に接続され、その流出路114が加圧流体の消費装置(図示省略)に接続されている。減圧弁100の上部空間134には、流入路126を介して供給装置から加圧流体が導入される。第2空間111の圧力が低い状態では、スプリング108の付勢力によって、ダイアフラム保持部112とともに弁体118が第2の位置に維持される。弁体118が第2の位置にある状態では、上部空間134に導入された加圧流体は、連通孔116とダイアフラム保持部112の十字溝112cを通過して第2空間111に流入する。
第2空間111に加圧流体が流入し、第2空間111内の圧力が上昇すると、第2空間111内の圧力によってダイアフラム保持部112に付与される力が、スプリング108の付勢力よりも大きくなる。その結果、ダイアフラム保持部112とともに弁体118は第1の位置(図6参照)に向かって移動し、弁部118bの上端面118cが凹所132の底面132aに当接する。これにより、上部空間134と第2空間111の連通が遮断され、第2空間111の圧力がスプリング108の付勢力に応じた圧力に調整された状態となる。
消費装置で減圧後の加圧流体が消費されると、第2空間111の圧力が低下する。第2空間111の圧力が低下すると、スプリング108の付勢力によって、ダイアフラム保持部112とともに弁体118が第2の位置に移動する。その結果、第2空間111と上部空間134が再び連通し、上部空間134から加圧流体が流入して第2空間111の圧力が上昇する。このようにして、第2空間111の圧力は、スプリング108の付勢力に応じた圧力に維持される。消費装置には略一定の圧力の加圧流体が供給され、消費装置で加圧流体が消費されるたびに弁体118が開弁と閉弁を繰り返す。即ち、弁体118の弁部118bの上端面118cが凹所132の底面132aに繰り返し当接する。
【0030】
上記した弁体118の移動に伴って、粘弾性体124が変形する。粘弾性体124は、その粘性によって変形方向に対して反力を発生する。弁体118には、粘弾性体124の反力によって、弁体118の移動と反対向きの力が作用される。
弁体118が第1の位置に向かって移動する場合は、弁部118bの上端面118cが凹所132の底面132aに衝突する際の衝突力を緩和することができるため、弁部118bの上端面118cと凹所132の底面132aの磨耗を低減することができる。
弁体118が第2の位置に向かって移動する場合は、ダイアフラム保持部112の当接面112bが第2空間111の底面111aに衝突する際の衝突力を緩和することができる。ダイアフラム保持部112の当接面112bと第2空間111の底面111aの磨耗を低減することができる。
【0031】
粘弾性体124が発生する反力は、粘弾性体124の変形速度、即ち、弁体118の移動速度に比例する。そのことから、弁体118の上端面118cと凹所132の底面132aとの間の衝突力及びダイアフラム保持部112の当接面112bと底面111aとの間の衝突力を効果的に緩和することができる。例えば、弁体118の移動速度が速く、弁体118がケーシング104に激しく衝突しようとする場合でも、粘弾性体124が大きな反力を発生し、弁体118の上端面118cと凹所132の底面132aとの間の衝突力が充分に緩和される。
【0032】
弁体118が第1の位置にある状態では、粘弾性体124は自然長より長くなっている。即ち、弁体118が第1の位置付近まで移動すると、粘弾性体124の弾性力によって、弁体118の移動と反対向きの力が作用される。弁部118bの上端面118cと凹所132の底面132aとの衝突力は、粘弾性体124の弾性力によっても緩和される。
同様に、弁体118が第2の位置にある状態では、粘弾性体124は自然長より短くなっている。即ち、弁体118が第2の位置付近まで移動すると、粘弾性体124の弾性力によって、弁体118の移動と反対向きの力が作用される。ダイアフラム保持部112の当接面112bと第2空間111の底面111aとの衝突力は、粘弾性体124の弾性力によっても緩和される。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上記した第1実施例と第2実施例の弁装置では、弁体の付勢手段としてスプリングを用いたが、例えば、付勢手段として、コイルを用いた電磁式等の付勢手段を用いてもよい。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施例に係るインジェクタの縦断面図。
【図2】図1のII−II断面図。
【図3】弁体が第2の位置にある状態を示すインジェクタの縦断面図。
【図4】第1実施例に係るインジェクタのその他の形態を示す縦断面図。
【図5】第2実施例に係る減圧弁の縦断面図。
【図6】第2実施例に係る減圧弁において、弁体が第1の位置にある状態を示す減圧弁の縦断面図。
【符号の説明】
【0035】
10:インジェクタ
12:本体
20:弁体
28:スプリング
24,26:粘弾性体
100:減圧弁
102:本体
108:スプリング
118:弁体
124:粘弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が通過するとともに開口を有する本体と、
本体の当接面に当接して開口を閉封する第1の位置と本体の当接面から離間して開口を開放する第2の位置に移動可能な弁体と、
その弁体を第1の位置に向けて付勢する付勢手段と、
本体と弁体を接続している粘弾性体、
を備えることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
粘弾性体は、弁体が第1の位置と第2の位置の中間の位置に位置するときに自然長となることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
弁体は、その外周面から外側に向かって延びるフランジを有しており、粘弾性体は、フランジの第1の位置側の面とその面に対向する本体の内面との間と、フランジの第2の位置側の面とその面に対向する本体の内面との間の少なくとも一方側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の弁装置。
【請求項4】
粘弾性体は、フランジの第1の位置側の面とその面に対向する本体との間と、フランジの第2の位置側の面とその面に対向する本体との間のそれぞれに配置されていることを特徴とする請求項3に記載の弁装置。
【請求項5】
粘弾性体は、弁体の外周面に沿って周方向に間隔を空けて複数配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項6】
弁体の外周面とその外周面に対向する本体の内面を接続する板バネを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−85385(P2009−85385A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258031(P2007−258031)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】