説明

弁部材

【課題】弁体に形成された流通路を精度良く開閉できる弁部材を提供すること。使用に際して安全であり、また製作コストが安価でありさら操作性に優れた弁部材を提供すること。
【解決手段】流通路2を有する弁本体1にこの流通路2を開閉する弁体4を装着し、弁体4の弁棒5を長さ方向上下動させることによって流通路2を開閉させるように構成した弁部材である。弁本体1に、指先による摘み操作により弁棒の長さ方向に伸縮して、伸長時に弁体4の弁棒5を掴持して流通路2を開放する方向に上動させ、収縮時に弁体4の弁棒5の掴持を開放して弁棒5を弁体自体の弾性復元力により下動させて流通路2を閉止させるようにした弁棒操作部材6を配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁本体に設けられた流通路を精度良く開閉自在に閉止させることができる弁部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、患者の血液内の所定点における血圧を測定する場合、カテーテル先端が測定点に達するまでカテーテルを血管内に挿入している。この際、血液の凝固によるカテーテルの詰まりを防止するために、カテーテル内に微量の生理食塩水を常時流通させ、測定状況に応じて、この生理食塩水の流通量を調整する必要がある。
【0003】
生理食塩水などの液体の流通量を調整するために、例えば、特公平8−24713号公報(特許文献1)には、キャビティを有する一組のハウジングをこれらのキャビティ同士を対向させた状態に配設し、このキャビティ内にチューブをその端部が一方のハウジングに貼着された状態に配設させ、更に、上記一組のハウジングを取り囲むようにスリーブ及び紡錘体が一体的に設けられたフラッシュデバイスが提案されている。
【0004】
そして、上記フラッシュデバイスは、その紡錘体を手で握ることによって、一組のハウジング間に形成されたキャビティの長さを伸長させ、このキャビティの伸長によって、他方のハウジングのキャビティ端面とこれに対向しているチューブ端面との間に隙間を生じさせて、チューブとこれに対向するキャビティ内周面との間に形成された溝を開放させることによって、流体の流通量の調整を行っている。
【0005】
しかしながら、上記フラッシュデバイスは、紡錘体を手で握る際の握り具合で溝の開閉度合いを調整しるため、紡錘体を同じ力で握っても、紡錘体を握った位置や握り方によって紡錘体の変形度合いが異なり、その結果、一組のハウジング間に形成されたキャビティの伸長度合いが変化してしまい、溝の開放を正確に行うことができず、流体の流通量を精度よく制御することができないといった問題点を有していた。
【0006】
流体の流通量を精度よく制御する方法が特開平2−7936号公報(特許文献2)に提案されている。この特許文献2には、バルブ本体内に設けた凹部の底部内にバルブ座を設け、このバルブ本体内の凹部内に、バルブ座に対して弾性的に押圧される状態でバルブコアを配置し、このバルブコアをバルブ座から分離させることでバルブ座とバルブコアの底面との間に流路を形成してフラッシュ速度の流体流れを生じさせるフラッシュ制御手段を設けたフラッシュバルブが開示されている。
【0007】
さらに説明すると、フラッシュ制御手段はバルブ本体の外側に取り付けられ、フラッシュ制御手段には通孔が形成され、上記バルブコアに設けたハンドルが該通孔内を挿通している。このハンドルに設けたフランジに、フラッシュ手段の通孔の周縁が係止し、フラッシュ手段を指でつかんで変形させた場合にはその通孔周縁がハンドルのフランジを係止した状態で上方へ移動するためバルブコアが持ち上がってフラッシュ速度の流体流れを生じさせ、フラッシュ手段から指を開放するとフラッシュ手段の収縮に伴ってハンドルが元の状態に戻り、バルブコアがバルブ座を弾性的に押圧して流路を閉鎖する。
【0008】
しかし、このフラッシュバルブは、バルブコアから延設されたハンドルのフランジにフラッシュ手段の通孔の周縁が常時係止した状態で、バルブコアが上下動するものであるので、フラッシュ手段を解放した場合に、その収縮が充分でないと(例えば、繰り返しの使用によってフラッシュ手段の収縮力が弱まる場合)、バルブコアが流路を閉鎖しないことがある。そのため、例えば、フラッシュバルブを用いて患者へ生理食塩水を投与するような場合には、生理食塩水が投与され続けるため中心静脈圧が上昇するという危険がある。
【0009】
また、ハンドルに設けるフランジの位置をフラッシュ手段の通孔位置よりも離れた位置に設けることも考えられる。しかし、その場合にはフラッシュ手段の操作量が多くなり、またフラッシュ手段の操作に遅れてハンドルが上動することになるので、操作性が悪い。
さらに、フラッシュバルブを寸法精度良く作製することが必要で、製作コストが上がる。
【特許文献1】特公平8−24713号公報
【特許文献2】特公平8−24713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、弁本体に形成された流通路を精度良く開閉させることができる弁部材を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、使用に際して安全であり、また製作コストが安価であり、さら操作性に優れた弁部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の弁部材は、請求項1に記載したように、流通路を有する弁本体にこの流通路を開閉する弁体を装着し、この弁体の弁棒を長さ方向へ上下動させることによって上記流通路を開閉させるように構成した弁部材であって、弁本体に、指先による摘み操作により弁棒の長さ方向に伸縮して、伸長時に上記弁体の弁棒を掴持して流通路を開放する方向に上動させ、収縮時に上記弁体の弁棒の掴持を開放して弁棒を弁体自体の弾性復元力により下動させて流通路を閉止させるようにした弁棒操作部材を配設していることを特徴とする。
【0012】
このように構成した弁部材において、請求項2に係る発明は、弁棒操作部材は、弁本体上に取付けられる取付部と、この取付部の両側部に下端を屈折自在に連設し、且つ、対向面が上下端から中央部に向かって互いに離間する方向に断面く字状又は断面円弧状に屈曲している一対の弾性アーム片と、これらの両弾性アーム片の上端部間を屈折自在に接続している上端連接片とから形成されていて、上記取付部に対する下端屈折部を支点として上下方向に伸縮するパンタグラフ形状をなしており、両弾性アーム片の上部の対向面に弁棒の突出端部を両側方から掴持し得る掴持片を設けていると共に、上記上端連接片の中央部に弁棒を挿通させる挿通孔を設けてあり、さらに、上記両弾性アーム片に常態においては収縮状態を保持する弾性力を付与している。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、両弾性アーム片の上半部対向面に台座片部を一体に設け、この台座片部の上端から下方に向かって掴持片を内外方向に弾性的に屈折変形可能に垂設している。
【0014】
さらに、請求項4に係る発明は、両掴持片の対向面に弁棒を挟着する複数条の係止突条が突設されている。
【0015】
さらに、請求項5に係る発明は、弾性アーム片の収縮時に、上端連接片の上端面に当接可能な押え片が弁棒の上端部に取り付けられている。
【0016】
本発明の他の弁部材は、請求項6に記載したように、流通路を有する弁本体と、該弁本体に設けられ該流通路に連通する弁体挿入孔と、該弁体挿入孔に挿入されて、該弁体挿入孔内を移動することにより、その先端部が該流通路を閉塞する状態と、該流通路を開放する状態とが切り替え可能な弁体と、該弁体を該流通路を閉塞する状態へ付勢する付勢手段と、該弁体から弁本体の外方へ延出された弁棒と、該弁本体に装着され該弁棒の移動を操作可能な弁棒操作部材と、を有する弁部材であって、
該弁棒操作部材は、弁棒の両側に配設されて弁棒の長さ方向に伸縮可能な一対の弾性アーム片と、該各弾性アームの対向面から弁棒側へ突出した掴持片と、を有し、
両弾性アームを指先で摘み操作することにより、弾性アームを弁棒の長さ方向に伸長させると共に該両掴持片が弁棒を両側より掴持して流通路を開放する方向に上動させ、両弾性アームを開放することにより、弾性アームを収縮させると共に、掴持片の弁棒への掴持を開放して該付勢手段の付勢力により弁体を下動させて流通路を閉止させるように構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に係る弁部材によれば、弁棒操作部材を指先で摘んで操作することにより、弁棒を上下動させて弁体による流通路の開閉を円滑且つ確実に行うことができると共に、その摘み力を変化させることによって流通路の開度を微妙に調節することができ、また、摘み力を解けば、弁体によって流通路を素早く閉止する方向に弁棒を作動させることができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、上記弁棒操作部材は、弁本体上に取付けられる取付部と、この取付部の両側部に下端を屈折自在に連設し、且つ、対向面が上下端から中央部に向かって互いに離間する方向にく字状又は円弧状に屈曲している両弾性アーム片と、これらの両弾性アーム片の上端部間を屈折自在に接続している上端連接片とから形成されていて、上記取付部に対する下端屈折部を支点として上下方向に伸縮するパンタグラフ形状をなしており、両弾性アーム片の上端部対向面に弁棒の先端部を両側方から着脱自在に掴持する掴持片を設けていると共に上記上端連接片の中央部に弁棒を挿通させた挿通孔を設けた構造としているので、取付部を弁本体から突設している弁棒回りの弁本体上に取付けることによって、この弁棒操作部材を弁本体に簡単に装着できるのは勿論、両弾性アーム片の外側面を指で摘んでこれらの対向面を互いに接近する方向に付勢する操作を行うことにより、掴持片によって弁棒の上端部を両側から強固に掴持させることができると共に、その状態で下端屈折部を支点として両弾性アーム片をパンタグラフ状に伸長させながら弁棒を引き上げて弁体による流通路の閉止を確実且つ円滑に開放させることができる。
【0019】
さらに、両弾性アーム片に対する摘み力を弱めるか解く方向に操作すると、該両弾性アーム片が弾性復元力によって下端屈折部を支点として自動的に元の状態まで収縮させることができると共にその収縮によって両掴持片が互いに離間する方向に作動するため弁棒に対する掴持を解き、弁体自体を弾性部材の弾性復元力によって自動的に流通路を閉止する方向に作動させて流通路を簡単且つ迅速に閉止させることができる。
【0020】
また、請求項3に係る発明によれば、両弾性アーム片の上半部対向面に台座片部を一体に設け、この台座片部の上端から下方に向かって掴持片を内外方向に弾性的に屈折変形可能に垂設しているので、掴持片によって弁棒を掴持させた状態で両弾性アーム片を上方に伸長させて弁体を解放する際に、両弾性アーム片が上死点近傍部にまで伸長して殆んど伸長できなくなった時点においても、この状態から両側掴持片が弁棒を掴持した状態で台座片部との連接部である上端を支点として両弾性アーム片の伸長に応じて弾性的に屈折しながら上動し、弁棒を上端連接片の挿通孔からさらに上方に突出移動させて弁体による流通路の解放度をさらに大きくすることができる。
【0021】
さらに、請求項4に係る発明によれば、上記両側掴持片の対向面に弁棒を挟着する複数条の係止突条を突設しているので、弁棒に対する両側掴持の掴持を確実且つ強固に行わせることができる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、弁棒の上端部に、上端連接片の上端面に当接可能な押え片を取り付けているので、長期間の使用によって弁棒操作部材の両弾性アーム片の弾性復元力が弱まって、或いは不測の事態によって元の収縮状態にまで完全に弾性復帰しない状態になろうとしても、弁体の弾性復元力によって弁棒から上記押え片を介して弁棒操作部材を上端連接片を押し下げて元の収縮状態に復帰させることができ、従って、両側掴持片による掴持を常に完全に解放させることができて、流通路の不完全な閉止による流体の漏洩をなくすることができる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、弁棒操作部材を指先で摘んで操作することにより、弁棒を上下動させて弁体による流通路の開閉を円滑且つ確実に行うことができると共に、その摘み力を変化させることによって流通路の開度を微妙に調節することができ、また、摘み力を解けば、弁体によって流通路を素早く閉止する方向に弁棒を作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1乃至図4中、1は合成樹脂材の成形品などで形成され、内部に長手方向に貫通した流通路2を設けている弁本体で、該弁本体1の上面に下端が流通路2に対して直角方向に連通している小径の弁装着筒部3が突設され、この弁装着筒部3内の弁体挿入孔3aに上記流通路2を上下方向に横断する弁体4が配設されている。
【0025】
弁体4は弾性ゴムよりなる有底筒形状に形成されていて、その下端底部を除く上端外周面を弁装着筒部3の内周面に固着していると共に下端底部を流通路2内に該流通路2を横断する方向に突出させてあり、外底面を流通路2の内周面に弾性的に密着させることによって流通路2を閉止するように構成されている。
【0026】
なお、弁体4によって流通路2を閉止した状態において、弁体4の外底面とこれに対向する流通路2の内周面との間に僅かに隙間を形成し、この隙間を通じて流体が僅かに流通するように構成してもよい。
【0027】
この弁体4の内底部に同一材料よりなる一定径と一定長さを有する弁棒5の下端を一体に設けて、該弁棒5を弁体4内を通じて上記弁装着筒部3から上方に突出させている。この弁体4は、常態においてはその外底面を該外底面と対向する流通路2の内周面にその弾性力によって圧接させて流通路2を閉止していると共に、上記弁棒5を引き上げた際に該弁体4の外底面をこの弁体4の弾性力に抗して流通路2の内周面から離間させて流通路2を開放させるように構成している。
【0028】
なお、図中、3bは、弁装着筒部3の上端に設けられた蓋片で、この蓋片3bにより弁体4の上端を係止し、弁体4を流通路2の内周面との間で圧縮することで弁体による流通路2の内周面への圧接力を所定以上に確保している。なお、弁体4は、その弾性力によって弁体4の外底面を流通路2の内周面に圧接させるように構成しているが、別部材により弁体4を付勢するように構成してもよい。蓋片3bには、弁棒5を挿通させる該弁棒5より径の大きい通孔が形成されている。
【0029】
弁棒5を上下動させて弁体4により流通路2を開閉させる操作は、弁棒操作部材6によって行われる。
【0030】
この弁棒操作部材6は、下端部に上記弁装着筒部3に外嵌させて弁本体1上に固定する円環状取付部7と、この取付部7に下端を内外側方に向かって屈折自在に連設し、且つ、対向面が上下端から長さ方向の中央部に向かって互いに離間する方向に断面く字状に屈曲している一定幅を有する一対の弾性アーム片8、8と、これらの各弾性アーム片8、8の上端部間を屈折自在に接続している平板形状の上端連接片9とから形成されている。
【0031】
弁棒操作部材6は、上記取付部7に対する下端屈折部8a、8aを支点として上下方向に伸縮するパンタグラフ形状をなしている。上記上端連接片9の下方近傍部における各弾性アーム片8、8の上端部対向面に、上記弁棒5の先端部を両側方から掴持する掴持片10、10がそれぞれ一体に設けている。上記上端連接片9の中央部に弁棒5の上端部を挿通させるための挿通孔11が設けられている。この挿通孔11内を弁棒5が円滑に移動できるように挿通孔11の内径は、弁棒5の外径よりやや大きく設定されている。
【0032】
さらに、上記各弾性アーム片8、8は、その常態においては収縮状態を保持する弾性力が付与れている。従って、弁棒操作部材6に力を加えていない状態では、図1に示すように、各弾性アーム片8、8は断面く字形に広がり、各弾性アーム片8の対向面側に突設した掴持片10の先端は、弁棒5に力を及ぼすことがない。従って、弁棒5は付勢手段の付勢力によって、弁体4を流通路2に押圧する状態を維持している。
【0033】
なお、上記各弾性アーム片8、8は、その長さ方向の中央部を関節部8b、8bとした正面く字状に形成しているが、このような関節部8b、8bを設けることなく、対向面が上下端から長さ方向の中央部に向かって互いに離間する方向に円弧状に屈曲した形状(断面ほぼC字状)に構成してもよい。図中、8c、8cは各弾性アーム片8、8と上端連接部9の両側端部とを連設している上端屈折部である。
【0034】
上記両側の掴持片10、10は、両弾性アーム片8、8の上半部対向面に、対向面が上端から下端に向かって互いに離間する方向に傾斜した傾斜面12a、12aに形成している硬質ブロック形状の台座片部12、12を一体に設けて該台座片部12、12の対向面上端から下方に向かって互いに小間隔を存した状態で平行に垂設されている。これらの掴持片10、10と台座片部12、12との対向面間に下向きに開拡した空間部13、13をそれぞれ形成し、掴持片10、10は台座片部12、12との連設部を屈折部10a 、10a とし、この屈折部10a 、10a を支点として互いに平行に垂下している状態から上記空間部13、13に向かって互いに拡開する方向に弾性的に屈折変形可能に形成している。
【0035】
図5に示すように、これらの掴持片10、10の対向面には、幅方向(水平方向)に長い複数条の係止突条部10b、10bが上下方向に連続的に、若しくは、小間隔毎に形成されている。なお、上記上端連接片9に設けている挿通孔11は、これらの掴持片10、10の対向面間の垂直上方に配設されていて弁棒5を掴持片10、10の対向面間を通じて該挿通孔11に上下動可能に挿通させていると共に掴持片10、10の対向面間の間隔部は、常態、即ち、両弾性アーム片8、8が収縮している状態においては弁棒5の径よりも大きくなるように構成している。
【0036】
さらに、各弾性アーム片8、8は上下屈折部8a、8cを介して常時下方に収縮した状態を保持し得るように弾性力を有している。従って、常態においては上記掴持片10、10による弁棒5の掴持を開放させていると共に、指先により両弾性アーム片8、8の最も離間した長さ方向の中央部に設けている関節部8b、8bを外側から摘んでその弾性力に抗して両弾性アーム片8、8を互いに接近する方向に変形させた時に、両側の掴持片10、10によって弁棒5の上端部を両側から掴持すると同時に、下端屈折部8a、8aを支点として両弾性アーム片8、8をパンタグラフ状に上方に伸長させることで弁棒5を引き上げ、弁体4による流通路2の閉止を開放させるように構成している。
【0037】
図6に示すように、上記上端連接部9の挿通孔11から上方に突出している弁棒5の上端部には、押え片14を着脱自在に取付けてもよい。この場合、弁棒操作部材6の開放状態において、該押え片14の下面は上記上端連接部9の上端面に当接している。この押え片14は平板形状の中央部を一端面から他端面に向かって弁棒5が挿入可能なスリット状溝14a を設け、このスリット状溝14a を介して両側部を弾性的に拡縮可能な二股部14b 、14b に分離させてあり、スリット状溝14a 内に上記弁棒5を弾性的に挟着させるように構成している。なお、この押え片14は必ずしも設けておく必要はない。
【0038】
次に、このように構成した弁部材の作用を述べる。
【0039】
まず、この弁部材を、流体が流通する小径の管路15の中間部に介装してその弁本体1内の流通路2の両端開口部を該管路15に連通させた状態にする。常態においては弁棒操作部材6における両弾性アーム片8、8はその弾性復元力により下端屈曲部8a、8aを支点として下方に収縮していて両側掴持片10、10による弁棒5の掴持を解いていると共に弁体4もその弾性復元力により流通路2を横断している底部の外底面を流通路2の対向内周面に密着させて流通路2を閉止している。従って、小径管路15内における弁部材から上流側の流体は下流側に流通するのを遮断されている。
【0040】
この状態から、例えば親指と人指し指との指先で弁棒操作部材6における両弾性アーム片8、8の関節部8b、8bを外側から摘んでこれらの両弾性アーム片8、8をその弾性力に抗して互いに接近する方向に変形させる。すると、図1から図2に示すように、両弾性アーム片8、8の掴持片10、10間の間隔が狭まってこれらの掴持片10、10により弁棒5の上端部が掴持され、且つ、両弾性アーム片8、8はその下端屈折部8a、8aを支点として起立する方向に回動すると共にその上端屈折部8c、8cを内側に屈折させながらパンタグラフ状に上方に伸長して弁棒5を引き上げる。
【0041】
従って、この弁棒5の上動により、弁体4は流通路2内に突出させている部分を弾性的に圧縮させながら流通路2の対向内周面から流通路2の直径方向に上方に離間して流通路2を解放させ、小径管路15内の上流側の流体をこの流通路2を通じて下流側に流通させる。流通路2を横断している弁体4の上動により該流通路2の解放度、即ち、開口面積は、弁棒操作部材6の両弾性アーム片8、8の伸長量に応じて比例的に大きくなるが、両弾性アーム片8、8は上死点近傍部にまで達すると、その伸長量が減少してそれ以上、弁棒5の上動量を増大させることができなくなる。
【0042】
しかしながら、両側の掴持片10、10は、その上端部を両弾性アーム片8、8の上半部対向面に一体に設けている台座片部12、12の対向面上端に弾性的に屈折自在に連続していると共に、これらの掴持片10、10と台座片部12、12との対向面間に下向きに開拡した空間部13、13を形成している。よって、両弾性アーム片8、8の中央関節部8b、8bが互いに接近する方向に両弾性アーム片8、8が弾性変形するに従って、掴持片10、10は上記関節部8b、8bを支点として上方に押し上げられ、弁棒5を上端連接部9の挿通孔11に対して相対的に上方に突出移動させて弁体4による流通路2の解放面積をさらに大きくすることができる。この際、両側掴持片10、10は、弁棒5を掴持した状態で上動するに従って台座片部12、12に連設している上端屈折部10a 、10a を介して上記空間部13、13側に変移させることができるので、弁棒5に対する上動作用が確実且つ円滑に行なわれる。
【0043】
弁体4を下動させて流通路2を閉止させる操作は、両弾性アーム片8、8に対する摘み力を弱めるか解くことによって行うことができる。即ち、両弾性アーム片8、8に対する摘み力を弱めるか、摘み力を解放すると、これらの両弾性アーム片8、8は、弾性復元力によって下端屈折部8a、8aを支点として伏動方向に回動すると共に中央関節部8b、8b間の間隔を拡げ、且つ、上端屈折部8c、8cを外方に回動させながら自動的に元の状態まで収縮し、その収縮によって両側掴持片10、10が互いに離間する方向に作動して弁棒5に対する掴持を解き、弁体4自体はその弾性復元力によって自動的に流通路2を閉止する方向に下動してその外底面を流通路2の対向内周面に密着させ、該流通路を閉止する。
【0044】
この時、弁部材は長期の使用によってその両弾性アーム片8、8の弾性復元力が弱まって、元の状態にまで収縮ができなくなった場合、両側掴持片10、10による弁棒5の掴持が解かれることなく、従って、弁体4による流通路2の閉鎖が不完全になる事態が発生する。しかし、図6〜図8に示すように、弁棒5の上端部に、上端連接部9の上端面に当接した押え片14を取り付けておくことによって弁体4自体の弾性復元力により押え片14を介して上端連接部9を押し下げて元の収縮状態に復帰させることができ、従って、流通路2の不完全な閉止による流体の漏洩をなくすることができる。
【0045】
本発明の弁部材は、血圧測定カテーテルなどの医療用チューブに接続される弁部材として使用することができる。その血圧測定カテーテル内には生理食塩水などの液体が送られる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】流通路を閉じた状態の弁部材の縦断面図。
【図2】流通路を解放させた状態の弁部材の縦断面図。
【図3】弁部材の簡略正面図。
【図4】弁棒を上動させた状態の弁部材の簡略正面図。
【図5】両側掴持片部分の斜視図。
【図6】弁棒の上端部に押え片を取り付けた他の実施形態の弁部材の斜視図。
【図7】弁棒の上端部に押え片を取り付けた他の実施形態の弁部材の簡略正面図。
【図8】図7に示す弁棒を上動させた状態の弁部材の簡略正面図。
【符号の説明】
【0047】
1 弁本体
2 流通路
3 弁装着筒部
4 弁体
5 弁棒
6 弁棒操作部材
7 取付部
8 両弾性アーム片
10 掴持片
11 挿通孔
12 台座片部
14 押え片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通路を有する弁本体にこの流通路を開閉する弁体を装着し、この弁体の弁棒を長さ方向へ上下動させることによって上記流通路を開閉させるように構成した弁部材であって、弁本体に、指先による摘み操作により弁棒の長さ方向に伸縮して、伸長時に上記弁体の弁棒を掴持して流通路を開放する方向に上動させ、収縮時に上記弁体の弁棒の掴持を開放して弁棒を弁体自体の弾性復元力により下動させて流通路を閉止させるようにした弁棒操作部材を配設していることを特徴とする弁部材。
【請求項2】
弁棒操作部材は、弁本体上に取付けられる取付部と、この取付部の両側部に下端を屈折自在に連設し、且つ、対向面が上下端から中央部に向かって互いに離間する方向に断面く字状又は断面円弧状に屈曲している一対の弾性アーム片と、これらの両弾性アーム片の上端部間を屈折自在に接続している上端連接片とから形成されていて、上記取付部に対する下端屈折部を支点として上下方向に伸縮するパンタグラフ形状をなしており、両弾性アーム片の上部の対向面に弁棒の突出端部を両側方から掴持し得る掴持片を設けていると共に、上記上端連接片の中央部に弁棒を挿通させる挿通孔を設けてあり、さらに、上記両弾性アーム片に常態においては収縮状態を保持する弾性力を付与している請求項1に記載の弁部材。
【請求項3】
両弾性アーム片の上半部対向面に台座片部を一体に設け、この台座片部の上端から下方に向かって掴持片を内外方向に弾性的に屈折変形可能に垂設している請求項2に記載の弁部材。
【請求項4】
両掴持片の対向面に弁棒を挟着する複数条の係止突条が突設されている請求項2又は請求項3に記載の弁部材。
【請求項5】
弾性アーム片の収縮時に、上端連接片の上端面に当接可能な押え片が弁棒の上端部に取り付けられている請求項2に記載の弁部材。
【請求項6】
流通路を有する弁本体と、該弁本体に設けられ該流通路に連通する弁体挿入孔と、該弁体挿入孔に挿入されて、該弁体挿入孔内を移動することにより、その先端部が該流通路を閉塞する状態と、該流通路を開放する状態とが切り替え可能な弁体と、該弁体を該流通路を閉塞する状態へ付勢する付勢手段と、該弁体から弁本体の外方へ延出された弁棒と、該弁本体に装着され該弁棒の移動を操作可能な弁棒操作部材と、を有する弁部材であって、
該弁棒操作部材は、弁棒の両側に配設されて弁棒の長さ方向に伸縮可能な一対の弾性アーム片と、該各弾性アームの対向面から弁棒側へ突出した掴持片と、を有し、
両弾性アームを指先で摘み操作することにより、弾性アームを弁棒の長さ方向に伸長させると共に該両掴持片が弁棒を両側より掴持して流通路を開放する方向に上動させ、両弾性アームを開放することにより、弾性アームを収縮させると共に、掴持片の弁棒への掴持を開放して該付勢手段の付勢力により弁体を下動させて流通路を閉止させるように構成されている弁部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−97843(P2007−97843A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291792(P2005−291792)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(502434734)エドワーズ ライフサイエンス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】