説明

引戸の雨水浸入防止装置

【課題】 既設の引戸に対して、安価にかつ短時間で、雨水の浸入防止構造を構築することができる引戸の雨水浸入防止装置を提供する。
【解決手段】引戸枠2と、該引戸枠2に開閉自在に建込まれる引戸障子4との間から室内1Aへの雨水の浸入を防止するための引戸の雨水浸入防止装置20である。前記引戸枠2の下枠部材2dには、引戸障子4を室内1A側より押圧する押圧手段5が設置され、該押圧手段5は、押圧保持と押圧解除とが可能とされ、引戸障子4が閉められたときには、引戸障子4の下框4dを室内1A側より押圧し、該下框4dの垂直な第一面4eaを前記下枠部材2dに起立された第二面2eaに当接ないしは近接させ、この状態に保持し得るよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院、学校および養護施設などの建物の躯体に、窓または出入口として設けられる片引戸、引違い戸および連動引戸などの引戸から室内に雨水が浸入することを防止するために好適に実施することができる引戸の雨水浸入防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の躯体の壁部には、窓および出入口として利用される引戸が設けられる。この引戸は、いわゆるアルミサッシによって実現され、1または複数の引戸障子が、前記外壁に形成された開口部に嵌り込んだ状態で固定される引戸枠に、略水平に開閉状態で建込まれて保持されている。
【0003】
引戸枠は、左右一対の竪枠部材と、各竪枠部材の各上端部を連結する上枠部材と、各竪枠部材の各下端部を連結する下枠部材とを有する。これらの竪枠部材、上枠部材および下枠部材は、たとえば、アルニウム合金の押出し形材からなる。各引戸障子の下部には戸車が設けられ、下枠部材上に形成された案内レールによって、前記引戸障子を移動自在に支持して開閉することができるように構成されている。
【0004】
このような引戸において、引戸障子は下枠部材の案内レールに戸車を介して移動自在に支持されているため、引戸障子の下部、すなわち、引戸障子の下框と下枠部材との間には隙間が存在し、台風などの強風時には屋外からの雨水がこの隙間を経て室内に浸入することがある。
【0005】
このような問題を解決するための先行技術は、たとえば特許文献1に記載されている。この先行技術では、浴室と脱衣所との間に設けられる出入口をドアまたは引戸障子によって閉鎖した状態で浴室側から脱衣所側への浴水の浸入を防止するために、ドアまたは引戸障子の下框に、室内側から臨んで起立する長尺板状の水止め板を、下枠部材にその長手方向に平行な軸線まわりに回動可能に設け、この水止め板の長手方向両端部と、その両側に隣接して配置される各竪枠部材との間の隙間を、水止板カバーによって塞ぐように構成された出入口の下枠部分の構造が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−227548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような従来技術では、前記水止め板および止水板カバーが下枠部材に組込まれた構造であるため、これらの水止め板および止水板カバーを既設の引戸に設けるためには、下枠部材全体を、前記水止め板および止水板カバーを備える新たな下枠部材に交換しなければならない。したがって、多くの窓および出入口を有する病院、学校および養護施設などの建物の引戸に、前記従来技術を適用して、雨水の浸入を防止するための改装工事を行うには、多くのコストと時間を要するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、既設の引戸に対して、安価にかつ短時間で、雨水の浸入防止構造を実現することができる引戸の雨水浸入防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、建物の躯体の開口部に固定される引戸枠に引戸障子が移動可能に保持され、閉じた位置にある引戸障子の下框の室内側の押圧面を、外方に弾発的に押圧して押圧状態とする押圧手段と、
押圧手段の前記押圧状態を保持し、かつ解除する押圧保持/解除手段とを含み、
前記押圧状態では、
引戸障子の移動方向に沿って外方に臨んで延びる第1面と、
前記引戸枠の前記移動方向に沿って第1面よりも外方で第1面に対向して室内に臨んで延びる第2面とが、当接し、または雨水が浸入しないわずかな隙間をあけて近接することを特徴とする引戸の雨水浸入防止装置である。
【0010】
本発明に従えば、引戸枠に移動自在に保持される引戸障子が閉じられた状態で、押圧手段によって前記引戸障子の下框の室内側の押圧面が外方に向けて弾発的に押圧される。このような押圧状態は、押圧保持/解除手段によって保持され、またこの押圧保持/解除手段の操作によって、押圧状態を解除することができる。
【0011】
引戸障子の下框の押圧面が前述のように押圧手段によって押圧されると、引戸障子の第1面と前記引戸枠の第2面とが当接し、または雨水が浸入しないわずかな隙間をあけて近接して、台風などの強風時であっても、引戸障子の下框と引戸枠の下枠部材との間から雨水が室内側へ浸入することが防止される。
【0012】
また押圧手段によって引戸障子の下框を押圧することによって、第1面と第2面とを相互に近接または当接させて、雨水の室内への浸入を阻止することができるので、既設の引戸に対しても下枠部材を前記従来技術のように新たなものと交換する必要がなく、安価にかつ短時間で雨水の浸入防止構造を実現することができる。
【0013】
本発明は、前記押圧手段は、
引戸障子の前記押圧面に沿って細長く延び、弾発性を有する押圧部材と、
押圧部材を室内側で支持する細長い支持部材と、
支持部材の一端部を、縦の軸線まわりに、押圧部材を前記押圧面に当接した第1角変位位置と、押圧部材の前記押圧面への押圧状態を解除する第2角変位位置との間で、角変位自在に引戸枠に連結するヒンジとを含み、
前記押圧保持/解除手段は、
支持部材の他端部寄りの部分を、外方に押圧して第1角変位位置を保持し、かつその外方への押圧を解除して第2角変位位置とすることを特徴とする。
【0014】
本発明に従えば、一端部に設けられるヒンジによって第1角変位位置と第2角変位位置との間で角変位自在が支持部材を他端部よりの部分で前記押圧保持/解除手段によって保持され、かつその保持状態が解除される。支持部材が第1角変位位置に配置された状態では、押圧部材が前記下框の押圧面に弾発的に当接し、水密性が達成され、この状態が前記押圧保持/解除手段によって位置され、台風などの強風時であっても、引戸障子の下框と引戸枠の下枠部材との間から雨水が室内側へ浸入することを確実に防止することができる。
【0015】
また前記押圧保持/解除手段によって前記支持部材が第1角変位位置に保持された状態を解除すると、支持部材は前記押圧部材とともに第1角変位位置から第2角変位位置へ
角変位することができるので、支持部材による引戸障子の下框への押圧状態を解除し、引戸障子を引戸枠内で移動自在の状態として、開閉することが可能となる。
【0016】
さらに本発明は、押圧保持/解除手段は、
作動部材であって、その作動部材の一端部は、前記支持部材の他端部寄りの部分に、縦の軸線まわりに角変位自在に設けられる作動部材と、
引戸枠に設けられ、作動部材の他端部を、支持部材が、前記第1角変位位置となるように連結し、および第2角変位位置となるように取外す連結片とを含むことを特徴とする。
【0017】
さらに本発明は、連結片は、
支持部材の前記第1角変位位置で、作動部材が、その作動部材の前記他端部から前記一端部に向かうにつれて、支持部材に近付くように延びて傾斜した姿勢となったロック状態で、作動部材の前記他端部を拘束する拘束部を有することを特徴とする。
【0018】
さらに本発明は、閉じた引戸障子の下框よりも室内側に、支持部材の第2角変位位置への角変位が可能となるように間隔をあけて、引戸障子の移動方向に沿って延びて立ち上がる雨水阻止部材が設けられ、
引戸障子の竪框よりも前記移動方向両外側方で室内側に、竪框との間で雨水阻止部材とともに、雨水貯留部を形成する端壁部材が設けられることを特徴とする。
【0019】
さらに本発明は、連結片の前記連結部は、連結面を有し、
この連結面は、作動部材の前記一端部から前記他端部に向かうにつれて、支持部材に近づくように延びて傾斜し、作動部材の前記ロック状態で作動部材の前記他端部に当接することを特徴とする。
【0020】
さらに本発明は、連結片は、雨水阻止部材に固定され、
作動部材は、その作動部材の前記他端部の軸線方向に臨む当接面を有し、
雨水阻止部材は、作動部材の前記当接面に当接する支持面を有し、
作動部材は、連結片の連結面と雨水阻止部材の支持面とによって作動部材の前記ロック状態を達成することを特徴とする
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、引戸障子が閉められたときには、下枠部材に設置された押圧手段によって、引戸障子の下框が、室外側に押圧され、該下框の垂直な第一面が前記下枠部材に起立された第二面に当接ないしは近接され、この状態に保持し得るよう構成されているから、台風などの暴風雨下にあっても、引戸と、引戸枠の下枠部材との間の隙間から雨水が室内に浸入することを効果的に防止することができる。押圧手段の押圧を解除することによって、引戸障子の開閉操作を支障なく行うことができる。また押圧手段は、引戸枠の下枠部材に設置されるので、既設の下枠部材の全体の取替え工事や、大幅な改装工事等を不要とし、安価にかつ短時間で、雨水の浸入防止構造を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施の一形態の引戸の雨水浸入防止装置20が設けられる引戸21を室内側から見た正面図であり、図2は、図1に示される引戸の雨水浸入防止装置20の拡大斜視図である。
【0023】
建物の躯体壁部1には、開口部1aが形成され、この開口部1aに引戸枠2が嵌り込んだ状態で固定されている。引戸枠2は、左右一対の竪枠部材2a,2bと、各竪枠部材2a,2bの各上端部を連結する上枠部材2cと、各竪枠部材2a,2bの各下端部を連結する下枠部材2dと、上枠部材2cおよび下枠部材2dの各中央部を連結する中竪枠部材2eとを有している。この中竪枠部材2eにより区画された引戸枠2の図1の右側の空域には、固定窓3がいわゆる嵌め殺し状態で建込まれている。また、図1の左側の空域には、左右に開閉可能に引戸障子4が建込まれ、図例の引戸は片引戸として構成されている。
【0024】
固定窓3は、アルニウム合金の押出し形材からなる左右一対の竪框3a,3b、竪框3a,3bの上端部を連結する上框3cおよび竪框3a,3bの下端部を連結する下框3dにより枠組された方形枠体の空域に、ガラス板3eを嵌め込んで構成されている。また、引戸障子4は、同様にアルニウム合金の押出し形材からなる左右一対の竪框4a,4b、竪框4a,4bの上端部を連結する上框4cおよび竪框4a,4bの下端部を連結する下框4dによって枠組された方形枠体の空域に、ガラス板4eを嵌め込んで構成されている。
【0025】
図3は、図1の切断面線III−IIIから見た断面図であり、図4は図3の切断面線IV−IVから見た拡大断面図である。引戸障子4は、固定窓3よりも室外1B側に配置され、引戸枠2の下枠部材2d上には、その長手方向略全域に亘って案内レール2e1が起立して形成されている。引戸障子4の下框4dの下面にはその長手方向に沿った凹溝4e1が形成され、この凹溝4e1内の溝壁間に水平支軸4faを介して2個の戸車4f(図4では1個のみ示す)が回転自在に組付けられている。引戸障子4は、戸車4fを介し案内レール2e1上に支持され、戸車4fの案内レール2e1上を転動し、引戸枠2の開口の間口幅にわたって往復移動可能に支持され、これによって引戸障子4を開閉することができる。
【0026】
引戸枠2の下枠部材2d上には、引戸障子4を室内1A側から押圧する押圧手段5が設置されている。該押圧手段5は、本発明に係る引戸の雨水浸入防止装置20を構成するものであり、引戸枠2の竪枠部材2aに基端部がヒンジ6を介して下枠部材2d上の水平面域内で角変位自在に結合された支持部材7と、支持部材7に揺動自在に結合された作動部材8と、下枠部材2dに固着され該作動部材8の揺動側端部を支持する連結片9とを含む。
【0027】
ヒンジ6は、ヒンジ軸6aが竪枠部材2aに沿って垂直となるように、一方の蝶片が竪枠部材2aにタッピングネジ6bによって固着されると共に他方のヒンジ片が支持部材7の基端部に固着され、支持部材7が下枠部材2d上の水平面域内で角変位自在に支持される。
【0028】
連結片9は平面形状が台形状のブロック体とされ、その平面視で台形状の短辺部が下枠部材2d上の室内1A側縁部に形成された雨水阻止部材である起立壁部2fの室外1B側面に沿って配置され、タッピングネジ9aによって下枠部材2dに固着されている。この固着状態では、連結片9の平面視した台形状の斜辺部と起立壁部2fの室外1B側面との間に鋭角の角度θをなす空域Sが形成される。
【0029】
作動部材8は、円柱状部材からなり、図5に示すように、その先端にはその軸線方向に沿った雌ねじ部8aが形成されている。この雌ねじ部8aには、先端が円弧状のフック部10aとされたフック部材10が、雄ねじ部10bをして、作動部材8に対する長手方向の出幅調整が可能に螺着されている。そして、フック部材10は、雄ねじ部10bに螺着されたローレット8bの作動部材8に対するダブルナット作用により、調整された適正出幅位置での固定が可能とされている。
【0030】
前記支持部材7は、垂直板部7aおよび水平板部7bを有する断面L形のアングル材からなり、竪枠部材2aから中竪枠部材2e側に略水平状態で向くよう、その基端部が前記ヒンジ6に結合され、上述のように、下枠部材2d上の水平面域内で角変位自在に支持されている。垂直板部7aの先側であって、室内1A側の面には、被掛止め部材としてのUボルト11がナット11aの螺着されている。また、このUボルト11によって、フック部材10のフック部10aを受け止め規制する規制ブロック体12が、垂直板部7aの室内1A側の面に固定されている。さらに、垂直板部7aの室外1B側の面(下框4d側の面)には、ゴムの成形体からなる断面C字状の押圧部材13が固着されている。
【0031】
前記フック部材10は、フック部10aをしてUボルト11の円弧部分11bに掛止される。規制ブロック体12は、その室内1A側の面に平面視して円弧状の凹部12aを備え、この凹部12aの内径は、円弧状フック部10aの外径よりやや大とされている。フック部10aのUボルト11の円弧部分11bに対する掛止め状態では、フック部10aの一部が凹部12aに嵌り込んだ状態となり、凹部12aの規制を受けて、その外れが防止される。また、フック部10aの円弧部分11bに対する掛止め状態では、作動部材8がこの掛止め結合部を支点として、上下方向および水平方向に揺動可能に支持される。作動部材8の揺動側端部8cは、斜めにカットされた形状とされ、作動部材8の軸心に対するこの斜めカット角度は前記空域Sを形成する角度θとほぼ同一に選ばれる。したがって、作動部材8の揺動側端部8cは、この空域Sに嵌り込むよう受容される。このように、揺動側端部8cが連結片9に支持される。
【0032】
図5は、雨水浸入防止装置20の動作を説明するための一部を拡大した水平断面図であり、図6は、図5の切断面線VI−VIから見た拡大断面図である。
【0033】
以上のような構成の押圧手段5による引戸の雨水浸入防止装置20の作用を説明する。図示では引戸障子4が閉められており、図2、図3および図5の2点鎖線は、押圧手段5による引戸障子4の押圧がなされていない状態(押圧解除状態)を示している。すなわち、作動部材8の揺動側端部8cが空域Sに受容されず、作動部材8は、下枠部材2dの上に単に載せ置かれ、支持部材7は引戸障子4の下框4dから室内1A側に待避した位置に置かれている。したがって、この状態では押圧手段5が障害とならず、障子引戸4の開閉が可能とされる。この状態から、作動部材8を把持し、フック部材10のフック部10aを規制ブロック体12に押付けるようにし、ヒンジ軸6aを支点として支持部材7を障子引戸4の下框4d側に揺動させる。支持部材7の室外1B側の面に固着された押圧部材13を下框4dに当接させ、さらに押圧部材13を弾性変形させながら支持部材7を下框4dに押付ける。
【0034】
図4および図5の2点鎖線は押圧部材13の変形前の状態を示し、押圧部材13はこの元の形状から弾性変形して、実線のように支持部材7の垂直板部7aと下框4dとの間に挟圧された状態とされる。この状態で、作動部材8の揺動側端部8cを空域Sに受容させ、作動部材8から手離すと、押圧部材13の弾発力により揺動側端部8cが空域Sに食い込むように受容され、作動部材8が支持部材7と連結片9との間に突っ張り状態で介在される。したがって、押圧手段5は、引戸障子4を室外1B側に押出すような押圧保持状態に維持される。この押圧保持状態では、作動部材8の斜めにカットされた揺動側端部8cが、連結片9と下枠部材2dの室内側起立壁部2fとの間で鋭角の角度θをなす空域Sに楔状に受容され、しかも、押圧部材13による弾発力が作動部材8に対してその先端方向に向け作用するから、作動部材8が支持部材7と連結片9および室内側起立壁部2fとの間で不動の状態で緊合保持され、押圧保持状態が確実に維持される。図3および図5の実線、図4、図6は押圧手段5によって引戸障子4が押圧保持された状態を示している。
【0035】
このように引戸障子4が室外1B側に押圧保持された状態では、引戸障子4は室外1B側に押出されるような押圧力を受ける。図4に示すように、前記戸車4fは、下框4dの下面に形成された凹溝4e1の溝壁間に遊びを持った状態で支持されており、そのため、引戸障子4が受ける押圧力は、凹溝4e1における室内1A側の溝壁面(第一面)4eaを、案内レール2e1の室内1A側の起立面(第二面)2eaに当接ないしは近接させるよう作用する。したがって、第1面4eaおよび第1面2eaの間の隙間がゼロないしは極めて狭くなり、室外1B側が暴風雨に晒されても、下框4dの下面と下枠部材2dの表面との間の隙間を経て室内1A側へ雨水が浸入することが防止される。支持部材7による引戸障子4の下框4dに対する押圧度合い、すなわち、作動部材8の突っ張り度合いの調整は、ローレット8bを緩め、フック部材10の雄ねじ部10bを作動部材8の雌ねじ部8aに対して螺進あるいは螺退させて、フック部材10の作動部材8の先端に対する出幅を調整し、調整された適正出幅位置でローレット8bを再度締め付けることによってなされる。したがって、既設の引戸枠2における室内側起立壁部2fと引戸障子4の下框4dとの間隔等に応じた調整が簡易になされる。
【0036】
押圧手段5による引戸障子4の押圧の解除操作は、先ず、作動部材8を支持部材7側に少し押し込み、揺動側端部8cの空域Sに対する緊合受容状態を緩めた上で、作動部材8を上方に跳ね上げるように操作する。これにより、作動部材8を連結片9の拘束状態から解放させることができ、その後、作動部材8を引くように且つUボルト11とフック部材10との掛止結合部分を支点として揺動させることによって、支持部材7を図2、図3および図5の2点鎖線のように室内1A側に退避させて押圧解除がなされる。この押圧解除状態では、作動部材8は支持部材7に対して折り畳まれるようにして下枠部材2dの上にコンパクトに載せ置かれており、この状態では引戸障子4の開閉操作が支障なくなされる。
【0037】
本発明の引戸の雨水浸入防止装置20としての押圧手段5は、既設の引戸枠2に対し、ヒンジ6をタッピングネジ6bにより竪枠部材2aに固着し、連結片9をタッピングネジ9aにより下枠部材2dに固着させることによって簡易に構成される。したがって、下枠部材2dの交換や、大幅な改装工事等が一切不要とされ、安価にかつ短時間で雨水浸入防止構造を構築することができ、病院、学校および養護施設などのように、多くの窓や出入り口を有する建物の雨水浸入防止対策に極めて有効である。また、押圧手段5による押圧保持あるいは押圧解除操作は、作動部材8を把持した簡易な操作によりなされるから、多くの窓や出入り口を有する建物においても、暴風雨時における雨水浸入防止措置が極めて速やかになされる。
【0038】
なお、上記の実施形態では、本発明の引戸の雨水浸入防止装置20を、片引戸に適用した例を示したが、引違戸および連動引戸にも適用することができる。また、案内レール2e1と戸車4fを収納支持する凹溝4e1との間で、押圧により互いに当接ないしは近接する第一面4eaおよび第二面2eaが構成されるようにしたが、引戸障子4の下框4dの室外1B側の面に沿って、下枠部材2dに起立壁部を有した引戸枠の場合は、この起立壁部と下框4dとの間に、押圧により互いに当接ないしは近接する第一面および第二面を構成するようにしても良い。さらに、支持部材7に固着される押圧部材13としては、例示のようなゴムの成形体によるものの他、板ばねや、コイルばねなども充当させることができる。その他、押圧手段5の構成は、同様の機能を奏するものであれば、実施形態のものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の一形態の引戸の雨水浸入防止装置20が設けられる引戸21を室内側から見た正面図である。
【図2】図1に示される引戸の雨水浸入防止装置20の拡大斜視図である。
【図3】図1の切断面線III−IIIから見た断面図である。
【図4】図3の切断面線IV−IVから見た拡大断面図である。
【図5】雨水浸入防止装置20の動作を説明するための一部を拡大した水平断面図である。
【図6】図5の切断面線VI−VIから見た拡大断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1A 室内
2 引戸枠
2c 下枠部材
2ea 案内レールの室内側起立面(第二面)
2f 室内側起立壁部
4 引戸障子
4c 下框
4ea 室内側溝壁(第一面)
5 押圧手段
6 ヒンジ
7 支持部材
8 作動部材
9 連結片
10 フック部材
11 Uボルト(被掛止め部材)
13 押圧部材
20 引戸の雨水浸入防止装置
S 空域
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体の開口部に固定される引戸枠に引戸障子が移動可能に保持され、閉じた位置にある引戸障子の下框の室内側の押圧面を、外方に弾発的に押圧して押圧状態とする押圧手段と、
押圧手段の前記押圧状態を保持し、かつ解除する押圧保持/解除手段とを含み、
前記押圧状態では、
引戸障子の移動方向に沿って外方に臨んで延びる第1面と、
前記引戸枠の前記移動方向に沿って第1面よりも外方で第1面に対向して室内に臨んで延びる第2面とが、当接し、または雨水が浸入しないわずかな隙間をあけて近接することを特徴とする引戸の雨水浸入防止装置。
【請求項2】
前記押圧手段は、
引戸障子の前記押圧面に沿って細長く延び、弾発性を有する押圧部材と、
押圧部材を室内側で支持する細長い支持部材と、
支持部材の一端部を、縦の軸線まわりに、押圧部材を前記押圧面に当接した第1角変位位置と、押圧部材の前記押圧面への押圧状態を解除する第2角変位位置との間で、角変位自在に引戸枠に連結するヒンジとを含み、
前記押圧保持/解除手段は、
支持部材の他端部寄りの部分を、外方に押圧して第1角変位位置を保持し、かつその外方への押圧を解除して第2角変位位置とすることを特徴とする請求項1記載の引戸の雨水浸入防止装置。
【請求項3】
前記押圧保持/解除手段は、
作動部材であって、その作動部材の一端部は、前記支持部材の他端部寄りの部分に、縦の軸線まわりに角変位自在に設けられる作動部材と、
引戸枠に設けられ、作動部材の他端部を、支持部材が、前記第1角変位位置となるように連結し、および第2角変位位置となるように取外す連結片とを含むことを特徴とする請求項2記載の引戸の雨水浸入防止装置。
【請求項4】
連結片は、
支持部材の前記第1角変位位置で、作動部材が、その作動部材の前記他端部から前記一端部に向かうにつれて、支持部材に近づくように延びて傾斜した姿勢となったロック状態で、作動部材の前記他端部を拘束する拘束部を有することを特徴とする請求項3記載の引戸の雨水浸入防止装置。
【請求項5】
閉じた引戸障子の下框よりも室内側に、支持部材の第2角変位位置への角変位が可能となるように間隔をあけて、引戸障子の移動方向に沿って延びて立ち上がる雨水阻止部材が設けられ、
引戸障子の竪框よりも前記移動方向両外側方で室内側に、竪框との間で雨水阻止部材とともに、雨水貯留部を形成する端壁部材が設けられることを特徴とする請求項4記載の引戸の雨水浸入防止装置。
【請求項6】
連結片の前記連結部は、連結面を有し、
この連結面は、作動部材の前記一端部から前記他端部に向かうにつれて、支持部材に近づくように延びて傾斜し、作動部材の前記ロック状態で作動部材の前記他端部に当接することを特徴とする請求項4記載の引戸の雨水浸入防止装置。
【請求項7】
連結片は、雨水阻止部材に固定され、
作動部材は、その作動部材の前記他端部の軸線方向に臨む当接面を有し、
雨水阻止部材は、作動部材の前記当接面に当接する支持面を有し、
作動部材は、連結片の連結面と雨水阻止部材の支持面とによって作動部材の前記ロック状態を達成することを特徴とする請求項6記載の引戸の雨水浸入防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−43407(P2010−43407A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206282(P2008−206282)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(592002950)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】